特許第6673621号(P6673621)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6673621粘着剤組成物及び光学部材表面保護フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6673621
(24)【登録日】2020年3月9日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】粘着剤組成物及び光学部材表面保護フィルム
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/00 20060101AFI20200316BHJP
   C09J 11/02 20060101ALI20200316BHJP
   C09J 7/20 20180101ALI20200316BHJP
   C09J 183/00 20060101ALI20200316BHJP
【FI】
   C09J133/00
   C09J11/02
   C09J7/20
   C09J183/00
【請求項の数】6
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2016-7700(P2016-7700)
(22)【出願日】2016年1月19日
(65)【公開番号】特開2017-128636(P2017-128636A)
(43)【公開日】2017年7月27日
【審査請求日】2018年11月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004592
【氏名又は名称】日本カーバイド工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鴨井 彬
(72)【発明者】
【氏名】堀 崇晴
(72)【発明者】
【氏名】中野 宏人
【審査官】 井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−125625(JP,A)
【文献】 特開2015−021114(JP,A)
【文献】 特開2010−001497(JP,A)
【文献】 特開2013−100386(JP,A)
【文献】 特開2000−109771(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシ基を有し、酸価0mgKOH/g以上16mgKOH/g未満である(メタ)アクリル系ポリマーと、
酸価0.1mgKOH/g以上40mgKOH/g以下であるアルキレンオキシド鎖含有(メタ)アクリル系オリゴマーと、
反応性基を有するポリエーテル変性シリコーンと、
架橋剤と、
イオン性化合物と、
を含む粘着剤組成物。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、前記アルキレンオキシド鎖含有(メタ)アクリル系オリゴマーと前記ポリエーテル変性シリコーンを合計で0.1〜7.0質量部含む請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル系ポリマーの酸価が、2mgKOH/g以上12mgKOH/g以下である請求項1又は請求項2に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
前記ポリエーテル変性シリコーンの反応性基がヒドロキシ基であり、前記架橋剤がポリイソシアネート化合物である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
光学部材表面保護フィルムに用いる、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の粘着剤組成物。
【請求項6】
基材と、
前記基材の上に設けられ、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の粘着剤組成物に由来する粘着剤層と、
を備える光学部材表面保護フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物及び光学部材表面保護フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、薄型軽量であること、消費電力が少なくて済むことなどから、近年、各種の情報関連機器、例えばワ−ドプロセッサ、ノ−ト型パソコンの画面表示装置として利用されている。このような液晶表示装置には、本体である液晶を内包したガラスセル(液晶セル)と共に偏光板、位相差板などの光学部材が用いられている。
【0003】
これらの光学部材は、通常、打抜加工、検査、輸送、液晶表示装置の組立などの各工程を経る間にその表面が汚染されたり損傷したりしないように、更に表面保護フィルムで粘着被覆されて長尺の光学部材積層体として形成される。そして、該表面保護フィルムは、表面保護が不要となった段階で光学部材から剥離除去される。
【0004】
このような表面保護フィルムは、光学部材の表面保護が必要とされる間、該部材の表面上でずれを生じたり表面から脱落したりすることがない程度にその表面に粘着していると共に、液晶の性能検査など各種の検査に支障を来さないように、高度に透明であること及びフクレ、トンネリング、ハガレなど粘着剤層内及び該粘着剤層と光学部材との界面に欠陥がないことが要求される。光学部材からの該フィルムの剥離に際しては、剥離に伴う歪みによって光学部材及び液晶セルを損傷することがないように、また液晶セルから光学部材が剥離してしまうなどの不都合が生じないように、容易に剥離できることが求められる。更に表面保護フィルムの剥離に際しては、光学部材上に表面保護フィルム由来の残渣が生じないこと、すなわち、被着体に対する汚染性が低いこと(以下、単に「低汚染性」ともいう)が求められる。
【0005】
一方、表面保護フィルムを光学部材から剥離する際に静電気が発生すると、光学フィルム表面にごみ又はホコリが吸着され製品に不都合が生じる。また、表面保護フィルムを剥離する際に、大きな静電気が発生すると表示部材の回路が破壊されてしまうおそれもある。そこで表面保護フィルムには、剥離帯電による静電気の発生を抑制し、帯電防止性が良好であることが求められる。
【0006】
上記に関連して、アクリル系ポリマー、アルカリ金属塩、及び末端にヒドロキシ基を有するポリオキシエチレン基を有するジメチルポリシロキサン化合物を含む粘着剤が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013−163745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、近年、要求される汚染性のレベルが向上し、例えば、特許文献1に記載の粘着剤では、帯電防止性と被着体に対する低汚染性とをより高いレベルで両立することが難しい場合があった。
本発明は、帯電防止性及び被着体に対する低汚染性を高いレベルで両立できる粘着剤組成物及びこれを用いてなる光学部材表面保護フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
<1> ヒドロキシ基を有し、酸価0mgKOH/g以上16mgKOH/g未満である(メタ)アクリル系ポリマーと、酸価0.1mgKOH/g以上40mgKOH/g以下であるアルキレンオキシド鎖含有(メタ)アクリル系オリゴマーと、反応性基を有するポリエーテル変性シリコーンと、架橋剤と、イオン性化合物と、を含む粘着剤組成物。
【0010】
<2> 前記(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、前記アルキレンオキシド鎖含有(メタ)アクリル系オリゴマーと前記ポリエーテル変性シリコーンを合計で0.1〜7.0質量部含む<1>に記載の粘着剤組成物。
【0011】
<3> 前記(メタ)アクリル系ポリマーの酸価が、2mgKOH/g以上12mgKOH/g以下である<1>又は<2>に記載の粘着剤組成物。
【0012】
<4> 前記ポリエーテル変性シリコーンの反応性基がヒドロキシ基であり、前記架橋剤がポリイソシアネート化合物である<1>〜<3>のいずれか1つに記載の粘着剤組成物。
【0013】
<5> 光学部材表面保護フィルムに用いる、<1>〜<4>のいずれか1つに記載の粘着剤組成物。
【0014】
<6> 基材と、前記基材の上に設けられ、<1>〜<4>のいずれか1つに記載の粘着剤組成物に由来する粘着剤層と、を備える光学部材表面保護フィルム。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、帯電防止性及び被着体に対する低汚染性を高いレベルで両立できる粘着剤組成物及びこれを用いてなる光学部材表面保護フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。また本明細書において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
更に「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートの両方を包含する用語であり、「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルの両方を包含する用語である。
【0017】
<粘着剤組成物>
本発明の粘着剤組成物は、ヒドロキシ基を有し、酸価0mgKOH/g以上16mgKOH/g未満である(メタ)アクリル系ポリマー(以下、「特定(メタ)アクリル系ポリマー」ともいう)と、酸価0.1mgKOH/g以上40mgKOH/g以下であるアルキレンオキシド鎖含有(メタ)アクリル系オリゴマー(以下、「特定(メタ)アクリル系オリゴマー」ともいう)と、反応性基を有するポリエーテル変性シリコーン(以下、「特定ポリシロキサン」ともいう)と、架橋剤と、イオン性化合物と、を含有する。粘着剤組成物は必要に応じてその他の成分を更に含有していてもよい。
【0018】
粘着剤組成物が、ヒドロキシ基を有する酸価16mgKOH/g未満の(メタ)アクリル系ポリマーと、特定範囲の酸価を有するアルキレンオキシド鎖含有(メタ)アクリル系オリゴマーと、反応性基を有するポリエーテル変性シリコーンと、架橋剤と、イオン性化合物とを含有することで、帯電防止性及び被着体に対する低汚染性の両方に優れ、更に優れた粘着性も有する。かかる粘着剤組成物は、光学部材表面保護フィルムに好ましく適用することができる。
【0019】
これは例えば、以下のように考えることができる。
粘着剤組成物が、特定範囲の酸価を有する特定(メタ)アクリル系オリゴマーと反応性基を有する特定ポリシロキサンを含むことで、被着体に対する汚染の原因となりうる(メタ)アクリル系オリゴマーと特定ポリシロキサンが架橋剤と反応し、架橋されていないフリーの(メタ)アクリル系オリゴマーと特定ポリシロキサンとが減少する。更に、特定(メタ)アクリル系ポリマーよりも分子量が小さい特定(メタ)アクリル系オリゴマーが特定範囲の酸価を有することで、その酸により特定ポリシロキサンと架橋剤との反応が促進され、より効果的にフリーの特定ポリシロキサンが減少させることができる。その結果、粘着剤組成物から作製された光学部材表面保護フィルムは、架橋されていないフリーの特定(メタ)アクリル系オリゴマーや特定ポリシロキサンに起因する汚染が抑えられる。
また、特定(メタ)アクリル系ポリマーの酸価が16mgKOH/g未満と小さく、特定(メタ)アクリル系オリゴマーと特定ポリシロキサンとがポリアルキレンオキシ基を有することにより、イオン性化合物に起因するイオンが動きやすく、剥離帯電による静電気の発生を効果的に抑えられる。
【0020】
[(メタ)アクリル系ポリマー]
本発明の粘着剤組成物は、ヒドロキシ基を有し、酸価0mgKOH/g以上16mgKOH/g未満である特定(メタ)アクリル系ポリマーの少なくとも1種を含有する。粘着剤組成物は必要に応じて特定(メタ)アクリル系ポリマーとは異なる(メタ)アクリル系ポリマーを更に含んでいてもよい。
ここで(メタ)アクリル系ポリマーとは、ポリマーを構成する全モノマー成分(ポリマーを構成するモノマーを単にポリマー成分と記載することがある)の50質量%以上、好ましくは90質量%以上が(メタ)アクリル系モノマーであるポリマーをいう。
【0021】
特定(メタ)アクリル系ポリマーの酸価は、剥離帯電による静電気の発生を抑制し、帯電防止性を向上させる観点から、0mgKOH/g以上16mgKOH/g未満である。(メタ)アクリル系ポリマーの酸価が16mgKOH/g以上と高くなると、剥離帯電による静電気の発生を抑制できず、帯電防止性が悪化する。
【0022】
特定(メタ)アクリル系ポリマーの酸価は、12mgKOH/g以下が好ましく、7mgKOH/g以下がより好ましい。特定(メタ)アクリル系ポリマーの酸価が12mgKOH/g以下であれば、塗工液の経時における粘度上昇を抑制でき充分なポットライフが得られ、更に高温エージング処理などの加熱加圧処理を経た後の粘着力上昇を抑制することができる。
特定(メタ)アクリル系ポリマーの酸価は、2mgKOH/g以上が好ましく、4mgKOH/g以上がより好ましい。特定(メタ)アクリル系ポリマーの酸価が2mgKOH/g以上であれば、架橋触媒を使用せずに、硬化性に優れ、養生時間が短く、初期硬化速度が速い粘着剤組成物を得ることができる。粘着剤組成物の初期硬化速度が速いと、光学部材表面保護シートの製造において、シートをロール状に巻きとる際に巻き痕が残り難く、作業性に優れる。更に、特定(メタ)アクリル系ポリマーの酸価が2以上であれば、重合中にカルボキシ基やヒドロキシ基等の架橋剤との反応性基を有しない(メタ)アクリル系ポリマーがほとんど生成されないため、これを含んで作製された光学部材表面保護フィルムは(メタ)アクリル系ポリマーが被着体に残りにくく、被着体に対する低汚染性に更に優れる。
【0023】
(メタ)アクリル系ポリマー又は後述する(メタ)アクリル系オリゴマーの酸価は、それぞれ以下の計算式によって求められる。
【0024】
酸価(mgKOH/g)={(A/100)÷B}×56.1×1000×C
A=(メタ)アクリル系ポリマー又は(メタ)アクリル系オリゴマーに使用される全モノマー中の、カルボキシ基を有するモノマーの含有率(質量%)
B=(メタ)アクリル系ポリマー又は(メタ)アクリル系オリゴマーに使用されるカルボキシ基を有するモノマーの分子量
C=カルボキシ基を有するモノマー1分子中に含まれるカルボキシ基の数
なお、56.1はKOHの分子量である。
また、カルボキシ基を有するモノマーが複数種ある場合は、それぞれのモノマーについて上記式より求めた値を合算して酸価を求めることができる。
【0025】
特定(メタ)アクリル系ポリマーは、ヒドロキシ基を有するモノマーに由来する構成単位の少なくとも1種を含む。ヒドロキシ基を有するモノマーは、少なくとも1つのヒドロキシ基とエチレン性不飽和結合基とを有するモノマーであれば特に制限されず、通常用いられるモノマーから適宜選択して用いることができる。
【0026】
ヒドロキシ基を有するモノマーとして具体的には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−メチル−3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,1−ジメチル−3−ブチル(メタ)アクリレート、1,3−ジメチル−3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2,2,4−トリメチル−3−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、2−エチル−3−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類;N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類;アリルアルコール、メタリルアルコール等の不飽和アルコール;などを挙げることができる。
【0027】
中でも、その他のモノマーとの相溶性及び共重合性が良好である点、並びに架橋剤との架橋反応が良好である点から、1つのヒドロキシ基と炭素数2〜6のアルキル基とを有する(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート又は4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0028】
特定(メタ)アクリル系ポリマーにおける、ヒドロキシ基を有するモノマーに由来する構成単位の含有率としては、特定(メタ)アクリル系ポリマーの総質量中に、0.1質量%以上10.0質量%以下であることが好ましく、2.0質量%以上8.0質量%以下であることがより好ましく、2.0質量%以上5.0質量%以下であることが更に好ましい。ヒドロキシ基を有するモノマーに由来する構成単位の含有率が前記下限値以上であることで被着体に対する汚染の発生をより効果的に抑制できる傾向がある。また前記上限値以下であることで、なじみ性(濡れ性)がより良好になる傾向がある。
【0029】
特定(メタ)アクリル系ポリマーは、ヒドロキシ基を有するモノマーに由来する構成単位に加えて、アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位の少なくとも1種を更に含むことが好ましい。
アルキル(メタ)アクリレートにおけるアルキル基は直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。アルキル(メタ)アクリレートにおけるアルキル基の炭素数は、粘着性の観点から、1〜18が好ましく、2〜10がより好ましい。
【0030】
アルキル(メタ)アクリレートとして具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜18の直鎖状又は分枝鎖状のアルキルを有するアルキル(メタ)アクリレート及びこれらの誘導体を挙げることができる。
【0031】
特定(メタ)アクリル系ポリマーは、アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を1種単独でも2種以上含んでいてもよく、2種以上含んでいることが好ましい。(メタ)アクリル系ポリマーがアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を2種含む場合、一方が炭素数1〜5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位であって、他方は炭素数6〜18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位であることが好ましく、一方が炭素数2〜5の直鎖状のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位であって、他方は炭素数6〜10の分岐鎖状のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位であることがより好ましい。
【0032】
中でも、アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位としては、ブチルアクリレート及び2−エチルヘキシルアクリレートの少なくとも一方を含むことが好ましく、両方を含有することがより好ましい。
【0033】
特定(メタ)アクリル系ポリマーがアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含む場合、その含有率は、特定(メタ)アクリル系ポリマーの総質量中に、60質量%以上99.9質量%以下であることが好ましく、72質量%以上99.5質量%以下であることがより好ましく、85質量%以上99質量%以下であることが更に好ましい。アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位の含有率が前記下限値以上であると、なじみ性(濡れ性)がより良好になる傾向がある。また、アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位の含有率が前記上限値以下であると、高速剥離時の粘着力が大きくなりすぎず、高速剥離時の作業性がより優れる傾向がある。
【0034】
特定(メタ)アクリル系ポリマーは、ヒドロキシ基を有するモノマーに由来する構成単位とアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位に加えて、カルボキシ基を有するモノマーに由来する構成単位の少なくとも1種を更に含むことが好ましい。カルボキシ基を有するモノマーは、少なくとも1つのカルボキシ基とエチレン性不飽和結合基とを有するモノマーであれば特に制限されず、通常用いられるモノマーから適宜選択して用いることができる。
【0035】
カルボキシ基を有するモノマーとして具体的には、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、桂皮酸、コハク酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、マレイン酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フマル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1,2−ジカルボキシシクロヘキサンモノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ダイマー、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0036】
中でも、その他のモノマーとの相溶性及び共重合性が良好である点から、(メタ)アクリル酸、カルボキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、(メタ)アクリル酸、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0037】
特定(メタ)アクリル系ポリマーがカルボキシ基を有するモノマーに由来する構成単位を含む場合、その含有率は、(メタ)アクリル系ポリマーの酸価が16mgKOH/g未満である限り、特に制限されない。
【0038】
特定(メタ)アクリル系ポリマーは、必要に応じて、ヒドロキシ基を有するモノマーに由来する構成単位、アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位及びカルボキシ基を有するモノマーに由来する構成単位以外のその他の構成単位を更に含んでいても良い。
【0039】
その他の構成単位を形成するモノマーとして具体例には、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の環状基を有する(メタ)アクリレート;飽和脂肪酸ビニルエステル、例えば、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、「バーサチック酸ビニル」(商品名、ネオデカン酸ビニル)等の脂肪族ビニルモノマー;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニルモノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノビニルモノマー;ジメチルマレート、ジ−n−ブチルマレート、ジ−2−エチルヘキシルマレート、ジ−n−オクチルマレート、ジメチルフマレート、ジ−n−ブチルフマレート、ジ−2−エチルヘキシルフマレート、ジ−n−オクチルフマレート等のマレイン酸もしくはフマル酸のジエステルモノマー;などを挙げることができる。
【0040】
更にその他の構成単位を形成するモノマーとしては、分子内に1個のエチレン性不飽和結合基の他に少なくとも1個の官能基を有するモノマーであって、ヒドロキシ基を有する構成単位を形成するモノマー及びカルボキシ基を有する構成単位を形成するモノマーとは異なるモノマー(以下、「官能性モノマー」ともいう)を挙げることができる。官能性モノマーとしては、アミド基、置換もしくは無置換のアミド基、置換もしくは無置換のアミノ基、アルコキシ基、エポキシ基、メルカプト基、珪素含有基等の官能基を有するモノマーを挙げることができる。また、分子内にエチレン性不飽和結合基を2個以上有するモノマーも使用できる。
【0041】
特定(メタ)アクリル系ポリマーがその他の構成単位を含む場合、その含有率は、特定(メタ)アクリル系ポリマーの総質量中に、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが更に好ましい。その他の構成単位の含有率が前記上限値以下であると、低速剥離時の粘着力が十分大きく、かつ高速剥離時の粘着力が大きくならない傾向にあるので、低速剥離と高速剥離の粘着力バランスをより良好にできる。
【0042】
特定(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は特に制限されない。特定(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、20万以上100万以下が好ましく、30万以上80万以下がより好ましい。特定(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)が前記下限値以上あれば、被着体に対する汚染の発生をより効果的に抑制できる傾向がある。また、前記上限値以下であれば、なじみ性(濡れ性)がより良好になる傾向がある。
【0043】
また特定(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比である分散度(Mw/Mn)は、20以下が好ましく、15以下がより好ましく、3以上10以下が更に好ましい。分散度(Mw/Mn)の値が該上限値以下であれば、被着体に対する汚染の発生をより効果的に抑制できる傾向がある。
【0044】
なお、(メタ)アクリル系ポリマー又は後述する(メタ)アクリル系オリゴマーの重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、下記の方法により測定された値である。
【0045】
平均分子量(Mw及びMn)の測定方法:
下記(1)〜(3)に従って測定する。
(1)(メタ)アクリル系ポリマー又は(メタ)アクリル系オリゴマーの溶液を剥離紙に塗布し、100℃で2分間乾燥し、フィルム状の(メタ)アクリル系ポリマー又は(メタ)アクリル系オリゴマーを得る。
(2)上記(1)で得られたフィルム状の(メタ)アクリル系ポリマー又は(メタ)アクリル系オリゴマーとテトラヒドロフランとを用いて、固形分濃度が0.2質量%である試料溶液を得る。
(3)下記条件にて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、標準ポリスチレン換算値として、(メタ)アクリル系ポリマー又は(メタ)アクリル系オリゴマーの重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を測定する。
【0046】
(条件)
GPC :HLC−8220 GPC〔東ソー(株)製〕
カラム :TSK−GEL GMHXL 4本使用
移動相溶媒:テトラヒドロフラン
流速 :0.6mL/分
カラム温度:40℃
【0047】
本発明の粘着剤組成物における特定(メタ)アクリル系ポリマーの含有率は、目的等に応じて適宜選択することができる。特定(メタ)アクリル系ポリマーの含有率は、粘着剤組成物の固形分総質量中に、80質量%以上99質量%以下であることが好ましく、85質量%以上99質量%以下であることがより好ましく、90質量%以上98質量%以下であることが更に好ましい。
なお、固形分総質量とは粘着剤組成物から、溶剤等の揮発性成分を除いた残渣の総質量を意味する。
【0048】
[(メタ)アクリル系オリゴマー]
本発明の粘着剤組成物は、ポリアルキレンオキシ基を有する構成単位を含み、酸価が0.1mgKOH/g以上40mgKOH/g以下である特定(メタ)アクリル系オリゴマーの少なくとも1種を更に含有する。粘着剤組成物が特定(メタ)アクリル系ポリマーに加えて、特定(メタ)アクリル系オリゴマーを含有することで、より優れた帯電防止性と被着体に対する低汚染性を達成することができる。
【0049】
特定(メタ)アクリル系オリゴマーは、ポリアルキレンオキシ基を有する構成単位を含み、分子量が特定(メタ)アクリル系ポリマーよりも小さいため、粘着剤組成物中で比較的容易に移動することができると考えられる。これにより、粘着剤組成物の表面抵抗値がより効果的に低下し、より優れた帯電防止性を達成することができると考えられる。
また、特定(メタ)アクリル系オリゴマーは、酸価を有するため、後述する架橋剤と反応することができると考えられる。また、特定(メタ)アクリル系オリゴマーは、特定(メタ)アクリル系ポリマーよりも分子量が小さく且つ酸価を有するため、後述する特定ポリシロキサンと架橋剤との反応を促進できると考えられる。これらにより、被着体に対する低汚染性をより向上できると考えられる。
【0050】
特定(メタ)アクリル系オリゴマーの酸価は、被着体に対する汚染の発生を抑止し、帯電防止性を向上させる観点から、酸価が0.1mgKOH/g以上40mgKOH/g以下である。
特定(メタ)アクリル系オリゴマーの酸価が40mgKOH/gを超えて高くなると、粘着剤層が経時変化により硬くなり、帯電防止性が経時で低下する。また、特定(メタ)アクリル系オリゴマーの酸価が0.1mgKOH/g未満であると、特定(メタ)アクリル系オリゴマーと架橋剤との反応、又は特定ポリシロキサンと架橋剤との反応促進効果が十分ではなく、被着体に対する汚染の発生を抑制できずに、被着体に対する低汚染性が悪化する。
【0051】
特定(メタ)アクリル系オリゴマーの酸価は、被着体に対する低汚染性とシート経時の帯電防止性の観点から、1mgKOH/g以上20mgKOH/g以下が好ましく、2mgKOH/g以上10mgKOH/g以下がより好ましい。
【0052】
特定(メタ)アクリル系オリゴマーは、ポリアルキレンオキシ基を有する構成単位の少なくとも1種を含む。(メタ)アクリル系オリゴマーにおけるポリアルキレンオキシ基としては、炭素数2〜4のアルキレンオキシ基を構成単位として含むものが好ましく、炭素数2〜3のアルキレンオキシ基を構成単位として含むものがより好ましい。
【0053】
ポリアルキレンオキシ基におけるアルキレンオキシ基の含有数は、目的等に応じて適宜選択することができる。アルキレンオキシ基の含有数は、帯電防止性の観点から、20以上が好ましく、20〜100がより好ましく、20〜50が更に好ましい。アルキレンオキシ基の含有数が20以上であることで、後述するイオン性化合物との組み合わせによって、より顕著な帯電防止性を発揮することができる。なお、アルキレンオキシ基の含有数は、(メタ)アクリル系オリゴマーにアルキレンオキシ基を有する構成単位が2種以上含まれる場合、含有数の平均値である有理数となる。
【0054】
ポリアルキレンオキシ基の末端部は、ヒドロキシ基であっても、アルコキシ基であってもよく、帯電防止性の観点から、アルコキシ基であることが好ましい。ポリアルキレンオキシ基の末端部がアルコキシ基の場合、アルコキシ基の炭素数は1〜10が好ましく、1〜5がより好ましい。
【0055】
ポリアルキレンオキシ基を有する構成単位は、ポリアルキレンオキシ基及びエチレン性不飽和結合基を有するモノマーに由来するものであっても、ポリアルキレンオキシ基を有さない構成単位に高分子反応でポリアルキレンオキシ基を導入したものであってもよい。生産性の観点から、ポリアルキレンオキシ基を有する構成単位は、ポリアルキレンオキシ基及びエチレン性不飽和結合基を有するモノマーに由来するものが好ましい。
【0056】
ポリアルキレンオキシ基及びエチレン性不飽和結合基を有するモノマーとして具体的には、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレンオキシ(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレンオキシ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレンオキシ(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレンオキシ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。中でもメトキシポリエチレンオキシ(メタ)アクリレート及びメトキシポリプロピレンオキシ(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、エチレンオキシ基の含有数が20以上であるメトキシポリエチレンオキシ(メタ)アクリレート及びプロピレンオキシ基の含有数が20以上であるメトキシポリプロピレンオキシ(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
【0057】
特定(メタ)アクリル系オリゴマーは、ポリアルキレンオキシ基を有する構成単位を1種単独でも2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。
【0058】
特定(メタ)アクリル系オリゴマーにおけるポリアルキレンオキシ基を有する構成単位の含有率は、帯電防止性の観点から、特定(メタ)アクリル系オリゴマーの総質量中に、1質量%以上50質量%以下であることが好ましく、1質量%以上30質量%以下であることがより好ましく、5質量%以上20質量%以下であることが更に好ましい。
【0059】
特定(メタ)アクリル系オリゴマーは、ポリアルキレンオキシ基を有する構成単位に加えて、カルボキシ基を有するモノマーに由来する構成単位の少なくとも1種を含む。カルボキシ基を有するモノマーに由来する構成単位としては、特定(メタ)アルキルポリマーにおけるカルボキシ基を有するモノマーに由来する構成単位と同様のものをあげることができ、好ましい態様も同様である。
【0060】
特定(メタ)アクリル系オリゴマーにおけるカルボキシ基を有するモノマーに由来する構成単位の含有率は、特定(メタ)アクリル系オリゴマーの酸価が0.1mgKOH/g以上40mgKOH/g以下である限り、特に制限されない。
【0061】
特定(メタ)アクリル系オリゴマーは、ポリアルキレンオキシ基を有する構成単位とカルボキシ基を有するモノマーに由来する構成単位に加えて、アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位の少なくとも1種を含むことが好ましい。アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位としては、特定(メタ)アルキルポリマーにおけるアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位と同様のものをあげることができ、好ましい態様も同様である。
【0062】
特定(メタ)アクリル系オリゴマーがアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含む場合、アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位の含有率は、特定(メタ)アクリル系オリゴマーの総質量中に、40質量%以上95質量%以下であることが好ましく、70質量%以上90質量%以下であることがより好ましく、80質量%以上90質量%以下であることが更に好ましい。アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位の含有率が前記下限値以上であると、被着体に対する汚染の発生をより効果的に抑制できる傾向がある。また、アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位の含有率が前記上限値以下であれば、粘着剤組成物の表面抵抗が低下して、より優れた帯電防止性を得ることができる傾向がある。
【0063】
特定(メタ)アクリル系オリゴマーは、必要に応じてポリアルキレンオキシ基を有する構成単位、カルボキシ基を有するモノマーに由来する構成単位及びアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位以外のその他の構成単位を含んでいてもよい。その他の構成単位としては、特定(メタ)アルキルポリマーにおけるヒドロキシ基を有するモノマーに由来する構成単位及びその他の構成単位と同様のものをあげることができ、好ましい態様も同様である。
【0064】
特定(メタ)アクリル系オリゴマーの分子量は、特定(メタ)アクリル系ポリマーよりも小さい限り特に制限はない。特定(メタ)アクリル系オリゴマーの重量平均分子量(Mw)は、3,000以上100,000以下が好ましく、5,000以上60,000以下がより好ましく、5,000以上20,000以下が更に好ましい。特定(メタ)アクリル系オリゴマーの重量平均分子量(Mw)が前記下限値以上であると、被着体に対する汚染の発生をより効果的に抑制できる傾向がある。また、前記上限値以下であると、帯電防止性がより向上する傾向がある。
【0065】
また特定(メタ)アクリル系オリゴマーの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、10以下が好ましく、7以下がより好ましく、1以上5以下が更に好ましい。Mw/Mnの値が該上限値以下であれば、被着体に対する汚染の発生をより効果的に抑制できる傾向がある傾向がある。なお、(メタ)アクリル系オリゴマーの重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、(メタ)アクリル系ポリマーの場合と同様の方法により測定される。
【0066】
特定(メタ)アクリル系オリゴマーの特定(メタ)アクリル系ポリマーに対する重量平均分子量の比(オリゴマーMw/ポリマーMw)は、1未満であれば特に制限されない。帯電防止性の観点から、重量平均分子量の比は、0.1以下が好ましく、0.006〜0.07がより好ましい。
【0067】
本発明の粘着剤組成物における特定(メタ)アクリル系オリゴマーの含有率は、目的等に応じて適宜選択することができる。特定(メタ)アクリル系オリゴマーの含有量は、特定(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、0.05質量部以上5.0質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上3.0質量部以下であることがより好ましく、0.2質量部以上2.0質量部以下であることが更に好ましい。特定(メタ)アクリル系オリゴマーの含有量が特定(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、0.05質量部以上であれば、より優れた帯電防止性が得られる傾向がある。また特定(メタ)アクリル系オリゴマーの含有量が特定(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、5.0質量部以下であれば、被着体に対する汚染をより効果的に抑制することができる傾向がある。
【0068】
特定(メタ)アクリル系ポリマー及び特定(メタ)アクリル系オリゴマー(以下、これらを「重合体」と総称することがある)は、これらの重合体に含まれる構成単位を形成可能なモノマーの混合物を重合することで製造することができる。上記ポリマーの重合方法は、特に制限されるものではなく、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法などの公知の方法から適宜選択することができる。重合により得られた重合体を用いて本発明の粘着剤組成物を製造するに当り、処理工程が比較的簡単で且つ短時間で行えることから溶液重合法が好ましい。
【0069】
溶液重合法は、一般に、重合槽内に所定の有機溶媒、モノマー、重合開始剤、及び必要に応じて用いられる連鎖移動剤を仕込み、窒素気流中、有機溶媒の還流温度で、撹拌しながら数時間加熱反応させることにより行なうなどの公知の方法を使用することができる。
【0070】
なお、特定(メタ)アクリル系ポリマー及び特定(メタ)アクリル系オリゴマーの重量平均分子量及び分散度は、反応温度、時間、溶剤量、触媒の種類及び量により容易に調節することができる。
【0071】
特定(メタ)アクリル系ポリマー及び特定(メタ)アクリル系オリゴマーの重合に用いられる重合用の有機溶剤としては、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、t−ブチルベンゼン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、テトラリン、デカリン、芳香族ナフサ等の芳香族炭化水素類;n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、n−デカン、ジペンテン、石油スピリット、石油ナフサ、テレピン油等の脂肪系もしくは脂環族系炭化水素類;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸n−アミル、酢酸2−ヒドロキシエチル、酢酸2−ブトキシエチル、酢酸3−メトキシブチル、安息香酸メチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル類;メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、s−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール等のアルコール類;などを挙げることができる。これらの有機溶剤はそれぞれ1種単独でも、2種以上混合して用いることができる。
【0072】
重合開始剤としては、通常の溶液重合法で使用できる有機過酸化物、アゾ化合物などを使用することが可能である。有機過酸化物としては、例えば、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、カプロイルパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシビバレート、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−アミルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−オクチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジ−α−クミルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)ブタン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−オクチルパーオキシシクロヘキシル)ブタンなどが挙げられる。アゾ化合物としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリルなどが挙げられる。
【0073】
また、(メタ)アクリル系ポリマー及び(メタ)アクリル系オリゴマーの製造に際しては、連鎖移動剤は使用しないのが普通であるが、本発明の目的及び効果を損なわない範囲で、必要に応じて使用することは可能である。連鎖移動剤としては、例えば、シアノ酢酸;シアノ酢酸の炭素数1〜8のアルキルエステル類;ブロモ酢酸;ブロモ酢酸の炭素数1〜8のアルキルエステル類;アントラセン、フェナントレン、フルオレン、9−フェニルフルオレン等の芳香族化合物類;p−ニトロアニリン、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、p−ニトロ安息香酸、p−ニトロフェノール、p−ニトロトルエン等の芳香族ニトロ化合物類;ベンゾキノン、2,3,5,6−テトラメチル−p−ベンゾキノン等のベンゾキノン誘導体類;トリブチルボラン等のボラン誘導体;四臭化炭素、四塩化炭素、1,1,2,2−テトラブロモエタン、トリブロモエチレン、トリクロロエチレン、ブロモトリクロロメタン、トリブロモメタン、3−クロロ−1−プロペン等のハロゲン化炭化水素類;クロラール、フラルデヒド等のアルデヒド類:炭素数1〜18のアルキルメルカプタン類;チオフェノール、トルエンメルカプタン等の芳香族メルカプタン類;メルカプト酢酸、メルカプト酢酸の炭素数1〜10のアルキルエステル類;炭素数1〜12のヒドロキシアルキルメルカプタン類;ピネン、テルピノレン等のテルペン類;などが挙げられる。
【0074】
重合温度としては、一般に約30℃〜180℃の範囲である。
【0075】
特定(メタ)アクリル系ポリマー及び特定(メタ)アクリル系オリゴマーの製造に際しては、重合反応で得られた重合物を精製する精製工程を設けてもよい。これにより、溶液重合法などで得られた重合物中に未反応のモノマーが含まれる場合は、該モノマーを除くことができる。精製工程としては通常用いられる精製方法から適宜選択することができる。例えば、メタノールなどによる再沈澱法で精製することが可能である。
【0076】
[ポリエーテル変性シリコーン]
本発明の粘着剤組成物は、反応性基を有するポリエーテル変性シリコーンである特定ポリシロキサンの少なくとも1種を含有する。粘着剤組成物が反応性基を有するポリエーテル変性シリコーンを含有することで、優れた帯電防止性を示し、且つ被着体に対する汚染を効果的に抑制することができる。
【0077】
特定ポリシロキサンが、反応性基を有することで、被着体に対する低汚染性が効果的に発揮される。これは、反応性基によって特定ポリシロキサンが架橋剤と反応すること、反応性基によって(メタ)アクリル系ポリマーと特定ポリシロキサンとの相溶性が向上することにより、特定ポリシロキサンに起因する汚染が抑えられるためと考えられる。
【0078】
特定ポリシロキサンが、ポリアルキレンオキシ基を有することで、帯電防止性が効果的に発揮される。これは例えば、特定ポリシロキサンが粘着剤組成物に由来する粘着剤層の表面近傍に偏在することにより、イオン性化合物と相互作用するポリアルキレンオキシ基が粘着剤層の表面近傍に存在することになり、その結果、粘着剤層の表面における表面抵抗値を低下させるためと考えられる。
【0079】
特定ポリシロキサンにおける反応性基としては、ヒドロキシ基、カルボキシ基、置換もしくは無置換のアミド基、置換もしくは無置換のアミノ基、エポキシ基、メルカプト基、ケイ素含有基等の反応性基を挙げることができる。その中でも、特定(メタ)アクリル系オリゴマーにより、効果的に特定ポリシロキサンと架橋剤との反応が促進され、被着体に対する汚染の発生を効果的に抑制できる観点から、反応性基としてヒドロキシ基を有するポリエーテル変性シリコーンが好ましい。
【0080】
特定ポリシロキサンは、帯電防止性と被着体に対する低汚染性の観点から、ジアルキルシロキサンに由来する構造単位とアルキル(ヒドロキシポリアルキレンオキシアルキル)シロキサンに由来する構造単位とを含むポリシロキサン化合物が好ましい。
ジアルキルシロキサンにおけるアルキル基は、炭素数が1〜4が好ましく、1がより好ましい。
またアルキル(ヒドロキシポリアルキレンオキシアルキル)シロキサンにおけるアルキレンオキシ基は、炭素数が2〜4が好ましく、2〜3がより好ましい。アルキル(ヒドロキシポリアルキレンオキシアルキル)シロキサンにおけるアルキレンオキシ基の含有数は、1〜100が好ましく、10〜100がより好ましい。アルキル(ヒドロキシポリアルキレンオキシアルキル)シロキサンにおけるアルキル基は、炭素数が1〜4であることが好ましい。
【0081】
特定ポリシロキサンが、ジアルキルシロキサンに由来する構造単位とアルキル(ヒドロキシポリアルキレンオキシアルキル)シロキサンに由来する構造単位とを含む場合、ジアルキルシロキサンに由来する構造単位の含有数は100以下が好ましく、1〜80がより好ましい。またアルキル(ヒドロキシポリアルキレンオキシアルキル)シロキサンに由来する構造単位の含有数は2〜100が好ましく、2〜80がより好ましい。
【0082】
特定ポリシロキサンは、粘着性、帯電防止性及び被着体に対する低汚染性の観点から、下記一般式(1)で表されるヒドロキシ基を有するポリシロキサン化合物が好ましい。
【0083】
【化1】
【0084】
一般式(1)中、pはジメチルシロキサン構造単位の繰り返し数であって0〜100の数を表す。qはポリオキシエチレン基を有するメチルプロピレンシロキサン構造単位の繰り返し数であって2〜100の数を表す。またaはエチレンオキシ構造単位の繰り返し数であって1〜100の数をそれぞれ表わす。ここで、一般式(1)で表される化合物が複数の化合物の集合体である場合、p、q及びaは化合物の集合体としての平均値であり、有理数である。
【0085】
ポリエチレンオキシ構造単位の繰り返し数aは1〜100の数であるが、10〜100の数であることが好ましい。aが1以上であると充分な導電性が得られ、帯電防止性が向上する傾向がある。またaが100以下であると粘着剤組成物を構成する他の成分との相溶性が向上し、粘着剤層の透明性がより向上する傾向がある。
【0086】
またジメチルシロキサン構造単位の繰り返し数pは、0〜100の数であるが、1〜80の数であることが好ましい。pが0以上の場合には帯電防止性が向上する傾向がある。またpが100以下であると粘着剤組成物を構成する他の成分との相溶性が向上し、粘着剤層の透明性が向上する傾向がある。
更にメチルプロピレンシロキサン構造単位の繰り返し数qは、2〜100の数であるが、2〜80の数であることが好ましい。qが2以上であると充分な導電性が得られ、帯電防止性が向上する傾向がある。またqが100以下であると粘着剤組成物を構成する他の成分との相溶性が向上し、粘着剤層の透明性が向上する傾向がある。
【0087】
特定ポリシロキサンの重量平均分子量については特に制限はなく、例えば、5,000以上20,000以下とすることができ、6,000以上15,000以下が好ましい。
【0088】
また特定ポリシロキサンのHLB値については特に制限されないが、樹脂との相溶性、表面偏在性、及び粘着性の観点から、5以上16未満が好ましく、7以上15以下がより好ましく、7以上13以下が更に好ましい。
HLB値は、特定ポリシロキサンの親水性と疎水性のバランスを示す尺度である。本発明においては、下記式1で算出されるグリフィン法の定義に従うが、特定ポリシロキサンが市販品の場合、そのカタログデータを優先して採用する。
式1 {(親水性基部分の式量の総和)/(特定ポリシロキサンの分子量)}×20
【0089】
特定ポリシロキサンは、例えば、分子内にジメチルシロキサン構造単位と、ポリオキシエチレン基を有するメチルプロピレンシロキサン構造単位とを有する。これらの構造単位は、それぞれブロックポリマーを構成していても、ランダムポリマーを構成していてもよい。
【0090】
一般式(1)で表される特定ポリシロキサンの具体例としては、例えば、;「SF−8428」、「FZ−2162」、「SH−3773M」、〔以上、東レ・ダウコーニング(株)製〕などを挙げることができる。
【0091】
特定ポリシロキサンは、上記のような市販品から選択されたものであっても、また、水素化ケイ素を有するジメチルポリシロキサン主鎖に対し、不飽和結合及びポリオキシエチレン基を有する有機化合物をヒドロシリル化反応によりグラフトさせることによって得ることもできる。
【0092】
本発明の粘着剤組成物中における、特定ポリシロキサンの含有量は、(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、0.05質量部以上2.0質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上1.0質量部以下であることがより好ましく、0.1質量部以上0.3質量部以下であることが更に好ましい。
【0093】
特定ポリシロキサンの含有量が、前記下限値以上であることで表面保護フィルムを剥離する際の帯電防止性をより効果的に得ることができる。また特定ポリシロキサンの含有量が、前記上限値以下であることで、被着体に対する汚染の発生が抑制され、また、特定(メタ)アクリル系ポリマーとの相溶性が低下して白濁が発生することを抑制できる。
【0094】
粘着剤組成物中における、特定(メタ)アクリル系オリゴマー及び特定ポリシロキサンの総含有量は、特定(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、0.1質量部以上7.0質量部以下であることが好ましく、0.2質量部以上4.0質量部以下であることがより好ましく、0.3質量部以上3.0質量部以下であることが更に好ましい。
【0095】
粘着剤組成物中における、特定ポリシロキサンの特定(メタ)アクリル系オリゴマーに対する質量比(特定ポリシロキサン/特定(メタ)アクリル系オリゴマー)としては、帯電防止性と被着体に対する低汚染性の観点から、0.01以上4.0以下でが好ましく、0.03以上2.0以下がより好ましく、0.07以上0.75以下が更に好ましい。
【0096】
本発明の粘着剤組成物は、特定ポリシロキサンに加えて、本発明の効果を損なわない範囲で、反応性基を有さないポリエーテル変性シリコーンを含んでいてもよい。
反応性基を有さないポリエーテル変性シリコーンとしては、例えば、ポリアルキレンオキシ基の末端がアルコキシ基、アシルオキシ基等である化合物等を挙げることができる。
【0097】
本発明の粘着剤組成物が、反応性基を有さないポリエーテル変性シリコーンを含む場合、その含有率はポリシロキサン化合物の総質量中に、0.05質量%以下であることが好ましく、0.03質量%以下であることがより好ましい。
【0098】
[イオン性化合物]
本発明の粘着剤組成物は、イオン性化合物の少なくとも1種を含有する。粘着剤組成物がイオン性化合物を含むことで、優れた帯電防止性を示すことができる。イオン性化合物としては、アルカリ金属塩や、有機塩などが挙げられる。アルカリ金属塩は、微量の含有量であってもイオン解離性が高いために、被着体に対する汚染の発生を抑制しながら、優れた帯電防止性を発現することができる点で有用である。また、有機塩は、イオンに解離することで優れた導電性を示すため、粘着剤層に微量含有するだけで、必要な帯電防止性を付与することができる点で有用である。
【0099】
アルカリ金属塩は、リチウムイオン(Li)、ナトリウムイオン(Na)、カリウムイオン(K)、ルビジウムイオン(Rb)等をカチオンとする金属塩であれば特に制限されない。
たとえば、Li、Na、Kよりなる群から選ばれる少なくとも1種のカチオンと、Cl、Br、I、BF、PF、SCN、ClO、CFSO、(FSO、(CFSO、(CSO、(CFSOよりなる群から選ばれる少なくとも1種のアニオンと、から構成される金属塩が好適に用いられる。
【0100】
中でも、アルカリ金属塩は、帯電防止性の観点から、LiBr、LiI、LiBF、LiPF、LiSCN、LiClO、LiCFSO、Li(FSON、Li(CFSON、Li(CSON、Li(CFSOCなどのリチウム塩が好ましく、LiClO、LiCFSO、Li(CFSON、Li(CSON、Li(CFSOCがより好ましい。これらのアルカリ金属塩は1種単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0101】
有機塩は、有機カチオンとその対イオンとを含む。
有機塩は、融点が30℃以上であることが好ましい。有機塩の融点が30℃以上であると、被着体への移行が少なく、被着体に対する低汚染性に優れるため好ましい。
有機カチオンとしては、例えば、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、アルキルピロリジニウムカチオン、有機基を置換基として有するアンモニウムカチオン、有機基を置換基として有するスルホニウムカチオン、有機基を置換基として有するホスホニウムカチオンなどが挙げられる。これらの中でも、光学部材表面保護フィルムの粘着剤層に含有される場合、粘着剤層上に設けられた剥離フィルムを剥離するときの帯電をより低減する観点から、ピリジニウムカチオン、イミダゾリウムカチオンが好ましい。
【0102】
有機カチオンの対イオンとなるアニオン部は、特に限定されるものではなく、無機アニオン又は有機アニオンのいずれでもよい。中でも、特に、帯電防止性に優れるため、フッ素原子を含むフッ素含有アニオンが好ましく、更にはヘキサフルオロホスフェートアニオン(PF)が好ましい。
【0103】
有機塩の例としては、ピリジニウム塩、イミダゾリウム塩、アルキルアンモニウム塩、アルキルピロリジニウム塩、アルキルホスホニウム塩などが好適に挙げられる。中でも、ピリジニウム塩、イミダゾリウム塩が好ましく、ピリジニウムカチオン、イミダゾリウムカチオンと、フッ素含有アニオンとの塩が特に好ましい。
【0104】
本発明の粘着剤組成物における帯電防止剤の含有量は、(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、0.05質量部以上0.50質量部以下であることが好ましく、0.10質量部以上0.30質量部以下であることがより好ましい。帯電防止剤の含有量が特定の(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、0.05質量部以上であることで充分な帯電特性が得られる。一方、帯電防止剤の含有量が0.50質量部以下であることで含有量に対する帯電防止効果率が充分に得られる。
【0105】
本発明の粘着剤組成物における、イオン性化合物の含有量に対する特定(メタ)アクリル系オリゴマーと特定ポリシロキサンの総含有量の質量比((特定(メタ)アクリル系オリゴマー+特定ポリシロキサン)/イオン性化合物)としては、帯電防止性と粘着性の観点から、1以上20以下が好ましく、2以上15以下がより好ましい。
【0106】
本発明の粘着剤組成物における、特定(メタ)アクリル系オリゴマー、特定ポリシロキサン及びアルカリ金属塩の総含有量は、特定(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、0.15質量部以上7.5質量部以下であることが好ましく、0.3質量部以上5.0質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以上2.5質量部以下であることが更に好ましい。
【0107】
[架橋剤]
本発明の粘着剤組成物は、架橋剤を含む。架橋剤としては特に限定されるものではなく、ポリイソシアネート化合物、ポリエポキシ化合物、ポリアジリジン化合物、メラミンホルムアルデヒド縮合物、金属塩、金属キレート化合物等を挙げることができる。これら架橋剤は、それぞれ1種単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0108】
これら架橋剤のうち、ポリイソシアネート化合物が好ましい。ポリイソシアネート化合物を使用することで、ポリイソシアネート化合物と、特定(メタ)アクリル系ポリマー、特定(メタ)アクリル系オリゴマー、特定ポリシロキサンとの架橋反応と、(メタ)アクリル系オリゴマーによる特定ポリシロキサンとポリイソシアネート化合物との反応促進が効果的に行われるので、帯電防止性と被着体に対する低汚染性とをより向上できる。
【0109】
ポリイソシアネート化合物としては、例えば、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート化合物;例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート化合物の水素添加物等の脂肪族又は脂環族ポリイソシアネート化合物;それらポリイソシアネート化合物の2量体もしくは3量体;これらポリイソシアネート化合物と、トリメチロールプロパンなどのポリオール化合物とのアダクト体などを挙げることができる。
【0110】
中でも、粘着剤組成物の硬化性および塗工液のポットライフの観点から、これらのポリイソシアネート化合物の中では、ヘキサメチレンジイソシアネート及びヘキサメチレンジイソシアネートの2量体、3量体並びにアダクト体からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体が特に好ましい。これらのポリイソシアネート化合物は、1種単独で又は2種以上混合して使用することができる。
【0111】
ポリイソシアネート化合物は、例えば、「コロネートHX」、「コロネートHL−S」、「コロネート2234」「アクアネート200」、「アクアネート210」〔以上、東ソー(株)製〕、「スミジュールN3300」、「デスモジュールN3400」〔以上、住友バイエルウレタン(株)製〕、「デュラネートE−405−80T」、「デュラネート24A−100」、「デュラネートTSE−100」〔以上、旭化成ケミカルズ(株)製〕、「タケネートD−110N」、「タケネートD−120N」、「タケネートM−631N」「MT−オレスターNP1200」〔以上、三井武田ケミカル(株)製〕などの商品名により市販されているものを好適に使用することができる。
【0112】
架橋剤の含有量は、特定(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上5質量部以下であることがより好ましい。
【0113】
本発明の粘着剤組成物は、必要に応じて、ジブチル錫ラウリレート等の有機錫化合物を架橋触媒として含有してもよい。ただし、本発明の粘着剤組成物は、特定(メタ)アクリル系ポリマーの酸価を2mgKOH/g以上とすることで、架橋触媒を使用すること無く、硬化性に優れ、養生時間が短く、初期硬化速度が速い粘着剤組成物を得ることができる。
【0114】
特に、本発明の粘着剤組成物は、酸価2mgKOH/g以上の特定(メタ)アクリル系ポリマーと、特定(メタ)アクリル系オリゴマーと、特定ポリシロキサンとを含むことで、これまで同時に達成することが難しかった、架橋触媒の不存在下における硬化性と、帯電防止性と、被着体に対する低汚染性とを全て達成することができる。
【0115】
本発明の粘着剤組成物は、以上述べた特定(メタ)アクリル系ポリマー、特定(メタ)アクリル系オリゴマー、特定ポリシロキサン、イオン性化合物、架橋剤及び架橋触媒の他に、必要に応じて、耐候性安定剤、タッキファイヤー、可塑剤、軟化剤、剥離助剤、染料、顔料、無機充填剤、界面活性剤等を適宜含有することができる。
【0116】
<光学部材表面保護フィルム>
本発明の光学部材表面保護フィルムは、基材と、該基材上に設けられ、本発明の粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層と、を設けて構成されている。
本発明の光学部材表面保護フィルムは、粘着剤層が、既述の粘着剤組成物に由来した層として構成されることで、剥離帯電による静電気の発生抑制、及び被着体に対する低汚染性のすべてに優れる。
【0117】
本発明の光学部材表面保護フィルムに用いられる基材は、該基材上に粘着剤層が形成可能であれば、任意の材料から選択できる。
基材は、透視による光学部材の検査及び管理の観点から、ポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂等からなるフィルムを挙げることができる。中でも、表面保護性能の観点から、ポリエステル系樹脂が好ましく、実用性の点で、ポリエチレンテレフタレート樹脂が特に好ましい。
【0118】
基材の厚さは、一般には500μm以下とすることができ、好ましくは5μm〜300μm、更に好ましくは10μm〜200μm程度の厚さを例示することができる。
【0119】
基材の片面又は両面には、剥離時の帯電防止を目的に、帯電防止層が設けられていてもよい。また基材の、粘着剤層が設けられる側の表面には、粘着剤層との密着性を向上させるためにコロナ放電処理等が施されていてもよい。
【0120】
基材上に形成される粘着剤層の形成方法としては、例えば、ポリイソシアネート化合物を含む粘着剤組成物を、そのままで又は必要に応じて適宜の溶媒で希釈し、これを表面保護ベースフィルム(基材)に直接塗布した後、乾燥して溶媒を除去する方法を採用することができる。
また、先ずシリコーン樹脂等により離型処理が施された紙やポリエステルフィルム等の適宜のフィルムからなる剥離シート上に、例えば、ポリイソシアネート化合物を含む粘着剤組成物を塗布し、加熱乾燥して粘着剤層を形成させ、次に該剥離シートの粘着剤層側を表面保護ベースフィルム(基材)に圧接して該粘着剤層を該保護フィルムに転写させる方法を採用することもできる。
【0121】
本発明の光学部材表面保護フィルムにおいて、粘着剤層は、粘着剤組成物の架橋剤としてポリイソシアネート化合物が含有され、このポリイソシアネート化合物によって、特定(メタ)アクリル系ポリマー、特定(メタ)アクリル系オリゴマー及び特定ポリシロキサンが架橋されてなる粘着剤層であることが好ましい。これにより粘着剤層の帯電防止性と被着体に対する低汚染性とがより向上する。
特定(メタ)アクリル系ポリマー、特定(メタ)アクリル系オリゴマー及び特定ポリシロキサンを架橋剤で架橋する条件は特に制限されない。
【0122】
粘着剤層は、例えば、20インチ以上の液晶表示画面に使用されるような大型の光学部材に対して十分な粘着力を持ち(低速剥離時の粘着力が十分大きい)かつ高速剥離時に容易に剥離できる(高速剥離時の粘着力が大きくならない)ことが好ましい。
【0123】
すなわち、光学部材に対する23℃での180度ピールの粘着力は、剥離速度0.3m/分(低速剥離)における粘着力(剥離力)が0.05N/25mm以上であることが好ましく、0.06N/25mm以上であることがより好ましい。低速剥離時の粘着力が0.05N/25mm以上であることで、めくれ又はずれの発生が抑制される。
【0124】
また、粘着力が高くなると大面積における高速剥離時の作業性が低下するので、剥離速度30m/分(高速剥離)における粘着力(剥離力)が1.5N/25mm未満であることが好ましく、1.2N/25mm未満であることがより好ましく、0.9N/25mm未満であることが更に好ましい。
【0125】
更に、剥離時の帯電が大きいと光学部材にダメージを与える場合があるので、本発明の粘着剤組成物は偏光板(商品名:SRDB31E、住友化学(株)製)に対する30m/分剥離時の剥離帯電圧の絶対値が0.9kV以下であることが好ましく、0.7kV以下であることがより好ましく、0.5kV以下であることが更に好ましい。
【0126】
また剥離の際のフィルム側の帯電を防止する観点から、粘着剤層の表面抵抗値は、5.0E+11(Ω/□)(5.0×1011Ω/□)未満であることが好ましい。
【0127】
基材上に形成される粘着剤層の厚さは、光学部材表面保護フィルムに求められる粘着力、光学部材表面粗さ等に応じて適宜設定することができ、一般に1μm〜100μm、好ましくは5μm〜50μm、更に好ましくは15μm〜30μm程度の厚さを例示することができる。
【0128】
かくして得られる光学部材表面保護フィルムは、光学部材の表面に積層されて、その光学部材の表面が汚染されたり損傷したりしないよう保護し、該光学部材が液晶表示装置などに加工される際には、該保護フィルムが光学部材に積層された状態のまま、打抜加工、検査、輸送、液晶表示装置の組立などの各工程に供され、必要に応じて、オートクレーブ処理、高温エージング処理等の加熱加圧処理が施され、表面保護が不要となった段階で光学部材から剥離除去される。
光学部材表面保護フィルムが積層される光学部材としては、偏光板、反射板、半透過板、位相差板(1/2や1/4等の波長板を含む)、視角補償フィルム、輝度向上フィルム、プリズムシート、レンズシート、拡散板等の表示装置に用いられるものが挙げられる。
【実施例】
【0129】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0130】
(製造例A)
−(メタ)アクリル系ポリマーAの製造−
温度計、攪拌機、窒素導入管及び還流冷却器を備えた反応容器内に、酢酸エチル20部、トルエン10部を入れ、また別の容器に、ブチルアクリレート60.0部、2−エチルヘキシルアクリレート34.3部、ヒドロキシ基を有するモノマーとして4−ヒドロキシブチルアクリレート5部、カルボキシ基を有するモノマーとしてアクリル酸0.7部を入れ、混合してモノマー混合物とし、その中の25質量%を反応容器中に加え、次いで前記反応容器の空気を窒素ガスで置換した後、重合開始剤としてアゾビスブチロニトリル(以下AIBNと言う)0.02部を添加して、攪拌下に窒素雰囲気中で前記反応容器内の混合物温度を70℃に昇温させて初期反応を開始させた。初期反応がほぼ終了した後、残りのモノマー混合物75質量%、並びに酢酸エチル20部、トルエン10部及びAIBN0.2部の混合物をそれぞれ逐次添加しながら約2時間反応させ、引き続いて更に2時間反応させた。その後、トルエン25部にAIBN0.25部を溶解させた溶液を1時間かけて滴下し、更に1.5時間反応させた。反応終了後、反応混合物をトルエン100部で希釈して、(メタ)アクリル系ポリマーA溶液を得た。
(メタ)アクリル系ポリマーA(表中では「ポリマーA」と表記)の酸価は5.4であり、重量平均分子量は44万であり、分散度は7.6であった。
【0131】
(製造例B〜F)
−(メタ)アクリル系ポリマーB〜Fの製造−
モノマー組成を表1に示すモノマー組成に変更し、適宜開始剤量等を調整したこと以外は、製造例Aと同様にして、(メタ)アクリル系ポリマーB〜F溶液を製造した。得られた(メタ)アクリル系ポリマーB〜F(表中では、それぞれ「ポリマーB」〜「ポリマーF」と標記)の酸価、重量平均分子量、分散度を表1に示す。
【0132】
【表1】
【0133】
(製造例a)
−(メタ)アクリル系オリゴマーaの製造−
温度計、攪拌羽根、窒素ガス導入管、冷却器、滴下ロートを備えた反応容器内に、メチルエチルケトン100.0部を入れ、窒素雰囲気下で攪拌しながら還流温度まで加熱した。滴下ロートに、予め混合しておいた、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(アルキレンオキシド基の含有数:23)10部、n−ブチルメタクリレート89.7部、アクリル酸0.3部、メチルエチルケトン100.0部、及びアゾビスイソブチロニトリル5.0部の混合溶液を入れ、120分かけて還流温度の反応容器に逐次添加した。その後、240分間還流温度を維持したまま反応させ、反応を終了した。このようにして、(メタ)アクリル系オリゴマーa溶液を得た。
(メタ)アクリル系オリゴマーa(表中では「オリゴマーa」と表記)の酸価は2.3であり、重量平均分子量は7000であった。
【0134】
(製造例b〜d)
−(メタ)アクリル系オリゴマーb〜dの製造−
モノマー組成を表2に示すモノマー組成に変更し、適宜開始剤量等を調整する以外は製造例aと同様にして、(メタ)アクリル系オリゴマーc〜d溶液を製造した。得られた(メタ)アクリル系オリゴマーb〜d(表中では、それぞれ「オリゴマーb」〜「オリゴマーd」と標記)の酸価、重量平均分子量を表2に示す。
【0135】
【表2】
【0136】
なお、表1、2における各成分の略号の詳細は、以下の通りである。
・BA:n−ブチルアクリレート
・2EHA:2−エチルヘキシルアクリレート
・4HBA:4−ヒドロキシブチルアクリレート
・AA:アクリル酸
・n−BMA:n−ブチルメタクリレート
・MePEGMA:メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(アルキレンオキシド基の含有数(平均付加モル数):23)
・Mw:重量平均分子量
・Mw/Mn:分散度
【0137】
<実施例1>
攪拌羽根、温度計、冷却器、滴下ロートを備えた四つ口フラスコに、製造例Aで得られた(メタ)アクリル系ポリマーA溶液を固形分換算で100部、製造例aで得られた(メタ)アクリル系オリゴマーa溶液を固形分換算で0.82部、特定ポリシロキサンとしてSH3773M(東レ・ダウコーニング(株)製、一般式(1)で表されるポリエーテル変性シリコーン、ポリエーテル末端:ヒドロキシ基、HLB値=8)を0.15部、イオン性化合物としてリチウムトリフルオロメタンスルホン酸を0.15部、それぞれ仕込み、フラスコ内の液温を25℃に保って4.0時間混合撹拌を行い、混合溶液を得た。
これに、架橋剤としてN3300(ポリイソシアネート化合物、商品名:スミジュールN3300、住化バイエルウレタン(株)製、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体、固形分:100質量%)3.0部を添加し、十分に攪拌して、粘着剤組成物を得た。
得られた粘着剤組成物を用いて、以下の試験用表面保護フィルムの作製方法に従って試験用表面保護フィルムを作製し、各種物性試験を行った。得られた結果を表3に示した。
【0138】
(1)試験用表面保護フィルムの作製
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(商品名:テトロンG2、フィルム厚み:38μm、テイジンテトロンフィルム(株)製〕上に、乾燥後の塗工量が20g/m2となるように、粘着剤組成物を塗布し、100℃で60秒間熱風循環式乾燥機にて乾燥して粘着剤層を形成した後、離型フィルム(シリコーン系離型剤で表面処理されたPETフィルム、商品名:フィルムバイナ100E−0010NO23、藤森工業(株)製〕に粘着剤層面が接するように載置し、加圧ニップロールを通して圧着して貼り合わせた後、23℃、50%RHの環境下で5日間養生を行って試験用表面保護フィルムを得た。
【0139】
(2)汚染性の評価(気泡跡)
ガラス基板(松浪硝子工業(株)製、青板ガラス)の表裏に、偏光板(商品名:SRDB31E、住友化学(株)製)を偏光軸がクロスニコル状態になるようにアクリル系粘着剤で貼りあわせ、偏光板付き基板とした。なお、使用するアクリル系粘着剤は、試験中に剥がれ等を生じず、且つ、ある程度の透明性が得られていればどのような粘着剤でも構わない。
上記(1)で作製した試験用表面保護フィルムから離型フィルムを剥がし、粘着剤層面を偏光板付き基板の偏光板に貼合した。5〜10秒後に試験用表面保護フィルムを被着体から剥離し、直後に気泡が入るように再度貼合した。その後、60℃の乾燥機中に3時間放置した。更に25℃、50%RHの環境下に30分放置した後、試験用表面保護フィルムを剥離し、キセノンランプ(ポラリオン製、NP1型)下で目視にて偏光板表面の気泡跡を確認し、下記評価基準に従って汚染性を評価した。なお、偏光板表面の気泡跡が薄いものほど、偏光板表面に試験用表面保護フィルムに由来する残渣が少なく、被着体に対する低汚染性に優れる。
【0140】
〜評価基準〜
A:気泡跡が確認できない、又は気泡跡が極薄く確認できるが、実用上問題ないレベル。
B:気泡跡が薄く確認できるが、実用上問題ないレベル。
C:気泡跡がはっきりと確認でき、実用化出来ないレベル。
【0141】
(3)帯電防止性の評価
−表面抵抗値−
上記(1)で作製した試験用表面保護フィルムから離型フィルムを剥がし、露出した粘着剤層の表面の表面抵抗値(Ω/□)を、表面抵抗測定装置((株)アドバンテスト製、R12704 RESISTIVITY CHAMBER)を用いて測定した。
【0142】
−剥離帯電圧−
上記(1)で作製した試験用表面保護フィルムを25mm×150mmにカットした後、この試験用粘着シートの試験片を、卓上ラミネート機を用いて、離型フィルムを剥がしつつ、粘着剤層面を偏光板(商品名:SRDB31E、住友化学(株)製)に圧着して試験サンプルとした。この試験サンプルを23℃、50%RHの条件下で24時間放置(コンディショニング処理)した後、剥離角度:180゜、剥離速度:30m/分(高速剥離条件)の条件にて剥離した。このとき発生する偏光板表面の電位(kV)を、所定の位置に固定した電位測定機(春日電機(株)製、KSD−0303)にて測定した。測定は、23℃、50%RHの環境下で行なった。
【0143】
上記表面抵抗値及び上記剥離帯電圧の測定値をもとに、下記の評価基準に従って帯電防止性を評価した。なお、評価B以上であれば、帯電防止性に優れていると判断した。
〜評価基準〜
A:表面抵抗値が1.0E+11(Ω/□)未満、且つ剥離帯電圧の絶対値が0.7kV未満。
B:表面抵抗値が1.0E+11(Ω/□)以上5.0E+11(Ω/□)未満、且つ剥離帯電圧の絶対値が0.9kV未満。
C:表面抵抗値が5.0E+11(Ω/□)以上、又は剥離帯電圧の絶対値が0.9kV以上。
【0144】
(4)剥離性の評価
剥離性を、高速剥離時(剥離速度:30m/分)の粘着力を測定することで評価した。
上記(1)で作製した試験用表面保護フィルムを25mm×150mmにカットした後、このフィルム片から離型フィルムを剥がし、卓上ラミネート機を用いて、偏光板(商品名;SRDB31E、住友化学(株)製)に圧着して試験サンプルとした。
この試験サンプルを23℃、50%RHの環境下で24時間放置(コンディショニング処理)した。その後、偏光板から試験用表面保護フィルムを粘着層ごと長辺(150mm)方向に、剥離角度180゜、剥離速度30m/分の条件で高速剥離した時の粘着力を測定した。
【0145】
(5)硬化性の評価
−養生時間−
上記で得られた粘着剤組成物が養生に要する時間(養生時間)を以下のようにしてゲル分率を測定することで評価した。
粘着剤組成物をシリコーン系離型剤で表面処理した剥離フィルム上に塗布して、乾燥後の厚みが25μmとなるように粘着剤層を形成して粘着フィルムを得た。次に形成した粘着フィルムを23℃、50%RHの環境下に所定の時間保管した後、192時間経過後まで24時間毎にゲル分率を以下のようにしてそれぞれ測定した。所定の保管時間が経過した後のゲル分率と、192時間(8日間)経過後のゲル分率とを比較して、両者のゲル分率の差が3%以下となるのに要した保管時間を養生時間とした。表3〜表5には養生時間を日数で示した。
【0146】
ゲル分率は以下のようにして測定した。
1.精秤した250メッシュの金網(100mm×100mm)に粘着剤層を約0.25g貼付し、ゲル分が漏れないように包んで試料を作製した。その後、精密天秤にて質量を精確に測定した。
2.得られた試料を酢酸エチル80mlに3日間浸漬した。
3.試料を取り出して少量の酢酸エチルにて洗浄し、120℃で24時間乾燥させた。放冷後に精密天秤で質量を精確に測定した。
4.ゲル分率を下式により算出した。
ゲル分率(質量%)=(Z−X)/(Y−X)×100
但し、Xは金網の質量(g)、Yは浸漬前の試料(粘着剤層を貼付た金網)の質量(g)、Zは酢酸エチルに浸漬して乾燥した後の試料の質量(g)である。
【0147】
−初期硬化速度−
上記で得られた粘着剤組成物の初期硬化速度を以下のようにして応力値を測定することで評価した。
離型フィルム(シリコーン系離型剤で表面処理されたPETフィルム、商品名:フィルムバイナ100E−0010NO23、藤森工業(株)製)の上に、乾燥後の塗工量が20g/mとなるように、粘着剤組成物を塗布し、塗布から5分後の粘着剤組成物の「応力/ひずみ曲線」を測定し、ひずみ100%時の応力値を測定した。
【0148】
下記の評価基準に従って、応力値の測定値をもとに初期硬化性を評価した。
〜評価基準〜
A:0.01N/mm以上であった。
B:0.005N/mm以上0.01N/mm未満であった。
C:0.005N/mm未満であった。
【0149】
<実施例2〜実施例13、比較例1〜3>
実施例1において、粘着剤組成物の調製に用いた各成分を表3〜表5に示したようにそれぞれ変更したこと以外は、実施例1と同様にして粘着剤組成物を作製し、同様にして各種物性試験を行った。得られた結果を表3〜表5に示した。
【0150】
<実施例14>
実施例1において、(メタ)アクリル系ポリマーAを(メタ)アクリル系ポリマーEに変更し、架橋触媒としてジオクチル錫ラウリレート(商品名:アデカスタブOT−1、ADEKA(株)製)をアセチルアセトンで300倍に希釈した架橋触媒溶液を固形分換算で0.02部、配合して混合溶液を調整したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例14の粘着剤組成物を作製し、同様にして各種物性試験を行った。得られた結果を表4に示した。
【0151】
【表3】
【0152】
【表4】
【0153】
【表5】
【0154】
表3〜表5における各成分の略号の詳細は以下の通りであり、含有量は固形分換算の値である。
・SH3773M:一般式(1)で表される反応性基を有するポリエーテル変性シリコーン(商品名:SH3773M、東レ・ダウコーニング(株)製、ポリアルキレンオキシ基の末端:ヒドロキシ基(反応性基)、HLB値=8、特定ポリシロキサン)
・FZ2162:一般式(1)で表される反応性基を有するポリエーテル変性シリコーン(商品名:FZ−2162、東レ・ダウコーニング(株)製、ポリアルキレンオキシ基の末端:ヒドロキシ基(反応性基)、HLB値=14、特定ポリシロキサン)
・SH8400:反応性基を有さないポリエーテル変性シリコーン(商品名:SH8400、東レ・ダウコーニング(株)製、ポリアルキレンオキシ基の末端:アセチルオキシ基、HLB値=7)
・LiTFS:リチウムトリフルオロメタンスルホン酸(アルカリ金属塩)
・LiTFSI:リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニルイミド)(アルカリ金属塩)
・HPHFP:N−ヘキシルピリジニウム・ヘキサフルオロフォスフェート(有機塩、融点45℃)
・N3300:ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体であるイソシアヌレート構造を有するイソシアネート化合物(商品名:スミジュールN3300、住化バイエルウレタン(株)製、架橋剤(ポリイソシアネート化合物))
・C−L:トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体(商品名:コロネートL、固形分:75質量%、東ソー(株)製、架橋剤(ポリイソシアネート化合物))
【0155】
比較例1では、酸価が16の(メタ)アクリル系ポリマーを用いているため、帯電防止性に劣っていることが分かる。比較例2では、酸価が0の(メタ)アクリル系オリゴマーを用いるため、被着体に対する低汚染性に劣っていることが分かる。比較例3では、反応性基を有さないポリエーテル変性シリコーンを用いているため、被着体に対する低汚染性に劣っていることが分かる。
これに対して、本発明の粘着剤組成物から形成された試験用表面保護フィルムは、被着体に対する低汚染性及び帯電防止性に優れることが分かる。