(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6673542
(24)【登録日】2020年3月9日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】凍土の造成状況管理システム、凍土の造成状況処理装置、及び凍土の造成状況管理方法
(51)【国際特許分類】
E02D 3/115 20060101AFI20200316BHJP
E02D 19/14 20060101ALI20200316BHJP
G01K 13/10 20060101ALI20200316BHJP
G01K 11/32 20060101ALI20200316BHJP
E21D 9/04 20060101ALI20200316BHJP
【FI】
E02D3/115
E02D19/14
G01K13/10
G01K11/32 A
E21D9/04 C
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-21715(P2016-21715)
(22)【出願日】2016年2月8日
(65)【公開番号】特開2017-141554(P2017-141554A)
(43)【公開日】2017年8月17日
【審査請求日】2019年1月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000201478
【氏名又は名称】前田建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100549
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 嘉之
(74)【代理人】
【識別番号】100113608
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 明
(72)【発明者】
【氏名】武部 篤治
(72)【発明者】
【氏名】田辺 和也
(72)【発明者】
【氏名】森 芳樹
(72)【発明者】
【氏名】安光 立也
(72)【発明者】
【氏名】野本 康介
【審査官】
佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−263557(JP,A)
【文献】
特開平09−041356(JP,A)
【文献】
特開2009−121174(JP,A)
【文献】
米国特許第05730550(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/115
E02D 19/14
E21D 9/04
G01K 11/32
G01K 13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤内に構築される構造物の周囲に造成される凍土の造成状況を管理する凍土の造成状況管理システムであって、
地盤内に構築される構造物の壁に設けられ、壁の温度情報を取得する線状の温度測定部と、
前記温度測定部で取得された壁の温度情報と、地盤の属性情報とに基づいて、凍土の造成状況を予測値として算出し、出力する、凍土の造成状況処理部と、
を備え、
前記凍土の造成状況処理部は、地盤の属性情報として、地盤の含水比、地盤の土粒子密度、及び地盤の飽和度を取得し、地盤のパラメータとして、地盤の初期温度、地盤の密度、地盤の熱伝導率、地盤の比熱を算出し、算出した地盤のパラメータと前記壁の温度情報とに基づいて、凍土の造成状況を算出する、凍土の造成状況管理システム。
【請求項2】
地盤内に構築される構造物の周囲に造成される凍土の造成状況を管理する凍土の造成状況管理システムであって、
地盤内に構築される構造物の壁に設けられ、壁の温度情報を取得する線状の温度測定部と、
前記温度測定部で取得された壁の温度情報と、地盤の属性情報とに基づいて、凍土の造成状況を予測値として算出し、出力する、凍土の造成状況処理部と、
を備え、
前記凍土の造成状況処理部は、予測値としての凍土の造成状況と、実測値としての凍土の造成状況とを比較し、比較結果を出力する、凍土の造成状況管理システム。
【請求項3】
前記凍土の造成状況処理部は、所定期間経過後における凍土の造成範囲を、凍土の温度を段階的に区分して出力する、請求項1又は2に記載の凍土の造成状況管理システム。
【請求項4】
地盤内に構築される構造物の周囲に造成される凍土の造成状況を処理する凍土の造成状況処理装置であって、
情報の入力を受け付ける操作部と、
前記操作部で受け付けた、地盤内に構築される構造物の壁に設けられた線状の温度測定部で取得された壁の温度情報と、地盤の属性情報とを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された、前記壁の温度情報と、前記地盤の属性情報とに基づいて、凍土の造成状況を予測値として算出する処理部と、
前記処理部で算出された予測値としての凍土の造成状況を表示する表示部と、
を備え、
、
前記処理部は、地盤の属性情報として、地盤の含水比、地盤の土粒子密度、及び地盤の飽和度を取得し、地盤のパラメータとして、地盤の初期温度、地盤の密度、地盤の熱伝導率、地盤の比熱を算出し、算出した地盤のパラメータと前記壁の温度情報とに基づいて、凍土の造成状況を算出する、凍土の造成状況処理装置。
【請求項5】
地盤内に構築される構造物の周囲に造成される凍土の造成状況を処理する凍土の造成状況処理装置であって、
情報の入力を受け付ける操作部と、
前記操作部で受け付けた、地盤内に構築される構造物の壁に設けられた線状の温度測定部で取得された壁の温度情報と、地盤の属性情報とを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された、前記壁の温度情報と、前記地盤の属性情報とに基づいて、凍土の造成状況を予測値として算出する処理部と、
前記処理部で算出された予測値としての凍土の造成状況を表示する表示部と、
を備え、
前記処理部は、予測値としての凍土の造成状況と、実測値としての凍土の造成状況とを比較し、比較結果を出力する、凍土の造成状況処理装置。
【請求項6】
地盤内に構築される構造物の周囲に造成される凍土の造成状況を管理する凍土の造成状況管理方法であって、
地盤内に構築される構造物の壁に設けられた線状の温度測定部により、壁の温度情報を取得する壁の温度情報取得ステップと、
前記壁の温度情報取得ステップで取得した壁の温度情報と、地盤の属性情報とに基づいて、凍土の造成状況を予測値として算出し、出力する、凍土の造成状況処理ステップと、を含み、
前記凍土の造成状況処理ステップにおいて、地盤の属性情報として、地盤の含水比、地盤の土粒子密度、及び地盤の飽和度を取得し、地盤のパラメータとして、地盤の初期温度、地盤の密度、地盤の熱伝導率、地盤の比熱を算出し、算出した地盤のパラメータと前記壁の温度情報とに基づいて、凍土の造成状況を算出する、凍土の造成状況管理方法。
【請求項7】
地盤内に構築される構造物の周囲に造成される凍土の造成状況を管理する凍土の造成状況管理方法であって、
地盤内に構築される構造物の壁に設けられた線状の温度測定部により、壁の温度情報を取得する壁の温度情報取得ステップと、
前記壁の温度情報取得ステップで取得した壁の温度情報と、地盤の属性情報とに基づいて、凍土の造成状況を予測値として算出し、出力する、凍土の造成状況処理ステップと、を含み、
前記凍土の造成状況処理ステップにおいて、予測値としての凍土の造成状況と、実測値としての凍土の造成状況とを比較し、比較結果を出力する、凍土の造成状況管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凍土の造成状況管理システム、凍土の造成状況処理装置、及び凍土の造成状況管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤内に凍土を造成する技術がある。例えば、特許文献1には、洞道となる部分に沿って複数の凍結管用孔を並列に形成し、その凍結管用孔に凍結管をそれぞれ挿入し、各凍結管内で冷却液を循環させて凍結管の周囲の地盤を凍結させ、得られた凍土を掘削すると共に地盤の温度を測定・管理して洞道を形成する凍結工法が開示されている。また、特許文献1には、温度計として、洞道の内壁から地盤に向かって放射状に配置された複数の測温管内にそれぞれ布設された光ファイバと、これらの光ファイバと接続され各光ファイバに光信号を通過させてその光信号の波長変化を検出する検出装置とを備えた温度計を使用することが開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、地盤に埋設された凍結管と、前記凍結管周辺に埋設された複数の温度計と、前記凍結管へ所定の温度のブラインを流すブライン冷却循環装置と、前記温度計で測定される地盤温度データと、前記ブライン冷却循環装置で測定されるブライン温度データとを用いて、凍土温度と凍土強度との関係から最適ブライン温度を算出し、前記凍結管へ前記最適ブライン温度のブラインを循環するように前記ブライン冷却循環装置を制御する制御装置と、を具備することを特徴とする凍結装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−28935号公報
【特許文献2】特開2009−121174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
凍土を造成した地盤内に測温管を配置し、直接地盤内の温度を計測して、凍土の状態を確認する技術がある。一例として、複数の白金抵抗体が設けられたケーブルが収容された測温管を地盤内に埋設し、白金抵抗体で温度を測定し、データロガーで温度変化を測定して地盤内の温度を管理する技術がある。しかしながら、白金抵抗体を用いた温度計は、温度測定において、各白金抵抗体が点として機能するため、広範囲の温度測定には適していなかった。一方、特許文献1に記載の技術では、洞道の内壁から地盤に向かって放射状に配置された複数の測温管内に光ファイバを布設し、各光ファイバに光信号を通過させてその光信号の波長変化を検出して、地盤内の温度を管理する。光ファイバを用いることで、測温管の軸方向(洞道の内壁と直交する方向)では、線状に温度を測定することができる。しかしながら、洞道の軸方向においては、測温管は点として機能する。そのため、洞道の軸方向における温度測定の精度を高めるためには、測温管同士の間隔を狭め、多くの測温管を地盤内に埋設する必要がある。しかしながら、測温管の埋設作業は、多大な労力を要する。そのため、温度測定範囲が広くなると、一層、作業が煩雑となる。
【0006】
本発明は、上記の問題に鑑み、従来よりも容易に凍土を管理できる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明では、地盤内に構築される構造物の周囲に造成される凍土の造成状況を管理するため、地盤内に構築される構造物の壁に線状の温度測定部を設けて壁の温度情報を取得し、取得した壁の温度情報と、地盤の属性情報とに基づいて、凍土の造成状況を予測できるようにした。
【0008】
詳細には、本発明は、地盤内に構築される構造物の周囲に造成される凍土の造成状況を管理する凍土の造成状況管理システムであって、地盤内に構築される構造物の壁に設けられ、壁の温度情報を取得する線状の温度測定部と、前記温度測定部で取得された壁の温度情報と、地盤の属性情報とに基づいて、凍土の造成状況を予測値として算出し、出力する、凍土の造成状況処理部と、を備える。
【0009】
本発明に係る凍土の造成状況管理システムでは、凍土の造成状況を予測値として算出することで、従来よりも容易に凍土を管理することができる。具体的には、線状の温度測定部を壁に設けることで、従来多大な労力を要していた測温管を地盤に埋設する作業を大幅に削減することができる。また、線状の温度測定部を壁に設けることで、構造物の壁に沿う方向において、点ではなく、線状に温度を測定することができる。線状の温度測定部は、壁に埋設してもよく、また、壁の表面(好ましくは、地盤側の表面)に沿うように設けてもよい。また、予測値としての凍土の造成状況を算出する際に用いる地盤の属性情報は、一般的な土質試験結果から得ることができる。その結果、本発明に係る凍土の造成状況管理システムでは、従来よりも容易に凍土を管理することができる。
【0010】
構造物は、地盤内に構築されるものであればよく、形状は特に限定されない。壁の形状は、曲線状、直線状でもよく、特に限定されない。壁は、地盤内に構築される構造物の外郭を形成し、内部にコンクリートを含むものとすることができる。構造物には、トンネルや立坑が例示される。線状の温度測定部は、線状かつ多点を測定できるものが好ましく、光ファイバが例示される。
【0011】
ここで、前記凍土の造成状況処理部は、地盤の属性情報として、地盤の含水比、地盤の土粒子密度、及び地盤の飽和度を取得し、地盤のパラメータとして、地盤の初期温度、地盤の密度、地盤の熱伝導率、地盤の比熱を算出し、算出した地盤のパラメータと前記壁の温度情報とに基づいて、予測値としての凍土の造成状況を算出することができる。地盤の含水比、地盤の土粒子密度、地盤の飽和度等は、一般的な土質試験から容易に得ることができる。そのため、容易に予測値としての凍土の造成状況を算出することができる。
【0012】
また、前記凍土の造成状況処理部は、所定期間経過後における凍土の造成範囲を、凍土の温度を段階的に区分して出力することができる。これにより、容易に凍土の造成状況を把握することができる。所定期間は、構造物の種類や規模等に応じて、任意に設定することができる。例えば、コンター図を用いることで、分かりやすく凍土の造成状況を出力することができる。
【0013】
また、前記凍土の造成状況処理部は、予測値としての凍土の造成状況と、実測値としての凍土の造成状況とを比較し、比較結果を出力することができる。これにより、凍土の造成状況の管理精度を向上することができる。実測値としての凍土の造成状況は、例えば、地盤内に測温管を設け、地盤内の温度を直接測定することで得ることができる。なお、測温管の埋設箇所は、予測値の精度に基づいて任意に決定することができる。例えば、予測値としての凍土の造成状況と、実測値としての凍土の造成状況との差が既定値以下の場合には、予測値の精度が高いとして、測温管の埋設箇所を少なくすることができる。また、例えば、予測値と実測値との差が既定値を上回る場合には、予測値の精度が低いとして、測温管の埋設箇所を多くすることができる。なお、予測値の精度が低い場合には、地盤の属性情報を見直すようにしてもよい。
【0014】
ここで、本発明は、凍土の造成状況を処理する凍土の造成状況処理装置として特定してもよい。凍土の造成状況処理装置は、上述した凍土の造成処理部に相当する。すなわち、本発明は、地盤内に構築される構造物の周囲に造成される凍土の造成状況を処理する凍土の造成状況処理装置であって、情報の入力を受け付ける操作部と、前記操作部で受け付けた、地盤内に構築される構造物の壁に設けられた線状の温度測定部で取得された壁の温度情報と、地盤の属性情報とを記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された、前記壁の温度情報と、前記地盤の属性情報とに基づいて、凍土の造成状況を予測値として算出する処理部と、前記処理部で算出された予測値としての凍土の造成状況を表示する表示部と、を備える。本発明に係る凍土の造成状況処理装置によれば、従来よりも容易に凍土の造成状況を管理することができる。
【0015】
また、本発明は、凍土の造成状況を管理する凍土の造成状況管理方法として特定してもよい。例えば、本発明は、地盤内に構築される構造物の周囲に造成される凍土の造成状況を管理する凍土の造成状況管理方法であって、地盤内に構築される構造物の壁に設けられた線状の温度測定部により、壁の温度情報を取得する壁の温度情報取得ステップと、前記壁の温度情報取得ステップで取得した壁の温度情報と、地盤の属性情報とに基づいて、凍土の造成状況を予測値として算出し、出力する、凍土の造成状況処理ステップと、を含む。本発明に係る凍土の造成状況管理方法によれば、従来よりも容易に凍土の造成状況を管理することができる。
【0016】
また、本発明に係る凍土の造成状況管理方法は、前記地盤内に測温管を埋設し、当該地盤の温度を直接測定して、実測値としての凍土の造成状況を取得する実測値の取得ステップを更に含み、前記凍土の造成状況処理ステップは、予測値としての凍土の造成状況と、実測値としての凍土の造成状況とを比較し、比較結果を出力することができる。これにより、凍土の造成状況の管理精度を向上することができる。
【0017】
また、本発明は、上記に加えて、凍土の造成状況処理装置で実行される方法やプログラムとして特定してもよい。また、本発明は、そのようなプログラムが記録された記録媒体として特定してもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、従来よりも容易に凍土を管理できる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、実施形態に係る凍土の造成状況管理システムの概要を示す。
【
図2】
図2は、シールドトンネルに光ファイバを設置した例を示す。
【
図4】
図4は、立坑に光ファイバを設置した例を示す。
【
図6】
図6は、実施形態に係る凍土の造成状況処理装置の構成を示す。
【
図7】
図7は、実施形態に係る凍土の造成状況管理方法のフローを示す。
【
図8】
図8は、鋼製セグメントの表面から30cmピッチの節点における温度履歴のグラフの一例を示す。
【
図9】
図9は、予測値としての凍土の造成状況の表示例を示す。
【
図10】
図10は、予測値としての凍土の造成状況と、実測値としての凍土の造成状況との比較結果の表示例を示す。
【
図11】
図11は、シールドトンネルに光ファイバを設置した他の例を示す。
【
図12】
図12は、
図11のシールドトンネルに用いられる、接続アダプタを用いて光ケーブルを接続する鋼製セグメントを示す。
【
図13】
図13は、
図11のシールドトンネルに用いられる、接続アダプタを用いて光ケーブルを接続する鋼製セグメントの他の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。以下の説明は例示であり、本発明は以下の内容に限定されるものではない。
【0021】
<システムの概要>
図1は、実施形態に係る凍土の造成状況管理システムの概要を示す。実施形態に係る凍土の造成状況管理システム100(以下、単に管理システム100ともいう。)は、地盤6の温度情報を取得する温度測定装置200、予測値としての凍土の造成状況を算出する凍土の造成状況処理装置300を備える。
【0022】
<<温度測定装置>>
温度測定装置200は、本発明の温度測定部の一例であり、光ファイバ201と、光ファイバ201にレーザを入射するとともに散乱光を測定して温度を測定する測定器202とを含む構成である。測定器202の機能は、凍土の造成状況処理装置300に持たせるようにしてもよい。
【0023】
ここで、
図2、
図3は、止水装置1を用いてシールドトンネルの周囲に凍土を造成する場合における光ファイバ201の設置例を示す。
図2は、シールドトンネルに光ファイバを設置した例を示す。
図3は、
図2のA−A断面図を示す。止水装置1について簡単に説明すると、止水装置1は、複数の凍結管2、被覆材3、断熱材4を含む。地盤6内に構築されるシールドトンネル5(以下、単にトンネル5ともいう)を構成する鋼製セグメント51の内側に凍結管2が設置されている。鋼製セグメント51は、本発明の壁の一例であり、コンクリートを中詰めした鋼製セグメントからなる。凍結管2は、図示しない所謂Uバンドで鋼製セグメント51に固定されている。また、凍結管2は、被覆材3(コンクリート又はモルタル等)で被覆されている。また、被覆材3は、断熱材4(例えば、発泡ウレタン)で被覆されている。凍結管2に冷却媒体が供給されると、凍土7が造成される。
【0024】
光ファイバ201は、鋼製セグメント51の内部に埋め込まれている。光ファイバ201が埋め込まれた鋼製セグメント51は、例えば、光ファイバ201を埋め込むための孔を形成し、隣接する鋼製セグメント51の孔の位置を合わせて現場で鋼製セグメント51を組み立てた後、形成した孔に光ファイバ201を通すことで実現できる。光ファイバ201を孔に通した後、孔の内面と光ファイバ201の外面との間に隙間が形成されている場合には、その隙間に凍結しにくい充填材(例えば、熱伝導性シリコン材やグリース材など)を充填してもよい。
【0025】
ここで、
図4、
図5は、止水装置1を用いて立坑の周囲に凍土を造成する場合における光ファイバ201の設置例を示す。
図4は、立坑に光ファイバを設置した例を示す。また、
図5は、
図4のB−B断面図を示す。
図4、
図5の例においても、止水装置1は、複数の凍結管2、被覆材3、断熱材4を含む。但し、
図4、
図5の例では、凍結管2が、立坑9を構成する鋼矢板・中詰めコンクリート91の内側に設置されている。鋼矢板・中詰めコンクリート91は、本発明の壁の一例である。凍結管2は、図示しない所謂Uバンドで、鋼矢板・中詰めコンクリート91に固定されている。また、凍結管2は、被覆材3(コンクリート又はモルタル等)で被覆されている。また、被覆材3は、断熱材4(例えば、発泡ウレタン)で被覆されている。凍結管2に冷却媒体が供給されると、凍土7が造成される。
【0026】
光ファイバ201は、鋼矢板・中詰めコンクリート91の内部に埋め込まれている。光
ファイバ201が埋め込まれた鋼矢板・中詰めコンクリート91は、例えば、光ファイバ201を埋め込むための孔を形成し、隣接する鋼矢板・中詰めコンクリート91の孔の位置を合わせて現場で鋼矢板・中詰めコンクリート91を組み立てた後、形成した孔に光ファイバ201を通すことで実現できる。光ファイバ201を孔に通した後、孔の内面と光ファイバ201の外面との間に隙間が形成されている場合には、その隙間に凍結しにくい充填材(例えば、熱伝導性シリコン材やグリース材など)を充填してもよい。
【0027】
<<凍土の造成状況処理装置>>
図6は、実施形態に係る凍土の造成状況処理装置の構成を示す。処理装置300(以下、単に処理装置300ともいう。)は、汎用のコンピュータによって構成することができ、処理装置300は、制御部301、表示部304、操作部305、記憶部306、通信部307を備える。制御部301は、CPU302、メモリ303を含み、メモリ303に格納されたプログラムに従って、処理装置300又は管理システム100を制御する。例えば、制御部301は、温度測定装置200で取得した壁の温度情報と、地盤6の属性情報とに基づいて、凍土の造成状況を予測値として算出し、表示部304に表示する。
【0028】
メモリ303は、ROM、RAM等の記憶媒体によって構成されている。メモリ303には、制御プログラム等のデータが記憶されている。表示部304は、例えば、液晶表示装置、プラズマディスプレイパネル、CRT(Cathode Ray Tube)、エレクトロルミネッセンスパネル等を含む。操作部305は、例えば、キーボード、ポインティングデバイス、タッチパネル、操作ボタン等を含む。記憶部306は、例えば、HDD(ハードディスクドライブ)、SSD(solid state drive)等を含む。通信部307には、例えば、ネットワークへの接続を実現する通信モジュール(例えば、ネットワークカード)が例示される。
【0029】
<凍土の造成状況管理方法>
次に、凍土の造成状況管理方法について説明する。
図7は、実施形態に係る凍土の造成状況管理方法のフローを示す。
【0030】
<<地盤の3次元解析モデルの構築>>
まず、構造物(例えば、シールドトンネル5や立坑9)の施工前において、凍土7を造成する地盤6の3次元解析モデルが構築される(ステップS01)。この3次元解析モデルは、設計図面などを参考にして鋼製セグメント51、地盤6の部分を格子状モデル(節点・要素)でモデル化したものであり、設計図面などの位置情報を参考に、汎用ソフトにより作成できる。作成した3次元解析モデルは処理装置300のメモリ303に格納し、処理装置内の操作部305により、確認が必要な対象範囲の解析モデルを選抜できるようになっている。また選抜された3次元解析モデルは表示部304に表示することができる。
【0031】
<<地盤内の熱特性値の算出>>
次に、地盤6内の熱特性値が算出される(ステップS02)。地盤6内の熱特性値は、本発明の地盤のパラメータの一例であり、3次元解析モデルの地盤6内の節点に紐づけられるものである。地盤6が一様な地盤(例えば、砂地盤)と判断される場合は、一種類のパラメータを算出して設定するが、複数種の地盤(例えば、粘土、砂、礫など)に分類される場合は、その種類の数だけパラメータを算出して設定する。設定される地盤6内の熱特性値には、土の初期温度(本発明の地盤の初期温度の一例)、凍結前後の土の密度(本発明の地盤の密度の一例)、凍結前後の土の熱伝導率(本発明の地盤の熱伝導率の一例)、凍結前後の土の比熱(本発明の地盤の比熱の一例)が含まれる。これらの地盤6内の熱特性値は、その地盤の種類に関わらず、一般的な土質試験で得られる「土粒子密度」、「含水比」、及び「飽和度」により算出することができる。
【0032】
<<鋼製セグメントの温度計測データの取得>>
次に、構造物(例えば、シールドトンネル5や立坑9)の施工中において、温度測定装置200により、鋼製セグメント51の温度計測データ(本発明の壁の温度情報の一例)が取得される(ステップS03)。換言すると、鋼製セグメント51に埋め込まれた光ファイバ201により、多点の温度データが取得される。ステップS03は、本発明の壁の温度情報取得ステップの一例である。
【0033】
<<予測値としての凍土の造成状況の算出>>
次に、予測値としての凍土の造成状況が算出される(ステップS04)。予測値としての凍土の造成状況は、処理装置300の制御部301が、メモリ303に格納された、予測値としての凍土の造成状況算出プログラムを実行することで実現される。具体的には、まず、ステップS02で算出された地盤6内の熱特性値、及びステップS03で取得された鋼製セグメント51の温度計測データが処理装置300に入力され、記憶部306に記憶される。地盤6内の熱特性値、及び鋼製セグメント51の温度計測データは、操作部305を介して入力することができる。また、地盤6内の熱特性値を処理装置300で算出した場合には、算出された地盤6内の熱特性値が自動的に記憶部306に記憶される。また、処理装置300が測定器202の機能を有している場合には、測定された鋼製セグメント51の温度計測データが自動的に記憶部306に記憶される。
【0034】
次に、処理装置300の制御部301は、記憶部306に記憶された地盤6内の熱特性値(土の初期温度、凍結前後の土の密度、凍結前後の土の熱伝導率、凍結前後の土の比熱)と、鋼製セグメント51の温度計測データとに基づいて、凍土の造成状況を算出する。具体的には、処理装置300の制御部301は、所定期間経過後(例えば、30日後、60日後、90日後)における凍土の造成範囲を、凍土の温度を段階的に区分して(例えば、5℃刻み)で出力できるよう、凍土の造成状況を算出する。所定期間経過後の凍土の造成範囲は、3次元解析モデルの地盤6内の各節点における温度データを算出し、算出した温度データの履歴を記憶部306に記憶しておき、所定期間経過後(指定日)の温度データを抽出し、節点の位置情報と温度データから、3次元解析モデルのある任意の断面および位置におけるメッシュ図に温度分布を併記して、温度分布のコンター図として出力することができる。ここで、
図8は、鋼製セグメントの表面から30cmピッチの節点における温度履歴のグラフの一例を示す。
図8では、鋼製セグメント51の表面の温度履歴、鋼製セグメント51の表面から30、60、90、120cmの温度履歴が120日分示されている。
【0035】
<<予測値としての凍土の造成状況の出力>>
次に、処理装置300の制御部301は、ステップS04で算出した、予測値としての凍土の造成状況を出力する(ステップS05)。具体的には、処理装置300の制御部301は、予測値としての凍土の造成状況を、表示部304に表示する。ここで、
図9は、予測値としての凍土の造成状況(0℃以下の範囲)の表示例を示す。
図9の表示例は、シールドトンネル5における、予測値としての凍土の造成状況であり、3次元解析モデルのある任意の断面および位置におけるメッシュ図に、0℃以下の温度分布が併記された、温度分布のコンター図で示されている。また、
図9の表示例は、30日後、60日後、90日後の、予測値としての凍土の造成状況を含む。また、
図9の表示例では、凍土の造成範囲が、5℃刻みで色分けして表示されている。
図9に示す例では、0.00〜−5.00℃が7a、−5.00〜−10.00℃が7b、−10.00〜−15.00℃が7c、−15.00〜−20.00℃が7dで示されている。日数の経過に伴い、凍結管2を中心に凍土の造成範囲が徐々に広がっていくことを確認することができる。そして、90日後において、凍土の造成範囲が既定値に達することが確認できる。
【0036】
<<実測値としての凍土の造成状況の取得>>
次に、測温管により地盤6内の温度が測定され、実測値としての凍土の造成状況が取得される(ステップS06)。具体的には、鋼製セグメント51の内側から地盤6内に測温管が挿入され、地盤6内の温度が測定される。測温管は、多点(複数の計測位置)での温度の取得が可能であり、測定された地盤6内の温度に基づいて、実測値としての凍土の造成状況が取得される。
【0037】
<<予測値と実測値との比較>>
次に、ステップS05で出力された予測値としての凍土の造成状況と、ステップS06で取得した実測値としての凍土の造成状況とが比較される(ステップS07)。予測値と実測値との比較は、処理装置300の制御部301が、メモリ303に格納された、予測値と実測値とを比較するための比較用プログラムを実行することで実現される。なお、予測値と実測値とを比較するための比較用プログラムは、先に説明した、凍土の造成状況算出プログラムに組み込んでもよい。具体的には、まず、ステップS06で取得した実測値としての凍土の造成状況が処理装置300に入力され、記憶部306に記憶される。実測値としての凍土の造成状況、換言すると、複数の計測値における温度は、操作部305を介して入力することができる。また、実測値としての凍土の造成状況を処理装置300で算出して取得した場合には、取得した実測値としての凍土の造成状況値が自動的に記憶部306に記憶される。
【0038】
次に、処理装置300の制御部301は、記憶部306に記憶された予測値としての凍土の造成状況と、同じく記憶部306に記憶された実測値としての凍土の造成状況とを比較する。具体的には、処理装置300の制御部301は、座標に基づいて、実測値としての、計測温管の各計測位置の温度と、この各計測位置に対応する、予測値としての温度とを比較する。
【0039】
<<予測値と実測値との比較結果の出力>>
次に、処理装置300の制御部301は、ステップS07の比較結果を出力する(ステップS08)。具体的には、処理装置300の制御部301は、予測値としての凍土の造成状況と、実測値としての凍土の造成状況とを、表示部304に表示する。ここで、
図10は、予測値としての凍土の造成状況と、実測値としての凍土の造成状況との比較結果の表示例を示す。
図10の表示例は、
図9で説明した、シールドトンネル5における、予測値としての凍土の造成状況(90日後)と、測温管の温度計測位置が示されている。測温管の計測位置における温度は、計測位置の横に実測値をそのまま表示してもよい。また、測温管の計測位置における温度は、計測位置を示す丸印を、例えば予測値としての凍土の造成範囲の表示方法に合わせて、−5℃刻みで色分けして表示してもよい。更に、例えば、予測値としての凍土の造成状況と、実測値としての凍土の造成状況との差が既定値を上回る場合には、既定値を上回る箇所が確認できるよう、他の計測位置を示す丸印と色分けするなどして、表示するようにしてもよい。
【0040】
なお、測温管の埋設箇所は、予測値の精度に基づいて任意に決定することができる。例えば、予測値としての凍土の造成状況と、実測値としての凍土の造成状況との差が既定値以下の場合には、予測値の精度が高いとして、測温管の埋設箇所を少なくすることができる。また、例えば、予測値と実測値との差が既定値を上回る場合には、予測値の精度が低いとして、測温管の埋設箇所を多くすることができる。なお、予測値の精度が低い場合には、地盤6の属性情報を見直すようにしてもよい。以上により、凍土の造成状況を管理することができる。
【0041】
<効果>
以上説明した実施形態に係る凍土の造成状況管理システム100によれば、凍土の造成
状況を予測値として算出することで、従来よりも容易に凍土を管理することができる。具体的には、線状の光ファイバ201を壁(鋼製セグメント51や鋼矢板・中詰めコンクリート91)に埋設することで、従来多大な労力を要していた測温管を埋設する作業を大幅に削減することができる。また、線状の光ファイバ201を壁に埋設することで、構造物(シールドトンネル5や立坑9)の壁に沿う方向において、点ではなく、線状に温度を測定することができる。一本の線で多点の温度を測定できることから、配線数を大幅に削減できる。また、予測値としての凍土の造成状況を算出する際に用いる地盤6の属性情報(地盤6の含水比、地盤6の土粒子密度)は、一般的な土質試験結果から得ることができる。その結果、実施形態に係る凍土の造成状況管理システム100では、従来よりも容易に凍土を管理することができる。
【0042】
また、実施形態に係る凍土の造成状況管理システム100によれば、例えば、シールドトンネル5における、予測値としての凍土の造成状況を、所謂コンター図で表示することができる。また、予測値としての凍土の造成状況は、30日後、60日後、90日後について、凍土の造成範囲を所定の温度刻み(例えば、5℃刻み)で色分けして表示することができる。そのため、所定期間経過後の凍土の造成状況を容易に把握することができる。
【0043】
また、実施形態に係る凍土の造成状況管理システム100によれば、予測値としての凍土の造成状況と、実測値としての凍土の造成状況とを比較し、比較結果を出力することができる。これにより、凍土の造成状況の管理精度を向上することができる。なお、上述したように、例えば、予測値と実測値との差が既定値を上回る場合には、予測値の精度が低いとして、測温管の埋設箇所を多くすることができる。なお、予測値の精度が低い場合には、地盤6の属性情報を見直すようにしてもよい。
【0044】
<変形例>
ここで、上述した実施形態では、光ファイバ201が埋め込まれた鋼製セグメント51について、光ファイバ201を埋め込むための孔を形成し、形成した孔に光ファイバ201を通す構成を一例として説明した。この構成とは異なる例として、例えば、光ファイバ201が埋め込まれた鋼製セグメント51は、光ファイバ201を設置した上で、鋼製セグメント51の中詰めコンクリートを打設して作製してもよい。ここで、
図11は、シールドトンネルに光ファイバを設置した他の例を示す。
図12は、
図11のシールドトンネルに用いられる、接続アダプタを用いて光ケーブルを接続する鋼製セグメントを示す。
図11、
図12に示す例では、光ファイバ201の端部が鋼製セグメント51から露出しており、露出する光ファイバ201の端部に接続アダプタ203が設けられている。光ファイバ201は、現場で鋼製セグメント51を組み立てる際、接続アダプタ203を接続することで、鋼製セグメント51に埋め込まれた一本のケーブルとして機能する。なお、
図4、
図5で説明した立坑に光ファイバ201を設置する場合においても、鋼矢板・中詰めコンクリート91から光ファイバ201の端部を露出しておき、露出する光ファイバ201の端部に接続アダプタ203を設け、光ファイバ201を一本のケーブルとして機能させるようにしてもよい。なお、
図12に示す例は、光ファイバ201を鋼製セグメント51の内側に設置する態様を示しているが、
図13に示す態様のように光ファイバ201を鋼製セグメント51の外側に設置してもよい。
【0045】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明に係る凍土の造成状況管理システム、凍土の造成状況処理装置、及び凍土の造成状況管理方法は、これらに限られず、可能な限りこれらを組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0046】
1・・・止水装置
2・・・凍結管
3・・・被覆材
4・・・断熱材
5・・・トンネル
51・・・鋼製セグメント(中詰めコンクリート)
6・・・地盤
7・・・凍土
9・・・立坑
91・・・鋼矢板・中詰めコンクリート
100・・・凍土の造成状況管理システム
200・・・温度測定装置
201・・・光ファイバ
202・・・測定器
203・・・接続アダプタ
300・・・凍土の造成状況処理装置
301・・・制御部
302・・・CPU
303・・・メモリ
304・・・表示部
305・・・操作部
306・・・記憶部
307・・・通信部