特許第6673617号(P6673617)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6673617
(24)【登録日】2020年3月9日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】画像検知装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 3/00 20060101AFI20200316BHJP
   B66B 11/02 20060101ALI20200316BHJP
   B66B 13/22 20060101ALI20200316BHJP
【FI】
   B66B3/00 M
   B66B11/02 P
   B66B13/22 A
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-53071(P2019-53071)
(22)【出願日】2019年3月20日
【審査請求日】2019年3月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】文屋 雅弘
【審査官】 加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−254049(JP,A)
【文献】 特開2017−124938(JP,A)
【文献】 特開2011−173707(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00− 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラと、
エレベータのドアの戸開方向の設定に基づき、前記カメラによって撮像された画像を解析して、前記エレベータのドア近辺の利用者を検知する画像解析部と、
前記エレベータのドアの戸開方向を検出または前記エレベータのドアの戸開方向に関する情報を取得して、前記設定を切り替える切替部と、
を具備し、乗りかごの出入り口上部を覆う幕板に設置される画像検知装置。
【請求項2】
前記ドアの開閉を含む乗りかごの制御を実行するかご制御装置と接続するためのコネクタを具備し、
前記切替部は、前記コネクタによって外部へ導出される信号線の状態に基づき、前記エレベータのドアの戸開方向を検出する、
請求項1に記載の画像検知装置。
【請求項3】
前記コネクタには、前記ドアの戸開方向に応じてジャンパが設置されるハーネスが接続される請求項2に記載の画像検知装置。
【請求項4】
前記画像解析部は、前記ドアを被写体像として含む前記ドアの戸開時または戸閉時の少なくとも一方において撮像された時間的に連続する画像を解析して、前記ドアの戸開方向を検出する戸開方向検出部を具備し、
前記切替部は、前記戸開方向検出部の検出結果を前記エレベータのドアの戸開方向に関する情報として取得する、
請求項1に記載の画像検知装置。
【請求項5】
前記切替部は、前記ドアの開閉を含む乗りかごの制御を実行するかご制御装置に対して前記ドアの所定回数の開閉を指示するとともに、前記画像解析部に対して前記ドアの戸開方向の検出を指示して、前記戸開方向検出部の検出結果を取得する請求項4に記載の画像検知装置。
【請求項6】
前記戸開方向検出部は、前記時間的に連続する画像中の画素の輝度の時系列的な変化から前記ドアの戸開方向を検出し、
前記切替部は、前記ドアの開閉を含む乗りかごの制御を実行するかご制御装置に対して前記乗りかご内の消灯および消灯後の前記ドアの戸開または戸閉の少なくとも一方を指示するとともに、前記画像解析部に対して前記ドアの戸開方向の検出を指示して、前記戸開方向検出部の検出結果を取得する請求項4に記載の画像検知装置。
【請求項7】
前記設定は、前記ドアが中央部から開く中央開き用の第1設定、前記ドアが乗場から見て左端部から開く左開き用の第2設定および前記ドアが前記乗場から見て右端部から開く右開き用の第3設定の中の少なくとも2つを排他選択的に設定可能である請求項1から6のいずれか1項に記載の画像検知装置。
【請求項8】
前記カメラ、前記画像解析部および前記切替部が単一の筐体ユニットに搭載される一体型である請求項1から7のいずれか1項に記載の画像検知装置。
【請求項9】
前記ドアが中央部から開く中央開きの場合、前記ドアの間口の中心位置に対応する前記幕板上の領域に設置され、前記ドアが乗場から見て左端部から開く左開きの場合、前記ドアの間口の中心位置から左端寄りに対応する前記幕板上の領域に設置され、前記ドアが前記乗場から見て右端部から開く右開きの場合、前記ドアの間口の中心位置から右端寄りに対応する前記幕板上の領域に設置される請求項1から8のいずれか1項に記載の画像検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータのドアの戸開・戸閉制御に用いられる画像検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、エレベータの乗りかごのドア付近から乗場の方向に向けて撮影された時系列に連続する画像を解析することにより、乗車意思のある利用者の有無を検知し、ドアの開閉を制御するといった技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6092433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エレベータのドアには、中央開き、左開き、右開きなど、ドアの戸開方向が異なるいくつかの種類が存在する。ドアの戸開方向の設定、具体的には、画像検知ユニット(画像検知装置)に搭載される画像の解析アルゴリズムの切替えを間違えると、乗車意思のある利用者を適切に検知することができなくなり、過検知や未検知を発生させるおそれがある。
【0005】
また、ヒューマン・エラーを排除する方策として、中央開き用、左開き用、右開き用などと画像の解析アルゴリズムを固定化した画像検知ユニットをドアの戸開方向別に分けて用意するといった対策を講じた場合、画像検知ユニットの生産管理や在庫管理を種類ごとに行う必要が生じる。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、エレベータのドアの戸開方向の設定を自動的に行うことができる画像検知装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態によれば、画像検知装置は、カメラ、画像解析部、切替部を具備し、乗りかごの出入り口上部を覆う幕板に設置される。前記画像解析部は、エレベータのドアの戸開方向に関する設定に基づき、前記カメラによって撮像された画像を解析して、前記エレベータのドア近辺の利用者を検知する。前記切替部は、前記エレベータのドアの戸開方向を検知または前記エレベータのドアの戸開方向に関する情報を取得して、前記設定を切り替える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態の画像検知装置を適用するエレベータの乗車検知システムの構成を示す図。
図2】第1実施形態の画像検知装置において撮影される画像の一例を示す図。
図3】エレベータのドアの戸開方向の種類と、エレベータのドアの戸開方向と画像検知装置20の設置位置との関係性とを説明するための図。
図4】第1実施形態の画像検知装置において実行されるドアの戸開方向の設定の自動的な切り替えを説明するための図。
図5】第1実施形態の画像検知装置におけるエレベータのドアの戸開方向の設定に関する動作の流れを示すフローチャート。
図6】第2実施形態の画像検知装置の構成を示すブロック図。
図7】エレベータのドアの開閉の様子を戸開方向の種類別に示す図。
図8】エレベータのドアの戸開時における乗りかご内への外光の差し込み方を戸開方向の種類別に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
(第1実施形態)
まず、第1実施形態について説明する。
図1は、本実施形態の画像検知装置20を適用するエレベータの乗車検知システムの構成を示す図である。なお、ここでは、1台の乗りかご11を例にして説明するが、複数台の乗りかご11でも同様の構成である。
【0010】
画像検知装置20は、所定画素数を有する監視用のカメラ21と、カメラ21によって撮像された画像を解析して、乗場15から乗りかご11に乗車する利用者を検知する画像解析エンジン22と、画像解析エンジン22に搭載される、画像からエレベータのドア近辺の利用者、より詳しくは、乗車意思のある利用者を検知するための画像の解析アルゴリズムに関する設定であって、後述する、エレベータのドアの戸開方向の設定を切り替える切替部23とを有する。画像検知装置20は、カメラ21、画像解析エンジン22および切替部23が単一の筐体ユニットに搭載される一体型のユニットとして構成されている。このような構成を有する画像検知装置20は、カメラ21のレンズ部分を乗場15側に向けて、乗りかご11の出入口上部を覆う幕板12に設置される。
【0011】
カメラ21は、たとえば車載カメラなどの小型の監視用カメラであり、広角レンズを有し、1秒間に数コマ(たとえば30コマ/秒)の画像を連続撮影可能である。乗りかご11が各階に到着して戸開したときに、乗場15の状態を乗りかご11内のかごドア13付近の状態を含めて撮影する。
【0012】
なお、各階の乗場15において、乗りかご11の到着口には乗場ドア14が開閉自在に設置されている。乗場ドア14は、乗りかご11の到着時にかごドア13に係合して開閉動作する。動力源(ドアモータ)は乗りかご11側にあり、乗場ドア14はかごドア13に追従して開閉するだけである。以下の説明において、かごドア13を戸開しているときには乗場ドア14も戸開しており、かごドア13を戸閉しているときには乗場ドア14も戸閉しているものとする。
【0013】
かご制御装置40は、エレベータの全体的な制御を司るエレベータ制御装置との間で乗場呼びやかご呼びなどの各種信号を送受信する。「乗場呼び」とは、各階の乗場15に設置された乗場呼び釦の操作により登録される呼びの信号であり、登録階と行先方向の情報を含む。「かご呼び」とは、乗りかご11のかご室内に設けられた行先呼び釦の操作により登録される呼びの信号であり、行き先階の情報を含む。
【0014】
また、かご制御装置40は、戸開閉制御部41を備える。戸開閉制御部41は、乗りかご11が乗場15に到着したときのかごドア13の戸開閉を制御する。より詳しくは、戸開閉制御部41は、乗りかご11が乗場15に到着したときにかごドア13を戸開し、所定時間経過後に戸閉する。ただし、所定時間経過時に画像解析エンジン22によって乗車意思のある人物が検知された場合には、戸開閉制御部41は、かごドア13の戸閉動作を禁止して戸開状態を維持する。また、かごドア13が戸閉しているときに画像解析エンジン22によって乗車意思のある人物が検知された場合には、戸開閉制御部41は、かごドア13の戸閉動作を中断して再度戸開動作を行う。
【0015】
図2は、カメラ21によって撮像された画像の一例を示す図である。図2中のa1は検知エリアを表している。エレベータのドアには、中央開き、左開き、右開きなど、ドアの戸開方向が異なるいくつかの種類が存在する。図2は、エレベータのドアが中央開きである場合におけるカメラ21による撮像画像の一例を示している。画像検知装置20におけるエレベータのドアの戸開方向の設定が中央開きとして正しく行われている場合、画像解析エンジン22は、たとえば戸閉しているときに中央部に寄ってくる、乗車意思のある利用者を適切に検知することができる。換言すれば、画像検知装置20におけるエレベータのドアの戸開方向の設定が左開きや右開きなどとして間違って行われた場合、画像解析エンジン22は、たとえば戸閉しているときの乗車意思のある利用者は左端部や右端部に寄ってくることを前提としてしまっているなどによって、乗車意思のある利用者を適切に検知することができなくなり、過検知や未検知を発生させるおそれがある。
【0016】
また、エレベータのドアの戸開方向の誤設定を防ぐために、中央開き用、左開き用、右開き用といったように固体を分けると、つまり、エレベータのドアの戸開方向ごとに画像検知装置20を用意すると、画像検知装置20の生産管理や在庫管理を種類ごとに行う必要が生じる。
【0017】
そこで、本実施形態の画像検知装置20は、エレベータのドアの戸開方向の設定を自動的に行うことができる仕組みを備えたものであり、以下、この点について詳述する。
ここで、図3を参照して、エレベータのドアの戸開方向の種類と、エレベータのドアの戸開方向と画像検知装置20の設置位置との関係性とについて説明する。
【0018】
図3は、乗場15からドア(乗車ドア14)を見た場合を想定した図であり、図3中、(A)は中央開きのドア、(B)左開きのドア、(C)は右開きのドアである場合を想定している。なお、「左開き」とは、乗場15にいる利用者から見て左側からドアが開くことであり、「右開き」とは、乗場15にいる利用者から見て右側からドアが開くことである。そこで、ここでは、かごドア13や乗場ドア14について、乗場15にいる利用者から見て右側に位置する扉を右扉、乗場15にいる利用者から見て左側に位置する扉を左扉と称する。
【0019】
図3(A)に示されるように、中央開きのドアの場合、乗場ドア14(およびかごドア13)が戸閉しているときにできるだけ乗場15の状態を撮影できるように、画像検知装置20は、カメラ21がドアの間口の中央部に位置するように設置される。左開きのドアの場合も、乗場ドア14(およびかごドア13)が戸閉しているときにできるだけ乗場15の状態を撮影できるように、図3(B)に示されるように、画像検知装置20は、カメラ21がドアの間口の中央部から(乗場15から見て)左側に寄って位置するように設置される。また、右開きのドアの場合も、乗場ドア14(およびかごドア13)が戸閉しているときにできるだけ乗場15の状態を撮影できるように、図3(C)に示されるように、画像検知装置20は、カメラ21がドアの間口の中央部から(乗場15から見て)右側に寄って位置するように設置される。
【0020】
このように、第1に、エレベータのドアの戸開方向に応じて、画像検知装置20(カメラ21)の位置が変わるので、画像内において設定すべき検知エリアa1が変化する。また、第2に、エレベータのドアの戸開方向に応じて、戸閉しているときの乗車意思のある利用者の移動方向も変わるので、利用者の追跡方法が変化する。つまり、エレベータのドアの戸開方向に応じて、画像解析エンジン22に搭載される、画像から乗車意思のある利用者を検知するための画像の解析アルゴリズムを切り替える必要がある。本実施形態の画像検知装置20では、切替部23が、その切り替え(ドアの戸開方向の設定)を自動的に実行する。
【0021】
次に、図4を参照して、画像検知装置20の切替部23が実行するドアの戸開方向の設定の自動的な切り替えについて説明する。
図4に示すように、本実施形態の画像検知装置20は、かご制御装置40と接続するためのコネクタ24を有している。かご制御装置40からの信号線が束ねられて収容されるハーネス51をコネクタ24に接続することにより、画像検知装置20とかご制御装置40とを接続することができる。コネクタ24とハーネス51との接続面は、非点対称の形状を有しており、たとえばハーネス51を上下または左右反転させてコネクタ24に接続することはできないようになっている。
【0022】
また、ハーネス51には、エレベータのドアの戸開方向に応じて、ジャンパ52(52a、52b、52c)が設置されている。ジャンパ52は、画像検知装置20内からコネクタ24によって外部へ導出される信号線の状態を変化させる役割を担っている。たとえば、ON状態(プルアップ状態)からOFF状態へ移行させたり、逆に、OFF状態からON状態(プルアップ状態)へ移行させたりする。前者は、たとえばプルアップされている信号線をアースされている信号線と繋ぐことで実現でき、後者は、たとえばプルアップもアースもされていない信号線をプルアップされている信号線と繋ぐことで実現できる。
【0023】
中央開きの場合、中央開きを示す信号線の状態の変化を発生させるためのジャンパ52aが設置されたハーネス51(図4:(A))が画像検知装置20のコネクタ24に接続される。また、左開きの場合、左開きを示す信号線の状態の変化を発生させるためのジャンパ52bが設置されたハーネス51(図4:(B))が画像検知装置20のコネクタ24に接続される。そして、右開きの場合、右開きを示す信号線の状態の変化を発生させるためのジャンパ52cが設置されたハーネス51(図4:(C))が画像検知装置20のコネクタ24に接続される。
【0024】
切替部23は、コネクタ24にハーネス51が接続されたことに起因して発生する信号線の状態の変化に基づき、エレベータのドアの戸開方向を検知して設定する。より詳しくは、切替部23は、ドアの戸開方向の検知結果に基づき、画像解析エンジン22に搭載される画像の解析アルゴリズムを切り替える。
【0025】
図5は、本実施形態の画像検知装置20におけるエレベータのドアの戸開方向の設定に関する動作の流れを示すフローチャートである。
切替部23は、コネクタ24によって外部へ導出される信号線の状態に基づき、ドアの戸開方向を判定する(ステップS1)。判定結果が中央開きであった場合(ステップS2:YES)、切替部23は、画像解析エンジン22のアルゴリズムを中央開き用に設定する(ステップS3)。
【0026】
判定結果が左開きであった場合(ステップS2:NO、ステップS4:YES)、切替部23は、画像解析エンジン22のアルゴリズムを左開き用に設定する(ステップS5)。判定結果が右開きであった場合(ステップS4:NO)、切替部23は、画像解析エンジン22のアルゴリズムを右開き用に設定する(ステップS5)。
【0027】
本実施形態の画像検知装置20においては、ドアの戸開方向に応じてジャンパ52が設置されているハーネス51がコネクタ24に接続されることで、ドアの戸開方向が自動的に設定されるので、作業員などによるドアの戸開方向の誤設定といったヒューマン・エラーを発生させることがない。このため、ドアの戸開方向ごとに画像検知装置20を用意しなくとも、1種類の画像検知装置20だけで、このようなヒューマン・エラーを排除することができる。
【0028】
つまり、本実施形態の画像検知装置20は、エレベータのドアの戸開方向の設定を自動的に行うことができる。
なお、以上では、エレベータのドアの戸開方向に応じて、ジャンパ52(52a、52b、52c)をハーネス51に設置することで、画像検知装置20の切替部23が、エレベータのドアの戸開方向を検知して設定する例を示したが、エレベータのドアの戸開方向をハードウェア的に設定する手法は、ハーネス51へのジャンパ52の設置に限らず、様々な手法を適用することができる。たとえば、ハーネス51の形状をコネクタ24へ接続可能な範囲で可変として、ハーネス51の形状からエレベータのドアの戸開方向を検知して設定するようにしてもよい。
【0029】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。
本実施形態の画像検知装置20も、第1実施形態と同様、エレベータの乗車検知システムに適用される。ここでは、第1実施形態と同一の構成要素に対しては同一の符号を使用し、かつ、重複する説明を省略する。
【0030】
図6は、本実施形態における画像検知装置20の構成を示すブロック図である。
図6に示すように、本実施形態の画像検知装置20においては、画像解析エンジン22が、戸開方向検出部22Aを有している。戸開方向検出部22Aは、カメラ21によって時間的に連続して撮像される複数の画像中の画素の輝度の時系列的な変化からドアの戸開方向を検知するモジュールである。つまり、本実施形態の画像解析エンジン22は、画像から乗車意思のある利用者を検知する機能に加えて、(ドアが開閉する様子を連続的に撮影した)画像からドアの戸開方向を検知する機能を備える。
【0031】
本実施形態における切替部23は、たとえば画像検知装置20の筐体ユニット周壁に設けられる設定ボタンが操作された場合や、かご制御装置40から戸開方向の設定を指示する信号を受信した場合などに、かご制御装置40と協働して、画像解析エンジン22の戸開方向検出部22Aにドアの戸開方向を検知させ、その検知結果を受け取って、ドアの戸開方向の設定を実行する。
【0032】
たとえば、切替部23は、かご制御装置40に対して、ドアの開閉を所定回数繰り返すように指示を送る。これと並行して、切替部23は、画像解析エンジン22に対して、戸開方向検出部22Aによるドアの戸開方向の検知を指示する。この指示を受けた画像解析エンジン22の戸開方向検出部22Aは、画像中の輝度の変化から、エレベータのドアの動きを検知する。具体的には、検知した動きが中央開きのドアに対応するものなのか、左開きのドアに対応するものなのか、右開きのドアに対応するものなのかを検知する。
【0033】
あるいは、切替部23は、かご制御装置40に対して、ドアの戸閉、乗りかご11内の照明の消灯、ドアの戸開・戸閉の順に指示を行うようにしてもよい。一方、画像解析エンジン22の戸開方向検出部22Aは、エレベータのドアの動きを検知するのではなく、戸開時(戸閉状態から戸開状態への移行時)における外光の差し込み方や、戸閉時(戸開状態から戸閉状態への移行時)における外光による影のでき方または戸開時における影の形状の変化の仕方を検知するようにしてもよい。具体的には、戸開方向検出部22Aは、光の差し込み方や外光による影のでき方または影の形状の変化の仕方が、中央開きのドアに対応するものなのか、左開きのドアに対応するものなのか、右開きのドアに対応するものなのかを検知するようにしてもよい。
【0034】
図7は、エレベータのドア(かごドア13、乗場ドア14)の開閉の様子を戸開方向の種類別に示す図である。
図7は、エレベータのドア(かごドア13、乗場ドア14)を上方から見た場合を想定した図であり、図7中、(A)は中央開きのドア、(B)左開きのドア、(C)は右開きのドアである場合を想定している。また、いうまでもないが、かごドア13(左扉13a、右扉13b)と乗場ドア14(左扉14a、右扉14b)との境界線からかごドア13の方向が乗りかご11側であり、境界線から乗場ドア14の方向が乗場15側である。ここでも、右方向、左方向、右側、左側、右端、左端などについては、乗場15側から見た左右を示すものとする。
【0035】
図7(A)に示されるように、中央開きのドアの場合、戸閉状態から戸開状態への移行時において、かごドア13の左扉13aと乗場ドア14の左扉14aとが左方向へ移動して左側の戸袋に収容され、かごドア13の右扉13bと乗場ドア14の右扉14bとが右方向へ移動して右側の戸袋に収容される。また、戸開状態から戸閉状態への移行時においては、かごドア13の左扉13aと乗場ドア14の左扉14aとが左側の戸袋から出現して右端が中央部に達するまで右方向へ移動し、かごドア13の右扉13bと乗場ドア14の右扉14bとが右側の戸袋から出現して左端が中央部に達するまで左方向へ移動する。
【0036】
また、図7(B)に示されるように、左開きのドアの場合、戸閉状態から戸開状態への移行時において、かごドア13の左扉13aおよび右扉13bと、乗場ドア14の左扉14aおよび右扉14bとは、いずれもが、右方向へ移動して右側の戸袋に収容される。また、戸開状態から戸閉状態への移行時においては、いずれもが、右側の戸袋から出現し、かごドア13の左扉13aと乗場ドア14の左扉14aとは左端が左端部に達するまで左方向へ移動し、かごドア13の右扉13bと乗場ドア14の右扉14bとは左端が中央部に達するまで左方向へ移動する。
【0037】
また、図7(C)に示されるように、右開きのドアの場合、戸閉状態から戸開状態への移行時において、かごドア13の左扉13aおよび右扉13bと、乗場ドア14の左扉14aおよび右扉14bとは、いずれもが、左方向へ移動して左側の戸袋に収容される。また、戸開状態から戸閉状態への移行時においては、いずれもが、左側の戸袋から出現し、かごドア13の左扉13aと乗場ドア14の左扉14aとは右端が中央部に達するまで右方向へ移動し、かごドア13の右扉13bと乗場ドア14の右扉14bとは右端が右端部に達するまで右方向へ移動する。
【0038】
このように、中央開きのドアと、左開きのドアと、右開きのドアとでは、エレベータのドアの戸開・戸閉動作が異なるので、カメラ21によって撮像される、かごドア13を被写体像として含む時間的に連続する画像を解析することで、画像解析エンジン22の戸開方向検出部22Aは、ドアの戸開方向を検知することができる。たとえば、ドアの戸開・戸閉時、右方向へ移動する物体と、左方向へ移動する物体との双方が検知された場合、中央開きのドアと判定し、右方向または左方向の一方へ移動する物体のみが検知された場合には、その方向に応じて、左開きのドアまたは右開きのドアと判定することができる。
【0039】
また、図8は、エレベータのドア(かごドア13、乗場ドア14)の戸開時における乗りかご内への外光の差し込み方を戸開方向の種類別に示す図である。
図8は、乗りかご11内を上方から見た場合を想定した図であり、図6中、(A)は中央開きのドア、(B)左開きのドア、(C)は右開きのドアである場合を想定している。さらに、ここでは、ドアが戸開する時、乗りかご11内の照明は消灯されており、乗場15においては、乗場ドア14に向けて一定値以上の照度の光が照射されていることを想定している。
【0040】
図8(A)に示されるように、中央開きのドアの場合、中央部から光が差し込み(b1−1)、その範囲が左右へ広がっていく(b2−1、b3−1)。また、図8(B)に示されるように、左開きのドアの場合、乗場15側から見てドアの間口の左端部から光が差し込み(b1−2)、その範囲が右へと広がっていく(b2−2、b3−2)。さらに、図8(C)に示されるように、右開きのドアの場合、乗場15側から見てドアの間口の右端部から光が差し込み(b1−3)、その範囲が左へと広がっていく(b2−3、b3−3)。
【0041】
このように、中央開きのドアと、左開きのドアと、右開きのドアとでは、エレベータのドアの戸開時における乗りかご内への外光の差し込み方が異なるので、カメラ21によって撮像される、かごドア13を被写体像として含む時間的に連続する画像を解析することで、画像解析エンジン22の戸開方向検出部22Aは、ドアの戸開方向を検知することができる。たとえば、ドアの戸開時、輝度が高まる変化が、ドアの間口の中央部に相当する画像内の画素から左右の画素へと広がっている場合、中央開きのドアと判定し、乗場15側から見てドアの間口の左端部に相当する画像内の画素から右側の画素へと広がっている場合、左開きのドアと判定し、乗場15側から見てドアの間口の右端部に相当する画像内の画素から左側の画素へと広がっている場合、右開きのドアと判定することができる。
【0042】
また、戸開方向検出部22Aは、たとえば、エレベータのドアの戸閉時における外光による影のでき方や、エレベータのドアの戸開時における影の形状の変化の仕方を検知するようにしてもよい。たとえば、中央開きのドアの場合、前者においては、両端部から影ができていくことが検知され、後者においては、中央部から影の形状が変化していくことが検知されることになる。
【0043】
なお、本実施形態の画像検知装置20におけるエレベータのドアの戸開方向の設定に関する動作の流れは、第1実施形態において示した図5のステップS1の処理が切替部23と画像解析エンジン22の戸開方向検出部22Aとが協働して行われること以外は同様であるので、ここでは、その説明は省略する。
【0044】
本実施形態の画像検知装置20においては、カメラ21によって撮像された画像が画像解析エンジン22の戸開方向検出部22Aによって解析されて、ドアの戸開方向が自動的に設定されるので、作業員などによるドアの戸開方向の誤設定といったヒューマン・エラーを発生させることがない。このため、ドアの戸開方向ごとに画像検知装置20を用意しなくとも、1種類の画像検知装置20だけで、このようなヒューマン・エラーを排除することができる。
【0045】
つまり、本実施形態の画像検知装置20も、エレベータのドアの戸開方向の設定を自動的に行うことができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0046】
11…乗りかご、12…幕板、13…かごドア、13a…かごドアの左扉、13b…かごドアの右扉、14…乗場ドア、14a…乗場ドアの左扉、14b…乗場ドアの右扉、15…乗場、20…画像検知装置、21…カメラ、22…画像解析エンジン、22A…戸開方向検出部、23…切替部、24…コネクタ、40…かご制御装置、41…戸開閉制御部、51…ハーネス、52(52a、52b、52c)…ジャンパ。
【要約】
【課題】エレベータのドアの戸開方向の設定を自動的に行うことができる画像検知装置を提供する。
【解決手段】実施形態によれば、画像検知装置は、カメラ、画像解析部、切替部を具備し、乗りかごの出入り口上部を覆う幕板に設置される。前記画像解析部は、エレベータのドアの戸開方向に関する設定に基づき、前記カメラによって撮像された画像を解析して、前記エレベータのドア近辺の利用者を検知する。前記切替部は、前記エレベータのドアの戸開方向を検知または前記エレベータのドアの戸開方向に関する情報を取得して、前記設定を切り替える。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8