特許第6673578号(P6673578)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6673578
(24)【登録日】2020年3月9日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】ドーム型カメラ
(51)【国際特許分類】
   G03B 17/56 20060101AFI20200316BHJP
   G03B 15/00 20060101ALI20200316BHJP
   G03B 17/00 20060101ALI20200316BHJP
   H04N 5/225 20060101ALI20200316BHJP
   H04N 5/222 20060101ALI20200316BHJP
【FI】
   G03B17/56 H
   G03B15/00 S
   G03B17/00 B
   G03B17/56 B
   H04N5/225
   H04N5/222 100
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-46904(P2015-46904)
(22)【出願日】2015年3月10日
(65)【公開番号】特開2016-166997(P2016-166997A)
(43)【公開日】2016年9月15日
【審査請求日】2018年2月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】302069930
【氏名又は名称】NECエンベデッドプロダクツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100150197
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 直樹
(72)【発明者】
【氏名】洲崎 洋之
【審査官】 登丸 久寿
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−046213(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0017842(US,A1)
【文献】 韓国公開特許第10−2014−0106980(KR,A)
【文献】 特開2005−234446(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/161882(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/063482(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 17/56
G03B 15/00
G03B 17/00
H04N 5/222
H04N 5/225
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光線を遮断する材料により略半球殻状に形成され、該半球殻を構成する曲面の一部に、光線が透過する開口領域を有するシールドケースと、
このシールドケース内に、前記半球殻の一の中心線と平行なチルト回転軸を中心として回転可能に、かつ前記開口領域へ光軸を向けて設けられた撮像装置と、を有するドーム型カメラであって、
前記シールドケースの開口領域は、少なくとも前記一の中心線を中心とする四分円の周面に沿って形成され、
前記チルト回転軸は、前記一の中心線と交差する平面に前記撮像装置の光軸を沿わせつつ、当該平面内で該中心線から前記シールドケースの開口領域側に偏倚し、かつ前記シールドケースがなす半球殻の頂部と反対側の大円寄りに位置する、前記開口領域のベース側開口端部へ偏倚して配置され、
前記シールドケースは、透明材料により略半球殻状に形成された球状ケースと、該球状ケースの一部を覆って遮ることにより該球状ケースに光線が通過可能な開口領域を形成する遮光ケースと、が所定の間隔をおいて配置された二重構造であって、
前記遮光ケースの開口領域は、前記撮像装置の前記チルト回転軸を中心とする回転軌跡と重なる位置に形成され、前記球状ケースは、前記撮像装置の前記チルト回転軸を中心とする回転軌跡の外側に配置された
ことを特徴とするドーム型カメラ。
【請求項2】
前記撮像装置は、前記光軸を有するカメラレンズが内蔵された筐体を具備し、該筐体の一部が前記チルト回転軸を中心として回転可能に支持されたことを特徴とする請求項1記載のドーム型カメラ。
【請求項3】
前記チルト回転軸は、前記一の中心線から前記シールドケースのベース側開口端部に向けて位置をシフトして配置されたことを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項に記載のドーム型カメラ。
【請求項4】
前記チルト回転軸のシフト量は、前記撮像装置の筐体の厚さともに、前記撮像装置のカメラレンズと前記シールドケースのベース側開口端部との離間距離に基づき決定されることを特徴とする請求項3に記載のドーム型カメラ。
【請求項5】
前記シールドケースの開口領域は、少なくとも前記一の中心線を中心とした90°の範囲に形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のドーム型カメラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置の周囲にドームカバーを設置したドーム型カメラに関する。
【背景技術】
【0002】
バスや電車といった閉空間の天井に設置される安全監視用のドーム型カメラとして、特許文献1に示される技術が知られている。
特許文献1に示されるドーム型カメラは、ベース上に固定されて入射光の一部エリアを遮光する遮光部を有するシールドケースと、該シールドケースの内部に設置されてチルト回転軸を中心として回転自在な撮像装置と、を備えたものである。
また、このドーム型カメラでは、シールドケースの中心位置(シールドケースの半球中心となる位置)より天頂方向にシフト(オフセット)されたチルト回転軸を中心として、撮像装置が回転する角度調整機構を有している。
そして、上記ドーム型カメラでは、カメラレンズをシールドケースの天頂方向へシフト(オフセット)することにより、ケラレを生じることなく、チルト角が大きい方向の撮影が可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−41380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に示されたドーム型カメラでは、撮像装置のチルト回転軸を垂直方向にシフトすることにより、水平側に回転させた場合、撮像装置がシールドケースの開口領域から大きく離間するという現象が生じ、カメラの画角範囲が狭くなるという問題がある。
【0005】
具体的には、図5に示されるような一般的なドーム型カメラ1において、水平軸に延びるチルト回転軸2がドームの中心点Oより垂直方向にシフトしている状態で、当該チルト回転軸2を回転中心として、撮像装置3を下方側の矢印A方向に回転させた場合、該撮像装置3のカメラレンズ3Aが、遮光部4より開口されたシールドケース5の開口領域6より遠ざかる(水平に位置した場合の撮像装置3を図5に二点鎖線で示す)。
【0006】
これにより、上記ドーム型カメラ1では、図5に示されるように、撮像装置3が矢印A方向に回転して水平姿勢に近くなるほど、撮像装置3のカメラレンズ3Aがシールドケース5の開口領域6より離れる。これと同時に、上記ドーム型カメラ1では、シールドケース5の開口領域6の下端部に位置するベース側開口端部6Aに視界が遮られることになり、図5及び図6に示されるように、実際の視野範囲となるカメラ画角範囲aが小さくなり、上記ドーム型カメラ1の本来の画角範囲にわたる画像を得ることができないという問題があった。
【0007】
この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、撮像装置が回転した場合に、該撮像装置のカメラレンズとシールドケースとの位置関係を一定に保ち、該シールドケースベース側開口端部にカメラの画角が阻まれることを防止して、十分な視野範囲を確保することができるドーム型カメラを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
すなわち、本発明は、光線を遮断する材料により略半球殻状に形成され、該半球殻を構成する曲面の一部に、光線が透過する開口領域を有するシールドケースと、このシールドケース内に、前記半球殻の一の中心線と平行なチルト回転軸を中心として回転可能に、かつ前記開口領域へ光軸を向けて設けられた撮像装置と、を有するドーム型カメラであって、前記シールドケースの開口領域は、少なくとも前記一の中心線を中心とする四分円の周面に沿って形成され、前記チルト回転軸は、前記一の中心線と交差する平面に前記撮像装置の光軸を沿わせつつ、当該平面内で該中心線から前記シールドケースの開口領域側に偏倚して配置されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のドーム型カメラによれば、チルト回転軸を中心として撮像装置が回転した場合に、カメラの画角がシールドケースのベース側開口端部に阻まれる範囲をできるだけ少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態を示す正断面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係るドーム型カメラを示す正断面図である。
図3図2のドーム型カメラの視野範囲を示す平面図である。
図4】本発明の第2実施形態に係るドーム型カメラを示す正断面図である。
図5】一般的なドーム型カメラを示す正断面図である。
図6図5のドーム型カメラの視野範囲を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態について図1を参照して説明する。
図1に示されるドーム型カメラ10は、光線Lを透過可能な開口領域11を有するシールドケース12と、このシールドケース12内に設置された撮像装置13とから構成されたものであって、ベースとなる台座14上に配置されている。
シールドケース12は、光線Lを遮断する材料12Aにより略半球殻状に形成されており、該半球殻を構成する曲面の一部に、光線Lが透過可能な開口領域11を有する構成である。
撮像装置13は、シールドケース12の中心点Oを通過する一つの中心線(符号Zを付す紙面と直交する方向のライン)と平行なチルト回転軸15を中心として回転可能に設けられたものであって、その光軸Lが、開口領域11へ向くように設置されている。
【0012】
また、シールドケース12の開口領域11は、少なくとも一の中心線Zを中心とする四分円の周面に沿って形成されている。
また、撮像装置13のチルト回転軸15は、一の中心線Zと交差する平面(X−Y平面)に撮像装置13の光軸Lを沿わせつつ、当該平面内で該中心線Zからシールドケース12の開口領域11側に位置をシフトして配置されている。
具体的には、図1で示される撮像装置13のチルト回転軸15は、基準となるシールドケース12の一の中心線Zから開口領域11側に偏倚(紙面を表すX−Y方向の開口領域11側にシフト)する、特に開口領域11のベース側開口端部11Aに向けてシフトしている。これにより同時に、撮像装置13のチルト回転軸15は、図5に示されるこれまでの一般的な撮像装置3の回転中心(2)から見た場合も開口領域11側にシフトすることになる。
【0013】
そして、以上のような構成により本発明のドーム型カメラ10では、撮像装置13のチルト回転軸15が、半球殻の一の中心線Zからシールドケース12の開口領域11側に位置をシフトする構成であるので、当該チルト回転軸15を中心として撮像装置13が矢印B方向に回転した場合に、該撮像装置13のカメラレンズ13Aと、シールドケース12の開口領域11との位置関係が一定に保たれる。
これによって、該撮像装置13の画角が、シールドケース12のベース側開口端部11Aに阻まれることが防止され、一般的な撮像装置1(図5参照)と比較して十分な視野範囲(符号bで示す範囲、b>a)を確保することができる。
【0014】
〔第1実施形態〕
図2及び図3は、本発明の第1実施形態に係るドーム型カメラ20の正断面図であって、光線Lが透過する開口領域21を有するシールドケース22と、このシールドケース22内に設置された撮像装置23とから構成される。
シールドケース22は、ベースとなる台座24上に設置されかつ透明材料により断面形状がほぼ真円半球状に形成された球状ケース25と、該球状ケース25の一部を覆って遮ることにより光線Lが通過可能な開口領域21を形成する遮光ケース26と、からなる二重構造である。
また、該シールドケース22では、球状ケース25及び遮光ケース26が半径方向に対して所定の間隔をおいて位置している。
【0015】
なお、本実施形態のドーム型カメラ20では、シールドケース22が図中上向きに配置されているが、実際の設置に当たっては、シールドケース22の開口領域21が監視領域に向くように、該シールドケース22を下向きにして天井の隅部に設置されている。
【0016】
撮像装置23は、光軸Lを有するカメラレンズ23Aが内蔵された筐体27を具備し、該筐体27の一部である図中下部がチルト回転軸28を中心として回転可能に支持されている。
チルト回転軸28は、筐体27の長さ方向に沿う中央ライン27Aより下部に位置しており、半球殻形状に形成されたシールドケース22の中心点Oを通過する一の中心線(符号Zを付す紙面と直交する方向のライン)と平行な位置関係に設けられるものであって、撮像装置23の光軸Lが、開口領域21へ向くように位置させている。
なお、撮像装置23には、カメラレンズ23Aが内蔵された筐体27を、チルト回転軸28を中心として回転させる回転駆動機構29が設置されている。
【0017】
また、シールドケース22の開口領域21は、少なくとも一の中心線Zを中心とする四分円の周面に沿い全体として細長に形成されており、図2に示されるように、90°又は90°に近い角度範囲に設定されている。
また、撮像装置23のチルト回転軸28は、一の中心線Zと交差する平面に撮像装置23の光軸Lを沿わせつつ、当該平面内で該中心線Zからシールドケース22の開口領域21側に位置をシフトして配置されている。
具体的には、図2で示される撮像装置23のチルト回転軸28は、基準となるシールドケース22の一の中心線Zから開口領域21側にシフト(紙面を表すX−Y方向にシフト)する、特に開口領域21のベース側開口端部21Aに向けてシフトしている。これにより同時に、撮像装置23のチルト回転軸28は、図5に示されるこれまでの一般的な撮像装置3の回転中心(2)から見た場合も開口領域21側にシフトすることになる。
また、本実施形態においては、図2に示されるように、シールドケース22の開口領域21が、中心点Oを通過する垂直なX軸と、該中心点Oを通過してX軸と直交する水平なY軸とからなる直交座標系内のX−Y平面を横切るように配置されている。
【0018】
ここで、撮像装置23のチルト回転軸28では、シールドケース22の中心点Oを基準としたX軸方向へのシフト量(符号xで示す)を、撮像装置23の筐体27の厚さ寸法(図面では上下寸法)及び回転駆動機構29の大きさに基づき決定している。
これと同時に、当該撮像装置23のチルト回転軸28では、シールドケース22の中心点Oを基準としたY軸方向へのシフト量(符号yで示す)を、撮像装置23のカメラレンズ23Aと、シールドケース開口領域21におけるベース側開口端部21Aとの離間距離Mに基づき決定している。
【0019】
そして、以上のように構成された本実施形態のドーム型カメラ20では、撮像装置23のチルト回転軸28の設置位置を、半球殻の一の中心線Zからシールドケース22のベース側開口端部11Aに向けてシフトさせるようにしている。
これにより、本実施形態のドーム型カメラ20では、チルト回転軸28を中心として撮像装置23が回転した場合に、該撮像装置23のカメラレンズ23Aと、シールドケース22の開口領域21との位置関係が一定に保たれる。これによって、図3に示されるように、撮像装置23の画角が、シールドケース22のベース側開口端部21Aに阻まれることが防止され、十分な視野範囲(符号b´で示す範囲、b´>a)を確保することができる。
【0020】
〔第2実施形態〕
図4は、本発明の第2実施形態に係るドーム型カメラ20´の正断面図であって、符号30で示されるシールドケースが第1実施形態と異なっている。
【0021】
第2実施形態に示されるシールドケース30は、ベースとなる台座24上に設置されかつ透明材料により断面形状がほぼ真円半球状に形成された球状ケース31と、該球状ケース31の一部を覆って遮ることにより光線Lが通過可能な開口領域32を形成する遮光材33と、からなる二重構造である。
【0022】
本実施形態のシールドケース30では、球状ケース31及び遮光材33が密着した二重構造に形成されている。
遮光材33としては光線を透過しないプラスチック材からなるケースの他、フィルム、塗料なども使用される。
【0023】
また、第2実施形態のドーム型カメラ20´においても、撮像装置23のチルト回転軸28が、半球殻の一の中心線Zからシールドケース22の開口領域32に向けてシフトする構成となっている。
これにより、本実施形態のドーム型カメラ20´では、チルト回転軸28を中心として撮像装置23が回転した場合に、該撮像装置23のカメラレンズ23Aと、シールドケース30の開口領域32との位置関係が一定に保たれる。これによって、図4に示されるように、撮像装置23の画角が、シールドケース30のベース側開口端部32Aに阻まれることが防止され、十分な視野範囲(符号b´で示す範囲、b´>a)を確保することができる。
【0024】
なお、上記実施形態では、図1に示されるように、直交座標系の左側に位置する四分円にシールドケース22、30の開口領域21,32を設けるようにしたが、本発明により設定される四分円は直交座標系のいずれの位置であっても良い。すなわち、シールドケース22、30の開口領域21,32は、少なくとも一の中心線Zを中心とする周面のいずれの位置に設定しても良い。
【0025】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、警備用の監視カメラに係り視野範囲を拡大することが可能なドーム型カメラに関する。
【符号の説明】
【0027】
10 ドーム型カメラ
11 開口領域
11A ベース側開口端部
12 シールドケース
13 撮像装置
15 チルト回転軸
20 ドーム型カメラ
20´ドーム型カメラ
21 開口領域
21A ベース側開口端部
22 シールドケース
23 撮像装置
25 球状ケース
26 遮光ケース
27 筐体
28 チルト回転軸
30 シールドケース
32 開口領域
32A ベース側開口端部
M 離間距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6