(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アンテナコイル装置のコネクタ端子および前記実装端子における、各々の端部領域以外の領域が、モールド樹脂部により覆われて、前記モールド樹脂部の樹脂が前記長円状開口部の露出部分に入り込んだ状態とされていることを特徴とする請求項4に記載のアンテナコイル装置。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車内でラジオ放送やテレビ放送を聴取するため、リアウィンドウ内に設けられたデフォッガの加熱線や、この加熱線の周辺部に設けたアンテナ線条をラジオ放送やテレビ放送の受信アンテナとした自動車用ガラスアンテナが知られている。
【0003】
このような自動車ガラスアンテナにより受信されたラジオ放送やテレビ放送の電波信号は、デフォッガの加熱線に電力を供給するバッテリ出力に含まれるノイズの影響を受けることが多く、また、デフォッガ用加熱線とバッテリとを接続する給電線を介してボディーや直流電源側に漏洩してしまうことがある。
【0004】
このようなことから、自動車ガラスアンテナを用いる場合、その受信信号へのノイズの重畳や、ボディー等への信号漏洩を抑制するため、自動車ガラスアンテナと、ボディーや直流電源との間にアンテナ用コイル装置と称されるチョークコイルを挿入して、固有の自己共振周波数に設定し、信号電波の周波数帯域に合わせて高いインピーダンスを発生させ、電波信号に重畳するノイズや、ボディー等に漏洩する信号を取り除く手法が知られている。
【0005】
このようなアンテナ用コイル装置の具体的な構造としては、種々のものが提案されているが、例えば、自動車から受ける振動に対する強度確保等の観点から、ソレノイド状に形成されたコイルの長手軸方向に沿うようにして比較的厚みのある2つの端子板が設けられるとともに、これら2つの端子板とコイルを一体に保持する樹脂ベース部材が設けられた構成を有する、下記特許文献1に記載されたもの等が提案されている。
【0006】
図17((a)、(b)、(c))には、下記特許文献1に記載されたアンテナ用コイル装置310が示されている。アンテナ用コイル装置310は、第1および第2の末端部311a、bを有する巻線コイル316と、巻線コイル316の内部に挿通配置された磁性コア312と、巻線コイル316の一方の末端部311aが接続されたコネクタ端子313と、巻線コイル316の他方の末端部311bが接続されるとともに、第1の実装面314aと、第2の実装面314bと、第1および第2の実装面に一体的に連接された本体部314cと、を備えた実装端子314と、実装端子314が取り付けられるとともに、巻線コイル316を載置する載置面317c、318cを備えた樹脂部材317,318とから構成される。そして、これらの樹脂部材317,318は、分割されて第1の樹脂部材317と第2の樹脂部材318として形成される。第1の樹脂部材317と第2の樹脂部材318のうち、少なくとも一方は、本体部上で配置を変更可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、このような製品の構造においては、巻線コイル316の両端部311a、bがそれぞれ磁性コア312の左右から、実装面と平行となるように突出しているため、絡げ部313c、314fに半田付けする時に、一端部311aの半田付け作業が終了してから、アンテナコイル装置を180°回転しなければ、他端部311bの半田付け作業はできないので、工数が増加したり生産効率が低下したりする点で問題がある。
【0009】
また、巻線コイル316の両端部311a、bが磁性コア312の長手方向である前後方向(一端部が前側方向、他端部が後側方向)に引き出された場合、この前後方向でのアンテナコイル装置の長さが大きくなり過ぎ、小型化の面で不利となる。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、生産効率の向上を図るとともに装置の小型化を促進し得るアンテナコイル装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明に係るアンテナコイル装置は、以下の特徴を備えている。
本発明に係るアンテナコイル装置は、
磁性コアと、
絶縁皮膜を有するワイヤを、この磁性コアの周りに巻回してなるコイルと、
上記磁性コアおよびコイルを載置する樹脂ベース部材と、
この樹脂ベース部材と一体に形成された実装端子、およびこの樹脂ベース部材に取付けられたコネクタ端子とを有するアンテナコイル装置であって、
上記コネクタ端子と上記実装端子が上記樹脂ベース部材中において非接触とされた状態で、該コネクタ端子の板状の中間部と該実装端子の実装端部が各々上記実装面と平行となるように、かつ2段に重ねられた配置とされ、上記コネクタ端子は上記実装端子を挟んで実装面とは反対側の位置に配設され、
上記樹脂ベース部材には、実装面と直交する方向に軸を有する開口部が設けられ、上記コイルの両端部の一方の下方に延びる端部が、該開口部において上記実装端子の切欠き部による電気接続部と電気的に接続するように構成され、
また、上記コイルの両端部の他方の横方向に延びる端部が、上記樹脂ベース部材の上部において上記コネクタ端子の実装端部と根元部の間に位置する立上り部から側方に分岐した電気接続部の上向きの切欠き部と電気的に接続するように構成され、
上記コネクタ端子の上記根元部において、両側に第1腕部と第2腕部が形成され、該両腕部の先端に樹脂ベース部材の係合部に係合する爪部が設けられてなることを特徴とするものである。
【0012】
また、上記実装端子は、上記樹脂ベース部材から露出する露出部を備えていることが好ましい。
【0013】
また、上記実装端子の中間部に長円状開口部が形成されることが好ましい。
この実装端子の長円状開口部の一部が上記樹脂ベース部材の外部に露出していることが好ましい。
【0014】
さらに、上記アンテナコイル装置のコネクタ端子および上記実装端子における、各々の端部領域以外の領域が、モールド樹脂部により覆われて、上記モールド樹脂部の樹脂が上記長円状開口部の露出部分に入り込んだ状態とされていることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のアンテナコイル装置によれば、コネクタ端子と実装端子および樹脂ベース部材の強度が高まることにより、コネクタ端子と実装端子との間に発生する応力によっても損傷を受け難い構造となっている。
【0016】
なお、後述の参考例に係るアンテナコイル装置およびその製造方法によれば、樹脂ベース部材には、実装面と直交する方向に軸を有する第1開口部および第2開口部が設けられ、上記コイルの両端部の一方がこの第1開口部において、他方がこの第2開口部において、半田付け処理によりそれぞれ実装端子およびコネクタ端子と電気的に接続するように構成されている。これにより、コイルの両端部が各々第1開口部および第2開口部を通して同一方向(実装面に向かう方向:
図17中では下方向)に引き出されることとなり、アンテナコイル装置の半田つけ作業を両端子について同一方向から同時に行うことができ、作業時間の効率化を図ることができる。
また、2つの端子の半田付け処理の間にアンテナコイル装置を180度回転させる必要がないので、製造工程数を削減することができる。
また、このような構成とすることによりアンテナコイル装置を全体として小型化することができる。
【0017】
なお、実装端子の延びる方向における第1開口部と第2開口部との距離が、巻回したコイルの幅に略一致するように配置すれば、コイルの両端部を各々対応する開口部を通して引き出しやすい、という効果の他、2つの開口部間に十分な距離を確保することができるので、一方の半田付け作業時の熱により他方の樹脂ベース部材が損傷を受ける虞を回避することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】参考例1に係るアンテナコイル装置を前側から見た斜視図である。
【
図2】参考例1に係るアンテナコイル装置を前側から見た分解斜視図である。
【
図3】参考例1に係るアンテナコイル装置の樹脂ベース部材を前側から見た斜視図である。
【
図4】参考例1に係るアンテナコイル装置の樹脂ベース部材の、
図3A−A線断面図である。
【
図5】比較例と参考例に係る、樹脂ベース部材と端子部を組み合わせた状態における前側斜視図およびそれらの構造の応力シミュレーション図((a)は比較例を示す斜視図、(b)は比較例の応力シミュレーション図、(c)は参考例を示す斜視図、(d)は参考例の応力シミュレーション図)である。
【
図6】参考例1に係るアンテナコイル装置の実装端子を前側から見た斜視図である。
【
図7】参考例1に係るアンテナコイル装置における、樹脂ベース部材と実装端子とのインサート成形品を前側から見た斜視図である。
【
図8】参考例1において、樹脂ベース部材の延長部の長さ(突起長さ)に対する安全率(最小安全率)の関係を示すグラフである。
【
図9】参考例1に係るアンテナコイル装置のコネクタ端子を前側から見た斜視図である。
【
図10】参考例2に係るアンテナコイル装置を前側から見た斜視図である。
【
図11】参考例2に係るアンテナコイル装置の実装端子を前側から見た斜視図である。
【
図12】参考例2に係るアンテナコイル装置における、樹脂ベース部材と実装端子とのインサート成形品を前側から見た斜視図である。
【
図13】本発明の実施形態に係るアンテナコイル装置を前側から見た斜視図である。
【
図14】本発明の実施形態に係るアンテナコイル装置を前側から見た分解斜視図である。
【
図15】本発明の実施形態に係るアンテナコイル装置の実装端子を前側から見た斜視図である。
【
図16】本発明の実施形態に係るアンテナコイル装置のコネクタ端子と実装端子の位置関係を前側から見た斜視図である。
【
図17】従来技術に係るアンテナコイル装置を示す斜視図((a)は前側から見た斜視図、(b)は後側から見た斜視図、(c)は前側から見た分解斜視図)である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態に係るアンテナコイル装置について、上記図面を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
<参考例1>
参考例1に係るアンテナコイル装置10は
図1および
図2に示すように、フェライトなどの磁性体からなるコア30と、このコア30に巻回された絶縁皮膜を有するコイル20と、コア30およびコイル20を載置する樹脂ベース部材40と、インサート成形により樹脂ベース部材40と一体とされた実装端子50と、樹脂ベース部材40内において、実装端子50と非接触状態かつ並行して樹脂ベース部材に取り付けられたコネクタ端子60とにより構成されている。ここで、実装端子50が取付けられる実装基板上の面を実装面と称する。
【0021】
図1、
図2、
図3および
図4に示すように、樹脂ベース部材40は、基本的にはコイル20を巻回されたコア30を載設するベースとして形成されたものであり、外方に向けて開放された第1開口部41と、円弧と直線により形成された第2開口部42と、前側(コネクタ端子60の突出側)に位置する仕切り部44よりもさらに前方(先端方向)に延ばされた延長部43とを有する。
【0022】
さらに、実装端子50は、この樹脂ベース部材40とともにインサート成形がなされることにより一体とされるものであり、樹脂ベース部材40は、実装端子50を収納する第1スリット状収納部45を有する。
また、インサート成形後に、樹脂ベース部材40にコネクタ端子60を取り付けるためには、上記第1スリット状収納部45とほぼ並行に、かつ第1スリット状収納部45よりも一段上方(図中で上方向)にコネクタ端子60を収納する第2スリット状収納部46が設けられている。また、第2スリット状収納部46と連通する位置に、大きな開放空間とされた開放部47が設けられ、樹脂ベース部材40の側面および前面からなる仕切り部44によって、開放部47が画成される(仕切り部44により開放部47の後側の端部が形成される)。
この仕切り部44に沿って、コネクタ端子60が「L」状に立上り、さらにその先端が実装面と平行となるように再度折り曲げられて、仕切り部44から前方に突出するように形成されている。
【0023】
また、仕切り部44の位置よりも前方に突出する実装端子50の長手方向に沿い、樹脂ベース部材40の一部が所定長に亘って延出し、延長部43を構成している。すなわち、この延長部43は実装端子50の周囲(上下左右方向)において、実装端子50に密着して包囲する樹脂ベース部材40の一部である。
このように、樹脂ベース部材40の一部として延長部43を設けたのは以下の理由による。
【0024】
すなわち、アンテナコイル装置10を実装基板に設置するため、コネクタ端子60をバスバーの実装用差込口に差し込んで取り付ける際に、差込口の高さ位置の誤差や、コネクタ端子60を差し込む際の押圧力等による影響で、コネクタ端子60に実装面と垂直な上方向への応力が発生する。この応力は、アンテナコイル装置10全体、特に、コネクタ端子60が突出している側に延びる実装端子50およびコネクタ端子60と、樹脂ベース部材40との当接位置付近の領域において、前側部分の左右方向の両脇に集中的にかかることとなる。なお、応力がかかっている領域は、元々の樹脂ベース部材40を表す濃度よりも淡く(明るく)表されている(
図5(b)、(d)を参照)。
【0025】
従来技術に係る比較例(上記延長部43を有していない)の構成図(
図5(a))および、その応力シミュレーション図(
図5(b))からも明らかなように、このような従来技術においては、応力が、実装端子50と当接する樹脂部位(仕切り部44)に集中してしまい、特に、装置小型化の要請から、樹脂ベース部材40のサイズの小型化や薄肉化が図られると強度が低下し、この部位が破損してしまう虞がある。
そこで、本実施形態においては、樹脂ベース部材40の一部として上記延長部43を形成して、実装端子50の両脇に対応する樹脂部位に集中していた応力を、幾つかの部位に分散する(特に、
図5(d)に示すように、第1開口部41の縁部に応力がかかっており、応力がかかる領域が拡大している)ことで、各部位にかかる応力を小さなものとしている。このことは、実施形態の構成図(
図5(c))、およびその応力シミュレーション図(
図5(d))からも明らかである(従来例を表す
図5(b)に比して、濃度の淡い(明るい)領域が分散している)。
【0026】
したがって、アンテナコイル装置10の小型化が進み、樹脂ベース部材40の薄肉化がなされた場合であっても、各部位における最大応力が低減されているので、装置が損傷する虞を回避することができる。
【0027】
図6は実装端子50の前側から見た斜視図を示すものである。実装端子50は、平板状の中間部56と、中間部56に対して前後の両端に位置し、図示しない実装基板上に設置される実装端子54A、54Bとを備え、さらに、中間部56と実装端子54B(コネクタ端子60の突出側とは反対側に位置する端子)との間に、盛上り部53が形成されている。この盛上り部53には、コイル20の他端部と半田付けにより電気的に接続される電気接続部52が形成されている。この電気接続部52は、実装端子50の側縁部から内側に形成されたU字形状の切欠き部であり、コイル20の他端部を上記側縁部方向から容易に挿入し得るような大きさとされている。
【0028】
また、実装端子50が樹脂ベース部材40と一体化されたときに、電気接続部52が樹脂ベース部材40の第2開口部42と対応する位置(第2開口部42を通して、直下に視認し得る位置、すなわち、第2開口部42から露出する位置)に配されるように形成されている。このように、コイル20の他端部は、この第2開口部42を通して樹脂ベース部材40の内部に挿入され、容易に電気接続部52と接続され得るような位置に配設されている。
【0029】
また、この盛上り部53は、後述するコネクタ端子60の根元部63(電気接続部61が設けられている:
図9を参照)と略同じ高さで、実装面に平行となるように形成されている。このため、アンテナコイル装置10の製造工程においては、溶融半田を少なくとも2経路に分岐し、略同じ高さに設定した2部位を、下方から半田付けし得る噴流式の半田装置を用いることにより、コイル20の両端部の半田付けを略同時に行なうことができる。
なお、電気接続部52にコイル20の他端部が収容された場合、下方から見ると第2開口部42の開口部分が略塞がれた状態となるため、溶融半田の噴流は電気接続部52の上方まで侵入することができないので、溶融半田が吹き上がったことにより生じる電気的なショートの虞を回避することができる。
【0030】
また、中間部56には、樹脂ベース部材40の第1開口部41に対応するように、切欠き部51が設けられている。切欠き部51は第1開口部41よりも大きく形成されており、切欠き部51の縁部が樹脂ベース材料40によって被覆した状態に形成されている。このため、後述するコネクタ端子60の電気接続部61と、この電気接続部61に位置決めされたコイル20の一端部とを電気的に接続するために形成された半田玉が、実装端子50の第1開口部41において、実装端子50と接触するのを防止することができるので、半田と実装端子50との絶縁性を保つことができ、これにより、コネクタ端子60と実装端子50との絶縁性を保つことができる。
【0031】
なお、
図6および
図7に示されるように、中間部56の前側(コネクタ端子60の突出側)の先端部には、樹脂製の延長部43よりさらに外部に突出した露出部57が形成されている。
この「露出部」とは、樹脂ベース部材40、あるいは延長部43から外部に突出することを意味し、その突出量に拘らず「露出部」と称するものとする。
【0032】
ところで、樹脂ベース部材40、ひいてはアンテナコイル装置10の強度を高めるためには、露出部57の長さと延長部43の長さの和に対する、延長部43の長さを35〜50%となるようにすることが好ましい。さらに、延長部43の長さを露出部57の長さと延長部43の長さの和の40%程度とすることがより好ましい。
延長部43の長さを0.5mmから9.85mm(露出部が略0に相当する)の間で変化させながら、10のサンプル点の各々について最小安全率を測定した。
【0033】
図8は、このようにして得られた各サンプル点をプロットして、延長部43の長さと最小安全率の関係をグラフ化したものである。図示するように、延長部43の長さが4mmの時、最小安全率が一番高くなる、との結果が得られた。
また、延長部43の長さが5mmを超えると、最小安全率は変化しないものの、破壊モードが、露出部57と延長部43の境界面位置から、樹脂ベース部材40の第1開口部41の縁部付近の位置に移動する。
なお、第1開口部41の縁部においては、絶縁性確保のために樹脂材により肉厚を厚くする必要がある等の設計上の他の制約が加わるので、結局、延長部43を長くし過ぎて、応力が極度に第1開口部41の縁部にかかるようにすることは得策とはいえない。
【0034】
また、
図9に示すように、コネクタ端子60は実装端部62と、樹脂ベース部材40の収納部46に収納された根元部63と、これら実装端部62と根元部63の間に位置し、根元部63からL字状に立ち上がる立上り部64を有し、根元部63には、コイル20の一端部との間で半田付けがなされる電気接続部61が設けられている。
この電気接続部61は、コネクタ端子60の側縁部から内側に形成されたU字形状の切欠き部であり、コイル20の一端部を上記側縁部方向から容易に挿入し得るような大きさとされている。
【0035】
また、コネクタ端子60の根元部63に設けられた電気接続部61は、コネクタ端子60が樹脂ベース部材40に取り付けられたときに、樹脂ベース部材40の第1開口部41と対応する位置(第1開口部41を通して、上方から視認し得る位置、すなわち、第1開口部41から露出する位置)に配されるように形成されている。このように、コイル20の一端部は、この第1開口部41を通して樹脂ベース部材40の内部に挿入され、容易に、コネクタ端子60の電気接続部61と接続され得るように構成されている(
図1を参照)。
なお、U字形状の切欠きからなる電気接続部61は、実装端子50の電気接続部52とほぼ同様の構成とされている。
【0036】
なお、電気接続部61にコイル20の一端部が収容される場合、コイル20が余裕をもって(隙間が生じるように)電気接続部61に収容される場合以外は、下方から見ると第1開口部41の開口部分が略塞がれた状態となるため、溶融半田の噴流は電気接続部61の上方まで侵入することができないので、溶融半田が吹き上がったことにより生じる電気的なショートの虞を回避することができる。
【0037】
次に、参考例1に係るアンテナコイル装置10の製造方法について説明する。
【0038】
まず、コア30に対して絶縁被膜を有するワイヤを巻回してコイル20を形成する。さらに、コイル20の2つの端部(一端部は第1開口部41を通り、他端部は第2開口部42を通る)を同じ方向(実施形態のアンテナコイル装置10の下方)に引き出す。
【0039】
上述した実装端子50の平面形状を金属板材から切り出し、折り曲げ工程を経てから立体形状の実装端子50を形成する。その後、上記実装端子50を金型内に設置し、樹脂を金型内に射出し、一体成形(インサート成形)することで、実装端子50と一体化された樹脂ベース部材40を形成する。また、別途用意した、折曲げによりフォーミングされたコネクタ端子60を樹脂ベース部材40に取付ける。
【0040】
次に、上記コイル20が巻回されたコア30を樹脂ベース部材40に載置して取付ける。そして、コイル20の両端部の一方(一端部)をコネクタ端子60の電気接続部61と接続するように、他方(他端部)を実装端子50の電気接続部61と接続するようにする。その後、少なくとも2分岐を有する噴流式半田装置を用いて、コイル20の一端部と電気接続部61、およびコイル20の他端部と電気接続部52について同時に半田付け処理を行う。
【0041】
最後に、上記形態のままで製品を出荷することも可能であるが、耐熱性向上、強度向上、絶縁性向上、さらには防水性向上等の各々の目的に合わせて、以下に説明するような工程を追加して行うことも可能である。
例えば、アンテナコイル装置10をガラス繊維、ポリオレフィン、フッソ系ポリマー、熱可塑性エラストマー、PTFE(四フッ化エチレン樹脂)等の材質からなる絶縁性および耐熱性が良好なチューブに挿入することが好ましい。あるいは、チューブに挿入する処理に替えて、アンテナコイル装置10を再度金型に装填し、金型内に樹脂を射出して、絶縁性および耐熱性を確保し得るモールド樹脂部を形成することも可能である。
【0042】
<参考例2>
参考例2にかかるアンテナコイル装置110は、
図10に示すように、下述する実装端子150の形状(
図11を参照)以外は、基本的な要素において、参考例1のアンテナコイル装置10と同様に形成されている。なお、参考例2において用いられる各要素に付した符号は、参考例1の対応する要素に付した符号に100を加えたものとして表す。
【0043】
すなわち、参考例2においては、
図11に示すように、実装端子150の中間部156において、参考例1では設けられていない長円状の開口部158が穿設されている。
また、
図12に示すように、樹脂ベース部材140と実装端子150とをインサート成形により一体成形した後には、この長円状の開口部158の全体が、樹脂ベース部材40により埋められ、その一部は露出部157の一領域として、樹脂ベース部材40から露出した樹脂支柱の状態とされる。
【0044】
このように、参考例2においては、樹脂ベース部材140とのインサート成形時に、樹脂がこの長円状の開口部158の全体に流れ込むことにより、延長部143の前側(コネクタ部160の突出側)部分に樹脂の支柱が形成され、露出部157と延長部143との間の結合強度がさらに強くなり、上述した応力に対する強度を高めることができる。
【0045】
<実施形態>
なお、工程数削減や大幅な小型化等の解決手法はともかくとして、コネクタ端子と実装端子との間に発生する応力により損傷を受け難いようにこれらの端子の強度を高める、といった課題解決手法としては、本発明の実施形態のアンテナコイル装置210が有効である。
以下、本発明の実施形態にかかるアンテナコイル装置210について説明する。なお、この実施形態において用いられる各要素に付した符号は、参考例1の対応する要素に付した符号に200を加えたものとして表す。
【0046】
ところで、
図17に示す従来技術においては前述した課題の他に以下のような課題を有していた。すなわち、アンテナコイル装置310を実装基板に設置するため、コネクタ端子313をバスバーの実装用差込口に差し込んで取り付ける際に、差込口の高さ位置の誤差や、コネクタ端子313を差込む際の押圧力等による影響で、コネクタ端子313と実装基板に固定された実装端子314との間に、実装面に垂直な方向への応力が発生する。この応力は、アンテナコイル装置310全体、特に、コネクタ端子313が突出している側に延びる実装端子314およびこれと対応する樹脂部材317、318の幅方向の両端部分に集中する。
【0047】
一方、アンテナコイル装置310に対する小型化の要請に応じて、樹脂ベース部材317、318の面積および厚みが大幅に小さくなってきており、特に実装端子314を覆うように形成された樹脂部材317、318は、実装端子314やコネクタ端子313の幅方向の両端部分を被覆する厚みが減少するため、前述した応力によって、これらの部分が破損する虞がある。
【0048】
また、アンテナコイル装置310によっては、樹脂チューブへの収容や、モールド樹脂による被覆を行わないものもあり、このようなアンテナコイル装置310においては、コネクタ端子313や実装端子314の強度を高めることの必要性はさらに大きなものとなっている。
【0049】
そこで、本発明の実施形態のアンテナコイル装置210においては、コネクタ端子260と実装端子250との間に発生する応力によっても損傷を受け難いように、これらコネクタ端子と実装端子、および樹脂ベース部材240の強度を高めるようにしている。
【0050】
本実施形態のアンテナコイル装置210は
図13および
図14に示すように、コア230と、このコア230に巻回されたコイル220と、樹脂ベース部材240と、インサート成形により樹脂ベース部材240と一体とされた実装端子250と、この成形後に樹脂ベース部材240に取付けられるコネクタ端子260により構成されている。ここで、実装端子250が取付けられる面を実装面と称する。
【0051】
なお、
図15は実装端子250の斜視図を示すものである。この実装端子250は板状の中間部256と、中間部256の各端部側に位置し、図示しない実装面に固定され、電気的に接続される実装端子254A、254Bとを備え、中間部256と実装端子254B(コネクタ端子260の突出側とは反対側に位置する端子)との間に、盛上り部253が形成されている。この盛上り部253には、コイル220の他端部と半田付けにより電気的に接続される電気接続部252が形成されている。この電気接続部252は、実装端子250の側縁部から内側に形成されたU字形状の切欠き部であり、コイル220の他端部を上記側縁部方向(上方)から容易に挿入し得るような大きさとされている。
【0052】
また、電気接続部252が樹脂ベース部材240の開口部242と対応する位置において、この開口部から露出するように形成されている。このため、コイル220の他端部がこの開口部から下方に引き出され、半田付けにより電気接続部252と接続するように構成される。
【0053】
また、この盛上り部253は、中間部256より高い位置に形成されている。このため、電気接続部252に着設された半田玉の、実装面からの絶縁距離を確保することができ、電気的なショートの虞を回避することができる。
なお、電気接続部252にコイル220の他端部が、切欠き部に、余裕をもって(隙間が生じるように)収納される場合以外は、下方から見ると開口部242が略塞がれた状態となるため、噴流式半田付け装置を用い、溶融半田の噴流により半田付けを行う場合、半田の噴流は、電気接続部252の上方まで侵入することが困難となるので、溶融半田が吹き上がったことにより生じる電気的なショートの虞を回避することができる。
【0054】
なお、コイル220の他端部を収納する切欠き部からなる電気接続部252は、樹脂ベース部材240の開口部242とともに、コイル200の他端部の位置決めを行う基準位置として機能させることも可能である。
【0055】
なお、
図15に示すように、中間部256の前側(コネクタ端子260の突出側と同じ側)には、露出部257が設けられている。
また、
図15に示すように、実装端子250の中間部256の中央に近い部分には、長円状の開口部258が形成されている。
【0056】
このように、本実施形態においては、実装端子250の中間部256の中央に近い部分に長円状の開口部258が設けられているので、樹脂ベース部材240と実装端子250とのインサート成形時に、樹脂がこの長円状の開口部258に流れ込むことにより、樹脂ベース部材240の前側面(仕切り部)249の下方位置に樹脂の支柱248が開口部258を貫通するように形成され、樹脂ベース部材240と実装端子250との間の結合強度がさらに強くなり、上述した応力に対する強度を高めることができる。
【0057】
また、
図16に示すように、コネクタ端子260は実装端部262と、樹脂ベース部材240の収納部(参考例1の第1スリット状収納部45に類似した収納部)に収納された根元部263と、上記実装端部262および根元部263の間に位置する立上り部264とを有する。
コイル220の一端部との半田付けによって電気的に接続されるU字状の切欠き部261Aを備えた電気接続部261が、立上り部264から側方に分岐して設けられている。
また、上記根元部263において、第1腕部263A、第2腕部263Bおよびこれら両腕部263A、Bを連結する連結部263Cが、全体として「コ」字形状を形成しているため、中央に空間部を有する構造となっている。
【0058】
このような形状とすることにより、近接する、コネクタ端子260と実装端子250との対向部分面積を低減することができるので、これら両端子250、260によって発生する浮遊容量を大幅に低減することができる。なお、各腕部263A、263Bの先端には、樹脂ベース部材240と嵌合する内向きの爪部263A1、263B1が設けられており、各腕部263A、263Bが有する弾性力によって、樹脂ベース部材240の係合部に爪部263A1、263B1を把持するようにして係合する。
なお、爪部263A1、263B1が各腕部263A、263Bの先端付近において外向きに形成されていてもよいことは勿論である。
【0059】
<変更態様>
以上、本発明の実施形態に係るアンテナコイル装置について説明したが、本発明は上述した実施形態のものに態様が限定されるものではなく、種々に態様を変更することが可能である。
【0060】
例えば、上述の実施形態においては、磁性コアにコイルが直に巻回された状態のものが示されているが、用いる磁性体等に応じて、コイルが巻回されたボビンをコアに嵌挿するようにしてもよい。
また、磁性コア、樹脂ベース部材、実装端子およびコネクタ端子等の形状は実施形態のものに限られるものではなく、種々の形状に変更することが可能であり、例えば、樹脂ベース部材や各端子に設けられる透孔や切欠きは、相互に変更が可能である。