特許第6673612号(P6673612)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6673612コンペンシーブ下クリアランスの調整方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6673612
(24)【登録日】2020年3月9日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】コンペンシーブ下クリアランスの調整方法および装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 7/06 20060101AFI20200316BHJP
   B66B 5/00 20060101ALI20200316BHJP
【FI】
   B66B7/06 F
   B66B5/00 D
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-130996(P2018-130996)
(22)【出願日】2018年7月10日
(65)【公開番号】特開2020-7120(P2020-7120A)
(43)【公開日】2020年1月16日
【審査請求日】2018年7月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100150717
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 和也
(72)【発明者】
【氏名】東原 和弘
【審査官】 須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭57−096157(JP,U)
【文献】 特開平06−305658(JP,A)
【文献】 特開2004−010328(JP,A)
【文献】 実開昭57−111762(JP,U)
【文献】 特開2016−055953(JP,A)
【文献】 特開平08−333071(JP,A)
【文献】 特開2000−309478(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/038299(WO,A1)
【文献】 米国特許第05353893(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 7/06
B66B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗りかごとカウンターウェイトから垂れ下がるコンペンロープにテンションを付加するコンペンシーブとピット床面との間のクリアランスを調整する装置であって、
前記コンペンシーブの端末が止着され、前記カウンターウェイトの縦枠に対して水平な姿勢で着脱可能に取り付けられるロープ固定ブラケットと、
前記縦枠に配置され、前記ロープ固定ブラケットを前記コンペンロープごと揚重するネジ式の簡易揚重機構と、を備え、
前記ロープ固定ブラケットは、それぞれ前記コンペンロープが止着された上下2段構成のロープ固定ブラケットからなり、
前記ネジ式の簡易揚重機構は、下段の前記ロープ固定ブラケットと上段のロープ固定ブラケットとをナットの締結により連結する一対のジャッキボルトからなることを特徴とするコンペンシーブ下クリアランスの調整装置。
【請求項2】
乗りかごとカウンターウェイトから垂れ下がるコンペンロープにテンションを付加するコンペンシーブとピット床面との間のクリアランスを調整する装置であって、
前記コンペンシーブの端末が止着され、前記カウンターウェイトの縦枠に対して水平な姿勢で着脱可能に取り付けられるロープ固定ブラケットと、
前記縦枠に配置され、前記ロープ固定ブラケットを前記コンペンロープごと揚重するネジ式の簡易揚重機構と、を備え、
前記ロープ固定ブラケットは、それぞれ前記コンペンロープが止着された上下2段構成のロープ固定ブラケットからなり、
前記ネジ式簡易揚重機構は、下段の前記ロープ固定ブラケットと上段のロープ固定ブラケットとを連結する一対のボールねじ機構と、前記ボールねじ機構を駆動するモータと、前記モータの始動、停止を操作するための操作盤と、からなることを特徴とするコンペンシーブ下クリアランスの調整装置。
【請求項3】
前記ロープ固定ブラケットの両端部には、前記縦枠に沿って摺動可能であり、前記ブラケットが振れないように拘束する振れ止めを設けたことを特徴とする請求項1または2に記載のコンペンシーブ下クリアランスの調整装置。
【請求項4】
前記ロープ固定ブラケットには、その傾斜を判別するための水準器を配置したことを特徴とする請求項1または2に記載のコンペンシーブ下クリアランスの調整装置。
【請求項5】
乗りかごとカウンターウェイトから垂れ下がるコンペンロープにテンションを付加するコンペンシーブとピット床面との間のクリアランスを調整する方法であって、
請求項1乃至のいずれかに記載したネジ式の簡易揚重機構を、前記コンペンシーブの端末が止着され、前記カウンターウェイトの縦枠に対して水平に着脱可能に取り付けられるロープ固定ブラケットに設置し、
前記ネジ式簡易揚重機構を操作し、前記ロープ固定ブラケットを前記コンペンロープごと揚重し、前記コンペンシーブとピット床面の間のクリアランスを調整することを特徴とするコンペンシーブ下クリアランスの調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータのコンペンシーブ下クリアランスの調整方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータでは、乗りかごとカウンターウェイトとは主ロープによって連結されている。乗りかごの昇降にしたがって、かご側とカウンターウェイト側とでロープ重量の不釣り合いが生じる。この不釣り合いを補償するために、乗りかごとカウンターウェイトから下方に垂れ下がるようにコンペンロープが設けられている。コンペンロープの折返し部は、コンペンシーブに巻き掛けられており、このコンペンシーブによって、コンペンロープには所要のテンションが加えられている。
【0003】
コンペンロープの切断、弛みなどの異常は、検出装置によって検出されるようになっており、コンペンロープに異常が検出されると安全装置が作動してエレベータはただちに停止させられる。
【0004】
ところで、コンペンロープには、ワイヤロープの常として伸びが発生する。その伸び量は、行程の大きなエレベータほど大きく、超高層ビルのエレベータともなると、コンペンシーブの伸び量はかなりのものとなる。
【0005】
コンペンロープに伸びが生じると、コンペンシーブの位置は下がることになる。コンペンシーブの下部とピット床面との間隔(コンペンシーブ下クリアランスという)は、検出器が作動しないように、伸びを見込んだ適正な範囲に保つ必要がある。このため、従来からコンペンシーブ下クリアランスの調整がいろいろな方法で行われている。
【0006】
その一つとして、コンペンロープの切り詰めがある。コンペンロープを切り詰めることで、ロープの伸びで下がったコンペンシーブを持ち上げ、コンペンシーブ下クリアランスに余裕を復活させる。
【0007】
この他、コンペンロープを切り詰める替わりに、カウンターウェイトに設置した油圧ジャッキ等によって、コンペンロープを引き上げ、コンペンシーブ下クリアランスを調整することも行われている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−67458号公報
【特許文献2】特開2000−309478号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、エレベータでは、建築上の制約から、ピットの深さを十分に取れずに、コンペンシーブ下クリアランスに余裕を保てないケースが多い。このような場合、コンペンロープの切り詰めの頻度が多くなると、煩雑で大掛かりな作業であることもあって、保守上の負担が大きくなる。
【0010】
他方、油圧ジャッキなどの調整装置を用いる場合も、重量物の油圧ジャッキをカウンターウェイトに設置し、コンペンシーブ下クリアランスを調整し、その後、油圧ジャッキを取り外すなど、非常に大掛かりで煩雑な作業となる。
【0011】
本発明は、前記従来技術の有する問題点に鑑みなされたものであって、コンペンシーブ下クリアランスの調整作業を簡易な機構で容易に行えるようにするコンペンシーブ下クリアランスの調整方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の目的を達成するために、本発明の一実施形態に係るコンペンシーブ下クリアランスの調整装置は、乗りかごとカウンターウェイトから垂れ下がるコンペンロープにテンションを付加するコンペンシーブとピット床面との間のクリアランスを調整する装置であって、前記コンペンシーブの端末が止着され、前記カウンターウェイトの縦枠に対して水平な姿勢で着脱可能に取り付けられるロープ固定ブラケットと、前記縦枠に配置され、前記ロープ固定ブラケットを前記コンペンロープごと揚重するネジ式の簡易揚重機構と、を備え、前記ロープ固定ブラケットは、それぞれ前記コンペンロープが止着された上下2段構成のロープ固定ブラケットからなり、前記ネジ式の簡易揚重機構は、下段の前記ロープ固定ブラケットと上段のロープ固定ブラケットとをナットの締結により連結する一対のジャッキボルトからなることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の一実施形態に係るコンペンシーブ下クリアランスの調整方法は、前記ネジ式の簡易揚重機構を、前記コンペンシーブの端末が止着され、前記カウンターウェイトの縦枠に対して水平に着脱可能に取り付けられるロープ固定ブラケットに設置し、前記ネジ式簡易揚重機構を操作し、前記ロープ固定ブラケットを前記コンペンロープごと揚重し、前記コンペンシーブとピット床面の間のクリアランスを調整することを特徴とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態によるコンペンシーブ下クリアランスの調整装置が取り付けられているカウンターウェイトを示す正面図である。
図2】下段のロープ固定ブラケットを引き上げる操作を説明する正面図である。
図3】上段のロープ固定ブラケットを引き上げる操作を説明する正面図である。
図4】本発明の第2実施形態によるコンペンシーブ下クリアランスの調整装置を示す正面図である。
図5】本発明の第3実施形態によるコンペンシーブ下クリアランスの調整装置を示す正面図である。
図6】本発明の第4実施形態によるコンペンシーブ下クリアランスの調整装置を示す正面図である。
図7】本発明の第5実施形態によるコンペンシーブ下クリアランスの調整装置を示す正面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明によるコンペンシーブ下クリアランスの調整方法および装置の一実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態によるコンペンシーブ下クリアランスの調整装置が取り付けられているカウンターウェイトを示す図である。この図1では、カウンターウェイト10の下部が示されている。参照番号15は、ウェイトを示している。カウンターウェイト10のおもり枠は、左右の縦枠11A、11Bと、下枠12と、図示しない上枠とで構成されている。おもり枠には、多数のウェイト15が積み上げるようにして積載されている。参照番号13、14は、ウェイト15が脱落しないようにするおもり押さえを示している。
【0016】
参照番号16A、16B、16C、16Dは、コンペンロープを示している。これらのコンペンロープ16A、16B、16C、16Dは、カウンターウェイト10から下に垂れ下がり、折返し部にはコンペンシーブ23が設けられている。コンペンシーブ23に巻かれたコンペンロープ16A、16B、16C、16Dは、方向を上に転じて、図示しない乗りかごまで延びるようになっている。
コンペンシーブ23は、昇降路最下部のピットに配置され、カウンターウェイト10を案内するガイドレール(図示せず)に沿って上下に動けるように設置されている。本実施形態において、調整の対象となるコンペンシーブ下クリアランスCとは、コンペンシーブ23とピット床面24との間の距離のことである。
【0017】
コンペンロープ16A、16B、16C、16Dには、その自重およびコンペンシーブ23の重量がかかっており、長期間使用を続けていると伸びが生じ、コンペンシーブ23の位置が下がってくる。コンペンシーブ23が下がり過ぎると、非常スイッチが作動し、エレベータが非常停止してしまうので、そうなる前に、コンペンロープ16A、16B、16C、16Dを引き上げてコンペンシーブ下クリアランスCを調整する必要がある。
【0018】
本実施形態では、コンペンロープ16A、16B、16C、16Dの端末を上下2段のロープ固定ブラケット17、19に止着し、ジャッキボルト20A、20Bを応用したネジ式簡易揚重機構により、ロープ固定ブラケット17、19ごとコンペンロープ16A、16B、16C、16Dを引き上げる。
【0019】
下段のロープ固定ブラケット17は、L字形の型材からなり、水平な姿勢でボルト・ナットを用いて縦枠11A、11B、おもり押さえ13、14に対して着脱可能に取り付けられている。このロープ固定ブラケット17には、コンペンロープ16A、16Bの端末に取り付けられたロープ止め部材18A、18Bがナットを用いて締結されている。
【0020】
同様に、L字形の型材からなる上段のロープ固定ブラケット19は、下段のロープ固定ブラケット17と平行に、ボルト・ナットを用いて縦枠11A、11B、おもり押さえ13、14に対して着脱可能に取り付けられている。コンペンロープ16C、16Dは、下段のロープ固定ブラケット17を貫通して上に伸び、コンペンロープ16C、16Dの端末に取り付けられたロープ止め部材18C、1BDが上段のロープ固定ブラケット19にナットを用いて締結されている。図1に示されるように、下段のロープ固定ブラケット17に止着されているコンペンロープ18A、18Bと上段のロープ固定ブラケット19に止着されるコンペンロープ18C、18Dは、互い違いに隣り合うように並んでいる。
【0021】
ロープ固定ブラケット17、19の両端部には、調整に必要十分な長さをもったジャッキボルト20A、20Bがナットを用いて締結されている。ジャッキボルト20Aの両端部には、雄ねじ21a、21bが形成され、ジャッキボルト20Bの両端部にも、雄ねじ22a、22bが形成されている。
【0022】
本発明の実施形態によるコンペンシーブ下クリアランスの調整装置は、以上のように構成されるものであり、次に、コンペンシーブ下クリアランスの調整手順について説明する。
本実施形態では、ロープ固定ブラケット17、19は、上下2段に構成されており、ジャッキボルト20A、20Bを以下のように操作しながら、ロープ固定ブラケット17、19を片方ずつ動かし、コンペンロープ16A乃至16Dを引き上げる。ロープ固定ブラケット17、19のうち、どちらを先にしてもよいが、ここでは、下段のロープ固定ブラケット17を先に引き上げる例について説明する。
【0023】
図2は、下段のロープ固定ブラケット17を引き上げる操作を説明する図である。
下段のロープ固定ブラケット17を縦枠11A、11Bに締結していたボルト、ナットを外し、下段のロープ固定ブラケット17を動ける状態にする。次いで、図2に示されるように、ジャッキボルト20A、20Bの上端部に締結されている回り止めナット44Aを緩めておく。ジャッキボルト20A、20Bの雄ねじ21b、22bには、ナット44B、44Cが螺合しており、ナット44B、44Cはロープ固定ブラケット19の水平な面を挟み付けている。このうち、下側のナット44Cをレンチなどの工具を用いて回し、図2に示す位置よりも下げておく。
【0024】
ナット44Bを作業者からみて時計回りに工具を使って回していくと、ナット44Bは、ジャッキボルト20A、20Bを相対的に押し上げる働きをする。ジャッキボルト20A、20Bの下端部は、下段のロープ固定ブラケット17と連結されており、ナット44Bを回すことで、ロープ固定ブラケット17といっしょにコンペンロープ16A、16Bをすこしずつ引き上げることができる。その後、下段のロープ固定ブラケット17は、ボルト・ナットにより縦枠11A、11Bに締結される。
【0025】
次に、図3は、上段のロープ固定ブラケット19を押し上げる操作を説明する図である。
【0026】
まず、上段のロープ固定ブラケット19を縦枠11A、11Bに締結していたボルトを外し、上段のロープ固定ブラケット19を動かせる状態にする。次いで、図3に示されるように、ジャッキボルト20A、20Bの下端部に締結されているナット45Bを緩めてその位置を下げておく。ナット45Aをレンチなどの工具を用いて作業者からみて時計回りに工具を使って回していくと、ナット45Aは、ジャッキボルト20A、20Bを相対的に押し上げる働きをする。ジャッキボルト20A、20Bの上端部は、上段のロープ固定ブラケット19と連結されており、ナット45Aを回すことで、ロープ固定ブラケット19 といっしょにコンペンロープ16C、16Dを少しずつ押し上げることができる。その後、上段のロープ固定ブラケット19は、ボルト・ナットにより縦枠11A、11Bに締結される。
【0027】
こうして下段のロープ固定ブラケット17と上段のロープ固定ブラケット19の引き上げを繰り返すことにより、コンペンロープ16A乃至16Dは均等に引き上げられ、コンペンシーブ下クリアランスを所定の設定範囲内に確保することができる。
【0028】
以上のように、本実施形態によれば、油圧ジャッキのような重量物をカウンターウェイト10に設置することなく、ジャッキボルト20A、20Bの操作によってコンペンシーブ下クリアランスを簡便に安全に調整できる。調整後は、使用した機材の撤去などの作業は不要であり、全体として調整作業を短くすることができる。
【0029】
また、建築上の制約から、ピットの深さを十分に取れずに、コンペンシーブ下クリアランスに余裕を保てないケースでも、保守上の負担が少なくロープの伸びに合わせてクリアランスを調整することができる。
【0030】
さらに、本実施形態によれば、ロープ固定ブラケット17、19を上下2段構成とすることにより、上段と下段をジャッキボルト20A、20Bにより交互に引き上げていくことで、ジャッキボルト20A、20Bの長さに制約を受けずに、クリアランスの調整範囲を大きく拡大することができる。
【0031】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態によるコンペンシーブ下クリアランスの調整装置について、図 4を参照して説明する。
【0032】
第1実施形態では、コンペンロープ16A乃至16Dを引き上げるねじ式簡易揚重機構として、ジャッキボルト20A、20Bを用いていた。ジャッキボルト20A、20Bの場合、ナットを工具を使って回す作業が必要になる。この作業は、中間階に止めたかご上での高所作業となる。作業員は、ジャッキボルト20A、20Bに力を掛ける操作を強いられ、その際に体勢が崩れるなど作業の安全性確保が問題となる場合がある。
【0033】
この第2実施形態は、作業員の作業負担を軽減するため、図4に示すように、ジャッキボルト20A、20Bに替えて、ボールねじ機構をねじ式簡易揚重機構に用いた実施の形態である。
縦枠11A、11Bには、その長さ方向と平行にボールねじ30A、30Bが配置されている。ボールねじ30A、30Bは、縦枠11A、11Bに固定されたモータ32A、32Bによって駆動される。ボールねじ30Aには、ロープ固定ブラケット17、19に固定されているボールナット31a、31bが螺合している。同様に、ボールねじ30Bには、ロープ固定ブラケット17、19に固定されているボールナット33a、33bが螺合するようになっている。カウンターウェイト10には、操作盤35が設置されており、モータ32A、32Bの始動、停止を操作盤35から行えるようになっている。モータ32A、32Bに駆動されてボールねじ30A、30Bが回転すると、ロープ固定ブラケット17、19が同時に上に移動し、コンペンロープ16A乃至16Dを引き上げるので、コンペンシーブ下クリアランスを調整することができる。
【0034】
以上のような第2実施形態によれば、操作盤35を操作するだけで、コンペンシーブ下クリアランスを調整することができるので、作業者の作業負担を格段に軽減し、また安全を確保することができる。
【0035】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態によるコンペンシーブ下クリアランスの調整装置について、図5を参照して説明する。
【0036】
第1実施形態、第2実施形態では、いずれもコンペンシーブ下クリアランスの調整時には、ロープ固定ブラケット17、19を縦枠11A、11B等に固定するボルト・ナットを外してから調整を行う。この間、ロープ固定ブラケット17、19は、ジャッキボルト20A、20Bまたはボールねじ30A、30Bに吊られた状態になっている。
【0037】
通常は何も問題はないが、調整中に、地震が発生して建物が揺れた場合には、ロープ固定ブラケット17、19が揺れて、ジャッキボルト20A、20Bまたはボールねじ30A、30Bのねじ部が損傷する可能性がある。ねじ部の損傷がひどい最悪の場合、コンペンロープ16A乃至16Dがロープ固定ブラケット17、19ごと落下する可能性がある。
【0038】
そこで、図5に示す第3実施形態では、ロープ固定ブラケット17、19に振れ止め 36A、36B、37A、37Bを設けている。振れ止め36A、36Bは、縦枠11Aに摺動可能に嵌合しており、同様に、振れ止め37A、37Bは、縦枠11Bに摺動可能に嵌合している。調整時にロープ固定ブラケット17、19を動かす際には、振れ止め 36A、36B、37A、37Bは案内として機能する。調整中に地震が発生した場合には、振れ止め36A、36B、37A、37Bは、ロープ固定ブラケット17、19の左右方向および前後方向の振れを抑制する。なお、図5では、ロープ固定ブラケット17、19をボールねじ30A、30Bで動かすが、ジャッキボルト20A、20Bを用いた場合も同様の振れ止め36A、36B、37A、37Bを用いることができる。
【0039】
以上のような第3実施形態によれば、調整中に地震が発生して建物が揺れた場合でも、ロープ固定ブラケット17、19が揺れないようにできるので、ジャッキボルト20A、20Bまたはボールねじ30A、30Bのねじ部の損傷を未然に防止することができる。
【0040】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態によるコンペンシーブ下クリアランスの調整装置について、図6を参照して説明する。
【0041】
上記第1乃至第3実施形態では、いずれもロープ固定ブラケット17、19を上下2段構成として実施形態であるが、この第4実施形態では、ロープ固定ブラケット17だけに簡素化した実施形態である。
ロープ固定ブラケット17の両端部には、ジャッキボルト40A、40Bが連結されている。ジャッキボルト40A、40Bの上端側のねじ部42bは、縦枠11A、11Bに固定したブロック41A、41Bを貫通して上に突き出ており、ナット46A、46Bで締結されている。ナット46Aを緩めてから下側のナット46Bを回すことで、ジャッキボルト40A、40Bを上に動かし、固定ブラケット17ごとコンペンロープ16A乃至16Dを引き上げることができる。
以上のような第4実施形態は、昇降行程が低く、コンペンシーブ下クリアランスの調整代が比較的小さいエレベータに適している。
【0042】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態によるコンペンシーブ下クリアランスの調整装置について、図7を参照して説明する。
【0043】
これまで説明した第1乃至第4実施形態では、ジャッキボルト20A、20B、40A、40Bまたはボールねじ30A、30Bを左右の片方ずつを操作しながらロープ固定ブラケット17、19を動かすので、左右で完全に同調させることは難しい。このため、ロープ固定ブラケット17、19が傾き、ジャッキボルト20A、20B、40A、40Bまたはボールねじ30A、30Bのねじ部に偏荷重が作用して損傷させる可能性がある。
【0044】
そこで、第4実施形態では、ロープ固定ブラケット17、19にそれぞれ水準器50を設け、水準器50でロープ固定ブラケット17、19が水平かどうか確かめながら、調整を行えるようになっている。これにより、偏荷重によるねじ部の損傷を防ぐことができる。
【0045】
以上、本発明に係るコンペンシーブ下クリアランスの調整方法および装置について、好適な実施形態を挙げて説明したが、これらの実施形態は、例示として挙げたもので、発明の範囲の制限を意図するものではない。もちろん、明細書に記載された新規な装置、方法およびシステムは、様々な形態で実施され得るものであり、さらに、本発明の主旨から逸脱しない範囲において、種々の省略、置換、変更が可能である。請求項およびそれらの均等物の範囲は、発明の主旨の範囲内で実施形態あるいはその改良物をカバーすることを意図している。
【符号の説明】
【0046】
10…カウンターウェイト、 11A、11B…縦枠、12…下枠、13…おもり押さえ、15…ウェイト、16A、16B、16C、16D…コンペンロープ、17…ロープ固定ブラケット、18A、18B、18C、18D…ロープ止め部材、19…ロープ固定ブラケット、23…コンペンシーブ、24…ピット床面、10… 、13… 、20A、20B…ジャッキボルト、30A、30B…ボールねじ、35…操作盤、36A、36B…振れ止め、37A、37B…振れ止め
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7