(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ガードリングが形成されている領域よりも外周側の領域における前記第2半導体層の不純物濃度が、前記能動領域における前記第2半導体層の不純物濃度よりも高いことを特徴とする請求項1に記載のショットキーバリアダイオード。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のショットキーバリアダイオード900においては、逆サージが入ると、ショットキー接触(バリアメタル層930と第2半導体層920との接触)及びpn接合(ガードリング940と第2半導体層920との接合)から第1半導体層910に向けて空乏層が伸びて当該第1半導体層910に達する状態、すなわち、リーチスルー状態となる(
図7(b)参照。)。そして、この状態で大きな逆サージが入ると、ショットキーバリアダイオードは破壊される。
【0007】
そこで、第2半導体層920の厚さを厚くすることにより、リーチスルー状態になり難いショットキーバリアダイオードにすることが考えられる。しかしながら、このようにした場合には、第2半導体層920の抵抗が高くなるため、順方向電圧V
Fが高くなり、好ましくない(後述する
図8における試料5(比較例2)参照。)。
【0008】
そこで、本発明は、このような背景に鑑みてなされたもので、順方向電圧V
Fを高くすることなく、逆サージ耐量を高くすることができるショットキーバリアダイオードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[1]本発明のショットキーバリアダイオードは、第1導電型の第1半導体層と、前記第1半導体層上に形成され、前記第1半導体層よりも不純物濃度が低い第1導電型の第2半導体層と、前記第2半導体層上の表面所定領域に形成されたバリアメタル層と、平面的に見て前記バリアメタル層のうち前記第2半導体層の表面と接する部分の端部を包含するように前記第2半導体層の表面に形成された第2導電型のガードリングとを備え、前記ガードリングが形成されている領域における前記第2半導体層の不純物濃度が、能動領域における前記第2半導体層の不純物濃度よりも高いことを特徴とする。
【0010】
なお、本明細書中、「表面所定領域」とは、能動領域及びその近傍の領域(ガードリングとバリアメタル層が接触する領域)を含む領域である。また、本明細書中、「能動領域」とは、バリアメタル層と第2半導体層とでショットキー障壁が形成され、実質的にショットキーバリアダイオードとして機能する領域のことをいう。
【0011】
[2]本発明のショットキーバリアダイオードにおいては、前記ガードリングが形成されている領域における前記第2半導体層の不純物濃度が、前記第1半導体層の不純物濃度よりも低いことが好ましい。
【0012】
[3]本発明のショットキーバリアダイオードにおいては、前記ガードリングが形成されている領域における前記第2半導体層の不純物濃度が、7×10
14cm
−3〜7×10
16cm
−3の範囲内にあることが好ましい。
【0013】
[4]本発明のショットキーバリアダイオードにおいては、前記ガードリングの周囲の領域における前記第2半導体層の不純物濃度が、前記能動領域における前記第2半導体層の不純物濃度よりも高いことが好ましい。
【0014】
[5]本発明のショットキーバリアダイオードにおいては、前記ガードリングが形成されている領域よりも外周側の領域における前記第2半導体層の不純物濃度が、前記能動領域における前記第2半導体層の不純物濃度よりも高いことが好ましい。
【0015】
[6]本発明のショットキーバリアダイオードにおいては、前記ガードリングが形成されている領域における前記第2半導体層においては、前記ガードリングの最深部の深さ位置よりも深い深さ領域の全部で前記能動領域における前記第2半導体層の不純物濃度よりも高いことが好ましい。
【0016】
[7]本発明のショットキーバリアダイオードにおいては、前記ガードリングが形成されている領域における前記第2半導体層においては、前記ガードリングの最深部の深さ位置よりも深い深さ領域の一部のみで前記能動領域における前記第2半導体層の不純物濃度よりも高いことが好ましい。
【0017】
[8]本発明のショットキーバリアダイオードにおいては、前記第2半導体層上に前記能動領域を取り囲むように形成された絶縁層をさらに備え、平面的に見て前記絶縁層の内周端は前記ガードリングに包含されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明のショットキーバリアダイオードによれば、ガードリングが形成されている領域における第2半導体層の不純物濃度が能動領域における第2半導体層の不純物濃度よりも高いことから、逆サージが入った場合でも、ショットキー接触(バリアメタル層と第2半導体層との接触)及びpn接合(ガードリングと第2半導体層との接合)から第1半導体層に向けて伸びる空乏層の伸びを抑制することができる。従って、当該空乏層が第1半導体層110に達する状態になり難くなり(
図7(a)参照。)、その結果、従来よりも逆サージ耐量を高くすることができる。
【0019】
また、本発明のショットキーバリアダイオードによれば、ガードリングが形成されている領域における第2半導体層の不純物濃度が能動領域における第2半導体層の不純物濃度よりも高いことから、逆サージ耐量を高くすることを目的として、第2半導体層自体の厚さを厚くする必要がないため、順方向電圧V
Fが従来よりも高くなることがない(後述する
図8における試料3(実施例)参照。)。
【0020】
その結果、本発明のショットキーバリアダイオードは、順方向電圧V
Fを高くすることなく、従来よりも逆サージ耐量を高くすることができるショットキーバリアダイオードとなる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の半導体装置及び半導体装置の製造方法について、図に示す実施の形態に基づいて説明する。なお、各図面は模式図であり、必ずしも実際の寸法を厳密に反映したものではない。
【0023】
[実施形態1]
1.実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100の構成
実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100は、
図1に示すように、n
+型の第1半導体層110と、第1半導体層110上に形成され、第1半導体層110よりも不純物濃度が低いn
−型の第2半導体層120と、第2半導体層120上の表面所定領域に形成されたバリアメタル層130と、平面的に見てバリアメタル層130のうち第2半導体層120の表面と接する部分の端部を包含するように第2半導体層120の表面に形成されたp
+型のガードリング140と、第2半導体層120上に能動領域を取り囲むように形成された絶縁層150と、第1半導体層110の裏面上に形成された裏面電極160とを備える。なお、実施形態1では、第1導電型の不純物がn型の不純物、第2導電型の不純物がp型の不純物である。
【0024】
ガードリング140が形成されている領域における第2半導体層120の不純物濃度が能動領域における第2半導体層120の不純物濃度よりも高く、かつ、第1半導体層110の不純物濃度よりも低く、例えば、7×10
14cm
−3〜7×10
16cm
−3の範囲内にある。(以下、ガードリング140が形成されている領域における第2半導体層120において、能動領域における第2半導体層120の不純物濃度よりも不純物濃度が高い領域を「高濃度領域」という。)。
【0025】
ガードリング140が形成されている領域における第2半導体層120においては、ガードリング140の最深部の深さ位置よりも深い深さ領域の全部で能動領域における第2半導体層120の不純物濃度よりも高い。
【0026】
第1半導体層110としては、n型不純物濃度が例えば5×10
17cm
−3〜5×10
19cm
−3程度、能動領域における第1半導体層110の厚さが例えば30μm〜700μm程度のものを用いることができる。第1半導体層110の材料は、例えばシリコンである。
【0027】
第2半導体層120としては、n型不純物濃度が例えば5×10
14cm
−3〜5×10
16cm
−3程度、能動領域における厚さが例えば2μm〜30μm程度のものが好ましく、例えば4μmのものを用いることができる。第2半導体層120は、エピタキシャル成長法によって形成されたものである。
【0028】
ガードリング140は、深さが例えば0.3μm〜10μm程度が好ましく例えば1μmであり、p型不純物濃度が例えば1×10
16cm
−3〜1×10
18cm
−3程度である。ガードリング140は、第2半導体層120の表面において環状に形成されている(
図1(b)参照。)。
【0029】
バリアメタル層130としては、第2半導体層120との間でショットキー接触を形成する金属(例えばチタン)からなるバリアメタル層を用いることができる。バリアメタル層130の厚さは、例えば2000nmである。バリアメタル層130は、アノード電極を構成している。
【0030】
絶縁層150は、例えば熱酸化膜及びPSG膜で構成されている。平面的に見て絶縁層150の内周端はガードリング140に包含されている。
【0031】
裏面電極160としては、例えばチタン、ニッケル及び金が積層された積層膜からなるものを用いることができる。裏面電極160は、第1半導体層110の裏面上にそのまま形成しても良いし、第1半導体層110の裏面上にシリサイド層(たとえば、ニッケルシリサイド層)を介して形成してもよい。裏面電極160は、カソード電極を構成している。
【0032】
2.実施形態1に係るショットキーバリアダイオードの製造方法
実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100は、以下に示す製造工程を有する製造方法により製造することができる。
【0033】
(1)半導体基体準備工程
まず、n
+型の第1半導体層110(n
+型半導体基板)を準備する(
図2(a)参照。)。
【0034】
(2)第2半導体層及びガードリング形成工程
次に、第1半導体層110上にエピタキシャル成長法により、第1半導体層110よりも不純物濃度が低いエピタキシャル層121を形成する(
図2(b)参照。)。次に、高濃度領域122(及びガードリング140)に対応する開口を有するマスクM1をエピタキシャル層121上に形成し、当該マスクを用いてn型不純物(例えば、リン)を第2半導体層120の比較的深い領域(例えば第2半導体層120の厚みの中間の部分)にイオン注入する(
図2(c)参照。)。次に、当該マスクを用いてp型不純物(例えば、ボロン)を第2半導体層120の比較的深い領域にイオン注入する(
図2(d)参照。)。次に、n型不純物及びp型不純物を熱拡散させることにより、高濃度領域122を有する第2半導体層120及びガードリング140を形成する(
図3(a)参照。)。
【0035】
(3)絶縁層形成工程
次に、マスクM1を除去した後、第2半導体層120上に熱酸化膜及びPSG膜の積層膜を形成する。次に、絶縁層150を形成する領域以外の領域に開口を有するマスク(図示せず。)を当該積層膜上に形成し、当該マスクを用いて当該積層膜をエッチングする。これにより、第2半導体層120の表面に能動領域を取り囲むように絶縁層150を形成する(
図3(b)参照。)。このとき、平面的に見て絶縁層150の内周端はガードリング140に包含されている。
【0036】
(4)バリアメタル層形成工程及びカソード電極形成工程
次に、第2半導体層120上の表面所定領域(絶縁層150で囲まれた領域)及び絶縁層150の内周側の一部の領域にバリアメタル層130を形成するとともに、第1半導体層110の裏面上に裏面電極160を形成する(
図3(c)参照。)。
【0037】
このようにして実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100を製造することができる。
【0038】
3.実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100の効果
実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100によれば、ガードリング140が形成されている領域における第2半導体層120の不純物濃度が能動領域における第2半導体層120の不純物濃度よりも高いことから、逆サージが入った場合にショットキー接触(バリアメタル層130と第2半導体層120との接触)及びpn接合(ガードリング140と第2半導体層120との接合)から第1半導体層110に向けて伸びる空乏層(以下、単に空乏層という。)の伸びを抑制することができる。従って、当該空乏層が第1半導体層110に達する状態になり難くなり(後述する
図7(a)参照。)、その結果、従来よりも逆サージ耐量を高くすることができる。
【0039】
また、実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100によれば、ガードリング140が形成されている領域における第2半導体層120の不純物濃度が能動領域における第2半導体層120の不純物濃度よりも高いことから、逆サージ耐量を高くすることを目的として、第2半導体層120自体の厚さを厚くする必要がないため、順方向電圧V
Fが従来よりも高くなることがない(後述する
図8における試料3(実施例)参照。)。
【0040】
その結果、実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100は、順方向電圧V
Fを高くすることなく、従来よりも逆サージ耐量を高くすることができるショットキーバリアダイオードとなる。
【0041】
また、実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100によれば、ガードリング140が形成されている領域における第2半導体層120の不純物濃度が第1半導体層110の不純物濃度よりも低い。このような構成としたのは、ガードリング140が形成されている領域における第2半導体層120の不純物濃度が第1半導体層110の不純物濃度と同じ又は当該不純物濃度よりも高い場合には、空乏層が第1半導体層110に達しなくても、第2半導体層120の不純物濃度が高い領域(高濃度領域122)に空乏層が達しただけでリーチスルー状態と電気的に等価になってしまうため、逆サージ耐量を高くすることが難しいからである。
【0042】
また、実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100によれば、ガードリング140が形成されている領域における第2半導体層120の不純物濃度(すなわち、高濃度領域122の不純物濃度)が7×10
14cm
−3〜7×10
16cm
−3の範囲内にあるため、空乏層が第1半導体層110に達する状態になり難く従来よりも逆サージ耐量を高くすることができ、かつ、第2半導体層120の不純物濃度が高い領域(高濃度領域122)に空乏層が達しただけでリーチスルー状態と電気的に等価になってしまうことを防ぐことができる。このような観点からすれば、高濃度領域122の不純物濃度は、1×10
15cm
−3〜1×10
16cm
−3の範囲内にあることが好ましい。
【0043】
また、実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100によれば、ガードリング140が形成されている領域における第2半導体層120においては、ガードリング140の最深部の深さ位置よりも深い深さ領域の全部で能動領域における第2半導体層120の不純物濃度よりも高いため、逆サージが入った場合に空乏層がより一層伸び難くなり、当該空乏層が第1半導体層110により一層達し難くなる。その結果、従来よりも逆サージ耐量をより一層高くすることができる。
【0044】
[実施形態2]
実施形態2に係るショットキーバリアダイオード102は、基本的には実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100と同様の構成を有するが、第2半導体層における高濃度領域が形成されている領域が実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100の場合とは異なる。すなわち、実施形態2に係るショットキーバリアダイオード102においては、
図4に示すように、ガードリング140の周囲の領域における第2半導体層120の不純物濃度が、能動領域における第2半導体層120の不純物濃度よりも高い(すなわち、高濃度領域122aが、ガードリング140の周囲にも形成されている。)。
【0045】
実施形態2において、高濃度領域122aは、平面的にみてガードリング140の周囲の領域に形成されており、断面的に見て柱状形状(平面的に見て環状形状)をしている。
【0046】
このように、実施形態2に係るショットキーバリアダイオード102は、第2半導体層における高濃度領域が形成されている領域が実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100の場合とは異なるが、実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100の場合と同様に、ガードリング140が形成されている領域における第2半導体層120の不純物濃度が能動領域における第2半導体層120の不純物濃度よりも高いことから、順方向電圧V
Fを高くすることなく、従来よりも逆サージ耐量を高くすることができるショットキーバリアダイオードとなる。
【0047】
また、実施形態2に係るショットキーバリアダイオード102によれば、ガードリング140の周囲における第2半導体層120の不純物濃度が能動領域における第2半導体層120の不純物濃度よりも高いため、逆サージが入った場合にガードリング140の周囲においても空乏層が伸び難くなり、当該空乏層が第1半導体層110により一層達し難くなる。その結果、従来よりも逆サージ耐量をより一層高くすることができる。
【0048】
なお、実施形態2に係るショットキーバリアダイオード102は、第2半導体層における高濃度領域が形成されている領域以外の点においては実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100と同様の構成を有するため、実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100が有する効果のうち該当する効果を有する。
【0049】
[実施形態3]
実施形態3に係るショットキーバリアダイオード104は、基本的には実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100と同様の構成を有するが、第2半導体層における高濃度領域が形成されている領域が実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100の場合とは異なる。すなわち、実施形態3に係るショットキーバリアダイオード104においては、
図5に示すように、ガードリング140が形成されている領域よりも外周側の領域における第2半導体層120の不純物濃度が能動領域における第2半導体層120の不純物濃度よりも高い。
【0050】
このように、実施形態3に係るショットキーバリアダイオード104は、第2半導体層における高濃度領域が形成されている領域が実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100の場合とは異なるが、実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100の場合と同様に、ガードリング140が形成されている領域における第2半導体層120の不純物濃度が能動領域における第2半導体層120の不純物濃度よりも高いことから、順方向電圧V
Fを高くすることなく、従来よりも逆サージ耐量を高くすることができるショットキーバリアダイオードとなる。
【0051】
また、実施形態3に係るショットキーバリアダイオード104によれば、ガードリング140が形成されている領域よりも外周側の領域における第2半導体層120の不純物濃度が能動領域における第2半導体層120の不純物濃度よりも高いため、ガードリング140が形成されている領域よりも外周側の領域においても空乏層が伸び難くなり、当該空乏層が第1半導体層110により一層達し難くなる。その結果、従来よりも逆サージ耐量をより一層高くすることができる。
【0052】
なお、実施形態3に係るショットキーバリアダイオード104は、第2半導体層における高濃度領域が形成されている領域以外の構成においては実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100と同様の構成を有するため、実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100が有する効果のうち該当する効果を有する。
【0053】
[実施形態4]
実施形態4に係るショットキーバリアダイオード106は、基本的には実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100と同様の構成を有するが、第2半導体層における高濃度領域が形成されている領域が実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100の場合とは異なる。すなわち、実施形態4に係るショットキーバリアダイオード106においては、
図6に示すように、ガードリング140が形成されている領域における第2半導体層120においては、ガードリング140の最深部の深さ位置よりも深い深さ領域の一部のみで能動領域における第2半導体層120の不純物濃度よりも高い。
【0054】
実施形態4においては、ガードリング140の最深部と高濃度領域122cとは離間した状態となっている。
【0055】
このように、実施形態4に係るショットキーバリアダイオード106は、第2半導体層における高濃度領域が形成されている領域が実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100の場合とは異なるが、実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100の場合と同様に、ガードリング140が形成されている領域における第2半導体層120の不純物濃度が能動領域における第2半導体層120の不純物濃度よりも高いことから、逆サージが入った場合でも、ショットキー接触及びpn接合から第1半導体層110に向けて伸びる空乏層の伸びを抑制することができる。従って、当該空乏層が第1半導体層110に達し難くなり、その結果、従来よりも逆サージ耐量を高くすることができる。
【0056】
また、実施形態4に係るショットキーバリアダイオード106によれば、ガードリング140が形成されている領域における第2半導体層120においては、ガードリング140の最深部の深さ位置よりも深い深さ領域の一部のみで能動領域における第2半導体層120の不純物濃度よりも高いことから、ガードリング140の最深部の深さ位置よりも深い深さ領域の全部に高濃度領域を形成しなくても空乏層が伸び難く当該空乏層が第1半導体層110に達し難くなるため、この場合であっても従来よりも逆サージ耐量を高くすることができる。
【0057】
なお、実施形態4に係るショットキーバリアダイオード106は、第2半導体層における高濃度領域が形成されている領域以外の構成においては実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100と同様の構成を有するため、実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100が有する効果のうち該当する効果を有する。
【0058】
[試験例]
<試験例1>
試験例1は、本発明のショットキーバリアダイオードが、従来のショットキーバリアダイオードよりも逆サージ耐量が高いショットキーバリアダイオードであることを示すための試験例である。
【0059】
1.各試料の説明
(1)試料1(実施例)
基本的には実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100と同じ構成のショットキーバリアダイオードを試料1とした。ただし、ガードリング140が形成されている領域における第2半導体層120(高濃度領域122)の不純物濃度を能動領域における第2半導体層120の不純物濃度の1.5倍の不純物濃度とし、ガードリング140の幅を20μmとし、ガードリング140の深さを1μmとした。
【0060】
(2)試料2(比較例)
高濃度領域122が形成されていない点以外の構成は試料1に係るショットキーバリアダイオードと同様の構成のショットキーバリアダイオードを試料2とした。
【0061】
2.試験方法
各試料において、バリアメタル層130に負の電位(例えば、60V)を印加したときにショットキー接触(バリアメタル層130と第2半導体層120との接触)及びpn接合(ガードリング140と第2半導体層120との接合)から第1半導体層110に向けて伸びる空乏層の様子をシミュレーションし、図示することで空乏層が第1半導体層110に達する状態になったか否かを判断した。
【0062】
3.試験結果
図7からもわかるように、試料2(比較例)においては、逆サージが入ると、ショットキー接触及びpn接合から第1半導体層110に向けて空乏層が伸びて第1半導体層110に達する状態、すなわち、リーチスルー状態となることがわかった(
図7(b)参照。)。これに対して、試料1(実施例)においては、逆サージが入った場合でも、ショットキー接触及びpn接合から第1半導体層110に向けて空乏層が伸びても、当該空乏層が第1半導体層110に達する状態、すなわち、リーチスルー状態とならないことがわかった(
図7(a)参照。)。このことから、本発明のショットキーバリアダイオードが、従来のショットキーバリアダイオードよりも逆サージ耐量が高いショットキーバリアダイオードであることがわかった。
【0063】
<試験例2>
試験例2は、本発明のショットキーバリアダイオードが、逆サージ耐量が高く、静電破壊耐量が高く、かつ、順方向電圧V
Fが低いショットキーバリアダイオードであることを示すための試験例である。
【0064】
1.各試料の説明
(1)試料3(実施例)
基本的には実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100と同じ構成のショットキーバリアダイオードを作製し、これを試料3とした。ただし、ガードリング140が形成されている領域における第2半導体層120(高濃度領域122)の不純物濃度を能動領域における第2半導体層120の不純物濃度の1.15倍の不純物濃度とし、ガードリング140の幅を20μmとし、ガードリング140の深さを1μmとした。
【0065】
(2)試料4(比較例1)
高濃度領域122が形成されていない点以外の構成は試料3に係るショットキーバリアダイオードと同様の構成のショットキーバリアダイオードを作製し、これを試料4とした。
【0066】
(3)試料5(比較例2)
高濃度領域122が形成されていない点及び第2半導体層の厚みを試料3の第2半導体層の厚みの1.15倍の厚みとした点以外の構成は試料3に係るショットキーバリアダイオードと同様の構成のショットキーバリアダイオードを作製し、これを試料5とした。
【0067】
2.試験方法
各試料の、逆サージ耐量、静電破壊耐量及び順方向電圧V
Fを測定した。
(1)逆サージ耐量
各試料(試料3〜5)に対し、それぞれ電力を100W刻みになるようにパルス幅10μsecの電流を印加し、破壊する直前の印加電力を逆サージ耐量として評価した。逆サージ耐量が1000W以上の場合に「○」の評価を与え、逆サージ耐量が1000W未満の場合に「×」の評価を与えた。
(2)静電破壊耐量
50Vから200Vまで50V刻みで印加可能な電源によって200pFのコンデンサを充電した後、当該コンデンサにより各試料(試料3〜5)に対し順方向および逆方向に各3回ずつ放電させ、試料が破壊したときの電源電圧を静電破壊耐量として評価した。静電破壊耐量が1500V以上の場合に「○」の評価を与え、静電破壊耐量が1500V未満の場合に「×」の評価を与えた。
(3)順方向電圧V
F
各試料(試料3〜5)に対し順方向電流を2A印加したときの電圧を順方向電圧V
Fとして評価した。順方向電圧V
Fが700mV以下の場合に「○」の評価を与え、順方向電圧V
Fが700mVを超える場合に「×」の評価を与えた。
(4)総合評価
上記した、逆サージ耐量、静電破壊耐量及び順方向電圧V
Fの全ての評価が「○」の場合に「○」の評価を与え、各評価のうち1つでも「×」がある場合に「×」の評価を与えた。
【0068】
3.試験結果
図8からもわかるように、試料4及び5(比較例)に係るショットキーバリアダイオードはいずれも、いずれかの評価項目で「×」の評価があり、「×」の総合評価が得られた。すなわち、試料4(比較例1)に係るショットキーバリアダイオードは逆サージ耐量及び静電破壊耐量の項目で「×」の評価があり、試料5(比較例2)に係るショットキーバリアダイオードは順方向電圧V
Fの項目で「×」の評価があるため、それぞれ「×」の総合評価が得られた。
【0069】
これに対して、試料3(実施例)に係るショットキーバリアダイオードは、全ての評価項目について「○」の評価が得られ、「○」の総合評価が得られた。その結果、本発明のショットキーバリアダイオードが、逆サージ耐量が高く、静電破壊耐量が高く、かつ、順方向電圧V
Fが低いショットキーバリアダイオードであることがわかった。
【0070】
以上、本発明を上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。その趣旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
【0071】
(1)上記実施形態において記載した構成要素の数、材質、形状、位置、大きさ等は例示であり、本発明の効果を損なわない範囲において変更することが可能である。
【0072】
(2)上記各実施形態においては、第1半導体層及び第2半導体層の材料をシリコンにしたが、本発明はこれに限定されるものではない。第1半導体層及び第2半導体層の材料を炭化珪素、窒化ガリウムその他適宜の材料にしてもよい。
【0073】
(3)上記各実施形態においては、バリアメタル層の材料をチタンにしたが、本発明はこれに限定されるものではない。バリアメタル層の材料を窒化チタン、モリブデン、パラジウム、白金、アルミニウム−シリコンその他適宜の材料にしてもよい。
【0074】
(4)上記各実施形態においては、バリアメタル層130をそのままアノード電極としたが、本発明はこれに限定されるものではない。バリアメタル層130上に外部と接続するための表面電極を形成し、バリアメタル層130及び表面電極をアノード電極としてもよい。この場合において、表面電極の材料としては、例えば、チタン及びアルミニウムの積層膜やニッケル膜などを用いることができる。
【0075】
(5)上記実施形態においては、イオン注入法により高濃度領域を形成したが、本発明はこれに限定されるものではない。エピタキシャル成長法により高濃度領域を形成してもよい。
【0076】
(6)上記実施形態においては、イオン注入法によりガードリング140を形成したが、本発明はこれに限定されるものではない。エピタキシャル成長法によりガードリング140を形成してもよい。