(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態にかかるSiC半導体装置の上面レイアウトを模式的に示した図である。
【
図3】第1実施形態にかかるSiC半導体装置の製造工程を示した断面図である。
【
図4】
図3に続くSiC半導体装置の製造工程を示した断面図である。
【
図5】第2実施形態にかかるSiC半導体装置の上面レイアウトを模式的に示した図である。
【
図6】第3実施形態にかかるSiC半導体装置の断面図である。
【
図7】第3実施形態にかかるSiC半導体装置の製造工程を示した断面図である。
【
図8】第3実施形態の変形例で説明するSiC半導体装置の断面図である。
【0014】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0015】
(第1実施形態)
第1実施形態について説明する。ここでは半導体素子で構成されるパワー素子としてトレンチゲート構造の反転型のMOSFETが形成されたSiC半導体装置を例に挙げて説明する。
【0016】
図1に示すSiC半導体装置は、トレンチゲート構造のMOSFETが形成されるセル部と、このセル部を囲む外周部とを有した構成とされている。外周部は、ガードリング部と、ガードリング部よりも内側、つまりセル部とガードリング部との間に配置される繋ぎ部とを有した構成とされている。なお、
図1は断面図ではないが、図を見やすくするために部分的にハッチングを示してある。
【0017】
図2に示すように、SiC半導体装置は、SiCからなるn
+型基板1を用いて形成され、n
+型基板1の主表面上にSiCからなるn
-型ドリフト層2とn型電流分散層2aとp型ベース領域3、および、n
+型ソース領域4が順にエピタキシャル成長させられている。
【0018】
n
+型基板1は、例えばn型不純物濃度が1.0×10
19/cm
3とされ、表面が(0001)Si面とされている。n
-型ドリフト層2は、例えばn型不純物濃度が0.5〜2.0×10
16/cm
3とされている。n型電流分散層2aは、n
-型ドリフト層2よりもn型不純物濃度が高濃度、つまり低抵抗とされており、より広範囲に電流を分散して流すことで、JFET抵抗を低減する役割を果たす。例えば、n型電流分散層2aは、例えば8×10
16/cm
3とされ、厚みが0.5μmとされている。
【0019】
また、p型ベース領域3は、チャネル領域が形成される部分で、p型不純物濃度が例えば2.0×10
17/cm
3程度とされ、厚みが300nmで構成されている。n
+型ソース領域4は、n
-型ドリフト層2よりも高不純物濃度とされ、表層部におけるn型不純物濃度が例えば2.5×10
18〜1.0×10
19/cm
3、厚さ0.5μm程度で構成されている。
【0020】
セル部では、n
+型基板1の表面側においてp型ベース領域3およびn
+型ソース領域4が残されており、ガードリング部では、これらn
+型ソース領域4およびp型ベース領域3を貫通してn型電流分散層2aに達するように凹部20が形成されている。このような構造とすることでメサ構造が構成されている。
【0021】
また、セル部では、n
+型ソース領域4やp型ベース領域3を貫通してn型電流分散層2aに達するようにp型ディープ層5が形成されている。p型ディープ層5は、p型ベース領域3よりもp型不純物濃度が高くされている。具体的には、p型ディープ層5は、n型電流分散層2aに複数本が等間隔に配置され、互いに交点なく離れて配置されたストライプ状のトレンチ5aの間に備えられ、エピタキシャル成長によるp型のエピタキシャル膜によって構成されている。なお、このトレンチ5aがディープトレンチに相当するものであり、例えば幅が1μm以下、アスペクト比が2以上の深さとされている。
【0022】
例えば、各p型ディープ層5は、p型不純物濃度が例えば1.0×10
17〜1.0×10
19cm
3、幅0.7μm、深さ2.0μm程度で構成されている。各p型ディープ層5は、最も深い底部の位置がn型電流分散層2aとn
-型ドリフト層2との境界位置と同じ位置、もしくはそれよりもp型ベース領域3側に位置している。すなわち、p型ディープ層5とn型電流分散層2aとが同じ深さ、もしくはp型ディープ層5よりもn型電流分散層2aの方が深い位置まで形成されている。p型ディープ層5は、
図1に示すようにセル部の一端から他端に渡って形成されている。そして、p型ディープ層5は、後述するトレンチゲート構造と同方向を長手方向として延設され、トレンチゲート構造の両端よりも更にセル部の外側に延設された後述するp型繋ぎ層30とつながっている。
【0023】
p型ディープ層5の延設方向については任意であるが、<11−20>方向に延設し、トレンチ5aのうち長辺を構成している対向する両壁面が同じ(1−100)面となるようにすると、埋込エピ時の成長が両壁面で等しくなる。このため、均一な膜質にできると共に、埋込み不良の抑制効果も得られる。
【0024】
また、p型ベース領域3およびn
+型ソース領域4を貫通してn
-型ドリフト層2に達するように、例えば幅が0.8μm、深さが1.0μmのゲートトレンチ6が形成されている。このゲートトレンチ6の側面と接するように上述したp型ベース領域3およびn
+型ソース領域4が配置されている。ゲートトレンチ6は、
図2の紙面左右方向を幅方向、紙面垂直方向を長手方向、紙面上下方向を深さ方向とするライン状のレイアウトで形成されている。また、
図1に示すように、ゲートトレンチ6は、複数本がそれぞれp型ディープ層5の間に挟まれるように配置され、それぞれが平行に等間隔で並べられることでストライプ状とされている。
【0025】
さらに、p型ベース領域3のうちゲートトレンチ6の側面に位置している部分を、縦型MOSFETの作動時にn
+型ソース領域4とn
-型ドリフト層2との間を繋ぐチャネル領域として、チャネル領域を含むゲートトレンチ6の内壁面にはゲート絶縁膜7が形成されている。そして、ゲート絶縁膜7の表面にはドープドPoly−Siにて構成されたゲート電極8が形成されており、これらゲート絶縁膜7およびゲート電極8によってゲートトレンチ6内が埋め尽くされている。
【0026】
また、n
+型ソース領域4およびp型ディープ層5の表面やゲート電極8の表面には、層間絶縁膜10を介して第1電極に相当するソース電極9や電極パッド部に配置されたゲートパッド31が形成されている。ソース電極9およびゲートパッド31は、複数の金属、例えばNi/Al等にて構成されている。そして、複数の金属のうち少なくともn型SiC、具体的にはn
+型ソース領域4やn型ドープの場合のゲート電極8と接触する部分はn型SiCとオーミック接触可能な金属で構成されている。また、複数の金属のうち少なくともp型SiC、具体的にはp型ディープ層5と接触する部分はp型SiCとオーミック接触可能な金属で構成されている。なお、これらソース電極9およびゲートパッド31は、層間絶縁膜10上に形成されることで電気的に絶縁されている。そして、層間絶縁膜10に形成されたコンタクトホールを通じて、ソース電極9はn
+型ソース領域4およびp型ディープ層5と電気的に接触させられ、ゲートパッド31はゲート電極8と電気的に接触させられている。
【0027】
さらに、n
+型基板1の裏面側にはn
+型基板1と電気的に接続された第2電極に相当するドレイン電極11が形成されている。このような構造により、nチャネルタイプの反転型のトレンチゲート構造のMOSFETが構成されている。そして、このようなMOSFETが複数セル配置されることでセル部が構成されている。
【0028】
一方、ガードリング部では、上記したように、n
+型ソース領域4およびp型ベース領域3を貫通してn型電流分散層2aに達するように凹部20が形成されている。このため、セル部から離れた位置ではn
+型ソース領域4およびp型ベース領域3が除去されて、n型電流分散層2aが露出させられている。そして、n
+型SiC基板1の厚み方向において、凹部20よりも内側に位置するセル部や繋ぎ部が島状に突き出したメサ部となっている。
【0029】
また、凹部20の下方に位置するn型電流分散層2aの表層部には、セル部を囲むように、
図1中では7本記載してあるが、複数本のp型ガードリング21が備えられている。本実施形態の場合、p型ガードリング21を四隅が丸められた四角形状としているが、円形状など他の枠形状で構成されていても良い。p型ガードリング21は、n型電流分散層2aに形成されたトレンチ21a内に配置され、エピタキシャル成長によるp型のエピタキシャル膜によって構成されている。なお、このトレンチ21aがガードリングトレンチに相当するものであり、例えば幅が1μm以下、アスペクト比が2以上の深さとされている。
【0030】
p型ガードリング21を構成する各部は、上記したp型ディープ層5と同様の構成とされている。p型ガードリング21は、上面形状がセル部および繋ぎ部を囲む枠形状のライン状とされている点において、直線状に形成されたp型ディープ層5と異なっているが、他は同様である。すなわち、p型ガードリング21はp型ディープ層5と同様の幅、同様の厚さ、つまり同様の深さとされている。また、各p型ガードリング21の間隔については、等間隔であっても良いが、より内周側、つまりセル部側において電界集中を緩和して等電位線がより外周側に向かうように、p型ガードリング21の間隔がセル部側で狭く外周側に向かうほど大きくされている。
【0031】
なお、図示していないが、必要に応じてp型ガードリング21よりも外周にEQR構造が備えられることにより、セル部を囲む外周耐圧構造が備えられたガードリング部が構成されている。
【0032】
さらに、セル部からガードリング部に至るまでの間を繋ぎ部として、繋ぎ部において、n
-型ドリフト層2の表層部に複数本のp型繋ぎ層30が形成されている。本実施形態の場合、
図1中の破線ハッチングに示すように、セル部を囲むように繋ぎ部が形成されており、さらに繋ぎ部の外側を囲むように、四隅が丸められた四角形状のp型ガードリング21が複数本形成されている。p型繋ぎ層30は、セル部に形成されるp型ディープ層5と平行に複数本並べて配置されており、本実施形態では、隣り合うp型ディープ層5同士の間の間隔と等間隔に配置されている。また、セル部からp型ガードリング21までの距離が離れている場所では、p型ディープ層5からp型繋ぎ層30を延設しており、p型繋ぎ層30の先端からp型ガードリング21までの距離が短くなるようにしている。
【0033】
各p型繋ぎ層30は、n
+型ソース領域4およびp型ベース領域3を貫通してn型ドリフト層2に達するトレンチ30a内に配置され、エピタキシャル成長によるp型のエピタキシャル膜によって構成されている。p型ディープ層5の長手方向におけるセル部とガードリング部との間では、p型繋ぎ層30がp型ディープ層5の先端に繋げられて形成されている。なお、このトレンチ30aが繋ぎトレンチに相当するものであり、例えば幅が1μm以下、アスペクト比が2以上の深さとされている。p型繋ぎ層30は、p型ベース領域3に接触させられていることから、ソース電位に固定される。
【0034】
p型繋ぎ層30を構成する各部は、上記したp型ディープ層5やp型ガードリング21と同様の構成とされており、p型繋ぎ層30の上面形状が直線状とされている点において、枠形状に形成されたp型ガードリング21と異なっているが、他は同様である。すなわち、p型繋ぎ層30は、p型ディープ層5やp型ガードリング21と同様の幅、同様の厚さ、つまり同様の深さとされている。また、各p型繋ぎ層30の間隔については、本実施形態ではセル部におけるp型ディープ層5同士の間隔と等間隔とされているが、異なる間隔であっても良い。
【0035】
このようなp型繋ぎ層30を形成し、かつ、p型繋ぎ層30同士の間を所定間隔、例えばp型ディープ層5と等間隔もしくはそれ以下に設定することで、p型繋ぎ層30の間において等電位線が過剰にせり上がることを抑制できる。これにより、p型繋ぎ層30の間において電界集中が発生する部位が形成されることを抑制でき、耐圧低下を抑制することが可能となる。
【0036】
なお、各p型繋ぎ層30における長手方向の両端、つまりトレンチ30aの両端では、p型繋ぎ層30の上面形状が半円形とされている。トレンチ30aの両端の上面形状を四角形状にしても良いが、角部にn型層が先に形成されることでn型化することがある。このため、p型繋ぎ層30の両端の上面形状を半円形とすることで、n型層が形成される部分を無くすことが可能となる。
【0037】
また、繋ぎ部においても、n
+型ソース領域4の表面に層間絶縁膜10が形成されている。上記したゲートパッド31は、繋ぎ部において、層間絶縁膜10の上に形成されている。
【0038】
このように、セル部とガードリング部との間に繋ぎ部を備えた構造とし、繋ぎ部を幅狭のトレンチ30a内に埋め込まれた複数本のp型繋ぎ層30によって構成している。このため、仮にトレンチ30aを幅広のもので形成する場合には、トレンチ30a内を埋め込むことができないためにp型繋ぎ層30の厚みが薄くなったり、p型繋ぎ層30をエッチバックして平坦化する際に部分的にp型繋ぎ層30が無くなることがある。しかしながら、このようにトレンチ30aを幅狭のもので構成しているため、トレンチ30a内に的確に埋め込まれ、p型繋ぎ層30の厚みが薄くなったり、p型繋ぎ層30が部分的に無くなってしまうことを抑制することが可能となる。その反面、p型繋ぎ層30を複数に分割した構造としていることから、p型繋ぎ層30の間に等電位線がせり上がってくる可能性がある。しかしながら、p型繋ぎ層30同士の間を所定間隔、例えばp型ディープ層5と等間隔もしくはそれ以下とすることで、等電位線の過剰なせり上がりを抑制でき、耐圧低下を抑制できる。
【0039】
さらに、本実施形態では、繋ぎ部からガードリング部に至るようにn
-型ドリフト層2の表層部に、電界緩和層40を形成している。電界緩和層40は、少なくともガードリング部のうちのセル部や繋ぎ部寄りの位置、つまりメサ部と凹部20との境界位置からメサ部の外周方向に形成されていれば良いが、本実施形態では繋ぎ部のうちのガードリング部寄りの位置にも形成されるようにしてある。より詳しくは、電界緩和層40は、ガードリング部のうちのセル部や繋ぎ部寄りの位置から繋ぎ部のうちのガードリング部寄りの位置にかけて全域形成されており、少なくともメサ部を囲む帯状の枠体形状とされている。電界緩和層40のp型不純物濃度は、例えば0.5×10
17/cm
3とされており、p型ディープ層5やp型ガードリング21よりも低不純物濃度とされている。電界緩和層40の厚みについては任意であり、例えば0.5μm程度とされる。
【0040】
上記したように、パワー素子の微細化に伴って、p型ガードリング21の間隔が狭くなるが、n型電流分散層2aを形成すると、JFET抵抗の低減を図ることができる反面、p型ガードリング21の間に電界が入り込み易くなる。このため、p型ガードリング21の間の間隔を狭めることで、p型ガードリング21の間への電界の入り込みを抑制したいが、p型ガードリング21が配置されるトレンチ21aを形成する際のフォトリソグラフィの分解能に伴う縮小化の限界がある。
【0041】
これに対して、電界緩和層40を形成することで、p型ガードリング21の間への電界の入り込みを抑制することができる。なお、ガードリング部内における電界緩和層40の形成範囲については、基本的にはp型ガードリング21の配置間隔やp型ガードリング21とn型電流分散層2aそれぞれの不純物濃度に基づいて決まる。すなわち、p型ガードリング21は、セル部側において電界集中を緩和して等電位線がより外周側に向かうように形成されるが、その配置間隔やp型ガードリング21およびn型電流分散層2aの不純物濃度によって電界の入り込み方が変わってくる。このため、仮に、電界緩和層40が形成されていなければ、p型ガードリング21間への電界が入り込んだときに、その上に形成される層間絶縁膜10まで達すると想定される位置を含むように、電界緩和層40を形成している。
【0042】
以上のような構造により、本実施形態にかかるSiC半導体装置が構成されている。このように構成されるSiC半導体装置は、MOSFETをオンするときには、ゲート電極8への印加電圧を制御することでゲートトレンチ6の側面に位置するp型ベース領域3の表面部にチャネル領域を形成する。これにより、n
+型ソース領域4およびn
-型ドリフト層2を介して、ソース電極9およびドレイン電極11の間に電流を流す。
【0043】
また、MOSFETのオフ時には、高電圧が印加されたとしても、トレンチゲート構造よりも深い位置まで形成されたp型ディープ層5によってゲートトレンチ底部への電界の入り込みが抑制されて、ゲートトレンチ底部での電界集中が緩和される。これにより、ゲート絶縁膜7の破壊が防止される。
【0044】
さらに、繋ぎ部では、等電位線のせり上がりが抑制され、ガードリング部側に向かうようにされる。また、ガードリング部において、p型ガードリング21によって等電位線の間隔が外周方向に向かって広がりながら終端させられるようになり、ガードリング部でも所望の耐圧を得ることができる。
【0045】
そして、少なくともガードリング部における繋ぎ部側に電界緩和層40を備えてあるため、p型ガードリング21の間への電界の入り込みが抑制される。これにより、電界集中が緩和され、電界集中による層間絶縁膜10の破壊が抑制されて、耐圧低下を抑制することが可能となる。したがって、所望の耐圧を得ることが可能なSiC半導体装置とすることができる。
【0046】
続いて、本実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法について
図3〜
図4を参照して説明する。
【0047】
〔
図3(a)に示す工程〕
まず、半導体基板として、n
+型基板1を用意する。そして、このn
+型基板1の主表面上にSiCからなるn
-型ドリフト層2をエピタキシャル成長させたのち、図示しないマスクを用いて、n
-型ドリフト層2の表層部にp型不純物をイオン注入すると共に活性化アニールを行うことで電界緩和層40を形成する。
【0048】
なお、電界緩和層40については、少なくともガードリング部の形成予定位置のうちの繋ぎ部の形成予定位置よりに形成されていれば良いが、ここでは繋ぎ部の形成予定位置内に入り込むように形成するようにしている。
【0049】
〔
図3(b)に示す工程〕
続いて、マスクを除去したのち、n
-型ドリフト層2および電界緩和層40の上に、n型電流分散層2a、p型ベース領域3およびn
+型ソース領域4を順にエピタキシャル成長させる。
【0050】
〔
図3(c)に示す工程〕
次に、n
+型ソース領域4の表面に図示しないマスクを配置し、マスクのうちのp型ディープ層5、p型ガードリング21およびp型繋ぎ層30の形成予定領域を開口させる。そして、マスクを用いてRIE(Reactive Ion Etching)などの異方性エッチングを行うことにより、トレンチ5a、21a、30aを形成する。
【0051】
このとき、上記したように、電界緩和層40を、ガードリング部の形成予定位置のうちのセル部や繋ぎ部の形成予定位置寄りに加えて、繋ぎ部の形成予定位置のうちガードリング部の形成予定位置寄りにも形成している。このため、マスクずれによってトレンチ5a、21a、30aの形成位置がずれたとしても、少なくともガードリング部のうち電界緩和層40を形成しておきたい位置には、的確に電界緩和層40が配置されるようにすることができる。また、電界緩和層40を帯状の枠体形状で形成できることから、微細加工を行う必要なく、容易に形成することができる。
【0052】
〔
図3(d)に示す工程〕
マスクを除去した後、p型層を成膜したのち、p型層のうちn
+型ソース領域4の表面より上に形成された部分が取り除かれるようにエッチバックし、p型ディープ層5、p型ガードリング21およびp型繋ぎ層30を形成する。
【0053】
このとき、埋込エピにより、トレンチ5a、21a、30a内にp型層が埋め込まれることになるが、トレンチ5a、21a、30aを同じ幅で形成していることから、p型層の表面に形状異常が発生したり凹凸が発生することを抑制できる。したがって、各トレンチ5a、21a、30a内にp型層を確実に埋め込むことが可能になると共に、p型層の表面は凹凸が少ない平坦な形状となる。
【0054】
また、エッチバック時には、p型層の表面が凹凸の少ない平坦な形状となっていることから、p型ディープ層5、p型ガードリング21およびp型繋ぎ層30の表面は平坦な状態となる。したがって、この後にトレンチゲート構造を形成するための各種プロセスを行ったときに、所望のゲート形状を得ることが可能となる。また、各トレンチ5a、21a、30a内にp型層が確実に埋め込まれているため、p型繋ぎ層30の厚みが薄くなる等の問題も発生しない。
【0055】
〔
図4(a)に示す工程〕
n
+型ソース領域4などの上に図示しないマスクを形成したのち、マスクのうちのゲートトレンチ6の形成予定領域を開口させる。そして、マスクを用いてRIEなどの異方性エッチングを行うことで、ゲートトレンチ6を形成する。
【0056】
さらに、マスクを除去したのち、再び図示しないマスクを形成し、マスクのうちの凹部20の形成予定領域を開口させる。そして、マスクを用いてRIEなどの異方性エッチングを行うことで凹部20を形成する。これにより、凹部20が形成された位置において、n
+型ソース領域4およびp型ベース領域3を貫通してn型電流分散層2aが露出させられ、n型電流分散層2aの表面から複数本のp型ガードリング21が配置された構造が構成される。
【0057】
なお、ここではゲートトレンチ6と凹部20を別々のマスクを用いた別工程として形成したが、同じマスクを用いて同時に形成することもできる。
【0058】
〔
図4(b)に示す工程〕
マスクを除去した後、例えば熱酸化を行うことによって、ゲート絶縁膜7を形成し、ゲート絶縁膜7によってゲートトレンチ6の内壁面上およびn
+型ソース領域4の表面上を覆う。そして、p型不純物もしくはn型不純物がドープされたPoly−Siをデポジションした後、これをエッチバックし、少なくともゲートトレンチ6内にPoly−Siを残すことでゲート電極8を形成する。
【0059】
〔
図4(c)に示す工程〕
ゲート電極8およびゲート絶縁膜7の表面を覆うように、例えば酸化膜などによって構成される層間絶縁膜10を形成する。そして、層間絶縁膜10の表面上に図示しないマスクを形成したのち、マスクのうち各ゲート電極8の間に位置する部分、つまりp型ディープ層5と対応する部分およびその近傍を開口させる。この後、マスクを用いて層間絶縁膜10をパターニングすることでp型ディープ層5およびn
+型ソース領域4を露出させるコンタクトホールを形成する。
【0060】
〔
図4(d)に示す工程〕
層間絶縁膜10の表面上に例えば複数の金属の積層構造により構成される電極材料を形成する。そして、電極材料をパターニングすることで、ソース電極9およびゲートパッド31を形成する。なお、本図とは異なる断面において各セルのゲート電極8に繋がるゲート引出部が設けられている。その引出部において層間絶縁膜10にコンタクトホールが開けられることで、ゲートパッド31とゲート電極8との電気的接続が行われるようになっている。
【0061】
この後の工程については図示しないが、n
+型基板1の裏面側にドレイン電極11を形成するなどの工程を行うことで、本実施形態にかかるSiC半導体装置が完成する。
【0062】
以上説明したように、本実施形態では、繋ぎ部からガードリング部に至るようにn
-型ドリフト層2の表層部に、電界緩和用の電界緩和層40を形成している。このため、p型ガードリング21の間への電界の入り込みを抑制することができる。これにより、電界集中が緩和され、電界集中による層間絶縁膜10の破壊が抑制されて、耐圧低下を抑制することが可能となる。したがって、所望の耐圧を得ることが可能なSiC半導体装置とすることができる。
【0063】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して電界緩和層40の上面レイアウトを変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0064】
図5に示すように、本実施形態では、電界緩和層40を複数本のライン状としている。より詳しくは、電界緩和層40は、四隅が丸められた四角形状のp型ガードリング21のうちの各辺と対応する位置では、等間隔に当該各辺に対する法線方向に延設されており、四隅と対応する位置ではp型ガードリング21の中心から放射方向に延設されている。すなわち、電界緩和層40をp型ガードリング21に対して直交配置している。
【0065】
このように、電界緩和層40をp型ガードリング21に対して直交配置するようにしても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0066】
また、第1実施形態と比較して電界緩和層40の形成面積が小さくなるため、最小限のp型不純物ドーズによって効果的に電界緩和が行えると共に、イオン注入欠陥による高電圧印加時のリークを最小限に抑えることが可能となる。
【0067】
(第3実施形態)
第3実施形態について説明する。本実施形態は、第1、第2実施形態で説明した電界緩和層40の代わりとなる不純物層を備えるようにしたものであり、その他については第1、第2実施形態と同様であるため、第1、第2実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0068】
図6に示すように、本実施形態では、電界緩和層40の代わりに、ガードリング部内におけるn型電流分散層2a内に、電界緩和層50を形成している。
【0069】
本実施形態では、電界緩和層50は、ガードリング部の全域に形成されている。より詳しくは、電界緩和層50は、ガードリング部において、枠体形状に形成されている。電界緩和層50は、n型電流分散層2aよりもキャリア濃度が低くされたn型層、もしくは、p型ガードリング21よりもキャリア濃度が低くされたp型層で構成されている。すなわち、電界緩和層50内におけるドナー濃度Ndとアクセプタ濃度Naとの差の絶対値が、n型電流分散層2aやp型ガードリング21のキャリア濃度よりも低くされており、例えば|Nd−Na|<0.5×10
17/cm
3とされている。電界緩和層50の厚みについては任意であり、例えば0.5μm程度とされる。
【0070】
また、本実施形態では、電界緩和層50を、p型ガードリング21の厚み内、つまりp型ガードリング21のうちの層間絶縁膜10側となる表面からn
-型ドリフト層2側となる底面までの間に形成してある。ただし、電界緩和層50の形成深さについては、電界緩和層50のうちの層間絶縁膜10側となる上面側がp型ガードリング21の表面よりも深く、かつ、底面よりも浅い位置となっていれば良い。つまり、電界緩和層50のうちのn
-型ドリフト層2側となる下面側については、p型ガードリング21の底面よりも深い位置となっていても良い。
【0071】
このように、ガードリング部においてn型電流分散層2a内に電界緩和層50を形成するようにしている。このような電界緩和層50を形成しても、p型ガードリング21間への電界の入り込みを抑制することができる。したがって、第1、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0072】
次に、本実施形態のSiC半導体装置の製造方法について説明する。なお、本実施形態のSiC半導体装置の製造方法については、ほぼ第1実施形態で説明した
図3および
図4に示すSiC半導体装置の製造方法と同様であるため、異なる部分を主に説明する。
【0073】
〔
図7(a)に示す工程〕
まず、n
+型基板1の主表面上にSiCからなるn
-型ドリフト層2、n型電流分散層2a、p型ベース領域3およびn
+型ソース領域4を順にエピタキシャル成長させる。
【0074】
〔
図7(b)に示す工程〕
次に、
図3(c)、(d)に示す工程と同様の工程を行うことで、トレンチ5a、21a、30aを形成すると共に、トレンチ5a、21a、30a内にp型ディープ層5、p型ガードリング21およびp型繋ぎ層30を形成する。
【0075】
〔
図7(c)に示す工程〕
図示しないマスクを形成し、マスクのうちの凹部20の形成予定領域を開口させる。そして、マスクを用いてRIEなどの異方性エッチングを行うことで凹部20を形成する。これにより、凹部20が形成された位置において、n
+型ソース領域4およびp型ベース領域3を貫通してn型電流分散層2aが露出させられ、n型電流分散層2aの表層部に複数本のp型ガードリング21が配置された構造が構成される。
【0076】
さらに、凹部20の形成時に用いたマスクをそのまま用いて、n型不純物をイオン注入したのち、活性化アニールを行うことで、凹部20内に電界緩和層50を形成する。このときのn型不純物のドーズ量については、上記したように、電界緩和層50のドナー濃度Ndとアクセプタ濃度Naとの差の絶対値について、|Nd−Na|<0.5×10
17/cm
3が成り立つように調整している。
この後、凹部20の形成や電界緩和層50の形成時に用いたマスクを除去したのち、図3(d)に示す工程のうちのゲートトレンチ6の形成工程を行う。
【0077】
〔
図7(d)に示す工程〕
更に
図4(a)以降の各工程を行う。これにより、本実施形態のSiC半導体装置を製造することができる。
【0078】
(第3実施形態の変形例)
上記第3実施形態で説明した電界緩和層50をガードリング部の全域に形成する必要はなく、例えば
図8に示すように、ガードリング部のうちのセル部や繋ぎ部寄りの位置にのみ形成していても良い。さらに、電界緩和層50が繋ぎ部のうちのガードリング部寄りの位置にまで形成してあっても良い。
【0079】
ただし、これらの構造とする場合には、凹部20を形成する際に用いたマスクとは別のマスク、例えばレジストマスクを用いて、電界緩和層50を形成するためのイオン注入を行うことが必要になる。
【0080】
なお、電界緩和層50をガードリング部のうちのセル部や繋ぎ部寄りの位置にのみ形成する場合、電界緩和層50の罫線範囲については、p型ガードリング21の配置間隔やp型ガードリング21とn型電流分散層2aそれぞれの不純物濃度に基づいて決めている。上記したように、p型ガードリング21は、セル部側において電界集中を緩和して等電位線がより外周側に向かうように形成されるが、その配置間隔やp型ガードリング21およびn型電流分散層2aの不純物濃度によって電界の入り込み方が変わってくる。このため、仮に、電界緩和層50が形成されていなければ、p型ガードリング21間への電界が入り込んだときに、その上に形成される層間絶縁膜10まで達すると想定される位置を含むように、電界緩和層50を形成している。
【0081】
(他の実施形態)
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。
【0082】
(1)上記各実施形態では、p型ベース領域3の上にn
+型ソース領域4を連続してエピタキシャル成長させて形成したが、p型ベース領域3の所望位置にn型不純物をイオン注入することでn
+型ソース領域4を形成しても良い。
【0083】
(2)上記各実施形態では、縦型のパワー素子としてnチャネルタイプの反転型のトレンチゲート構造のMOSFETを例に挙げて説明した。しかしながら、上記各実施形態は縦型の半導体素子の一例を示したに過ぎず、半導体基板の表面側に設けられる第1電極と裏面側に設けられる第2電極との間に電流を流す縦型の半導体素子であれば、他の構造もしくは導電型のものであっても良い。
【0084】
例えば、上記第1実施形態等では、第1導電型をn型、第2導電型をp型としたnチャネルタイプのMOSFETを例に挙げて説明したが、各構成要素の導電型を反転させたpチャネルタイプのMOSFETとしても良い。また、上記説明では、半導体素子としてMOSFETを例に挙げて説明したが、同様の構造のIGBTに対しても本発明を適用することができる。IGBTは、上記各実施形態に対してn
+型基板1の導電型をn型からp型に変更するだけであり、その他の構造や製造方法に関しては上記各実施形態と同様である。さらに、縦型のMOSFETとしてトレンチゲート構造のものを例に挙げて説明したが、トレンチゲート構造のものに限らず、プレーナ型のものであっても良い。
【0085】
さらに、MOS構造のパワー素子に限らず、ショットキーダイオードを適用することもできる。具体的には、n
+型基板の主表面上にn
-型ドリフト層が形成されていると共に、その上に第1電極に相当するショットキー電極が形成され、さらにn
+型基板の裏面側に第2電極に相当するオーミック電極が形成されることでショットキーダイオードが構成される。このような構造において、n
-型ドリフト層の表層部から複数本のp型ディープ層が形成されることで、ジャンクションバリアショットキーダイオード(以下、JBSという)が構成される。このようなJBSが備えられるSiC半導体装置においても、第1、第2実施形態で説明した電界緩和層40や第3実施形態で説明した電界緩和層50を備えることで、上記各実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0086】
(3)上記各実施形態では、p型ディープ層5やp型ガードリング21およびp型繋ぎ層30を埋込エピ成長によって形成したが、イオン注入によって形成しても良い。
【0087】
(4)上記各実施形態では、p型ディープ層5やp型繋ぎ層30をn
+型ソース領域4およびp型ベース領域3を貫通するように形成しているが、p型ベース領域3の下方にのみp型ディープ層5やp型繋ぎ層30を形成するようにしても良い。
【0088】
(5)なお、結晶の方位を示す場合、本来ならば所望の数字の上にバー(−)を付すべきであるが、電子出願に基づく表現上の制限が存在するため、本明細書においては、所望の数字の前にバーを付すものとする。