特許第6673532号(P6673532)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6673532
(24)【登録日】2020年3月9日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】車両用発音器
(51)【国際特許分類】
   H04R 9/04 20060101AFI20200316BHJP
   H04R 9/02 20060101ALI20200316BHJP
   H04R 1/00 20060101ALI20200316BHJP
   H04R 1/02 20060101ALI20200316BHJP
   B60Q 5/00 20060101ALI20200316BHJP
【FI】
   H04R9/04 103
   H04R9/02 B
   H04R1/00 311
   H04R9/02 101Z
   H04R1/02 102B
   B60Q5/00 670Z
   B60Q5/00 650B
   B60Q5/00 680Z
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-532407(P2019-532407)
(86)(22)【出願日】2018年5月30日
(86)【国際出願番号】JP2018020711
(87)【国際公開番号】WO2019021617
(87)【国際公開日】20190131
【審査請求日】2019年9月5日
(31)【優先権主張番号】特願2017-142957(P2017-142957)
(32)【優先日】2017年7月24日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390001812
【氏名又は名称】アンデン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000221926
【氏名又は名称】東北パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】特許業務法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮田 晋
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 純一
【審査官】 堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−050863(JP,A)
【文献】 特開2016−025558(JP,A)
【文献】 特開2012−065039(JP,A)
【文献】 特開2004−312222(JP,A)
【文献】 特開2013−150264(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/145777(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 9/04
B60Q 5/00
H04R 1/00
H04R 1/02
H04R 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動板(21)と、前記振動板と接続されたボイスコイル(23)と、前記ボイスコイルから延出されたリード線(28)と、を有する発音体(20)と、
前記発音体を覆う筐体(16)と、
前記筐体の外側に向けて開口する開口部(101a)を有し、車両機器との電気的接続を行う車両コネクタが装着されるコネクタ部(101)と、
前記コネクタ部の開口部側から前記筐体の内部へと突出して配置された接続端子(30)と、を備え、
前記ボイスコイルから延出されたリード線が、前記筐体内にて前記接続端子と直接接続されており、
前記発音体は、前記振動板を固定するフレーム(22)を有し、
前記フレームは、前記リード線の一端と他端の間を固定する固定部(221)を備え、
前記固定部には、溝部(221a)が形成されており、
前記溝部の幅は、前記リード線の線径よりも短くなっており、
前記リード線は、前記固定部に形成された前記溝部に嵌め込まれている車両用発音器。
【請求項2】
前記ボイスコイルは、コイル線(232)と、前記コイル線が巻回されたボビン(231)と、を有し、
前記ボビンは、前記コイル線の端部と接続されるとともに前記リード線の端部と接続される接続部(231a)を有している請求項1に記載の車両用発音器。
【請求項3】
前記接続端子は、リード線を保持する保持部(32a)を有している請求項1または2に記載の車両用発音器。
【請求項4】
前記筐体は、前記発音体が取り付けられる筒状のベース(10)と、前記ベースの一端側に配置されたケース(14)と、を有し、
前記発音体は、前記ベースに対してシール部材によりシールされて取り付けられるとともに、前記ベースと前記ケースの接合部は、シール部材によりシールされている請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両用発音器。
【請求項5】
前記ベースには、前記発音体が発する音の音質を調整するディフューザ(102)が設けられている請求項4に記載の車両用発音器。
【請求項6】
前記ベースと前記ディフューザは一体成形により構成されている請求項5に記載の車両用発音器。
【請求項7】
前記筐体は、前記発音体が取り付けられる筒状のベース(10)を有し、
前記発音体は、前記ベースの一端側に発音面(20a)が向くよう配置され、
前記溝部は、前記固定部のうち、前記ベースの他端側を向く面に形成されている請求項1ないし6のいずれか1つに記載の車両用発音器。
【請求項8】
前記リード線は、複数のリード線のひとつであり、
前記溝部は、前記固定部に形成された複数の溝部のひとつであり、
複数の前記リード線は、それぞれ前記固定部に形成された前記溝部に嵌め込まれており、
前記固定部は、前記フレームと樹脂製部材により一体成形されている請求項1ないし7のいずれか1つに記載の車両用発音器。
【請求項9】
前記リード線のうち、前記固定部に形成された前記溝部から前記ボイスコイル側に延びる付け根部に、前記リード線を補強するための補強部(222)が設けられている請求項1ないし8のいずれか1つに記載の車両用発音器。
【請求項10】
前記ボイスコイルと前記固定部との間に配置されるリード線の途中に曲げ癖部(280)が形成されている請求項1ないし9のいずれか1つに記載の車両用発音器。
【請求項11】
前記固定部と前記接続端子との間に配置されるリード線の途中に曲げ癖部(281)が形成されている請求項1ないし10のいずれか1つに記載の車両用発音器。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2017年7月24日に出願された日本特許出願2017−142957号に基づくもので、ここにその記載内容を援用する。
【技術分野】
【0002】
本開示は、発音体および筐体を備えた車両用発音器に関するものである。
【背景技術】
【0003】
従来、特許文献1に記載されたスピーカがある。このスピーカは、コネクタ部を有するフレームと、フレームの外周部に連結された振動板と、振動板の中央部に設けられたボイスコイルと、端子を含み、フレームの外周部よりに設けられたコネクタ部と、コネクタ部の端子に接続された接続部を有し、コネクタ部の端子とボイスコイルとの間を接続するリード線を備えている。
【0004】
また、車両に搭載される発音器として特許文献2に記載されたものもある。この発音器は、音を発生する発音体と、発音体と導電部材を介して電気的に接続された端子金具と、発音器が取り付けられるベースと、ベースを貫通した状態でベースに固定され、ベースの外部に突出する部位が外部の機器に電気的に接続される接続端子と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2014/156017号パンフレット
【特許文献2】特開2017−50863号公報
【発明の概要】
【0006】
上記特許文献1に記載されたものを、車両のフロントバンパー等に配置しようとした場合、スピーカが没水したり被水するなどして故障してしまうことが考えられる。また、スピーカの内部に砂塵や異物が付着して音質が低下したり故障してしまうといったことも考えられる。
【0007】
したがって、防水性、防塵性等を向上させるため、スピーカを覆う筐体を備える必要がある。この場合、車両機器に接続される車両コネクタが接続されるコネクタを筐体の外部に形成するとともに、このコネクタに接続端子を設け、このコネクタの接続端子とスピーカのコネクタ部の端子との間を、電気配線等を用いて接続する必要がある。
【0008】
したがって、スピーカのリード線と筐体のコネクタに設けられた接続端子との間の電気接続に必要な部品点数が多くなる。さらに、組み付けの工数も多くなる。
【0009】
また、上記特許文献2に記載されたものは、ベースが発音体を覆う筐体の一部を構成しており防水性および防塵性が向上する。しかし、この発音器についても、筐体の一部を構成するベースに設けられた接続端子と発音体との間の電気的接続を行うための部品点数が多くなり、組み付けのための工数も多くなる。
【0010】
本開示は、発音体と筐体に設けられた接続端子との電気的接続を行うための部品点数を削減するとともに組み付けのための工数を低減できる車両用発音器を提供することを目的とする。
【0011】
本開示の一態様において、車両用発音器は、振動板と、振動板と接続されたボイスコイルと、ボイスコイルから延出されたリード線と、を有する発音体と、発音体を覆う筐体と、筐体の外側に向けて開口する開口部を有し、車両機器との電気的接続を行う車両コネクタが装着されるコネクタ部と、コネクタ部の開口部側から筐体の内部へと突出して配置された接続端子と、を備え、ボイスコイルから延出されたリード線が、筐体内にて接続端子と直接接続されている。また、発音体は、振動板を固定するフレーム(22)を有し、フレームは、リード線の一端と他端の間を固定する固定部(221)を備え、固定部には、溝部(221a)が形成されており、溝部の幅は、リード線の線径よりも短くなっており、リード線は、固定部に形成された溝部に嵌め込まれている。
【0012】
このような構成によれば、発音体を覆う筐体を備え、さらに、ボイスコイルから延出されたリード線が、筐体内にて接続端子と直接接続されているので、発音体と筐体に設けられた接続端子との電気的接続を行うための部品点数を削減するとともに組み付けのための工数を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態に係る車両用発音器の斜視図である。
図2】一実施形態に係る車両用発音器の正面図である。
図3】一実施形態に係る車両用発音器の右側面図である。
図4】一実施形態に係る車両用発音器の背面図である。
図5】一実施形態に係る車両用発音器の下面図である。
図6図2中のVI−VI線における断面図である。
図7図2中のVII−VII線における断面図である。
図8】一実施形態に係る発音器におけるケースを外した状態の背面図の部分拡大図である。
図9図6中のIX部の拡大図である。
図10図8中のX−X線における断面図を天地方向を逆転で示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
一実施形態に係る車両用発音器について図1図8を用いて説明する。本車両用発音器は、例えば車両に搭載されて車室外に警報音を発する用途に用いることができる。
【0015】
図1図5に示すように、筐体16は、発音体20を収納するものであり、いずれも樹脂製のベース10、ケース14およびカバー12を有している。ベース10は、略円筒状を成している。カバー12は、ベース10における発音体20の発音面20a側の一端側に配置されている。また、ケース14は、ベース10における発音体20の発音面20aと反対側の他端側に配置されている。
【0016】
図6図8に示すように、ベース10の一端側開口部に、ベース10の一端側を閉塞するようにして略有底円筒状のカバー12が接合されている。また、ベース10の他端側開口部に、ベース10の他端側を閉塞するようにして略有底四角筒状のケース14が接合されている。
【0017】
ベース10とケース14の接合部は、シール部材によりシールされている。具体的には、ベース10とケース14の接合部は、接着剤によりシールされている。また、発音体20は、ベース10に対してシール部材によりシールされて取り付けられている。カバー12には、発音体20からの警報音を外部に放出するための放音孔121が形成されている。本車両用発音器は、放音孔121が形成されたカバー12側が正面となっており、ケース14側が背面となってる。
【0018】
筐体16の内部に形成される空間に、電気信号を受けて音を発生する発音体20が収容されている。発音体20は、発音面20aがカバー12側を向くようベース10に取り付けられている。筐体16により発音体20の防水性および防塵性が向上されている。すなわち、筐体16は、発音体20への直接的な被水や砂塵からのダメージ保護と、没水による発音体20の内部への浸水や異物侵入を防止している。ベース10内には、ディフューザ102が配置されている。ディフューザ102は、発音体20が発する音の音質を調整するのものである。ディフューザ102は、発音体20の発音面20aと対向して配置されている。ディフューザ102は、共鳴室1022が形成された遮蔽壁1021を有している。ディフューザ102は、遮蔽壁1021に形成された共鳴室1022の共鳴効果を利用して発音体20の発音面20aから発出される音の音圧を増幅させる。
【0019】
また、筐体16内における発音体20より背面側には、発音体20、ベース10およびケース14により所定の密閉容積を有する密閉容器が形成される。この密閉容器は、空気バネとして機能し、振動板21の共振周波数における音の音圧を増幅させることが可能となっている。本実施形態のディフューザ102は、ベース10と一体成形されている。
【0020】
筐体16のベース10の外周面には、筒状のコネクタ部101が突出している。コネクタ部101は、ベース10の外側に向けて開口する開口部101aを有している。この開口部101aに、車両機器との電気的接続を行う車両コネクタ(図示せず)が装着される。
【0021】
ベース10とケース14と発音体20によって形成される密封された空間の、温度変化による圧力変動を抑制するために、図8に示すように、ベース10とケース14と発音体20によって形成される空間を外部に連通させる貫通孔103がベース10に形成されている。この貫通孔103は、通気はするが水は通さない特性を有する繊維よりなる圧力調整膜104にて覆われている。
【0022】
コネクタ部101の開口部101a内には、導電性金属の板材から成る2つの接続端子30が設けられている。接続端子30は、筐体16の内部からコネクタ部101の開口部101a側へと突出して配置されている。具体的には、ベース10の側面には、コネクタ部101の開口部101a側と筐体16の内部側とを連通する孔部が形成されており、この孔部に接続端子30が圧入によって固定されている。
【0023】
図6図8図10に示すように、接続端子30は、板状部材により構成されている。接続端子30は、ベース10の側面を貫通するように配置される本体部31と突起部32とを有している。本体部31と突起部32は、L字状に形成されている。突起部32には、保持部32aが形成されている。保持部32aは、溝状を成している。
【0024】
リード線28は、接続端子30の突起部32に形成された保持部32aに挿入されるとともに、その先端部が、筐体16内にて接続端子30の本体部31に半田付けされている。
【0025】
図8に示すように、固定部221と接続端子30との間に配置されるリード線28の途中に曲げ癖部281が形成されている。曲げ癖部281は、リード線28が略直角となるように形成されている。なお、リード線28の曲げ癖の程度は略直角に限られるものではなく、例えば、リード線28が緩やかな曲線となるよう曲げ癖部281を形成してもよい。
【0026】
次に、発音体20について説明する。図6に示すように、発音体20は、振動して音を発生する振動板21と、振動板21を固定するフレーム22と、振動板21を振動させるためのボイスコイル23と、磁界を形成する磁気回路24、ボイスコイル23を支持するダンパ25と、を備えている。
【0027】
振動板21は、中央に位置する内周部21aと、内周部21aの外周側に配置された外周部21bと、を有している。振動板21は、内周部21aの背面側の外縁部がボイスコイル23の一端部と接続されるとともに、外周部21bの外縁部がフレーム22の外周部に支持されている。なお、発音体20の発音面20a、すなわち、振動板21における車両用発音器の表面側の部位は、水を通さない防水構造となっている。
【0028】
フレーム22は、振動板21の外周縁部と接触して振動板21を支持している。図8に示すように、フレーム22におけるコネクタ部101と対向する部位には、後述するリード線28の一端と他端の間を固定する2つの固定部221を備えている。固定部221は、それぞれ略直方体形状を成している。2つの固定部221とフレーム22は、樹脂製部材にて一体成形されている。
【0029】
固定部221におけるケース14側の面には、それぞれ線状の溝部221aが形成されている。具体的には、発音体20は、ベース10の一端側に発音面20aが向くよう配置され、溝部221aは、固定部221のうち、ベース10の他端側を向く面に形成されている。
【0030】
リード線28は、各固定部221に形成された溝部221aに嵌め込まれている。すなわち、溝部221aは、固定部221に複数形成され、2本のリード線28は、それぞれ固定部に形成された各溝部221aに嵌め込まれている。固定部221は、溝部221aにリード線28が嵌め込まれることによりリード線28を固定している。
【0031】
ボイスコイル23と固定部221との間に配置されるリード線28の途中に曲げ癖部280が形成されている。曲げ癖部280は、リード線28が緩やかな曲線となるように形成されている。なお、リード線28の曲げ癖の程度は緩やかな曲線に限られるものではなく、例えば、リード線28が略直角となるよう曲げ癖部280を形成してもよい。
【0032】
図6図7図9に示すように、ボイスコイル23は、円筒形状を成すボビン231と、このボビン231の外周面に巻回されたコイル線232と、を有している。ボビン231の外周面には、コイル線232とリード線28を接続するための銅箔(図示せず)が接着されている。ボビン231の外周面には、コイル線232の端部とリード線28の端部とを接続する接続部231aが設けられている。接続部231aにおけるコイル線232と銅箔との接合およびリード線28と銅箔との接合は、それぞれ半田付けにより行われている。また、接続部231aにおけるリード線28の付け根部には、比較的大きな弾性力を有する弾性接着剤が塗布されている。この弾性接着剤によりリード線28の付け根部を補強する補強部233が形成されている。弾性接着剤としてはシリコン系接着剤を用いることができる。
【0033】
リード線28は、ファイバーなどにより構成された芯線と、この芯線に巻き付けられた複数の銅箔糸(いずれも図示せず)と、を有する錦糸線として構成されている。リード線28は、ボイスコイル23からフレーム22の外側へ延出されている。
【0034】
図6に示すように、磁気回路24は、ボイスコイル23の背面側に配置されている。磁気回路24は、磁石241、ポールピース242およびヨーク243を有している。
【0035】
磁石241は、円盤形状を成しており、有底円筒形状を成すヨーク243内の底面に固定されている。磁石241におけるヨーク243の底面側と反対側の面に円盤形状を成すポールピース242が配置されている。磁石241の一面は、ヨーク243内の底面と接触し、磁石241の他面は、ポールピース242の一面と接触している。
【0036】
ポールピース242は、ヨーク243とともに磁路を形成するものである。ポールピース242およびヨーク243は、鉄などの磁性材により構成されている。ポールピース242は、ボビン231に巻回されたコイル線232の内周側に配置されている。
【0037】
ヨーク243の内周面と、ボビン231の外周面との間には、微少な隙間が形成されている。ボイスコイル23のコイル線232は、ヨーク243とボビン231の外周面に形成された微少な隙間に配置されている。
【0038】
コイル線232には、ヨーク243とボビン231の外周面に形成された隙間に形成される磁界が印加される。磁界が印加された状態のコイル線232に電流が流れると、ボビン231は、ダンパ25に支持された状態でボビン231の軸方向に変位して振動し、この振動が振動板21に伝搬することで、振動板21が振動して音が発生する。
【0039】
次に、本車両用発音器の組み立てについて説明する。
【0040】
まず、発音体20を用意する。本実施形態の発音体20は、振動板21、フレーム22、ボイスコイル23、磁気回路24およびダンパ25が組み付けられ、発音体20からリード線28が延出された状態で用意される。なお、発音体20におけるリード線28の長さは、予め定められた長さに揃えられている。
【0041】
また、発音体20から延出されるリード線28の一端と他端の間は、フレーム22の固定部221におけるケース14側の面に形成された溝部221aに嵌め込まれている。なお、リード線28の一端と他端の間は、フレーム22の固定部221に形成された溝部221aに嵌め込む際に、リード線28の張力が緩和されるよう、ボイスコイル23と固定部221との間に配置されるリード線28に多少の弛みを持たせるとともに曲げ癖を付けられている。このようにして、ボイスコイル23と固定部221との間に配置されるリード線28の途中に曲げ癖部280が形成されている。
【0042】
また、リード線28のうち、固定部221に形成された溝部221aからボイスコイル23側に延びるリード線28の付け根部には、リード線28を補強するための補強部222が形成されている。本実施形態では、固定部221に形成された溝部221aからボイスコイル23側に延びるリード線28の付け根部に比較的大きな弾性力を有する弾性接着剤を塗布することにより補強部222を形成している。弾性接着剤としてはシリコン系接着剤を用いることができる。
【0043】
次に、ベース10、ケース14およびカバー12を用意する。そして、ベース10に接続端子30を組み付ける。具体的には、コネクタ部101の開口部101a側と筐体16の内部側とを連通する孔部に、接続端子30を圧入によって取り付ける。さらに、気密性を確保するため、コネクタ部101の開口部101a側と筐体16の内部側とを連通する孔部と接続端子30の接合部に筐体16の内側から接着剤を塗布する。
【0044】
次に、振動板21の外周部21bの外縁部の全周にわたって接着剤を塗布した後、発音体20を、ベース10における背面側、すなわちベース10においてケース14が取付られる面側からベース10内に挿入し、ベース10内に接着固定する。なお、先にベース10に接着剤を塗布した後、発音体20をベース10内に接着固定するようにしてもよい。
【0045】
次に、リード線28の先端部を接続端子30の突起部32に形成された保持部32aに挿入して仮止めする。
【0046】
そして、固定部221と接続端子30との間に配置されるリード線28の途中に曲げ癖部281を形成した後、筐体16内にてリード線28の先端を接続端子30の本体部31に半田付けする。これにより、ボイスコイル23から延出されたリード線28が、筐体16内にて接続端子30と直接接続される。
【0047】
なお、発音体20におけるリード線28の長さは、予め定められた長さに揃えられているので、リード線28の余長の調整のための切断作業を行うことなく、リード線28の先端を接続端子30の本体部31に半田付けすることができる。
【0048】
次に、ベース10とケース14の接合部に接着剤を塗布する。これにより、ベース10、ケース14および発音体20により形成される空間は密閉状態となる。
【0049】
次に、カバー12におけるベース10との接合部に接着剤を塗布した後、カバー12をベース10に接着する。このようにして、本車両用発音器の組み付けが完了する。
【0050】
次に、本車両用発音器の作動について説明する。
【0051】
ベース10に形成されたコネクタ部101に車両機器との電気的接続を行う車両コネクタが装着されると、車両機器からの電気信号(すなわち、音響信号)が接続端子30、リード線28の経路で、ボイスコイル23のコイル線232に入力される。これにより、ボイスコイル23のボビン231が、ダンパ25に支持された状態でボビン231の軸方向に変位して振動し、この振動が振動板21に伝搬することで、発音体20から音が発生する。発音体20が発生した音は、カバー12に形成された放音孔121から警報音として外部に放出される。
【0052】
上述したように、本実施形態の車両用発音器は、振動板21と、振動板21と接続されたボイスコイル23と、ボイスコイル23から延出されたリード線28と、を有する発音体20と、発音体20を覆う筐体16と、を備えている。また、筐体16の外側に向けて開口する開口部101aを有し、車両機器との電気的接続を行う車両コネクタが装着されるコネクタ部101と、コネクタ部101の開口部101a側から筐体16の内部へと突出して配置された接続端子30と、を備えている。そして、ボイスコイル23から延出されたリード線28が、筐体16内にて接続端子30と直接接続されている。
【0053】
このような構成によれば、発音体20を覆う筐体16を備え、さらに、ボイスコイル23から延出されたリード線28が、筐体16内にて接続端子30と直接接続されているので、発音体と筐体に設けられた接続端子との電気的接続を行うための部品点数を削減するとともに組み付けのための工数を低減することができる。
【0054】
また、ボイスコイル23は、コイル線232と、コイル線232が巻回されたボビン231と、を有し、ボビン231は、コイル線232の端部と接続されるとともにリード線28の端部と接続される接続部231aを有している。したがって、コイル線232の端部とリード線28の端部とを接続部231aで直接接続することができる。
【0055】
また、接続端子30は、リード線28を保持する保持部32aを有している。このため、ボイスコイル23から延出されたリード線28を、筐体16内にて接続端子30と直接接続する際に、リード線28を保持部32aに仮固定することができる。したがって、リード線の余長の調整を容易に行うことができ、リード線の接続端子への接続作業の作業性を向上することもできる。
【0056】
また、筐体16は、発音体20が取り付けられる筒状のベース10と、ベース10の一端側に配置されたケース14と、を有し、発音体20は、ベース10に対してシール部材によりシールされて取り付けられるとともに、ベース10とケース14の接合部は、シール部材によりシールされている。
【0057】
このように、発音体20は、ベース10に対してシール部材によりシールされて取り付けられるとともに、ベース10とケース14の接合部は、シール部材によりシールされているので、防水性および防塵性を向上することができる。
【0058】
また、ベース10には、発音体20が発する音の音質を調整するディフューザ102が設けられている。したがって、ディフューザ102による共鳴効果により、発音体20が発する音の音質を調整することができる。
【0059】
また、ベース10とディフューザ102は一体成形により構成されている。したがって、ディフューザ102のベース10への組み付け作業が不要であり、組み付け作業の作業性を向上することができる。
【0060】
ところで、発音体20から音が発音される際に、ボイスコイル23および振動板21の振動がボイスコイル23から延出されたリード線28に伝搬する。このとき、ボイスコイル23と接続端子30との長さは比較的長いため、リード線28の一端と他端の間が固定部221に固定されていないと、リード線28に生じる振動の固有振動数が低くなり、振動に対する耐性が低くなる。このため、振動によりリード線28が断線しやすくなり、発音体20の寿命が低下するといった懸念がある。
【0061】
しかし、本車両用発音器では、発音体は、振動板21を固定するフレーム22を有し、フレーム22は、リード線28の一端と他端の間を固定する固定部221を備えている。
【0062】
これによれば、固定部221によりリード線28の一端と他端の間が固定されるので、リード線28に生じる振動の固有振動数を高くすることができ、振動に対する耐性を高くすることができる。したがって、振動によるリード線28の断線を防止することができ、発音体を長寿命とすることが可能である。
【0063】
また、固定部221には、溝部221aが形成されており、溝部221aの幅は、リード線28の線径よりも短くなっており、リード線28は、固定部221に形成された溝部221aに嵌め込まれている。具体的には、溝部221aの幅は、リード線28の線径よりも僅かに短くなっており、リード線28は溝部221aに押し込まれて弾性変形した状態で溝部221a内に保持されている。この際、リード線28には、元の形状に戻ろうとする反力が生じ、溝部221aとリード線28の間に保持力が発現される。
【0064】
このように、リード線28の線径は、溝部221aの幅よりも長くなっており、リード線28は、固定部221に形成された溝部221aに嵌め込まれるようになっているので、溝部221aとリード線28の間に保持力が発現され、リード線を容易に固定することができる。
【0065】
また、発音体20は、ベース10の一端側に発音面20aが向くよう配置され、溝部221aは、固定部221のうち、ベース10の他端側を向く面に形成されている。このように、溝部221aは、固定部221のうち、ベース10の他端側を向く面に形成されているので、ベース10の他端側を向く面側からリード線28を容易に固定部221に固定することができる。
【0066】
また、リード線28は、複数のリード線のひとつであり、溝部221aは、固定部221に形成された複数の溝部のひとつである。複数のリード線28は、それぞれ固定部221に形成された溝部221aに嵌め込まれており、固定部221は、フレーム22と樹脂製部材により一体成形されている。
【0067】
このように、固定部221は、フレーム22と樹脂製部材により一体成形されており、複数のリード線28は、それぞれ固定部221に形成された溝部221aに嵌め込まれているので、複数のリード線28の間で短絡が生じないようにすることができる。さらに、固定部221は、フレーム22と樹脂製部材により一体成形されているので、フレーム22に固定部221を別部材として追加する場合と比較して、部品点数を少なくすることができる。
【0068】
ところで、リード線28の一端と他端の間を固定部221に固定した場合、ボイスコイル23および振動板21からリード線28に伝搬する振動により、特に、固定部221に形成された溝部221aからボイスコイル23側に延びる付け根部で断線することが考えられる。
【0069】
しかし、上記したように、リード線28のうち、固定部221に形成された溝部221aからボイスコイル23側に延びる付け根部に、リード線28を補強するための補強部222が設けられている。
【0070】
したがって、リード線28の付け根部にかかる応力を緩和することができ、リード線28の断線を防止することが可能である。
【0071】
また、本車両用発音器は、ボイスコイル23と固定部221との間に配置されるリード線28の途中に曲げ癖部280が形成されている。したがって、ボイスコイル23と固定部221との間に配置されるリード線28の張力が緩和され、振動によるリード線28の断線を防止することができる。
【0072】
また、固定部221と接続端子30との間に配置されるリード線28の途中に曲げ癖部281が形成されている。したがって、固定部221と接続端子30との間に配置されるリード線28の張力が緩和され、振動によるリード線28の断線を防止することができる。
【0073】
(他の実施形態)
上記実施形態では、本車両用発音器を、車両に搭載されて車室外に警報音を発する発音器として説明したが、警報音以外の音を発する発音器として用いることもできる。
【0074】
上記実施形態では、リード線28として錦糸線を用いたが、錦糸線以外の線材をリード線として用いることもできる。
【0075】
なお、本開示は上記した実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の材質、形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の材質、形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その材質、形状、位置関係等に限定されるものではない。


図1
図2
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図10