(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6673071
(24)【登録日】2020年3月9日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】シールド部材、シールド部材付電線、シールド部材の中間製造物及びシールド部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 9/00 20060101AFI20200316BHJP
H01B 7/18 20060101ALI20200316BHJP
【FI】
H05K9/00 L
H01B7/18 D
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-141287(P2016-141287)
(22)【出願日】2016年7月19日
(65)【公開番号】特開2018-14349(P2018-14349A)
(43)【公開日】2018年1月25日
【審査請求日】2018年10月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】水野 芳正
(72)【発明者】
【氏名】石田 英敏
(72)【発明者】
【氏名】山本 泰行
【審査官】
原田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−030943(JP,A)
【文献】
実開昭57−053525(JP,U)
【文献】
特開2014−067521(JP,A)
【文献】
特開2001−291435(JP,A)
【文献】
特開2008−198577(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
H01B 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線をシールド可能なシールド部と、
前記シールド部の一端と他端との間に配設されて前記シールド部に保持されている保持部と、前記保持部に連なり前記シールド部から外方に延出する延出部とを含み、前記保持部の少なくとも一部が前記シールド部の一端と他端との間で余長を形成しつつ延びるドレイン線と、
を備え、
電線に取付けられる前の状態で前記ドレイン線が前記シールド部に保持されている、シールド部材。
【請求項2】
請求項1に記載のシールド部材であって、
前記シールド部は、導電性を有する不織布を材料として形成され、
前記保持部は前記不織布の内部を通っている、シールド部材。
【請求項3】
請求項1に記載のシールド部材であって、
前記シールド部は、シールド材を含む複数の基材が積層されて形成され、
前記保持部は前記複数の基材の間に挟み込まれている、シールド部材。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のシールド部材であって、
前記保持部は波状に延在することで余長を形成している、シールド部材。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のシールド部材と、
前記シールド部材に覆われた電線と、
を備える、シールド部材付電線。
【請求項6】
電線をシールド可能なシールド部と、
前記シールド部の一端と他端との間に配設され、前記シールド部の一端と他端との間で余長を形成しつつ延び、且つ、端部を前記シールド部から外方に引出し可能な態様で前記シールド部に保持されているドレイン線と、
を備える、シールド部材の中間製造物。
【請求項7】
(a)シールド部と、前記シールド部の一端と他端との間に配設されて前記シールド部の一端と他端との間で余長を形成しつつ延びるドレイン線とを備え、長尺に形成された長尺シールド部材を準備する工程と、
(b)前記長尺シールド部材を所望の長さに切断して中間製造物を製造する工程と、
(c)前記中間製造物の前記ドレイン線の端部を前記シールド部から外方に引き出す工程と、
を備える、シールド部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電線をシールドする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のワイヤーハーネスは、低電圧系回路の複数の電線と高電圧系回路の複数の電線とを分けると共に、これら低電圧系回路の複数の電線と高電圧系回路の複数の電線との全外周を別々に包み込むよう折り曲げた絶縁シート及びシールドシートによって外装を施すことによって、高電圧系回路の電線から発生する電磁ノイズによる低電圧系回路への悪影響を防止することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−355839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のシールドシートはアース線(ドレイン線とも言う)によってアースされている。ここで、ドレイン線付のシールド部材を製造する際、長尺のドレイン線付シールド部材から、所望の長さに調尺及び切断して製造する場合がある。この場合、シールド部材が切断された段階では、ドレイン線はシールド層に保持され、アースしにくい。このため、長尺のドレイン線付のシールド部材を所望の長さよりも長く切断すると共に、ドレイン線を残しつつシールド部の端部のみを切除することで、ドレイン線の端部を接続容易なフリーな状態にすることがある。しかしながらこの場合、切除されたシールド層の分だけ歩留まりが悪化する。
【0005】
そこで、本発明は、長尺のドレイン線付シールド部材から所望の長さに切断しつつ端部がフリーのドレイン線が付いたシールド部材を製造する際に、歩留まりの向上を図ることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、第1の態様に係るシールド部材は、電線をシールド可能なシールド部と、前記シールド部の一端と他端との間に配設されて前記シールド部に保持されている保持部と、前記保持部に連なり前記シールド部から外方に延出する延出部とを含み、前記保持部の少なくとも一部が前記シールド部の一端と他端との間で余長を形成しつつ延びるドレイン線と、を備え
、電線に取付けられる前の状態で前記ドレイン線が前記シールド部に保持されている。
【0007】
第2の態様に係るシールド部材は、第1の態様に係るシールド部材であって、前記シールド部は、導電性を有する不織布を材料として形成され、前記保持部は前記不織布の内部を通っている。
【0008】
第3の態様に係るシールド部材は、第1の態様に係るシールド部材であって、前記シールド部は、シールド材を含む複数の基材が積層されて形成され、前記保持部は前記複数の基材の間に挟み込まれている。
【0009】
第4の態様に係るシールド部材は、第1から第3のいずれか1つの態様に係るシールド部材であって、前記保持部は波状に延在することで余長を形成している。
【0010】
第5の態様に係るシールド部材付電線は、第1から第4のいずれか1つの態様に係るシールド部材と、前記シールド部材に覆われた電線と、を備える。
【0011】
第6の態様に係るシールド部材の中間製造物は、電線をシールド可能なシールド部と、前記シールド部の一端と他端との間に配設され、前記シールド部の一端と他端との間で余長を形成しつつ延び、且つ、端部を前記シールド部から外方に引出し可能な態様で前記シールド部に保持されているドレイン線と、を備える。
【0012】
第7の態様に係るシールド部材の製造方法は、(a)シールド部と、前記シールド部の一端と他端との間に配設されて前記シールド部の一端と他端との間で余長を形成しつつ延びるドレイン線とを備え、長尺に形成された長尺シールド部材を準備する工程と、(b)前記長尺シールド部材を所望の長さに切断して中間製造物を製造する工程と、(c)前記中間製造物の前記ドレイン線の端部を前記シールド部から外方に引き出す工程と、を備える。
【発明の効果】
【0013】
第1から第4の態様によると、保持部からシールド部の外方にドレイン線を引き出して延出部を設けることができる。このため、長尺のドレイン線付シールド部材から所望の長さに切断しつつ端部がフリーのドレイン線が付いたシールド部材を製造する際に、ドレイン線のみを残してシールド部を切除する必要がなくなり、歩留まりの向上を図ることができる。
【0014】
特に、第2の態様によると、通常、不織布には繊維同士の隙間が存在するため、当該隙間にドレイン線を配策することで、シールド部に接続させつつ沿わせることができる。
【0015】
特に、第3の態様によると、ドレイン線が複数の基材の間に挟み込まれているため、ドレイン線を簡易にシールド部に接続させつつ沿わせることができる。
【0016】
特に、第4の態様によると、余長を有する構造を容易に設けることができる。また、保持部からドレイン線を引き出しやすい。
【0017】
特に、第5の態様によると、保持部の少なくとも一部がシールド部の一端と他端との間で余長を形成しつつ延びているため、保持部からシールド部の外方にドレイン線を引き出すことができる。このため、長尺のドレイン線付シールド部材から所望の長さに切断しつつ端部がフリーのドレイン線が付いたシールド部材を製造する際に、ドレイン線のみを残してシールド部を切除する必要がなくなり、歩留まりの向上を図ることができる。
【0018】
特に、第6の態様によると、ドレイン線がシールド部の一端と他端との間で余長を形成しつつ延び、且つ、端部をシールド部から外方に引出し可能な態様でシールド部に保持されているため、シールド部の外方にドレイン線を引き出すことができる。このため、長尺のドレイン線付シールド部材から所望の長さに切断しつつ端部がフリーのドレイン線が付いたシールド部材を製造する際に、ドレイン線のみを残してシールド部を切除する必要がなくなり、歩留まりの向上を図ることができる。
【0019】
特に、第7の態様によると、所望の長さに切断された中間製造物からドレイン線をシールド部から外方に引き出す工程を備えるため、中間製造物においてドレイン線のみを残してシールド部を切除する必要がなくなり、歩留まりの向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施形態に係るシールド部材を示す平面図である。
【
図2】
図1のII−II線に沿って切断した断面図である。
【
図3】実施形態に係るシールド部材付電線を示す正面図である。
【
図4】実施形態に係るシールド部材の製造方法を示す説明図である。
【
図5】実施形態に係るシールド部材の中間製造物を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
{実施形態}
以下、実施形態に係るシールド部材、シールド部材付電線、シールド部材の中間製造物及びシールド部材の製造方法について説明する。
【0022】
まず、実施形態に係るシールド部材について説明する。
図1は、実施形態に係るシールド部材20を示す平面図である。
図2は、
図1のII−II線に沿って切断した断面図である。
【0023】
シールド部材20は電線12の周りを覆って電線12をシールドする部材である(
図3参照)。シールド部材20は、シールド部22と、ドレイン線30と、を備える。
【0024】
シールド部22は、電線12をシールド可能に形成されている。即ち、シールド部22は、導電性を有する部材が電線12を覆うことができるように形成されている。シールド部22の長さ寸法及び幅寸法は取付対象の電線12に応じて適宜設定される。ここでは、シールド部22は、導電性を有する不織布24を材料として形成されているものとして説明する。
【0025】
かかる不織布24としては、例えば、樹脂繊維と金属繊維とを含む周知の導電性不織布24を用いることができる。ここで、上記金属繊維は、金属のみからなる繊維であってもよいし、樹脂繊維等の金属繊維以外の繊維に金属メッキが施された繊維であってもよい。樹脂繊維と金属繊維との構成比率はシールド性能及び製造のしやすさ等に応じて適宜設定される。また、不織布24を形成する際の中間生成物であるウェブの形成方法及びウェブ同士の結合方法は特に限定されるものではない。ウェブの形成方法は、乾式法であってもよいし、湿式法であってもよいし、スパンボンド法であってもよい。また、ウェブ同士の結合方法は、例えば、ニードルパンチ法であってもよいし、上記樹脂繊維が熱接着性樹脂であって繊維同士を接着して結合させるバインダとしての機能を有するサーマルボンド法であってもよい。後で説明するようにここでは不織布24の内部にドレイン線30を配索するため、不織布24は、内部に配索されたドレイン線30と金属繊維とがより確実に接続されるものが好ましい。このような不織布は、例えば、樹脂繊維で構成されるウェブと金属繊維で構成されるウェブとが、ニードルパンチ法で結合されて形成される。この場合、樹脂繊維が接着せずに繊維同士が交絡して結合するため、ドレイン線と金属繊維とがより確実に電気的に接続可能となる。
【0026】
ここでは、シールド部22は、シート状に形成されているものとして説明する。不織布24は通常シート状に製造されるため、ここでは、シート状に形成された不織布24をそのまま用いてシールド部22とすることができる。もっともシールド部22は、筒状等に形成されていてもよい。例えば、シールド部は、シート状に形成された不織布24を筒状に変形させた状態で加熱プレスすることなどによって筒状に形成することができる。
【0027】
ドレイン線30は、シールド部22を接地するための部材である。従って、ドレイン線30は、導体線を含み、一部分でシールド部22と接続されている。ここではドレイン線30は、被覆が形成されていない線状の導体、即ち、裸導線である。通常、ドレイン線30は、複数の細い素線が撚り合わされた撚り線であるが、ドレイン線30が単線であることも考えられる。例えば、ドレイン線30の端部には、アース端子が接続され、当該アース端子を介してアース接続されることが考えられる。具体的には、ドレイン線30は、保持部32と、延出部34とを含む。
【0028】
保持部32は、シールド部22の一端と他端との間に配設されている。ここでは、保持部32はシールド部22の一端から他端にかけての全体に亘って存在している。もっとも、保持部32はシールド部22の一端から中間にかけての領域に存在していることも考えられる。
【0029】
保持部32は、シールド部22に保持されている。ここでは、保持部32はシールド部22に電気的に接続された状態で保持されている。この際、保持部32は、シールド部22に接合されていてもよいし、接合されていなくてもよい。また、ここでは、保持部32は不織布24の内部を通っている。例えば、繊維同士が絡み合う度合いの比較的大きい不織布24の内部にドレイン線30を通す、または不織布24の内部にドレイン線30が通された状態で不織布24を加熱プレスするなどして圧縮することで、保持部32がシールド部22に電気的に接続されつつも接合されることなく保持される。
【0030】
保持部32の少なくとも一部は、シールド部22の一端と他端との間で余長を形成しつつ延びている。ここでは、保持部32は波状に延在することで余長を形成している。後で説明するが、シールド部材20はドレイン線30がシールド部22の外方に延在していない中間製造物21(
図5参照)からドレイン線30を引き出すことで製造される。この際、中間製造物21においてもドレイン線30に余長が形成されており、この余長を用いてドレイン線30を引き出している。シールド部材20の保持部32の余長は、中間製造物21からドレイン線30を引き出した際に使われなかった部分である。つまり、シールド部材20における余長は、中間製造物21からシールド部材20を製造したことを示す痕跡であるとも言える。
【0031】
図1に示す例では、シールド部22の一端側から延出部34が延出している。つまり、シールド部22の一端側からドレイン線30が引き出されている。このため、一端側では他端側に比べて波形状の高さが小さくなることによって余長が小さくなっている。
【0032】
延出部34は、保持部32に連なりシールド部22から外方に延出する。ここでは、延出部34は、保持部32の一端部からのみ延出している。もっとも、延出部34は他端側からも引き出されていてもよい。この場合、他端側の延出部は他のアース接続が必要な部材と接合されて電気的に接続されることなどが考えられる。延出部の長さ寸法は、シールド部材20の配設位置からアース接続の位置までの距離等に応じて適宜設定される。
【0033】
次に、シールド部材付電線10について説明する。
図3は、実施形態に係るシールド部材付電線10を示す正面図である。
【0034】
シールド部材付電線10は、上記シールド部材20と、シールド部材20に覆われた電線12と、を備える。ここでは、上記シールド部材20のシールド部22がシート状に形成されているため、シールド部材20が電線12に巻付けられることによってシールド部材20が電線12を覆っている。
【0035】
電線12は、少なくとも1本含まれている。ここでは、電線12は、複数の電線12の束で構成されているものとして説明する。この際、電線12は、複数の電線12が撚り合わされた、いわゆるツイスト電線であることも考えられる。そして、本シールド部材付電線10が車両に組込まれた状態で、各電線12は、電線12の端部に設けられたコネクタ等を介して車両に搭載された各種電気部品に接続される。これにより、シールド部材付電線10は、車両に搭載された各種電気部品を電気的に接続する役割を果す。シールド部材付電線10に含まれる電線12は、車両における敷設経路に応じた形態で結束される。
【0036】
<製造方法>
次に、上記シールド部材20の製造方法及びこの際に生じる中間製造物21について説明する。
図4は、実施形態に係るシールド部材20の製造方法を示す説明図である。
図5は、実施形態に係るシールド部材20の中間製造物21を示す平面図である。
【0037】
まず、シールド部22Bと、シールド部22Bの一端と他端との間に配設されてシールド部22Bの一端と他端との間で余長を形成しつつ延びるドレイン線30Bとを備え、長尺に形成された長尺シールド部材20Bを準備する(工程(a))。長尺シールド部材20Bは、長尺に形成された不織布24Bにその全体に亘ってドレイン線30Bが設けられたものである。ドレイン線30Bは波形状で延在することで、余長を形成している。この際、ドレイン線30Bは波形状に癖付されたものが配設されてもよいし、波形状に癖付されていないものが配設されてもよい。ドレイン線30Bとして波形状に癖付されていないものが配設される場合、ドレイン線30Bが波形状に変形させられた状態でシールド部22Bに保持されることが考えられる。波形状のピッチ及び高さ等は適宜設定される値であり、これらを変えることで余長の長さを変更可能である。また、シールド部22Bがドレイン線30Bを保持する力は、所望の長さに切断されて中間製造物21となった状態で、ドレイン線30の端部を掴んで引っ張ることで、ドレイン線30をシールド部22から引出可能な力である。上記長尺シールド部材20Bは、例えば、図示省略のドラム等に巻回収容されている。
【0038】
次に、長尺シールド部材20Bを所望の長さに切断して中間製造物21を製造する(工程(b))。具体的には、ドラム等に巻回収容された長尺シールド部材20Bを一対のローラ50等で挟み込んで送り出す。この際、ローラ50にロータリエンコーダを設けるなどして、長尺シールド部材20Bを所望の長さに調尺する。そして、長尺シールド部材20Bのうちローラ50より下流側に送り出された部分は、ベルトコンベア52等で移送されつつその先端が別のローラ54で挟持される。この状態で長尺シールド部材20Bのうちローラ50、54の間の部分を切断刃56等で切断する。これにより、
図5に示すような所望の長さに切断された中間製造物21が得られる。
【0039】
従って、シールド部材20の中間製造物21は、電線12をシールド可能なシールド部22と、シールド部22の一端と他端との間に配設され、シールド部22の一端と他端との間で余長を形成しつつ延びるドレイン線30Cとを備える。ドレイン線30Cにおいて、上記延出部34が形成されていない。また、ドレイン線30Cにおいて、上記保持部32よりも余長が大きい。
【0040】
この際、中間製造物21におけるドレイン線30Cは、端部をシールド部22から外方に引出し可能な態様でシールド部22に保持されている。つまり、中間製造物21におけるドレイン線30Cは作業者又はロボットハンド等がドレイン線30Cの端部を掴んで引っ張ることでシールド部22から外方に引出可能な程度の力でシールド部22に保持されている。当該構成は、例えば、ドレイン線30Cがシールド部22に接合されずに保持される又は弱い力で接合されることなどによって、実現可能である。
【0041】
次に、中間製造物21のドレイン線30Cの端部をシールド部22から外方に引き出して、延出部34を形成する(工程(c))。例えば、作業者又はロボットハンド等がドレイン線30Cの端部を掴んで引っ張ることでドレイン線30Cをシールド部22から外方に引き出す。この際、ドレイン線30Cにおける余長が減少し、ドレイン線30Cのうち引き出された部分が延出部34となり、シールド部22に残った部分が保持部32となる。上述したようにここでは、シールド部22の一端側からのみドレイン線30Cを引き出しているが他端側からもドレイン線30Cが引き出されていてもよい。また、所望の長さのドレイン線30Cが引き出されて、所望の長さの延出部34が形成されたら、保持部32と延出部34との連結部分周辺をシールド部22と接合するなどして、それ以上ドレイン線30が引き出されないようにすることも考えられる。なお、延出部34の長さによっては、シールド部22からドレイン線30Cの余長分全てが引き出されることも考えられる。
【0042】
このように、中間製造物21からドレイン線30Cを引き出すことによって上記シールド部材20が得られる。
【0043】
以上のように構成されたシールド部材20、シールド部材付電線10、シールド部材20の中間製造物21及びシールド部材20の製造方法によると、保持部32からシールド部22の外方にドレイン線30を引き出して延出部34を設けることができる。このため、長尺シールド部材20Bから所望の長さに切断しつつ端部がフリーのドレイン線30が付いたシールド部材20を製造する際に、ドレイン線30のみを残してシールド部22を切除する必要がなくなり、歩留まりの向上を図ることができる。
【0044】
また、通常、不織布24には繊維同士の隙間が存在するため、当該隙間にドレイン線30を配策することで、ドレイン線30をシールド部22に接続させつつシールド部22に沿わせることができる。
【0045】
また、波形状に延在して余長を形成しているため、余長を有する構造を容易に設けることができる。また、保持部32からドレイン線30を引き出しやすい。
【0046】
{変形例}
実施形態において、シールド部22は、導電性を有する不織布24を材料として形成され、保持部32が不織布24の内部を通っているものとして説明したが、このことは必須ではない。シールド部22の変形例としては、例えば、
図6に示すシールド部材20が考えられる。
【0047】
シールド部材120のシールド部122は、シールド材27を含む複数(
図6では2つ)の基材26が積層されて形成されている。シールド材27は、導電性を有する基材26である。そして、当該導電性を有するシールド材27と他の基材26との間にドレイン線30の保持部32が挟み込まれる。このときドレイン線30は導電性を有するシールド材27に電気的に接続される。このような導電性を有するシールド材27としては、例えば金属箔又は表面に金属メッキが施されたシート材等が考えられる。また、他の基材26としては、上記シールド材27のほかに導電性を有しないものを用いることもできる。このような基材26としては、例えば樹脂製のシートなどが考えられる。
【0048】
このようなシールド部材120によると、ドレイン線30が複数の基材26の間に挟み込まれているため、ドレイン線30を簡易にシールド部22に接続させつつ沿わせることができる。
【0049】
また、実施形態において、保持部32が波形状で延在することによって余長が形成されているものとして説明したが、このことは必須ではない。例えば、保持部が螺旋状に延在して余長を形成するものであってもよい。
【0050】
なお、上記実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせることができる。
【0051】
以上のようにこの発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0052】
10 シールド部材付電線
12 電線
20、120 シールド部材
20B 長尺シールド部材
21 中間製造物
22、22B、122 シールド部
24 不織布
26 基材
27 シールド材
30、30B、30C ドレイン線
32 保持部
34 延出部