特許第6673352号(P6673352)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6673352-金属ナノ微粒子製造用組成物 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6673352
(24)【登録日】2020年3月9日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】金属ナノ微粒子製造用組成物
(51)【国際特許分類】
   B22F 9/30 20060101AFI20200316BHJP
   B22F 1/00 20060101ALI20200316BHJP
   B22F 1/02 20060101ALI20200316BHJP
   H01B 1/00 20060101ALI20200316BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20200316BHJP
【FI】
   B22F9/30 Z
   B22F1/00 K
   B22F1/02 A
   H01B1/00 E
   H01B1/22 A
【請求項の数】13
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-525210(P2017-525210)
(86)(22)【出願日】2016年6月13日
(86)【国際出願番号】JP2016067485
(87)【国際公開番号】WO2016204105
(87)【国際公開日】20161222
【審査請求日】2019年2月22日
(31)【優先権主張番号】特願2015-120304(P2015-120304)
(32)【優先日】2015年6月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000108993
【氏名又は名称】株式会社大阪ソーダ
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】川村 謙輔
(72)【発明者】
【氏名】森 崇充
【審査官】 田口 裕健
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−270146(JP,A)
【文献】 特開2012−251222(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00− 9/30
H01B 1/00− 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)シュウ酸金属塩、(B)アミン化合物、及び(C)ヒドロキシ脂肪酸を含み、(C)ヒドロキシ脂肪酸が、2−ヒドロキシデカン酸、2−ヒドロキシドデカン酸、2−ヒドロキシテトラデカン酸、2−ヒドロキシヘキサデカン酸、2−ヒドロキシオクタデカン酸、2−ヒドロキシエイコサン酸、2−ヒドロキシドコサン酸、2−ヒドロキシトリコサン酸、2−ヒドロキシテトラコサン酸、3−ヒドロキシヘキサン酸、3−ヒドロキシオクタン酸、3−ヒドロキシノナン酸、3−ヒドロキシデカン酸、3−ヒドロキシウンデカン酸、3−ヒドロキシドデカン酸、3−ヒドロキシトリデカン酸、3−ヒドロキシテトラデカン酸、3−ヒドロキシヘキサデカン酸、3−ヒドロキシヘプタデカン酸、3−ヒドロキシオクタデカン酸、ω−ヒドロキシ−2−デセン酸、ω−ヒドロキシペンタデカン酸、ω−ヒドロキシヘプタデカン酸、ω−ヒドロキシエイコサン酸、ω−ヒドロキシドコサン酸、6−ヒドロキシオクタデカン酸、リシノール酸、12−ヒドロキシステアリン酸及び[R−(E)]−12−ヒドロキシ−9−オクタデセン酸からなる群から選択される1種以上である金属ナノ微粒子製造用組成物。
【請求項2】
(C)ヒドロキシ脂肪酸が、リシノール酸、及び12−ヒドロキシステアリン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
(A)シュウ酸金属塩が、シュウ酸銀である請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
(B)アミン化合物が、第1級アミンの1種以上、ジアミン化合物の1種以上、又は第1級アミンの1種以上とジアミン化合物の1種以上との組み合わせである請求項1〜3の何れかに記載の組成物。
【請求項5】
(C)ヒドロキシ脂肪酸の含有量が、(A)シュウ酸金属塩の1molに対して、0.001〜1molである請求項1〜4の何れかに記載の組成物。
【請求項6】
(A)シュウ酸金属塩の含有量が、組成物の全量に対して、20〜70重量%である請求項1〜5の何れかに記載の組成物。
【請求項7】
(B)アミン化合物の含有量が、(A)シュウ酸金属塩の1molに対して、0.4〜10molである請求項1〜5の何れかに記載の組成物。
【請求項8】
請求項1〜7の何れかに記載の組成物を加熱反応させる工程を含む、金属ナノ微粒子の製造方法。
【請求項9】
加熱反応温度が50〜240℃である請求項8に記載の方法。
【請求項10】
金属ナノ微粒子の平均粒子径が10〜200nmである請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
請求項1〜7の何れかに記載の組成物を加熱反応させて金属ナノ微粒子を得る工程と、この金属ナノ微粒子を極性有機溶媒を含む有機溶媒に分散させる工程とを含む、導電性インク又はペーストの製造方法。
【請求項12】
請求項1〜7の何れかに記載の組成物を加熱反応させて金属ナノ微粒子を得る工程と、この金属ナノ微粒子を極性有機溶媒を含む有機溶媒に分散させて導電性インク又はペーストを得る工程と、この導電性インク又はペーストを用いて基板上に回路又は電極を印刷する工程とを含む、回路又は電極の形成方法。
【請求項13】
(A)シュウ酸金属塩、(B)アミン化合物、及び(C)ヒドロキシ脂肪酸を含み、(C)ヒドロキシ脂肪酸が、2−ヒドロキシデカン酸、2−ヒドロキシドデカン酸、2−ヒドロキシテトラデカン酸、2−ヒドロキシヘキサデカン酸、2−ヒドロキシオクタデカン酸、2−ヒドロキシエイコサン酸、2−ヒドロキシドコサン酸、2−ヒドロキシトリコサン酸、2−ヒドロキシテトラコサン酸、3−ヒドロキシヘキサン酸、3−ヒドロキシオクタン酸、3−ヒドロキシノナン酸、3−ヒドロキシデカン酸、3−ヒドロキシウンデカン酸、3−ヒドロキシドデカン酸、3−ヒドロキシトリデカン酸、3−ヒドロキシテトラデカン酸、3−ヒドロキシヘキサデカン酸、3−ヒドロキシヘプタデカン酸、3−ヒドロキシオクタデカン酸、ω−ヒドロキシ−2−デセン酸、ω−ヒドロキシペンタデカン酸、ω−ヒドロキシヘプタデカン酸、ω−ヒドロキシエイコサン酸、ω−ヒドロキシドコサン酸、6−ヒドロキシオクタデカン酸、リシノール酸、12−ヒドロキシステアリン酸及び[R−(E)]−12−ヒドロキシ−9−オクタデセン酸からなる群から選択される1種以上である組成物の、金属ナノ微粒子の製造のための使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の配線形成等に用いられる導電性ペースト又はインクの材料である金属ナノ微粒子を製造するための組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、従来のめっき法や蒸着−フォトリソグラフィー法に代わる新たな回路形成(パターニング)方法であり、印刷によって直接回路を形成する技術である「プリンテッドエレクトロニクス」が、次世代の産業基盤として注目されている。この技術は、導電性ペースト又は導電性インクを用いて基板に所望の回路パターンを形成するものであり、薄膜トランジスタ、抵抗、インダクター、コンデンサー等の基本的な回路部品から、電池、ディスプレイ、センサー、RFID (Radio Frequency Identification)、太陽電池等の多数の応用製品まで広く応用が可能である。プリンテッドエレクトロニクスの採用により、エレクトロニクス関連製品の製造工程が、劇的に簡便になり、時間が短縮され、省資源及び省エネルギーが促進されることが期待されている。
【0003】
プリンテッドエレクトロニクスには、ガラス基材及びポリマーフィルムの何れも用いることができるが、広い範囲から基板材料を選択できるように、比較的低い温度での熱処理によって十分な導電性、基材との密着性が得られる導電性ペースト又は導電性インクの開発が求められている。
【0004】
この要求を満たす材料として、ナノサイズの金属ナノ微粒子を含む導電性ペースト又はインクが有望視されている。特に貴金属のナノ微粒子は、高い電気伝導性を有し、かつ、表面エネルギーの増大に起因するナノサイズ効果によって溶融温度がバルク金属よりも顕著に低下する。
しかし、平均粒子径の小さなナノ微粒子は、表面エネルギーの増加により不安定となり容易に凝集してしまうことから、ナノ微粒子の製造時、及び各種導電性インク又は導電性ペーストに配合した後に、凝集して固液分離が生じるという問題がある。
【0005】
この問題を解決するため、各種の保護層でナノ微粒子を被覆することが提案されている。保護層は、導電性ペースト又はインク中では安定に金属ナノ微粒子に結合して微粒子の凝集を防ぐと共に、回路形成時の焼結により容易に金属ナノ微粒子表面から脱離することが求められる。
【0006】
例えば、特許文献1は、シュウ酸銀と、沸点が100〜250℃のアルキルアミンと、沸点が100〜250℃のアルキルジアミンとを含む組成物を加熱反応させることにより得られる被覆金属ナノ微粒子が、保存中に凝集し難く、かつ低温焼結により容易に脱離することを教えている(段落0022)。
【0007】
また、特許文献2は、アルコール系溶媒中、炭素数8以上の脂肪酸及び炭素数8以上の脂肪族アミンの共存下で、アルコール系溶媒に不溶な金属塩を還元させることにより得られる被覆金属ナノ微粒子が、焼結後の微粒子表面の脂肪族アミンの残存が少ないことを教えている(段落0010)。
金属塩としては、金属の炭酸塩、水酸化塩、硫酸塩等を使用している(実施例)。
炭素数8以上の脂肪酸としては、オレイン酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、ステアリン酸等が例示されている(段落0030)。
また、得られた被覆金属ナノ微粒子を含むペースト中にヒドロキシ脂肪酸を配合する場合は、ヒドロキシ脂肪酸の親水基と疎水基の存在により、ペースト中に被覆金属ナノ微粒子を分散させ易くなることを教えている(段落0046)。
【0008】
しかし、これらの方法で得られる金属ナノ微粒子の保護層は、金属ナノ粒子との結合性に優れるが、疎水性が強いため、極性溶媒を含むインク又はペーストへの分散性が悪い。
例えば、ポリマーを含む導電性インク又はペーストの場合は、広い範囲からポリマーを選択できるように極性溶媒にも分散させ易い金属ナノ微粒子が求められる。また、例えば、インクジェット用のインクは極性の高い溶媒を用いるため、極性溶媒にも分散させ易い金属ナノ微粒子が求められる。
【0009】
この点に関し、特許文献3は、硝酸銀とオレイルアミンを含む組成物を加熱して被覆銀微粒子を得た後、この被覆銀微粒子とヒドロキシ酸の一種であるリシノール酸とを含む組成物を加温して、保護層を置換する方法を開示しており(実施例4)、これにより、テキサノールやテルピネオール等の極性有機溶媒への分散性が良い被覆銀微粒子が得られることを教えている(段落0007)。
しかし、特許文献3の方法で得られる被覆銀微粒子の極性溶媒への分散性は実用上十分ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第5574761号公報
【特許文献2】特開2012−46779号公報
【特許文献3】特開2013−151753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、加熱反応により、極性溶媒又は極性溶媒の比率が高い溶媒混合物に分散させ易い金属ナノ微粒子が得られる組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために本発明者は研究を重ね、(A)シュウ酸金属塩、(B)アミン化合物、及び(C)ヒドロキシ脂肪酸を含む組成物を加熱反応させることにより得られる金属ナノ微粒子が、アルコール系溶媒、エステル系溶媒等の極性の高い溶媒にも分散させ易いことを見出した。
本発明は、上記知見に基づき完成されたものであり、下記の金属ナノ微粒子製造用組成物、金属ナノ微粒子の製造方法、導電性インク又はペースト、及び配線又は電極などを提供する。
【0013】
項1. (A)シュウ酸金属塩、(B)アミン化合物、及び(C)ヒドロキシ脂肪酸を含む金属ナノ微粒子製造用組成物。
項2. (C)ヒドロキシ脂肪酸が、リシノール酸、及び12−ヒドロキシステアリン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種である項1に記載の組成物。
項3. (A)シュウ酸金属塩が、シュウ酸銀である項1又は2に記載の組成物。
項4. (B)アミン化合物が、第1級アミンの1種以上、ジアミン化合物の1種以上、又は第1級アミンの1種以上とジアミン化合物の1種以上との組み合わせである項1〜3の何れかに記載の組成物。
項5. (C)ヒドロキシ脂肪酸の含有量が、(A)シュウ酸金属塩の1molに対して、0.001〜1molである項1〜4の何れかに記載の組成物。
項6. (A)シュウ酸金属塩の含有量が、組成物の全量に対して、20〜70重量%である項1〜5の何れかに記載の組成物。
項7. (B)アミン化合物の含有量が、(A)シュウ酸金属塩の1molに対して、0.4〜10molである項1〜5の何れかに記載の組成物。
項8. 項1〜7の何れかに記載の組成物を加熱反応させる工程を含む、金属ナノ微粒子の製造方法。
項9. 加熱反応温度が50〜240℃である項8に記載の方法。
項10. 金属ナノ微粒子の平均粒子径が10〜200nmである項8又は9に記載の方法。
項11. 項8〜10の何れかに記載の方法により得られる金属ナノ微粒子を含む導電性インク又はペースト。
項12. 項1〜7の何れかに記載の組成物を加熱反応させて金属ナノ微粒子を得る工程と、この金属ナノ微粒子を極性有機溶媒を含む有機溶媒に分散させる工程とを含む、導電性インク又はペーストの製造方法。
項13. 項11に記載の導電性インク又はペーストを用いて形成された回路又は電極。
項14. 項1〜7の何れかに記載の組成物を加熱反応させて金属ナノ微粒子を得る工程と、この金属ナノ微粒子を極性有機溶媒を含む有機溶媒に分散させて導電性インク又はペーストを得る工程と、この導電性インク又はペーストを用いて基板上に回路又は電極を印刷する工程とを含む、回路又は電極の形成方法。
項15. (A)シュウ酸金属塩、(B)アミン化合物、及び(C)ヒドロキシ脂肪酸を含む組成物の、金属ナノ微粒子の製造のための使用。
項16. (A)シュウ酸金属塩、(B)アミン化合物、及び(C)ヒドロキシ脂肪酸の、金属ナノ微粒子の製造のための組み合わせ使用。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、極性溶媒への分散性が優れる金属ナノ微粒子が得られる。また、この金属ナノ微粒子は、導電性インク又はペーストの材料として従来汎用されている疎水性溶媒への分散性にも優れる。
また、この金属ナノ微粒子は、導電性インク又はペースト中で保護層が脱離し難く、即ち、保存性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例1、比較例4で得られた金属微粒子のTg(熱重量)測定の重量変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
(1)金属ナノ微粒子製造用組成物
本発明の金属ナノ微粒子製造用組成物は、(A)シュウ酸金属塩、(B)アミン化合物、及び(C)ヒドロキシ脂肪酸を含む。
【0017】
(A)シュウ酸金属塩
シュウ酸金属塩としては、シュウ酸金、シュウ酸銀、シュウ酸銅、シュウ酸白金、シュウ酸パラジウム、シュウ酸ニッケル、シュウ酸アルミニウム等を例示できる。中でも、加熱反応により導電性に優れる金属ナノ微粒子が効率よく生成する点で、シュウ酸銀、シュウ酸銅が好ましく、シュウ酸銀がより好ましい。
シュウ酸金属塩は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0018】
組成物中のシュウ酸金属塩の含有量は、組成物の全量に対して、20重量%以上が好ましく、25重量%以上がより好ましく、30重量%以上がさらにより好ましい。この範囲であれば、加熱反応により金属ナノ微粒子が効率良く生成する。
また、組成物中のシュウ酸金属塩の含有量は、組成物の全量に対して、70重量%以下が好ましく、65重量%以下がより好ましく、60重量%以下がさらにより好ましい。この範囲であれば、加熱反応により金属ナノ微粒子が効率よく生成する。
組成物中のシュウ酸金属塩の含有量としては、組成物の全量に対して、20〜70重量%、20〜65重量%、20〜60重量%、25〜70重量%、25〜65重量%、25〜60重量%、30〜70重量%、30〜65重量%、30〜60重量%等の範囲が挙げられる。
【0019】
(B)アミン化合物
アミン化合物は、(A)シュウ酸金属塩と結合でき、かつ生成した金属ナノ微粒子の表面上で保護層を形成できるものであれば、制限なく使用できる。
例えば、アンモニアの3個の水素原子のうち、1個を直鎖、分岐、または環状の炭化水素で置換した化合物である第1級アミン(b‐1)、2個を同様に置換した第2級アミン(b‐2)、及び3個を同様に置換した第3級アミン(b‐3)を例示できる。
中でも、(A)シュウ酸金属塩と結合する能力が高く、また、得られた金属ナノ微粒子を用いた導電性インク又はペーストを基板上に塗布した後、比較的低温(例えば、PET基板を用いる際に求められる120℃以下の温度)での熱処理によって金属ナノ微粒子表面から容易に脱離する点で、第1級アミン(b‐1)が好ましい。
【0020】
第1級アミン(b‐1)としては、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、1,2−ジメチルプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、イソアミルアミン、tert−アミルアミン、3−ペンチルアミン、n−アミルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、2−オクチルアミン、tert−オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、n−ノニルアミン、n−アミノデカン、n−アミノウンデカン、n−ドデシルアミン、n−トリデシルアミン、2−トリデシルアミン、n−テトラデシルアミン、n−ペンタデシルアミン、n−ヘキサデシルアミン、n−ヘプタデシルアミン、n−オクタデシルアミン、n−オレイルアミン、3−メトキシプロピルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−プロポキシプロピルアミン、3−イソプロポキシプロピルアミン、3−ブトキシプロピルアミン、3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミン、N‐エチル‐1,3‐プロパンジアミン、N‐ラウリル-プロパンジアミン等の直鎖又は分岐炭化水素基を有するアミン等を例示できる。
また、脂環式アミンであるシクロプロピルアミン、シクロブチルアミン、シクロプロピルアミン、シクロヘキシルアミン、シクロヘプチルアミン、シクロオクチルアミンや、芳香族アミンであるアニリン等も例示できる。
また、3−イソプロポキシプロピルアミン、イソブトキシプロピルアミン等のエーテルアミンも例示できる。
【0021】
第2級アミン(b‐2)としては、N,N−ジプロピルアミン、N,N−ジブチルアミン、N,N−ジペンチルアミン、N,N−ジヘキシルアミン、N,N−ジペプチルアミン、N,N−ジオクチルアミン、N,N−ジノニルアミン、N,N−ジデシルアミン、N,N−ジウンデシルアミン、N,N−ジドデシルアミン、N,N−ジステアリルアミン、N−メチル−N−プロピルアミン、N−エチル−N−プロピルアミン、N−プロピル−N−ブチルアミン等のジアルキルモノアミン、及びピペリジン等の環状アミンを例示することができる。
【0022】
第3級アミン(b‐3)としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン、ジメチルオクチルアミン、ジメチルデシルアミン、ジメチルラウリルアミン、ジメチルミリスチルアミン、ジメチルパルミチルアミン、ジメチルステアリルアミン、ジラウリルモノメチルアミン等を例示できる。
【0023】
さらに、本発明では、ひとつの化合物中に2つのアミノ基を有するジアミン化合物(b‐4)も用いることができる。ジアミン化合物(b‐4)としては、エチレンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジメチル‐1,3‐プロパンジアミン、N,N‐ジブチル‐1,3‐プロパンジアミン、N,N‐ジイソブチル‐1,3‐プロパンジアミン、N,N’‐ジメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジエチル−1,3−プロパンジアミン、N,N’−ジエチル−1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、N,N−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、N,N’−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、N,N−ジエチル−1,4−ブタンジアミン、N,N’−ジエチル−1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,5−ジアミノ−2−メチルペンタン、1,6−ヘキサンジアミン、N,N−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミン、N,N’−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン等を例示できる。
【0024】
ジアミン化合物(b‐4)の中でも、アミンの一方が第1級アミン、他方が第3級アミンであるジアミン化合物は、(A)シュウ酸金属塩との結合能に優れ、金属ナノ微粒子が生成した際に、金属ナノ微粒子の表面上で保護層を形成し易い点で好ましい。
一方が第1級アミン、他方が第3級アミンであるジアミン化合物としては、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N,N−ジメチル−1,3-プロパンジアミン、N,N−ジエチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、N,N−ジエチル−1,4−ブタンジアミン、N,N−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミン等を例示できる。
【0025】
上述したアミン化合物の中でも、導電性インク又はペースト中での金属ナノ微粒子での分散安定性、及び回路形成時に低温の熱処理で容易に脱離可能な点で、n‐プロピルアミン、イソプロピルアミン、シクロプロピルアミン、n‐ブチルアミン、イソブチルアミン、sec‐ブチルアミン、tert‐ブチルアミン、シクロブチルアミン、n‐アミルアミン、n‐ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、n‐オクチルアミン、2‐エチルヘキシルアミン、n‐ドデシルアミン、n‐オレイルアミン、3−メトキシプロピルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−プロポキシプロピルアミン、3−イソプロポキシプロピルアミン、N,N−ジメチル‐1,3‐プロパンジアミン、N,N‐ジブチル‐1,3‐アミノプロパンが好ましく、n‐ブチルアミン、n‐ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、n‐オクチルアミン、n‐ドデシルアミン、N,N−ジメチル‐1,3‐プロパンジアミン、N,N‐ジブチル‐1,3‐アミノプロパン、3−メトキシプロピルアミン、3−エトキシプロピルアミンがより好ましく、n−ブチルアミン、n−ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、n−オクチルアミン、n−ドデシルアミン、3−メトキシプロピルアミン、3−エトキシプロピルアミン、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミンがさらにより好ましい。
【0026】
(B)アミン化合物は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。具体的には、(b‐1)、(b‐2)、(b‐3)、(b‐4)の中の1つ以上を使用することができ、特に、(b‐1)のみ、(b‐4)のみ、及び(b‐1)と(b‐4)との組み合わせが好ましい。さらに、(b‐1)、(b‐2)、(b‐3)、(b‐4)の各群の中でも1種以上を使用することができる。
【0027】
組成物中の(B)アミン化合物の含有量は、組成物の全量に対して、5重量%以上が好ましく、10重量%以上がより好ましく、20重量%以上がさらにより好ましい。この範囲であれば、シュウ酸金属塩と良好な結合を形成し、かつ生成した金属ナノ微粒子の表面上で保護層を形成することができる。
また、組成物中の(B)アミン化合物の含有量は、組成物の全量に対して、55重量%以下が好ましく、50重量%以下がより好ましく、45重量%以下がさらにより好ましい。この範囲であれば、シュウ酸金属塩と良好な結合を形成し、かつ生成した金属ナノ微粒子の表面上で保護層を形成することができる。
組成物中の(B)アミン化合物の含有量としては、組成物の全量に対して、5〜55重量%、5〜50重量%、5〜45重量%、10〜55重量%、10〜50重量%、10〜45重量%、20〜55重量%、20〜50重量%、20〜45重量%等の範囲が挙げられる。
【0028】
組成物中の(B)アミン化合物の含有量は、シュウ酸金属塩の1molに対して、0.4mol以上が好ましく、0.6mol以上がより好ましく、1mol以上がさらにより好ましい。この範囲であれば、シュウ酸金属塩と良好な結合を形成し、かつ生成した金属ナノ微粒子の表面上で保護層を形成することができる。
また、組成物中の(B)アミン化合物の含有量は、シュウ酸金属塩の1molに対して、10mol以下が好ましく、8mol以下がより好ましく、6mol以下がさらにより好ましい。この範囲であれば、シュウ酸金属塩と良好な結合を形成し、かつ生成した金属ナノ微粒子の表面上で保護層を形成することができる。
シュウ酸金属塩の1molに対する(B)アミン化合物の量としては、0.4〜10mol、0.4〜8mol、0.4〜6mol、0.6〜10mol、0.6〜8mol、0.6〜6mol、1〜10mol、1〜8mol、1〜6mol等の範囲が挙げられる。
【0029】
(C)ヒドロキシ脂肪酸
ヒドロキシ脂肪酸としては、炭素数3〜24で、かつ水酸基を1個以上(例えば、1個)有する化合物を使用できる。ヒドロキシ脂肪酸として、例えば、2−ヒドロキシデカン酸、2−ヒドロキシドデカン酸、2−ヒドロキシテトラデカン酸、2−ヒドロキシヘキサデカン酸、2−ヒドロキシオクタデカン酸、2−ヒドロキシエイコサン酸、2−ヒドロキシドコサン酸、2−ヒドロキシトリコサン酸、2−ヒドロキシテトラコサン酸、3−ヒドロキシヘキサン酸、3−ヒドロキシオクタン酸、3−ヒドロキシノナン酸、3−ヒドロキシデカン酸、3−ヒドロキシウンデカン酸、3−ヒドロキシドデカン酸、3−ヒドロキシトリデカン酸、3−ヒドロキシテトラデカン酸、3−ヒドロキシヘキサデカン酸、3−ヒドロキシヘプタデカン酸、3−ヒドロキシオクタデカン酸、ω−ヒドロキシ−2−デセン酸、ω−ヒドロキシペンタデカン酸、ω−ヒドロキシヘプタデカン酸、ω−ヒドロキシエイコサン酸、ω−ヒドロキシドコサン酸、6−ヒドロキシオクタデカン酸、リシノール酸、12−ヒドロキシステアリン酸、[R−(E)]−12−ヒドロキシ−9−オクタデセン酸等が挙げられる。中でも、炭素数4〜18で、かつω位以外(特に、12位)に1個の水酸基を有するヒドロキシ脂肪酸が好ましく、リシノール酸、12-ヒドロキシステアリン酸がより好ましい。
ヒドロキシ脂肪酸は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0030】
組成物中の(C)ヒドロキシ脂肪酸の含有量は、組成物の全量に対して、0.01重量%以上が好ましく、0.05重量%以上がより好ましく、0.1重量%以上がさらにより好ましい。この範囲であれば、極性溶媒への分散性が実用上十分である金属ナノ微粒子が得られる。
また、組成物中のヒドロキシ脂肪酸の含有量は、組成物の全量に対して、15重量%以下が好ましく、10重量%以下がより好ましく、8重量%以下がさらにより好ましい。この範囲であれば、極性溶媒への分散性が実用上十分である金属ナノ微粒子が得られる。
組成物中のヒドロキシ脂肪酸の含有量としては、組成物の全量に対して、0.01〜15重量%、0.01〜10重量%、0.01〜8重量%、0.05〜15重量%、0.05〜10重量%、0.05〜8重量%、0.1〜15重量%、0.1〜10重量%、0.1〜8重量%等が挙げられる。
【0031】
組成物中の(C)ヒドロキシ脂肪酸の含有量は、シュウ酸金属塩の1molに対して、0.001mol以上が好ましく、0.005mol以上がより好ましく、0.01mol以上がさらにより好ましい。この範囲であれば、極性溶媒への分散性が実用上十分である金属ナノ微粒子が得られる。
また、組成物中のヒドロキシ脂肪酸の含有量は、シュウ酸金属塩の1molに対して、1mol以下が好ましく、0.5mol以下がより好ましく、0.25mol以下がさらにより好ましい。この範囲であれば、極性溶媒への分散性が実用上十分である金属ナノ微粒子が得られる。
シュウ酸金属塩の1molに対するヒドロキシ脂肪酸の量としては、0.001〜1mol、0.001〜0.5mol、0.001〜0.25mol、0.005〜1mol、0.005〜0.5mol、0.005〜0.25mol、0.01〜1mol、0.01〜0.5mol、0.01〜0.25mol等が挙げられる。
【0032】
有機溶媒(S)
本発明の組成物は、有機溶媒を含むことができる。有機溶媒は、20℃の水に対して約1g/L以上溶解するものが好ましく、約10g/L以上溶解するものがより好ましい。中でも、エーテル結合及びヒドロキシル基を有する化合物を有機溶媒として好適に使用できる。
【0033】
有機溶媒としては、ベンゼン、ベンゾニトリル等の芳香族化合物、アセトン、アセチルアセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、酪酸エチル、蟻酸エチル等の脂肪酸エステル類、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール等のジオール類、炭素数1〜7の直鎖又は分岐アルキルを有するアルコール、シクロヘキサノール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、3−メトキシ−1−ブタノール、2−(2−エチルヘキシルオキシ)エタノール等のアルコール類、ポリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、3−メトキシブチルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールもしくはグリコールエーテル類、メチル-n-アミルケトン、メチルエチルケトンオキシム、トリアセチン、γ-ブチロラクトン、2-ピロリドン、N-メチルピロリドン、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N-(2-アミノエチル)ピペラジン、ジメチルスルホキシド、及びテルピネオール等のテルペン類、等を例示することができる。
有機溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0034】
中でも、沸点が高いため扱い易く、また組成物中で各成分を良好に分散することができる点で、2−(2−エチルヘキシルオキシ)エタノール、3−メトキシ−1−ブタノール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールのようなアルコキシ基を有するアルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類が好ましい。
【0035】
有機溶媒を使用する場合、組成物中の有機溶媒の含有量は、シュウ酸金属塩100重量部に対して、5重量部以上が好ましく、10重量部以上がより好ましく、30重量部以上がさらにより好ましい。この範囲であれば、組成物中の各成分を均一に混合できる。
また、組成物中の有機溶媒の含有量は、シュウ酸金属塩100重量部に対して、1000重量部以下が好ましく、500重量部以下が好ましく、300重量部以下が好ましい。この範囲であれば、反応液が希薄になりすぎて反応が長くなったり、回収コストが増大するという事態が避けられる。
組成物中の有機溶媒の含有量としては、シュウ酸金属塩100重量部に対して、5〜1000重量部、5〜500重量部、5〜300重量部、10〜1000重量部、10〜500重量部、10〜300重量部、30〜1000重量部、30〜500重量部、30〜300重量部等が挙げられる。
【0036】
本発明の組成物は、本発明の効果に影響を与えない範囲で、プリンテッドエレクトロニクスに適用される金属微粒子製造用組成物に使用される添加剤の1種又は2種以上を含有できる。
このような添加剤として、脂肪酸(炭素数3〜18以下の脂肪酸、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、2−エチルヘキサン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、α−リノレン酸、シクロヘキサンカルボン酸等)、粘度調製剤、導電助剤、チョーキング防止剤、酸化防止剤、pH調製剤、乾燥防止剤、密着付与剤、防腐剤、消泡剤、レベリング剤、界面活性剤等が挙げられる。
【0037】
組成物の調製方法
本発明の組成物は、各成分を混合することにより調製できる。混合は、メカニカルスターラー、マグネティックスターラー、ボルテックスミキサー、遊星ミル、ボールミル、三本ロール、ラインミキサー、プラネタリーミキサー、ディゾルバー等の汎用の装置で行える。
混合時の溶解熱、摩擦熱等の影響で組成物の温度が上昇し、金属ナノ微粒子の熱分解反応が開始することを回避するために、組成物の温度を、例えば60℃以下、特に40℃以下に抑えながら混合することが好ましい。
【0038】
(2)金属ナノ微粒子の製造方法
反応工程
上記説明した本発明の金属ナノ微粒子製造用組成物を、反応容器内で反応、通常は加熱による反応に供することにより、金属化合物の熱分解反応が起こり、金属ナノ微粒子が生成する。反応に当たっては、予め加熱しておいた反応容器内に組成物を導入してもよく、組成物を反応容器内に導入した後に加熱してもよい。
【0039】
反応温度は、熱分解反応が進行し、金属ナノ微粒子が生成する温度であればよく、例えば50℃以上、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上が挙げられる。この範囲であれば、金属ナノ微粒子が効率よく生成する。また、反応温度は、250℃以下であればよく、240℃以下が好ましく、200℃以下がより好ましい。この範囲であれば、保護層構成成分の揮発が抑えられて、金属ナノ微粒子表面に効率よく保護層を形成できる。
反応温度としては、50〜250℃、100〜250℃、120〜250℃、50〜240℃、100〜240℃、120〜240℃、50〜200℃、100〜200℃、120〜200℃等が挙げられる。
上記温度は、加熱反応開始時の反応液の温度である。
また、反応時間は、所望する平均粒子径の大きさや、それに応じた組成物の組成に合せて、適宜選択すればよい。反応時間としては、例えば1分間〜100時間、好ましくは1分間〜10時間が挙げられる。
【0040】
精製工程
熱分解反応により生成した金属ナノ微粒子は、未反応原料を含む混合物として得られるため、金属ナノ微粒子を精製することが好ましい。
精製方法としては、固液分離方法、金属ナノ微粒子と有機溶媒等の未反応原料との比重差を利用した沈殿方法等が挙げられる。固液分離方法としては、フィルター濾過、遠心分離、サイクロン式、又はデカンタ等の方法が挙げられる。精製時の取り扱いを容易にするために、アセトン、メタノール等の低沸点溶媒で金属ナノ微粒子を含有する混合物を希釈して、その粘度を調整してもよい。
【0041】
金属ナノ微粒子の粒径
金属ナノ微粒子製造用組成物の組成や反応条件を調整することにより、得られる金属ナノ微粒子の平均粒子径を調整できる。上記説明した組成物を用い、上記説明した反応を行うことにより、平均粒子径が10〜200nm、特に10〜150nm、特に10〜100nm、特に10〜50nmの金属ナノ微粒子が得られる。
本発明において、平均粒子径は、走査型電子顕微鏡で観察される画像中の20個の微粒子の長辺の長さの平均値である。
【0042】
(3)導電性インク又はペースト
本発明の導電性インク又はペーストは、上記説明した本発明の製造方法により得られる金属ナノ微粒子と、極性有機溶媒を含む有機溶媒とを含む。有機溶媒は、極性有機溶媒の他に、非極性又は疎水性溶媒を含むことができる。
【0043】
極性有機溶媒としては、アセトン、アセチルアセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類;1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,2−オクタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール等のジオール類;グリセロール;炭素数1〜5の直鎖又は分岐鎖のアルコール、シクロヘキサノール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、3−メトキシ−1−ブタノール等のアルコール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酪酸エチル、蟻酸エチル等の脂肪酸エステル類;ポリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、3-メトキシブチルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノオクチルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル等のグリコール又はグリコールエーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド;ジメチルスルホキシド;テルピネオール等のテルペン類;アセトニトリル;γ-ブチロラクトン;2-ピロリドン;N-メチルピロリドン;N-(2-アミノエチル)ピペラジン等が挙げられる。
中でも、炭素数3〜5の直鎖又は分岐鎖のアルコール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、3-メトキシ-1-ブタノール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、テルピネオールが好ましい。
【0044】
非極性溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、2−エチルヘキサン、シクロヘキサン等の直鎖、分枝、又は環状の飽和炭化水素;炭素数6以上の直鎖又は分岐鎖のアルコール等のアルコール類;ベンゼン、トルエン、ベンゾニトリル等の芳香族化合物;ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;メチル−n−アミルケトン;メチルエチルケトンオキシム;トリアセチン等が挙げられる。
中でも、飽和炭化水素及び炭素数6以上の直鎖又は分岐鎖のアルコール類が好ましく、ヘキサン、オクタン、デカン、オクタノール、デカノール、ドデカノールがより好ましい。
溶媒は、1種を単独で、又は2種以上を混合して使用できる。
【0045】
極性溶媒と非極性溶媒との双方を含む場合、極性溶媒の比率は、溶媒の全量に対して、5容量%以上が好ましく、10容量%以上がより好ましく、15容量%以上がさらにより好ましい。また、60容量%以下とすることができ、55容量%以下とすることもでき、50容量%以下とすることもできる。
溶媒は極性溶媒からなるものとすることもできる。
本発明の導電性インク又はペーストは、このように極性溶媒を多く含む場合にも、金属ナノ微粒子の分散性が良い。
【0046】
本発明の導電性インク又はペーストは、導電性インク又はペーストに通常含まれる、熱又は光硬化性樹脂、硬化剤、レベリング剤、増粘剤、沈殿防止剤、密着性向上のためのカップリング剤、消泡剤、充填剤、pH調整剤、被膜形成助剤、撥水剤等の1種又は2種以上を含むことができる。
【0047】
(4)回路・電極
上記説明した本発明の導電性インク又はペーストを用いて、回路ないしは配線又は電極を形成するに当たっては、基板上に、インクジェット印刷法、スクリーン印刷法、凸版反転印刷法、グラビアオフセット印刷法、オフセット印刷法、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ダイコート法、スリットコート法、ロールコート法、ディップコート法等の方法で、回路又は電極となるパターンを印刷すればよい。
次いで、例えば50℃以上、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上、また、例えば200℃以下、好ましくは150℃以下、より好ましくは120℃以下の温度で焼成することにより、回路又は電極が形成される。焼成は、オーブン、熱風式乾燥炉、赤外線乾燥炉、レーザー照射、フラッシュランプ照射、マイクロウェーブ等を用いて行える。
【実施例】
【0048】
以下に実施例を挙げて、本発明をより詳細に説明する。但し、本発明はこれらに限定されない。
【0049】
(1)材料
実施例及び比較例の金属ナノ微粒子製造用組成物を構成する各成分を以下に示す。
【0050】
金属塩(A)
a1:シュウ酸銀((COOAg)
なお、シュウ酸銀は特許文献1(特許第5574761号公報)に記載の方法で合成した。
a2:硝酸銀(和光純薬工業株式会社製)
【0051】
アミン化合物(B)
b1:n−オクチルアミン(和光純薬工業株式会社製)
b2:3−メトキシプロピルアミン(和光純薬工業株式会社製)
b3:N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン(和光純薬工業株式会社製)
b4:オレイルアミン(東京化成工業株式会社製)
【0052】
ヒドロキシ脂肪酸(C)、脂肪酸
c1:リシノール酸(東京化成工業株式会社製)
c2:12−ヒドロキシステアリン酸(東京化成工業株式会社製)
c3:オレイン酸(和光純薬工業株式会社製)
【0053】
有機溶媒(S)
s1:2−(2−エチルヘキシルオキシ)エタノール(和光純薬工業株式会社製)
s2:2−オクタノール(和光純薬工業株式会社製)
【0054】
以上の成分を用いて、後掲の表1、表2に示す組成の各組成物を調製した。アミン化合物(B)は、複数のアミン化合物を予め混合してから他成分と混合した。
【0055】
(2)金属ナノ微粒子製造用組成物を用いた金属ナノ微粒子の製造
(実施例1〜7、比較例1〜3)
磁気撹拌子を入れた50mLガラス製遠沈管に、アミン化合物(B)の混合物、ヒドロキシ脂肪酸(C)、及び有機溶媒(S)を、表1に示す量投入し、1分間程度攪拌したのち、シュウ酸金属塩(a1)を表1に示す量投入し、約10分間攪拌することで、金属ナノ微粒子製造用組成物を調製した。その後、アルミブロックを備えたホットスターラー(小池精密機器製作所製HHE-19G-U)上に、これらのガラス製遠沈管を立てて設置し、130℃で加熱を開始した。加熱開始から約10分後に反応が開始し、その後10分程度で反応が終了した。放冷後、磁気撹拌子を取り出し、各組成物にメタノール15gを添加してボルテックスミキサーで攪拌した後、遠心分離機(日立工機製CF7D2)にて3000rpm(約1600×G)で1分間の遠沈操作を実施し、遠沈管を傾けることにより上澄みを除去した。メタノール15gの添加、撹拌、遠心分離、及び上澄み除去の工程を2回繰り返し、製造された各金属ナノ微粒子を回収した。このようにして、実施例1〜7の金属ナノ粒子を得た。
また、表2に示す組成物を用いた以外は、上記と同様にして、比較例1〜3の金属ナノ微粒子を作成した。
【0056】
(比較例4)
硝酸銀(a2)を原料とし、特許5441550号公報に記載の方法により金属ナノ微粒子を作成した。具体的には、表2に示す組成になるように各成分を混合して、硝酸銀が完全に溶解した液を作成し、この液100mLを還流器を備える容器に移し、メカニカルスターラー(東京理化器械製Z−2200)で撹拌(300rpm)しながら昇温させた。昇温速度は、120℃までは1.0℃/minとし、120℃を超えて140℃までは0.5℃/minとした。その後、上記撹拌状態を維持しながら、140℃で1時間反応させた。反応は、容器の気相部に窒素ガスを5mL/minの流量で供給しながら行った。反応終了後、室温まで冷却し、反応後のスラリーを3日間静置した後、上澄み液をデカントにより除去した。その際、還元された銀が全スラリーに対して20質量%となるように上澄みの除去量を調整した。上澄み液除去後、スラリーにイソプロパノールを、銀とイソプロパノールとの比率が銀:イソプロパノール=1:30(モル比)となる量添加して混合し、銀粒子を300rpmで1時間攪拌洗浄した。その後、遠心分離により銀粒子を含む固形分を回収した。
【0057】
回収した固形分にリシノール酸とイソプロパノールの混合溶媒(リシノール酸:イソプロパノール=0.02:1(モル比))を加え、液温40℃に保って、40℃で5時間撹拌し、未反応原料を除去することにより、固形分から銀粒子を回収した。得られたスラリーを3000rpmで5分間の遠心分離により固液分離した。その後、前記固形成分に、固形成分:メタノールが1:30(モル比)となるようにメタノールを加えて、前記固形成分を300rpmで30分攪拌洗浄した。メタノールによるこの洗浄をもう一度行い、その後固液分離を行い、固形成分を回収することにより銀ナノ微粒子を抽出した。
【0058】
溶媒を除去して得られた各金属ナノ微粒子を、分散用の溶媒(2−プロパノール)に、金属ナノ微粒子の最終濃度が1重量%となるよう投入し、金属ナノ微粒子を分散させることで分散性評価用インクを得た。
また、各金属ナノ微粒子を、分散用の溶媒(2−プロパノール)に、金属ナノ微粒子の最終濃度が50重量%となるよう投入し、金属ナノ微粒子を分散させることで導電性評価用及びSEM観察による平均粒子径評価用のインクを得た。
また、実施例1、及び比較例4の金属ナノ微粒子は、1時間減圧乾燥してTg測定用サンプルを調整し、このサンプルをTg測定に供した。
【0059】
各実施例で使用した組成物の組成を表1に、各比較例で使用した組成物の組成を表2に、それぞれ示す。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
(3)低温焼結性の評価
実施例1及び比較例4で得た銀粒子について、Tg(熱重量)を、セイコーインスツルメンツ製 EXSTAR6000 TG/DTA6300を用いて、大気下、10℃/分で昇温させて、70〜200℃での重量変化を測定することにより、Tg(熱重量)を測定した。結果を図1に示す。図1の縦軸は、70℃でのTgを100としたときの各温度でのTgの比率を示す。
比較例4の銀粒子は昇温してもTgがほとんど変化しなかったが、実施例1の銀粒子は登温に伴いTgが低下した。これは、銀粒子の保護層成分が銀粒子から脱離したことを示しており、このことから、本願発明の組成物を用いれば、低温焼結により回路などを形成できる金属ナノ微粒子が得られることが分かる。
【0063】
(4)金属ナノ微粒子の分散性の評価
各実施例及び比較例で得た銀粒子を最終濃度1重量%含む上記の評価用インクを用い、動的光散乱法(DLS:Dynamic Light Scattering)(スペクトリス社製ゼータサイザーナノS)により、調製5分後及び60分後のZ(平均値の比)を求めた。調製から測定までの間は各インクを静置した。実施例の結果を表3に、比較例の結果を表4にそれぞれ示す。
通常、分散状態にある粒子は、次第に元の成分系に戻ろうとし、その過程で次第に凝集する。即ち、分散性が悪いほど、凝集するスピードが速い。DLSでは、凝集状態にある粒子は1つの粒子としてカウントされる。従って、表中の「DLS結果」のT1/T0が大きいことは、凝集状態の粗大な粒子が増えたことを示し、分散性が悪いことを意味する。
【0064】
(5)導電性の評価
各実施例及び比較例で得た銀粒子を最終濃度50重量%含む上記の評価用インクをPETフィルム(東レ製ルミラーU483)上に滴下し、スピンコーター(アクテス社製ASC-4000、1500rpm)を用いて約200nmの厚さの金属薄膜を作製した。この金属薄膜をスピンコート後速やかに100℃で1時間熱処理し、熱処理金属薄膜の抵抗値を、四探針型導電率計(三菱化学アナリテック製ロレスターAX)を用いて測定した。実施例の結果を表3に、比較例の結果を表4にそれぞれ示す。
【0065】
(6)平均粒子径の測定
(5)で作製したスピンコート後熱処理を施さない金属薄膜を走査型電子顕微鏡(日立ハイテク製S-4500)で観察し、表面の粒子形状を観察することにより画像の粒子の長辺を計測して粒子径とした。さらに、20個の粒子の粒子径の平均値を平均粒子径とした。実施例の結果を表3に、比較例の結果を表4にそれぞれ示す。
【0066】
【表3】
【0067】
【表4】
【0068】
実施例1及び2では、ヒドロキシ脂肪酸としてリシノール酸を用いた。実施例2では、実施例1と比較して保護層全体に占める割合を多くした。また、アミン化合物として、n−オクチルアミン及びN,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミンを用いた。
DLSによる分散液調製5分後及び60分後の測定値の比による分散性評価は、実施例1がT1/T0=1.01と、ほぼ変化が無く、実施例2がT1/T0=0.93と、時間が経つにつれ逆に凝集構造が崩れ、分散性が向上するという結果が得られた。実施例1、2共に、実用的に十分な導電性が得られた。
【0069】
実施例3、4、及び5では、アミン化合物として、実施例1で用いたN,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミンを使用せず、3−メトキシプロピルアミンを使用した。その結果、分散性、導電性ともに実施例1、2と同様の傾向が見られた。
【0070】
実施例6及び7では、ヒドロキシ脂肪酸としてリシノール酸の代わりに12−ヒドロキシステアリン酸を用いた。その結果、分散性、導電性ともに、リシノール酸を用いた実施例1〜5と同様の結果が得られた。
【0071】
比較例1では、金属塩としてシュウ酸銀を用いたが、脂肪酸として水酸基を有しない脂肪酸であるオレイン酸を用いた。その結果、導電性は実施例1及び2と同等程度であったが、DLSによる分散性評価の結果は、60分後にはT1/T0が3.19となり、実施例1、2と比べて顕著に凝集が進行していた。なお、約10時間静置後には完全に銀粒子が沈降し分散液は透明になった。
【0072】
比較例2では、金属塩としてシュウ酸銀を用いたが、脂肪酸として水酸基を有しない脂肪酸であるオレイン酸を用いた。その結果、実施例3、4、5と比較して導電性は同等程度であったが、DLSによる分散性評価の結果は、60分後にはT1/T0が1.48となり、実施例3、4、5と比べて顕著に凝集が進行していた。なお、約10時間静置後には完全に銀粒子が沈降し分散液は透明になった。
【0073】
比較例3では、金属塩としてシュウ酸銀を用いたが、ヒドロキシ脂肪酸も脂肪酸も用いずに金属ナノ微粒子を作製した。その結果、導電性は実施例と比較して良好であったが、DLSによる分散性評価の結果は、60分後にはT1/T0が5.64となり、最も分散安定性が悪かった。このサンプルは3時間後には完全に沈降し分散液は透明になった。
【0074】
上記結果より、極性溶媒中での金属粒子の分散性は、金属ナノ微粒子の保護層中にヒドロキシ脂肪酸を含有させることで顕著に向上することが分かる。
【0075】
比較例4では、金属塩としてシュウ酸銀以外のものを用いた。即ち、比較例4では硝酸銀を用いて、金属ナノ微粒子を作製した。その結果、いずれの金属ナノ微粒子も、DLSにおける分散性評価の結果は良好であったが、100℃、1時間の焼成によっては、十分な導電性が得られなかった。
この点に関して、図1に示すTg測定結果は、低温での重量変化、すなわち金属ナノ微粒子表面の保護層の低温焼結時の脱離性の差により、得られた銀粒子の導電性に差が出たことを示している。即ち、図1は、より低温で保護層が脱離する金属ナノ微粒子では、マイルドな焼成条件で金属ナノ微粒子同士の焼結が進行し、高い導電性が得られることを意味している。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の金属ナノ微粒子製造用組成物を用いて製造される金属ナノ微粒子は、極性溶媒を多く含む導電性インク又はペースト中での分散性が良いため、広範囲の用途に使用できる。
図1