(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るRFタグの実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るRFタグ1を示す、インレイ10を筐体50内に収納した完成状態の斜視図であり、
図2は、
図1に示す本実施形態に係るRFタグ1の分解斜視図である。
また、
図3(a)〜(c)は、それぞれ本発明の一実施形態に係る筐体50のトップカバー51の形状が異なる例を示す外観斜視図である。
【0015】
これらの図に示すように、本実施形態に係るRFタグ1は、無線通信を行うRFタグを構成するインレイ10が筐体50内に収納されて保護される構造のRFタグであり、筐体50によってインレイ10が外的環境から守られるようになっている。特に本実施形態では、インレイ10を収納する筐体50の少なくともトップカバー51を金属部材により形成することにより、筐体50に外部から加わる衝撃や圧力などの物理的な力に対する耐久性や耐衝撃性,耐圧性等を向上させることにより、外力や衝撃によってインレイ10が故障・破損等しないようになっている。
そして、本実施形態では、そのような筐体50自体を、インレイ10に対する補助アンテナとして機能させることで、RFタグ1の通信特性を良好な状態に維持・向上させるようにしてある。
【0016】
具体的には、本実施形態に係るRFタグ1は、
図2に示すように、ICチップ11とアンテナ12を備えたインレイ10と、このインレイ10を保護するための保護部材20(20a,20b)と、保護部材20によって保護された状態のインレイ10を内部に収納する筐体50(51,52)とを備えた構成となっている。
そして、本実施形態では、筐体50が金属部材によって形成されるとともに、筐体50のトップカバー51が、筐体50内に収納されるインレイ10の補助アンテナとして機能するように構成されている。
以下、各部を詳細に説明する。
【0017】
[インレイ]
インレイ10は、図示しないリーダ・ライタ(読取・書込装置)との間で無線による所定の情報の読み取りや書き込み,読み書きが行われるRFタグを構成しており、例えばリードオンリー型,ライトワンス型,リード・ライト型等の種類がある。
具体的には、インレイ10は、ICチップ11と、ICチップ11に電気的に導通・接続されたアンテナ12とを有し、これらICチップ11及びアンテナ12が、基材となる例えばPET樹脂等で形成された1枚の封止フィルム13上に搭載,形成された後、もう1枚の封止フィルム13が重ね合わされて、2枚の封止フィルム13によって挟持された状態で封止・保護されている。
本実施形態では、ICチップ11とICチップ11の両側に伸びるアンテナ12を長方形状の封止フィルム13で挟持・封止した矩形状のインレイ10を用いている。
【0018】
ICチップ11は、メモリ等の半導体チップからなり、例えば数百ビット〜数キロビットのデータが記録可能となっている。
ICチップ11には、チップ周囲を囲むようにループ状の回路導体が接続されてループ部11aが形成されており、このループ部11aを経由して、ICチップ11の左右両側にアンテナ12が接続されている。
そして、このアンテナ12及び後述する補助アンテナ20を介して図示しないリーダ・ライタとの間で無線通信による読み書き(データ呼び出し・登録・削除・更新など)が行われ、ICチップ11に記録されたデータが認識されるようになっている。
ここで、ICチップ11に記録されるデータとしては、例えば、商品の識別コード、名称、重量、内容量、製造・販売者名、製造場所、製造年月日、使用期限等、任意のデータが記録可能であり、また、書換も可能である。
【0019】
アンテナ12は、基材となる1枚の封止フィルム13の表面に、例えば導電性インクや導電性を有するアルミ蒸着膜等の金属薄膜をエッチング加工等により所定の形状・大きさ(長さ,面積)に成形することで形成される。
封止フィルム13は、例えばポリエチレン,ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリプロピレン,ポリイミド,ポリ塩化ビニル(PVC),アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合合成樹脂(ABS)等の可撓性を有するフィルム材からなり、封止するICチップ11・アンテナ12が外部から視認可能な透明のPET樹脂等で構成されることが好ましい。また、封止フィルム13の片面側のフィルム表面には、基材や物品への貼り付けができるように粘着層・接着層を備えることができる。
【0020】
インレイ10で使用される通信周波数帯としては、本実施形態のRFタグ1では、例えば所謂UHF帯に属する860M〜960MHz帯を対象とすることができる。
一般にRFタグで使用される周波数帯としては、例えば、135kHz以下の帯域、13.56MHz帯、UHF帯に属する860M〜960MHz帯、2.45GHz帯等の数種類の周波数帯がある。そして、使用される周波数帯によって無線通信が可能な通信距離が異なるとともに、周波数帯によって最適なアンテナ長などや配線パターンが異なってくる。
【0021】
本実施形態では、インレイ10が小型化でき、また、筐体50のトップカバー51が補助アンテナとして機能することによって、波長が短くアンテナが小型化できるUHF帯を対象とすることができ、例えば860MHz帯や920MHz帯を対象とすることができ、これらの周波数帯において良好な通信特性が得られるようにすることが可能となる。
但し、インレイ10や筐体50の大きさの制約等がなければ、本発明に係る技術思想自体は、特定の周波数帯に限定されるものではなく、例えばUHF帯以外の任意の周波数帯域についても適用できることは勿論である。
【0022】
[保護部材]
保護部材20は、上記のようなインレイ10を搭載する基材・基台となるとともに、インレイ10の上面及び/又は下面を保護するための保護手段である。
本実施形態では、例えば
図2に示すように、保護部材20(20a,20b)は、インレイ10の上面及び下面を覆う、インレイ10より一回り程度大きい矩形状の2枚の板状部材20a,20bによって構成することができる。
なお、保護部材20は、後述するように、インレイ10の上面又は下面の少なともいずれか一面を保護するようになっていればよい(
図5〜7参照)。
【0023】
また、保護部材20は、
図2に示すような分離した2枚の板状部材に限らず、後述するように、例えばインレイ10の全体を樹脂封止する樹脂材料で構成したり、筐体50内に収納されたインレイ10の上面に嵌合された溶着される樹脂部材によって構成したりすることもできる(
図5参照)。
さらに、保護部材20は、インレイ10の上面側に配置される場合に、筐体50のトップカバー51に備えられる切り欠き部51aに係合・嵌合する凸部21を備えることもできる(
図7参照)。
保護部材20の実施形態の変更例・応用例については、後述する
図5〜7を参照して後述する。
【0024】
このような保護部材20を備えることにより、インレイ10は、後述する筐体50の内部に収納される際に、保護部材20によって上面や下面を覆われた状態となるので、インレイ10に対する緩衝性や防水性・耐熱性等を向上させることができ、インレイ10の保護をより万全なものとすることができる。
また、筐体50は、特にトップカバー51が金属材料で構成されることから、保護部材20をインレイ10に対する金属材料の影響を調整して通信特性を良好にするための誘電率調整層として機能させることができる。
【0025】
ここで、本実施形態では、後述するように筐体50のトップカバー51がインレイ10の補助アンテナとして機能するようになっている。このため、そのようなインレイ10の通信特性を調整する誘電率調整層として保護部材20を機能させる場合には、保護部材20を所定の誘電率となるよう材質や形状を設定することができる。
具体的には、インレイ10に対する誘電率調整層として機能させることができる保護部材20の材質・材料としては、例えば、ポリカーボネート樹脂,アクリロニトリル−エチレン−スチレン共重合体(AES)樹脂,ポリプロピレン樹脂,ポリエチレン樹脂,ポリスチレン樹脂,アクリル樹脂,ポリエステル樹脂,ポリフェレニンサルファイド樹脂,アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)樹脂,ポリ塩化ビニル樹脂,ポリウレタン樹脂,フッ素樹脂,シリコーン樹脂などの熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマー等の樹脂材料がある。
このうち、耐候性や耐熱性,耐水性等に優れ、インレイ10の通信特性に合わせた形成,加工等も容易であることから、例えば耐候AES樹脂又は耐候ポリカーボネート樹脂で保護部材20を形成することができる。
【0026】
また、インレイ10の誘電率調整層として機能する保護部材20の形状としては、例えばインレイ10の下面側に板状・シート状の保護部材20を配置し、その保護部材20を所定の厚みで形成するとともに、インレイ10が搭載・積層される搭載面の所定箇所に、保護部材20を貫通する一又は二以上の貫通部(貫通孔)を設けることができる。
このように貫通部を形成することで、保護部材20は、搭載されるインレイ10に対して部分的に誘電体を配置させることができるようになる。これによって、使用するインレイ10の種類や通信特性,筐体50や保護部材20の材質,RFタグ1を使用する物品・使用環境・使用周波数帯域などの諸条件を考慮して、誘電率調整層となる保護部材20に適宜貫通部を形成することで、保護部材20のみを選択・交換することで、RFタグ1を異なる物品に使用したり、異なる通信周波数に対応させたりすることが可能となる。
【0027】
例えば、特に図示はしないが、上面にインレイ10が搭載される保護部材20のほぼ中心に、インレイ10のICチップ11及びループ部11aに対応する位置に、インレイ10の幅(短手方向の長さ)より一回り大きい矩形状の貫通部を形成したり、この中央の貫通部を挟んだ両側の対象位置には、それぞれ別の貫通部を形成したりするようにする。
このような保護部材20に形成する貫通部の位置や形状,大きさ,数などは、保護部材20の材質や形状・形態、インレイ10の通信特性や通信周波数、RFタグ1を使用する物品や使用環境,使用地域などの条件を考慮・勘案して設計・変更することができる。
【0028】
また、保護部材20に、上記のような貫通部を形成せず、孔等のない完全な板状・シート状に形成することもできる。このようにすると、インレイ10に対して片面側の全面に所定の誘電率を有する誘電率調整層が配置されることになり、これによってインレイ10が良好な通信特性を得られる設計となっている。
このように、誘電率調整層として機能する保護部材20は、形成する樹脂材料,インレイ10の通信特性,RFタグ1を使用する物品,使用状況等に応じて、適宜設計・変更することができ、適宜貫通部を設けたり、そのような貫通部をまったく設けないようにすることができる。
【0029】
[筐体]
筐体50は、保護部材20で保護されたインレイ10を内部に収納することで、当該インレイ10を保護するための保護手段である。
本実施形態では、インレイ10が、保護部材20によって上面/下面が保護された状態で筐体50の内部に着脱可能に収納されるようになっている。
この筐体50及び保護部材20によってインレイ10が保護されることにより、RFタグとしての耐久性や耐衝撃性・耐候性・耐熱性・防水性等が高められるようになる。
【0030】
具体的には、筐体50は、
図1〜3に示すように、保護部材20で保護されたインレイ10の上面側を覆うトップカバー51及び下面側を覆うバックカバー52とを備えた、全体が矩形直方体形状となっている。
そして、本実施形態では、筐体50を構成するトップカバー51及びバックカバー52を、金属材料により所定の形状に形成している。
筐体50を金属製とすることにより、RFタグ1に加わる機械的・物理的な外力・衝撃等に対しても、金属製の筐体50が有する強度・耐久性・耐衝撃性によって筐体内部を保護することができ、筐体50内に収納されるインレイ10が破損したり故障したりすることを有効に防止することができる。
ここで、筐体50のトップカバー51及びバックカバー52を構成する金属材料としては、例えば鋼鉄や銅,ステンレス,アルミ合金,亜鉛合金等を用いることができる。
【0031】
なお、筐体50を金属製とするのは、RFタグ1の表面に加わる機械的・物理的な外力に対する耐久性・耐衝撃性等を得るとともに、RFタグ1の表面に配置される金属部材によってインレイ10の補助アンテナを構成するためである。
従って、そのような目的を達成するためには、RFタグ1の表面側に配置されるトップカバー51が少なくとも金属製であれば良く、バックカバー52については非金属製、例えば合成樹脂製とすることも可能である。
【0032】
また、筐体50の外形は、内部に保護部材20で保護されたインレイ10が収納できる限り、外形の形状・構造等は変更可能であり、例えばRFタグ1を使用する物品の構造や大きさ、タグの使用状態等に応じて筐体50の外形は適宜設計・変更することができる。
図2に示す例では、保護部材20で保護された状態のインレイ10の厚みを考慮して、トップカバー51は両端部が正面視L字形状に曲折形成され、また、バックカバー52には、インレイ10を保護した保護部材20が搭載される台部52aが突設されている。そして、このようなトップカバー51とバックカバー52が重ね合わされることにより、内部にインレイ10及び保護部材20を収納するための収納空間が構成される。この場合、筐体50の長手方向に沿った正面側及び背面側は、収納されたインレイ10及び保護部材20が視認可能となる開口部となる。
【0033】
なお、
図2に示すように、重ね合わされるトップカバー51とバックカバー52の両端部には、RFタグ1を対象物に固定するための螺子(
図5〜7に示す螺子101参照)等が挿入される貫通孔を設けることができる。
そして、トップカバー51とバックカバー52によって覆われた状態で、筐体50はRFタグ1を使用する物品・対象物に対して、例えば上述したネジ止めや接着剤等で取り付けられたり、物品・対象物の所定箇所に設置・嵌合されて使用したりすることができる。
【0034】
このようなトップカバー51及びバックカバー52の構成・形状により、筐体50内に収納されたインレイ10及び保護部材20は、トップカバー51及びバックカバー52の間に隙間なく配置・収納されるようになり(
図5〜7参照)、筐体50内でインレイ10がズレたりガタついたりすることを防止できる。
そして、このようなトップカバー51及びバックカバー52の形状、例えばトップカバー51の両端L字形状の厚み(高さ)や、バックカバー52の台部52aの厚み(高さ)を調整・変更することで、収納するインレイ10及び保護部材20の厚み(高さ)に対応させた適切な収納空間を構成することができる。従って、例えばバックカバー52側の台部52aを省略することもでき、また、トップカバー51側に内部に突出・膨出する台部やスペーサ等を設けることもできる。
【0035】
さらに、トップカバー51の形状としては、例えば
図3に示すように、適宜変更・調整することができる。
なお、
図3では特に図示は省略してあるが、
図2で示したものと同様に、トップカバー51及びバックカバー52の例えば両端部などの適切な位置に、RFタグ1を対象物に固定するための螺子等が挿入される貫通孔(
図1,2参照)を設けることができる。
図3(a)は、
図1,2に示した形態であり、保護部材20及びインレイ10の厚みを考慮して、トップカバー51の両端部がバックカバー52に向かって正面視L字形状に曲折形成される場合である。
【0036】
これに対して、
図3(b)に示すように、トップカバー51の正面側及び背面側の縁部(長手方向縁部)が、保護部材20及びインレイ10の厚みに対応して正面側及び背面側にほぼ90度に曲折形成されるドーム型形状(側面視逆U字形状)のトップカバー51とすることもできる。
この場合には、トップカバー51は短手方向の側面は、収納されたインレイ10及び保護部材20が視認可能となる開口部となる。
【0037】
また、
図3(c)に示すように、トップカバー51を、端部・縁部が曲折形成されない平板状に形成することもできる。
この場合には、バックカバー52の上面に搭載されたインレイ10・保護部材20の上面に、一枚の板状のトップカバー51が搭載される状態となり、筐体50の外周四辺が、収納されたインレイ10及び保護部材20が視認可能な開口部となる。
このように、筐体50を構成するトップカバー51・バックカバー52の構成は、収納するインレイ10や保護部材20の大きさや厚み(高さ)、RTタグ1を使用する環境や取付対象などに応じて、適宜変更・調整することができる。
【0038】
[補助アンテナ]
そして、本実施形態では、以上のような筐体50を構成するトップカバー51が、筐体50内に収納されるインレイ10の補助アンテナとして機能するようになっている。
補助アンテナとは、上述したインレイ10の通信特性を向上・調整するためのアンテナとして機能するものであり、通常、インレイ10の片面側(上面側)に積層配置される面状の導電性部材によって構成され、封止フィルム13によって樹脂封止されたインレイ10とは絶縁状態となって配置される。
【0039】
すなわち、金属等の導電性部材からなる補助アンテナは、インレイ10が封止フィルム13によって全体が樹脂封止されていることから、物理的にはインレイ10と絶縁状態となっている。そして、そのような補助アンテナがインレイ10の片面側に積層・配置されることで、補助アンテナとインレイ10のICチップ11は、封止フィルム13を介して対向配置されるようになり、所謂コンデンサカップリングによって電気的接続がなされるようになる。
これによって、インレイ10には補助アンテナが縦方向(高さ方向)に積層されることで、インレイ10のアンテナ12と補助アンテナにより二次元アンテナが構成され、補助アンテナ20が通信電波のブースターとして機能することになり、インレイ10の通信特性の調整・向上が図られることになる。
【0040】
そして、本実施形態では、このような補助アンテナを、インレイ10の上面側に配置・積層される導電性部材である筐体50のトップカバー51によって構成するようにしてある。
本実施形態の筐体50のトップカバー51は、上述のように金属製のため、インレイ10の上面側に配置される導電性部材となる。また、インレイ10は封止フィルム13によって樹脂封止され、さらに、インレイ10の上面側に合成樹脂製の保護部材20(20a)が積層配置される場合があり、トップカバー51とインレイ10とは絶縁状となり、所謂コンデンサカップリングによって電気的に接続されるようになる。
従って、トップカバー51を所定の形状に形成することで、金属製のトップカバー51それ自体を、筐体50内に収納されるインレイ10の補助アンテナとして機能させることができる。
【0041】
図4に、インレイ10の補助アンテナとして機能する筐体50のトップカバー51の平面図を示す。同図(a)はインレイ10の上面にトップカバー51を積層配置した状態を、また、同図(b)はトップカバー51によって構成される補助アンテナの長辺の寸法関係を示している。
同図に示すように、本実施形態では、トップカバー51によって構成される補助アンテナは、短辺がインレイ10の短辺よりも長く、長辺がインレイ10の長辺とほぼ同じ長さの矩形・面状に形成される。
【0042】
そして、
図4(b)に示すように、特に矩形の長辺がインレイ10の電波周波数の波長の略1/4の長さとなるように形成することができる。
さらに、矩形長辺の一方の長辺には、当該長辺をインレイ10の電波周波数の波長の略1/8ずつの長さに二分割する、インレイ10の上面側の一部に開口する切り欠き部51aが形成されるようになっている。
切り欠き部51aは、補助アンテナを構成するトップカバー51の一方の長辺の縁部に開口した、インレイ10のICチップ11が配置可能な所定の幅と深さを有する凹形状に形成されるようになっている。
【0043】
補助アンテナを構成するトップカバー51の長さは、RFタグ1の全体の大きさを規定することになり、例えば1/2波長に対応する長さにトップカバー51を形成した場合、寸法が長くなり過ぎる(大き過ぎる)ことになり、小型化が要請されるRFタグの性質上好ましくない。
そこで、本実施形態では、トップカバー51によって構成される補助アンテナの長辺の長さを、インレイ10の電波周波数の波長の略1/4の長さとすることができる。
ここで、「略1/4」とは、電波周波数の波長に対して厳密に「1/4(0.25)」である場合は勿論のこと、概ね「1/4」であってもよく、例えば1/4波長の±20%の範囲(0.2〜0.3)等であっても、本発明に係る「略1/4」に該当する。
【0044】
また、面状の補助アンテナがインレイ10に積層される場合、インレイ10のICチップ11に補助アンテナが重なって位置すると、補助アンテナを形成する導電性部材によりICチップ11の通信特性が損なわれてしまう。
すなわち、インレイ10のICチップ11近傍にはループ回路が形成されており(ループ部11a)、このループ部11aは、インピーダンスの整合を図る目的があり、かつ、磁界成分での通信を行うために設けられており、この磁界成分が補助アンテナを構成する導体によって阻害されないようにする必要がある。
そこで、本実施形態では、補助アンテナを構成するトップカバー51をインレイ10に重ねて積層するにあたり、ICチップ11が位置する部分には補助アンテナを構成する導電性部材が存在しないように、トップカバー51に切り欠き部51aを形成するようにしている。
【0045】
さらに、この切り欠き部51aを形成するにあたり、トップカバー51は、補助アンテナの長辺の長さであるインレイ10の電波周波数の波長の略1/4の長さが、当該周波数の波長の略1/8の長さとなるように、切り欠き部51aを、当該長辺をインレイ10の電波周波数の波長の略1/8ずつの長さに二分割する位置に形成するようにする。
なお、ここで言う「略1/8」は、上述した「略1/4」の場合と同様に、電波周波数の波長に対して厳密に「1/8(0.125)」である場合は勿論のこと、概ね「1/8」であってもよく、例えば1/8波長の±20%の範囲(0.1〜0.15)等であっても、本発明に係る「略1/8」に該当する。
【0046】
また、トップカバー51に設ける切り欠き部51aの大きさ(幅及び深さ)は、少なくともインレイ10のICチップ11に重ねてトップカバー51(補助アンテナ)が存在しない大きさであれば良く、また、この切り欠き部51aの幅及び深さを適宜調整することで、ICチップ11の電波周波数や後述する筐体50の材質、RFタグ1を取り付ける物品からの影響等に応じて、インピーダンス整合を図ることができるようになる。
従って、切り欠き部51aは、少なくともICチップ11が配置可能な大きさであって、その幅及び深さはトップカバー51(補助アンテナ)の大きさの範囲内で適宜調整・変更することができるものであれば良い。
【0047】
より具体的には、例えばインレイ10の通信周波数が920MHzの場合には、λ≒326.0mm,λ/4≒81.5mm,λ/8≒40.8mmとなる。従って、トップカバー51によって構成される補助アンテナは、長辺の長さが81.5mm前後となるように形成し、これによって切り欠き部51aが形成される一方の長辺は、それぞれが40.8mm前後の長さに2分割されることになる。
【0048】
インレイと補助アンテナを積層する、誘電率調整プレートは波長短縮効果を生み、このプレートを利用することで、見かけの波長が短縮されることになる。その誘電率はおよそ「2〜4」である。
従って、本実施形態におけるトップカバー51によって構成される補助アンテナの長辺の長さもおよその値であり、略λ/4,略λ/8の値となっていれば十分であり、RFタグ1の筐体50の材質、タグの使用環境,使用態様等による通信特性の変化に応じて長さが前後することはある。
【0049】
また、補助アンテナを構成するトップカバー51に形成される切り欠き部51aは、使用するインレイ10の寸法を基準にして設定されるようになっており、インレイ10のICチップ11の部分にトップカバー51(補助アンテナ)の導電性部材が重ならないような幅及び深さに形成される。
具体的には、まず切り欠き部51aの幅については、インレイ10のICチップ11のループ部11aの幅を基準にしており、トップカバー51が、ICチップ11及びループ部11aに重ならず、又はICチップ11には重ならずループ部11aの周縁の一部に重なるような大きさに形成する。例えばループ部11aの幅のサイズが15〜18mm程度である場合には、切り欠き部51aの幅は約10〜20mmの範囲の長さとする。
また、切り欠き部51aの深さについては、インレイ10の幅(短手方向の長さ)と、ループ部11aの上部の位置を基準にして設定し、少なくともICチップ11にトップカバー51が重ならないようにする。例えばインレイ10の幅が10〜30mm程度である場合、切り欠き部51aの深さは約5〜20mmの範囲の長さとする。
【0050】
[インレイ・保護部材の積層パターン]
次に、以上のような構成からなる本実施形態に係るRFタグ1の、インレイ10と保護部材20の筐体50内における具体的な積層・配置パターンについて、
図5〜7を参照しつつ説明する。
図5(a)〜(c)は、それぞれ本発明の一実施形態に係るRFタグ1を示す断面正面図であり、取付対象となる対象物100に対して取り付けられ、螺子101で固定される場合であり、筐体50内のインレイ10と保護部材20の積層構成がそれぞれ異なっている。
【0051】
図5(a)に示すRFタグ1では、インレイ10を合成樹脂製の保護部材20の内部にインモールド成形により封止・密封している。
このようにすると、インレイ10の全体が保護部材20によって被覆された状態で保護されるので、例えば筐体50のトップカバー51の切り欠き部51aから雨水や埃,塵等が浸入してもインレイ10が濡れることがなく、RFタグ1としての、耐水性や耐候性,耐熱性等を向上させることができる。
【0052】
図5(b)にRFタグ1は、筐体50のトップカバー51と、インレイ10を載置したバックカバー52との間を、全面に亘って合成樹脂製の保護部材20を溶着させるようにしてある。
このようにすると、インレイ10はバックカバー52に搭載された状態で合成樹脂製の保護部材20で全体が被覆・密封されることになり、上述した
図5(a)の場合と同様に、トップカバー51の切り欠き部51aから水分が浸入してもインレイ10が濡れることがなく、RFタグ1の耐水性や耐候性,耐熱性等を向上させることができる。
【0053】
図5(c)にRFタグ1では、インレイ10が搭載されたバックカバー52の台部52aに対して、インレイ10の上方から、蓋状に形成された保護部材20が台部52aの外縁に嵌め込まれるようになっている。
このようにすると、蓋状の保護部材20をバックカバー52の台部52aにはめ込むだけでインレイ10を保護・密閉することができ、組立作業・製造工程を容易化することができ、また、蓋状の保護部材20がバックカバー52の台部52aに隙間無く嵌合することで、上述した
図5(a),(b)の場合と同様に、インレイ10を水分等から隔離することができ、RFタグ1の耐水性や耐候性,耐熱性等を向上させることができる。
【0054】
図6(a)及び(b)は、それぞれ本発明の一実施形態に係るRFタグ1を示す断面正面図であり、
図5の場合と同様に、対象物100に対して螺子101で固定されるようになっており、筐体50内のインレイ10と保護部材20の積層パターンが異なる場合を示している。
図6(a)では、板状の保護部材20をインレイの下面側のみに配置した場合である。このようにすると、保護部材20の厚み(高さ)の分だけ対象物100とインレイ10との距離を離間させることができ、例えば対象物100が金属である場合には、インレイ10に対する対象物100の影響を低減・抑制することができ、RFタグ1の通信性能を向上させることが可能となる。
また、このような積層パターンによれば、トップカバー51の切り欠き部51aに対してインレイ10を直接対向させることができ、インレイ10が切り欠き部51aを介して外部に露出することになるので、その点からもインレイ10の通信性能を向上させることが可能となる。
【0055】
一方、
図6(b)では、同じく板状の保護部材20をインレイの上面側のみに配置した場合である。
このようにすると、
図5に示した場合と同様に、インレイ10の上面を保護部材20によって覆うことができ、インレイ10はトップカバー51の切り欠き部51aから直接露出せず、インレイ10を雨水等の侵入などの外部環境から保護することができる。
また、この場合には、
図6(a)の場合と比較して、インレイ10と対象物100との距離が近くなるため、対象物100としては、非金属製の物体等でインレイ10の通信特性に影響を及ぼすことのない場合の構成として採用することが好ましい。
このように、本実施形態に係る保護部材20は、インレイ10の上面又は下面の少なくとも一方を保護するものであれば良い。
【0056】
図7(a)〜(c)は、それぞれ本発明の一実施形態に係るRFタグ1において、インレイ10の上面を保護する保護部材20が、筐体50のトップカバー51の切り欠き部51aを塞ぐ凸部21を備える場合を示している。
図7(a),(b)に示すように、インレイ10の上面側に保護部材20が配置される場合には、保護部材20の上面に、トップカバー51の切り欠き部51aに係合する凸部21を設けることができる。
このようにすると、トップカバー51の切り欠き部51aを保護部材20の凸部21に塞ぐことができ、インレイ10はトップカバー51の切り欠き部51aから直接露出せず、
図5(a)〜(c),
図6(b)に示した場合と同様に、インレイ10を雨水等の侵入などの外部環境から保護することができる。
【0057】
また、
図7(c)では、トップカバー51の切り欠き部51aが筐体50の長手方向の一端側に形成される場合を示している。
トップカバー51の切り欠き部51aは、インレイ10のループ部11aの位置に対応して設けられる開口部である。従って、インレイ10のループ部11aが例えば長手方向の一端側に配置される場合には、トップカバー51の切り欠き部51aも、それに対応して長手方向の一端側に形成することができる。
【0058】
このような形態としては、例えばインレイ10が、ループ部11aを残して、アンテナ12の一部(長手方向一側)をカット(切断)する場合がある。
このようにすると、例えば長尺なインレイ10を、本来の長手方向の長さより短くすることができる。
このような場合には、インレイ10のループ部11aは、アンテナ12の一部がカットされることで、例えば長手方向の一端側に配置されるようになるため、筐体50のトップカバー51に設ける切り欠き部51aについても、インレイ10のループ部11aに対応する位置(長手方向の一端側)に形成することができる。
【0059】
そして、この場合にも、
図7(c)に示すように、上述した
図7(a),(b)の場合と同様に、保護部材20の上面に、トップカバー51の切り欠き部51aに係合する凸部21を設けることで、切り欠き部51aを保護部材20の凸部21に塞ぐことができる。
このように、トップカバー51に形成される切り欠き部51aや、切り欠き部51aに係合する保護部材20の凸部21は、インレイ10のループ部11aの位置に対応して設けられるものであり、
図7(c)に示す長手方向一端側の場合に限らず、ループ部11aの対応する任意の位置に設けることができるものである。
【0060】
[通信特性]
次に、以上のような構成からなる本実施形態に係るRFタグ1の通信特性について、
図8を参照しつつ説明する。
図8(a),(b),(c)は、それぞれ本発明の一実施形態に係るRFタグの通信特性を示す、通信距離と周波数の関係を示す折れ線グラフである。
まず、
図8(a)は、
図5(a)〜(c)に示した本発明の一実施形態に係るRFタグ1を金属製の対象物100に取り付けた場合の通信距離と周波数の関係を示している。
【0061】
同図に示すように、3つのRFタグ1は、金属製の対象物100に取り付ける場合、対象物100とRFタグ1が絶縁されている場合には、それぞれ、
図8(a)の破線で示すように、920〜960MHz帯・980M〜1000MHz帯・1000M〜1040MHz帯において通信距離のピーク(約8〜12m)が得られる。
この場合、RFタグ1と対象物100の絶縁は、例えば筐体50のバックカバー52を非導通性の合成樹脂で構成したり、金属製のバックカバー52と対象物100との間に非導通性の物質、例えば合成樹脂のシートや板状部材等を挟むことで、
図8(a)の破線で示すような通信性能が得られる。
これに対して、RFタグ1と対象物100とが絶縁されずに導通する場合には、
図8(a)の実線で示すように、いずれの周波数帯においても通信性能が著しく低下してしまい、無線通信が困難乃至不可能となる。
【0062】
図8(b)は、RFタグ1を金属の対象物にネジ留めによって固定する場合の通信性能を示している。
RFタグ1をネジ留めによって対象物100に固定する場合、螺子101(
図5〜7参照)が金属製の場合、対象物100とRFタグ1とが、螺子101を介して電気的に導通することがある。
その場合、
図8(b)の実線で示すように、RFタグ1の通信性能が低下してしまい、無線通信が困難乃至不可能となる。
【0063】
そこで、そのような場合には、非導電性の螺子101を用いるか、螺子以外の固定手段、例えば粘着テープや接着剤等でRFタグ1を対象物100に固定することができる。
そのようにすることで、
図8(b)の破線で示すように、所定の周波数帯域において無線通信が可能となる。
図8(b)で示す例では、破線で示されるように、800〜820MHz帯において通信距離のピーク(約6m)が得られるようになる。
このように、本実施形態に係るRFタグ1は、筐体50が金属製の取付対象(対象物100)に取り付けられ固定される場合には、筐体50と取付対象とを絶縁する絶縁手段を備えることで、RFタグ1の通信特性を良好に維持・向上させることができる。
【0064】
図8(c)は。
図6(a)及び(b)のRFタグ1の通信特性を対比した場合を示している。
図6に示したように、本実施形態に係るRFタグ1は、保護部材20を、インレイ10の下面側のみに配置することも、インレイ10の上面側のみに配置することもできる。そして、いずれの場合においても、
図8(c)に示すように、RFタグ1は良好な通信性能で無線通信を行うことができる。
図8(c)で示す例では、
図6(a)のRFタグ1では、細い破線で示されるように、860〜880MHz帯において通信距離のピーク(約15m)が得られるようになり、また、
図6(b)のRFタグ1では、太い破線で示されるように、860〜920MHz帯において通信距離のピーク(約16m)が得られるようになる。
【0065】
以上説明したように、本実施形態のRFタグ1によれば、インレイ10を収納・保護する保護手段となる筐体50について、インレイ10を内部に収納する筐体50の少なくともトップカバー51を金属部材により形成することにより、筐体50に外部から加わる衝撃や圧力などの物理的な力に対する耐久性や耐衝撃性,耐圧性等を向上させることができる。
これによって、外力や衝撃によってインレイ10が故障・破損等しないようになっている。
【0066】
その上で、本実施形態では、そのような金属製の筐体50自体を、インレイ10に対する補助アンテナとして機能させるために、金属製のトップカバー51が、インレイ10上面側の一部に開口する切り欠き部51aを備え、その切り欠き部51aがインレイ10のループ回路の上面側に開口する切り欠き部51aを備えるとともに、インレイ10と所謂コンデンサカップリングによって電気的に接続されるようにしてある。
これによって、インレイ10を保護する金属製の筐体50のトップカバー51自体を、インレイ10の補助アンテナとして有効に機能させることができ、RFタグ1の通信特性を良好な状態に維持・向上させることができる。
【0067】
このように、本実施形態に係るRFタグ1によれば、ICチップ11とアンテナ12を備えたインレイ10を、補助アンテナとして機能する金属製の筐体50内に収納することにより、金属製の筐体50によって物理的・機械的な外力や衝撃等からインレイ10やアンテナ12,ICチップ11を確実に保護しつつ、筐体50自体が補助アンテナとして機能することで、インレイ10と筐体50外部との無線通信も良好な状態で行わせることが可能となる。
従って、例えば貨物用のパレットやコンテナなどのように、特に外部から物理的な力や衝撃が加わることの多い対象物に装着等されるRFタグ1として好適に使用することができる。
【0068】
以上、本発明のRFタグ及び金属容器について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明に係るRFタグは、上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
例えば、上述した実施形態では、本発明に係るRFタグを使用する物品として、貨物用のパレットやコンテナを例にとって説明したが、本発明のRFタグを使用できる物品,対象物としては、貨物用のパレットやコンテナに限定されるものではない。
すなわち、RFタグが使用され、リーダ・ライタを介して所定の情報・データが読み書きされる物品,対象物であれば、どのような物品・対象物であっても本発明に係るRFタグを適用することができる。
【0069】
この明細書に記載の文献及び本願のパリ優先の基礎となる日本出願明細書の内容を全てここに援用する。