特許第6673610号(P6673610)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東芝エレベータ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6673610-エレベータシステム 図000002
  • 特許6673610-エレベータシステム 図000003
  • 特許6673610-エレベータシステム 図000004
  • 特許6673610-エレベータシステム 図000005
  • 特許6673610-エレベータシステム 図000006
  • 特許6673610-エレベータシステム 図000007
  • 特許6673610-エレベータシステム 図000008
  • 特許6673610-エレベータシステム 図000009
  • 特許6673610-エレベータシステム 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6673610
(24)【登録日】2020年3月9日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】エレベータシステム
(51)【国際特許分類】
   B66B 3/02 20060101AFI20200316BHJP
【FI】
   B66B3/02 A
   B66B3/02 N
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-127534(P2018-127534)
(22)【出願日】2018年7月4日
(65)【公開番号】特開2020-7064(P2020-7064A)
(43)【公開日】2020年1月16日
【審査請求日】2018年7月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菊山 賢一
(72)【発明者】
【氏名】本田 昌志
(72)【発明者】
【氏名】穴井 太郎
【審査官】 須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−286554(JP,A)
【文献】 米国特許第05194702(US,A)
【文献】 特開2008−303072(JP,A)
【文献】 特開2014−114132(JP,A)
【文献】 実開平04−097782(JP,U)
【文献】 特開平01−303279(JP,A)
【文献】 実開昭49−053671(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗りかごの現在階、次停止階、及び、運転方向を表示する表示器と、
前記表示器における表示を制御する制御手段と、を具備し、
前記制御手段は、
前記乗りかごの運転方向に応じて、上方向を示す第1の運転方向表示または下方向を示す第2の運転方向表示を表示し、
前記乗りかごが上昇運転を行う場合には、前記第1の運転方向表示を表示し、さらに前記第1の運転方向表示の上方に次停止階を表示し、
前記乗りかごが下降運転を行う場合には、前記第2の運転方向表示を表示し、さらに前記第2の運転方向表示の下方に次停止階を表示し、
前記第1または第2の運転方向表示が示す方向の先に前記次停止階が表示されることを特徴とするエレベータシステム。
【請求項2】
前記制御手段は、前記次停止階の表示を前記現在階の表示よりも小さく表示することを特徴とする請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項3】
前記制御手段は、
前記乗りかごが停止中に、前記現在階を前記表示器の中央付近に表示し、
前記乗りかごが上昇運転を開始する場合に、前記現在階の表示を前記表示器の下部に移動させ、前記第1の運転方向表示の表示位置を前記現在階の表示の上方とし、
前記乗りかごが下降運転を開始する場合に、前記現在階の表示を前記表示器の上部に移動させ、前記第2の運転方向表示の表示位置を前記現在階の表示の下方とすることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエレベータシステム。
【請求項4】
前記制御手段は、
前記乗りかごが停止中に、前記現在階を前記表示器の中央付近に表示し、
前記乗りかごが上昇運転もしくは下降運転を開始する場合に、前記現在階の表示を前記表示器の左部に移動させ、前記現在階の表示の右方に前記第1の運転方向表示もしくは前記第2の運転方向表示及び前記次停止階を表示し、又は、
前記乗りかごが上昇運転もしくは下降運転を開始する場合に、前記現在階の表示を前記表示器の右部に移動させ、前記現在階の表示の左方に前記第1の運転方向表示もしくは前記第2の運転方向表示及び前記次停止階を表示することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエレベータシステム。
【請求項5】
前記制御手段は、前記乗りかごが前記次停止階に到着した場合に、前記第1の運転方向表示もしくは前記第2の運転方向表示及び前記次停止階の表示を消去し、前記現在階の表示を前記表示器の中央付近へ移動させることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載のエレベータシステム。
【請求項6】
前記制御手段は、アニメーションを用いて、前記現在階の表示を移動させる表示を行うことを特徴とする請求項5に記載のエレベータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、かごの運行状況を表示する表示装置を備えたエレベータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータの現在の運行状況を示すインジケータは、従来よりかご位置をランプ又はLEDの点灯などにより利用者に知らせる方式のものが主流であった。近年では、このインジケータに液晶パネルが用いられることにより、インジケータに従来よりも多彩な表示を行うことが可能である。例えば、緊急時には、注意喚起のためのメッセージ、ガイダンスなどをインジケータに表示させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6244273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、エレベータの通常運転時にインジケータに表示される項目は、現在階、上下運転方向の表示、及び次に停止する階(以下、次停止階とする)などである。しかしながら、これらの表示位置は、エレベータの運転状態にかかわらず固定的に決められることが多いため、利用者にとって分かりづらい。
【0005】
例えば、運転方向が下方向である場合、現在階の表示の上側に下方向を示す矢印が表示されていると、利用者は、かごが次停止階ではなく現在階として表示された階に向かっていると誤認する恐れがある。また、現在階と次停止階の両方が表示される場合、次停止階の表示は、現在階との混同を避けるために、例えば「次は○階に止まります」などの文章による表示が必要であった。さらに、外国人利用者に向けては外国語での表示が必要であった。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、利用者が、現在階、次に停止する階、及び運転方向を容易に把握可能である表示器を備えるエレベータシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態に係るエレベータシステムは、乗りかごの現在階、次停止階、及び、運転方向を表示する表示器と、前記表示器における表示を制御する制御手段とを備える。前記制御手段は、前記乗りかごの運転方向に応じて、上方向を示す第1の運転方向表示または下方向を示す第2の運転方向表示を表示し、前記乗りかごが上昇運転を行う場合には、前記第1の運転方向表示を表示し、さらに前記第1の運転方向表示の上方に次停止階を表示し、前記乗りかごが下降運転を行う場合には、前記第2の運転方向表示を表示し、さらに前記第2の運転方向表示の下方に次停止階を表示し、前記第1または第2の運転方向表示が示す方向の先に次停止階が表示される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は第1の実施形態に係るエレベータシステムの構成例を示す図である。
図2図2は同実施形態に係る表示器における現在階、次停止階、及び運転方向の表示の第1の例を示す図である。
図3図3は同実施形態に係る表示器における現在階、次停止階、及び運転方向の表示の第2の例を示す図である。
図4図4は同実施形態に係るエレベータの運転状態と表示器に対する表示処理との関係を示す状態遷移図である。
図5図5は同実施形態に係るエレベータの運転停止中及び運転開始時の表示処理の一例を示すフローチャートである。
図6図6は同実施形態に係るエレベータの運転中及び運転停止時の表示処理の一例を示すフローチャートである。
図7図7は同実施形態に係る表示器における表示の遷移の第1の例を示す図である。
図8図8は同実施形態に係る表示器における表示の遷移の第2の例を示す図である。
図9図9は同実施形態に係るエレベータの乗り場の操作盤の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に説明する本実施形態においては、かご操作盤のインジケータにおいて、現在階、運転方向、及び、次停止階の各表示位置が連携して配置されるエレベータシステムについて説明する。上記各表示が連携されて配置されることにより、利用者が視覚により容易に現在階、運転方向、及び、次停止階を把握することができる。以下、図面を参照して実施形態を説明する。
【0010】
図1は第1の実施形態に係るエレベータシステムの構成を示す図である。なお、第1の実施形態では、1台の乗りかごを有するシングルカーのエレベータシステムを想定して説明するが、例えば1つの昇降路中に複数台の乗りかごを有するマルチカーのエレベータシステム、又は、複数台の乗りかごを有する群管理システムなどに対しても適用可能である。
【0011】
本実施形態に係るエレベータシステムにおいては、乗りかご1の乗降口にかごドア2が開閉自在に取り付けられている。かごドア2の横には、操作盤3が設置されている。
【0012】
操作盤3上には、エレベータ乗客が乗りかご1を制御するための各種ボタンが備えられている。例えば、操作盤3上には、各階の行先階ボタンの他に、戸開ボタン、戸閉ボタン、非常呼びボタンなどが設けられる。戸開ボタンは、かごドア2の戸開を指示するときに用いられる。戸閉ボタンは、かごドア2の戸閉を指示するときに用いられる。非常呼びボタンは、外部(例えば、建物の監視室あるいは遠隔地に存在するエレベータの監視センタなど)と連絡するときに用いられる。
【0013】
操作盤3は、エレベータ制御装置(EL制御装置)5に接続されている。乗りかご1内の利用者が操作盤3上の任意のボタンを操作すると、当該ボタンの操作信号がエレベータ制御装置5に送信される。
【0014】
なお、操作盤3は、タッチパネルにより構成されてもよい。タッチパネルは、オブジェクト(例えば、利用者の指など)が接触した画面上の位置を検出可能なポインティングデバイスである。
【0015】
表示器4は、乗りかご1内の利用者に対し、エレベータの運行状態などを表示するための表示装置である。表示器4は、少なくとも乗りかご1の現在階、次停止階、運転方向を表示する。以下では、運転方向は、上昇運転の場合の上方向、又は、下降運転の場合の下方向のいずれかであるとして説明する。
【0016】
表示器4は、ディスプレイを含む。当該ディスプレイ上には、かご内インジケータとして運転方向、現在位置などを含む各種メッセージが表示される。
【0017】
なお、表示器4は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)、有機EL(Organic Electro-Luminescense)などにより構成されるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0018】
エレベータ制御装置5は、乗りかご1の運転制御を含むエレベータ全体の制御を行う。エレベータ制御装置5は、CPU、ROM、RAMなどを備えたコンピュータからなり、例えばROMなどに所定のプログラムを格納する。CPUが当該プログラムを実行することにより、エレベータ制御装置5は、エレベータ全体の制御に必要な機能を実現する。
【0019】
エレベータ制御装置5は、例えば、運転制御部51、登録制御部52などを含む。
【0020】
運転制御部51は、後述する行先階管理用のテーブルTに登録された行先階(かご呼び)の情報に基づいて乗りかご1の運転を制御する。また、運転制御部51は、操作盤3上の各種ボタンの操作信号に基づいて、かごドアの戸開動作又は戸閉動作、及び、外部との通信などを行う。
【0021】
登録制御部52は、行先階管理用のテーブルTを含む。登録制御部52は、利用者により操作盤3上の任意の階の行先階ボタンが操作されたときに、行先階ボタンに対応した行先階の情報を行先階管理用のテーブルTに登録する。また、登録制御部52は、利用者により登録済の行先階を取り消す操作が行われた場合に、登録済の行先階の情報を取り消す。この取り消し操作が行われた場合、登録制御部52は、例えば、既に登録済みの行先階の個数と乗りかご1の着床制御のタイミングに基づいて当該行先階の取り消し可否を判断し、取り消しが可能な場合にテーブルTから当該行先階の登録を取り消す。
【0022】
表示制御装置6は、エレベータの運行状況に基づいて表示器4の表示制御を行い、表示器4のディスプレイ上に様々な表示を行う。
【0023】
より具体的には、表示制御装置6は、エレベータ制御装置5のテーブルTに格納された行先階の情報、及び、運転制御部51により取得した現在階の情報などを用いて、表示器4に少なくとも乗りかご1の現在階、次停止階、及び、運転方向を表示する。
【0024】
表示制御装置6は、CPU、ROM、RAMなどを備えたコンピュータからなり、例えばROMなどに所定のプログラムを格納する。CPUが当該プログラムを実行することにより、上記の表示制御に必要な機能が実現される。なお、表示制御装置6及び表示制御装置6の実現する機能は、エレベータ制御装置5に含まれていてもよい。
【0025】
図2は、本実施形態に係る表示器4における現在階、次停止階、及び運転方向の表示の第1の例を示す図である。
【0026】
上述のように、表示制御装置6は、表示器4に少なくとも現在階表示41、運転方向表示42、及び、次停止階表示43の3つの項目を表示する。
【0027】
現在階表示41は、現在の乗りかご1の位置に対応する階を表す。より具体的には、現在階表示41は、記号、数字もしくは文字、又はこれらの組み合わせなどである。
【0028】
次停止階表示43は、乗りかご1が次に停止する階を表す。次停止階表示43は、現在階表示41と同様に、記号、数字もしくは文字、又はこれらの組み合わせなどである。
【0029】
表示制御装置6は、現在階表示41と次停止階表示43との間に、運転方向表示42を表示する。各項目の表示順は、乗りかご1の運転方向に合わせた配置であることが好ましい。より具体的には、例えば上り運転の場合、表示器4の下から順に、現在階表示41、運転方向表示42(上向きの矢印)、次停止階表示43が表示される。同様に、下り運転の場合、上から順に、現在階表示41、運転方向表示42(下向きの矢印)、次停止階表示43が表示される。
【0030】
このように、表示器4において、現在階表示41から運転方向表示42である矢印の方向に従い次停止階表示43が配置される。これにより、利用者は、次停止階に向かってエレベータが動いていることが容易に把握でき、かつ、当該矢印の方向が向かっている先が目的の行先であることを直感的に理解できる。
【0031】
なお、表示制御装置6は、例えば矢印を乗りかご1の運転方向に合わせてアニメーションを表示させることにより、当該矢印の指す方向を強調してもよい。アニメーションの一例として、当該矢印は、例えば運転方向に合わせてスクロール表示又はワイプ表示されてもよい。また他の一例として、当該矢印は、例えば乗りかご1の運転開始に合わせてフェードインするように表示されてもよく、乗りかご1の停止に合わせてフェードアウトするように表示されてもよい。
【0032】
また、次停止階表示43は、現在階表示41より小さく表示されてもよい。換言すれば、次停止階表示43のサイズは、現在階表示41のサイズより小さくてもよい。これにより、利用者はより直感的に次停止階表示43と現在階表示41とを区別することができる。
【0033】
本実施形態において、運転方向表示42は矢印であるとするが、乗りかご1の利用者が運転方向を識別可能な表示であれば、他の表示で代替されてもよい。
【0034】
図3は、本実施形態に係る表示器における現在階、次停止階、及び運転方向の表示の第2の例を示す図である。
【0035】
図3において、表示器4には、現在階表示41、運転方向表示42、次停止階表示43に加え、各種メッセージ又は映像などを表示するためのその他の表示44が含まれる。図3の例では、例えばその他の表示44の表示領域以外の横長の領域に現在階表示41、運転方向表示42、次停止階表示43が表示される。
【0036】
この場合、現在階表示41の横に運転方向表示42及び次停止階表示43が表示される。さらに、上り運転の場合、上向きを示す運転方向表示42の上(上方)に次停止階表示43が表示される。同様に、下り運転の場合、下向きを示す運転方向表示42の下(下方)に次停止階表示43が表示される。これにより、図2に示した例と同様に、利用者は、次停止階に向かってエレベータが動いていることが容易に把握でき、かつ、当該矢印の方向により示される先が目的の行先であることを直感的に理解できる。
【0037】
なお、図3の例では、現在階表示41の左に運転方向表示42及び次停止階表示43が表示されているが、現在階表示41の右に運転方向表示42及び次停止階表示43が表示されてもよい。
【0038】
また、図3の例では、その他の表示44の表示領域は、表示器4の表示領域の下部に配置されているが、その他の表示44の表示領域が表示器4の表示領域の上部に配置される場合でも同様である。
【0039】
図4は、本実施形態に係るエレベータの運転状態と表示器に対する表示処理との関係を示す状態遷移図である。
【0040】
表示制御装置6は、エレベータの運転状態に応じ、表示器4に対する表示処理を実行する。以下では、エレベータの運転状態に応じ、当該表示処理を4種類に分けて説明する。
【0041】
エレベータの運転状態は、例えば、エレベータ運転停止中を示す状態ST1、エレベータ運転中を示す状態ST2に分けられる。初期状態において、エレベータの運転状態は、状態ST1であるとする。
【0042】
状態ST1において、乗りかご1の次停止階が未決定である間は、運転停止中の表示処理P1が実行される。
【0043】
一方、状態ST1において、乗りかご1の次停止階が決定されると、エレベータの運転状態は状態ST2に遷移するとともに、運転開始時の表示処理P2が実行される。
【0044】
状態ST2において、乗りかご1が次停止階に到着しない間は、運転中の表示処理P3が実行される。
【0045】
一方、状態ST2において、乗りかご1が次停止階に到着する場合、エレベータの運転状態は状態ST1に遷移するとともに、運転停止時の表示処理P4が実行される。
【0046】
なお、運転停止中の表示処理P1、運転開始時の表示処理P2、運転中の表示処理P3、運転停止時の表示処理P4の詳細は、図5及び図6を用いて後述する。
【0047】
図5は、本実施形態に係るエレベータの運転停止中及び運転開始時の表示処理の一例を示すフローチャートである。図5において、エレベータの運転状態は運転停止中(すなわち、状態ST1である)とする。
【0048】
ステップS101において、表示制御装置6は、次停止階が決定したか否かを確認する。より具体的には、表示制御装置6は、テーブルTを読み出し、次停止階が存在するか否かを確認する。なお、表示制御装置6は、例えばポーリングなどにより定期的にテーブルTを読み出してもよく、又は、登録制御部52より次停止階が決定された旨の通知を受信してもよい。
【0049】
次停止階が決定しない間、ステップS102において、表示制御装置6は、現在の現在階表示41を維持する処理を実行する。ステップS102の処理は、運転停止中の表示処理P1に相当する。
【0050】
一方、次停止階が決定したと判断された場合、ステップS103において、表示制御装置6は、次停止階と現在階を比較する処理を実行する。表示制御装置6は、例えばエレベータ制御装置5の運転制御部51より現在階を取得可能である。以下のステップS103〜S107の処理は、運転開始時の表示処理P2に相当する。
【0051】
まず、ステップS103において、次停止階が現在階よりも下階であると判定された場合、処理はステップS104に進む。
【0052】
ステップS104において、表示制御装置6は、現在階表示41を表示器4のディスプレイ(以下、表示画面とする)の上部に移動させる。なお、図3を用いて上述したように、表示制御装置6は、ディスプレイ又は表示領域の形状などに応じて、現在階表示41を表示画面の右部(又は左部)に移動させてもよい。
【0053】
また、この表示の移動は、アニメーションを用いて表現されてもよい。より具体的には、例えば、現在階表示41は表示画面をスライドするように表示されてもよい。以下、表示を移動させる処理において同様である。これにより、利用者は、より直感的に運転方向を認識することができる。
【0054】
ステップS105において、表示制御装置6は、現在階表示41の下に下方向の矢印(運転方向表示42)を表示し、矢印の下に次停止階表示43を表示する。なお、ステップS104において現在階表示41を表示画面の右部(又は左部)に表示する場合には、図3を用いて上述したように、運転方向表示42及び次停止階表示43は現在階表示41の左方(又は右方)に表示される。
【0055】
一方、ステップS103において、次停止階が現在階よりも上階であると判定された場合、処理はステップS106に進む。
【0056】
ステップS106において、表示制御装置6は、現在階表示41を表示画面の下部に移動させる。なお、ステップS104の処理と同様に、表示制御装置6は、ディスプレイ又は表示領域の形状などに応じて、現在階表示41を表示画面の右部(又は左部)に移動させてもよい。
【0057】
ステップS107において、表示制御装置6は、現在階表示41の上に上方向の矢印(運転方向表示42)を表示し、矢印の上に次停止階表示43を表示する。なお、ステップS105の処理と同様に、ステップS106において現在階表示41を表示画面の右部(又は左部)に表示した場合には、運転方向表示42及び次停止階表示43は現在階表示41の左方(又は右方)に表示される。
【0058】
なお、次停止階表示43は、テーブルTの状態に応じて、エレベータの運転中に変更されうる。例えば、エレベータの運転中に、利用者が行先階ボタンを押下した場合、もしくは押下済の行先階ボタンをキャンセルした場合、又は、利用者が乗り場側で乗りかご1を呼び出した場合、テーブルTは更新される。表示制御装置6は、更新されたテーブルTを確認し、テーブルT内に現在の次停止階よりも近い行先階が存在する場合には、次停止階表示43を現在の乗りかご1の位置に最も近い行先階に変更する。なお、表示制御装置6は、例えばポーリングなどにより定期的にテーブルTの変更の有無を確認してもよく、又は、登録制御部52より次停止階が変更された旨の通知を受信してもよい。
【0059】
図6は、本実施形態に係るエレベータの運転中及び運転停止時の表示処理の一例を示すフローチャートである。図6において、エレベータの運転状態は運転中である(すなわち、状態ST2である)とする。
【0060】
ステップS201において、表示制御装置6は、現在階と次停止階が一致したか否かを確認する。なお、上述のように、次停止階はエレベータ制御装置5のテーブルTを読み出すことにより取得可能であり、現在階は運転制御部51より取得可能である。
【0061】
ステップS201において現在階と次停止階が一致した場合、ステップS202において、表示制御装置6は、乗りかご1の位置の移動に伴い、現在階表示41を更新する。また、例えば運転方向表示42がスクロール表示などのアニメーションによる表示である場合、表示制御装置6は、当該アニメーションを更新する。ステップS202の処理は、運転中の表示処理P3に相当する。
【0062】
一方、ステップS201において現在階と次停止階が一致した場合、処理はステップS203へ進む。以下のステップS203,S204の処理は、運転停止時の表示処理P4に相当する。
【0063】
ステップS203において、表示制御装置6は、運転方向表示42(例えば矢印など)と次停止階表示43を消去する。
【0064】
ステップS204において、表示制御装置6は、現在階表示41を表示画面の中央部に移動させる。この中央部とは、表示画面の中央付近を指す。
【0065】
なお、ステップS204において、さらに次の行先階(次停止階)が存在する場合は、現在階表示41は表示画面の中央部に移動されずに、運転開始時の表示処理P2(ステップS103)が実行されてもよい。すなわち、次停止階に到着した後、次の行先階がなくその階に待機する場合は、運転方向表示42と次停止階表示43が消え、現在階表示41が中央に移動することで、この後にエレベータの運転がないことを明確に表すことができる。
【0066】
図7は、本実施形態に係る表示器4における表示の遷移の第1の例を示す図である。具体的には、図7は、表示画面に図2の態様で現在階表示41、運転方向表示42、次停止階表示43を行う場合の表示器4の表示の遷移を示す。
【0067】
まず、エレベータは運転停止中(状態ST1)であるとする。状態ST1においては、運転停止中の表示処理P1が実行され、表示画面の中央部に現在階表示41が表示される。表示A1は、エレベータが運転停止中の表示画面の例である。乗りかご1が3階に停止中である場合、表示画面の中央部に「3」(現在階表示41)が表示される。
【0068】
次に、利用者などにより、操作盤3を介して例えば8階が次停止階として入力されたとする。その後、運転開始時の表示処理P2が実行され、エレベータの運転状態は状態ST1から状態ST2に遷移する。乗りかご1は、上昇運転を開始する。
【0069】
表示A2は、運転開始時の表示処理P2が実行された直後の表示画面の例である。次停止階(8階)が現在階(3階)よりも上階であるため、現在階を示す「3」は表示画面の下部に移動し、その上に上方向の矢印(運転方向表示42)が表示され、さらにその上に「8」(次停止階表示43)が表示される。
【0070】
状態ST2においては、運転中の表示処理P3が実行され、乗りかご1の位置に応じて、表示画面上の矢印及び現在階表示41が更新される。表示A3は、現在階が8階である場合に、運転中の表示処理P3が実行された直後の表示画面の例である。
【0071】
次停止階(8階)に到着すると、運転停止時の表示処理P4が実行され、エレベータの運転状態は状態ST2から状態ST1に遷移する。より具体的には、上方向の矢印及び次停止階を表す「8」の表示は消去され、現在階を示す「8」が画面中央部に移動する。表示A4は、乗りかご1が次停止階(8階)に到着し、運転停止時の表示処理P4が実行された直後の表示画面の例である。
【0072】
さらにその後、操作盤3を介して例えば2階が次停止階として入力されると、運転開始時の表示処理P2が実行され、エレベータの運転状態は状態ST1から状態ST2に遷移する。乗りかご1は、下降運転を開始する。
【0073】
表示A5は、運転開始時の表示処理P2が実行された直後の表示画面の例である。次停止階(2階)が現在階(8階)よりも下階であるため、現在階を示す「8」は表示画面の上部に移動し、その下に下方向の矢印(運転方向表示42)が表示され、さらにその下に「2」(次停止階表示43)が表示される。
【0074】
状態ST2においては、上述のように運転中の表示処理P3が実行される。表示A6は、現在階が2階である場合に、運転中の表示処理P3が実行された直後の表示画面の例である。
【0075】
次停止階(2階)に到着すると、運転停止時の表示処理P4が実行され、エレベータの運転状態は状態ST2から状態ST1に遷移する。より具体的には、上方向の矢印及び次停止階を表す「2」の表示は消去され、現在階を示す「2」が画面中央部に移動する。表示A7は、乗りかご1が次停止階(2階)に到着し、運転停止時の表示処理P4が実行された直後の表示画面の例である。
【0076】
なお、例えば表示A2の直後に、利用者により6階の乗り場のから乗りかご1が呼び出された場合、現在階(3階)に最も近い行先階は6階となり、すなわち次停止階は6階となるため、次停止階表示43は「8」から「6」に変更される。
【0077】
さらに、次停止階表示43の変更は、アニメーションにより表現されてもよい。これにより、利用者が次停止階の変更を把握しやすくなる。アニメーションの一例として、現在の次停止階表示43がフェードアウトし、変更後の次停止階表示43がフェードインするように表示されてもよい。また、他の一例として、現在の次停止階表示43が表示画面外へスライドするとともに、変更後の次停止階表示43が表示画面外からスライドするように表示されてもよい。
【0078】
図8は、本実施形態に係る表示器における表示の遷移の第2の例を示す図である。具体的には、図8は、表示画面に図3の態様で現在階表示41、運転方向表示42、次停止階表示43を行う場合の表示器4の表示の遷移を示す。
【0079】
図8の表示B1〜B7は、それぞれ図7の表示A1〜A7に対応する。表示B1〜B7における現在階表示41、運転方向表示42、及び、次停止階表示43の各項目の表示内容は表示A1〜A7と同様であり、各項目の表示レイアウトのみが異なる。
【0080】
図8の例においては、表示B2における現在階表示41である「3」は、表示B1における現在階表示41の表示位置から右方に移動された位置に表示される。また同様に、表示B4における現在階表示41である「8」は、表示B1における現在階表示41の表示位置から右方に移動された位置に表示される。
【0081】
その他、表示B1〜B7を表示画面に表示するための処理は、上述の表示A1〜A7のものと同様であるため、説明を省略する。
【0082】
図9は本実施形態に係るエレベータの乗り場9の操作盤10の一例を示す図である。
【0083】
乗り場においては、通常乗りかご1を呼び出すための操作盤が設置される。また、例えば乗車前にあらかじめ行先階を登録する方式のエレベータでは、操作盤は乗り場に設置されることがある。
【0084】
操作盤10は、表示器11を含む。なお、表示器11は、操作盤10には含まれずに、操作盤10とは物理的に分離して設置されていてもよい。
【0085】
操作盤10においても上述の操作盤3と同様に、現在階表示41、運転方向表示42、次停止階表示43が表示される。これにより、利用者は乗り場9においても現在の乗りかご1の位置を容易に把握することができるため、利用者の利便性を向上させることができる。
【0086】
また、乗り場9の表示器11は、乗りかご1内の表示器4に比べて縦長である場合が多いため、表示器11に図2の態様で現在階表示41、運転方向表示42、次停止階表示43を表示することにより、利用者はより直感的にエレベータの運転状態を把握することが可能となる。
【0087】
以上述べた本実施形態によれば、表示制御装置6は、エレベータの運転状態に基づいて、表示器4に現在階表示41、運転方向表示42、次停止階表示43を連携して表示させる。乗りかご1が上昇運転を行う場合は、現在階表示41の上に上方向を示す運転方向表示42を表示し、さらにその上に次停止階表示43を表示する。また、乗りかご1が下降運転を行う場合は、現在階表示41の下に下方向を示す運転方向表示42を表示し、さらにその下に次停止階表示43を表示する。これにより、利用者に対し、かごの運転方向に対する感覚に違和感を持たせることなく、直感的に乗りかご1の現在階、次停止階を認知させることができる。
【0088】
また、利用者は、運転方向表示42の先にある階の名称表示が次停止階であると理解できるため、次停止階を表示する際に例えば「次は○階に止まります」などの文章による表示が不要となる。これにより、例えば翻訳などの多言語化の対応を行うことなく次停止階の表示が可能となる。
【0089】
なお、運転方向表示42は、上述以外にも様々な表示態様が考えられる。例えば、運転方向表示42は、例えば次停止階に到着時に色が変化するよう表示されてもよい。また、例えば、運転方向表示42は、次停止階と現在階との距離に応じて長さが変化するよう表示されてもよい。また、例えば、運転方向表示42は、次停止階と現在階との距離に応じて点滅表示されてもよい。このような運転方向表示42の表示により、利用者はさらにエレベータの運転状態を把握しやすくなる。
【0090】
また、例えば、運転方向表示42がスクロール表示される場合において、乗りかご1の上昇又は下降速度に応じてスクロールの速度が変化してもよい。これにより、利用者は、例えば乗りかご1の速度が減少し次停止階に近づいたことを、運転方向表示42により視認できるため、利用者はさらにエレベータの運転状態を把握しやすくなる。
【0091】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0092】
1…乗りかご、2…かごドア、3,10…操作盤、4,11…表示器、5…エレベータ制御装置、9…乗り場、51…運転制御部、52…登録制御部、53…表示制御部、T…行先階管理用のテーブル。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9