特許第6673554号(P6673554)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6673554
(24)【登録日】2020年3月9日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】増圧装置及びそれを備えたシリンダ装置
(51)【国際特許分類】
   F15B 3/00 20060101AFI20200316BHJP
   F15B 11/028 20060101ALI20200316BHJP
   F15B 15/14 20060101ALI20200316BHJP
【FI】
   F15B3/00 E
   F15B11/028 F
   F15B15/14 380C
【請求項の数】8
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-89359(P2017-89359)
(22)【出願日】2017年4月28日
(65)【公開番号】特開2018-189100(P2018-189100A)
(43)【公開日】2018年11月29日
【審査請求日】2019年1月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102511
【氏名又は名称】SMC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100149261
【弁理士】
【氏名又は名称】大内 秀治
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(74)【代理人】
【識別番号】100169225
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 明
(72)【発明者】
【氏名】朝原 浩之
(72)【発明者】
【氏名】染谷 和孝
【審査官】 加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−223841(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0072454(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 3/00
F15B 11/00−11/22
F15B 15/00−15/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
隔壁で仕切られた2つのシリンダ室を有するシリンダ本体と、
一方の前記シリンダ室内に摺動自在に配設されて一方の前記シリンダ室内を増圧室と第1室とに区画する第1ピストンと、
他方の前記シリンダ室内に摺動自在に配設されて他方の前記シリンダ室内を第2室と第3室とに区画する第2ピストンと、
前記隔壁を貫通するように設けられて前記第1ピストン及び前記第2ピストンを互いに連結するロッドと、
前記第1ピストンが前記増圧室に向かう方向に前記第1ピストン及び前記第2ピストンの少なくとも一方を付勢する付勢部材と、を備え、
前記シリンダ本体には、
前記増圧室に流体を導入するための第1導入ポートと、
前記第1室内を大気に開放する第1大気ポートと、
前記第2室内に流体を導入するための第2導入ポートと、
前記第3室内を大気に開放する第2大気ポートと、
前記増圧室内で加圧された流体を導出させるための導出ポートと、が形成され、
前記第2ピストンには、前記第2室と前記第3室とを互いに連通させるための連通孔を有し、且つ前記連通孔を介して前記第2室及び前記第3室が互いに連通する連通位置と前記第2室及び前記第3室の連通が遮断される遮断位置とに変位可能な連通用部材が設けられ、
前記連通用部材は、前記増圧室が縮小する方向に前記第1ピストン及び前記第2ピストンが変位した際に前記連通用部材が前記シリンダ本体に接触することにより前記連通位置から前記遮断位置に変位し、前記増圧室が拡大する方向に前記第1ピストン及び前記第2ピストンが変位した際に前記連通用部材が前記シリンダ本体に接触することにより前記遮断位置から前記連通位置に変位可能に構成されている、
ことを特徴とする増圧装置。
【請求項2】
請求項1記載の増圧装置において、
前記第2ピストンには、当該第2ピストンの軸線方向に貫通した貫通孔が形成され、
前記連通用部材は、前記貫通孔内を軸線方向に移動することによって前記連通位置と前記遮断位置とに変位する、
ことを特徴とする増圧装置。
【請求項3】
請求項2記載の増圧装置において、
前記連通用部材は、
前記第2ピストンの軸線方向に沿って延在した本体部と、
前記本体部の一端部の外周面に設けられたシール部材と、を有し、
前記連通孔は、
前記本体部の中間部の外周面に開口した第1孔と、
前記本体部の他端部に開口した第2孔と、を含み、
前記シール部材は、前記連通用部材が前記遮断位置に位置した状態で前記貫通孔を構成する壁面に気密に接触し、前記連通用部材が前記連通位置に位置した状態で前記貫通孔を構成する壁面から離間する、
ことを特徴とする増圧装置。
【請求項4】
請求項3記載の増圧装置において、
前記本体部は、前記連通用部材が前記連通位置に位置した状態で前記本体部の一端面が前記シリンダ本体に接触可能なように前記第2ピストンよりも一方の側に位置し、前記連通用部材が前記遮断位置に位置した状態で前記本体部の他端面が前記シリンダ本体に接触可能なように前記第2ピストンよりも他方の側に位置するように構成されている、
ことを特徴とする増圧装置。
【請求項5】
請求項4記載の増圧装置において、
前記本体部は、前記連通用部材が前記連通位置に位置した状態で前記本体部の他端面が前記第2ピストンよりも他方の側に位置し、
前記第2孔は、前記本体部の他端部の側面に開口している、
ことを特徴とする増圧装置。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれか1項に記載の増圧装置において、
前記連通用部材は、前記貫通孔からの離脱を阻止する離脱阻止部を有する、
ことを特徴とする増圧装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の増圧装置と、
シリンダ部の内部を第1シリンダ室と第2シリンダ室とに区画して前記シリンダ部の内部を往復摺動可能なピストンを有する流体圧シリンダと、
前記第1シリンダ室内に流体を供給するための供給流路と、
前記流体圧シリンダから排出された流体を前記増圧装置の前記第1導入ポートに導く第1導入流路と、
前記流体圧シリンダから排出された流体を前記増圧装置の前記第2導入ポートに導く第2導入流路と、
前記増圧装置の導出ポートから導出された加圧流体を前記供給流路に導く回収流路と、を備える、
ことを特徴とするシリンダ装置。
【請求項8】
請求項7記載のシリンダ装置において、
前記第1導入流路には、前記第1導入流路から前記第1導入ポートに向かう流体の流通を許可するとともに前記第1導入ポートから前記第1導入流路に向かう流体の流通を阻止する第1チェック弁が設けられ、
前記第2導入流路には、前記第2導入流路から前記第2導入ポートに向かう流体の流通を許可するとともに前記第2導入ポートから前記第2導入流路に向かう流体の流通を阻止する第2チェック弁が設けられ、
前記回収流路には、前記導出ポートから前記回収流路に向かう流体の流通を許可するとともに前記回収流路から前記導出ポートに向かう流体の流通を阻止する第3チェック弁が設けられている、
ことを特徴とするシリンダ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体を増圧して出力する増圧装置及びそれを備えたシリンダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1に示す増圧装置が知られている。この増圧装置は、隔壁で区画された2つのシリンダ室を有するシリンダ本体を備えている。一方のシリンダ室内に配設された第1ピストンと他方のシリンダ室内に配設された第2ピストンとは、隔壁を貫通するロッドによって互いに連結されている。
【0003】
一方のシリンダ室には、第1ピストンを挟んで隔壁とは反対側に位置する第1駆動室と、第1ピストンと隔壁との間に位置する第1増圧室とが設けられている。他方のシリンダ室には、第2ピストンと隔壁との間に位置する第2増圧室と、第2ピストンを挟んで隔壁とは反対側に位置する第2駆動室とが設けられている。
【0004】
第1駆動室及び第2駆動室は、流体を導入する導入ポートと大気に開放する大気ポートとに切換弁を介して選択的に連通している。第1増圧室及び第2増圧室は、前記導入ポートに連通するとともに加圧された流体を導出させるための導出ポートに連通している。切換弁は、隔壁に設けられており、第1増圧室及び第2増圧室のそれぞれに突出するようにスプリングで付勢されたプッシュロッドを有している。そして、切換弁は、プッシュロッドが第1ピストン又は第2ピストンに押圧されることによって、流路が切り替わるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平3−42075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した増圧装置では、増圧装置に導入される流体によって第1ピストン及び第2ピストンを往復動させることによって切換弁の流路を切り替えているため、切換弁を電磁切換弁として構成した場合に比べて省エネルギー化を図ることができる。
【0007】
しかしながら、この増圧装置では、スプリングで付勢したプッシュロッドを備えた切換弁が必要であるため、増圧装置の構成が複雑化する。
【0008】
本発明は、このような課題を考慮してなされたものであり、簡易な構成により省エネルギー化を図ることができる増圧装置及びそれを備えたシリンダ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る増圧装置は、隔壁で仕切られた2つのシリンダ室を有するシリンダ本体と、一方の前記シリンダ室内に摺動自在に配設されて一方の前記シリンダ室内を増圧室と第1室とに区画する第1ピストンと、他方の前記シリンダ室内に摺動自在に配設されて他方の前記シリンダ室内を第2室と第3室とに区画する第2ピストンと、前記隔壁を貫通するように設けられて前記第1ピストン及び前記第2ピストンを互いに連結するロッドと、前記第1ピストンが前記増圧室に向かう方向に前記第1ピストン及び前記第2ピストンの少なくとも一方を付勢する付勢部材と、を備え、前記シリンダ本体には、前記増圧室に流体を導入するための第1導入ポートと、前記第1室内を大気に開放する第1大気ポートと、前記第2室内に流体を導入するための第2導入ポートと、前記第3室内を大気に開放する第2大気ポートと、前記増圧室内で加圧された流体を導出させるための導出ポートと、が形成され、前記第2ピストンには、前記第2室と前記第3室とを互いに連通させるための連通孔を有し、且つ前記連通孔を介して前記第2室及び前記第3室が互いに連通する連通位置と前記第2室及び前記第3室の連通が遮断される遮断位置とに変位可能な連通用部材が設けられ、前記連通用部材は、前記増圧室が縮小する方向に前記第1ピストン及び前記第2ピストンが変位した際に前記連通用部材が前記シリンダ本体に接触することにより前記連通位置から前記遮断位置に変位し、前記増圧室が拡大する方向に前記第1ピストン及び前記第2ピストンが変位した際に前記連通用部材が前記シリンダ本体に接触することにより前記遮断位置から前記連通位置に変位可能に構成されていることを特徴とする。
【0010】
このような構成によれば、連通用部材が遮断位置に位置した状態で第1導入ポートから増圧室に流体が供給されるとともに第2導入ポートから第2室内に流体が導入される。そうすると、増圧室及び第2室が拡大する方向に第1ピストン及び第2ピストンが付勢部材の付勢力に抗して変位する。そして、連通用部材が遮断位置から連通位置に変位すると、第2室及び第3室が互いに連通する。そうすると、付勢部材の付勢力によって増圧室及び第2室が縮小する方向に第1ピストン及び第2ピストンが押し戻されるため、増圧室内の流体が加圧されて導出ポートから導出される。このように、増圧装置に供給される流体自体によって当該流体を増圧することができるため、増圧装置の省エネルギー化を図ることができる。また、連通孔を有する連通用部材がシリンダ本体に接触することによって、連通位置と遮断位置とに変位するため、増圧装置の構成を簡素化することができる。
【0011】
上記の増圧装置において、前記第2ピストンには、当該第2ピストンの軸線方向に貫通した貫通孔が形成され、前記連通用部材は、前記貫通孔内を軸線方向に移動することによって前記連通位置と前記遮断位置とに変位してもよい。
【0012】
このような構成によれば、簡易な構成により連通用部材を連通位置と遮断位置とに変位させることができる。
【0013】
上記の増圧装置において、前記連通用部材は、前記第2ピストンの軸線方向に沿って延在した本体部と、前記本体部の一端部の外周面に設けられたシール部材と、を有し、前記連通孔は、前記本体部の中間部の外周面に開口した第1孔と、前記本体部の他端部に開口した第2孔と、を含み、前記シール部材は、前記連通用部材が前記遮断位置に位置した状態で前記貫通孔を構成する壁面に気密に接触し、前記連通用部材が前記連通位置に位置した状態で前記貫通孔を構成する壁面から離間してもよい。
【0014】
このような構成によれば、シール部材によって第2室及び第3室の連通を遮断することができる。
【0015】
上記の増圧装置において、前記本体部は、前記連通用部材が前記連通位置に位置した状態で前記本体部の一端面が前記シリンダ本体に接触可能なように前記第2ピストンよりも一方の側に位置し、前記連通用部材が前記遮断位置に位置した状態で前記本体部の他端面が前記シリンダ本体に接触可能なように前記第2ピストンよりも他方の側に位置するように構成されていてもよい。
【0016】
このような構成によれば、本体部の一端面がシリンダ本体に接触することによって連通用部材を連通位置から遮断位置に変位させ、本体部の他端面がシリンダ本体に接触することによって連通用部材を遮断位置から連通位置に変位させることができる。
【0017】
上記の増圧装置において、前記本体部は、前記連通用部材が前記連通位置に位置した状態で前記本体部の他端面が前記第2ピストンよりも他方の側に位置し、前記第2孔は、前記本体部の他端部の側面に開口していてもよい。
【0018】
このような構成によれば、第2孔が本体部の他端部の側面に開口しているため、本体部の他端面がシリンダ本体に接触して連通用部材が遮断位置から連通位置に変位した状態でシリンダ本体によって連通孔が閉塞されることを防止することができる。
【0019】
上記の増圧装置において、前記連通用部材は、前記貫通孔からの離脱を阻止する離脱阻止部を有していてもよい。
【0020】
このような構成によれば、連通用部材が第2ピストンの貫通孔から離脱することを阻止することができる。
【0021】
本発明に係るシリンダ装置は、上述した増圧装置と、シリンダ部の内部を第1シリンダ室と第2シリンダ室とに区画して前記シリンダ部の内部を往復摺動可能なピストンを有する流体圧シリンダと、前記第1シリンダ室内に流体を供給するための供給流路と、前記流体圧シリンダから排出された流体を前記増圧装置の前記第1導入ポートに導く第1導入流路と、前記流体圧シリンダから排出された流体を前記増圧装置の前記第2導入ポートに導く第2導入流路と、前記増圧装置の導出ポートから導出された加圧流体を前記供給流路に導く回収流路と、を備えることを特徴とする。
【0022】
このような構成によれば、上述した増圧装置と同様の効果を奏するシリンダ装置を得ることができる。また、流体圧シリンダから排出された流体を増圧装置で加圧して流体圧シリンダの駆動に再び用いることができるため、シリンダ装置の省エネルギー化を図ることができる。
【0023】
上記のシリンダ装置において、前記第1導入流路には、前記第1導入流路から前記第1導入ポートに向かう流体の流通を許可するとともに前記第1導入ポートから前記第1導入流路に向かう流体の流通を阻止する第1チェック弁が設けられ、前記第2導入流路には、前記第2導入流路から前記第2導入ポートに向かう流体の流通を許可するとともに前記第2導入ポートから前記第2導入流路に向かう流体の流通を阻止する第2チェック弁が設けられ、前記回収流路には、前記導出ポートから前記回収流路に向かう流体の流通を許可するとともに前記回収流路から前記導出ポートに向かう流体の流通を阻止する第3チェック弁が設けられていてもよい。
【0024】
このような構成によれば、簡易な構成で増圧室内の流体を効率的に加圧することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、増圧装置に供給される流体自体によって当該流体を増圧することができるため、増圧装置の省エネルギー化を図ることができる。また、連通孔を有する連通用部材がシリンダ本体に接触することによって、連通位置と遮断位置とに変位するため、増圧装置の構成を簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施形態に係るシリンダ装置の模式図である。
図2図1の増圧装置の斜視図である。
図3図2の増圧装置の縦断面図である。
図4図3の一部拡大図である。
図5図3の第2ピストン及び連通用部材の分解斜視図である。
図6図3の増圧装置において第1ピストン及び第2ピストンが変位した状態を示す縦断面図である。
図7図1の切換弁を切り替えた状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る増圧装置10についてシリンダ装置12との関係で好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0028】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係るシリンダ装置12は、流体圧シリンダ14と、流体圧シリンダ14を駆動させるためのシリンダ駆動装置16とを備える。
【0029】
流体圧シリンダ14は、シリンダ部18の内部を第1シリンダ室20と第2シリンダ室22とに区画して流体圧の作用によってシリンダ部18の内部を往復摺動可能なピストン24を有する。一端部がピストン24に連結されたピストンロッド26の他端部は、シリンダ部18から外部に延びる。流体圧シリンダ14は、ピストンロッド26の押し出し時(伸長時)に図示しないワークの位置決め等の仕事を行い、ピストンロッド26の引き込み時には仕事をしない。第1シリンダ室20はピストンロッド26と反対側に位置する駆動用圧力室であり、第2シリンダ室22はピストンロッド26側に位置する復帰側圧力室である。
【0030】
シリンダ駆動装置16は、駆動用回路28と増圧用回路30とを備える。駆動用回路28は、流体圧シリンダ14に駆動用の流体を供給するとともに流体圧シリンダ14から排出された流体が導かれる。駆動用回路28は、供給源32、切換弁34、供給流路36、第1接続流路38、第2接続流路40、第3接続流路42及び排出流路44を有する。
【0031】
供給源32は、高圧の流体を供給するものであって、例えば、コンプレッサとして構成されている。切換弁34は、第1〜第5ポート46a〜46eを有し、第1位置と第2位置との間で切り替え可能な電磁弁として構成されている。第1ポート46aは、供給流路36を介して供給源32に連通している。第2ポート46bは、第1接続流路38を介して第1シリンダ室20に連通している。第3ポート46cは、第2接続流路40を介して第2シリンダ室22に連通している。第4ポート46dは、第3接続流路42に連通している。第5ポート46eは、排出流路44に連通している。
【0032】
切換弁34が第2位置にある時は、第2ポート46bと第5ポート46eとが互いに連通するとともに第3ポート46cと第4ポート46dとが互いに連通し、第1ポート46aが閉塞される。切換弁34が第1位置にある時は、第1ポート46aと第2ポート46bとが互いに連通するとともに第3ポート46cと第5ポート46eとが互いに連通し、第4ポート46dが閉塞される(図7参照)。切換弁34は、非通電時にばね48の付勢力により第2位置に保持され、通電時に第2位置から第1位置に切り替わる。なお、切換弁34に対する通電は、図示しない上位装置であるPLC(Programmable Logic Controller)から切換弁34への通電指令の出力によって行われる。切換弁34に対する非通電は、PLCから切換弁34への非通電指令の出力によって行われる。
【0033】
供給流路36は、供給源32の流体を第1シリンダ室20に導入するためのものである。第3接続流路42は、第1接続流路38と第2接続流路40とを互いに繋ぐ。第3接続流路42には、チェック弁50が設けられている。チェック弁50は、第1接続流路38から第2接続流路40に向かう流体の流通を許可するとともに第2接続流路40から第1接続流路38に向かう流体の流通を阻止する。
【0034】
排出流路44には、第1絞り弁52、第2絞り弁54、サイレンサ56及び排気口58が設けられている。第1絞り弁52は、流路断面積を変更可能な可変絞り弁として構成されており、切換弁34が第2位置にある時に、第1接続流路38から第3接続流路42に向かう流体の流量を調整するために設けられている。
【0035】
第2絞り弁54は、排出流路44における第1絞り弁52よりも下流(切換弁34が位置する側と反対側)に位置している。第2絞り弁54は、流路断面積を変更可能な可変絞り弁として構成されている。サイレンサ56は、排出流路44における第2絞り弁54よりも下流に位置している。サイレンサ56は、排気口58から大気に排出される流体の排気音を低減する。
【0036】
増圧用回路30は、流体圧シリンダ14から駆動用回路28の排出流路44に排出された流体を加圧して駆動用回路28の供給流路36に戻すものである。増圧用回路30は、接続流路60、タンク62、第1導入流路64、第2導入流路66、回収流路68、増圧装置10を有する。
【0037】
接続流路60は、排出流路44における第1絞り弁52及び第2絞り弁54の間とタンク62とを互いに繋ぐ。接続流路60には、チェック弁72が設けられている。チェック弁72は、排出流路44からタンク62に向かう流体の流通を許可するとともにタンク62から排出流路44に向かう流体の流通を阻止する。タンク62は、排出流路44から増圧装置10に導かれる流体を蓄積するためのものであって、例えば、エアタンクとして構成されている。
【0038】
第1導入流路64は、流体圧シリンダ14から排出された流体を増圧装置10の第1導入ポート112に導くものである。第1導入流路64は、タンク62と増圧装置10の第1導入ポート112とを互いに繋ぐ。第1導入流路64には、第1チェック弁74が設けられている。第1チェック弁74は、第1導入流路64(タンク62)から第1導入ポート112に向かう流体の流通を許可するとともに第1導入ポート112から第1導入流路64(タンク62)に向かう流体の流通を阻止する。
【0039】
第2導入流路66は、流体圧シリンダ14から排出された流体を増圧装置10の第2導入ポート126に導くものである。第2導入流路66は、第1導入流路64のうち第1チェック弁74よりも上流側(タンク62側)と増圧装置10の第2導入ポート126とを互いに繋ぐ。第2導入流路66には、第2チェック弁76が設けられている。第2チェック弁76は、第2導入流路66(タンク62)から第2導入ポート126に向かう流体の流通を許可するとともに第2導入ポート126から第2導入流路66(タンク62)に向かう流体の流通を阻止する。
【0040】
回収流路68は、増圧装置10の導出ポート116から導出された加圧流体を供給流路36に導くものである。回収流路68は、増圧装置10の導出ポート116と供給流路36とを互いに繋ぐ。回収流路68には、第3チェック弁78が設けられている。第3チェック弁78は、導出ポート116から回収流路68(供給流路36)に向かう流体の流通を許可するとともに回収流路68(供給流路36)から導出ポート116に向かう流体の流通を阻止する。
【0041】
図3に示すように、増圧装置10は、隔壁80で仕切られた2つのシリンダ室82、84を有するシリンダ本体86(図2参照)と、一方のシリンダ室82内に摺動自在に配設されて一方のシリンダ室82内を増圧室88aと第1室88bとに区画する第1ピストン90と、他方のシリンダ室84内に摺動自在に配設されて他方のシリンダ室84内を第2室92aと第3室92bとに区画する第2ピストン94と、隔壁80を貫通するように設けられて第1ピストン90及び第2ピストン94を互いに連結するロッド96と、第1ピストン90が増圧室88aに向かう方向に第2ピストン94を付勢する付勢部材98と、を備えている。
【0042】
シリンダ本体86は、第1シリンダチューブ100、第1エンドカバー102、隔壁80、第2シリンダチューブ104、第2エンドカバー106を有する。第1シリンダチューブ100には、全長に亘ってシリンダ室82が形成されている。シリンダ室82の一端側の開口部には第1エンドカバー102が嵌入され、シリンダ室82の他端側の開口部には隔壁80が嵌入されている。第1エンドカバー102、第1シリンダチューブ100及び隔壁80は、ボルト等の締結部材108によって互いに連結されている。第1エンドカバー102には、第1シリンダチューブ100の一端側の開口部を構成する壁面に気密に接触する環状のシール部材110が装着されている。
【0043】
増圧室88aは、第1エンドカバー102と第1ピストン90との間に形成されている。第1室88bは、第1ピストン90と隔壁80との間に形成されている。第1シリンダチューブ100の一端部には、増圧室88aに流体を導入するための第1導入ポート112が形成されている。第1導入ポート112は、第1導入流路64に連通している。第1シリンダチューブ100の他端部には、第1室88b内を大気に開放するための第1大気ポート114が形成されている。
【0044】
第1エンドカバー102の略中央には、増圧室88a内で加圧された流体を導出させるための導出ポート116が形成されている。導出ポート116は、回収流路68に連通している。導出ポート116は、第1エンドカバー102を厚さ方向に貫通するように形成されている。隔壁80には、第1シリンダチューブ100の他端側の開口部を構成する壁面に気密に接触する環状のシール部材118が装着されている。隔壁80には、ロッド96が挿通するロッド挿通孔120が形成されている。ロッド挿通孔120を構成する壁面には、ロッド96に対して気密に接触するロッドパッキン122が装着されている。
【0045】
第2シリンダチューブ104には、全長に亘って延在したシリンダ室84が形成されている。シリンダ室84の一端側の開口部には隔壁80が嵌入され、シリンダ室84の他端側の開口部には第2エンドカバー106が嵌入されている。第2シリンダチューブ104と隔壁80とは、ボルト等の図示しない締結部材によって互いに連結されている。隔壁80には、第2シリンダチューブ104の一端側の開口部を構成する壁面に気密に接触する環状のシール部材124が装着されている。
【0046】
第2室92aは、隔壁80と第2ピストン94との間に形成されている。第3室92bは、第2ピストン94と第2エンドカバー106との間に形成されている。隔壁80には、第2室92a内に流体を導入するための第2導入ポート126が形成されている。第2導入ポート126は、第2導入流路66に連通している。第2導入ポート126は、隔壁80のうちシリンダ本体86の外表面を構成する壁面と隔壁80のうち第2室92aを構成する壁面とに開口している。第2シリンダチューブ104には、第3室92bに連通する第2大気ポート128が形成されている。第2大気ポート128には、サイレンサ130を介して排気口132が設けられている(図1参照)。第2エンドカバー106には、第2シリンダチューブ104の他端側の開口部を構成する壁面に気密に接触する環状のシール部材134が装着されている。
【0047】
第1ピストン90の外周面には、第1シリンダチューブ100の内周面に気密に接触する環状のピストンパッキン136が装着される装着溝138が形成されている。第1ピストン90の中央部には、ロッド96の一端部が装着される装着孔140が形成されている。
【0048】
第2ピストン94の外周面には、第2シリンダチューブ104の内周面に気密に接触する環状のピストンパッキン142が装着される装着溝144が形成されている。第2ピストン94の中央部には、第2ピストン94とロッド96の他端部とを連結するボルト146が設けられるボルト装着孔148が形成されている。
【0049】
付勢部材98は、第2ピストン94を隔壁80が位置する側に付勢する圧縮ばねである。付勢部材98は、第3室92b内に配設されている。付勢部材98は、第2エンドカバー106から第2ピストン94が位置する側に突出したガイド部150と第2ピストン94との間に介設されている。ガイド部150の一部は、付勢部材98の内孔に挿入されている。第2エンドカバー106は、その全体が第2シリンダチューブ104内に位置している。第2シリンダチューブ104の他端側の開口部を構成する壁面には、第2エンドカバー106の他端側の移動を阻止する止め輪152が設けられている。
【0050】
図3図5に示すように、第2ピストン94には、当該第2ピストン94の軸線方向に貫通した2つの貫通孔154が形成されている。これら貫通孔154は、第2ピストン94の軸線を中心に点対称に設けられている。各貫通孔154は、第2ピストン94の軸線方向の一方の面に開口する大径孔156aと、大径孔156aに連通するとともに第2ピストン94の軸線方向の他方の面に開口する小径孔156bとを含む。すなわち、大径孔156aと小径孔156bとの境界部には、隔壁80が位置する側を指向する段差面158が設けられている。
【0051】
各貫通孔154には、第2ピストン94の軸線方向に移動可能に連通用部材160が設けられている。連通用部材160は、第2室92aと第3室92bとを互いに連通させるための連通孔162を有する本体部164と、本体部164に設けられたシール部材166とを有する。本体部164は、本体部164の一端部である第1大径部164aと、本体部164の他端部である第2大径部164bと、第1大径部164aと第2大径部164bとを互いに連結する小径の中間部164cとを備える。
【0052】
第1大径部164aは、大径孔156aに挿入可能に構成されている。中間部164cは、小径孔156bに挿通されている。第2大径部164bは、第3室92b内に位置している。
【0053】
シール部材166は、第1大径部164aの外周面に装着されている。連通孔162は、本体部164の中間部164cの外周面に開口した第1孔168と、本体部164の第2大径部164bの外面に開口した第2孔170とを含む。第1孔168は、第2ピストン94の軸線方向と直交する方向に中間部164cを貫通している。第2孔170は、第1孔168から中間部164cの他端面まで延在した長孔170aと、第2大径部164bの端面に形成された凹部170bと、長孔170aに連通して凹部170bの底面に開口する中間孔170cとを含む。凹部170bは、第2大径部164bの径方向の全長に亘って延在している。つまり、凹部170bは、第2大径部164bの外周面に開口している。
【0054】
連通用部材160は、連通孔162を介して第2室92a及び第3室92bが互いに連通する連通位置(図6に示す位置)と第2室92a及び第3室92bの連通が遮断される遮断位置(図3に示す位置)とに変位可能に構成されている。つまり、図6に示すように、連通用部材160が連通位置に位置した際、第1大径部164aが大径孔156aから第2室92a内に離脱することにより、第2室92a及び第3室92bが連通孔162と大径孔156aとを介して互いに連通する。このとき、シール部材166は、大径孔156aを構成する壁面から離間している。また、図3に示すように、連通用部材160が遮断位置に位置した際、シール部材166が大径孔156aを構成する壁面に気密に接触することにより、第2室92a及び第3室92bの連通が遮断される。
【0055】
連通用部材160は、増圧室88aが縮小する方向(図3の左側)に第1ピストン90及び第2ピストン94が変位した際に第1大径部164a(連通用部材160)が隔壁80(シリンダ本体86)に接触することにより連通位置から遮断位置に変位する。換言すれば、連通用部材160は、第2ピストン94が一方のストロークエンドに位置した時に連通位置から遮断位置に切り替わる。この際、第1大径部164aが段差面158に接触することにより、連通用部材160の他端側(ガイド部150側)への移動が規制される。なお、第1大径部164aは、段差面158に接触した状態で第2室92a内に突出している。
【0056】
また、本体部164は、連通用部材160が遮断位置に位置した状態で本体部164の他端面がシリンダ本体86に接触可能なように第2ピストン94よりも他方の側に位置するように構成されている。
【0057】
図6に示すように、連通用部材160は、増圧室88aが拡大する方向(図6の右側)に第1ピストン90及び第2ピストン94が変位した際に第2大径部164b(連通用部材160)がガイド部150(シリンダ本体86)に接触することにより遮断位置から連通位置に変位する。換言すれば、連通用部材160は、第2ピストン94が他方のストロークエンドに位置した時に連通位置から遮断位置に切り替わる。この際、第2大径部164bが第2ピストン94に接触することにより、連通用部材160の一端側(隔壁80側)への移動が規制される。なお、第2大径部164bは、第2ピストン94に接触した状態で第3室92b内に突出している。
【0058】
また、本体部164は、連通用部材160が連通位置に位置した状態で本体部164の一端面がシリンダ本体86に接触可能なように第2ピストン94よりも一方の側に位置するように構成されている。この際、本体部164の他端面は、第2ピストン94よりも他方の側に位置している。
【0059】
すなわち、連通用部材160は、貫通孔154内を軸線方向に移動することによって連通位置と遮断位置とに変位する。また、図4において、連通用部材160は、貫通孔154からの離脱を阻止する離脱阻止部172を有している。
【0060】
離脱阻止部172は、第1大径部164aと段差面158とを含み、第1大径部164aが段差面158に接触することにより連通用部材160の貫通孔154から第3室92b内への離脱が阻止される。離脱阻止部172は、第2大径部164bを含み、第2大径部164bが第2ピストン94の他方の面に接触することにより連通用部材160の貫通孔154からの第2室92a内への離脱が阻止される。
【0061】
本実施形態に係る増圧装置10及びシリンダ装置12は、基本的には以上のように構成されるものであって、次に、その動作(使用方法)について説明する。初期状態において、図1に示すように、流体圧シリンダ14のピストン24は、ピストンロッド26とは反対側のストロークエンドに位置し、切換弁34は第2位置に位置している。また、増圧装置10の連通用部材160は、遮断位置に位置している(図3参照)。
【0062】
シリンダ装置12において、ピストンロッド26を伸長させる駆動工程を行う場合、図7に示すように、切換弁34を第2位置から第1位置に切り替える。そうすると、供給源32から供給流路36、第1ポート46a、第2ポート46b及び第1接続流路38を介して第1シリンダ室20に高圧の流体(圧縮空気)が流入する。これにより、ピストン24がピストンロッド26側に変位してピストンロッド26が伸長するとともに第2シリンダ室22内の流体が第2接続流路40、第3ポート46c及び第5ポート46eを介して排出流路44に排出される。この際、第3接続流路42が連通する第4ポート46dが閉塞されているため、供給源32の流体は第1シリンダ室20内に効率的に供給される。第2シリンダ室22から排出流路44に排出された流体は、サイレンサ56及び排気口58を介して大気に排出される。ただし、第2絞り弁54の流路断面積を調整することによって、排出流路44内の流体をタンク62に貯蓄するようにしてもよい。
【0063】
次いで、ピストンロッド26を引き込む復帰工程を行う場合、図1に示すように、切換弁34を第1位置から第2位置に切り替える。そうすると、供給流路36が連通する第1ポート46aが閉塞されるため、供給源32から第1シリンダ室20内への流体の供給が停止される。そして、第1シリンダ室20内の流体が第1接続流路38、第3接続流路42、第4ポート46d、第3ポート46c及び第2接続流路40を介して第2シリンダ室22内に導かれる。これにより、ピストン24がピストンロッド26とは反対側に変位してピストンロッド26が引き込まれるとともに第1シリンダ室20内の流体が第1接続流路38に排出される。
【0064】
復帰工程では、第1シリンダ室20内から排出された流体を用いてピストン24を変位させている。そのため、供給源32から第2シリンダ室22内に流体を供給する必要がなく、供給源32の消費電力及び空気消費量が抑えられるため、シリンダ装置12の省エネルギー化が図られる。
【0065】
第1シリンダ室20から第1接続流路38に排出された流体は、第3接続流路42に導かれるとともに第2ポート46b及び第5ポート46eを介して排出流路44に導かれる。この際、第1絞り弁52の流路断面積を変更することにより、第3接続流路42に導かれる流体の流量と排出流路44に導かれる流体の流量との割合が調整される。
【0066】
排出流路44に導かれた流体は、第2絞り弁54の流路断面積を調整することにより、接続流路60を介してタンク62に貯蓄される。これにより、タンク62内の流体の圧力を供給源32から導出される流体の圧力の約半分の圧力まで迅速に上昇させることができる。
【0067】
タンク62内の流体は、第1導入流路64及び第1導入ポート112を介して増圧室88a内に導かれるとともに第2導入流路66及び第2導入ポート126を介して第2室92a内に導かれる。このとき、図3に示すように、連通用部材160は遮断位置に位置しているため、第2室92a及び第3室92bの連通は遮断されている。また、供給流路36が連通する第1ポート46aが閉塞されているため、回収流路68のうち第3チェック弁78よりも供給流路36側に存在する流体の圧力がタンク62内の流体の圧力よりも高くなる。よって、第1導入ポート112から増圧室88a内に導入された流体が回収流路68に流れることはない。
【0068】
増圧室88a内に導入された流体は、第1ピストン90をシリンダ本体86の他端側に力F1で押圧する。第2室92a内に導入された流体は、第2ピストン94をシリンダ本体86の他端側に力F2で押圧する。これにより、第1ピストン90及び第2ピストン94は、力F1と力F2の合力によってシリンダ本体86の他端側に押圧されることとなる。
【0069】
そうすると、第1ピストン90及び第2ピストン94は、付勢部材98の付勢力に抗して(付勢部材98を圧縮させながら)シリンダ本体86の他端側に向かって変位する。このとき、第1室88b内の流体は、第1大気ポート114を介して大気に排出され、第3室92b内の流体は、第2大気ポート128を介して大気に排出される。そして、図6において、連通用部材160の他端面がガイド部150の突出部の突出端面に接触すると、連通用部材160が貫通孔154を隔壁80側に移動して遮断位置から連通位置に変位する。これにより、第2室92a及び第3室92bが連通孔162を介して互いに連通する。
【0070】
第2室92a及び第3室92bが互いに連通すると、第2室92a内と第3室92b内とが同圧になるため、第2ピストン94には力F2が作用しなくなる。そのため、第1ピストン90及び第2ピストン94は、付勢部材98の付勢力によってシリンダ本体86の一端側に変位する。この際、第1チェック弁74によって増圧室88a内の流体がタンク62に逆流することが阻止され、第2チェック弁76によって第2室92a内の流体がタンク62に逆流することが阻止されている。また、第1室88b内には、第1大気ポート114を介して大気が流入され、第3室92b内には第2室92a内の流体が流入する。これにより、増圧室88a内の流体が加圧される。
【0071】
増圧室88aの流体の圧力が供給源32から導出される流体の圧力(回収流路68及び供給流路36に存在する流体の圧力)以上になると、増圧室88a内の流体が回収流路68のうち第3チェック弁78よりも供給流路36側に流れて供給流路36に回収される。
【0072】
そして、第1ピストン90及び第2ピストン94が元の位置に復帰すると、タンク62内の流体が増圧室88a及び第2室92a内に導入され、上述した増圧動作が再度行われる。つまり、本実施形態では、流体圧シリンダ14の復帰工程中に、増圧装置10の上述した増圧操作が複数回行われることとなる。
【0073】
その後、流体圧シリンダ14の駆動工程を行う際に、増圧装置10から回収された流体が流体圧シリンダ14のピストン24の駆動に用いられるため、供給源32の負担が軽減される。つまり、流体圧シリンダ14の駆動工程において、供給源32の電力消費量及び空気消費量が抑えられるため、シリンダ装置12の省エネルギー化が図られる。
【0074】
次に、本実施形態の作用効果について以下に説明する。
【0075】
増圧装置10は、隔壁80で仕切られた2つのシリンダ室82、84を有するシリンダ本体86と、一方のシリンダ室82内に摺動自在に配設されて一方のシリンダ室82内を増圧室88aと第1室88bとに区画する第1ピストン90と、他方のシリンダ室84内に摺動自在に配設されて他方のシリンダ室84内を第2室92aと第3室92bとに区画する第2ピストン94と、隔壁80を貫通するように設けられて第1ピストン90及び第2ピストン94を互いに連結するロッド96と、第1ピストン90が増圧室88aに向かう方向に第1ピストン90及び第2ピストン94の少なくとも一方を付勢する付勢部材98とを備える。
【0076】
シリンダ本体86には、増圧室88aに流体を導入するための第1導入ポート112と、第1室88b内を大気に開放する第1大気ポート114と、第2室92a内に流体を導入するための第2導入ポート126と、第3室92b内を大気に開放する第2大気ポート128と、増圧室88a内で加圧された流体を導出させるための導出ポート116とが形成されている。
【0077】
第2ピストン94には、第2室92aと第3室92bとを互いに連通させるための連通孔162を有し、且つ連通孔162を介して第2室92a及び第3室92bが互いに連通する連通位置と第2室92a及び第3室92bの連通が遮断される遮断位置とに変位可能な連通用部材160が設けられている。
【0078】
連通用部材160は、増圧室88aが縮小する方向に第1ピストン90及び第2ピストン94が変位した際に連通用部材160がシリンダ本体86に接触することにより連通位置から遮断位置に変位し、増圧室88aが拡大する方向に第1ピストン90及び第2ピストン94が変位した際に連通用部材160がシリンダ本体86に接触することにより遮断位置から連通位置に変位可能に構成されている。
【0079】
これにより、連通用部材160が遮断位置に位置した状態で第1導入ポート112から増圧室88aに流体が供給されるとともに第2導入ポート126から第2室92a内に流体が供給される。そうすると、増圧室88a及び第2室92aが拡大する方向に第1ピストン90及び第2ピストン94が付勢部材98の付勢力に抗して変位する。そして、連通用部材160が遮断位置から連通位置に変位すると、第2室92a及び第3室92bが互いに連通する。
【0080】
そうすると、付勢部材98の付勢力によって増圧室88a及び第2室92aが縮小する方向に第1ピストン90及び第2ピストン94が押し戻されるため、増圧室88a内の流体が加圧されて導出ポート116から導出される。このように、増圧装置10に供給される流体自体によって当該流体を増圧することができるため、増圧装置10の省エネルギー化を図ることができる。また、連通孔162を有する連通用部材160がシリンダ本体86に接触することによって、連通位置と遮断位置とに変位するため、増圧装置10の構成を簡素化することができる。
【0081】
第2ピストン94には、第2ピストン94の軸線方向に貫通した貫通孔154が形成されている。連通用部材160は、貫通孔154内を軸線方向に移動することによって連通位置と遮断位置とに変位している。これにより、簡易な構成により連通用部材160を連通位置と遮断位置とに変位させることができる。
【0082】
連通用部材160は、第2ピストン94の軸線方向に沿って延在した本体部164と、本体部164の一端部の外周面に設けられたシール部材166と、を有する。連通孔162は、本体部164の中間部164cの外周面に開口した第1孔168と、本体部164の他端部に開口した第2孔170と、を含む。シール部材166は、連通用部材160が遮断位置に位置した状態で貫通孔154を構成する壁面に気密に接触し、連通用部材160が連通位置に位置した状態で貫通孔154を構成する壁面から離間する。これにより、シール部材166によって第2室92a及び第3室92bの連通を遮断することができる。
【0083】
本体部164は、連通用部材160が連通位置に位置した状態で本体部164の一端面がシリンダ本体86に接触可能なように第2ピストン94よりも一方の側に位置し、連通用部材160が遮断位置に位置した状態で本体部164の他端面がシリンダ本体86に接触可能なように第2ピストン94よりも他方の側に位置するように構成されている。これにより、本体部164の一端面がシリンダ本体86に接触することによって連通用部材160を連通位置から遮断位置に変位させ、本体部164の他端面がシリンダ本体86に接触することによって連通用部材160を遮断位置から連通位置に変位させることができる。
【0084】
本体部164は、連通用部材160が連通位置に位置した状態で本体部164の他端面が第2ピストン94よりも他方の側に位置している。第2孔170は、本体部164の他端部の側面に開口している。これにより、第2孔170が本体部164の他端部の側面に開口しているため、本体部164の他端面がシリンダ本体86に接触して連通用部材160が遮断位置から連通位置に変位した状態でシリンダ本体86によって連通孔162が閉塞されることを防止することができる。
【0085】
連通用部材160は、貫通孔154からの離脱を阻止する離脱阻止部172を有する。これにより、連通用部材160が第2ピストン94の貫通孔154から離脱することを阻止することができる。
【0086】
シリンダ装置12は、増圧装置10と、シリンダ部18の内部を第1シリンダ室20と第2シリンダ室22とに区画してシリンダ部18の内部を往復摺動可能なピストン24を有する流体圧シリンダ14と、第1シリンダ室20内に流体を供給するための供給流路36と、流体圧シリンダ14から排出された流体を増圧装置10の第1導入ポート112に導く第1導入流路64と、流体圧シリンダ14から排出された流体を増圧装置10の第2導入ポート126に導く第2導入流路66と、増圧装置10の導出ポート116から導出された加圧流体を供給流路36に導く回収流路68と、を備える。
【0087】
第1導入流路64には、第1導入流路64から第1導入ポート112への流体の流通を許可するとともに第1導入ポート112から第1導入流路64への流体の流通を阻止する第1チェック弁74が設けられている。第2導入流路66には、第2導入流路66から第2導入ポート126への流体の流通を許可するとともに第2導入ポート126から第2導入流路66への流体の流通を阻止する第2チェック弁76が設けられている。回収流路68には、導出ポート116から回収流路68への流体の流通を許可するとともに回収流路68から導出ポート116への流体の流通を阻止する第3チェック弁78が設けられている。これにより、簡易な構成で増圧室88a内の流体を効率的に加圧することができる。
【0088】
本発明は、上述した構成に限定されない。例えば、増圧装置10において、付勢部材98を第1室88b内に配設して付勢部材98によって第1ピストン90をロッド96とは反対側に付勢してもよい。
【0089】
増圧装置10では、第1ピストン90及び隔壁80の間に増圧室88aを設けるとともに第1エンドカバー102及び第1ピストン90の間に第1室88bを設け、第2ピストン94及び第2エンドカバー106の間に第2室92aを設けるとともに第2ピストン94及び隔壁80の間に第3室92bを設けてもよい。この場合、シリンダ本体86には、増圧室88aに連通する第1導入ポート112と、第1室88bに連通する第1大気ポート114と、第2室92aに連通する第2導入ポート126と、第3室92bに連通する第2大気ポート128と、増圧室88aに連通する導出ポート116とが形成される。また、付勢部材98は、第1ピストン90及び第2ピストン94の少なくとも一方を増圧室88aが縮小する方向に付勢するように設けられる。このような構成であっても、上述した構成と同様の効果を奏する。
【0090】
本発明に係る増圧装置及びシリンダ装置は、上述の実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0091】
10…増圧装置 12…シリンダ装置
80…隔壁 82、84…シリンダ室
86…シリンダ本体 88a…増圧室
88b…第1室 90…第1ピストン
92a…第2室 92b…第3室
94…第2ピストン 96…ロッド
98…付勢部材 112…第1導入ポート
114…第1大気ポート 116…導出ポート
126…第2導入ポート 128…第2大気ポート
160…連通用部材 162…連通孔
図1
図2
図3
図4
図5
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図7