(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
磁気ビーズを含む液体が導入される、壁面により形成される空間と、その表面が前記壁面の一部を構成し、その表面にバイオ分子標識が固定される磁気センサーとを有し、前記バイオ分子標識または前記バイオ分子標識の近傍の分子に前記磁気ビーズの少なくとも一部が結合する検出デバイスと、
前記磁気ビーズを前記磁気センサーの表面から遠ざける方向の磁場を印加する第一の磁場印加機構と、
前記第一の磁場印加機構とは別個の第二の磁場印加機構とを有し、
前記第二の磁場印加機構は、前記磁気センサーによる磁気検出時に前記バイオ分子標識または前記バイオ分子標識の近傍の分子と結合した前記磁気ビーズに磁場を印加することを特徴とする検出システム。
バイオ分子標識を含む液体と磁気ビーズを含む液体が導入される、壁面により形成される空間と、その表面が前記壁面の一部を構成する磁気センサーとを有し、前記磁気センサーの表面に固定される前記バイオ分子標識または前記磁気センサーの表面に固定される前記バイオ分子標識の近傍の分子に前記磁気ビーズの少なくとも一部が結合する検出デバイスと、
前記磁気ビーズを前記磁気センサーの表面から遠ざける方向の磁場を印加する第一の磁場印加機構と、
前記第一の磁場印加機構とは別個の第二の磁場印加機構とを有し、
前記第二の磁場印加機構は、前記磁気センサーによる磁気検出時に前記バイオ分子標識または前記バイオ分子標識の近傍の分子と結合した前記磁気ビーズに磁場を印加することを特徴とする検出システム。
前記空間は、前記磁気ビーズを含む前記液体が流れる流路空間であり、前記磁気センサーの表面が前記流路空間を形成する流路壁面の一部を構成することを特徴とする請求項1に記載の検出システム。
前記空間は、前記バイオ分子標識を含む前記液体と前記磁気ビーズを含む前記液体が流れる流路空間であり、前記磁気センサーの表面が前記流路空間を形成する流路壁面の一部を構成することを特徴とする請求項2に記載の検出システム。
磁気ビーズを含む液体が導入される、壁面により形成される空間と、その表面が前記壁面の一部を構成し、その表面にバイオ分子標識が固定される磁気センサーとを有し、前記バイオ分子標識または前記バイオ分子標識の近傍の分子に前記磁気ビーズの少なくとも一部が結合する検出デバイスが挿入される挿入部と、
前記磁気ビーズを前記磁気センサーの表面から遠ざける方向の磁場を印加する第一の磁場印加機構と、
前記第一の磁場印加機構とは別個の第二の磁場印加機構とを有し、
前記第二の磁場印加機構は、前記磁気センサーによる磁気検出時に前記バイオ分子標識または前記バイオ分子標識の近傍の分子と結合した前記磁気ビーズに磁場を印加することを特徴とする検出装置。
バイオ分子標識を含む液体と磁気ビーズを含む液体が導入される、壁面により形成される空間と、その表面が前記壁面の一部を構成する磁気センサーとを有し、前記磁気センサーの表面に固定される前記バイオ分子標識または前記磁気センサーの表面に固定される前記バイオ分子標識の近傍の分子に前記磁気ビーズの少なくとも一部が結合する検出デバイスが挿入される挿入部と、
前記磁気ビーズを前記磁気センサーの表面から遠ざける方向の磁場を印加する第一の磁場印加機構と、
前記第一の磁場印加機構とは別個の第二の磁場印加機構とを有し、
前記第二の磁場印加機構は、前記磁気センサーによる磁気検出時に前記バイオ分子標識または前記バイオ分子標識の近傍の分子と結合した前記磁気ビーズに磁場を印加することを特徴とする検出装置。
前記空間は、前記磁気ビーズを含む前記液体が流れる流路空間であり、前記磁気センサーの表面が前記流路空間を形成する流路壁面の一部を構成することを特徴とする請求項6に記載の検出装置。
前記空間は、前記バイオ分子標識を含む前記液体と前記磁気ビーズを含む前記液体が流れる流路空間であり、前記磁気センサーの表面が前記流路空間を形成する流路壁面の一部を構成することを特徴とする請求項7に記載の検出装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
流路に流された磁気ビーズにはバイオ分子標識と未結合のものが存在するが、これらの中には流路壁面に特別な化学結合性を持たずに吸着している磁気ビーズが存在する。このような吸着を非特異吸着と呼ぶ。流路壁面の一部を構成する磁気センサー表面に、非特異吸着している磁気ビーズが残留すると、バイオ分子標識の定量的な検出精度が悪化してしまう。本発明は、磁気ビーズを用いてバイオ分子標識の高精度な検出を行なうことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明の検出システムは、磁気ビーズを含む液体が導入される、壁面により形成される空間と、その表面が前記壁面の一部を構成し、その表面にバイオ分子標識が固定される磁気センサーとを有し、前記バイオ分子標識または前記バイオ分子標識の近傍の分子に前記磁気ビーズの少なくとも一部が結合する検出デバイスと、前記磁気ビーズを前記磁気センサーの表面から遠ざける方向の磁場を印加する第一の磁場印加機構とを有することを特徴とする。
【0009】
本発明において、「磁気センサー」とは、その表面にバイオ分子標識が固定されてバイオ分子標識を磁気的に検出するもののことをいう。つまり、本発明において「磁気センサーの表面」とは、磁気検出素子の上に形成された層の最表面であり、バイオ分子標識が固定される面のことである。
【0010】
上記特徴の検出システムによれば、第一の磁場印加機構が印加する磁場により、バイオ分子標識およびバイオ分子標識の近傍の分子に結合していない、磁気センサーの表面に非特異吸着した磁気ビーズを、磁気センサーの表面から遠ざけることで、磁気センサーによる磁気ビーズ検出において、非特異吸着した磁気ビーズの影響を抑え、バイオ分子標識またはバイオ分子標識の近傍の分子と結合した磁気ビーズの高精度な検出を行なうことができる。
【0011】
さらに本発明の検出システムは、バイオ分子標識を含む液体と磁気ビーズを含む液体が導入される、壁面により形成される空間と、その表面が前記壁面の一部を構成する磁気センサーとを有し、前記磁気センサーの表面に固定される前記バイオ分子標識または前記磁気センサーの表面に固定される前記バイオ分子標識の近傍の分子に前記磁気ビーズの少なくとも一部が結合する検出デバイスと、前記磁気ビーズを前記磁気センサーの表面から遠ざける方向の磁場を印加する第一の磁場印加機構とを有することを特徴とする。
【0012】
上記特徴の検出システムによれば、第一の磁場印加機構が印加する磁場により、バイオ分子標識およびバイオ分子標識の近傍の分子に結合していない、磁気センサーの表面に非特異吸着した磁気ビーズを、磁気センサーの表面から遠ざけることで、磁気センサーによる磁気ビーズ検出において、非特異吸着した磁気ビーズの影響を抑え、バイオ分子標識またはバイオ分子標識の近傍の分子と結合した磁気ビーズの高精度な検出を行なうことができる。
【0013】
さらに本発明の検出システムは、前記磁気センサーによる磁気検出時に前記バイオ分子標識または前記バイオ分子標識の近傍の分子と結合した前記磁気ビーズに磁場を印加する第二の磁場印加機構をさらに有することを特徴とする。
【0014】
これによれば、第二の磁場印加機構を用いることで、磁気センサーによる磁気ビーズ検出のために適切な磁場印加ができるため、バイオ分子標識またはバイオ分子標識の近傍の分子と結合した磁気ビーズの高感度検出が可能になる。
【0015】
さらに本発明の検出システムは、前記空間は、前記磁気ビーズを含む前記液体が流れる流路空間であり、前記磁気センサーの表面が前記流路空間を形成する流路壁面の一部を構成することを特徴とする。
【0016】
さらに本発明の検出システムは、前記空間は、前記バイオ分子標識を含む前記液体と前記磁気ビーズを含む前記液体が流れる流路空間であり、前記磁気センサーの表面が前記流路空間を形成する流路壁面の一部を構成することを特徴とする。
【0017】
上記目的を達成する本発明の検出装置は、磁気ビーズを含む液体が導入される、壁面により形成される空間と、その表面が前記壁面の一部を構成し、その表面にバイオ分子気標識が固定される磁気センサーとを有し、前記バイオ分子標識または前記バイオ分子標識の近傍の分子に前記磁気ビーズの少なくとも一部が結合する検出デバイスが挿入される挿入部と、前記磁気ビーズを前記磁気センサーの表面から遠ざける方向の磁場を印加する第一の磁場印加機構とを有することを特徴とする。
【0018】
これによれば、第一の磁場印加機構が印加する磁場により、バイオ分子標識およびバイオ分子標識の近傍の分子に結合していない、磁気センサーの表面に非特異吸着した磁気ビーズを、磁気センサーの表面から遠ざけることで、磁気センサーによる磁気ビーズ検出において、非特異吸着した磁気ビーズの影響を抑え、バイオ分子標識またはバイオ分子標識の近傍の分子と結合した磁気ビーズの高精度な検出を行なうことができる。
【0019】
さらに本発明の検出装置は、バイオ分子標識を含む液体と磁気ビーズを含む液体が導入される、壁面により形成される空間と、その表面が前記壁面の一部を構成する磁気センサーとを有し、前記磁気センサーの表面に固定される前記バイオ分子標識または前記磁気センサーの表面に固定される前記バイオ分子標識の近傍の分子に前記磁気ビーズの少なくとも一部が結合する検出デバイスが挿入される挿入部と、
前記磁気ビーズを前記磁気センサーの表面から遠ざける方向の磁場を印加する第一の磁場印加機構とを有することを特徴とする。
【0020】
これによれば、第一の磁場印加機構が印加する磁場により、バイオ分子標識およびバイオ分子標識の近傍の分子に結合していない、磁気センサーの表面に非特異吸着した磁気ビーズを、磁気センサーの表面から遠ざけることで、磁気センサーによる磁気ビーズ検出において、非特異吸着した磁気ビーズの影響を抑え、バイオ分子標識またはバイオ分子標識の近傍の分子と結合した磁気ビーズの高精度な検出を行なうことができる。
【0021】
さらに本発明の検出装置は、前記磁気センサーによる磁気検出時に前記バイオ分子標識または前記バイオ分子標識の近傍の分子と結合した前記磁気ビーズに磁場を印加する第二の磁場印加機構をさらに有することを特徴とする。
【0022】
これによれば、第二の磁場印加機構を用いることで、磁気センサーによる磁気ビーズ検出のために適切な磁場印加ができるため、バイオ分子標識またはバイオ分子標識の近傍の分子と結合した磁気ビーズの高感度検出が可能になる。
【0023】
さらに本発明の検出装置は、前記空間は、前記磁気ビーズを含む前記液体が流れる流路空間であり、前記磁気センサーの表面が前記流路空間を形成する流路壁面の一部を構成することを特徴とする。
【0024】
さらに本発明の検出装置は、前記空間は、前記バイオ分子標識を含む前記液体と前記磁気ビーズを含む前記液体が流れる流路空間であり、前記磁気センサーの表面が前記流路空間を形成する流路壁面の一部を構成することを特徴とする。
【0025】
上記目的を達成する本発明の検出方法は、バイオ分子標識を含む液体を磁気センサーの表面に接触させて前記バイオ分子標識を前記磁気センサーの表面に固定させ、磁気ビーズを含む液体を前記磁気センサーの表面に接触させて、前記磁気ビーズの少なくとも一部を、前記磁気センサーの表面に固定される前記バイオ分子標識または前記磁気センサーの表面に固定される前記バイオ分子標識の近傍の分子に結合させ、前記磁気ビーズを前記磁気センサーの表面から遠ざける方向の磁場を印加し、その後、前記磁気センサーにより磁気検出を行うことを特徴とする。
【0026】
これによれば、磁気ビーズを磁気センサーの表面から遠ざける方向の磁場により、バイオ分子標識およびバイオ分子標識の近傍の分子に結合していない、磁気センサーの表面に非特異吸着した磁気ビーズを、磁気センサーの表面から遠ざけることで、磁気センサーによる磁気ビーズ検出において、非特異吸着した磁気ビーズの影響を抑え、バイオ分子標識またはバイオ分子標識の近傍の分子と結合した磁気ビーズの高精度な検出を行なうことができる。
【0027】
さらに本発明の検出方法は、前記磁気センサーの表面がその流路壁面の一部を構成する流路空間に、前記バイオ分子標識を含む液体を流して前記磁気センサーの表面に前記バイオ分子標識を固定させ、前記流路空間に前記磁気ビーズを含む液体を流して、前記磁気ビーズの少なくとも一部を、前記磁気センサーの表面に固定される前記バイオ分子標識または前記磁気センサーの表面に固定される前記バイオ分子標識の近傍の分子に結合させることを特徴とする
【0028】
さらに本発明の検出方法は、前記磁場を印加した状態、または前記磁場の印加を止めた後で前記流路空間に前記磁気ビーズを含まない液体を流し、その後、前記磁気センサーにより磁気検出を行うことを特徴とする。
【0029】
これによれば、磁気ビーズを磁気センサーの表面から遠ざける方向の磁場を印加した状態、またはその磁場の印加を止めた後で流路空間に磁気ビーズを含まない液体を流すことにより、磁気センサーの表面より遠ざけられた非特異吸着していた磁気ビーズを、磁気センサー近傍から取り除くことができるので、より高精度な検出が行える。
【0030】
さらに本発明の検出方法は、前記磁気センサーの表面がその壁面の一部を構成するウェル空間に、前記バイオ分子標識を含む液体を導入して前記磁気センサーの表面に前記バイオ分子標識を固定させ、前記ウェル空間に前記磁気ビーズを含む液体を導入して、前記磁気ビーズの少なくとも一部を、前記磁気センサーの表面に固定される前記バイオ分子標識または前記磁気センサーの表面に固定される前記バイオ分子標識の近傍の分子に結合させ、前記磁場を印加して前記磁場を印加する磁場印加機構に前記磁気ビーズを付着させ、その後、前記磁気センサーにより磁気検出を行うことを特徴とする。
【0031】
これによれば、第一の磁場印加機構に磁気ビーズを付着させることによって、磁気センサーの表面より遠ざけられた非特異吸着していた磁気ビーズを、磁気センサーの近傍から取り除くことができるので、より高精度な検出が行える。
【発明の効果】
【0032】
本発明の検出システム、検出装置および検出方法は、磁気ビーズを用いてバイオ分子標識の高精度な検出を行なうことができる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を用いて本発明を実施するための形態の例を説明する。なお、以下の説明は本発明の実施形態の一部を例示するものであり、本発明はこれら実施形態に限定されるものではなく、形態が本発明の技術的思想を有するものである限り、本発明の範囲に含まれる。各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせなどは一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
【0035】
(第1実施形態)
(検出装置)
第1実施形態の検出装置100は、
図1に示すように、生体由来液体投入口110、磁気ビーズ含有液体投入口120、体液化学処理部130、液体排出部140、第一の磁場印加機構150、第二の磁場印加機構160、電気信号変換部170、表示部180および検出デバイス挿入口190(後述する検出デバイス200が挿入される挿入部)を有して構成されている。
【0036】
(検出システム)
第1実施形態の検出システム300は、
図2に示すように、検出装置100と後述する検出デバイス200を有して構成されている。検出システム300は、検出デバイス200が検出装置100の検出デバイス挿入口190に挿入された状態で作動する。
【0037】
生体由来液体投入口110は、生体に由来する液体が投入される投入口であり、材質として、金属やプラスチック、樹脂、ガラスなど必要に応じて選択される。投入される生体に由来する液体として、体液やバイオ分子標識含有液体が挙げられる。体液としては血液、血清、口腔洗液、尿、脳漿、痰、生検標本または骨髄試料などが挙げられ、後述の体液化学処理部130で処理される。体液を検出装置100に投入する前に事前に処理をしてバイオ分子標識化した分子を含有する液体(バイオ分子標識含有液体)を、生体由来液体投入口110から投入してもよい。この場合、バイオ分子標識含有液体を体液化学処理部130に通過させる必要はない。
【0038】
磁気ビーズ含有液体投入口120は、後述する磁気ビーズ410を含む液体を投入する入口であり、材質として、金属やプラスチック、樹脂、ガラスなどが必要に応じて選択される。磁気ビーズ410を含有する液体は磁気ビーズ410が溶解せずに良好に分散する性質が求められ、磁気ビーズ410とバイオ分子標識400との結合反応の種類に応じて、適切なpHを持つ緩衝溶液が選択される。例えば、バイオ分子標識400としてのビオチンと磁気ビーズ410の表面物質としてのストレプトアビジンとの結合の場合、pH7〜8に調整したトリスヒドロキシメチルアミノメタンとエチレンジアミン四酢酸とでなる緩衝溶液が用いられる。
【0039】
体液化学処理部130は、生体由来液体投入口110から投入された液体が体液である場合、体液に含まれる細胞や蛋白質や検体分子などを化学的に処理し、バイオ分子標識化する箇所である。具体的には、化学的処理は、体液に含まれる細胞を溶解させた後、核酸や蛋白質や検体分子などを抽出し、核酸や蛋白質や検体分子などを抗体や核酸などにより捕捉し、その抗体や核酸を特定の制限酵素で切断したり、標識分子と結合させたりするなどを行う処理である。捕捉や切断や標識化に用いる物質は同定や予防や診断を行う疾患に応じて、適切に選択される。
【0040】
生体由来液体投入口110および磁気ビーズ含有液体投入口120に投入された液体は、後述する検出デバイス200の流路空間230に流される。
【0041】
液体排出部140は、検出デバイス200の流路空間230から排出される液体を排出する部分であり、材質として、金属やプラスチック、樹脂、ガラスなどが必要に応じて選択される。また効率よく液体の投入や排出といった送液を行うために検出装置100内の適切な箇所にポンプを用いることが好ましい。
【0042】
第一の磁場印加機構150は、後述する検出デバイス200内の磁気ビーズ410を、後述する磁気センサー220の表面から遠ざける方向の磁場を印加する機構である。第一の磁場印加機構150としては、磁場を印加できる機構や機能を有すれば種類を問わず、永久磁石やコイル(電磁石)が挙げられるが、印加磁場の制御が電気的に行え、装置構成が簡便になるので、コイル(電磁石)を使用することが好ましい。
【0043】
第二の磁場印加機構160は、磁気センサー220による磁気ビーズ検出のために必要な磁場を印加するための機構であり、磁気センサー220による磁気検出時にバイオ分子標識400またはバイオ分子標識400の近傍の分子と結合した磁気ビーズ410に磁場を印加する。第二の磁場印加機構160を第一の磁場印加機構150と独立して用いることで、磁気センサー220による磁気ビーズ検出のために適切な磁場印加を行うことができる。また、第二の磁場印加機構160が印加する磁場は、磁気センサー220の表面全体において実質的に一様であることが望ましい。第二の磁場印加機構160としては、磁場を印加できる機構や機能を有すれば種類を問わず、永久磁石やコイル(電磁石)が挙げられるが、印加磁場の制御が電気的に行え、装置構成が簡便になるので、コイル(電磁石)を使用することが好ましい。第一の磁場印加機構150は、磁気センサー220の表面において、第二の磁場印加機構160の印加する磁場よりも強い磁場を印加することが望ましい。
【0044】
電気信号変換部170は、検出デバイス200から得られた、磁気ビーズ検出結果を電気信号に変化する部分である。
【0045】
表示部180は、電気信号変換部170より得られた電気信号をバイオ分子標識の有無、濃度として表示する部分である。
【0046】
(検出デバイス)
第1実施形態の検出デバイス200は、
図3及び
図4に示すように、流路空間230と、磁気センサー220と、流路部材214とを有して構成されている。流路空間230は、流路部材214の壁面と後述する磁気センサー220の表面(壁面)により形成される空間である。流路空間230には、生体由来液体投入口110に投入されたバイオ分子標識400を含む液体または、体液化学処理部13で処理されたバイオ分子標識400を含む液体や、磁気ビーズ含有液体投入口120に投入された磁気ビーズ410を含む液体が流れる。
図3は、液体が流路空間230内を流れる方向に垂直な面による検出デバイス200の断面図であり、
図4は、
図3のA−A線に沿った断面図である。
【0047】
磁気センサー220は、
図3及び
図4に示すように、支持体210、磁気検出素子211、保護層212および有機層213を有して構成されている。
【0048】
支持体210は検出デバイス200のハンドリングに対する機械的強度を与えるための支持体であるとともに、磁気検出素子211の作製時の基板である。支持体210は、機械的強度や磁気検出素子211、保護層212および有機層213作製のプロセスの観点からSi、SiO
2、ITO、ガラスまたはAl
2O
3等が好ましく、安価なSiが最も好ましい。
【0049】
磁気検出素子211は磁気ビーズ検出のために用いられる素子であり、一例として、巨大磁気抵抗効果素子(GMR素子)が挙げられる。磁気検出素子211は支持体210上に気相成長法等を用いて形成される。
【0050】
保護層212は磁気素子211を雰囲気から保護するための層であり、Au、Pt、アモルファスカーボン、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)、SiO
2、Al
2O
3、TiO
2、ITO、SiCまたはSi
3N
4等の化学的に安定な貴金属、炭素、金属酸化物、金属炭化物または金属窒化物を用いることができる。さらには有機層213の形成のプロセスの観点から、適切な材料が選択される。保護層212は支持体210及び磁気検出素子211上に気相成長法等を用いて形成される。
図4に示すように、磁気検出素子211上の保護層212は、他の部分よりも厚さが薄く形成されている。保護層212の上面には段差が存在しない、もしくは段差が存在しても段差が小さいことが好ましい。このような保護層212は、磁気検出素子211上に形成されたレジストを用いたリフトオフ法を用いて形成することができる。
【0051】
有機層213はバイオ分子標識400を磁気センサー220の表面に固定させるための層であり、層表面にバイオ分子標識400との結合基を有する。バイオ分子標識400との結合基は、例えば、カルボキシル基(−COOH)やアミン基(−NH
2)である。有機層213の形成に用いる有機物はバイオ分子標識400との結合基によって適切な有機物が選択され、例えば、ホスホン酸や3−アミノプロピルトリエトキシシランなどを用いることができる。さらにバイオ分子標識400との結合のために、有機層213として核酸や抗体を用いてもよい。有機層213は保護層212上に蒸着法、気相成長法、溶液浸漬法またはラングミュア・ブロジェット法等を用いて形成される。
【0052】
磁気センサー220は、その表面にバイオ分子標識400が固定されてバイオ分子標識440を磁気的に検出する。本発明において「磁気センサーの表面」とは、磁気検出素子の上に形成された層の最表面であり、バイオ分子標識が固定される面のことであり、第1実施形態においては、有機層213の表面が磁気センサー220の表面に相当する。磁気センサー220の表面である有機層213の表面は、流路空間230を形成する流路壁面の一部を構成している。
【0053】
流路部材214は、磁気センサー220と組み合わせることで流路空間230を形成するための部材であり、1対の側壁と、1対の側壁の間を接続する上面とを有する。これら1対の側壁と上面とにより、凹状の溝部が形成される。流路部材214の材料としては、例えば、化学的に安定なガラスや樹脂、ゴム材を用いることができ、バイオ分子標識400を含む液体や磁気ビーズ410を含む液体の液性、流速、粘度および磁気センサー220との間の密閉性等を考慮し、適切な材料が選択される。
【0054】
検出デバイス200は、磁気センサー220が、検出デバイス挿入口190内において、第一の磁場印加機構150が位置する側とは反対側に位置するように、検出デバイス挿入口190に挿入される。
【0055】
(バイオ分子標識)
図5から
図14に示す第1実施形態のバイオ分子標識400は、例えば、結合可能なリガンドを有する受容体蛋白質、接着蛋白質、抗原または抗体などのように、蛋白質間相互作用が可能な蛋白質であり、疾患と関連するものである。そのようなものには、その存在量の増減が疾患の存在を示唆する蛋白質のように、疾患の診断に使用可能な蛋白質が含まれ、上皮増殖因子(EGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、脳由来増殖因子(BDGF)または血管内皮増殖因子(VEGF)などの増殖因子、フィブロネクチン、ラミニンまたはビトロネクチンなどの細胞接着因子、インスリン、ソマトスタチン、ソマトトロンビンまたは性腺刺激ホルモン放出因子などのホルモン、LDLなどのリポ蛋白質、種々の腫瘍マーカーまたは抗体などの検体分子が挙げられる。また、HIVおよびHBV等のウィルスや細菌あるいは癌遺伝子等の核酸などの検体分子をバイオ分子標識とすることもできる。また、バイオ分子標識は、上に例示した検体分子だけではなく、上に例示したような検体分子に結合している分子、上に例示したような検体分子を標識化した分子を用いることができる。バイオ分子標識400を含む液体はバイオ分子標識400を溶解せずに良好に分散する性質が求められ、磁気ビーズ410とバイオ分子標識400との結合反応の種類に応じて、適切なpHを持つ緩衝溶液が選択される。例えばバイオ分子標識400としてのビオチンと磁気ビーズ410の表面物質としてのストレプトアビジンとの結合の場合、pH7〜8に調整したトリスヒドロキシメチルアミノメタンとエチレンジアミン四酢酸とでなる緩衝溶液が用いられる。
【0056】
(磁気ビーズ)
図8から
図14に示す磁気ビーズ410は磁気センサー220の被検知物であり、バイオ分子標識400と結合する。磁気ビーズ410は内部に磁性体を含む構造をしており、磁性体としては例えば、鉄または酸化鉄を含む強磁性材料や超常磁性材料が挙げられる。磁気ビーズ410の内部の磁性体はバイオ分子標識400と結合可能な有機物で被覆されている。この有機物としては、具体的にはアミン基やカルボキシル基等の反応性基を含む有機物が挙げられ、例えば、ストレプトアビジンやヒドロキシアパタイトなどを用いることができる。これらの有機物はバイオ分子標識と結合する。有機物の材料は同定や予防や診断を行う疾患に応じて、適切に選択される。磁気ビーズ410の構造は、微細な磁性体が有機物中に分散している構造や、中心の磁性体を有機物が被覆している構造などが挙げられ、目的に応じて適宜選択される。磁気ビーズ410の大きさは10nm〜100μmであり、目的に応じて適宜選択される。
【0057】
(検出システムの動作方法)
図5から
図12を参照して、検出システム300の動作方法(本発明における検出方法の例)について説明する。まず、生体由来液体投入口110に生体に由来する液体が投入される。生体由来液体投入口110に投入された生体に由来する液体は、必要に応じて体液化学処理部130で処理され、バイオ分子標識400を含む液体として流路空間230に流される。
図5は、流路空間230の図中右から左へバイオ分子標識400を含む液体を送液する工程の初期状態を示している。
【0058】
次に、
図6に示すように、送液を停止させ、流路空間230を満たしたバイオ分子標識400を含む液体を静置させ、バイオ分子標識400を沈降させる。沈降したバイオ分子標識400の内、磁気センサー220上のバイオ分子標識400は有機層213により磁気センサー220表面に固定され、それ以外のバイオ分子標識400は保護層212上に固定されずに堆積する。
【0059】
次に、
図7に示すように、保護層212上に固定されずに堆積しているバイオ分子標識400を、バイオ分子標識を含まない液体を流路空間230の図中右から左へ流すことで除去する。バイオ分子標識を含まない液体は磁気ビーズ投入口120または図示しない専用の投入口から投入される。このような液体としてはバイオ分子標識400が分散していた緩衝液と同一の液体が好ましい。
【0060】
次に、磁気ビーズ含有液体投入口120に磁気ビーズ410を含む液体が投入され、流路空間230に磁気ビーズ410を含む液体が流される。
図8は、流路空間230の図中右から左へ磁気ビーズ410を含む液体を送液する工程の初期状態を示している。
【0061】
次に、
図9に示すように、送液を停止させ、流路空間230を満たした磁気ビーズ410を含む液体を静置させ、磁気ビーズ410を沈降させる。沈降した磁気ビーズ410の内、結合磁気ビーズ411はバイオ分子標識400と結合し、それ以外の非特異吸着磁気ビーズ412は、主に流路空間230の底面(保護層212の表面および有機層213の表面)に疎水性相互作用や静電相互作用などによって非特異的に吸着する。
【0062】
次に、第一の磁場印加機構150により、磁気ビーズ410(非特異吸着磁気ビーズ412)を磁気センサー220の表面から遠ざける方向の磁場を印加する。
図10に示すように、第一の磁場印加機構150による磁場印加によって、結合力が比較的弱い非特異吸着磁気ビーズ412は磁気センサー220の表面から遠ざかる方向に引き寄せられ、一方、結合力が比較的強い結合磁気ビーズ411は、第一の磁場印加機構150による磁場を印加されても引き寄せられることなく、バイオ分子標識400に結合した状態を保つ。第一の磁場印加機構150は、非特異吸着磁気ビーズ412は磁気センサー220の表面から遠ざかる方向に引き寄せられ、結合磁気ビーズ411はバイオ分子標識400に結合した状態を保つような強度の磁場を印加する。第一の磁場印加機構150がコイルである場合、コイルへ電流を印加することにより、第一の磁場印加機構150による磁場が印加される。第一の磁場印加機構150が永久磁石である場合、磁気センサー220の表面へ永久磁石を近づけることにより、第一の磁場印加機構150による磁場が印加される。
【0063】
次に、
図11に示すように、第一の磁場印加機構150による磁場を印加した状態で、磁気ビーズを含まない液体を流路空間230の図中右から左へ流し、磁気センサー220の表面から遠ざけられた非特異吸着磁気ビーズ412を除去する。第一の磁場印加機構150による磁場の印加を止めた後、磁気センサー220の表面から遠ざけられた非特異吸着磁気ビーズ412が再び磁気センサー220の表面上に沈降する前に、磁気ビーズを含まない液体を流路空間230に流し、磁気センサー220の表面から遠ざけられた非特異吸着磁気ビーズ412を除去するようにしても良い。磁気ビーズを含まない液体は磁気ビーズ投入口120または図示しない専用の投入口から投入される。このような液体としては磁気ビーズが分散していた緩衝液と同一の液体が好ましい。第一の磁場印加機構150がコイルである場合、コイルへの電流印加を停止することにより、第一の磁場印加機構150による磁場の印加を止める。第一の磁場印加機構150が永久磁石である場合、磁気センサー220の表面から永久磁石を遠ざけることにより、第一の磁場印加機構150による磁場の印加を止める。
【0064】
このように、第一の磁場印加機構150による磁場を印加した状態または第一の磁場印加機構150による磁場の印加を止めた後で、磁気ビーズを含まない液体を流路空間230に流しているので、磁場を印加せずに磁気ビーズを含まない液体を流路空間230に流す場合と比べて、磁気センサー220の表面からより迅速に非特異吸着磁気ビーズ412を除去することができる。
【0065】
図12は非特異吸着磁気ビーズ412が除去された状態を示す。すなわち磁気ビーズ410(結合磁気ビーズ411)はバイオ分子標識400上にのみ存在し、その他の部分には存在していない。したがって磁気センサー220を用いて結合磁気ビーズ411から発生する磁界を測定する(磁気センサー220による磁気検出を行う)ことにより、バイオ分子標識400の個数あるいは濃度が精度良く測定できることになる。
【0066】
磁気センサー220による磁気検出を行ってバイオ分子標識を検出する方法について説明する。
図12の状態から、第2の磁場印加機構160より結合磁気ビーズ411へ磁場を印加し、その磁場によって結合磁気ビーズ411から発生した磁界を磁気センサー220で検知し、電気信号として出力する。その電気信号を、電気信号変換部170を介して表示部180に出力し、磁界の値を結合磁気ビーズ411の個数、バイオ分子標識400の個数または濃度として表示させる。第二の磁場印加機構160がコイルである場合、コイルへ電流を印加することにより、第二の磁場印加機構160による磁場が印加される。第二の磁場印加機構160が永久磁石である場合、磁気センサー220の表面へ永久磁石を近づけることにより、第二の磁場印加機構160による磁場が印加される。
【0067】
このように、第1実施形態の検出システム300、検出装置100および検出システム300の動作方法によれば、第一の磁場印加機構150が印加する磁場により、バイオ分子標識400に結合していない、磁気センサー220の表面に非特異吸着した非特異吸着磁気ビーズ412を、磁気センサー220の表面から遠ざけることで、磁気センサー220による磁気ビーズ検出において、非特異吸着磁気ビーズ412の影響を抑え、バイオ分子標識400と結合した結合磁気ビーズ411の高精度な検出を行なうことができる。
【0068】
さらに、第1実施形態の検出システム300および検出装置100は、磁気センサー220による磁気ビーズ検出時にバイオ分子標識400と結合した結合磁気ビーズ411に磁場を印加する第二の磁場印加機構160を有するので、第二の磁場印加機構160を用いることで、磁気センサー220による磁気ビーズ検出のために適切な磁場印加ができるため、バイオ分子標識400と結合した結合磁気ビーズ411の高感度検出が可能になる。
【0069】
さらに、第1実施形態の検出システム300の動作方法は、第一の磁場印加機構150による磁場を印加した状態、または第一の磁場印加機構150による磁場を印加した後で流路空間230に磁気ビーズを含まない液体を流し、その後、磁気センサー220により磁気検出を行うので、磁気センサー220の表面より遠ざけられた非特異吸着磁気ビーズ412を、磁気センサー220近傍から取り除くことができるので、より高精度な検出が行える。
【0070】
上記で説明した第1実施形態の検出システム300および検出装置100は、第二の磁場印加機構160を有しているが、磁気センサー220による磁気検出時に、第一の磁場印加機構150により、バイオ分子標識400と結合した結合磁気ビーズ411に磁場を印加するようにすることもできる。このような場合には、第二の磁場印加機構160は無くても良い。
【0071】
また、上記で説明した第1実施形態の検出システム300の動作方法では、第一の磁場印加機構150による磁場を印加した状態、または第一の磁場印加機構150による磁場を印加した後で流路空間230に磁気ビーズを含まない液体を流し、その後、磁気センサー220により磁気検出を行っているが、流路空間230に磁気ビーズを含まない液体を流すことを省略することもできる。この場合でも、磁気ビーズ410を磁気センサー220の表面から遠ざける方向の磁場を印加し、その後、磁気センサー220により磁気検出を行うことにより、非特異吸着磁気ビーズ412の影響を抑え、バイオ分子標識400と結合した結合磁気ビーズ411の高精度な検出を行なうことができる。
【0072】
また、上記で説明した実施形態では、磁気ビーズ410がバイオ分子標識400と直接的に結合する例で説明したが、例えばバイオ分子標識400に触媒(図示しない)を担持させるなどして、
図13に示すように、磁気ビーズ410をバイオ分子標識400の近傍の分子(バイオ分子標識400の近傍の磁気センサー220の表面に存在する分子)と選択的に結合させることによって、磁気ビーズ410をバイオ分子標識400とは直接的には結合しない形でバイオ分子標識400の近傍に存在させるようにしてもよい。
【0073】
あるいは、バイオ分子標識400に触媒(図示しない)を担持させるなどして、
図14に示すように、磁気ビーズ支持分子420をバイオ分子標識400の近傍に選択的に成長させ、磁気ビーズ410を磁気ビーズ支持分子420と結合させることによって、磁気ビーズ410をバイオ分子標識400とは直接的には結合しない形でバイオ分子標識400の近傍に存在させるようにしてもよい。
【0074】
(第2実施形態)
第2実施形態については、第1実施形態と異なる点について主に説明し、共通する事項は適宜説明を省略する。
【0075】
(検出装置)
第2実施形態の検出装置101は、
図15に示すように、第1実施形態の検出装置100から液体排出部140を取り除いたものであり、検出装置101の生体由来液体投入口110および磁気ビーズ含有液体投入口120に投入された液体は、後述する検出デバイス201のウェル空間500に導入される。検出装置101のその他の構成は、第1実施形態の検出装置100と同じである。
【0076】
(検出システム)
第2実施形態の検出システム301は、
図16に示すように、第1実施形態の検出装置100にかえて検出装置101が用いられ、第1実施形態の検出デバイス200にかえて検出デバイス201が用いられる。検出システム301は、検出デバイス201が検出装置101の検出デバイス挿入口190に挿入された状態で作動する。
【0077】
(検出デバイス)
第2実施形態の検出デバイス201は、
図17に示すように、上部が開放されている井戸型のウェル空間500と、磁気センサー220と、ウェル部材510とを有して構成されている。ウェル空間500は、ウェル部材510の壁面と磁気センサー220の表面(壁面)により形成される空間である。ウェル空間500には、生体由来液体投入口110に投入されたバイオ分子標識400を含む液体または、体液化学処理部130で処理されたバイオ分子標識400を含む液体や、磁気ビーズ含有液体投入口120に投入された磁気ビーズ410を含む液体が導入される。
図17は、検出デバイス201の断面図である。
【0078】
第2実施形態の検出デバイス201は、第1実施形態の検出デバイス200に対して、流路空間230がウェル空間500に、流路部材214がウェル部材510に置き代わっており、それら以外の構成は共通している。
【0079】
第1実施形態では、流路空間230にバイオ分子標識400を含む液体を流した後にバイオ分子標識400を磁気センサー220の表面に固定し、流路空間230に磁気ビーズ410を含む液体を流した後に磁気ビーズ410をバイオ分子標識400またはバイオ分子標識400の近傍の分子に結合させるのに対し、第2実施形態では、ウェル空間500にこれらの液体を導入後、滞留させることでバイオ分子標識400の固定や、磁気ビーズの結合を行う。
【0080】
ウェル部材510は、ウェル空間500を形成するための部材であり、ウェル空間500の側壁面を構成する。ウェル部材510の材料としては、例えば、化学的に安定なガラスや樹脂、ゴム材を用いることができ、バイオ分子標識400を含む液体や磁気ビーズ410を含む液体の液性、粘度および磁気センサー220との間の密閉性等を考慮し、適切な材料が選択される。
【0081】
(検出システムの動作方法)
図18から
図26を参照して、検出システム301の動作方法(本発明における検出方法の例)について説明する。まず、生体由来液体投入口110に生体に由来する液体が投入される。生体由来液体投入口110に投入された生体に由来する液体は、必要に応じて体液化学処理部130で処理され、バイオ分子標識400を含む液体としてウェル空間500に導入される。
図18は、ウェル空間500の図中上から下へバイオ分子標識400を含む液体を導入する工程の初期状態を示している。
【0082】
次に、
図19に示すように、バイオ分子標識400を含む液体の導入を停止させ、ウェル空間500内にバイオ分子標識400を含む液体を所定時間滞留させ、バイオ分子標識400を沈降させる。沈降したバイオ分子標識400の内、磁気センサー220上のバイオ分子標識400は有機層213により磁気センサー220の表面に固定され、それら以外のバイオ分子標識400は保護層212上に固定されずに堆積する。
【0083】
次に、
図20に示すように、保護層212上に堆積しているバイオ分子標識400を、ウェル空間500の上部からスポイト600等を用いて除去する。
【0084】
次に、磁気ビーズ含有液体投入口120に磁気ビーズ410を含む液体が投入され、
図21に示すように、ウェル空間500に磁気ビーズ410を含む液体が導入される。
図21はウェル空間500の図中上から下へ磁気ビーズ410を含む液体を導入する工程の初期状態を示している。
【0085】
次に、
図22に示すように、磁気ビーズ410を含む液体の導入を停止させ、ウェル空間500内に磁気ビーズ410を含む液体を所定時間滞留させ、磁気ビーズ410を沈降させる。沈降した磁気ビーズ410の内、結合磁気ビーズ411はバイオ分子標識400と結合し、それ以外の非特異吸着磁気ビーズ412は、主にウェル空間500の底面(保護層212の表面および有機層213の表面)に疎水性相互作用や静電相互作用などによって非特異的に吸着する。
【0086】
次に、
図23に示すように、第一の磁場印加機構150により、磁気ビーズ410(非特異吸着磁気ビーズ412)を磁気センサー220の表面から遠ざける方向の磁場を印加する。
図23に示すように、第一の磁場印加機構150による磁場印加によって、結合力が比較的弱い非特異吸着磁気ビーズ412は磁気センサー220の表面から遠ざかる方向に引き寄せられる。一方、結合力が比較的強い結合磁気ビーズ411は、第一の磁場印加機構150による磁場を印加されても引き寄せられることなく、バイオ分子標識400に結合した状態を保つ。第一の磁場印加機構150は、非特異吸着磁気ビーズ412は磁気センサー220の表面から遠ざかる方向に引き寄せられ、結合磁気ビーズ411はバイオ分子標識400に結合した状態を保つような強度の磁場を印加する。第一の磁場印加機構150がコイルである場合、コイルへ電流を印加することにより、第一の磁場印加機構150による磁場が印加される。第一の磁場印加機構150が永久磁石である場合、磁気センサー220の表面へ永久磁石を近づけることにより、第一の磁場印加機構150による磁場が印加される。
【0087】
次に、
図24に示すように、第一の磁場印加機構150に非特異吸着磁気ビーズ412を付着させる。非特異吸着磁気ビーズ412を付着させた第一の磁場印加機構150は、ウェル空間500から遠ざけた位置に移動させることが望ましい。第一の磁場印加機構150に非特異吸着磁気ビーズ412を付着させることによって、磁気センサー220の表面より遠ざけられた非特異吸着磁気ビーズ412を、磁気センサー220の近傍から取り除くことができるので、より高精度な検出が行える。
【0088】
図25は非特異吸着磁気ビーズ412が除去された状態を示す。すなわち、磁気ビーズ410(結合磁気ビーズ411)はバイオ分子標識400上にのみ存在し、その他の部分には存在していない。したがって磁気センサー220を用いて結合磁気ビーズ411から発生する磁界を測定する(磁気センサー220による磁気検出を行う)ことにより、バイオ分子標識400の個数あるいは濃度が精度良く測定できることになる。
【0089】
磁気センサー220による磁気検出を行ってバイオ分子標識を検出する方法について説明する。
図25の状態から、第1実施形態と同様にして、第2の磁場印加機構160より結合磁気ビーズ411へ磁場を印加し、その磁場によって結合磁気ビーズ411から発生した磁界を磁気センサー220で検知し、電気信号として出力する。その電気信号を、電気信号変換部170を介して表示部180に出力し、磁界の値を結合磁気ビーズ411の個数、バイオ分子標識400の個数または濃度として表示させる。第二の磁場印加機構160がコイルである場合、コイルへ電流を印加することにより、第二の磁場印加機構160による磁場が印加される。第二の磁場印加機構160が永久磁石である場合、磁気センサー220の表面へ永久磁石を近づけることにより、第二の磁場印加機構160による磁場が印加される。
【0090】
このように、第2実施形態の検出システム301、検出装置101および検出システム301の動作方法によれば、第一の磁場印加機構150が印加する磁場により、バイオ分子標識400に結合していない、磁気センサー220の表面に非特異吸着した非特異吸着磁気ビーズ412を、磁気センサー220の表面から遠ざけることで、磁気センサー220による磁気ビーズ検出において、非特異吸着磁気ビーズ412の影響を抑え、バイオ分子標識400と結合した結合磁気ビーズ411の高精度な検出を行なうことができる。
【0091】
さらに、第2実施形態の検出システム301および検出装置101は、磁気センサー220による磁気ビーズ検出時にバイオ分子標識400と結合した結合磁気ビーズ411に磁場を印加する第二の磁場印加機構160を有するので、第二の磁場印加機構160を用いることで、磁気センサー220による磁気ビーズ検出のために適切な磁場印加ができるため、バイオ分子標識400と結合した結合磁気ビーズ411の高感度検出が可能になる。
【0092】
さらに、第2実施形態の検出システム301の動作方法は、磁気センサー220の表面がその壁面の一部を構成するウェル空間500に、バイオ分子標識400を含む液体を導入して磁気センサー220の表面にバイオ分子標識400を固定させ、ウェル空間500に磁気ビーズ410を含む液体を導入して、磁気ビーズ410の少なくとも一部を、磁気センサー220の表面に固定されるバイオ分子標識400または磁気センサー220の表面に固定されるバイオ分子標識400の近傍の分子に結合させ、磁場を印加して磁場を印加する第一の磁場印加機構150に磁気ビーズ410(非特異吸着磁気ビーズ412)を付着させ、その後、磁気センサー220により磁気検出を行う。これによれば、第一の磁場印加機構150に非特異吸着磁気ビーズ412を付着させることによって、磁気センサー220の表面より遠ざけられた非特異吸着していた磁気ビーズ410を、磁気センサー220の近傍から取り除くことができるので、より高精度な検出が行える。
【0093】
上記で説明した第2実施形態の検出システム301および検出装置101は、第二の磁場印加機構160を有しているが、磁気センサー220による磁気検出時に、第一の磁場印加機構150により、バイオ分子標識400と結合した結合磁気ビーズ411に磁場を印加するようにすることもできる。このような場合には、第二の磁場印加機構160は無くても良い。
【0094】
また、上記で説明した第2実施形態の検出システム301の動作方法では、第一の磁場印加機構150に非特異吸着磁気ビーズ412を付着させて除去する例で説明したが、
図26に示すように、第一の磁場印加機構150による磁場を印加した状態で、ウェル空間500の上部からスポイト600等を用いて非特異吸着磁気ビーズ412を除去するようにしてもよい。また、第一の磁場印加機構150による磁場の印加を止めた後、磁気センサー220の表面から遠ざけられた非特異吸着磁気ビーズ412が再び磁気センサー220の表面上に沈降する前に、ウェル空間500の上部からスポイト600等を用いて非特異吸着磁気ビーズ412を除去するようにしても良い。
【0095】
第2実施形態の検出デバイス201の変形例として
図27から
図29に示す構成例が挙げられる。
図27は、ウェル部材510がウェル空間500の側壁面および底面の一部の壁面を構成し、ウェル部材510の底部上に磁気センサー220が設置されている例を示す図である。
図28は、ウェル部材510の一部が保護層212の側面と対向するように設置されている例を示す図である。
図29は、ウェル部材510の一部がウェル空間500の底面の壁面の一部を構成する例を示す図である。
【0096】
なお、バイオ分子標識400の磁気センサー220の表面への固定を、第2実施形態で説明したようにウェル空間500で行い、その後、ウェル部材510から分離した磁気センサー220と、第1実施形態で説明した流路部材214と組み合わせて流路空間230を形成し、磁気ビーズ410のバイオ分子標識400またはバイオ分子標識400の近傍の分子への結合を、第1実施形態で説明したように流路空間230で行ってもよい。つまり、この場合は、流路空間230は磁気ビーズ410を含む液体が導入される空間となり、流路空間230を形成する壁面の一部を構成する磁気センサー220の表面にバイオ分子標識400が固定されていることになる。
【0097】
また、バイオ分子標識400の磁気センサー220の表面への固定を、第1実施形態で説明したように流路空間230で行い、その後、流路部材214から分離した磁気センサー220と、第2実施形態で説明したウェル部材510とを組み合わせてウェル空間500を形成し、磁気ビーズ410のバイオ分子標識400またはバイオ分子標識400の近傍の分子への結合を、第2実施形態で説明したようにウェル空間500で行ってもよい。つまり、この場合は、ウェル空間500は磁気ビーズ410を含む液体が導入される空間となり、ウェル空間500を形成する壁面の一部を構成する磁気センサー220の表面にバイオ分子標識400が固定されていることになる。