(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の色領域が形成され、臨界融合周波数よりも高い周波数で回転可能なカラーホイールを有し、所定のガスが封入された放電容器内に一対の電極が対向配置されてなる画像形成装置用の放電ランプ点灯装置であって、
前記放電ランプからの光が照射される対象の前記色領域が切り替わるタイミングに同期した同期信号が入力されると共に、前記同期信号に基づいて極性が反転するパルス波を発生するパルス発生部と、
直流電圧が供給され、前記パルス波の周波数に応じた交流電流に変換して前記放電ランプに前記交流電流を供給する給電部を備え、
前記パルス発生部は、
前記カラーホイールが所定数回転する時間内に前記パルス波の極性が反転する頻度である極性反転頻度を異ならせた3種類以上の制御パターンを実行することで前記パルス波を発生する構成であって、
同一種類の前記制御パターンを、所定回数だけ繰り返して実行した後、前記極性反転頻度が最小値から最大値に達するまで増加し、前記最大値に達した後に前記最小値に達するまで低下するように、複数種類の前記制御パターンを組み合わせながら実行し、
それぞれの前記制御パターンの連続実行回数が、前記放電ランプに供給されるランプ電圧に応じて設定されており、
前記極性反転頻度が前記最小値を示す前記制御パターンの連続実行回数は、前記放電ランプに供給されるランプ電圧が第一電圧値である場合と比較して、前記第一電圧値よりも高い第二電圧値において多くなるように設定されていることを特徴とする放電ランプ点灯装置。
前記パルス発生部は、前記制御パターンの種類を切り替える前後における照度変動率が、それぞれの前記制御パターンの発現周波数に応じたチラツキ視認臨界変動率を下回るように、複数種類の前記制御パターンを組み合わせながら実行することを特徴とする請求項1に記載の放電ランプ点灯装置。
前記極性反転頻度が前記最大値の1/2を下回る前記制御パターンの連続実行回数は、前記ランプ電圧が前記第一電圧値である場合と比較して、前記第二電圧値における回数が多いことを特徴とする請求項1又は2に記載の放電ランプ点灯装置。
【背景技術】
【0002】
放電ランプを光源とするデータプロジェクタ装置には、大きく分けて2種類の装置がある。1つは、液晶方式であり、高圧放電ランプより放射された光をRGB三色の液晶パネルに投影するものである。もう1つは、DMD(デジタル・ミラー・デバイス)を利用する方式であり、高圧放電ランプより放射された光を、カラーホイールを介してDMDに投影するものである。
【0003】
このような放電ランプとしては、透明なガラス製放電容器の内部に例えば水銀が0.2mg/mm
3以上封入されて、点灯時の容器内の圧力が200気圧以上にもなるものが使用されている。水銀蒸気圧を高くすることにより、可視波長域の光を高い出力で得ることが可能になる。
【0004】
図8A及び
図8Bに、放電ランプの断面模式図を示す。
図8Bは、
図8Aの電極先端付近を拡大した断面模式図である。
【0005】
図8Aに示すように、放電ランプ10は、放電容器によって形成されたほぼ球形の発光部11を有する。この発光部11の中には、一対の電極20a,20bが2mm以下という極めて小さい間隔で対向して配置されている。
【0006】
また、発光部11の両端には封止部12が形成される。封止部12には、導電用の金属箔13が気密に埋設されており、金属箔13の一端には、電極20a,20bの軸部(30a,30b)が接合している。また、金属箔13の他端には、外部リード14が接合し、図示しない給電部から電力が供給される。
【0007】
このような放電ランプ10は、点灯中、発光管の発光部11内に対向配置された一対の電極20a、20bの先端側表面にそれぞれ突起21が形成され、この突起21間に放電アーク22が保持されることにより、安定的な点灯状態が維持される(
図8B,
図9A参照)。
【0008】
一方、放電ランプ10を長期間同じ状態で点灯した場合には、高温により微小な突起23が複数形成されたり、電極の先端表面部に微小な凹凸が発生したりすることがある(
図9B参照)。これら微小突起23や凹凸は、電極20a,20bを構成する材料(例えばタングステン)が溶融し、発光部11内に封入されたガスと結合して生じた化合物が凝集して生じたものであり、この存在が電極先端の表面部の形状を変化させる。これに伴ってアークの起点が移動し、放電位置が不安定となり、照度低下やチラツキが発生することが知られている。
【0009】
このような問題を解決するため、下記特許文献1には、所定の周波数(基本周波数)のパルス波P1の電流波形を放電ランプに供給すると共に、基本周波数よりも低周波のパルス波P2の電流波形を前記基本周波数のパルス波に間欠的又は周期的に挿入する放電ランプの点灯方式が開示されている(
図10参照)。より詳細には、基本周波数を60〜1000Hzの範囲から選択された一の周波数とし、低周波の周波数を5〜200Hzの範囲から選択された一の周波数とする。
【0010】
パルス波を低周波とすることで、一方の電極が陽極に、他方の電極が陰極に固定化される期間、つまり両電極間に一方向に高電圧が印加される期間が長くなる。この結果、電極に対する加熱の度合いが高まり、電極先端のみならず先端から離れた箇所に対しても熱を伝達させることができる。よって、低周波のパルス波が印加される間、電極先端から離れた箇所に対しても熱が伝達され、かかる箇所に生じていた微小突起や凹凸を溶融、蒸発させることができる。これにより、アーク起点となるべき突起ではなく、むしろ悪影響を及ぼし兼ねない電極先端部以外の突起や凹凸を消滅させることができる。
【0011】
また、下記特許文献2には、カラーホイールを利用する方式に対応した点灯装置に関する記述がある。この文献には、カラーホイールの色領域(セグメント)が切り替わるタイミングと同期して、パルス波の極性反転を行うことが記載されている。セグメントの切替タイミングと同期してパルス波の極性反転を行うことで、チラツキを防止する狙いがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明者らは、電極の突起の位置や形状を安定化させるべく、カラーホイールを有するプロジェクタに対応した放電ランプ点灯装置の制御を、特許文献1及び2の技術を利用して行うことを検討した。すなわち、パルス波の極性を反転させるタイミングを、カラーホイールの回転周波数に対応させつつ、基本周波数のパルス波に対して間欠的又は周期的に低周波のパルス波を挿入するようにして、点灯装置を制御した。しかし、このような制御を行いながら放電ランプからの光を利用して画像を表示させ続けた場合、チラツキが視認されるケースが発現することが確認された。
【0014】
本発明は、上記の課題に鑑み、カラーホイールを有する画像形成装置用の光源として利用される放電ランプに対し、従来よりも安定して照度を維持できる点灯方法を提案することを目的とする。すなわち、本発明は、このような点灯制御が可能な放電ランプの点灯制御装置を実現することを目的とする。また、本発明は、このような点灯制御装置によって点灯制御される放電ランプを含む画像形成装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
複数の色領域が形成され、臨界融合周波数よりも高い周波数で回転可能なカラーホイールを有し、所定のガスが封入された放電容器内に一対の電極が対向配置されてなる画像形成装置用の放電ランプ点灯装置であって、
前記放電ランプからの光が照射される対象の前記色領域が切り替わるタイミングに同期した同期信号が入力されると共に、前記同期信号に基づいて極性が反転するパルス波を発生するパルス発生部と、
直流電圧が供給され、前記パルス波の周波数に応じた交流電流に変換して前記放電ランプに前記交流電流を供給する給電部を備える。
【0016】
前記パルス発生部は、
前記カラーホイールが所定数回転する時間内に前記パルス波の極性が反転する頻度である極性反転頻度を異ならせた3種類以上の制御パターンを実行することで前記パルス波を発生する構成であって、
同一種類の前記制御パターンを、所定回数だけ繰り返して実行した後、前記極性反転頻度が最小値から最大値に達するまで増加し、前記最大値に達した後に前記最小値に達するまで低下するように、複数種類の前記制御パターンを組み合わせながら実行する。
【0017】
それぞれの前記制御パターンの連続実行回数が、前記放電ランプに供給されるランプ電圧に応じて設定されている。特に、前記極性反転頻度が前記最小値を示す前記制御パターンの連続実行回数は、前記放電ランプに供給されるランプ電圧が第一電圧値である場合と比較して、前記第一電圧値よりも高い第二電圧値において多くなるように設定されている
【0018】
本発明者らは、鋭意研究の結果、従来の放電ランプで映像を投射した場合にチラツキが視認される原因として、高周波の電流で点灯される区間と低周波の電流で点灯される区間とで、放電ランプの照度が、視認されやすい程度にまで変化していることが原因の一つであると結論づけた。
【0019】
すなわち、高周波の電流で点灯される場合には、同一時間内にパルス波が極性反転する回数が多い。このことは、同一時間内に、パルス波の波高値が瞬間的にゼロ点を通過する頻度が高いことを意味する。一方、低周波の電流で点灯される場合には、同一時間内にパルス波が極性反転する回数が少ない。このことは、同一時間内に、パルス波の波高値が瞬間的にゼロ点を通過する頻度が低いことを意味する。つまり、高周波の電流で点灯されている期間における照度が、低周波の電流で点灯されている期間における照度よりも低くなってしまう。
【0020】
ところで、照度が所定の周期(周波数)で変化する場合において、人間の目では視認できる変化態様と、視認されない変化態様が存在することが知られている。つまり、変化する周波数が低すぎる場合においても、高すぎる場合においても、人間の目ではチラツキとして視認されない。チラツキとして視認される周波数の上限値は、臨界融合周波数(CFF:Critical Fusion Frequency)と呼ばれることがある。
【0021】
例えば、パルス電流で点灯される場合、上述したように、瞬間的に電流値がゼロ点に達する。この時点と、パルス波の波高値を示す時点とでは、本来であれば照度に差が生じる。しかし、このパルス電流の周波数は、臨界融合周波数より高い周波数であるため、人間の目には、この照度の変化が視認されない。
【0022】
しかし、高周波のパルス電流で駆動される期間と、低周波のパルス電流で駆動される期間が交互に登場する場合において、各期間自体の周波数は、チラツキとして視認可能な周波数の範囲に属する場合がある。例えば、90msの期間にわたって高周波のパルス電流で駆動された後、10msの期間にわたって低周波のパルス電流で駆動されるという制御が繰り返される場合を想定すると、それぞれの期間は10Hzの周波数で登場することになる。
【0023】
図1は、明るさを一定の周期で変化させた場合における、変化の周波数と視感度の関係を示すグラフである。縦軸は最も高い視感度を1としたときの視感度の相対値を示す。横軸は、明るさの変動周波数を示す。
図1によれば、10Hz近傍において視感度が最も高いことが分かる。つまり、従来の方法であれば、この10Hz近傍の周波数で照度が変化することで、チラツキとして視認されていたものと推察される。
【0024】
ところで、
図1を参照すると、40Hz近傍及び0.1Hz近傍における視感度係数の値は、10Hzにおける視感度係数の値の約1/5である。このことは、ある照度変動幅X1で10Hzの変動周波数の下でチラツキが視認されなかったとすると、変動周波数が40Hz近傍である場合、及び0.1Hz近傍である場合には、照度の変動幅を5×X1まで増加しても、チラツキとして視認されないことを意味するものである。つまり、変動周波数が10Hzから離れるほど、視認されない範囲内の照度変動幅の許容域が広がることを意味する。逆に、変動周波数が10Hzに近い場合には、照度変動幅を小さくしなければチラツキとして視認されやすいことを意味する。
【0025】
上記の構成では、パルス波の極性反転頻度を異ならせた3種類以上の制御パターンが実行される。そして、これら複数種類の制御パターンは、極性反転頻度が最小値から最大値に達するまで低下させることなく増加し、最大値に達した後に最小値に達するまで増加させることなく低下するように組み合わせながら実行される。つまり、制御パターンが切り替えられる前後における照度変動幅(照度変動率)が、従来よりも抑制される。この結果、従来よりもチラツキとして視認されにくい駆動制御が実現される。
【0026】
ところで、放電ランプは、点灯時間が長くなると、不可避的に極間の距離が伸び、ランプ電圧が上昇する。放電ランプは定電力制御が行われるため、ランプ電圧の上昇に伴って放電ランプに投入される電流量が低下する。このため、電極のトリートメントの目的で低周波のパルス電流で駆動する、すなわち極性を一定にしたとしても、電極を溶融するのに十分な熱量を電極に供給することができない可能性がある。そこで、ランプ電圧が高い場合(第二電圧値)には、極性反転の頻度が最も少ない制御パターンの連続実行回数を多くしている。
【0027】
逆に、ランプ電圧が低い場合には、放電ランプに対して高い電流量が投入される。このため、極性反転の頻度が少ない制御パターンの連続実行回数があまりに多いと、電極先端の温度が上がりすぎて、電極の形状が変形し、アークを安定的に維持することができなくなる。このため、ランプ電圧が低い場合(第一電圧値)には、極性反転の頻度が最も少ない制御パターンの連続実行回数を少なくしている。
【0028】
このような制御が実行されることで、長期にわたる電極形状の安定化を図りつつ、チラツキを抑制する効果が得られる。
【0029】
前記パルス発生部は、前記制御パターンの種類を切り替える前後における照度変動率が、それぞれの前記制御パターンの発現周波数に応じたチラツキ視認臨界変動率を下回るように、複数種類の前記制御パターンを組み合わせながら実行する構成であるのが好ましい。
【0030】
図2は、
図1に基づいて、周波数毎の、チラツキがギリギリ視認されない範囲内の照度変動率をグラフ化したものである。このグラフは、変動周波数が20Hzの場合における照度変動率を0.1%とし、この値と、
図1の結果に基づいて作成されたものである。ここで「照度変動率」とは、照度が変動する前後の変動幅を、照度が変動する直前の照度で除した値に対応する。
【0031】
照度変動率が、
図2に示されるグラフの値よりも抑制されていれば、チラツキとして視認されないことを意味する。このグラフによって示されている値を、「チラツキ視認臨界変動率」と定義する。
【0032】
図1を参照して上述したように、視感度の最も高い10Hz近傍においては、チラツキが視認されない範囲内の照度変動率が最も小さい。そして、10Hzから離れるほど、チラツキが視認されない範囲内における照度変動率の許容幅が広がる。実行される制御パターンの種類が変化することで照度が変動するが、この照度変動率をチラツキ視認臨界変動率以内に抑制することで、チラツキを視認させることなく電極先端の形状を安定にすることができる。
【0033】
前記極性反転頻度が前記最大値の1/2を下回る前記制御パターンの連続実行回数は、前記ランプ電圧が前記第一電圧値である場合と比較して、前記第二電圧値における回数が多いものとしても構わない。
【0034】
上記の構成によれば、より長期的にフリッカの抑制効果が奏される。
【0035】
なお、前記極性反転頻度が前記最大値の1/2を下回る前記制御パターンの連続実行回数は、前記ランプ電圧が高くなるに連れて多くなるように設定されているものとしても構わない。
【0036】
前記極性反転頻度が前記最大値を示す前記制御パターンは、前記カラーホイールが1回転する時間内に、前記同期信号が入力される都度極性が反転される態様であり、
前記極性反転頻度が前記最小値を示す前記制御パターンは、前記カラーホイールが1回転する時間内に、同一の極性が維持される態様であるものとしても構わない。
【0037】
また、本発明に係る画像形成装置は、
上記の特徴を有する前記放電ランプ点灯装置と、
前記放電ランプ点灯装置からの電流供給を受けて点灯する放電ランプと、
複数の色領域を有して回転可能な構成であって、一の前記色領域に前記放電ランプからの光を通過させて前記色領域に対応した色の光を出力するカラーホイールと、
前記カラーホイールの回転駆動を行うカラーホイール駆動部と、
前記カラーホイール駆動部からの信号に基づいて、前記放電ランプ点灯装置に前記同期信号を出力する制御処理部と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0038】
本発明の放電ランプ点灯装置によれば、カラーホイールを有する画像形成装置用の光源として利用される放電ランプに対し、従来よりも安定して照度を維持できる点灯制御が実現される。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明の放電ランプ点灯装置の実施形態につき、図面を参照して説明する。なお、各図において図面の寸法比と実際の寸法比は必ずしも一致しない。
【0041】
[ランプの構成]
まず初めに、本発明の点灯装置によって点灯制御される対象となる放電ランプの構成の一例について、
図8A及び
図8Bを参照して説明する。なお、本発明の点灯装置によって点灯制御される対象となる放電ランプは、以下で説明される構成に限定されるものではない。
【0042】
放電ランプ10は、石英ガラスからなる放電容器によって形成された、ほぼ球形の発光部11を有する。放電容器の材料は石英ガラスに限定されず、他の材料で構成されていても構わない。この発光部11の中には、一対の電極20a,20bが例えば2mm以下という極めて小さい間隔で対向配置している。
【0043】
発光部11の両端部には封止部12が形成される。この封止部12には、モリブデンなどよりなる導電用の金属箔13が、例えばシュリンクシールにより気密に埋設されている。金属箔13の一端には電極20a,20bの軸部が接合しており、また、金属箔13の他端には外部リード14が接合し、後述する本発明の放電ランプ点灯装置から電力が供給される構成である。
【0044】
本実施形態における放電ランプ10の発光部11には、例えば、水銀,希ガス,及びハロゲンガスが封入されている。
【0045】
水銀は、必要な可視光波長(例えば波長360〜780nm)の放射光を得るためのものであり、具体的数値でいうと、0.20mg/mm
3以上封入されている。この封入量は温度条件によっても異なるが、点灯時における発光部内部の圧力を200気圧以上という高い蒸気圧を実現するものである。また、水銀をより多く封入することで点灯時の水銀蒸気圧250気圧以上、300気圧以上という高い水銀蒸気圧の高圧放電ランプを作ることができ、水銀蒸気圧が高くなるほどプロジェクタに適した光源を実現できる。
【0046】
希ガスとしては、例えばアルゴンガスが約13kPa封入される。その機能は点灯始動性を改善することにある。
【0047】
また、ハロゲンガスとしては、ヨウ素、臭素、塩素などが水銀又はその他の金属との化合物形態で封入される。ハロゲンの封入量は、10
-6μmol/mm
3〜10
-2μmol/mm
3の範囲から選択される。ハロゲンを封入する最大の理由は、いわゆるハロゲンサイクルを利用した放電ランプの長寿命化のためである。また、放電ランプ10が小型で且つ高い点灯蒸気圧のものとして設計されている場合には、ハロゲンを封入することで、放電容器の失透防止という作用も得られる。失透とは、準安定のガラス状態から結晶化が進行し、多くの結晶核から成長した結晶粒の集合体へと変化することをいう。仮にこのような現象が生じると、結晶の粒界で光が散乱されて放電容器が不透明になってしまう。
【0048】
なお、本発明において、同様の機能を実現できるのであれば、発光部11に封入されるガスは上記ガスに限定されるものではない。
【0049】
放電ランプ10の一実施例としては、発光部の最大外径9.4mm、電極間距離1.0mm、放電容器内容積55mm
3、定格電圧70V、定格電力180Wであり交流方式で電力が供給される構成とすることができる。
【0050】
また、放電ランプ10は、小型化が進行するプロジェクタに内蔵されることが想定されており、全体寸法として極めて小型化が要請され、その一方で高い発光光量も要求される。このため、発光部内の熱的影響は極めて厳しいものとなり、ランプの管壁負荷は0.8〜2.5W/mm
2、具体的には2.4W/mm
2となる。このように、高い水銀蒸気圧や管壁負荷値を有する放電ランプ10が、プロジェクタやオーバーヘッドプロジェクタのようなプレゼンテーション用機器に搭載されることで、プレゼンテーション用機器に演色性の良い放射光を提供することができる。
【0051】
[電極先端の形状]
図8Bに示すように、電極20aは頭部29aと軸部30aによって構成され、電極20bは頭部29bと軸部30bによって構成される。そして、電極20a及び電極20bには、いずれも先端に突起21が形成されている。この突起21は、ランプ点灯時、電極先端において溶融した電極材料が凝集して形成されるものである。本実施形態では、電極20a及び電極20bがいずれもタングステンで構成されるものとして説明するが、材料はこれに限定されるものではない。
【0052】
電極20a及び電極20bに対して通電がされると、白熱して高温化され、これらを構成するタングステンが昇華する。昇華したタングステンは、比較的に低温部である発光部11の内壁面領域において、封入されていたハロゲンガスと結合して、ハロゲン化タングステンを形成する。ハロゲン化タングステンの蒸気圧は比較的高いことから、ガスの状態で再び電極20a及び電極20bの先端付近に再び移動する。そして、この箇所で再度加熱されると、ハロゲン化タングステンはハロゲンとタングステンに分離される。このうちタングステンは、電極20a及び電極20bの先端に戻って凝集され、ハロゲンは発光部11内のハロゲンガスとして復帰する。これをハロゲンサイクルと呼ぶ。なお、この凝集されたタングステンが、電極20a及び電極20bの先端近傍に付着することで、突起21が形成される。
【0053】
[画像形成装置の構成]
次に、点灯装置の構成に先駆けて、本発明の点灯装置の利用が想定される画像形成装置の構成について、図面を参照して説明する。
【0054】
図3はカラーホイールを利用する方式の画像形成装置の構成の一例を模式的に示すブロック図である。ここでは、画像形成装置60として、単板式のプロジェクタを想定している。画像形成装置60は、光源装置61、カラーホイール63、ロッドインテグレータ64、光学素子65、DMD素子66、光学系67などを備える。
【0055】
光源装置61は、放電ランプ10及び凹面反射鏡62を備える。放電ランプ10は交流点灯タイプのランプであり、ランプのアーク輝点と凹面反射鏡62の第一焦点がほぼ一致するように配置されている。
【0056】
凹面反射鏡62からの反射光は、カラーホイール63を介してロッドインテグレータ64に入射される。カラーホイール63は、
図4に示すように、スポーク75によって複数の色領域(ここでは、W1,W2,R,G,B)によって分割されている。カラーホイール63は、カラーホイール駆動部68によって回転、停止などの駆動制御が行なわれ、所定の光集光領域72を通過した光がロッドインテグレータ64に入射される。
【0057】
本実施形態では、カラーホイール63が、白(W1,W2)、赤(R)、緑(G)、青(B)の各色によって構成されているものとするが、色の数や分割方法はこの形態に限られるものではない。なお、カラーホイール63は、白色領域としてW1,W2の2領域を有しているが、どちらの領域を通過した場合でも同一波長の白色光が生成されるものとして構わない。
【0058】
画像形成装置60は、演算を行うプロセッサ、演算に必要なプログラム等の情報を記憶するROM、及び一時的に発生した情報を記憶するRAMなどからなる制御処理部69を備える。この制御処理部69は、画像形成装置60全体の動作を制御する処理を行う。前述のカラーホイール駆動部68は、制御処理部69に接続されており、制御処理部69からの制御信号に基づいて駆動用の信号をカラーホイール63に出力する。
【0059】
カラーホイール63には色領域の位置を決定するために、カラーホイール63の回転部にマーク(不図示)が備えられている。カラーホイール駆動部68は、このマークを読み取るためのセンサ(不図示)を備えており、このセンサにより、カラーホイール63の回転位置検出信号Scを生成して制御処理部69に出力する。制御処理部69は、この回転位置検出信号Scによって、動作中、どの色領域を通過した光がスクリーンに投影されているかを認識する。
【0060】
制御処理部69は、DVDプレーヤーやパソコンなどの映像出力機器70からの画像信号を受け付け、画像信号の垂直同期信号Szに応じた回転制御信号Sdをカラーホイール駆動部68へ出力する。カラーホイール駆動部68は、制御処理部69からの回転制御信号Sdに従って、カラーホイール63を一定速度で回転させる。制御処理部69は、カラーホイール63の回転位置に合わせてデバイス制御部71の動作を制御し、画像信号に基づいた各色用の画像を映像表示素子で表示させる。すなわち、カラーホイール駆動部68は、カラーホイールの回転速度を、映像出力機器70から入力される信号に基づいて決定している。
【0061】
DMD素子66には、DMD素子66に必要な画像を形成させる処理を行うデバイス制御部71が接続されている。このデバイス制御部71も制御処理部69に接続されている。
【0062】
凹面反射鏡62からの反射光は、カラーホイール63上に形成される光集光領域72(
図4参照)を透過する。カラーホイール63が回転することにより、光集光領域72に対応する色が順次、後段のロッドインテグレータレンズ64に導かれる。つまり、白(W1,W2)、青(B)、緑(G)、赤(R)の各色が時間分割的に投影されるため、瞬間的にはいずれかの色しかDMD素子66を介してスクリーンに投影されないが、人間の視覚的にはこれらの色又はその混合色が画像として認識される。
【0063】
なお、白(W1,W2)は画像を全体に明るくするためのものであり、一定周期ごとに白色が投影されることで画像全体を明るくする効果が得られる。例えば、カラーホイール63が180Hzで回転(毎秒180回転)する場合、1秒間に白(W1,W2)、青(B)、緑(G)、赤(R)が180回投影されることとなる。
【0064】
図4に示すカラーホイール63に構成される各色領域の面積は、最終的な画像の色バランスや明るさを考慮して規定されるものとして構わない。なお、カラーホイール63上に仮想的に形成される光集光領域72は例えば3.6×4.8mmの矩形形状である。
【0065】
点灯装置1は、制御処理部69に接続されており、制御処理部69からカラーホイール63の色領域の切替タイミングに同期した同期信号Sbが供給される。点灯装置1は、この同期信号Sbに基づいてパルス波の極性を反転させる。
【0066】
[点灯装置の構成]
次に、点灯装置1の具体的な構成について、図面を参照して説明する。
図5は、点灯装置1の構成を模式的に示す回路ブロック図である。
図5に示すように、点灯装置1は、給電部3とパルス発生部4を含んで構成される。パルス発生部4から出力されたパルス波Pに基づき、給電部3で生成された交流電流が放電ランプ10に供給されることで、放電ランプ10が点灯する。
【0067】
(給電部)
給電部3は、降圧チョッパ部31、DC/AC変換部32、及びスタータ部33を備える。
【0068】
降圧チョッパ部31は、供給される直流電圧Vdcを所望の低電圧に降圧し、後段のDC/AC変換部32に出力する。
図5では、具体的な構成例として、降圧チョッパ部31は、スイッチング素子Qx、リアクトルLx、ダイオードDx、平滑コンデンサCx、抵抗Rx、及び分圧抵抗Vxを有するものが図示されている。
【0069】
スイッチング素子Qxは、直流電圧Vdcが供給される+側電源端子に一端が接続され、他端がリアクトルLxの一端に接続される。ダイオードDxは、カソード端子がスイッチング素子Qx及びリアクトルLxの接続点に接続され、アノード端子が−側電源端子に接続される。平滑コンデンサCxは、一端がリアクトルLxの出力側端子に接続され、他端(−側端子)が抵抗Rxの出力側端子に接続される。抵抗Rxは、平滑コンデンサCxの−側端子とダイオードDxのアノード端子の間に接続され、電流検出の機能を実現している。また、分圧抵抗Vxは、平滑コンデンサCxの−側端子と+側端子の間に接続され、電圧検出の機能を実現している。
【0070】
スイッチング素子Qxは、電力制御部34が出力するゲート信号Gxによって駆動される。このゲート信号Gxのデューティにより、降圧チョッパ部31は入力直流電圧Vdcをこのデューティに応じた電圧に降圧して後段のDC/AC変換部32に出力する。
【0071】
DC/AC変換部32は、入力された直流電圧を所望の周波数の交流電圧に変換して、後段のスタータ部33に出力する。
図5では、具体的な構成例として、DC/AC変換部32が、ブリッジ状に接続したスイッチング素子Q1〜Q4から構成されたものが図示されている(フルブリッジ回路)。
【0072】
スイッチング素子Q1は、ドライバ35から出力されるゲート信号G1によって駆動される。同様に、スイッチング素子Q2はゲート信号G2によって駆動され、スイッチング素子Q3はゲート信号G3によって駆動され、スイッチング素子Q4はゲート信号G4によって駆動される。ドライバ35は、対角に配置されたスイッチング素子Q1及びQ3の組と、スイッチング素子Q2及びQ4の組に対して、交互にオン/オフを繰り返すようにゲート信号を出力する。これにより、スイッチング素子Q1及びQ2の接続点と、スイッチング素子Q3及びQ4の接続点の間に、矩形波状の交流電圧が発生する。
【0073】
スタータ部33は、放電ランプ10の始動時に、DC/AC部32から供給される交流電圧を昇圧して放電ランプ10に供給するための回路部である。
図5では、具体的な構成例として、スタータ部33が、コイルLh及びコンデンサChで構成されたものが図示されている。放電ランプ10の始動時に、コイルLh、コンデンサChからなるLC直列回路の共振周波数近傍の高いスイッチング周波数(例えば数百kHz)の交流電圧をDC/AC部32から印加することで、スタータ部33の二次側において放電ランプ10の始動に必要な高い電圧が生成され、これが放電ランプ10に供給される。なお、放電ランプ10が点灯した後は、DC/AC部32から供給される交流電圧の周波数が定常周波数(例えば60〜1000Hz)に移行され、定常点灯動作が行われる。なお、定常点灯動作には、後述される制御内容が含まれる。
【0074】
なお、上記回路において、スタータ部33に供給される交流電圧の周波数の変更は、DC/AC部32におけるスイッチング素子Q1及びQ4の組と、スイッチング素子Q2及びQ3の組のオン/オフ切替の周期を調整することで達成できる。また、スタータ部33に供給される交流電圧の波高値の変更は、降圧チョッパ部31におけるスイッチング素子Qxの動作デューティを調整することで達成できる。
【0075】
すなわち、降圧チョッパ部31のスイッチング素子Qxは、電力制御部34が出力するゲート信号Gxのデューティに応じたスイッチング周波数でオン/オフし、これによって放電ランプ10に供給される電力が変化する。例えば放電ランプ10への供給電力を上昇させたい場合、電力制御部34は、所望の電力値となるようにゲート信号Gxのデューティを上げる制御を行う。
【0076】
電力制御部34は、給電部3の抵抗Rxを流れる電流値及び分圧抵抗Vxが示す電圧値に基づいてゲート信号Gxのデューティ比を適宜変更し、入力される電力を目標とする電力値(制御電力値)に維持させるためのフィードバック制御を行う。
【0077】
(パルス発生部)
パルス発生部4は、パルス発生回路41、制御パターン設定部42、及びメモリ部43を備え、発生したパルス波PをDC/AC部32のドライバ35に出力する。前述したように、このパルス波に基づいて、DC/AC部32のスイッチング素子Q1〜Q4に対するスイッチング制御が行われる。
【0078】
メモリ部43には、制御パターンに関する情報、及びランプ電圧に応じた各制御パターンの連続実行回数に関する情報が格納されている。制御パターン設定部42は、分圧抵抗Vxからの信号に基づいて、放電ランプ10に印加される電圧(ランプ電圧)を検出し、メモリ部43に格納されている情報に基づいて、実行される制御パターンを設定する。パルス発生回路41は、制御パターン設定部42によって設定された制御パターンに基づいてパルス波Pを出力する。ここでいう「制御パターン」とは、所定の時間内におけるパルス波の形状を示すパターンであり、詳細については後述される。
【0079】
カラーホイール63の色領域の切替タイミングに同期して、制御処理部69が同期信号Sbを出力する仕組みについて、
図3を再度参照して説明する。
【0080】
上述したように、制御処理部69は、DVDプレーヤーやパソコンなどの映像出力機器70からの画像信号を受け付け、画像信号の垂直同期信号Szに応じた回転制御信号Sdをカラーホイール駆動部68へ出力する。カラーホイール駆動部68は、制御処理部69からの回転制御信号Sdに従って、カラーホイール63を一定速度で回転させる。
【0081】
制御処理部69は、更に回転位置検出信号Scに基づいて、放電ランプ10からの光がカラーホイール63内の色領域の境界を通過するタイミング(スポークタイム)に同期させるための同期信号Sbを生成し、点灯装置1に出力する。より詳細には、この同期信号Sbは、パルス発生回路41に供給される(
図5参照)。パルス発生回路41は、この同期信号Sbのタイミングに基づいてパルス波Pの極性を反転させ、DC/AC変換部32を介してランプ電流の極性を反転させる。
【0082】
なお、
図3では、点灯装置1から点灯検出信号Saが制御処理部69に出力される構成としている。これは、点灯装置1が正しく機能していることを制御処理部69に認識させるための信号であるが、必ずしも必須の信号というわけではない。
【0083】
(パルス波形)
以下、パルス発生部4から出力されるパルス波Pの波形について、
図6A〜
図6Fの各図面を参照して説明する。
【0084】
図6A〜
図6Fは、それぞれ本実施形態の点灯装置1が備えるパルス発生部4から出力されるパルス波Pのある時点における波形を模式的に示す図面である。上述したように、パルス発生部4は、制御パターン設定部42によって設定された制御パターンに基づいてパルス波Pを生成する。
図6A〜
図6Fは、それぞれ異なる制御パターンに対応したパルス波Pの波形を示す図面である。以下では、
図6A〜
図6Fに対応する制御パターンを、それぞれ制御パターンA〜Fと呼ぶ。
【0085】
本実施形態では、
図4を参照して説明したように、カラーホイール63が5つの色領域に分割されている場合を想定する。つまり、カラーホイール63が1回転するのに要する時間T1は5つのセグメント期間(sg1〜sg5)に分割され、各セグメント期間の切り替わりタイミングに基づいてパルス波Pの波高値が必要に応じて変化する。なお、各セグメント期間(sg1〜sg5)の長さは、カラーホイール63によって構成される各色領域の面積の比率に応じて変化する。
【0086】
また、本実施形態の構成では、光集光領域72を通過する色毎に、好ましい波高値の比率が設定されている場合が想定されている。例えば、セグメントsg2とセグメントsg4との間でパルス波Pの波高値が異なっているのは、それぞれのセグメントに対応した色に応じた波高値に設定されるためである。このような色ごとの波高値の比率に関する情報は、例えばメモリ部43内に格納されているものとして構わない。
【0087】
図6Aは、ある制御パターン(ここでは「制御パターンA」と呼ぶ)に対応したパルス波Pの波形を示す図面である。本実施形態では、この制御パターンAを初め、制御パターンB〜Fの全てが、カラーホイール63が4回転する間に生成される波形が繰り返される制御態様であるとする。
【0088】
制御パターンAにおいては、時刻t
0〜t
5の間に各セグメント期間(sg1〜sg5)でそれぞれ極性が反転するようなパルス波Pが生成される。次に、時刻t
5〜t
10の間に、時刻t
0〜t
5の間に生成された波形に対して全ての極性を反転させた状態でパルス波Pが生成される。次に、時刻t
10〜t
15の間に、時刻t
0〜t
5の間に生成された波形に対して全ての極性を反転させた状態でパルス波Pが生成される。次に、時刻t
15〜t
20の間に、時刻t
0〜t
5の間に生成された波形と同一のパルス波Pが生成される。以下、この制御パターンAは、このように、カラーホイール63が4回転する間に生成される波形が繰り返される態様である。
【0089】
図6Bに示す制御パターンBのパルス波Pの波形は、
図6Aに示す制御パターンAのパルス波Pの波形と比較して、カラーホイール63が4回転する間に極性が反転する回数(極性反転頻度)が少なくなっている。
【0090】
図6Cに示す制御パターンCのパルス波Pの波形は、
図6Bに示す制御パターンBのパルス波Pの波形と比較して、カラーホイール63が4回転する間に極性が反転する回数(極性反転頻度)が少なくなっている。
【0091】
図6Dに示す制御パターンDのパルス波Pの波形は、
図6Cに示す制御パターンCのパルス波Pの波形と比較して、カラーホイール63が4回転する間に極性が反転する回数(極性反転頻度)が少なくなっている。
【0092】
図6Eに示す制御パターンEのパルス波Pの波形は、
図6Dに示す制御パターンDのパルス波Pの波形と比較して、カラーホイール63が4回転する間に極性が反転する回数(極性反転頻度)が少なくなっている。
【0093】
図6Fに示す制御パターンFのパルス波Pの波形は、
図6Eに示す制御パターンEのパルス波Pの波形と比較して、カラーホイール63が4回転する間に極性が反転する回数(極性反転頻度)が少なくなっている。
【0094】
パルス発生部4は、制御パターン設定部42において設定された制御パターンに基づいてパルス波Pを生成する。このとき、同一種類の制御パターンが所定の回数だけ繰り返された後、異なる制御パターンに遷移される。制御パターン設定部42は、パルス波Pの極性反転頻度が徐々に上昇するように制御パターンの種類を変化させ、極性反転頻度が最大値に達した後は、極性反転頻度が徐々に低下するように制御パターンの種類を変化させる。
【0095】
一例として、ランプ電圧がV1である場合、以下のような態様でパルス波Pが生成される。この繰り返し回数に関する情報は、メモリ部43に格納されている。
【0096】
まず、制御パターンAが50回繰り返し実行される。
次に、制御パターンBが40回繰り返し実行される。
次に、制御パターンCが30回繰り返し実行される。
次に、制御パターンDが20回繰り返し実行される。
次に、制御パターンEが10回繰り返し実行される。
次に、制御パターンFが5回繰り返し実行される。
次に、制御パターンEが10回繰り返し実行される。
次に、制御パターンDが20回繰り返し実行される。
次に、制御パターンCが30回繰り返し実行される。
次に、制御パターンBが40回繰り返し実行される。
次に、制御パターンAが50回繰り返し実行される。
以下、このような制御が繰り返される。
【0097】
このように制御パターンの種類を変化させながらパルス波Pが生成される場合、従来の制御方法と比較して、極性反転の回数の変化を小さくすることができる。そして、このように、極性反転の回数の変化を小さくしながらも、極性が一方向に維持される時間帯を一定の割合で設けることができる。これにより、極性反転の回数が大幅に変化することによるチラツキの視認を抑制しながらも、電極形状の安定化を図ることができる。
【0098】
更に、ランプ電圧がV1よりも高い電圧V2である場合、以下のような態様でパルス波Pが生成される。この繰り返し回数に関する情報は、メモリ部43に格納されている。
【0099】
まず、制御パターンAが5回繰り返し実行される。
次に、制御パターンBが10回繰り返し実行される。
次に、制御パターンCが20回繰り返し実行される。
次に、制御パターンDが30回繰り返し実行される。
次に、制御パターンEが40回繰り返し実行される。
次に、制御パターンFが50回繰り返し実行される。
次に、制御パターンEが40回繰り返し実行される。
次に、制御パターンDが30回繰り返し実行される。
次に、制御パターンCが20回繰り返し実行される。
次に、制御パターンBが10回繰り返し実行される。
次に、制御パターンAが5回繰り返し実行される。
以下、このような制御が繰り返される。
【0100】
ランプ電圧がV1よりも高いV2になると、極性反転の回数が最も少ない制御パターンFの繰り返し回数は増加している。ランプ電圧が高くなっている状況においては、放電ランプ10に投入される電流が低くなるため、ランプ電圧が低い状況と同じ時間だけ同一極性を維持したとしても、十分に電極を溶融することができない可能性がある。そこで、極性が反転する頻度が最も低い制御パターンFについては、電極のトリートメントを確実に行うべく、ランプ電圧が低い場合よりも繰り返し回数を多く設定されている。
【0101】
なお、同様の観点から、全ての制御パターンのうち、極性反転の回数が1/2よりも少ない制御パターンについては、ランプ電圧がV2の場合の繰り返し回数を、ランプ電圧がV1の場合の繰り返し回数よりも多く設定するものとしても構わない。
【0102】
なお、この例では、ランプ電圧がV1よりも高いV2になると、極性反転の回数が最も多い制御パターンAの繰り返し回数を減少させている。これは、極性反転の回数が少ない制御パターンFの登場頻度を高める目的であるが、少なくとも、制御パターンFの繰り返し回数が増加する態様であれば、制御パターンAの繰り返し回数を減少させることは必ずしも必須ではない。同様の観点から、全ての制御パターンのうち、極性反転の回数が1/2以上の制御パターンについては、ランプ電圧がV2の場合の繰り返し回数を、ランプ電圧がV1の場合の繰り返し回数以下に設定しても構わない。
【0103】
メモリ部43は、ランプ電圧と各制御パターンの繰り返し回数との関係を示す情報を、例えばデータテーブルや関数の形で記憶しているものとすることができる。制御パターン設定部42は、検出されるランプ電圧に応じて、各制御パターンの繰り返し回数をメモリ部43から読み出して設定し、この情報をパルス発生回路41に出力する。パルス発生回路41は、制御パターン設定部42によって設定された制御パターンに基づいてパルス波Pを発生させる。例えば、極性反転の回数が最も少ない制御パターンFについては、ランプ電圧が高くなるほど繰り返し回数が増加するように、メモリ部43において記憶されているものとしても構わない。
【0104】
図7Aは、本実施形態の点灯装置によって点灯制御された場合における放電ランプ10から発せられる光の照度変動率を、周波数毎に解析してグラフ化したものである。また、
図7Bは、所定のタイミングで制御パターンAとFを適宜切り替えながら点灯制御した場合における、放電ランプ10から発せられる光の照度変動率を、周波数毎に解析してグラフ化したものである。
図7Bは、一定の時間内における極性反転の頻度が最も多い制御パターンと、最も低い制御パターンとを用いて点灯制御する場合を想定したものであり、従来の制御方法を模擬したものに対応する。いずれの図面も、
図2に示したチラツキ視認臨界変動率のグラフに重ねて図示している。なお、
図7A及び
図7Bにおいては、チラツキ視認臨界変動率のグラフを破線にて示している。
【0105】
いずれの結果も、点灯装置によって点灯された放電ランプから放射された光をスクリーン上に投影し、当該スクリーンの照度をフォトセンサによって計測したものを離散フーリエ変換(DFT)によって周波数解析を行うことで得られたものである。
【0106】
図7Bによれば、比較的視感度が高い周波数領域(5Hz〜20Hz)において、チラツキ視認臨界変動率を超える照度変動率を示している。このことは、照度の変動に起因したチラツキが視認されていることを意味する。これに対し、
図7Aによれば、比較的視感度が高い周波数領域を含む全ての周波数領域において、チラツキ視認臨界変動率より低い照度変動率が示されている。このことは、照度の変動に起因したチラツキが視認されないことを意味する。
【0107】
[別実施形態]
以下、別実施形態について説明する。
【0108】
〈1〉 上述した各制御パターンが示す波形や繰り返し回数、及び制御パターンの種類数はあくまで一例である。少なくとも、同一の時間内における極性反転頻度が異なる3種類以上の制御パターンが存在しており、同一種類の制御パターンを、所定回数だけ繰り返して実行した後、極性反転頻度が最小値から最大値に達するまで低下させることなく増加し、最大値に達した後に最小値に達するまで増加させることなく低下するように、各制御パターンを組み合わせながら実行する態様であれば、本発明の範囲内である。
【0109】
また、各制御パターンが、カラーホイール63が4回転する時間を1単位として設定されているが、この単位時間をどのように設定するかについても任意である。
【0110】
〈2〉 上述した実施形態では、ランプ電圧がV1であるか、V1よりも高いV2であるかによって、少なくともいずれかの制御パターンの繰り返し数が変化する旨を記載した。より詳細には、ランプ電圧がV1よりも高いV2になると、全ての制御パターンのうち、極性反転の回数が1/2以上の制御パターンについては、ランプ電圧がV2の場合の繰り返し回数を、ランプ電圧がV1の場合の繰り返し回数以下に設定するものとしても構わない旨を記載した。
【0111】
ここで、全ての制御パターンのうち、極性反転の回数が1/2以上の制御パターンについては、ランプ電圧が高くなるに連れて、繰り返し回数が減少するものとしても構わない。逆に、全ての制御パターンのうち、極性反転の回数が1/2未満の制御パターンについては、ランプ電圧が高くなるに連れて、繰り返し回数が増加するものとしても構わない。このように設定されることで、ランプ電圧が上昇するに伴って、一対の電極間に同一極性のパルス波が印加される時間が相対的に上昇し、より確実に電極のトリートメントを行うことができる。
【0112】
この場合であっても、極性反転の頻度が最大値になるまで徐々に増加させ、その後、最小値になるまで徐々に減少させる処理内容を繰り返しながら制御パターンが切り替えられるため、従来よりもチラツキとして視認されにくい駆動制御を実現することができる。