【文献】
Taejoong Kim et al.,Enhancement of fluorescence confocal scanning microscopy lateral resolution by use of structured illumination,Meas.Sci.Technol.,2009年,Vol.20,pp.055501-1〜055501-9
【文献】
Ondrej Mandula et al.,Line scan - structured illumination microscopy super-resolution imaging in thick fluorescent samples,OPTICS EXPRESS,2012年,Vol.20 No.22,pp.24167-24174
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
試料の深さ方向に対して干渉縞が生成されるように、+1次回折光及び−1次回折光の位相に対して、前記回折素子で生じた0次回折光の位相及び強度を調整して、+1次回折光、−1次回折光干渉及び0次回折光を干渉させる、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載のラマン分光顕微鏡。
試料の深さ方向に対して干渉縞が生成されるように、+1次回折光及び−1次回折光の位相に対して、前記回折素子で生じた0次回折光の位相及び強度を調整して、+1次回折光、−1次回折光干渉及び0次回折光を干渉させる、
請求項9乃至14のいずれか一項に記載のラマン散乱光観察方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、発明者らは、上述で説明した手法には以下に示す問題点が有ることを見出した。上述の手法では、ラマン分光顕微鏡における観察の空間分解能の向上については触れられていない。そのため、ラマン分光顕微鏡において、如何にして観察の空間分解能を向上させ得るかは明らかでない。
【0007】
本発明は上述の事情に鑑みて成されたものであり、本発明の目的は、ラマン分光顕微鏡において光の回折限界を超える空間分解能を実現することである。
【0008】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様であるラマン分光顕微鏡は、光源と、前記光源が出力する光を回折させ、回折光を生じさせる回折素子と、入射する光の分光スペクトル及び前記分光スペクトルの光強度の空間分布を取得する分光器と、前記回折素子で生じた前記+1次回折光及び前記−1次回折光による干渉光を、前記干渉光による干渉縞と直交する第1の方向を長手方向とするライン照明光として観察対象物に照射するとともに、前記ライン照明光が観察対象物に照射されて生じたラマン散乱光を前記分光器へ導く光学系と、前記ライン照明によって、観光察対象物を前記第1の方向と直交する第2の方向に走査させる制御部と、を備えるものである。これにより、ライン照明光の第1の方向に+1次回折光と−1次回折光との干渉縞を生じさせることができる。その結果、光の回折限界を超えて第1の方向に解像可能な空間周波数を大きくすることができる。
【0010】
本発明の第2の態様であるラマン分光顕微鏡は、上述のラマン分光顕微鏡であって、前記制御部は、前記第2の方向のサンプリング間隔が前記ライン照明光の前記第1の方向の強度分布に現れる空間周波数と一致するように、前記ライン照明光に観察対象物を走査させるものである。これにより、第1及び第2の方向で空間周波数が一致した観察対象物の2次元像を取得することができる。
【0011】
本発明の第3の態様であるラマン分光顕微鏡は、上述のラマン分光顕微鏡であって、前記分光器は、前記ラマン散乱光が入射するスリットと、前記スリットを介して入射した前記ラマン散乱光が撮像面に結像する撮像素子と、を備え、前記撮像素子が撮像を行うことにより、前記前記ラマン散乱光の分光スペクトル及び前記分光スペクトルの光強度の空間分布を取得するものである。これにより、ライン照明部位からのラマン散乱光を同時に取得できる。
【0012】
本発明の第4の態様であるラマン分光顕微鏡は、上述のラマン分光顕微鏡であって、前記制御部は、観察対象物に対する前記ライン照明光の照射位置を保ったまま、前記+1次回折光及び前記−1次回折光による干渉光によって生じる干渉縞の位相を多段階に変化させ、変化させた前記干渉縞の位相のそれぞれについて得られる複数の前記分光スペクトルの光強度の空間分布を合成して、当該照射位置における分光スペクトルの光強度の空間分布を生成するものである。これによれば、観察対象物の2次元像における第1の方向の空間分解能をさらに向上させることができる。
【0013】
本発明の第5の態様であるラマン分光顕微鏡は、上述のラマン分光顕微鏡であって、前記制御部は、前記分光器が取得した前記ラマン散乱光の分光スペクトルの光強度の空間分布を取得し、前記光強度の空間分布に現れる空間周波数が均一となるように、光強度の空間分布の空間ピッチを補正するものである。これにより、分光器が取得した前記ラマン散乱光の分光スペクトルの光強度の空間分布の分光器の収差に起因する歪みを補正し、観察対象物の正確な2次元像を取得することができる。
【0014】
本発明の第6の態様であるラマン分光顕微鏡は、上述のラマン分光顕微鏡であって、前記制御部は、前記分光器から取得した前記光強度の空間分布を複数の区間に分割し、前記複数の区間のそれぞれについて、光強度の空間分布に現れる空間周波数を取得し、前記複数の区間のそれぞれの空間周波数が所定の基準値に一致するように、前記複数の区間のそれぞれの光強度分布の空間ピッチを補正し、空間ピッチを補正した前記複数の区間の光強度の空間分布を合成して、分光スペクトルの光強度の空間分布を補正するものである。これにより、各区間の空間周波数に基づいて、各区間の空間ピッチの補正を具体的に行うことが可能である。
【0015】
本発明の第7の態様であるラマン分光顕微鏡は、上述のラマン分光顕微鏡であって、前記光源から前記回折素子に入射する光は、平行光であるものである。これにより、ラマン分光で用いられる光源からの光強度の大きい光が回折素子で収束しないようにでき、回折素子の劣化を防止することができる。
【0016】
本発明の第8の態様であるラマン分光顕微鏡は、上述のラマン分光顕微鏡であって、試料の深さ方向に対して干渉縞が生成されるように、+1次回折光及び−1次回折光の位相に対して、前記回折素子で生じた0次回折光の位相及び強度を調整して、+1次回折光、−1次回折光干渉及び0次回折光を干渉させるものである。これにより、試料の深さ方向にも干渉縞して、試料の深さ方向の空間分解能を向上させることができる。
【0017】
本発明の第9の態様であるラマン分光顕微鏡は、上述のラマン分光顕微鏡であって、前記光源と前記回折素子との間又は前記光学系に設けられ、通過する光のビーム断面形状を変化させるビーム断面変換器を更に備えるものである。これにより、回折素子の刻線数が固定されている場合でも、試料に照明光を照射する対物レンズの瞳に、所望の回折光を入射させることができる。
【0018】
本発明の第10の態様であるラマン散乱光観察方法は、光源が出力する光を、回折素子により回折させ、回折光を生じさせ、前記回折素子で生じた前記+1次回折光及び前記−1次回折光による干渉光を、前記干渉光による干渉縞と直交する第1の方向を長手方向とするライン照明光として観察対象物に照射し、前記ライン照明光によって、観察対象物を前記第1の方向と直交する第2の方向に走査させ、前記ライン照明光が観察対象物に照射されて生じたラマン散乱光の分光スペクトル及び前記分光スペクトルの光強度の空間分布を取得するものである。これにより、ライン照明光の第1の方向に+1次回折光と−1次回折光との干渉縞を生じさせることができる。その結果、光の回折限界を超えて第1の方向に解像可能な空間周波数を大きくすることができる。
【0019】
本発明の第11の態様であるラマン散乱光観察方法は、上述のラマン散乱光観察方法であって、前記第2の方向のサンプリング間隔が前記ライン照明光の前記第1の方向の強度分布に現れる空間周波数と一致するように、前記ライン照明光に観察対象物を走査させるものである。これにより、第1及び第2の方向で空間周波数が一致した観察対象物の2次元像を取得することができる。
【0020】
本発明の第12の態様であるラマン散乱光観察方法は、上述のラマン散乱光観察方法であって、前記ラマン散乱光をスリットに入射させ、前記スリットを介して入射した前記ラマン散乱光を撮像素子の撮像面に結像させ、前記撮像素子が撮像を行わせることで、前記前記ラマン散乱光の分光スペクトル及び前記分光スペクトルの光強度の空間分布を取得するものである。これにより、ライン照明部位からのラマン散乱光を同時に取得できる。
【0021】
本発明の第13の態様であるラマン散乱光観察方法は、上述のラマン散乱光観察方法であって、観察対象物に対する前記ライン照明光の照射位置を保ったまま、前記+1次回折光及び前記−1次回折光による干渉光によって生じる干渉縞の位相を多段階に変化させ、変化させた前記干渉縞の位相のそれぞれについて得られる複数の前記分光スペクトルの光強度の空間分布を合成して、当該照射位置における分光スペクトルの光強度の空間分布を生成するものである。これによれば、観察対象物の2次元像における第1の方向の空間分解能をさらに向上させることができる。
【0022】
本発明の第14の態様であるラマン散乱光観察方法は、上述のラマン散乱光観察方法であって、前記ラマン散乱光の分光スペクトルの光強度の空間分布に現れる空間周波数が均一となるように、光強度の空間分布の空間ピッチを補正するものである。これにより、分光器が取得した前記ラマン散乱光の分光スペクトルの光強度の空間分布の分光器の収差に起因する歪みを補正し、観察対象物の正確な2次元像を取得することができる。
【0023】
本発明の第15の態様であるラマン散乱光観察方法は、上述のラマン散乱光観察方法であって、前記ラマン散乱光の分光スペクトルの光強度の空間分布を複数の区間に分割し、前記複数の区間のそれぞれについて、光強度の空間分布に現れる空間周波数を取得し、前記複数の区間のそれぞれの空間周波数が所定の基準値に一致するように、前記複数の区間のそれぞれの光強度分布の空間ピッチを補正し、空間ピッチを補正した前記複数の区間の光強度の空間分布を合成して、分光スペクトルの光強度の空間分布を補正するものである。これにより、各区間の空間周波数に基づいて、各区間の空間ピッチの補正を具体的に行うことが可能である。
【0024】
本発明の第16の態様であるラマン散乱光観察方法は、上述のラマン分光顕微鏡であって、前記光源から前記回折素子に入射する光は、平行光であるものである。これにより、ラマン分光で用いられる光源からの光強度が大きい光が回折素子で収束しないようにでき、回折素子の劣化を防止することができる。
【0025】
本発明の第17の態様であるラマン散乱光観察方法は、上述のラマン分光顕微鏡であって、試料の深さ方向に対して干渉縞が生成されるように、+1次回折光及び−1次回折光の位相に対して、前記回折素子で生じた0次回折光の位相及び強度を調整して、+1次回折光、−1次回折光干渉及び0次回折光を干渉させるものである。これにより、試料の深さ方向にも干渉縞して、試料の深さ方向の空間分解能を向上させることができる。
【0026】
本発明の第18の態様であるラマン散乱光観察方法は、上述のラマン分光顕微鏡であって、前記回折素子の前記光源側又は前記回折素子の前記光源とは反対側に、通過する光のビーム断面形状を変化させるビーム断面変換器が前記回折素子と離隔して設けられるものである。これにより、回折素子の刻線数が固定されている場合でも、試料に照明光を照射する対物レンズの瞳に、所望の回折光を入射させることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、ラマン分光顕微鏡において光の回折限界を超える空間分解能を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。各図面においては、同一要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略される。
【0030】
実施の形態1
実施の形態1にかかるラマン分光顕微鏡について説明する。
図1は、実施の形態1にかかるラマン分光顕微鏡100の基本構成を模式的に示すブロック図である。
図2は、実施の形態1にかかるラマン分光顕微鏡100の構成を模式的に示す上面図である。
図3は、実施の形態1にかかる光学系3の一部の構成を光源1側から見た場合の斜視図である。
【0031】
図1〜3、以下の図および説明では、ミラーなどによる光の反射にかかわらず、照明光またはラマン散乱光の進行方向をZ軸、Z軸に垂直な方向をX軸、Z軸とX軸の両方に垂直となる方向をY軸とする。
図2では紙面に対して垂直な方向がX軸である。また、X軸方向を第1の方向、Y軸方向を第2の方向とも称する。
【0032】
光源1は、単色光源であり、例えば連続発振レーザ装置が用いられる。光源1は、レーザ光Lを回折格子2へ出力する。この際、レーザ光Lは、平行光として回折格子2に入射する。一般にラマン分光顕微鏡では、比較的高出力のレーザ光が用いられる。高出力のレーザを回折格子に収束させると、回折格子の破損、劣化が生じるおそれがある。そこで、本実施の形態では、レーザ光Lを平行光として回折格子2に入射させることで、回折格子の破損、劣化を防止することができる。
【0033】
回折格子2は、Y軸に沿った方向(水平方向)を長手方向とするスリット、もしくは屈折率分布が刻まれた構造を有する回折素子である。これにより、回折光が生じる。以下では、0次回折光、+1次回折光、−1次回折光に着目して説明する。回折格子2からは、Z軸方向に直進する0次回折光と、X−Z平面内で所定角度だけ回折した+1次回折光及び−1次回折光とが生じ、光学系3に入射する。0次回折光、+1次回折光及び−1次回折光を含む光を、照明光Ldと表記する。
【0034】
光学系3は、照明光を導き、ライン照明光LLとして観察対象物10に照射する。また、光学系3は、ライン照明光LLが観察対象物10に照射されて発生するラマン散乱光Lrを、分光器4に導く。すなわち、光学系3は、照明光を観察対象物に導く照明光学系としての機能と、観察対象物に照射されて発生するラマン散乱光を分光器に導く結像光学系としての機能とを併せ持つものである。
【0035】
光学系3は、シリンドリカルレンズCL1〜CL3、レンズL1〜L4、対物レンズOL、遮光板31、エッジフィルタ32、ガルバノミラー33、ミラー34を有する。
【0036】
図4は、実施の形態1にかかる光学系3に含まれる照明光学系の構成を模式的に示す横面図である。
図2では、光学系3での光路は屈曲しているが、照明光学系の理解を容易にするため、
図4では照明光学系の構成要素を直線上に並べて表示している。
図4では、+1次回折光を実線で示し、−1次回折光を短鎖線で示している。また、照明光の光軸を長鎖線で示している。また、
図4では、エッジフィルタ32、ガルバノミラー33及びミラー34を省略している。
【0037】
まず、照明光学系に注目して、光学系3の構成を説明する。
【0038】
シリンドリカルレンズCL1は、曲面が回折格子2に向くように設けられ、照明光Ldの光路をX−Z平面内で屈折させる。照明光Ldは、シリンドリカルレンズCL1によってY軸に沿う方向を長手方向とする帯状の領域を照明するように成形される。
【0039】
遮光板31は、照明光Ldに含まれる0次回折光及び±2次以上の高次回折光を遮光する。遮光板31は、+1次回折光と−1次回折光とを通過させるY軸方向を長手方向とするスリットを有し、+1次回折光と−1次回折光
とを含むライン照明光LLを出射する。
【0040】
シリンドリカルレンズCL2は、曲面がシリンドリカルレンズCL3に向くように設けられ、ライン照明光LLの光路をX−Z平面内で屈折させる。
【0041】
シリンドリカルレンズCL3は、シリンドリカルレンズCL2を通過したライン照明光LLの光路をY−Z平面内で屈折させる。
【0042】
レンズL1は、シリンドリカルレンズCL3により収束され、その後拡散したライン照明光LLが入射する。ライン照明光LLは、レンズL1によりY−Z平面上で平行光となる。
【0043】
レンズL1を通過したライン照明光LLは、エッジフィルタ32により反射され、レンズL2に入射する。レンズL2を通過したライン照明光LLは、ミラー34で反射されて、レンズL3に入射する。レンズL3を通過したライン照明光LLはY−Z平面上で平行光となり、対物レンズOLに入射する。
【0044】
対物レンズOLは、ライン照明光LLを観察対象物10上にライン状に集光させる。
図5は、観察対象物10上でのライン照明光LLの照射位置を模式的に示す要部拡大図である。
図5に示すように、ライン照明光LLは、観察対象物10で鉛直方向(X軸方向)を長手方向とする領域に照射される。
【0045】
観察対象物10に結像されたライン照明光LLは、+1次干渉光と−1次干渉光とが干渉することで、X軸方向で明暗が反復する干渉縞が現れる。
図6は、観察対象物10上でのライン照明光LLの強度分布を模式的に示す図である。
図6に示すように、ライン照明光は、鋭いピークがX軸方向に反復して連続する干渉縞が現れる。すなわち、ライン照明光LLは、干渉縞による光強度分布を有する構造化照明光として、観察対象物10に照射される。
【0046】
回折限界に近い細かさの構造をもつ照明パターンで試料を照明することにより、結像される情報の空間周波数をシフトさせ、回折限界を超えた空間周波数を持つ像を受光面上に結像することができる。
【0047】
図7は、
図4の対物レンズOL及び観察対象物10を含む領域Aの拡大図である。
図8は、対物レンズOLの手前での回折光の集光位置(
図7のB−B線)における回折光を光源側から観察した例を示す図である。本実施の形態では、回折光の集光位置(B−B線)における回折光(
図8の符号DL1_1及びDL_−1)による2本のラインの長さLy、間隔d及び収束角度θを適当な値にする必要が有る。2本のラインの長さLyは、構造化照明光の開口数(NA)を決定する。2本のラインの間隔dは、ライン照明光LLに現れる干渉縞のピッチを決定する。2本のラインへの収束角度θは、ライン照明光の長さを決定する。
【0048】
対物レンズOLの瞳にできる回折光による2本のラインの長さ、間隔及び収束角度は、回折格子2により決定することができる。しかし、一般に入手可能な回折格子の刻線数は300、600又は1200など、離散的な値である。そのため、上記光学系に最適な回折格子を得るためには、使用する対物レンズにあわせて専用の回折格子を設計する必要が有る。その結果、回折格子の入手に大きなコストが必要となってしまう。
【0049】
これに対し、本実施の形態では、回折格子2の後にそれぞれ焦点距離の異なる2枚のシリンドリカルレンズCL1及びCL2を挿入し、シリンドリカルレンズCL2とシリンドリカルレンズCLと3を、光軸(Z軸)を回転軸として相対的に90°回転させて配置している。これにより、シリンドリカルレンズCL1及びCL2は、ビーム断面変換器として、通過する光のビーム断面を拡大、縮小したり、ビーム断面形状を楕円に変換することができる。その結果、回折格子2の刻線数が所定の値に固定されていても、シリンドリカルレンズCL2及びCL3により、対物レンズOLの瞳にできる回折光による2本のラインの長さ、間隔及び収束角度を最適化することができる。なお、上記では、回折格子2の後にビーム断面変換器を配置したが、ビーム断面変換器は、光源1と回折格子2との間に配置されてもよい。なお、ビーム断面変換器は、上記のシリンドリカルレンズのペア以外にも、アナモルフィックプリズムのペアで構成することもできる。
【0050】
次いで、結像光学系に注目して、光学系3の構成を説明する。
【0051】
観察対象物10で生じたラマン散乱光Lrは、対物レンズOLに入射する。ラマン散乱光Lrは、ライン照明光LLとは逆の経路、すなわち対物レンズOL、レンズL3、ミラー34、レンズL2、ガルバノミラー33を経て、エッジフィルタ32に達する。
【0052】
エッジフィルタ32は、ラマン散乱光Lrを透過するように設計されている。エッジフィルタ32を通過したラマン散乱光Lrは、レンズL4で収束され、分光器4に入射する。
【0053】
分光器4は、ラマン散乱光Lrを分光分析する。分光器4は、スリット40、凹面ミラー41及び42、分散素子43、検出部44を有する。分光器4のスリット40に入射したラマン散乱光Lrは、凹面ミラー41で平行光に変換され、分散素子43に入射する。
【0054】
分散素子43は、例えば回折格子やプリズムなどを用いることが可能である。分散素子43は、ラマン散乱光Lrを分光し、分光した光を凹面ミラー42へ出射する。凹面ミラー42は、分光された光が検出部44で結像するように収束させる。
【0055】
検出部44は、例えば、分光されたラマン散乱光Lrを検出する撮像素子(Charge Coupled Device Image sensor:CCDイメージセンサ、Complementary Metal Oxide Semiconductor Image Sensor:CMOSイメージセンサ、など)を有する。この撮像素子上には、分光された波長の異なるラマン散乱光が空間的に隔離して結像する。よって、撮像素子で撮像を行うことで、ラマン散乱光Lrの分光スペクトルを得ることができる。この際、撮像した画像のX軸方向がライン照明の長手方向に対応するので、観察対象物10の鉛直方向(X軸方向)の空間情報(光強度分布)が得られる。これに対し、Y軸方向にはラマン散乱光の分光スペクトルが分布することとなる。分光器4は、分光結果(分光スペクトル、各スペクトルの光強度分布)を、信号DETとして制御部5に出力することができる。
【0056】
制御部5は、ラマン分光顕微鏡100の動作を制御する。具体的には、光学系3のガルバノミラー33の動きを制御信号CONにより制御することで、ライン照明光LLにより観察対象物10をY軸方向(
図5に示す矢印)に走査することができる。
【0057】
次いで、ラマン分光顕微鏡100の動作について説明する。
【0058】
ラマン分光顕微鏡100は、観察対象物10に対してライン照明光LLを照射する。上述の通り、分光器4での分光結果から、ライン照明光LLが照射される位置の観察対象物10からのラマン散乱光LrのX軸方向の光強度分布を得ることができる。
【0059】
また、ラマン分光顕微鏡100は、
図5の矢印に示すように、観察対象物10をY軸に方向にライン照明光LLで走査する。これにより、観察対象物10のY軸方向の光強度分布を取得することが可能である。
【0060】
以上、構造化照明を導入したライン照明と走査を組み合わせることで、観察対象物のX−Y平面におけるラマン散乱光の2次元光強度分布を取得することができる。これにより、ラマン分光顕微鏡100は、観察対象物の2次元像を取得することができる。
【0061】
ラマン分光顕微鏡100では、観察対象物10の2次元像において、Y軸方向の分解能とX軸方向の分解能とが一致することが望ましい。ラマン分光顕微鏡100では、X軸方向とY軸方向の分解能のトレードオフ関係が、回折格子2による入射光の回折角度によって決定する。制御部5がガルバノミラー33の回転速度又は回転ピッチなどを制御することで、ライン照明光のY軸方向の走査速度又は走査ピッチを制御できる。すなわち、回折格子2の刻線数を適切に選び、制御部5は、観察対象物10の2次元像において、Y軸方向の分解能とX軸方向の分解能とが一致するように、走査速度又はピッチを制御することでX軸・Y軸の分解能を一致させることが可能である。
【0062】
また、ラマン分光顕微鏡100では、回折格子2をピエゾアクチュエータなどによってX軸に沿って移動可能とし、制御部5によって、その位置を駆動することで、ライン照明光LLの干渉縞の位相を多段階(例えば3段階)に変化させることができる。これによれば、位相変化により、干渉縞の間隔よりも小さな範囲で干渉縞を変化させることができる。そして、変化させた干渉縞の位相のそれぞれについて得られる複数の分光スペクトルの光強度の空間分布を波長毎にフーリエ変換処理し、それらを周波数空間で合成した後に逆フーリエ変換を行うことで、照射位置における分光スペクトルの光強度の空間分布を生成できる。これにより、通常のスリット共焦点型ラマン分光顕微鏡に比べ、観察対象物のX軸方向の空間分解能を向上させることが可能となる。
【0063】
実施例1
図9は、実施の形態1にかかるラマン分光顕微鏡100(実施例1)及び比較例である一般的なラマン分光顕微鏡(比較例1)での試料の観察像を示す図である。
図9は、直径500nmのポリスチレン微小球のラマン画像(1003cm
−1)を示している。比較例では、構造化照明を用いないスリット共焦点ラマン顕微鏡を使用した。
図9からわかるように、ラマン分光顕微鏡100では、通常のスリット共焦点ラマン顕微鏡と比べて、ポリスチレン微小球の像がより高解像度で得られることが確認できる。
【0064】
実施例2
図10は、実施の形態1にかかるラマン分光顕微鏡100(実施例2)及び比較例である一般的なラマン分光顕微鏡(比較例2)での試料の観察像を示す図である。
図10は、ガラス基板上の直径500〜800nmのポリスチレン及びポリメチルメタクリレート(PMMA)微小球混合体の波数3055cm
−1及び2957cm
−1におけるラマン画像を示している。比較例2では、構造化照明を用いないスリット共焦点ラマン顕微鏡を使用した。
図10の陰影の明るい微小球はポリスチレン微小球であり、陰影の暗い微小球はPMMA微小球である。
図10からわかるように、ラマン分光顕微鏡100では、通常のスリット共焦点ラマン顕微鏡と比べて、微小球の像がより高解像度で得られることが確認できる。
【0065】
図11は、
図10の破線で囲んだ領域の拡大図である。
図12は、
図11の線LA12−LA12(比較例2)及び線LB12−LB12(実施例2)における波数3055cm
−1のラマン光強度を示す図である。
図12では、実施例2を実線で示し、比較例2を破線で示している。2つの微小球に着目すると、
図12に示すように、比較例2では2つの微小球に対応するピークはオーバーラップしている。これに対し、実施例2においては、2つの微小球の間の間隙が明瞭に表れていることが確認できる。つまり、実施の形態1にかかるラマン分光顕微鏡100によれば、一般的なラマン分光顕微鏡と比べて微細構造の観察における空間分解能を向上できることが理解できる。
【0066】
実施例3
図13は、実施の形態1にかかるラマン分光顕微鏡100(実施例3)及び比較例である一般的なラマン分光顕微鏡(比較例3)での試料の観察像を示す図である。
図13は、単層グラフェン、2層グラフェン、グラファイト及びこれらに生じた欠陥を示している。比較例3では、構造化照明を用いないスリット共焦点ラマン顕微鏡を使用した。
図13からわかるように、ラマン分光顕微鏡100では、通常のスリット共焦点ラマン顕微鏡と比べて、試料の微細構造がより高解像度で得られることが確認できる。なお、
図13では、iはグラファイト、iiは欠陥、iiiは単層グラフェンの積層、ivは2層グラフェン、vは単層グラフェンを示す。
【0067】
図14は、
図13の線LA14−LA14(比較例3)及び線LB14−LB14(実施例3)における波数1307−1387 cm
−1(Dバンド)の平均ラマン光強度を示す図である。
図14では、実施例3を実線で示し、比較例3を破線で示している。
図14に示すように、実施の形態1にかかるラマン分光顕微鏡100は、一般的なラマン分光顕微鏡と比べて、より空間周波数が高い、すなわち、より高い空間分解能を有することが理解できる。
【0068】
実施例4
図15は、実施の形態1にかかるラマン分光顕微鏡100(実施例4)及び比較例である一般的なラマン分光顕微鏡(比較例4)での試料の観察像を示す図である。
図15は、実験用マウスの脳組織をスライスして作製した標本のラマン画像を示している。比較例4では、構造化照明を用いないスリット共焦点ラマン顕微鏡を使用した。これらの例では、タンパクのβシート及び脂質を観察するため、波数1682cm
−1(アミドIバンド(C=O伸縮)に対応、赤色)及び波数2828cm
−1(CH
2基の伸縮に対応、緑色)での観察像を示している。
図15からわかるように、ラマン分光顕微鏡100では、通常のスリット共焦点ラマン顕微鏡と比べて、標本の構造の像がより高解像度で得られることが確認できる。
【0069】
図16は、
図15の点i及びiiにおけるラマン光スペクトルを示す図である。
図16に示すように、CH基(炭化水素基)の伸縮に対応するピーク(2848cm
−1、2884cm
−1及び2930cm
−1)が現れていることがわかる。
【0070】
図17は、CH基(炭化水素基)の伸縮に対応するピーク(2848cm
−1、2884cm
−1及び2930cm
−1)における比較例4(
図15の線LA17−LA17)及び実施例4(
図15の線LB17−LB17)のラマン光強度分布を示す図である。
図17では、実施例4を実線で示し、比較例4を破線で示している。
図17に示すように、実施例4では、比較例4に比べ、標本の微細構造がより詳細に観察できることがわかる。つまり、実施の形態1にかかるラマン分光顕微鏡100は、実施例1〜3での無機物の試料のみならず、生体標本においても優れた解像度による観察を行うことが可能である。
【0071】
以上の実施例により、実施の形態1にかかるラマン分光顕微鏡100によれば、一般的なラマン分光顕微鏡と比べて微細構造の観察における空間分解能を試料形態によらず向上できることが理解できる。
【0072】
実施の形態2
実施の形態2にかかるラマン分光顕微鏡200について説明する。ラマン分光顕微鏡200は、ラマン分光顕微鏡100と比べて、制御部5が、分光器の収差に起因する光強度分布の歪みを補正する動作を行う点で相違する。なお、ラマン分光顕微鏡200の構成は、ラマン分光顕微鏡100と同様であるので説明を省略する。
【0073】
一般に、分光器4には収差が存在する。そのため、スリット40に入射したラマン散乱光Lrが分光されて検出部44に到達するまでに、収差により光強度分布に歪みが生じる。
図18は、測定された干渉縞の空間周波数のズレを示すグラフである。
図18の横軸は、ライン照明光の長手方向(X軸に沿う方向)の空間周波数を示す。
図18の縦軸は、分光されたラマン散乱光の光強度分布を示す。また、光強度分布を示す線が複数有るが、これはX軸方向における観察位置の相違を示す。
【0074】
図19は、
図18に示す干渉縞の空間周波数のズレとそのX軸上の位置との関係を示した図である。
図19では、規格化空間周波数0.5付近に存在する光強度の強い部分(明るいパターン部分)が、X軸方向の観察位置を示す値が大きくなるにしたがってマイナス側にシフトしていく様子が確認できる。なお、
図19の横軸は、規格化された空間周波数を示している。
【0075】
ラマン分光顕微鏡100では、ライン照明光に構造化照明を用いているので、
図18に示すように、ライン照明光のX軸方向の光強度の変動、すなわち空間周波数が光強度分布に現れていることが確認できる。ここで光強度分布に現れる空間周波数は回折格子2で生じた回折光の干渉で決まるので、原理的にはX軸上での位置によらず一定であると考え得る。しかし、分光器に収差が有る場合には光強度分布が歪み、光強度分布に現れる空間周波数にばらつきが生じる。その結果、
図19に示す2次元光強度分布が歪んでしまい、観察対象物の正確な像を取得することができない。
【0076】
これに対し、ラマン分光顕微鏡200では、分光器4及び光源1から分光器4に至るまでの光路で生じた収差(特に、湾曲収差)に起因する光強度分布の歪みを補正することで、観察対象物の正確な像を取得する機能を有する。ラマン分光顕微鏡では分光器は必須であるが、分光器による収差は、光源から分光器に至るまでの光路で生じる収差と比べて大きい。そのため、分光器による収差を補正できなければ観察対象物の正確な像を取得できないこととなり、以下で説明する光強度分布の歪みの補正は、ラマン分光顕微鏡にとっては特に有意義であると言える。以下、ラマン分光顕微鏡200の補正動作について説明する。なお、以下で説明する補正動作は、制御部5が行う。
図20は、実施の形態2にかかるラマン分光顕微鏡200光強度分布の歪みを補正する動作を示すフローチャートである。
【0077】
ステップS1
まず、光強度分布の歪み補正を行うため、一様に発光する基準サンプルの光強度分布を測定する。一様に発光する十分に薄い基準サンプルとしては、例えば蛍光膜を用いることができ、S/N比の高い光強度分布を得ることができる。
【0078】
ステップS2
測定した歪みを含む基準サンプルの光強度分布(以下、基準サンプル光強度分布と称する)を横軸方向で複数の区間に分割する。なお、各区間は、隣接する区間の50%とオーバーラップするように分割される。ここでは、基準サンプル光強度分布を8分割する例について説明する。
【0079】
ステップS3
基準サンプル光強度分布のそれぞれの区間についてフーリエ変換を行う。これにより、各区間の光強度分布に現れる空間周波数を取得する。
【0080】
ステップS4
各区間の光強度分布に現れる空間周波数をプロットし、プロットした各点での値を内挿する。
図21は、分割した各区間の光強度分布に現れる空間周波数をプロットした図である。
図21では、プロットした点に対する多項式近似曲線を表示している。
【0081】
ステップS5
プロット結果から、空間周波数の規格化の基準値を決定する。この例では、プロットした点が近傍に多く存在する0.25を基準値とする。
【0082】
ステップS6
先に決定した基準値に基づいて、光強度分布のピクセルサイズを補正する。
図22は、
図21のプロット結果に基づいたピクセルサイズの補正を示すグラフである。
図22において、破線は補正前のピクセルサイズを示し、実線は補正後のピクセルサイズを示す。
【0083】
ステップS7
次いで、測定対象となる試料の測定を行い、試料の光強度分布(補正前光強度分布と称する)を測定する。この時点では、試料の光強度分布は、ピクセル補正はされておらず、歪みを含んでいる。
【0084】
ステップS8
ステップS7で取得した補正前光強度分布に、ステップS6で決定した補正後のピクセルサイズを適用する。これにより、
図18に示した光強度分布(補正前光強度分布)におけるピクセルサイズ、すなわち光強度分布のX軸方向の空間ピッチを補正する。
図23は、実施の形態2にかかるラマン分光顕微鏡200において歪みを補正した後の光強度分布を示す図である。これにより、分光されたラマン散乱光の光強度分布に現れる空間周波数が一定となり、光強度分布に含まれる歪みが除去される。
【0085】
ここで、ピクセルサイズ(空間ピッチ)を補正した後の試料の光強度分布を補正後光強度分布と称する。
図24は、
図23に示す補正後光強度分布から得られる光強度の2次元分布を示す図である。
図19では、規格化空間周波数0.5付近に現れる光強度の強い部分が、Y軸方向の位置を示す値が大きくなるにしたがってマイナス側にシフトする。これに対し、
図24では、規格化空間周波数0.5付近に現れる光強度の強い部分のマイナス側へのシフトが、
図19と比べて小さいことが確認できる。すなわち、補正前の光強度分布に基づいて取得した観察対象物の2次元像のシフト補正し、正確な2次元像が得られたことが理解できる。なお、
図24の横軸は、規格化された空間周波数を示している。
【0086】
なお、収差のない分光器を用いることで、分光したラマン散乱光の光強度分布に含まれる歪みを除去ないしは軽減することも可能である。しかし、収差のない分光器を実現するには、高コストであるばかりでなく、作製技術が高度であり作製に要する時間も長くなる。これに対し、本実施の形態にかかる光強度分布の歪み補正は、制御部5により演算のみで実現することができる。よって、特別な分光器を用いることなく2次元像の歪みを補正できるので、ラマン分光顕微鏡への実装が容易であり、かつコスト抑制の観点からも有利である。
【0087】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、上述の光学系3及び分光器4の構成は例示に過ぎない。すなわち、光学系3及び分光器4と同様の機能を発揮し得る限り、光学系及び分光器の構成は、適宜変更することが可能である。
【0088】
実施の形態2では、光強度分布を8分割する例について説明したが、分割数は2以上の任意の数とすることができる。また、各区間が隣接する区間とオーバーラップする必要はないし、オーバーラップする割合も50%以外でもよい。また、空間周波数を求める区間を連続的に移動させて、X軸に沿った空間周波数の変化を連続的に求めてもよい。このとき、ハニング窓などの適当な窓関数を用いることができる。
【0089】
上述の実施の形態では、観察平面(X−Y平面)における空間分解能の向上について述べたが、0次回折光、+1次回折光及び−1次回折光を用いて、試料の深さ方向(観察平面であるX−Y平面に対して垂直な方向であるZ軸方向)の空間分解能を高めることも可能である。具体的には、+1次回折光及び−1次回折光に対して0次回折光の位相および強度を適切に調整し、干渉させることによって、試料の深さ方向にも干渉縞を形成することができる。これにより、観察平面の場合と同様の原理で、異なるZ座標で観察した複数の像を合成することにより、試料の深さ方向の空間分解能を向上させることができる。
【0090】
なお、上述の回折格子2は、着脱可能としてもよい。これにより、回折格子2を用いる場合には上述で説明した構造化照明を利用でき、構造化照明スリット共焦点顕微鏡を実現できる。また、回折格子2を用いない場合には、通常のスリット共焦点顕微鏡を実現できる。
【0091】
上述の実施の形態では、1個のガルバノミラー33を用いた構成により、Y軸方向にのみライン照明光LLが走査可能としているが、走査方向が直交する2個のガルバノミラーをガルバノミラー33の位置に近接させて設置し、X方向にもライン照明光LLを走査可能とすることもできる。これにより、試料のより広い領域を測定することができる。
【0092】
上述では、光学系3のガルバノミラー33によってライン照明光LLを走査可能としたが、例えば、ライン照明光LLの位置を不変とし、試料が載置されるステージを駆動させることで、実質的にライン照明光LLに試料を走査させることができる。なお、光学系3及びステージの両方を駆動制御してライン照明光LLの走査を行うことができることはいうまでもない。
【0093】
上述の実施の形態ではラマン分光顕微鏡について説明したが、このラマン分光顕微鏡は、ラマン分光顕微鏡としての機能を付与するためのアタッチメントを通常の光学顕微鏡に装着することによっても実現することができる。具体的には、
図2の光学系3のうち、ミラー34、レンズL3及び対物レンズOLは通常の光学顕微鏡においても設けられているので、これらの光学部品以外の光学系3の構成部品(シリンドリカルレンズCL1〜CL3、レンズL1、L2及びL4、遮光板31、エッジフィルタ32、及び、ガルバノミラー33)、光源1、回折格子2、分光器4及び制御部5をラマン分光顕微鏡用アタッチメントとして通常の正立/倒立光学顕微鏡に取り付けてもよい。
【0094】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。
【0095】
この出願は、2014年8月18日に出願された日本出願特願2014−165760を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。