特許第6673076号(P6673076)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6673076
(24)【登録日】2020年3月9日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】溶融ガラスの供給方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 5/167 20060101AFI20200316BHJP
   C03B 5/225 20060101ALI20200316BHJP
   C03B 5/18 20060101ALI20200316BHJP
   C03B 5/26 20060101ALI20200316BHJP
【FI】
   C03B5/167
   C03B5/225
   C03B5/18
   C03B5/26
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-145855(P2016-145855)
(22)【出願日】2016年7月26日
(65)【公開番号】特開2018-16503(P2018-16503A)
(43)【公開日】2018年2月1日
【審査請求日】2019年5月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】特許業務法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】室園 龍三
(72)【発明者】
【氏名】西橋 洋
【審査官】 山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】 特表平11−513971(JP,A)
【文献】 特開2007−204355(JP,A)
【文献】 特開平2−251795(JP,A)
【文献】 特開昭56−55777(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融ガラスの処理を行う第一の槽と、
前記第一の槽によって処理された溶融ガラスに対して新たな処理を行う第二の槽と、
を連通する移送管によって、
前記第一の槽より前記第二の槽へと溶融ガラスを供給する溶融ガラスの供給方法であって、
前記移送管は、
平面視にてクランク状に屈曲形成されるとともに、
水平方向に延出して配置される、
ことを特徴とする溶融ガラスの供給方法。
【請求項2】
前記移送管は、
前記第一の槽より一直線状に延出する第一管部、
前記第一管部の延出端部より交差方向に延出する第二管部、および
前記第二管部の延出端部より交差方向、且つ前記第二の槽に向かって一直線状に延出する第三管部により構成され、
前記第一管部と前記第二管部との成す角度、および前記第二管部と前記第三管部との成す角度は、ともに45°以上且つ135°以内である、
ことを特徴とする、請求項1に記載の溶融ガラスの供給方法。
【請求項3】
前記第一管部と前記第二管部との全長の比率、および/または、
前記第三管部と前記第二管部との全長の比率は1:1以上である、
ことを特徴とする、請求項2に記載の溶融ガラスの供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融ガラスの供給方法の技術に関し、より詳しくは、熱膨張・熱収縮の影響を受け難い移送管による溶融ガラスの供給方法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ガラス物品は、所定のガラス原料を溶融させて溶融ガラスを生成し、その後、当該溶融ガラスを所望の形状へと成形するための各種工程を経ることにより製造される。
そして、これらの各種工程は、ガラス原料を溶融する溶解槽、溶融ガラスに内包する微小な気泡を除去する清澄槽、ガラス成分を均質化させる撹拌槽、およびガラス物品の成形を行う成型装置などにおいて、適切な処理を施すことで行われる。
ところで、少なくとも清澄槽と撹拌槽とは、移送管によって互いに連通されていることが多く、当該移送管を通じて、清澄された溶融ガラスが撹拌槽へと移送されるようになっている(例えば、「特許文献1」および「特許文献2」を参照)。
また、前記移送管は、白金または白金合金(ロウジウムを含む)等の白金族金属からなる耐熱性部材によって構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−216520号公報
【特許文献2】特開2015−91745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、溶融炉等の操業条件の変更によって溶融ガラスの温度は変化する。それに伴い、移送管の温度も変化し、移送管は熱膨張または熱収縮が生じることになる。
そして、従来の移送管は、平面視にて一直線状に延出して設けられているものが多いことから、このような熱膨張・熱収縮による影響を受けやすく、長期間に亘る使用によって、移送管に亀裂が入り、溶融ガラスの品質低下、ひいては最終製品であるガラス物品の品質低下を引き起こす恐れがあった。
【0005】
本発明は、以上に示した現状の問題点を鑑みてなされたものであり、溶融ガラスの処理を行う第一の槽と、前記第一の槽によって処理された溶融ガラスに対して新たな処理を行う第二の槽と、を連通する移送管によって、前記第一の槽より前記第二の槽へと溶融ガラスを供給する溶融ガラスの供給方法であって、熱膨張・熱収縮による影響によって移送管に亀裂が入り、溶融ガラスの品質低下を引き起こすようなこともなく、最終製品であるガラス物品の品質低下を防止することが可能な、溶融ガラスの供給方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、本発明に係る溶融ガラスの供給方法は、溶融ガラスの処理を行う第一の槽と、前記第一の槽によって処理された溶融ガラスに対して新たな処理を行う第二の槽と、を連通する移送管によって、前記第一の槽より前記第二の槽へと溶融ガラスを供給する溶融ガラスの供給方法であって、前記移送管は、平面視にてクランク状に屈曲形成されるとともに、水平方向に延出して配置されることを特徴とする。
【0008】
このような構成からなる溶融ガラスの供給方法であれば、例えば、移送管が熱膨張を起こす場合、平面視にてZ字状に変形することにより、外部からの規制を受けることなく、膨張代を吸収することができる。
従って、従来のような平面視にて一直線状の移送管のように、熱膨張の影響によって亀裂が入るようなこともなく、溶融ガラスの品質低下を引き起こすのを防止することができる。
また、本発明においては、移送管が水平方向に延出して配置されることから、当該移送管の内部を流動する溶融ガラスが、一定の流動速度をもって流動されることとなり、泡の発生や異物の混入などを生じることなく当該溶融ガラスの均質化が図られ、失透や脈理の発生を防止することができる。
【0009】
また、本発明に係る溶融ガラスの供給方法において、前記移送管は、前記第一の槽より一直線状に延出する第一管部、前記第一管部の延出端部より交差方向に延出する第二管部、および前記第二管部の延出端部より交差方向、且つ前記第二の槽に向かって一直線状に延出する第三管部により構成され、前記第一管部と前記第二管部との成す角度、および前記第二管部と前記第三管部との成す角度は、ともに45°以上且つ135°以内であることを特徴とする。
【0010】
このような構成からなる溶融ガラスの供給方法であれば、熱膨張・熱収縮の影響によって生じた移送管の膨張代・収縮代を十分に吸収することができ、熱膨張・熱収縮の影響による移送管の形状の変形に対して柔軟に対応することが可能である。
【0011】
また、本発明に係る溶融ガラスの供給方法において、前記第一管部と前記第二管部との全長の比率、および/または、前記第三管部と前記第二管部との全長の比率は1:1以上であることを特徴とする。
【0012】
このような構成からなる溶融ガラスの供給方法であれば、熱膨張・熱収縮の影響によって生じた移送管の膨張代・収縮代を十分に吸収することができ、熱膨張・熱収縮の影響による移送管の形状の変形に対して柔軟に対応することが可能である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
即ち、本発明に係る溶融ガラスの供給方法によれば、熱膨張・熱収縮による影響によって移送管に亀裂が入り、溶融ガラスの品質低下を引き起こすようなこともなく、最終製品であるガラス物品の品質低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係るガラス溶融装置の全体的な構成を示した図であって、(a)はその断面平面図、(b)はその断面側面図。
図2】移送経路の詳細な構成を示した一部断面平面図。
図3】別実施形態における移送経路の詳細な構成を示した図であって、(a)は鋭角に曲がる屈曲部を有した移送経路の全体的な構成を示した平面図、(b)は鈍角に曲がる屈曲部を有した移送経路の全体的な構成を示した平面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施形態について、図1乃至図3を用いて説明する。
なお、以下の説明に関しては便宜上、図1乃至図3における矢印Aの方向を溶融ガラスGの流動方向と規定して記述する。
【0016】
[製造装置1]
先ず、本発明に係る溶融ガラスの供給方法を具現化する移送管100を備えた、ガラス物品の製造装置1(以下、単に「製造装置1」と記載する)の全体的な構成について、図1を用いて説明する。
【0017】
製造装置1は、所定のガラス原料を溶融して溶融ガラスGを生成し、その後、当該溶融ガラスGを所定の形状に成形することにより、所望のガラス物品を製造する装置である。
製造装置1は、例えば図1(a)に示すように、主にガラス溶融炉10および撹拌槽20などにより構成される。
【0018】
そして、これらのガラス溶融炉10および撹拌槽20は、溶融ガラスGの流動方向(図1中の矢印Aの方向)の上流側から下流側に向かって順に配置されるとともに、後述する移送管100によって、互いに連通される。
【0019】
ガラス溶融炉10は、所定のガラス原料より溶融ガラスGを生成するためのものである。
ガラス溶融炉10は、図1(b)に示すように、炉壁部11a・11a・・・、天井部11b、および底部11cなどからなる炉槽11を備え、当該炉槽11の内部空間は、例えば天井部11bより垂下して設けられる仕切り壁11dによって、流動方向の上流側および下流側に位置する二室に仕切られている。
【0020】
なお、仕切り壁11dの下端部は、底板11cの上面にまで到達しておらず、これらの仕切り壁11dと底板11cとの間隙からなるスロート11eを介して、炉槽11内の二室は、互いに通じた状態となっている。
また、炉槽11を構成するこれらの炉壁部11a、天井部11b、底部11c、および仕切り壁11dは、高ジルコニア系の耐火物(耐火レンガ)により形成されるが、その材料については特に限定されず、公知の材料を使用することができる。
さらに、耐火物成分の溶融ガラスG中への溶出が原因となって生じる脈理、異物などの発生を抑制するために、炉内の耐火物の表面を白金または白金合金(ロウジウムを含む)等からなる金属で覆ってもよい。
【0021】
そして、ガラス溶融炉10は、仕切り壁11dを境にして、その上流側を、溶融ガラスGを生成するための溶融槽10Aとして構成される一方、その下流側を、生成された溶融ガラスGの清澄を行うための清澄槽10Bとして構成される。
【0022】
具体的には、ガラス溶融炉10の上流側(即ち、溶融槽10A)において、炉槽11の上流側の炉壁部11aには原料投入口11fが配設されるとともに、当該原料投入口11fには、例えばベルトコンベア等からなる搬送装置12が配設されている。
また、両側方側(流動方向の平面視直交方向側)に位置する炉壁部11a・11aの上部および下部には、複数のバーナー13・13およびヒーター電極14・14・・・からなる加熱手段が配設される。
【0023】
そして、所定のガラス原料Gaは、搬送装置12によって搬送され、原料投入口11fを介して溶融槽10A内に投入される。
その後、投入されたガラス原料Gaは、バーナー13およびヒーター電極14によって所定の溶融温度にまで加熱される。
こうして、溶融ガラスGが生成される。
【0024】
一方、ガラス溶融炉10の下流側(即ち、清澄槽10B)において、炉槽11の下流側の炉壁部11aには、移送管100の上流側端部が嵌設されるとともに、両側方側(流動方向の平面視直交方向側)に位置する炉壁部11a・11aの下部、および底部11cには、複数のヒーター電極14・14からなる加熱手段が配設されている。
【0025】
そして、溶融槽10Aにおいて生成された溶融ガラスGは、スロート11eを介して清澄槽10B内へと流動され、ヒーター電極14によって加熱されながら所定の温度にまで減温される。
これにより、溶融ガラスGの清澄が行われる。
【0026】
このように、本実施形態における溶融槽10Aおよび清澄槽10Bは、ガラス溶融炉10を構築する構成要素として、互いに一体的な構成となっているが、これに限定されることはなく、流動方向の上流側から下流側に向かって順に、溶融槽および清澄槽と配置される限り、互いに独立して設けられる構成としてもよい。
また、この場合、互いに独立して配設される溶融槽および清澄槽において、後述する移送管100によって連結することとすれば、熱膨張・熱収縮による影響を受け難くなるためより好ましい。
【0027】
次に、撹拌槽20について説明する。
撹拌槽20は、清澄が行われた溶融ガラスGのガラス成分の均質化を図るための槽である。
撹拌槽20は、高ジルコニア系の耐火物(耐火レンガ)により構成される槽本体21を備え、当該槽本体21の内部には、スターラ22が回転可能に設けられている。
また、槽本体21の上流側の壁面には、移送管100の下流側端部が嵌設され、当該移送管100を介して、撹拌槽20はガラス溶融炉10(より具体的には、清澄槽10B)と連通される。
【0028】
なお、前述したガラス溶融炉10の炉槽11と同様に、槽本体21を構成する耐火物の材料については特に限定されず、公知の材料を使用することができる。
また、耐火物成分の溶融ガラスG中への溶出が原因となって生じる脈理、異物などの発生を抑制するために、炉内の耐火物の表面を白金または白金合金(ロウジウムを含む)等からなる金属で覆ってもよい。
【0029】
そして、清澄槽10Bにおいて清澄が行われた溶融ガラスGは、移送管100を介して撹拌槽20内へと流動され、スターラ22によって撹拌される。
これにより、溶融ガラスGの均質化が図られる。
【0030】
撹拌槽20においてガラス成分の均質化が図られた溶融ガラスGは、その後、当該撹拌槽20の下流側に設けられる成形装置(図示せず)に送られる。
そして、前記成形装置に送られた溶融ガラスGは所定の形状に成形され、所望のガラス物品が製造される。
【0031】
[移送管100]
次に、移送管100の構成について、図1乃至図3を用いて詳述する。
本実施形態における移送管100は、前述したように、ガラス溶融炉10(より具体的には、清澄槽10B)と撹拌槽20とを互いに連通する部材であって、当該移送管100を介して、清澄槽10Bより撹拌槽20へと溶融ガラスGが流動される。
換言すると、移送管100は、例えば溶融ガラスGの処理(より具体的には清澄処理)を行う第一の槽としての清澄槽10Bより、前記清澄槽10Bによって処理された溶融ガラスGに対して新たな処理(より具体的には撹拌処理)を行う第二の槽としての撹拌槽20へと、溶融ガラスGを供給するための部材である。
【0032】
移送管100は、例えば図1(a)に示すように、平面視にてクランク状(S字状)に屈曲形成された白金または白金合金(ロウジウムを含む)等からなる金属製の管部材によって構成され、水平方向に延出するようにして配置される。
具体的には、移送管100は、水平方向且つ下流方向に向かって一直線状に延出する第一管部100a、第一管部100aの延出端部より水平方向且つ交差方向(流動方向の平面視直交方向の一方側)に向かって一直線状に延出する第二管部100b、および第二管部100bの延出端部より水平方向且つ交差方向(下流方向)に向かって一直線状に延出する第三管部100cにより構成される。
【0033】
そして、第一管部100aの上流側端部は清澄槽10Bの炉槽11に嵌設されるとともに、第三管部100cの下流側端部は撹拌槽20の槽本体21に嵌設される。
【0034】
なお、移送管100の配置姿勢を水平姿勢としているため、当該移送管100の内部を流動する溶融ガラスGは、一定の流動速度をもって流動される。そのため、泡の発生や異物の混入などを生じることなく当該溶融ガラスGの均質化が図られ、失透や脈理の発生を防止することが可能となる。
【0035】
また、本実施形態においては、円筒形状の管部材により移送管100を構成することとしているが、これに限定されることはなく、例えば、角型の筒形状の管部材などであってもよい。
【0036】
このような構成からなる移送管100とすることで、従来の移送管に見られるような、熱膨張・熱収縮による影響により亀裂が入り、溶融ガラスGの品質低下を引き起こすのを防止することができる。
【0037】
具体的には、従来の移送管は、清澄槽10Bと撹拌槽20との間において、平面視にて一直線状の筒型部材によって構成されていたため、例えば、熱膨張によって軸心方向に延出しようとしても、清澄槽10Bおよび撹拌槽20が障害となって任意に延出することができず、いびつな形状に変形するか、或いは外観上の変形を伴うことなく過大な内部応力を内在することとなっていた。
よって、従来の移送管においては、このような現象を何度も繰り返すうちに亀裂が入り、溶融ガラスGの品質低下を引き起こす要因となっていた。
【0038】
これに対して、例えば図2に示すように、本実施形態における移送管100が熱膨張を起こす場合、第一管部100aは、清澄槽10Bの炉槽11との嵌設箇所を基準として、軸心方向且つ下流方向へと延出する。
また、第三管部100cは、撹拌槽20の槽本体21との嵌設箇所を基準として、軸心方向且つ上流方向へと延出する。
さらに、第二管部100bは、軸心方向に延出しつつ第一管部100aおよび第三管部100cとの連結箇所(具体的には、第一管部100aの下流側端部、および第三管部100cの上流側端部)の移動に伴い姿勢を傾けられる。
その結果、移送管100は、平面視にてZ字状に屈曲された形状(図2中において二点鎖線で示した移送管100Aの形状)に変形される。
【0039】
このように、移送管100においては、弾性限度の範囲内にて平面視Z字状に変形することにより、外部からの規制を受けることなく、少なくとも第一管部100aの軸心方向への膨張代X1、および第三管部100cの軸心方向への膨張代X2を吸収することができる。
よって、従来の移送管のように、熱膨張の影響によって亀裂が入るようなこともなく、溶融ガラスGの品質低下を引き起こすのを防止することができる。
【0040】
また、本実施形態の移送管100によれば、従来のような平面視にて一直線状の移送管の場合に生じる膨張代を、第一管部100aの膨張代X1、および第三管部100cの膨張代X2の双方にて対応することができるため(即ち、膨張代X1および膨張代X2の合計(X1+X2)が、従来の移送管の膨張代に相当するため)、製造装置1全体としての設備レイアウトのコンパクト化を図ることができる。
【0041】
なお、以上の説明においては、移送管100の熱膨張による影響について記載したが、これと同様に、熱収縮を起こす場合であっても、移送管100は、平面視にて流動方向に幾分伸びたクランク状に変形することにより、第一管部100aおよび第三管部100cに発生する収縮代を吸収することができる。
その結果、従来の移送管のように、熱膨張の影響によって亀裂が入るようなこともなく、溶融ガラスGの品質低下を引き起こすのを防止することができる。
【0042】
移送管100の内径は、30mm〜150mmに設定されている。
また、図1(a)に示すように、第一管部100aの全長L1、および第三管部100cの全長L2は、ともに300〜2000mmに設定されるとともに、第二管部100bの全長L3は、600〜2000mmに設定されている。
つまり、第一管部100aおよび/または第三管部100cの全長L1(L2)と、第二管部100bの全長L3との比率が、約1:1(=L1(L2):L3)以上となるように設定されている。好ましくは1:2(=L1(L2):L3)以上となるように設定されている。
【0043】
このような構成からなる移送管100であれば、熱膨張・熱収縮によって生じた膨張代・収縮代を十分に吸収することが可能であり、熱膨張・熱収縮の影響による形状の変形に対して柔軟に対応することができる。
【0044】
ところで、図2に示すように、本実施形態において、第一管部100aおよび第二管部100bの成す角度(以下、「第一屈曲角度θ1」と記載する)は90°に設定されており、且つ第二管部100bおよび第三管部100cの成す角度(以下、「第二屈曲角度θ2」と記載する)も90°に設定されている(θ1=θ2=90°)。
しかしながら、これらの第一屈曲角度θ1および第二屈曲角度θ2の値については、本実施形態に限定されるものではない。
【0045】
即ち、図3(a)に示すように、例えば、熱収縮の影響を受けた状態において第一屈曲角度θ1および第二屈曲角度θ2の値が90°に近似するように、これらの第一屈曲角度θ1および第二屈曲角度θ2を予め鋭角に設定しておいてもよい。
この場合、移送管200の全体的な剛性や、熱収縮による収縮代等を考慮して、第一屈曲角度θ1および第二屈曲角度θ2は、ともに45°〜90°の範囲内にて設定されるのが好ましい。
【0046】
また、図3(b)に示すように、例えば、熱膨張の影響を受けた状態において第一屈曲角度θ1および第二屈曲角度θ2の値が90°に近似するように、これらの第一屈曲角度θ1および第二屈曲角度θ2を予め鈍角に設定しておいてもよい。
この場合、移送管200の全体的な剛性や、熱膨張による膨張代等を考慮して、第一屈曲角度θ1および第二屈曲角度θ2は、ともに90°〜135°の範囲内にて設定されるのが好ましい。
【符号の説明】
【0047】
10B 清澄槽(第一の槽)
20 撹拌槽(第二の槽)
100 移送管
100a 第一管部
100b 第二管部
100c 第三管部
G 溶融ガラス
θ1 角度
θ2 角度
図1
図2
図3