特許第6673623号(P6673623)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6673623
(24)【登録日】2020年3月9日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】設置・移動用アウトリガー
(51)【国際特許分類】
   B66F 3/16 20060101AFI20200316BHJP
   B66F 3/42 20060101ALI20200316BHJP
【FI】
   B66F3/16
   B66F3/42
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-131909(P2017-131909)
(22)【出願日】2017年7月5日
(65)【公開番号】特開2019-14564(P2019-14564A)
(43)【公開日】2019年1月31日
【審査請求日】2019年2月27日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年5月31日〜6月2日 第4回ライブ・エンターテイメントEXPO 第4回イベント総合EXPO
(73)【特許権者】
【識別番号】596166313
【氏名又は名称】株式会社 いそのボデー
(74)【代理人】
【識別番号】110001335
【氏名又は名称】特許業務法人 武政国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】磯野 栄治
(72)【発明者】
【氏名】霜鳥 信勝
【審査官】 大塚 多佳子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭49−013859(JP,A)
【文献】 実開平02−080695(JP,U)
【文献】 実開昭57−141995(JP,U)
【文献】 実開昭61−092640(JP,U)
【文献】 実開平05−056705(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 3/00 − 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレハブ家屋、コンテナ、パレットのような重量物(H)を移動又は設置する際に使用する設置・移動用アウトリガー(1)であって、
シリンダ(3)と、該シリンダ(3)内で上下動するロッド(4)とから成るアウトリガー本体(5)と、
前記シリンダ(3)に取り付けられ、前記ロッド(4)を離間又は近接させて該シリンダ(3)を上下動させる駆動機構(2)と、
重量物(H)の下部と壁面の2面に同時に当てた状態で取り付けられるように、重量物(H)を引っ掛けるフック部(15)と、該フック部(15)の上部に連続して形成された縦部材(16)とから成り、該縦部材(16)の上部に鉤状に形成された、飛び出した部分(16a)と、該縦部材(16)の中間位置における取付具(17)を介して前記シリンダ(3)に取り付けられているフック部材(6)と、
前記ロッド(4)の下端部に、首振り自在に取り付けられたスタンド(7)と、を備えた、ことを特徴とする設置・移動用アウトリガー。
【請求項2】
前記駆動機構(2)は、
前記シリンダ(3)内において、該シリンダ(3)の上部に回動中心がシリンダ(3)の長手方向になるように取り付けられた第1ギヤ(11)と、
該第1ギヤ(11)の回動軸に連結された、前記ロッド(4)の長手方向に延びる棒状の雄ねじ部(12)と、
前記シリンダ(3)内において上下動のみ自在になり、一端に前記ロッド(4)の上部と連結し、前記雄ねじ部(12)と噛合する筒状の雌ねじ部(14)と、
前記第1ギヤ(11)と噛合する第2ギヤ(13)を回動させる、該シリンダ(3)外に取り付けられたハンドル(8)と、から成り、
該ハンドル(8)を回動させると、第1ギヤ(11)と共に回動する雄ねじ部(12)が、雌ねじ部(14)を上下動させ、前記シリンダ(3)内においてロッド(4)を上下動させる構成になる、ことを特徴とする請求項1に記載の設置・移動用アウトリガー。
【請求項3】
前記駆動機構(2)は、
前記シリンダ(3)内において前記ロッド(4)を上下動させる作動油と、
前記作動油を前記シリンダ(3)内に吸引、吐出させるために、レバー(44)動作によりプランジャピストンを前後させて該作動油を吸引、吐出させるポンプ(43)と、から成る、ことを特徴とする請求項1に記載の設置・移動用アウトリガー。
【請求項4】
前記スタンド(7)は、透孔(22)が開けられた板材(23)を、複数枚を分離自在に重ね合わせたものである、ことを特徴とする請求項1、2又は3のいずれかに記載の設置・移動用アウトリガー。
【請求項5】
前記スタンド(7)の底面の板材(23)に滑り止め(31)を着脱自在に取り付けた、ことを特徴とする請求項1、2又は3のいずれかに記載の設置・移動用アウトリガー。
【請求項6】
前記スタンド(7)にキャスター(32)を取り付けた、ことを特徴とする請求項1、2又は3のいずれかに記載の設置・移動用アウトリガー。
【請求項7】
前記フック部材(6)のフック部(33)は、厚みの異なる種々の重量物(H)の下部形状に適合できるように、上方向に徐々に拡開傾斜した形状に形成されたものである、ことを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6のいずれかに記載の設置・移動用アウトリガー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレハブ家屋、コンテナ、物流用パレットのような重量物を移動させ、それを設置する際に用いる設置・移動用アウトリガーに係り、特に接地面が傾斜面、凹凸面、滑りやすい面又は柔軟ないずれの状態でも安定して設置することができる設置・移動用アウトリガーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、プレハブ工法による店舗、家屋、倉庫又はコンテナなどの重量物を、イベント会場、公園、倉庫などの所定の場所に設置する際に、ユニック、クレーン車などを用いていた。これらの重量物を運搬してきたトラック、トレーラーから下して現地に仮設置し、その後フォークリフトを用いて所定の位置に移動し、その場所に設置していた。
荷物、貨物を移動させる物流用パレット等についても、フォークリフトを用いて倉庫、店舗などの所定の場所に移動し、その場所に設置していた。
【0003】
現地にフォークリフトが無い場合では、仮設置した重量物について、平滑に舗装された場所ではある程度は手動で移動して設置できる。しかし、平滑に舗装されていない場所では、手動での移動や微調整が困難になる場合があった。また、重量物でもプレハブ工法による店舗、家屋については、ゴルフ場、公園等の傾斜している場所、又は芝生などの柔軟な地面への設置では重量物の下に板材、鉄板などを敷いてその接地面の状況に応じて調整していた。また、地面の沈下を防止して、店舗、家屋が水平になるようにしていた。
【0004】
このような重量物を設置する際に、その接地高さが相違する場所であっても安定した状態に維持する技術が種々提案されている。例えば、特許文献1の特開2005−280389号公報「ランディングギア装置及びアウトリガー装置」のように、車両に搭載されるアウトリガー装置であって、入力軸と、上下移動自在な脚部をそれぞれ有し、離間して配置された2本の補助脚と、前記脚部のそれぞれに連結され、前記脚部の上下移動に伴って回転する2本の出力軸と、前記入力軸と前記2本の出力軸とを連結し、前記入力軸の回転力を前記2本の出力軸にそれぞれ伝達するディファレンシャルギアとを備えたアウトリガー装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−280389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の「ランディングギア装置及びアウトリガー装置」は、セミトレーラのトレーラを駐車するためのランディングギア装置である。この特許文献1の技術は、トレーラのような大型の車両に合わせたもので、プレハブ工法による店舗、家屋、倉庫又はコンテナなどの重量物には用いることができなかった。当然に装置自体も大型のもので、簡単に持ち運ぶことができないという問題を有していた。
【0007】
なお、大きな段差がある場合は、その高さ調節に自動車用のジャッキを用いることも可能である。しかし、ジャッキは持ち上げる重量物の真下に配置する必要がある。その配置できる高さ(空間)がないと使用できなかった。例えば、緩やかな傾斜地程度の段差では、そこにジャッキ又はアウトリガーを入れることはできなかった。
【0008】
また、従来のジャッキ又はアウトリガーは、道路上において利用するものであるため、その地面に接地するスタンド部分が固い地面に対応するようになっている。ジャッキ又はアウトリガーのスタンド部分の構成は、小さなものが多かった。これは、自動車のトランク内に収納できるようにするためである。同様に、店舗、家屋、倉庫又はコンテナなどの重量物の載せる個所も小さいものが多かった。このようなに、支える部分(スタンド部分)と載せる部分が共に小さいと、重量物を安定した状態で支えることができないという問題を有していた。
【0009】
本発明は、かかる問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、装置の軽量化と共に容易に取り扱えるような構成にすることで、接地面が傾斜面、凹凸面、滑りやすい又は柔軟な状態でも安定して設置することができ、地面等から重量物の底面との間隔が狭い場合でも容易に取り付けられ、持ち上げられる設置・移動用アウトリガーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、プレハブ家屋、コンテナ、パレットのような重量物(H)を移動又は設置する際に使用する設置・移動用アウトリガー(1)であって、
シリンダ(3)と、該シリンダ(3)内で上下動するロッド(4)とから成るアウトリガー本体(5)と、
前記シリンダ(3)に取り付けられ、前記ロッド(4)を離間又は近接させて該シリンダ(3)を上下動させる駆動機構(2)と、
重量物(H)の下部と壁面の2面に同時に当てた状態で取り付けられるように、重量物(H)を引っ掛けるフック部(15)と、該フック部(15)の上部に連続して形成された縦部材(16)とから成り、該縦部材(16)の上部に鉤状に形成された、飛び出した部分(16a)と、該縦部材(16)の中間位置における取付具(17)を介して前記シリンダ(3)に取り付けられているフック部材(6)と、
前記ロッド(4)の下端部に、首振り自在に取り付けられたスタンド(7)と、を備えた、ことを特徴とする。
【0011】
例えば、前記駆動機構(2)は、
前記シリンダ(3)内において、該シリンダ(3)の上部に回動中心がシリンダ(3)の長手方向になるように取り付けられた第1ギヤ(11)と、
該第1ギヤ(11)の回動軸に連結された、前記ロッド(4)の長手方向に延びる棒状の雄ねじ部(12)と、
前記シリンダ(3)内において上下動のみ自在になり、一端に前記ロッド(4)の上部と連結し、前記雄ねじ部(12)と噛合する筒状の雌ねじ部(14)と、
前記第1ギヤ(11)と噛合する第2ギヤ(13)を回動させる、該シリンダ(3)外に取り付けられたハンドル(8)と、から成る、ものである。
【0012】
また、前記駆動機構(2)は、
前記シリンダ(3)内において前記ロッド(4)を上下動させる作動油と、
前記作動油を前記シリンダ(3)内に吸引、吐出させるために、レバー(44)の動作によりプランジャピストンを前後させて該作動油を吸引、吐出させるポンプ(43)と、から成る、ものである。
【0013】
前記スタンド(7)は、透孔(22)が開けられた板材(23)を、複数枚分離自在に重ね合わせたものである。
前記スタンド(7)の底面の板材(23)に滑り止め(31)を着脱自在に取り付けたものである。
前記スタンド(7)にキャスター(32)を取り付けたものである。
【0014】
前記フック部材(6)のフック部(15)は、厚みの異なる種々の重量物の下部形状に適合できるように、上方向に徐々に拡開傾斜した形状に形成されたものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の設置・移動用アウトリガー(1)では、使用の際には、設置・移動するプレハブ家屋、コンテナ、パレットのような重量物(H)の下部にフック部材(6)を掛け止める。この状態でハンドル(8)を回すと、アウトリガー本体(5)を構成するシリンダ(3)からロッド(4)を離間又は近接させることにより、このシリンダ(3)に取り付けられたフック部材(6)は上下動する。そこで、フック部材(6)の上下動に応じて重量物(H)を上昇させ、又は下降させることができる。
【0016】
アウトリガー本体(5)の下部(ロッド(4)下端部)には、スタンド7が首振り自在に取り付けられている。このスタンド(7)の首振りにより、接地面が傾斜面、凹凸面がある状態でも安定して、設置・移動用アウトリガー(1)を設置できる。更に、このスタンド(7)は、アウトリガー本体(5)の長さと比較して広い平坦面を有する。そこで、このスタンド(7)の面積が広いことにより、接地面が滑りやすい又は柔軟ないずれの状態でも安定して、設置・移動用アウトリガー(1)を設置できる。
【0017】
スタンド(7)は透孔(22)が開けられた板材(23)が複数枚を分離自在に重ね合わせたものである。そこで、接地面が平坦な場合は、板材(23)を重ね合わせた状態で使用する。接地面が芝生のような柔軟な場合は、滑り止め(31)をスタンド(7)の板材(23)に複数個取り付けたものを使用する。スタンド(7)の板材(23)にキャスター(32)を取り付けることができる。更に、スタンド(7)に代えてキャスター(32)を取り付けたものにすることで、重量物(H)を容易に移動させることもできる。スタンド(7)は、重量物(H)を移動し、設置する場所に応じて適切な状態の板材(23)を使用することができる。
【0018】
フック部(15)の上部に連続して縦部材(16)が形成されたフック部材(6)では、重量物(H)の下部と壁面の2面に同時に当てることで、設置・移動用アウトリガー(1)を安定した状態で取り付けて使用することができる。2ヶ所で重量物(H)を支えるため、安定した状態で、重量物(H)を移動させ、設置することができる。
前記フック部材(6)のフック部(33)が、縦部材(16)面から離れるように上方向に徐々に拡開傾斜した形状に形成されたものでは、厚みの異なる種々の重量物(H)の下部形状に適合できる。そこで、種々の形状の重量物(H)に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施例1の設置・移動用アウトリガーを示し、(a)は正面図、(b)は側面図である。
図2】実施例1の設置・移動用アウトリガーのギヤ構成の駆動機構を示す部分断面図である。
図3】スタンドの構成を示し、(a)は平面図、(b)は側面図である。
図4】本発明の設置・移動用アウトリガーの動作状態を示す側面図であり、(a)はフック部材を上昇させる前の状態、(b)はフック部材を上昇させた状態である。
図5】本発明の設置・移動用アウトリガーをコンテナに取り付けて使用する状態を示す説明斜視図であり、(a)はコンテナの表側、(b)はコンテナの裏側である。
図6】スタンドの変形例1の構成を示し、(a)は側面図、(b)は底面図である。
図7】スタンドの下部にキャスターを取り付けた状態のスタンドの変形例2の構成を示す側面図である。
図8】スタンドを外し、ロッドの下部にキャスターを取り付けた状態のスタンドの変形例3の構成を示す側面図である。
図9】フック部材の変形例を示す側面図である。
図10】実施例2の油圧構成の駆動機構から成る設置・移動用アウトリガーを示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の設置・移動用アウトリガーは、アウトリガー本体と、ロッドを離間又は近接させてシリンダを上下動させる駆動機構と、アウトリガー本体の上下動する部材に取り付けられた、重量物を引っ掛けるフック部材と、アウトリガー本体の上下動しない部材の下端部に、首振り自在に取り付けられたスタンドと、を備えたものである。
【実施例1】
【0021】
<設置・移動用アウトリガーの構成>
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は実施例1の設置・移動用アウトリガーを示し、(a)は正面図、(b)は側面図である。図2は実施例1の設置・移動用アウトリガーのギヤ構成の駆動機構を示す部分断面図である。
実施例1の設置・移動用アウトリガー1は、重量物Hを移動又は設置する際に使用するアウトリガーであり、その駆動機構2がギヤ構成のものである。重量物Hとはプレハブ家屋、コンテナ、パレットなどをいう。
【0022】
実施例1の設置・移動用アウトリガー1は、アウトリガー本体5、フック部材6とスタンド7を備えたものである。アウトリガー本体5はシリンダ3内でロッド4が上下動する部材である。このシリンダ3には、ロッド4を離間又は近接させてシリンダ3を上下動させるギヤ構成の駆動機構2が取り付けられている。更に、シリンダ3には、重量物Hを引っ掛けるフック部材6が取り付けられている。一方、ロッド4には、その下端部にスタンド7が首振り自在に取り付けられている。
【0023】
アウトリガー本体5は、シリンダ3内にロッド4が上下動するようになる部材である。なお、アウトリガー本体5は、上側にシリンダ3を下側にロッド4を配置した構成を示したが、これは一例である。この逆配置である上側にロッド4を下側にシリンダ3を配置したものでもよい。更には、駆動機構2により2本の部材が伸縮する構成であれば、シリンダ3とロッド4との構成に限定されない。単純に2本の棒状部材に駆動機構2を備えた構成でもよい。
【0024】
シリンダ3には、ロッド4を上下動させる駆動機構2が備えられている。この駆動機構2を駆動させるハンドル8が取り付けられている。このハンドル8はクランク部9とグリップ10とから成り、シリンダ3から着脱自在に取り外せる構成になる。このハンドル8の構成も一例である。例えば、このハンドル8に代えてモータ駆動(図示していない)にすることも可能である。
【0025】
<駆動機構の構成>
シリンダ3内に取り付けられた駆動機構2は、ロッド4を離間又は近接させてシリンダ3を上下動させる構成のものである。図2に示すように、実施例1の駆動機構2は、シリンダ3の上部に回動中心がシリンダ3の長手方向になるように取り付けられた第1ギヤ11と、この第1ギヤ11の回動軸に連結された、ロッド4の長手方向の下方に延びる棒状の雄ねじ部12と、を有する。
【0026】
第1ギヤ11は、シリンダ3外に取り付けられたハンドル8により回動する第2ギヤ13と噛合する。例えば、第1ギヤ11と第2ギヤ13には、かさ歯車を用いることができる。2軸が交差する状態に配置されるギヤであれば、かさ歯車以外に、ハイポイドギヤ、ウォームギヤ・ウォームホイールなどを用いることができる。
【0027】
棒状の雄ねじ部12は、筒状の雌ねじ部14と噛合する。この雄ねじ部12の一端にロッド4の上部が連結されている。雌ねじ部14は、シリンダ3内において上下動のみ自在になる。この雌ねじ部14は噛合する雄ねじ部12の回動により、シリンダ3内において上下動させられ、ロッド4がシリンダ3内において上下動する。
【0028】
第1ギヤ11に噛合する第2ギヤ13は、シリンダ3外に取り付けられたハンドル8を回すことで回動させることができる。このハンドル8は、ロッド4側から荷重が加えられても、筒状の雌ねじ部14と噛合する棒状の雄ねじ部12では、差動しないので、アウトリガー本体5が降下することはない。このように、ロッド4に外力が加わったときに、ロッド4が不用意に動作しないようになっている。
なお、図2のような構成は、一例であって、更に従動側から荷重が掛っても、能動側が動作しないギヤ構成であれば、図示するような構成に限定されないことは勿論である。
【0029】
<フック部材の構成>
フック部材6は重量物Hを引っ掛ける部材である。フック部材6は、シリンダ3と共に上下動する部材である。本発明のフック部材6は、図1(a)、(b)に示すように、重量物Hの下部と壁面の2面に同時に当たり安定した状態で掛け止められるように、フック部15の上部に連続して縦部材16が形成されている。そこで、フック部材6の縦部材16は、その上部は鉤状に形成され、飛び出した部分16aがシリンダ3の上端部に被さるように取り付けられフック部材6の縦部材16の中間位置、取付具17を介してシリンダ3に取り付けられている図1(b)参照)
【0030】
フック部材6の縦部材16のフック部15側には、この縦部材16には、容易にボルト固定できるねじ孔18が複数開けられている。また、重量物Hとしてのプレハブ家屋、コンテナCなどの壁面に傷がつかないように、これらのねじ孔18と干渉しないように、合成樹脂製の緩衝材19が貼られている。
【0031】
フック部材6の縦部材16の上部には、ロープ掛止め孔20が設けられている。このロープ掛止め孔20は、後述する図5に示すように、本発明の設置・移動用アウトリガー1をコンテナCなどに取り付けたときに、不意に転倒し、外れることを防止する効果がある。図5に示すように、コンテナCの上部に取り付けられた掛止めリングC1にロープRの一端を掛け、そのロープRの他端をこのロープ掛止め孔20に締結することで本発明の設置・移動用アウトリガー1が不用意に転倒することを防止できる。
【0032】
<スタンドの構成>
図3はスタンドの構成を示し、(a)は平面図、(b)は側面図である。
スタンド7はロッド4の下端部に、首振り自在に取り付けられたものである。例えば、ボールジョイント21を用いてロッド4の下端部に取り付けられる。このボールジョイント21の作動角は10度程度を有すれば十分である。設置・移動用アウトリガー1のスタンド7を、緩やかな傾斜地に接地させ、その状態で安定できれば十分だからである。勿論、設置・移動用アウトリガー1の設置場所に応じて、ボールジョイント21の作動角を10度以上にすることは可能である。
【0033】
本発明のスタンド7は、透孔22が開けられた板材23を複数枚分離自在に重ね合わせたものである。これらの透孔22にボルト24を螺合することで、複数枚の板材23を固定するためである。例えばこの板材23はアルミのような軽量な素材のものがよい。なお、図示例では5枚の板材23を重ねた状態を示しているが、この5枚に限定されないことは勿論である。
【0034】
スタンド7を構成する1枚の板材23には、本発明の設置・移動用アウトリガー1を移動させる際に把持するための把手25を側方へ突出するように形成してある。図示例では5枚の板材23の中間に、把手25が形成された板材23を配置した状態を示している。しかし、この配置状態は一例であって、この位置に限定されない。また、この把手25が形成された板材23を必ずしも使用する必要はない。
【0035】
<動作状態の説明>
図4は本発明の設置・移動用アウトリガーの動作状態を示す側面図であり、(a)はフック部材を上昇させる前の状態、(b)はフック部材を上昇させた状態である。
本発明の設置・移動用アウトリガー1では、使用の際には、設置・移動するプレハブ家屋、コンテナ、パレットのような重量物Hの下部にフック部材6を掛け止める。この状態でハンドル8を回すと、アウトリガー本体5を構成するシリンダ3からロッド4を離間させることによりシリンダ3が上昇する。このシリンダ3に取り付けられたフック部材6も上昇する(図4(b)の状態)。そこで、フック部材6の上昇に応じて重量物Hを持ち上げることができる。
【0036】
次に、この状態からハンドル8を逆に回すと、駆動機構2によりロッド4をシリンダ3に近接させることにより、シリンダ3が下降する。このシリンダ3に取り付けられたフック部材6も下降する(図4(b)から図4(a)の状態)。そこで、フック部材6を重量物Hから外すことができる。
【0037】
図示するように、スタンド7の底面からフック部材6のフック部15の上端までの間隔(d1)が、設置する接地面から重量物Hの下縁部までの距離となる。また、重量物Hを上下動させる間隔(d2)は、この間隔(d1)の約4倍程度あれば十分である、これ以上の間隔は傾斜面が急傾斜を意味し、本発明の設置・移動用アウトリガー1が、重量物Hを安定した状態で設置することができなくなるからである。
【0038】
<使用例の説明>
図5は本発明の設置・移動用アウトリガーをコンテナに取り付けて使用する状態を示す説明斜視図であり、(a)はコンテナの表側、(b)はコンテナの裏側である。
本発明の設置・移動用アウトリガー1を重量物HのコンテナCに取り付けて使用するときは、設置・移動用アウトリガー1を4基使用する。図示例では傾斜面にコンテナCを設置した状態を説明する。この傾斜面は、紙面の手前側(正面側)が高く、紙面の後側(背面側)が低い、なだらかな傾斜面である。このような傾斜面にコンテナCを設置した状態である。
【0039】
図5(a)に示すように、コンテナCの表側には、フック部材6が下降した状態で、これをコンテナCの下部に掛け止める。図5(b)に示すように、コンテナCの裏側には、フック部材6が上昇した状態で、これをコンテナCの下部に掛け止めている。図示例ではコンテナCの4ヶ所に掛け止めているが、接地面の状況に応じて、6か所又は3カ所と適宜変更できる。
【0040】
<スタンドの変形例1の構成>
図6はスタンドの変形例1の構成を示し、(a)は側面図、(b)は底面図である。
スタンドの変形例1は、スタンド7の底面の板材23に滑り止め31を着脱自在に取り付けたものである。図示例の滑り止め31は、強靭なプラスチックの素材で、下向きのカップ形状をした部材である。接地面が芝生のような柔軟な場合に適している。また、室内の床が滑りやすい接地面のときにも適している。
図示例では、滑り止め31を板材23の透孔22に部分的に取り付けた。滑り止め31は、必ずしも全ての透孔22に取り付ける必要はない。スタンド7が接地面に対して安定した状態になるようにすればよいので、スタンド7(板材23)の中心点から点対称に滑り止め31を配置することが好ましい。
【0041】
<スタンドの変形例2の構成>
図7はスタンドの下部にキャスターを取り付けた状態のスタンドの変形例2の構成を示す側面図である。
本発明の設置・移動用アウトリガー1を用いて、プレハブ家屋、コンテナ、パレットのような重量物を移動する際には、スタンド7の変形例2のようにスタンド7の底面の板材23にキャスター32を取り付けたものを用いる。例えば、このキャスター32は、板材23に数か所開けられた透孔22にキャスター32の基部を螺合させるだけで、板状のスタンド7からキャスター32に変えることができる。
【0042】
<スタンドの変形例3の構成>
図8はスタンドを外し、ロッドの下部にキャスターを取り付けた状態のスタンドの変形例3の構成を示す正面図である。
本発明の設置・移動用アウトリガー1を主に重量物Hの移動の際に用いるときは、スタンドの変形例3のように、スタンド7に代えて、ロッド4の下部に直接キャスター32を取り付ける。このように構成された設置・移動用アウトリガー1では、スタンド7がないために軽量になり、移動用補助具として利用しやすくなる。
【0043】
<フック部材の変形例の構成>
図9はフック部材の変形例を示す側面図である。
フック部材6のフック部33は、厚みの異なる種々の重量物Hの下部形状に適合できるように、上方向に徐々に拡開傾斜した形状にすることも可能である。このようにフック部材6のフック部33が、縦部材16面から離れるように上方向に徐々に拡開傾斜した形状になるものでは、厚みの薄いもの(t1)から厚いもの(t2)といった異なる種々の重量物Hの下部形状に無段階で適合できる。そこで、本発明の設置・移動用アウトリガー1を種々の形状の重量物に取り付けることができる。
【実施例2】
【0044】
<油圧構成の駆動機構>
図10は実施例2の油圧構成の駆動機構から成る設置・移動用アウトリガーを示す部分断面図である。
駆動機構2は、実施例1のように、ギヤ構造に限定されない。実施例2の設置・移動用アウトリガー41は、その駆動機構2に油圧構成を用いた。例えば、アウトリガー本体5を構成するシリンダ3内においてロッド4を上下動させる作動油を循環させる。この作動油は、シリンダ3内においてロッド4を上下動させる。作動油をシリンダ3内に吸引、吐出させるためにポンプ43を用いる。このポンプ43はレバー44動作によりプランジャピストンを前後させて作動油を吸引、吐出させる。
【0045】
このような油圧構成の駆動機構2では、レバー44を足で踏むとポンプ43から作動油がシリンダ3内に吸引され、シリンダ3からロッド4を離間させる。逆にシリンダ3内から作動油を吐出させると、ロッド4をシリンダ3に近接させる。このようにアウトリガー本体5を構成するシリンダ3からロッド4を離間又は近接させることにより、このシリンダ3に取り付けられたフック部材6は上下動する。そこで、フック部材6の上下動に応じて重量物Hを上昇させ、又は下降させることができる。
【0046】
なお、本発明は、設置・移動用アウトリガー装置1の軽量化と共に容易に取り扱えるような簡単な構成にすることで、スタンド7の接地面が傾斜面、凹凸面、滑りやすい又は柔軟な状態でも安定して設置することができ、地面等から重量物の底面との間隔が狭い場合でも重量物Hに容易に取り付けられ、これを持ち上げられることができれば、上述した発明の実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更できることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の設置・移動用アウトリガーは、プレハブ家屋、コンテナ、物流用パレットのような重量物を移動させ、それを設置する際に利用することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 設置・移動用アウトリガー
2 駆動機構
3 シリンダ
4 ロッド
5 アウトリガー本体
6 フック部材
7 スタンド
8 ハンドル
11 第1ギヤ
12 雄ねじ部
13 第2ギヤ
14 雌ねじ部
15 フック部
16 縦部材
16a 飛び出した部分
17 取付具
22 透孔
23 板材
31 滑り止め
32 キャスター
33 フック部
43 ポンプ
44 レバー
H 重量物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10