特許第6673522号(P6673522)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6673522
(24)【登録日】2020年3月9日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】壁紙
(51)【国際特許分類】
   D06N 7/04 20060101AFI20200316BHJP
   E04F 13/07 20060101ALI20200316BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20200316BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20200316BHJP
   B05D 1/26 20060101ALI20200316BHJP
   B05D 5/00 20060101ALI20200316BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20200316BHJP
【FI】
   D06N7/04
   E04F13/07 B
   B32B5/18
   B32B27/30 101
   B05D1/26 A
   B05D5/00 J
   B05D7/24 301L
   B05D7/24 302K
【請求項の数】9
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2019-195133(P2019-195133)
(22)【出願日】2019年10月28日
【審査請求日】2019年10月28日
(31)【優先権主張番号】特願2018-201718(P2018-201718)
(32)【優先日】2018年10月26日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000109037
【氏名又は名称】ダイニック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000224
【氏名又は名称】特許業務法人田治米国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安井 真志
(72)【発明者】
【氏名】田中 慎也
(72)【発明者】
【氏名】玉井 利和
【審査官】 伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−148878(JP,A)
【文献】 特開平06−155648(JP,A)
【文献】 特開2009−281112(JP,A)
【文献】 特開2014−195930(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06N 1/00− 7/26
B32B 1/00−43/00
B05D 1/00− 7/26
E04F 13/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層、塩化ビニル樹脂を含有するアンダー発泡層塩化ビニル樹脂を含有するベース樹脂層及び塩化ビニル樹脂を含有する柄発泡層がこの順で積層されてなる壁紙であって、
アンダー発泡層が樹脂発泡体から構成されており、
アンダー発泡層の発泡倍率が3倍以上10倍以下であり、ベース樹脂層の発泡倍率が1倍より大2倍以下であり、柄発泡層の発泡倍率が1倍より大7倍以下であり、
アンダー発泡層による基材被覆率が平面視で10%以上85%以下であり、アンダー発泡層を構成する塩化ビニル樹脂の見掛け重合度が700以上1500以下であり、
ベース樹脂層による基材被覆率が平面視で100%であり、ベース樹脂層を構成する塩化ビニル樹脂の見掛け重合度が1550以上4000以下であり、そして
柄発泡層による基材被覆率が平面視で20%以上85%以下であり、柄発泡層を構成する塩化ビニル樹脂の見掛け重合度が500以上1500以下である壁紙。
【請求項2】
ンダー発泡層及び柄発泡層による基材被覆率が、平面視でそれぞれ30%以上80%以下であり、アンダー発泡層、ベース樹脂層及び柄発泡層をそれぞれ構成する塩化ビニル樹脂の見掛け重合度が、それぞれ900以上1300以下、2000以上3000以下、及び600以上1300以下である請求項1記載の壁紙。
【請求項3】
アンダー発泡層の発泡倍率が5倍以上8倍以下であり、ベース樹脂層の発泡倍率がアンダー発泡層の発泡倍率の0.1倍〜0.7倍であり、柄発泡層の発泡倍率が2倍以上4倍以下である請求項2記載の壁紙。
【請求項4】
基材層の厚みが80〜150μmであり、アンダー発泡層の厚みが200〜400μmであり、ベース樹脂層の厚みが90〜170μmである請求項1〜のいずれかに記載の壁紙。
【請求項5】
基材層の坪量が50〜100g/mであり、アンダー発泡層の坪量が10〜100g/mであり、ベース樹脂層の坪量が100〜150g/mである請求項1〜のいずれかに記載の壁紙。
【請求項6】
アンダー発泡層が、塩化ビニル樹脂100質量部に対し、可塑剤40〜70質量部、安定剤1〜7質量部、充填剤5〜100質量部を含有する請求1〜のいずれかに記載の壁紙。
【請求項7】
ベース樹脂層が、塩化ビニル樹脂100質量部に対し、可塑剤40〜80質量部、安定剤1〜7質量部を含有する請求項1〜のいずれかに記載の壁紙。
【請求項8】
ベース樹脂層が、塩化ビニル樹脂100質量部に対し、更に充填剤10〜50質量部を含有する請求項記載の壁紙。
【請求項9】
請求項1記載の壁紙の製造方法であって、基材層の片面にスクリーン法で、アンダー発泡層形成用組成物を塗布し、続いてベース樹脂層形成用組成物を塗布し、更に、柄発泡層形成用組成物を塗布し、得られた積層物を加熱処理することにより、アンダー発泡層形成組成物及び柄発泡層形成用組成物をそれぞれ発泡させてアンダー発泡層及び柄発泡層を形成する製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防火性能を損なわずに耐クラック性が改善された壁紙に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの一般住宅の内壁には、壁紙用裏打紙にその全面を被覆する樹脂層と更に柄印刷層とが積層されている壁紙が接着剤で貼着されているが、内壁には経時的に歪みや亀裂が生じるため、壁紙が内壁の歪みや亀裂に追随できない場合には、壁紙にクラックが発生するという問題があった。このため、裏打紙に積層されるべき樹脂層として、密度の異なる2種類の低密度ポリエチレンのブレンド物を発泡倍率が3〜7倍となるように発泡させた発泡ポリエチレン樹脂層を使用することが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−235635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の壁紙では、ポリエチレン自体に防火能がないため、壁紙としての防火性能(換言すれば難燃性)が不十分であるという問題があった。また、壁紙を柱に貼着した場合などの折り曲げ加工時のクラック発生防止については検討されているものの、平坦な内壁に壁紙を貼りつけた場合に、内壁表面に経時的に歪みや亀裂が発生しても壁紙にクラックが発生しないようにすることについては具体的な検討がなされていない。更に、壁紙の意匠性を向上させるためにエンボス加工を施した場合には、発泡ポリエチレン樹脂層の気泡が破裂したり、不規則に膨張したりすることがあり、壁紙の意匠性が損なわれるという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決しようとするものであり、壁紙を住宅の内壁等の壁面に貼着させた場合に、壁面表面に経時的に歪みや亀裂が発生してもクラックが発生しないようにし、更に、エンボス加工しなくても良好な意匠性を示すことができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、壁紙を構成する壁紙用裏打紙のような基材層と、その全面を被覆し、優れた防火性能を示す塩化ビニル樹脂を含有するベース樹脂層との間に、所定の見掛け重合度の塩化ビニル樹脂を含有する樹脂発泡体から構成されているアンダー発泡層を、所定の基材被覆率で形成し、しかも、ベース樹脂層を構成する塩化ビニル樹脂として所定の見掛け重合度を有するものを使用することにより、上述の目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
即ち、本発明は、基材層、塩化ビニル樹脂を含有するアンダー発泡層及び塩化ビニル樹脂を含有するベース樹脂層がこの順で積層されてなる壁紙であって、
アンダー発泡層が樹脂発泡体から構成されており、
アンダー発泡層による基材被覆率が、平面視で10%以上85%以下であり、アンダー発泡層を構成する塩化ビニル樹脂の見掛け重合度が700〜1500であり、
ベース樹脂層による基材被覆率が、平面視で100%であり、ベース樹脂層を構成する塩化ビニル樹脂の見掛け重合度が、1550〜4000である壁紙を提供する。
【0008】
また、本発明は、上述の本発明の壁紙の製造方法であって、基材層の片面にスクリーン法で、アンダー発泡層形成用組成物を塗布し、続いてベース樹脂層形成用組成物を塗布し、得られた積層物を加熱処理することにより、アンダー発泡層形成用組成物を発泡させてアンダー発泡層を形成する製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の壁紙は、基材層、樹脂発泡体からなるアンダー発泡層、及び平面視で基材層を100%被覆しているベース樹脂層がこの順で積層されている構造を有する。アンダー発泡層とベース樹脂層とは、良好な防火性能を示す塩化ビニル樹脂系材料を含有する。このため、壁紙自体も良好な防火性能を示す。
【0010】
また、基材層とベース樹脂層との間に設けられているアンダー発泡層は、樹脂発泡体から構成され、しかも平面視で10%以上85%以下の基材被覆率を有する。このため、アンダー発泡層は、壁紙が貼着された壁面に亀裂や歪みが生じた結果、壁紙の基材層にも亀裂や歪みが生じたとしても、ベース樹脂層に伝播する亀裂や歪みを緩和することができ、壁紙に優れた耐クラック性を付与することができる。
【0011】
更に、ベース樹脂層表面には、アンダー発泡層の連続又は不連続の樹脂発泡体の凹凸形状が反映された意匠性に富んだ凹凸形状を、エンボス加工を施すことなく形成することができ、エンボス加工と組み合わせることにより意匠の自由度を拡大させることができる。
【0012】
また、ベース樹脂層上に柄発泡層を形成してもよく、それにより意匠の自由度を拡大させることができ、更に、壁紙を貼り合わせた際のつなぎ目の視認性を弱めることもでき、それによっても意匠の自由度を拡大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の壁紙の概略断面図である。
図2図2は、本発明の壁紙の概略断面図である。
図3図3は、本発明の壁紙の製造方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<壁紙>
本発明は、図1に示すように、基材層1と、その片面に配置された樹脂発泡体2a、2b・・・から構成されるアンダー発泡層2と、基材層1の片面全体を被覆するベース樹脂層3とから構成される壁紙10である。本発明の壁紙10は、図2に示すように、ベース樹脂層3の表面に、樹脂発泡体4a、4b・・から構成される柄発泡層4を有していてもよい。なお、これらの樹脂発泡体は、壁紙をある断面から観察したときにそれぞれ独立的に存在しているように見えるが、実際には、それぞれ独立的に存在していてもよく、例えば六方格子等のように規則的に連続していてもよく、不規則的に連続していてもよい。また、それらが混合した状態であってもよい。
【0015】
<基材層1>
本発明の壁紙10を構成する基材層1は、壁紙の裏打となるものである。基材層1としては、発泡壁紙の基材として公知の材料から機械的性質等を考慮して適宜選択して使用することができる。例えば、紙を利用したいわゆる裏打ち紙を好ましく使用することができる。
【0016】
このような基材層1の厚さは、壁紙貼着施工後に壁紙を壁面等から剥がす際の剥がし易さの観点から、好ましくは80μm以上、より好ましくは100μm以上であり、防火性能保持の観点から好ましくは150μm以下、より好ましくは130μm以下である。また、基材層1の厚さは、基材層1の坪量と正の相関があるから坪量で評価することもできる。具体的には、基材層1の坪量は、好ましくは50g/m以上、好ましくは100g/m以下である。
【0017】
<アンダー発泡層2>
本発明の壁紙10を構成するアンダー発泡層2は、組成的には塩化ビニル樹脂を含有するものであり、構造的には樹脂発泡体2a、2b・・・から構成されている。
【0018】
本発明の壁紙10を構成するアンダー発泡層2は、前述したとおり、塩化ビニル樹脂を含有する。従って、壁紙10に良好な防火性能を付与することができる。また、アンダー発泡層2の基材被覆率は、ベース樹脂層3の伸びの確保の観点から、平面視で10%以上、好ましくは30%以上である。これにより、壁紙が貼着された壁面に亀裂や歪みが生じた結果、壁紙10の基材層1にも亀裂や歪みが生じたとしても、ベース樹脂層3に伝播する亀裂や歪みを緩和することができ、壁紙に優れた耐クラック性を付与することができる。また、アンダー発泡層2の基材被覆率は、意匠性の観点から平面視で85%以下、好ましくは80%以下である。このように、アンダー発泡層2の基材被覆率が10%以上85%以下であるので、基材層1のアンダー発泡層2で被覆されていない部分を凹部とし、アンダー発泡層2を凸部とする凹凸形状が形成されることになる。よって、ベース樹脂層3の表面には、そのような凹凸形状を反映した凹凸形状を、エンボス加工を施すことなく形成することができる。
【0019】
アンダー発泡層2の発泡倍率は、意匠性の観点から好ましくは3倍以上、より好ましくは5倍以上、好ましくは10倍以下、より好ましくは8倍以下である。また、この範囲であれば、壁紙が貼着された壁面に亀裂や歪みが生じた結果、壁紙10の基材層1にも亀裂や歪みが生じたとしても、ベース樹脂層3に伝播する亀裂や歪みを緩和することができ、壁紙に優れた耐クラック性を付与することができる。
【0020】
アンダー発泡層2の厚さは、ベース樹脂層3の伸びの確保及び意匠性の観点から、好ましくは200μm以上、好ましくは400μm以下である。また、アンダー発泡層2の厚さは、アンダー発泡層2の坪量と正の相関があるから坪量で評価することができる。具体的には、アンダー発泡層2の坪量は、好ましくは10g/m以上、好ましくは100g/m以下である。
【0021】
アンダー発泡層2は、組成的には、少なくとも塩化ビニル樹脂と、可塑剤と、安定剤と、充填剤とを含有する。
【0022】
(塩化ビニル樹脂)
塩化ビニル樹脂は、アンダー発泡層2を構成する主たる樹脂である。塩化ビニル樹脂としては、従来の壁紙に使用されている公知の塩化ビニル樹脂を一種又は二種以上使用することができ、塩化ビニルホモポリマーでも、塩化ビニルと変性用モノマー(エチレン、プロピレン等のオレフィンモノマー、酢酸ビニル等のビニルエステル等)とのコポリマーであってもよい。このような塩化ビニル樹脂の見掛け重合度としては、意匠性の観点から、700以上、好ましくは900以上であり、1500以下、好ましくは1300以下である。なお、重合度が異なる複数の塩化ビニル樹脂を併用した場合の見掛け重合度は、重合度とその重合度の樹脂質量とから算出することができる。例えば、重合度Aの塩化ビニル樹脂の質量をX部とし、重合度Bの塩化ビニル樹脂の質量をY部とした場合、混合塩化ビニル樹脂の見掛け重合度Fは、F={(A×X)+(B×Y)}/(X+Y)の式で算出することができる。
【0023】
(可塑剤)
可塑剤は、塩化ビニル樹脂を可塑化し、スクリーン塗布性等の加工性を改善するための成分である。このような可塑剤としては、塩化ビニル樹脂用の可塑剤として公知のものを使用することができ、アジピン酸系可塑剤、リン酸系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、フタル酸系可塑剤等を挙げることができる。中でもフタル酸ビス(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジイソノニル等のフタル酸エステル類を好ましく使用することができる。
【0024】
このような可塑剤のアンダー発泡層2中の含有量は、塩化ビニル樹脂100質量部に対し、加工性及び意匠性の観点から好ましくは40質量部以上、より好ましくは50質量部以上であり、好ましくは70質量部以下、より好ましくは60質量部以下である。
【0025】
(安定剤)
安定剤は、熱、紫外線あるいは酸素による塩化ビニル樹脂の劣化を抑制するための成分である。このような安定剤としては、塩化ビニル樹脂用の公知の安定剤の中から適宜選択して使用することができる。例えば、バリウム−亜鉛系安定剤、カルシウム−亜鉛系安定剤等を挙げることができる。バリウム−亜鉛系安定剤及びカルシウム−亜鉛系安定剤の場合には、ステアリン酸等の高級脂肪酸の塩の形態で用いられている。
【0026】
このような安定剤のアンダー発泡層2中の含有量は、塩化ビニル樹脂100質量部に対し、加熱安定性の観点から好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、発泡外観の観点から好ましくは7質量部以下、より好ましくは4質量部以下である。
【0027】
(充填剤)
充填剤は、アンダー発泡層2の機械的強度、耐熱性、加工性等を改善するための成分である。このような充填剤としては、塩化ビニル樹脂用の公知の充填剤の中から適宜選択して使用することができる。具体的には、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、三酸化アンチモン、ホウ酸亜鉛等を挙げることができる。中でも、入手コストの点から炭酸カルシウムを好ましく挙げることができる。
【0028】
このような充填剤のアンダー発泡層2中の含有量は、塩化ビニル樹脂100質量部に対し、防火性能の観点から好ましくは5質量部以上、より好ましくは20質量部以上であり、塗布安定性の観点から好ましくは100質量部以下、より好ましくは70質量部以下である。
【0029】
(その他の添加剤)
アンダー発泡層2は、更に、塩化ビニル樹脂用の公知の添加剤、例えば、酸化亜鉛や酸化チタンなどの顔料、金属石鹸(例えばステアリン酸亜鉛)などの滑剤、酸化防止剤、防かび剤等を含有することができる。
【0030】
<ベース樹脂層3>
本発明の壁紙10を構成する塩化ビニル樹脂系のベース樹脂層3は、アンダー発泡層2を介して基材層1の片面全面にそれを被覆するように積層されている。ベース樹脂層3を、塩化ビニル樹脂系材料から構成することにより、良好な防火性能を壁紙10に付与することができる。また。アンダー発泡層2を介して基材層1の片面全面に積層されているので、仮に基材層1に歪みや亀裂が生じても、その影響を受け難くなっており、壁紙10の耐クラック性を向上させることができる。
【0031】
ベース樹脂層3は、気泡を含まない樹脂層(換言すれば発泡していない樹脂層)でもよいが、壁紙表面の艶調整のために微小な気泡を含有していてもよい。このような微小な気泡は、気泡同士が連通してもよく、独立していてもよい。ベース樹脂層3が気泡を含有する場合の発泡倍率は、耐クラック性保持の観点から好ましくは1倍より大2倍以下であるが、アンダー発泡層2との間の相対的な関係では、ベース樹脂層の発泡倍率はアンダー発泡層の発泡倍率よりも小さくなる。好ましくは、ベース樹脂層3の発泡倍率は、アンダー発泡層2の発泡倍率の0.1倍〜0.7倍とする。
【0032】
ベース樹脂層3の厚さは、塗膜の伸び性や耐クラック性の観点から好ましくは90μm以上、より好ましくは120μm以上であり、防火性能の観点から好ましくは170μm以下、より好ましくは150μm以下である。また、ベース樹脂層3の厚さは、ベース樹脂層3の坪量と正の相関があるから坪量で評価することができる。具体的には、ベース樹脂層3の坪量は、防火性能の観点から好ましくは100g/m以上、好ましくは150g/m以下である。
【0033】
ベース樹脂層3は、塩化ビニル樹脂系材料を層状に成形したものであり、組成的には少なくとも塩化ビニル樹脂と、可塑剤と、安定剤とを含有し、必要に応じて充填剤を含有することができる。
【0034】
(塩化ビニル樹脂)
塩化ビニル樹脂は、ベース樹脂層3を構成する主たる樹脂であり、アンダー発泡層2を構成する塩化ビニル樹脂と同様の樹脂を使用することができるが、ベース樹脂層3に適用する塩化ビニル樹脂の見掛け重合度としては、ベース樹脂層が耐クラック性を保持できる程度の伸びを確保する観点から、好ましくは1550以上、より好ましくは2000以上であり、加工性の観点から、好ましくは4000以下、より好ましくは3000以下である。
【0035】
(可塑剤)
可塑剤としては、アンダー発泡層2を構成する可塑剤と同様の可塑剤を使用することができ、アジピン酸系可塑剤、リン酸系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、フタル酸系可塑剤等を挙げることができる。中でもフタル酸ビス(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジイソノニル等のフタル酸エステル類を好ましく使用することができる。
【0036】
このような可塑剤のベース樹脂層3中の含有量は、塩化ビニル樹脂100質量部に対し、加工性及び意匠性の観点から好ましくは40質量部以上、より好ましくは50質量部以上であり、好ましくは80質量部以下、より好ましくは70質量部以下である。
【0037】
(安定剤)
安定剤としては、アンダー発泡層2を構成する安定剤と同様の安定剤を使用することができる。例えば、バリウム−亜鉛系安定剤、カルシウム−亜鉛系安定剤等を挙げることができる。
【0038】
このような安定剤のベース樹脂層3中の含有量は、塩化ビニル樹脂100質量部に対し、加熱安定性の観点から好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、発泡外観の観点から好ましくは7質量部以下、より好ましくは4質量部以下である。
【0039】
(充填剤)
ベース樹脂層3で充填剤を使用する場合、アンダー発泡層2を構成する充填剤と同様の充填剤を使用することができる。具体的には、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、三酸化アンチモン、ホウ酸亜鉛等を挙げることができる。中でも入手コストの点から炭酸カルシウムを好ましく挙げることができる。
【0040】
ベース樹脂層3で充填剤を使用する場合、充填剤のベース樹脂層3中の含有量は、塩化ビニル樹脂100質量部に対し、防火性能の観点から好ましくは10質量部以上であり、ベース樹脂層が耐クラック性を保持できる程度の伸びの確保の観点から好ましくは50質量部以下、より好ましくは40質量部以下である。
【0041】
(その他の添加剤)
ベース樹脂層3は、更に、塩化ビニル樹脂用の公知の添加剤、例えば、酸化亜鉛や酸化チタンなどの顔料、金属石鹸(例えばステアリン酸亜鉛)などの滑剤、酸化防止剤、防かび剤等を含有することができる。
【0042】
<柄発泡層4>
本発明の壁紙10は、アンダー発泡層2と反対側のベース樹脂層3の表面に柄発泡層4が、更に積層されていることが意匠性等の向上のために好ましい。この柄発泡層4は、ベース樹脂層3の表面に配置されており、組成的には塩化ビニル樹脂を含有するものであり、構造的には樹脂発泡体4a、4b・・・から構成されている。このように、柄発泡層4を塩化ビニル樹脂系材料から構成することにより、良好な防火性能を壁紙10に付与することができる。また。柄発泡層4を、ベース樹脂層3に部分的に設けることにより、エンボス加工を行うことなく、壁紙10に意匠性に富んだ凹凸を付与することができる。また、柄発泡層4を設けることにより、壁紙表面の凹凸により複雑なニュアンスを付与することができ、意匠の自由度を拡大することができる。更に、壁紙を壁面に施工した際の壁紙同士の境目の視認性を効果的に弱めることができる。また、壁紙全体の艶の調整の幅を拡げることができる。
【0043】
柄発泡層4は、単層でもよいが、2層以上の柄発泡単位層を多層化してもよい。多層化した場合、複数の柄発泡単位層は、互いに異なる発泡倍率や異なる柄(平面形状、例えば連続模様、不連続模様、それらが複合化した模様など)を有することができ、意匠性の自由度のいっそうの拡大を図ることができる。
【0044】
柄発泡層4の平面視での基材被覆率は、意図した意匠外観を実現するために必要な被覆率を適宜選択すればよい。単層であるか複層であるかに関わらず柄発泡層4の基材被覆率は、好ましくは20%以上85%以下、より好ましくは30%以上80%以下である。
【0045】
このような柄発泡層4の発泡倍率は、意匠性等の観点から好ましくは1倍より大、より好ましくは2倍以上であり、表面強度の観点から好ましくは7倍以下、より好ましくは4倍以下である。
【0046】
柄発泡層4の厚さは、特に制限はなく、意図した意匠外観を実現するために必要な厚さを適宜選択すればよい。
【0047】
柄発泡層4は、塩化ビニル樹脂系材料を層状に成形し、発泡処理したものであり、少なくとも塩化ビニル樹脂と、可塑剤と、安定剤と、充填剤とを含有する。
【0048】
(塩化ビニル樹脂)
塩化ビニル樹脂は、柄発泡層4を構成する主たる樹脂であり、アンダー発泡層2を構成する塩化ビニル樹脂と同様の樹脂を使用することができるが、柄発泡層4に適用する塩化ビニル樹脂の見掛け重合度としては、取扱性の観点から好ましくは500以上、より好ましくは600以上であり、発泡の安定性の観点から好ましくは1500以下、より好ましくは1300以下である。
【0049】
(可塑剤)
可塑剤としては、アンダー発泡層2を構成する可塑剤と同様の可塑剤を使用することができ、アジピン酸系可塑剤、リン酸系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、フタル酸系可塑剤等を挙げることができる。中でもフタル酸ビス(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジイソノニル等のフタル酸エステル類を好ましく使用することができる。
【0050】
このような可塑剤の柄発泡層4中の含有量は、塩化ビニル樹脂100質量部に対し、加工性と意匠性との観点から好ましくは40質量部以上、より好ましくは50質量部以上であり、好ましくは80質量部以下、より好ましくは70質量部以下である。
【0051】
(安定剤)
安定剤としては、アンダー発泡層2を構成する安定剤と同様の安定剤を使用することができる。例えば、バリウム−亜鉛系安定剤、カルシウム−亜鉛系安定剤等を挙げることができる。
【0052】
このような安定剤の柄発泡層4中の含有量は、塩化ビニル樹脂100質量部に対し、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、好ましくは7質量部以下、より好ましくは6質量部以下である。
【0053】
(充填剤)
充填剤としては、アンダー発泡層2を構成する充填剤と同様の安定剤を使用することができる。具体的には、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、三酸化アンチモン、ホウ酸亜鉛等を挙げることができる。中でも、入手コストの観点から炭酸カルシウムを好ましく挙げることができる。
【0054】
このような充填剤の柄発泡層4中の含有量は、塩化ビニル樹脂100質量部に対し、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上であり、好ましくは80質量部以下、より好ましくは70質量部以下である。
【0055】
(その他の添加剤)
柄発泡層4は、更に、塩化ビニル樹脂用の公知の添加剤、例えば、酸化亜鉛や酸化チタンなどの顔料、金属石鹸(例えばステアリン酸亜鉛)などの滑剤、酸化防止剤、防かび剤等を含有することができる。
【0056】
(表面処理)
本発明の壁紙は、ベース樹脂層や柄発泡層を設けた後、更に表面に必要に応じてエンボス加工や柄印刷を適宜行ってもよい。
【0057】
<壁紙の製造方法>
本発明の壁紙は、基材層の片面に、スクリーン法等の公知の塗布法(例えば、シルクスクリーン法、好ましくはロータリースクリーン法)でアンダー発泡層形成用組成物を塗布し、続いてベース樹脂層形成用組成物を塗布し、得られた積層物を加熱処理することにより、アンダー発泡層形成用組成物を発泡させてアンダー発泡層を形成することにより製造することができる。より具体的には、スクリーン印刷装置の一例である図3に示すようなロータリースクリーン印刷装置を用いて製造することができる。以下に詳細に説明する。
【0058】
(イ)アンダー発泡層形成用組成物層の形成工程
まず、巻き出しロール30から矢印方向に巻き出された基材層31は、ロータリースクリーン32aとバックアップロール33aとの間を通過させる。その際、ロータリースクリーン32aの内部に充填されたアンダー発泡層形成用組成物(図示せず)がロータリースクリーン32a内に配置されたスキージ(図示せず)で基材層31の片面に塗布され、乾燥炉34aを通過することによりアンダー発泡層形成用組成物層(図示せず)が形成される。なお、図3では、ロータリースクリーンを用いて塗布を行ったが、ナイフコーター等を用いてベース樹脂層形成用組成物層を形成してもよい。
【0059】
ここで、アンダー発泡層形成用組成物の組成は、アンダー発泡層2を構成する成分に発泡剤や必要に応じて溶剤を添加したものである。発泡剤としては、塩化ビニル樹脂系壁紙の塩化ビニル発泡層形成のために使用されている公知の熱分解型発泡剤を使用することができる。このような熱分解型発泡剤としては、アゾジカルボンアミド系発泡剤やオキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド系発泡剤を好ましく使用することができる。アンダー発泡層形成用組成物における発泡剤の含有量は、塩化ビニル樹脂100質量部に対し、ベース樹脂層3の伸びの確保と意匠性との観点から好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上であり、発泡外観の均一性及び意匠性の観点から好ましくは10質量部以下、より好ましくは9質量部以下である。
【0060】
(ロ)ベース樹脂層形成用組成物層の形成工程
次に、乾燥炉34aを通過した積層物を冷却シリンダー35aで冷却した後、ロータリースクリーン32bとバックアップロール33bとの間を通過させる間に、ロータリースクリーン32bの内部に充填されたベース樹脂層形成用組成物(図示せず)がロータリースクリーン32b内に配置されたスキージ(図示せず)でアンダー発泡層形成用組成物層に塗布され、乾燥炉34bを通過することによりベース樹脂層形成用組成物層(図示せず)が形成される。なお、図3では、ベース樹脂層形成用組成物をロータリースクリーンを用いて塗工したが、他の塗布法、例えばナイフコーター等により塗工することもできる。また、ベース樹脂層形成用組成物が発泡剤を含有しない場合には、この工程においてベース樹脂層3が形成されることになる。
【0061】
ここで、ベース樹脂層形成用組成物の組成は、ベース樹脂層3を構成する成分に必要に応じて発泡剤や溶剤を添加したものである。発泡剤としては、塩化ビニル樹脂系壁紙の塩化ビニル発泡層形成のために使用されている公知の熱分解型発泡剤を使用することができるが、比較的小さい気泡を発生させるマイクロカプセル型発泡剤を好ましく使用することができる。ベース樹脂層形成用組成物における発泡剤の含有量は、塩化ビニル樹脂100質量部に対し、意匠性の観点から好ましくは0.1質量部以上であり、加工性と入手コストの観点から好ましくは0.8質量部以下、より好ましくは1.0質量部以下である。
【0062】
(ハ)アンダー発泡層形成工程
乾燥炉34bを通過した積層物を冷却シリンダー35bで冷却した後、積層物を発泡炉36を通過させることにより、アンダー発泡層形成用組成物層を発泡させてアンダー発泡層を形成し、冷却シリンダー35cで冷却する。また、ベース樹脂層形成用組成物が発泡剤を含有している場合には、この工程で発泡させてベース樹脂層を形成する。これにより壁紙10が得られる。
【0063】
(ニ)柄発泡層形成用組成物層形成工程
なお、ベース樹脂層形成用組成物層の形成の後、積層物の発泡炉投入前に、必要に応じて柄発泡層形成用組成物を用いて柄発泡層形成用組成物層を、アンダー発泡層形成用組成物層形成工程と同様の工程を一回以上実施することにより形成することができ、更に、アンダー発泡層形成工程と同様に発泡炉36を通過させることにより柄発泡層を形成することができる。
【0064】
ここで、柄発泡層形成用組成物の組成は、柄発泡層4を構成する成分に必要に応じて発泡剤や溶剤を添加したものである。発泡剤としては、塩化ビニル樹脂系壁紙の塩化ビニル発泡層形成のために使用されている公知の熱分解型発泡剤を使用することができる。このような熱分解型発泡剤としては、アゾジカルボンアミド系発泡剤やオキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド系発泡剤を好ましく使用することができる。柄発泡層形成用組成物に発泡剤を使用する場合、その含有量は、塩化ビニル樹脂100質量部に対し、意匠性の観点から好ましくは1質量部以上であり、加工性の観点から好ましくは6質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。
【実施例】
【0065】
以下、本発明を実施例、比較例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、比較例1は、基材/ベース樹脂層/柄発泡層の3層構成の壁紙に関するものであり、比較例8及び実施例8は、基材/アンダー発泡層/ベース樹脂層の3層構成の壁紙に関するものであり、他の実施例1〜7、比較例2〜7の壁紙は、基材/アンダー発泡層/ベース樹脂層/柄発泡層の4層構成の壁紙に関するものである。また、すべての実施例及び比較例においては、同じ基材を使用した。また、実施例1〜7、比較例1〜7の壁紙においては、同じ柄発泡層を採用した。なお、実施例及び比較例で用いた化合物ならびに原材料を下記表1に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
実施例1
(1)アンダー発泡層形成用組成物層の形成
以下のアンダー発泡層形成用組成物の配合成分を均一に混合することによりアンダー発泡層形成用組成物を調製し、調製したアンダー発泡層形成用組成物を、110μm厚の壁紙基材の片面にスクリーン法により、上面視でアンダー発泡層の基材被覆率が15.2%となるように15g/mの割合で塗布し、130℃で60秒加熱乾燥することにより、基材上にアンダー発泡層形成用組成物層を形成した。
【0068】
(アンダー発泡層形成用組成物)
塩化ビニル樹脂(カネビニール(登録商標)ペーストPSM−271R(重合度1150)、(株)カネカ)100質量部;
可塑剤(DOP)60質量部;
発泡剤(ユニフォーム(登録商標)AZH、大塚化学(株))4質量部;
安定剤(アデカスタブ(登録商標)FL44、(株)ADEKA)3質量部;
充填剤(ホワイトン(登録商標)H、東洋ファインケミカル(株))50質量部;及び
着色剤(JR−401、テイカ(株))20質量部。
【0069】
(2)ベース樹脂層形成用組成物層の形成
以下のベース樹脂層形成用組成物の配合成分を均一に混合することによりベース樹脂層形成用組成物を調製し、調製したベース樹脂層形成用組成物を、アンダー発泡層形成用組成物層上にスクリーン法により、上面視でベース樹脂層の基材被覆率が100%となるように140g/mの割合で塗布し、130℃で60秒加熱乾燥することにより、アンダー発泡層形成用組成物層上にベース樹脂層形成用組成物層を形成した。
【0070】
(ベース樹脂層形成用組成物)
塩化ビニル樹脂(カネビニール(登録商標)ペーストPSH−24(重合度2800)、(株)カネカ)100質量部;
可塑剤(DOP)60質量部;
発泡剤(EHM302、積水化学(株))0.5質量部;
安定剤(アデカスタブ(登録商標)FL 44、(株)ADEKA)3質量部;
充填剤(ホワイトン(登録商標)H、東洋ファインケミカル(株))30質量部;
着色剤(JR−401、テイカ(株))20質量部。
【0071】
(3)柄発泡層形成用組成物層の形成
以下の柄発泡層形成用組成物の配合成分を均一に混合することにより柄発泡層形成用組成物を調製し、調製した柄発泡層形成用組成物を、ベース樹脂層形成用組成物層上にスクリーン法により、上面視で柄発泡層の基材被覆率が40%となるように40g/mの割合で塗布し、130℃で60秒加熱乾燥することにより、ベース樹脂層形成用組成物層上に柄発泡層形成用組成物層を形成した。
【0072】
(柄発泡層形成用組成物)
塩化ビニル樹脂(カネビニール(登録商標)ペーストPSM−271R(重合度1150)、(株)カネカ)100質量部;
可塑剤(DOP)60質量部;
発泡剤(ユニフォーム(登録商標)AZH、大塚化学(株))4質量部;
安定剤(アデカスタブ(登録商標)FL44、(株)ADEKA)3質量部;
充填剤(ホワイトン(登録商標)H、東洋ファインケミカル(株))50質量部;及び
着色剤(JR−401、テイカ(株))20質量部。
【0073】
(4)壁紙の製造
上述のようにして得られた基材/アンダー発泡層形成用組成物層/ベース樹脂層形成用組成物層/柄発泡層形成用組成物層からなる積層物を発泡炉に投入し、190℃で75秒加熱した。それによりアンダー発泡層形成用組成物層、ベース樹脂層形成用組成物層及び柄発泡層形成用組成物層の各層中の発泡剤を発泡させ、発泡倍率6倍のアンダー発泡層、発泡倍率1.5倍のベース樹脂層及び発泡倍率3倍の柄発泡層を形成することにより実施例1の壁紙を得た。
【0074】
比較例1
アンダー発泡層を形成しない以外は、実施例1と同様にして比較例1の壁紙を得た。
【0075】
比較例2
アンダー発泡層形成用組成物を、基材上に上面視でアンダー発泡層の基材被覆率が8.7%となるように8g/mの割合で塗布する以外は実施例1と同様にして比較例2の壁紙を得た。
【0076】
実施例2〜5、比較例3
アンダー発泡層形成用組成物を、基材上に上面視でアンダー発泡層の基材被覆率が31.2%、54.7%、78.6%、83.1%、又は100%となるように、それぞれ30g/m、50g/m、75g/m、80g/m、又は100g/mの割合で塗布すること以外、実施例1と同様にして壁紙を得た。
【0077】
比較例4、実施例6、比較例5
ベース樹脂層形成用組成物に使用する塩化ビニル樹脂として、重合度2800の塩化ビニル樹脂に代えて、比較例4では重合度700の塩化ビニル樹脂(カネビニール(登録商標)ペーストPSL−675、(株)カネカ)を使用し、実施例6では重合度1550の塩化ビニル樹脂(ZEST PQHP、新第一塩ビ(株))を使用し、比較例5では、重合度4500の塩化ビニル樹脂(リューロンペースト(登録商標)960、東ソー(株))を使用した以外は、実施例3と同様にしてそれぞれ比較例4、実施例6、比較例5の壁紙を得た。
【0078】
比較例6、実施例7、比較例7
アンダー発泡層形成用組成物に使用する塩化ビニル樹脂として、重合度1150の塩化ビニル樹脂に代えて、比較例6では重合度480の塩化ビニル樹脂(カネビニール(登録商標)ペーストS−400、(株)カネカ)を使用し、実施例7では重合度700の塩化ビニル樹脂(カネビニール(登録商標)ペーストPSL−675、(株)カネカ)を使用し、比較例7では、重合度3000の塩化ビニル樹脂ブレンド物(重合度700の塩化ビニル樹脂(カネビニール(登録商標)ペーストPSL−675、(株)カネカ)と重合度4500の塩化ビニル樹脂(リューロンペースト(登録商標)960、東ソー(株))とを質量比で3:2でブレンドしたもの)を使用した以外は、実施例3と同様にしてそれぞれ比較例6、実施例7、比較例7の壁紙を得た。
【0079】
比較例8、実施例8
柄発泡層を形成しない以外は、比較例2、実施例3と同様にしてそれぞれ比較例8、実施例8の壁紙を得た。
【0080】
<評価>
実施例及び比較例において取得したアンダー発泡層形成用組成物及びベース樹脂層形成用組成物については、評価項目として「塗布加工性」を評価し、また、壁紙については、「折れ曲げ性」、「伸び性」、「難燃性」及び「意匠性」を評価し、評価結果を表2に示した。なお、表2中の「〇」は良好であること、「△」は実用上問題がないこと、「×」は不良であること、をそれぞれ示している。
【0081】
(A)塗布加工性
アンダー発泡層形成用組成物及びベース樹脂層形成用組成物について、スクリーン法で塗布した際の塗布加工性を以下の評価基準に従って評価し、表2に評価結果を示した。
【0082】
(塗布加工性評価基準)
○:問題なく塗布できる場合
×:アンダー発泡層形成用組成物又はベース樹脂層形成用組成物がスクリーンから塗布面へ適正に転写ができない場合
【0083】
(B)折れ曲げ性
各実施例及び比較例で得た壁紙を、坪量2000g/mのボール紙に壁紙用のりで貼り付け、ボール紙を内側となるように90度折り曲げ、その時の壁紙表面の折り曲げの状態を目視にて観察し、以下の評価基準に従って評価し、表2に評価結果を示した。
(折れ曲げ性評価基準)
○:樹脂塗膜が表面を全面覆っており、折り曲げによりクラックが観察されない場合
△:樹脂塗膜が表面を全面覆っているが、折り曲げにより樹脂塗膜の一部にクラックが形成されそうな部分が観察されるが、実用上問題がない場合
×:折り曲げ部に樹脂塗膜がなくなり、クラックが観察される場合
【0084】
(C)伸び性
各実施例及び比較例で得た壁紙を幅15mm×長さ50mmに切り出し、伸び率評価用サンプルを取得した。それとは別に、幅20mm×長さ50mmの坪量300g/mの厚紙を2枚用意し、それぞれに幅20mm×長さ25mm両面テープを張り付けた。次に、両面テープを貼り付けた厚紙をその幅部分が接するように置き、壁紙の基材面を2枚の厚紙を跨ぐように両面テープで貼り付け、恒温恒湿で1日放置後、島津製作所社製万能試験機を使用して壁紙が伸びるように引っ張り試験を行い、壁紙サンプルの幅が元幅15mmに対して半分の7.5mm幅になったときの伸び(mm)を測定した。得られた測定結果を表2に示した。サンプル5点の平均値を変位値として表2に示した。変位値が6mm以上であることが望まれる。
【0085】
(塗布加工性評価基準)
○:問題なく塗布できる場合
×:アンダー発泡層形成用組成物又はベース樹脂層形成用組成物がスクリーンから塗布面へ適正に転写ができない場合
【0086】
(D)難燃性
各実施例及び比較例で得た壁紙について、ISO5660の発熱性試験方法(コーンカロリー計法)に準拠した方法で、10分間加熱し、以下の評価指標(a)〜(c)をすべて満たす場合を難燃性が良好「〇」と評価し、どれか一つでも満足しないものを難燃性が不良「×」と評価した。得られた結果を表2に示した。
【0087】
(難燃性評価指標)
(a)加熱開始後10分間の総発熱量が8MJ/m以下であること
(b)加熱開始後10分間、防火上有害な裏面まで貫通する亀裂も穴も存在しないこと
(c)加熱開始後10分間、最高発熱速度が10秒継続して200Kw/mを超えないこと
【0088】
(E)意匠性
各実施例及び比較例で得た壁紙の表面を目視にて観察し、以下の評価基準に従って評価し、表2に評価結果を示した。
【0089】
(意匠性評価基準)
○:アンダー発泡層や柄発泡層の発泡による凹凸がはっきり確認でき、立体感に富む場 合
△:アンダー発泡層や柄発泡層の発泡によるやや立体感に乏しい凹凸があるが、実用上問題がない場合
×:発泡しているアンダー層発泡部分の発泡状態が不十分でほとんど発泡をしていないか、発泡表面に異常なふくらみが観察される場合
【0090】
【表2】
【0091】
<評価結果の考察>
実施例1〜8の壁紙は、アンダー発泡層の基材被覆率が平面視で10%以上85%以下の範囲に入っており、いずれの評価項目についても良好もしくは実用上問題のない結果を示した。なお、実施例1の場合、アンダー発泡層の基材被覆率が15.2%と比較的低かったため、折れ曲げ性が「△」評価であったが、実用上問題のないレベルであった。実施例5の場合、アンダー発泡層の基材被覆率が83.1%と比較的高かったため、意匠性が「△」評価であったが、実用上問題のないレベルであった。これらのことから、アンダー発泡層の基材被覆率が平面視で30%以上80%以下の範囲(実施例2〜4)であると、特に好ましいことがわかる。
【0092】
また、実施例6の場合、ベース樹脂層の塩化ビニル樹脂重合度が1550と比較的低かったため、折れ曲げ性が「△」評価であったが、実用上問題のないレベルであった。実施例7の場合、アンダー発泡層の塩化ビニル樹脂重合度が700と比較的低かったため、意匠性が「△」評価であったが、実用上問題のないレベルであった。実施例8の場合、柄発泡層が存在しなかったため、意匠性が「△」評価であったが、実用上問題のないレベルであった。
【0093】
それに対し、比較例1の壁紙は、アンダー発泡層を設けていないので、折れ曲げ性だけでなく意匠性も「×」評価であった。しかも伸び性も6mm未満であった。比較例2の壁紙は、アンダー発泡層の基材被覆率が平面視で10%未満であったので、比較例1と同様に、折れ曲げ性が「×」の評価で、しかも伸び性も6mm未満であった。なお、比較例8の壁紙は、柄発泡層を有さない以外は比較例2と同様の構成であるため、意匠性が「△」評価となったことを除き、比較例2の場合と同評価であった。
【0094】
比較例3の壁紙は、アンダー発泡層の基材被覆率が100%と高すぎたので、意匠性が「×」の評価であった。比較例4の壁紙は、ベース樹脂層を構成する塩化ビニル樹脂の重合度が1500を大きく下回る700であったので、やはり、折れ曲げ性が「×」評価で、しかも伸び性も6mm未満であった。比較例5の場合は、ベース樹脂層を構成する塩化ビニル樹脂の重合度が4000を大きく上回る4500であったので、ベース樹脂層形成用組成物の塗布加工性が「×」評価であり、壁紙を作成することができなかった。
【0095】
比較例6の壁紙は、アンダー発泡層を構成する塩化ビニル樹脂の重合度が700を大きく下回る480であったので、凹凸の程度が小さ過ぎ、意匠性が「×」評価であった。比較例7の壁紙は、アンダー発泡層を構成する塩化ビニル樹脂の重合度が1500を大きく上回る3000であったので、凹凸の程度が大き過ぎ、意匠性が「×」評価であった。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明の壁紙は、基材層、樹脂発泡体からなるアンダー発泡層、及び平面視で基材層を100%被覆しているベース樹脂層がこの順で積層されている構造を有し、既に説明したように、良好な防火性能を示し、優れた耐クラック性を示し、意匠性に富んだ凹凸形状を、エンボス加工を施すことなく有することができる。よって、特に一般住宅用の壁紙として有用である。
【符号の説明】
【0097】
1、31 基材層
2 アンダー発泡層
2a、2b、4a、4b 樹脂発泡体
3 ベース樹脂層
4 柄発泡層
10 壁紙
30 巻き出しロール
32a、32b ロータリースクリーン
33a、33b バックアップロール
34a、34b 乾燥炉
35a、35b、35c 冷却シリンダー
36 発泡炉
【要約】      (修正有)
【課題】良好な防火性能を有する壁紙であって、一般住宅の内壁に壁紙を貼りつけた場合に、内壁表面に経時的に歪みや亀裂が発生してもクラックが発生することを抑止でき、更に、エンボス加工することなく良好な意匠性を有する壁紙を提供する。
【解決手段】壁紙は、基材層1、塩化ビニル樹脂を含有するアンダー発泡層2及び塩化ビニル樹脂を含有するベース樹脂層3がこの順で積層されている構造を有し、アンダー発泡層は樹脂発泡体2a,2bから構成されており、アンダー発泡層による基材被覆率は平面視で10%以上85%以下であり、アンダー発泡層を構成する塩化ビニル樹脂の見掛け重合度は700〜1500であり、べース樹脂層による基材被覆率は平面視で100%であり、ベース樹脂層を構成する塩化ビニル樹脂の見掛け重合度は、1550〜4000である。
【選択図】図1
図1
図2
図3