特許第6673232号(P6673232)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社デンソーの特許一覧 ▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社豊田中央研究所の特許一覧

<>
  • 特許6673232-炭化珪素半導体装置 図000002
  • 特許6673232-炭化珪素半導体装置 図000003
  • 特許6673232-炭化珪素半導体装置 図000004
  • 特許6673232-炭化珪素半導体装置 図000005
  • 特許6673232-炭化珪素半導体装置 図000006
  • 特許6673232-炭化珪素半導体装置 図000007
  • 特許6673232-炭化珪素半導体装置 図000008
  • 特許6673232-炭化珪素半導体装置 図000009
  • 特許6673232-炭化珪素半導体装置 図000010
  • 特許6673232-炭化珪素半導体装置 図000011
  • 特許6673232-炭化珪素半導体装置 図000012
  • 特許6673232-炭化珪素半導体装置 図000013
  • 特許6673232-炭化珪素半導体装置 図000014
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6673232
(24)【登録日】2020年3月9日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】炭化珪素半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20200316BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20200316BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20200316BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20200316BHJP
【FI】
   H01L29/78 652C
   H01L29/78 652F
   H01L29/78 652T
   H01L29/06 301M
   H01L29/78 653C
   H01L29/06 301V
   H01L29/06 301G
   H01L29/78 652P
   H01L29/78 652N
   H01L29/78 658E
   H01L29/78 652J
【請求項の数】7
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-6003(P2017-6003)
(22)【出願日】2017年1月17日
(65)【公開番号】特開2018-117017(P2018-117017A)
(43)【公開日】2018年7月26日
【審査請求日】2019年3月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】特許業務法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 有一
(72)【発明者】
【氏名】秋葉 敦也
(72)【発明者】
【氏名】青井 佐智子
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 克己
【審査官】 杉山 芳弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−159271(JP,A)
【文献】 特開2004−281875(JP,A)
【文献】 特開2012−178536(JP,A)
【文献】 特開2014−003191(JP,A)
【文献】 特開2014−236189(JP,A)
【文献】 特開2015−032611(JP,A)
【文献】 KIMOTO, Tsunenobu et al.,Nucleation and step motion in chemical vapor deposition of SiCon 6H-SiC(OOOl) faces,Journal of Applied Physics,米国,AIP,1994年 8月15日,Volume 76, Issue 11,pp.7322-7327,FIG.10(b)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/06
H01L 29/12
H01L 29/78
H01L 21/336
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
裏面側が第1導電型もしくは第2導電型の高濃度不純物層(1)とされていると共に表面側が前記高濃度不純物層よりも低不純物濃度とされた第1導電型のドリフト層(2)とされ、炭化珪素にて構成された半導体基板(1、2)と、
前記ドリフト層(2)の上に形成された第2導電型の炭化珪素からなるベース領域(3)と、
前記ベース領域の上に形成され、前記ドリフト層よりも高不純物濃度の第1導電型の炭化珪素で構成されたソース領域(4)と、
前記ベース領域よりも深く高不純物濃度で構成された第2導電型のディープ層(5、30)と、
前記ソース領域の表面から前記ベース領域よりも深く、かつ、前記ディープ層よりも浅く形成されたゲートトレンチ(6)内に形成され、該ゲートトレンチの内壁面に形成されたゲート絶縁膜(7)と、前記ゲート絶縁膜の上に形成されたゲート電極(8)と、を有し、一方向を長手方向として構成されたトレンチゲート構造と、
前記ベース領域と前記ソース領域および前記ディープ層に電気的に接続されるソース電極(10)と、
前記高濃度不純物層と電気的に接続されるドレイン電極(12)と、を有する縦型の半導体素子を備え、
前記ディープ層は、前記トレンチゲート構造の両側に配置されると共に前記トレンチゲート構造の長手方向に沿って形成されるストライプ状部(5)と、前記トレンチゲート構造の両端に対向して配置される先端対向部(30)とを有して構成され、
前記ベース領域には、前記トレンチゲート構造の両先端のうちの一方と対向する前記先端対向部について、当該先端対向部から前記トレンチゲート構造の先端側に向かってファセット面F(F)が形成されており、当該先端対向部から前記トレンチゲート構造の先端に向かう方向における前記ファセット面Fの長さをファセット長Lとして、当該先端対向部から前記トレンチゲート構造の先端までの距離が前記ファセット長Lよりも長くされている炭化珪素半導体装置。
【請求項2】
前記ドリフト層には、前記ディープ層と対応する位置に凹部(5a、30a)が形成されており、該凹部の底面から前記ディープ層が形成されており、
前記ベース領域は、前記凹部内を含めて前記ドリフト層の上に形成されたエピタキシャル膜によって構成されている請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項3】
前記半導体基板はオフ角を有するオフ基板であり、
前記ベース領域および前記ソース領域の膜厚をt、前記凹部の深さをd、前記オフ角をθとして、
前記ファセット長Lは、L=(t−d)/tanθで表される請求項2に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項4】
前記半導体基板の表面に対する法線方向から見て、前記ディープ層によって囲まれた前記トレンチゲート構造が配置される領域をゲート配置領域(GP)として、
前記ゲート配置領域のうち前記ファセット面Fが形成される側の端部は、前記トレンチゲート構造の配置される位置よりも幅が狭くなっている請求項1ないし3のいずれか1つに記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項5】
前記ゲート配置領域のうち前記ファセット面Fが形成される側の端部は、該ゲート配置領域の先端に向かうに連れて徐々に幅が狭くされている請求項4に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項6】
前記ゲート配置領域のうち前記ファセット面Fが形成される側の先端は鋭角の尖った形状なっている請求項5に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項7】
前記ゲート配置領域のうち前記ファセット面Fが形成される側の端部の幅は前記トレンチゲート構造の幅以上とされている請求項4または5に記載の炭化珪素半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディープ層を有するトレンチゲート構造の炭化珪素(以下、SiCという)半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高い破壊電界強度が得られるSiC半導体装置では、破壊電界強度が高いために高電界が発生し、トレンチゲート構造の素子を形成する場合、特にゲート底部に高電界が発生してしまう。このため、ゲート酸化膜に印加される電界が高くなり、ゲート酸化膜寿命が低下する。これを防ぐ為に、従来では、例えば特許文献1に示すように、トレンチゲートが形成されるトレンチの近傍に電界緩和層となるp型ディープ層を形成し、トレンチゲートに印加される電界を緩和できる構造が適用されている。
【0003】
また、SiC半導体装置では、トレンチゲート構造の素子が形成されるセル部と、セル部の周囲を囲むガードリング部とが備えられ、セル部とガードリング部との間には、これらの間を繋ぐための繋ぎ部が設けられる。そして、繋ぎ部においても、n型ドリフト層の表層部にp型ディープ層を備えることで、セル部内や繋ぎ部内において電界集中することなく等電位線がセル部からガードリング部へ向かって伸ばされ、ガードリング部において終端させられるようにしている。
【0004】
このようなSiC半導体装置において、p型ディープ層の形成方法としてはイオン注入法が挙げられるが、SiCが非常に硬く、イオン注入による飛程が短いことから、p型ディープ層を所望の深さにすることが難しい。このため、従来では、p型ディープ層のイオン注入を行う前に、p型ディープ層の形成予定位置においてn型ドリフト層をエッチングすることで凹部を形成し、それから凹部の底面にp型不純物をイオン注入することも提案されている。このようにすれば、p型ディープ層をより深く形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−101036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
SiC半導体装置では、トレンチゲート構造の長手方向に沿ってp型ディープ層を形成し、p型ディープ層の間にトレンチゲート構造が配置されるような構造とすることもできる。このような構造においては、トレンチゲート構造の両側に配置されるp型ディープ層によってトレンチ底部への電界のせり上がりが抑制される。このため、トレンチ底部での電界集中を緩和でき、ゲート絶縁膜を保護することが可能となる。
【0007】
しかしながら、それに加えてトレンチゲート構造の先端においても電界のせり上がりによる影響を抑制できるようにする必要がある。このため、トレンチゲート構造の両側にp型ディープ層を配置するのに加えて、トレンチゲート構造の先端とオーバラップするようにp型ディープ層を設けることが考えられる。このようにトレンチゲート構造の先端とオーバラップするようにp型ディープ層を設ければ、トレンチゲート構造の先端においても電界のせり上がりによる影響を抑制でき、ゲート絶縁膜を保護することが可能となる。
【0008】
ところが、上記したように、p型ディープ層をより深く形成するために、n型ドリフト層に凹部を形成してからイオン注入することでp型ディープ層を形成する場合、次のような課題が発生し得る。
【0009】
すなわち、p型ディープ層をより深くするために凹部を形成しているため、n型ドリフト層およびp型ディープ層の上にエピタキシャル成長させられるp型ベース領域の表面は平坦面とならない。さらに、エピタキシャル成長面には、凹部を起点としたファセット面が形成される。例えば、SiC基板としてオフ基板が用いられるが、オフ基板のオフ方向に沿ってトレンチゲート構造の長手方向が設定される。その場合、トレンチゲート構造の一方の先端はファセット面と重なり合い、他方の先端はファセット面が無いものの凹部に起因する凹凸と重なり合う状態となる。
【0010】
このため、トレンチゲート構造を形成するためのトレンチの底面は、深さが不均一になり、凹凸による屈曲部が形成される。そして、トレンチの屈曲部においてゲート絶縁膜の膜厚が薄くなって、ゲート絶縁膜の耐圧が得られなくなるという課題が発生する。
【0011】
本発明は上記点に鑑みて、ディープ層を深い位置まで形成できるようにしつつ、ゲート絶縁膜の耐圧を確保することができるSiC半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、請求項1に記載のSiC半導体装置では、裏面側が第1導電型もしくは第2導電型の高濃度不純物層(1)とされていると共に表面側が高濃度不純物層よりも低不純物濃度とされた第1導電型のドリフト層(2)とされ、炭化珪素にて構成された半導体基板(1、2)と、ドリフト層(2)の上に形成された第2導電型の炭化珪素からなるベース領域(3)と、ベース領域の上に形成され、ドリフト層よりも高不純物濃度の第1導電型の炭化珪素で構成されたソース領域(4)と、ベース領域よりも深く高不純物濃度で構成された第2導電型のディープ層(5、30)と、ソース領域の表面からベース領域よりも深く、かつ、ディープ層よりも浅く形成されたゲートトレンチ(6)内に形成され、該ゲートトレンチの内壁面に形成されたゲート絶縁膜(7)と、ゲート絶縁膜の上に形成されたゲート電極(8)と、を有し、一方向を長手方向として構成されたトレンチゲート構造と、ベース領域とソース領域およびディープ層に電気的に接続されるソース電極(10)と、高濃度不純物層と電気的に接続されるドレイン電極(12)と、を有する縦型の半導体素子を備えている。
【0013】
このような構成において、ディープ層は、トレンチゲート構造の両側に配置されると共にトレンチゲート構造の長手方向に沿って形成されるストライプ状部(5)と、トレンチゲート構造の両端に対向して配置される先端対向部(30)とを有して構成され、ベース領域には、トレンチゲート構造の両先端のうちの一方と対向する先端対向部について、当該先端対向部からトレンチゲート構造の先端側に向かってファセット面F(F)が形成されており、当該先端対向部からトレンチゲート構造の先端に向かう方向におけるファセット面Fの長さをファセット長Lとして、当該先端対向部からトレンチゲート構造の先端までの距離がファセット長Lよりも長くされている。
【0014】
このような構成とすることで、ファセット面がトレンチゲート構造の先端とオーバラップしないようにできる。このため、トレンチゲート構造を形成するためのトレンチの底面の深さが均一になり、底面に凹凸が無い状態でゲート絶縁膜を形成できることから、ゲート絶縁膜の膜厚を一定にすることが可能となる。したがって、ディープ層を深い位置まで形成できるようにしつつ、ゲート絶縁膜の耐圧を得ることが可能となる。
【0015】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態にかかるSiC半導体装置の上面レイアウト図である。
図2図1のII-II断面図である。
図3図1中のトレンチゲート構造近傍の部分拡大図である。
図4】トレンチゲート構造の先端とp型ディープ層をオーバラップさせる場合において上面レイアウトと断面におけるトレンチの底面の形状の関係を示した図である。
図5】トレンチゲート構造の先端とp型ディープ層をオーバラップさせない場合において上面レイアウトと断面におけるトレンチの底面の形状の関係を示した図である。
図6図2に示すSiC半導体装置の製造工程を示した断面図である。
図7図6に続くSiC半導体装置の製造工程を示した断面図である。
図8】第2実施形態にかかるSiC半導体装置の製造工程を示した断面図である。
図9】第3実施形態にかかるSiC半導体装置におけるトレンチゲート構造近傍の部分拡大図である。
図10】第4実施形態にかかるSiC半導体装置におけるトレンチゲート構造近傍の部分拡大図である。
図11】第5実施形態にかかるSiC半導体装置におけるトレンチゲート構造近傍の部分拡大図である。
図12】第6実施形態にかかるSiC半導体装置におけるトレンチゲート構造近傍の部分拡大図である。
図13】他の実施形態で説明するSiC半導体装置におけるトレンチゲート構造近傍の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0018】
(第1実施形態)
第1実施形態について説明する。ここでは半導体素子で構成されるパワー素子としてトレンチゲート構造の反転型のMOSFETが形成されたSiC半導体装置を例に挙げて説明する。
【0019】
図1に示すSiC半導体装置は、トレンチゲート構造のMOSFETが形成されるセル部と、このセル部を囲む外周部とを有した構成とされている。外周部は、ガードリング部と、ガードリング部よりも内側、つまりセル部とガードリング部との間に配置される繋ぎ部とを有した構成とされている。なお、図1は断面図ではないが、図を見やすくするために部分的にハッチングを示してある。
【0020】
図2に示すように、SiC半導体装置は、SiCからなるn+型基板1を用いて形成され、n+型基板1の主表面上にSiCからなるn-型ドリフト層2とp型ベース領域3がエピタキシャル成長されたエピタキシャル膜として形成されている。さらに、p型ベース領域3の上にn+型ソース領域4が形成されている。n+型ソース領域4については、エピタキシャル成長によって形成したエピタキシャル膜であっても良いが、本実施形態ではイオン注入によって形成している。
【0021】
+型基板1は、例えばn型不純物濃度が1.0×1019/cm3とされ、表面が(0001)Si面で、オフ方向が<11−20>方向のオフ基板とされている。n-型ドリフト層2は、例えばn型不純物濃度が0.5〜2.0×1016/cm3とされている。なお、ここではn-型ドリフト層2の上にp型ベース領域3が直接配置される構造としているが、n-型ドリフト層2の上にn型電流分散層を介してp型ベース領域3が形成される構造でも良い。n型電流分散層は、n-型ドリフト層2よりもn型不純物濃度が高濃度、つまり低抵抗とされる層である。このn型電流分散層を備えるようにすると、より広範囲に電流を分散して流すことが可能となり、JFET抵抗を低減することが可能になる。
【0022】
また、p型ベース領域3は、チャネル領域が形成される部分で、p型不純物濃度が例えば2.0×1017/cm3程度とされ、厚みが300nmで構成されている。p型ベース領域3の表層部、つまりn+型ソース領域4に挟まれた場所には、部分的にp型不純物が高濃度とされたp型コンタクト領域3aが形成されている。n+型ソース領域4は、n-型ドリフト層2よりも高不純物濃度とされ、表層部におけるn型不純物濃度が例えば2.5×1018〜1.0×1019/cm3、厚さ0.5μm程度で構成されている。
【0023】
セル部では、n+型基板1の表面側においてp型ベース領域3およびn+型ソース領域4が残されており、ガードリング部では、p型ベース領域3を貫通してn-型ドリフト層2に達するように凹部20が形成されている。このような構造とすることでメサ構造が構成されている。
【0024】
また、セル部では、n-型ドリフト層2の表層部に、p型ベース領域3よりもp型不純物濃度が高くされたp型ディープ層5が形成されている。より詳しくは、p型ディープ層5の形成予定位置においてn-型ドリフト層2の表面をエッチングすることで形成した凹部5aの底面に対し、p型不純物をイオン注入することでp型ディープ層5が形成されている。凹部5aの深さは、例えば0.3〜0.6μmとされており、p型ディープ層5はそれよりも深い位置に形成されている。
【0025】
p型ディープ層5は、n-型ドリフト層2内に複数本が等間隔に配置され、互いに交点なく離れて配置されることでストライプ状とされており、ストライプ状部を構成している。上記したp型ベース領域3およびn+型ソース領域4は、このp型ディープ層5の上に形成されている。
【0026】
各p型ディープ層5は、同じ不純物濃度、同じ幅、かつ、同じ深さで形成されており、例えば、p型不純物濃度が1.0×1017〜1.0×1019cm3、幅0.7μm、深さ2.0μm程度で構成されている。各p型ディープ層5は、図1に示すようにセル部の一端から他端に渡って形成されている。そして、p型ディープ層5は、後述するトレンチゲート構造と同方向を長手方向として延設され、トレンチゲート構造の両端よりも更にセル部の外側に延設された後述する繋ぎ部のp型ディープ層30とつながっている。
【0027】
p型ディープ層5の延設方向、すなわち凹部5aの延設方向については任意であるが、本実施形態では、オフ方向と同じ<11−20>方向としてある。このような方向にp型ディープ層5を延設すると、凹部5aのうち長辺を構成している対向する両壁面が同じ(1−100)面となるようにでき、埋込エピ時の成長が両壁面で等しくなる。このため、凹部5aを埋め込むように形成されるp型ベース領域3を均一な膜質にできると共に、埋込み不良の抑制効果も得られる。
【0028】
なお、p型ディープ層5は、n-型ドリフト層2の上に直接p型ベース領域3を形成するときには、n-型ドリフト層2に形成されるが、n-型ドリフト層2の上にn型電流分散層を介してp型ベース領域3を形成する場合には、n型電流分散層に形成される。その場合、p型ベース領域3の底部がn型電流分散層よりも浅くなるように、つまりp型ベース領域3の底部とn-型ドリフト層2との間にn型電流分散層が残るような構造とされると、その部分でも電流分散が行われるため好ましい。
【0029】
また、p型ベース領域3およびn+型ソース領域4を貫通してn-型ドリフト層2に達し、かつ、p型ディープ層5よりも浅くなるように、例えば幅が0.8μm、深さが1.0μmのゲートトレンチ6が形成されている。このゲートトレンチ6の側面と接するように上述したp型ベース領域3およびn+型ソース領域4が配置されている。ゲートトレンチ6は、図2の紙面左右方向を幅方向、紙面垂直方向を長手方向、紙面上下方向を深さ方向とするライン状のレイアウトで形成されている。また、図1に示すように、ゲートトレンチ6は、複数本がそれぞれp型ディープ層5の間に挟まれるように配置され、それぞれが平行に等間隔で並べられることでストライプ状とされている。
【0030】
さらに、p型ベース領域3のうちゲートトレンチ6の側面に位置している部分を、縦型MOSFETの作動時にn+型ソース領域4とn-型ドリフト層2との間を繋ぐチャネル領域として、チャネル領域を含むゲートトレンチ6の内壁面にはゲート絶縁膜7が形成されている。そして、ゲート絶縁膜7の表面にはドープドPoly−Siにて構成されたゲート電極8が形成されており、これらゲート絶縁膜7およびゲート電極8によってゲートトレンチ6内が埋め尽くされている。これにより、トレンチゲート構造が構成されている。なお、図1では、図を見やすくするためにトレンチゲート構造およびp型ディープ層5の数を減らして記載してあるが、実際には同様の構造が多数配置されている。
【0031】
トレンチゲート構造の先端は、後述するp型ディープ層30から所定距離離れされている。このため、トレンチゲート構造は、p型ディープ層5とp型ディープ層30とによって囲まれた領域(以下、ゲート配置領域という)GP内に配置された状態となっている。本実施形態の場合は、トレンチゲート構造の両先端からp型ディープ層30までの距離が等しくされている。このトレンチゲート構造の両先端からp型ディープ層30までの距離については、後で詳細に説明する。
【0032】
また、n+型ソース領域4およびp型ディープ層5の表面やゲート電極8の表面には、層間絶縁膜10を介して第1電極に相当するソース電極9や電極パッド部に配置されたゲートパッド31が形成されている。ソース電極9およびゲートパッド31は、複数の金属、例えばNi/Al等にて構成されている。そして、複数の金属のうち少なくともn型SiC、具体的にはn+型ソース領域4やn型ドープの場合のゲート電極8と接触する部分はn型SiCとオーミック接触可能な金属で構成されている。また、複数の金属のうち少なくともp型SiC、具体的にはp型ディープ層5と接触する部分はp型SiCとオーミック接触可能な金属で構成されている。なお、これらソース電極9およびゲートパッド31は、層間絶縁膜10上に形成されることで電気的に絶縁されている。そして、層間絶縁膜10に形成されたコンタクトホールを通じて、ソース電極9はn+型ソース領域4およびp型コンタクト領域3aと電気的に接触させられ、ゲートパッド31はゲート電極8と電気的に接触させられている。
【0033】
さらに、n+型基板1の裏面側にはn+型基板1と電気的に接続された第2電極に相当するドレイン電極11が形成されている。このような構造により、nチャネルタイプの反転型のトレンチゲート構造のMOSFETが構成されている。そして、このようなMOSFETが複数セル配置されることでセル部が構成されている。
【0034】
一方、ガードリング部では、上記したように、p型ベース領域3を貫通してn-型ドリフト層2に達するように凹部20が形成されている。このため、セル部から離れた位置ではn+型ソース領域4およびp型ベース領域3が除去されて、n-型ドリフト層2が露出させられている。そして、n+型SiC基板1の厚み方向において、凹部20よりも内側に位置するセル部や繋ぎ部が島状に突き出したメサ部となっている。
【0035】
また、凹部20の下方に位置するn-型ドリフト層2の表層部には、セル部を囲むように、複数本のp型ガードリング21が備えられている。本実施形態の場合、p型ガードリング21を四隅が丸められた四角形状としているが、円形状など他の枠形状で構成されていても良い。p型ガードリング21は、n-型ドリフト層2に形成された凹部21aの底面に対し、p型不純物をイオン注入することで形成されている。凹部21aは、メサ部を形成するための凹部20の深さ次第では無くなっている可能性もあるが、図2では残っている場合を図示してある。また、凹部21aが残っている場合、凹部21a内には、p型ベース領域3の一部が残った状態となる。
【0036】
p型ガードリング21を構成する各部は、上記したp型ディープ層5と同様の構成とされている。p型ガードリング21は、上面形状がセル部および繋ぎ部を囲む枠形状のライン状とされている点において、直線状に形成されたp型ディープ層5と異なっているが、他は同様である。すなわち、p型ガードリング21はp型ディープ層5と同様の不純物濃度、同様の幅、同様の深さとされている。また、各p型ガードリング21の間隔については、等間隔であっても良いが、より内周側、つまりセル部側において電界集中を緩和して等電位線がより外周側に向かうように、p型ガードリング21の間隔がセル部側で狭く外周側に向かうほど大きくされている。
【0037】
なお、図示していないが、必要に応じてp型ガードリング21よりも外周にEQR構造が備えられることにより、セル部を囲む外周耐圧構造が備えられたガードリング部が構成されている。
【0038】
さらに、セル部からガードリング部に至るまでの間を繋ぎ部として、繋ぎ部において、n-型ドリフト層2の表層部にp型ディープ層30が形成されている。p型ディープ層30は、p型ベース領域3に接触させられていることから、ソース電位に固定される。本実施形態の場合、図1中の実線ハッチングに示したように、繋ぎ部がセル部を囲むように形成されており、さらにこの繋ぎ部の外側を囲むように、四隅が丸められた四角形状のp型ガードリング21が複数本形成されている。p型ディープ層30は、この繋ぎ部とされる実線ハッチング部分に形成されており、セル部に形成されるp型ディープ層5と連結されている。このため、図1および図3に示すように、p型ディープ層30はトレンチゲート構造の両先端と対向して配置される先端対向部を構成し、p型ディープ層5と共にトレンチゲート構造を囲んでいる。また、p型ディープ層30は、p型ベース領域3に接触させられていることから、ソース電位に固定される。
【0039】
各p型ディープ層30は、n-型ドリフト層2の表面に形成された凹部30aの底面に対し、p型不純物をイオン注入することで形成されている。p型ディープ層30の不純物濃度や深さは、上記したp型ディープ層5やp型ガードリング21と同様とされている。
【0040】
本実施形態では、p型ディープ層30は、トレンチゲート構造の両先端と対向する辺が丸められている。このため、ゲート配置領域GPは、先端が丸められたライン状となっている。そして、p型ディープ層30とトレンチゲート構造の先端との距離が、ファセット面Fの形成範囲を考慮して設定されている。以下、このp型ディープ層30とトレンチゲート構造の先端との距離について説明する。
【0041】
本実施形態のように、n+型基板1としてオフ方向が<11−20>方向のオフ基板を用い、かつ、p型ディープ層5を形成するための凹部5aの延設方向もオフ方向と同じ<11−20>方向とした場合、ファセット面Fは、ゲート配置領域GPの一端に形成される。図3中において実線ハッチングで示した部分がファセット面Fである。ファセット面Fは、エピタキシャル成長の面方向依存性に起因して形成される。具体的には、凹部5aのうち<11−20>方向を法線方向とする面の一面と対応する位置において、p型ディープ層5の表面に、オフ方向に沿って傾斜するようにファセット面Fが形成される。
【0042】
このファセット面Fの形成範囲は、p型ディープ層5およびn-型ドリフト層2の上に形成されるp型ベース領域3およびn+型ソース領域4の膜厚とn+型基板1のオフ角および凹部5aの深さによって決まり、計算によって求めることができる。具体的には、p型ディープ層30からトレンチゲート構造の先端に向かう方向、本実施形態の場合はオフ方向におけるファセット面Fの長さをファセット長Lとする。このファセット長Lは、p型ベース領域3およびn+型ソース領域4の膜厚tと、オフ角θおよび凹部5aの深さdとに基づいて次式のように算出される。
【0043】
(数1) ファセット長L=(t−d)/tanθ
このように求められるファセット長Lに基づき、p型ディープ層30とトレンチゲート構造の先端との距離については、n+型基板1の表面に対する法線方向から見て、ファセット面Fがトレンチゲート構造の先端とオーバラップしない長さに設定してある。例えば、膜厚tが0.8μm、オフ角θが4°、凹部5aのエッチング量が0.4μmである場合、ファセット長Lは6μm程度になる。
【0044】
なお、ここでいうp型ディープ層30とトレンチゲート構造の先端との距離とは、トレンチゲート構造の長手方向に沿う中心線上において、p型ディープ層30のうち当該中心線と交差する点からトレンチゲート構造の先端までの距離を意味している。
【0045】
また、ファセット面Fは、オフ方向に沿って形成され、オフ方向の上流側が凹部5aで下流側が突き出した形状となる位置で形成され、オフ方向の上流側が突き出した形状で下流側が凹部5aとなる位置では形成されない。このため、本実施形態の場合、ファセット面Fは、ゲート配置領域GPのうちの図3中の紙面左側の端部に形成され、紙面右側の端部には形成されない。しかしながら、本実施形態の場合は、トレンチゲート構造を中心として、トレンチゲート構造の長手方向においてゲート配置領域GPが対称形状となるように、トレンチゲート構造の両先端からp型ディープ層30までの距離を一致させてある。
【0046】
このようなp型ディープ層30を形成し、かつ、p型ディープ層5同士の間を所定間隔に設定することで、これらに囲まれた領域、すなわちゲート配置領域GPにおいて等電位線が過剰にせり上がることを抑制できる。これにより、p型ディープ層30の間において電界集中が発生する部位が形成されることを抑制でき、耐圧低下を抑制することが可能となる。
【0047】
また、上記したように、各p型ディープ層30のうちトレンチゲート構造の両先端と対向する辺が丸められていることから、ゲート配置領域GPの上面形状は先端が丸められたライン状とされている。ゲート配置領域GPの両端の上面形状を四角形状にしても良いが、角部において電界集中が生じる可能性がある。このため、本実施形態のようにゲート配置領域GPの形状を先端を丸めた形状とすることで、電界集中を緩和することが可能となる。
【0048】
さらに、繋ぎ部においても、n+型ソース領域4の表面に層間絶縁膜10が形成されている。上記したゲートパッド31は、繋ぎ部において、層間絶縁膜10の上に形成されている。
【0049】
このように、セル部とガードリング部との間に繋ぎ部を備えた構造とし、繋ぎ部にp型ディープ層30を形成することで、トレンチゲート構造の両側に配置されるp型ディープ層5と連結している。これにより、ゲート配置領域GPにおいて等電位線が過剰にせり上がることを抑制しつつ、等電位線がセル部からガードリング部に向かって伸ばされ、ガードリング部において終端させられるようにすることができる。
【0050】
以上のような構造により、本実施形態にかかるSiC半導体装置が構成されている。このように構成されるSiC半導体装置は、MOSFETをオンするときには、ゲート電極8への印加電圧を制御することでゲートトレンチ6の側面に位置するp型ベース領域3の表面部にチャネル領域を形成する。これにより、n+型ソース領域4およびn-型ドリフト層2を介して、ソース電極9およびドレイン電極11の間に電流を流す。
【0051】
また、MOSFETのオフ時には、高電圧が印加されたとしても、トレンチゲート構造よりも深い位置まで形成されたp型ディープ層5およびp型ディープ層30によってゲートトレンチ底部への電界の入り込みが抑制される。このため、ゲートトレンチ底部での電界集中が緩和される。これにより、ゲート絶縁膜7の破壊が防止される。
【0052】
さらに、p型ディープ層30とトレンチゲート構造の先端との距離について、n+型基板1の表面に対する法線方向から見て、ファセット面Fがトレンチゲート構造の先端とオーバラップしない長さに設定してある。このため、トレンチゲート構造を形成するためのトレンチ6の底面の深さが均一になり、底面に凹凸が無い状態でゲート絶縁膜7を形成できることから、ゲート絶縁膜7の膜厚を一定にすることが可能となる。これについて、図4および図5を用いて説明する。
【0053】
図4は、従来のようにトレンチゲート構造の先端がp型ディープ層30とオーバラップするようにレイアウトした場合の各部の関係を示している。また、図5は、本実施形態のように、トレンチゲート構造の先端がファセット面Fとオーバラップしないようにレイアウトした場合の各部の関係を示している。
【0054】
図4および図5に示すように、凹部30aを形成した場合、オフ方向に沿ってファセット面Fが形成されることから、トレンチゲート構造のうち図中左側の先端が位置する部分において、p型ベース領域3やn+型ソース領域4の表面には凹凸が形成されることになる。
【0055】
そして、図4に示すように、トレンチゲート構造の先端がp型ディープ層30とオーバラップするようにレイアウトした場合、ファセット面Fとオーバラップするようにトレンチゲート構造の先端が配置されることになる。このため、トレンチ6の底部は、図中太線で示したようにn+型ソース領域4の表面と同じ形状となり、ファセット面Fと同様の凹凸を有した形状となる。よって、トレンチ6内にゲート絶縁膜7を形成した場合に、図中の点A1、A2で示した屈曲部やその近傍においてゲート絶縁膜7の膜厚が薄くなり、ゲート絶縁膜7の耐圧が得られなくなる。
【0056】
また、トレンチゲート構造のうち図中右側の先端が位置する部分についても、凹部30aが形成されることに起因して、p型ベース領域3やn+型ソース領域4の表面に凹凸が形成される。このため、トレンチゲート構造の先端がp型ディープ層30とオーバラップするようにレイアウトした場合、トレンチ6の底部は、図中破線で示したようにn+型ソース領域4の表面と同じ形状となり、凹部30aに対応する凹凸を有した形状となる。よって、トレンチ6内にゲート絶縁膜7を形成した場合に、図中の点A3で示した屈曲部やその近傍においてゲート絶縁膜7の膜厚が薄くなり、ゲート絶縁膜7の耐圧が得られなくなる。
【0057】
したがって、従来のようにトレンチゲート構造の先端がp型ディープ層30とオーバラップするようにレイアウトした場合には、ゲート絶縁膜7の耐圧が得られなくなる。
【0058】
一方、図5に示すように、トレンチゲート構造の先端がファセット面Fとオーバラップしないようにする場合、トレンチ6は、図中破線で示したようにn+型ソース領域4の表面が平坦となった位置に形成されることになる。
【0059】
また、トレンチゲート構造のうち図中右側の先端が位置する部分についても、凹部30aが形成されることに起因して、p型ベース領域3やn+型ソース領域4の表面に凹凸が形成される。しかしながら、トレンチゲート構造の先端をp型ディープ層30から離しているため、トレンチ6を形成する位置ではp型ベース領域3やn+型ソース領域4の表面が平坦になっている。
【0060】
このため、トレンチ6の底部も平坦な形状となる。よって、トレンチ6内にゲート絶縁膜7を形成した場合に、平坦な形状の上に形成されたゲート絶縁膜7の膜厚は均一なものとなる。よって、ゲート絶縁膜7の耐圧を得ることが可能となる。
【0061】
参考として、実験により、一般的にゲート絶縁膜の耐圧試験として用いられているTZDB(Time Zero Dielectric Break down)試験や高温逆バイアス試験を行ったが、ゲート絶縁膜7の破壊は見られなかった。このため、この実験結果からも、上記効果が得られていることが分かる。
【0062】
続いて、本実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法について図6図7を参照して説明する。
【0063】
図6(a)に示す工程〕
まず、半導体基板として、n+型基板1の主表面上にSiCからなるn-型ドリフト層2をエピタキシャル成長させたものを用意する。
【0064】
図6(b)に示す工程〕
続いて、マスク40を配置し、p型ディープ層5やp型ディープ層30およびp型ガードリング21の形成予定領域においてマスク40を開口させる。そして、マスク40を用いてRIE(Reactive Ion Etching)などの異方性エッチングを行うことにより、凹部5a、21a、30aを形成する。さらに、マスク40を用いてp型不純物をイオン注入する。これにより、p型ディープ層5とp型ディープ層30およびp型ガードリング21が形成される。
【0065】
図6(c)に示す工程〕
マスク40を除去した後、p型ディープ層5とp型ディープ層30およびp型ガードリング21の上を含めて、n-型ドリフト層2の上にp型ベース領域3をエピタキシャル成長させる。このとき、図6および図7中には記載していないが、図5に示したように、凹部30aが形成されることに起因して、p型ディープ層30の表面にファセット面Fが形成される。
【0066】
図6(d)に示す工程〕
p型ディープ層30の上に図示しないマスクを配置したのち、マスクのうちn+型ソース領域4の形成予定領域を開口させる。そして、そのマスクを用いてn型不純物をイオン注入することでn+型ソース領域4を形成する。さらに、マスクを除去したのち、改めて図示しないマスクを配置し、マスクのうちのp型コンタクト領域3aの形成予定領域を開口させる。そして、そのマスクを用いてp型不純物をイオン注入することでp型コンタクト領域3aを形成する。
【0067】
図7(a)に示す工程〕
+型ソース領域4やp型ベース領域3などの上に図示しないマスクを形成したのち、マスクのうちのゲートトレンチ6の形成予定領域を開口させる。そして、マスクを用いてRIEなどの異方性エッチングを行うことで、p型ディープ層5よりも浅い深さのゲートトレンチ6を形成する。
【0068】
さらに、マスクを除去したのち、再び図示しないマスクを形成し、マスクのうちの凹部20の形成予定領域を開口させる。そして、マスクを用いてRIEなどの異方性エッチングを行うことで凹部20を形成する。これにより、凹部20が形成された位置において、n+型ソース領域4およびp型ベース領域3を貫通してn-型ドリフト層2が露出させられ、n-型ドリフト層2の表面から複数本のp型ガードリング21が配置された構造が構成される。
【0069】
なお、ここではゲートトレンチ6と凹部20を別々のマスクを用いた別工程として形成したが、同じマスクを用いて同時に形成することもできる。
【0070】
図7(b)に示す工程〕
マスクを除去した後、例えば熱酸化を行うことによって、ゲート絶縁膜7を形成し、ゲート絶縁膜7によってゲートトレンチ6の内壁面上およびn+型ソース領域4の表面上を覆う。そして、p型不純物もしくはn型不純物がドープされたPoly−Siをデポジションした後、これをエッチバックし、少なくともゲートトレンチ6内にPoly−Siを残すことでゲート電極8を形成する。
【0071】
図7(c)に示す工程〕
ゲート電極8およびゲート絶縁膜7の表面を覆うように、例えば酸化膜などによって構成される層間絶縁膜10を形成する。そして、層間絶縁膜10の表面上に図示しないマスクを形成したのち、マスクのうち各ゲート電極8の間に位置する部分、つまりp型コンタクト領域3aと対応する部分およびその近傍を開口させる。この後、マスクを用いて層間絶縁膜10をパターニングすることでp型コンタクト領域3aおよびn+型ソース領域4を露出させるコンタクトホールを形成する。
【0072】
図7(d)に示す工程〕
層間絶縁膜10の表面上に例えば複数の金属の積層構造により構成される電極材料を形成する。そして、電極材料をパターニングすることで、ソース電極9およびゲートパッド31を形成する。なお、本図とは異なる断面において各セルのゲート電極8に繋がるゲート引出部が設けられている。その引出部において層間絶縁膜10にコンタクトホールが開けられることで、ゲートパッド31とゲート電極8との電気的接続が行われるようになっている。
【0073】
この後の工程については図示しないが、n+型基板1の裏面側にドレイン電極11を形成するなどの工程を行うことで、本実施形態にかかるSiC半導体装置が完成する。
【0074】
以上説明したように、本実施形態では、n+型基板1の表面に対する法線方向から見て、ファセット面Fがトレンチゲート構造の先端とオーバラップしないようにしている。このため、トレンチゲート構造を形成するためのトレンチ6の底面の深さが均一になり、底面に凹凸が無い状態でゲート絶縁膜7を形成できることから、ゲート絶縁膜7の膜厚を一定にすることが可能となる。したがって、p型ディープ層5やp型ディープ層30を深い位置まで形成できるようにしつつ、ゲート絶縁膜7の耐圧を得ることが可能となる。
【0075】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して製造方法を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分について主に説明する。
【0076】
図8を参照して、本実施形態にかかるSiC半導体装置の製造方法について説明する。まず、図8(a)、(b)に示す工程として、第1実施形態で説明した図6(a)、(b)と同様の工程を行う。そして、図8(c)に示す工程として、p型ベース領域3の表面にn+型ソース領域4をエピタキシャル成長させる。この後、図8(d)に示す工程として、n+型ソース領域4の表面に図示しないマスクを配置したのち、p型コンタクト領域3aの形成予定領域においてマスクを開口させる。そして、マスクを用いてRIE等の異方性エッチングを行うことでn+型ソース領域4を部分的に除去し、p型ベース領域3を露出させる。さらに、マスクを用いてp型不純物をイオン注入する。これにより、p型コンタクト領域3aが形成される。
【0077】
この後は図7(a)〜(d)と同様の工程を行うことにより、第1実施形態と同様の構成のSiC半導体装置が完成する。このように、n+型ソース領域4をp型ベース領域3の上にエピタキシャル成長させることによって形成しても良い。
【0078】
(第3実施形態)
第3実施形態について説明する。本実施形態は、第1、第2実施形態に対してゲート配置領域GPの形状を変更したものであり、その他については第1、第2実施形態と同様であるため、第1、第2実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0079】
図9に示すように、本実施形態では、トレンチゲート構造の長手方向において、トレンチゲート構造を中心としたゲート配置領域GPの形状が非対称形状となっている。具体的には、ファセット面Fが形成される側におけるトレンチゲート構造の先端については、p型ディープ層30とトレンチゲート構造の先端との距離をファセット長L以上としている。そして、もう一方の先端については、p型ディープ層30から離れるようにしているだけで、p型ディープ層30との距離がファセット長Lよりも短くなっている。
【0080】
上記したように、ファセット面Fは、トレンチゲート構造の一方の先端と対応する位置に形成されるだけであり、もう一方の先端と対応する位置には形成されない。したがって、少なくともファセット面Fが形成される側において、p型ディープ層30とトレンチゲート構造の先端との距離をファセット長L以上とし、もう一方の先端はp型ディープ層30から離れていれば、トレンチ6の底面を平坦にすることができる。
【0081】
このように、トレンチゲート構造の長手方向において、トレンチゲート構造を中心としたゲート配置領域GPの形状が非対称形状となっていても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、このようなレイアウトとする場合、チャネルが形成されない無効領域を縮小できることから、SiC半導体装置が形成されるチップの面積に対する有効面積の割合を高めることが可能となり、低オン抵抗化を図ることも可能となる。
【0082】
(第4実施形態)
第4実施形態について説明する。本実施形態は、第1〜第3実施形態に対してゲート配置領域GPの形状を変更したものであり、その他については第1〜第3実施形態と同様であるため、第1〜第3実施形態と異なる部分についてのみ説明する。なお、ここでは第3実施形態のように、ゲート配置領域GPが非対称形状となるレイアウトについて本実施形態の構造を適用する場合を例に挙げて説明する。
【0083】
図10に示すように、本実施形態では、ゲート配置領域GPのうちファセット面Fが形成される側の端部について、p型ディープ層5の幅を広くすることで、ゲート配置領域GPの幅が狭められている。より詳しくは、ゲート配置領域GPのうちファセット面Fが形成される側の先端(以下、ファセット側先端という)が鋭角となるように、トレンチゲート構造の先端からファセット側先端に至るまで徐々にゲート配置領域GPの幅が狭められている。n+型基板1の表面に対する法線方向から見て、オフ方向に対してp型ディープ層5が直線状に傾斜させられることで、ゲート配置領域GPの幅が変化させられている。
【0084】
ゲート配置領域GPは、p型ディープ層5およびp型ディープ層30によって囲まれていることから、電界の過剰なせり上がりを抑制することが可能となる。しかしながら、トレンチゲート構造が形成されている領域では、ゲート電極8等による電界の押し返し効果によって電界の過剰なせり上がりをより抑制できるものの、形成されていない領域では形成されている領域と比較すれば電界のせり上がりが大きくなる。
【0085】
実際、オフ時にはトレンチゲート構造が形成されていない領域での電界が相対的に大きくなり、設計によってはこの位置でブレークダウンが生じて耐圧低下を発生させていることが発光解析により明らかになった。そのため、この現象を確認する目的でシミュレーションを行ったところ、トレンチゲート構造が形成されていない位置において、p型ディープ層5の底部の角部で電界強度が高くなっており、この位置でブレークダウンが生じて耐圧低下を発生させる可能性があることが分かった。
【0086】
したがって、本実施形態のように、ファセット側先端において、ゲート配置領域GPの幅を狭くすることで、トレンチゲート構造が配置されていない領域での電界のせり上がりを更に抑制することが可能となる。これにより、トレンチゲート構造の先端とp型ディープ層30とをオーバラップさせていないことによる電界の過剰なせり上がりを抑制でき、SiC半導体装置の更なる耐圧向上を図ることが可能となる。
【0087】
なお、ここでは第3実施形態のように、ゲート配置領域GPが非対称形状となるレイアウトについて本実施形態の構造を適用する場合を例に挙げたが、第1、第2実施形態のような対称形状となるレイアウトについても適用可能である。その場合、ゲート配置領域GPのうちファセット側先端と反対側の先端についても、ファセット側先端と同様の形状とすればよい。
【0088】
(第5実施形態)
第5実施形態について説明する。本実施形態は、第4実施形態に対してゲート配置領域GPの形状を変更したものであり、その他については第4実施形態と同様であるため、第4実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0089】
図11に示すように、本実施形態では、ゲート配置領域GPのうちのファセット側先端について幅を狭くしつつも尖った形状にしていない。すなわち、ゲート配置領域GPのうちファセット面Fが形成される側の端部の幅をトレンチゲート構造が配置される位置より狭くしつつ、トレンチゲート構造の幅以上の幅となるようにしている。また、p型ディープ層30のうちトレンチゲート構造の先端と対向する辺についても、トレンチゲート構造の幅以上の幅だけ残るようにしている。そして、トレンチゲート構造の先端からファセット側先端に至るまで徐々にゲート配置領域GPの幅が狭められている。n+型基板1の表面に対する法線方向から見て、オフ方向に対してp型ディープ層5が直線状に傾斜させられることで、ゲート配置領域GPの幅が変化させられている。
【0090】
このような構造にしても、トレンチゲート構造の先端の近傍までゲート配置領域GPの幅が狭い領域にできることから、より電界のせり上がりを抑制することが可能となり、SiC半導体装置の更なる耐圧向上を図ることが可能となる。
【0091】
(第6実施形態)
第6実施形態について説明する。本実施形態は、第4実施形態に対してゲート配置領域GPの形状を変更したものであり、その他については第4実施形態と同様であるため、第4実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0092】
図12に示すように、本実施形態では、ゲート配置領域GPのうちのファセット側先端について幅を狭くしつつも尖った形状にしていない。そして、トレンチゲート構造と等しい幅だけp型ディープ層30のうちトレンチゲート構造の先端と対向する辺が残るようにしている。より詳しくは、ファセット側先端において、p型ディープ層5の幅を広げることで対向するp型ディープ層5の間の間隔がトレンチゲート構造の幅と等しくなるようにしている。そして、トレンチゲート構造側において、ファセット側先端からトレンチゲート構造の先端に至るまで徐々にp型ディープ層5の幅を徐々に狭くすることでゲート配置領域GPの幅が徐々に広げられている。
【0093】
このようにすれば、トレンチゲート構造の先端の近傍までゲート配置領域GPの幅が狭い領域にできることから、より電界のせり上がりを抑制することが可能となり、SiC半導体装置の更なる耐圧向上を図ることが可能となる。
【0094】
(他の実施形態)
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。
【0095】
例えば、上記実施形態では、p型ディープ層30が繋ぎ部の全域に形成されるようにしているが、必ずしも全域に形成されていなくても良い。また、p型ディープ層30については、少なくとも隣り合うp型ディープ層5を繋ぐ部分が備えられていれば良く、セル部の外周において例えばストライプ状とされていたり、同心状の複数の枠形状のライン状とされていても良い。
【0096】
また、上記実施形態では、トレンチゲート構造の長手方向を<11−20>方向としたが、必ずしもこの方向である必要はない。すなわち、トレンチゲート構造の長手方向を<11−20>方向以外の方向とする場合においても、トレンチゲート構造の先端からp型ディープ層30までの距離がファセット長Lよりも長くされていれば良い。ただし、トレンチゲート構造の長手方向を変更する場合には、それに応じてファセット長Lも変わることから、それに対応してトレンチゲート構造の先端からp型ディープ層30までの距離を設定すればよい。
【0097】
また、上記各実施形態では、裏面側が高濃度不純物層、表面側がそれよりも低不純物濃度なドリフト層とされ、オフ基板にて構成された半導体基板として、n+型基板1の表面にn-型ドリフト層2を形成した構造を例に挙げて説明した。しかしながら、これは半導体基板の一例を示したに過ぎず、例えばn-型ドリフト層2にて構成される基板の裏面側にn型ドーパントをイオン注入すること、もしくはエピタキシャル成長によって裏面層を構成した半導体基板であっても良い。
【0098】
また、上記第4〜第6実施形態では、ゲート配置領域GPのうちファセット面Fが形成される側の端部について、トレンチゲート構造の配置される位置よりも幅を狭くする一例を示したが、これらも一例を示したに過ぎず、他のレイアウトとされていても良い。例えば、図13に示すように、ファセット側先端については幅を狭くした領域を残す構造としつつ、p型ディープ層30のうちトレンチゲート構造の両先端と対応する辺を共に丸めた形状、好ましくは半円状に丸めた形状にすることもできる。
【0099】
さらに、上記第1〜第6実施形態では、第1導電型をn型、第2導電型をp型としたnチャネルタイプのMOSFETを例に挙げて説明したが、各構成要素の導電型を反転させたpチャネルタイプのMOSFETとしても良い。また、トレンチゲート構造の素子としてMOSFETを例に挙げて説明したが、同様の構造のIGBTに対しても本発明を適用することができる。IGBTは、上記各実施形態に対してn+型基板1の導電型をn型からp型に変更するだけであり、その他の構造や製造方法に関しては上記各実施形態と同様である。
【0100】
なお、結晶の方位を示す場合、本来ならば所望の数字の上にバー(−)を付すべきであるが、電子出願に基づく表現上の制限が存在するため、本明細書においては、所望の数字の前にバーを付すものとする。
【符号の説明】
【0101】
1 n+型基板
2 n-型ドリフト層
3 p型ベース領域
4 n+型ソース領域
5、30 p型ディープ層
5a、30a 凹部
8 ゲート電極
9 ソース電極
11 ドレイン電極
F ファセット面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13