【実施例1】
【0021】
<設置・移動用アウトリガーの構成>
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は実施例1の設置・移動用アウトリガーを示し、(a)は正面図、(b)は側面図である。
図2は実施例1の設置・移動用アウトリガーのギヤ構成の駆動機構を示す部分断面図である。
実施例1の設置・移動用アウトリガー1は、重量物Hを移動又は設置する際に使用するアウトリガーであり、その駆動機構2がギヤ構成のものである。重量物Hとはプレハブ家屋、コンテナ、パレットなどをいう。
【0022】
実施例1の設置・移動用アウトリガー1は、アウトリガー本体5、フック部材6とスタンド7を備えたものである。アウトリガー本体5はシリンダ3内でロッド4が上下動する部材である。このシリンダ3には、ロッド4を離間又は近接させてシリンダ3を上下動させるギヤ構成の駆動機構2が取り付けられている。更に、シリンダ3には、重量物Hを引っ掛けるフック部材6が取り付けられている。一方、ロッド4には、その下端部にスタンド7が首振り自在に取り付けられている。
【0023】
アウトリガー本体5は、シリンダ3内にロッド4が上下動するようになる部材である。なお、アウトリガー本体5は、上側にシリンダ3を下側にロッド4を配置した構成を示したが、これは一例である。この逆配置である上側にロッド4を下側にシリンダ3を配置したものでもよい。更には、駆動機構2により2本の部材が伸縮する構成であれば、シリンダ3とロッド4との構成に限定されない。単純に2本の棒状部材に駆動機構2を備えた構成でもよい。
【0024】
シリンダ3には、ロッド4を上下動させる駆動機構2が備えられている。この駆動機構2を駆動させるハンドル8が取り付けられている。このハンドル8はクランク部9とグリップ10とから成り、シリンダ3から着脱自在に取り外せる構成になる。このハンドル8の構成も一例である。例えば、このハンドル8に代えてモータ駆動(図示していない)にすることも可能である。
【0025】
<駆動機構の構成>
シリンダ3内に取り付けられた駆動機構2は、ロッド4を離間又は近接させてシリンダ3を上下動させる構成のものである。
図2に示すように、実施例1の駆動機構2は、シリンダ3の上部に回動中心がシリンダ3の長手方向になるように取り付けられた第1ギヤ11と、この第1ギヤ11の回動軸に連結された、ロッド4の長手方向の下方に延びる棒状の雄ねじ部12と、を有する。
【0026】
第1ギヤ11は、シリンダ3外に取り付けられたハンドル8により回動する第2ギヤ13と噛合する。例えば、第1ギヤ11と第2ギヤ13には、かさ歯車を用いることができる。2軸が交差する状態に配置されるギヤであれば、かさ歯車以外に、ハイポイドギヤ、ウォームギヤ・ウォームホイールなどを用いることができる。
【0027】
棒状の雄ねじ部12は、筒状の雌ねじ部14と噛合する。この雄ねじ部12の一端にロッド4の上部が連結されている。雌ねじ部14は、シリンダ3内において上下動のみ自在になる。この雌ねじ部14は噛合する雄ねじ部12の回動により、シリンダ3内において上下動させられ、ロッド4がシリンダ3内において上下動する。
【0028】
第1ギヤ11に噛合する第2ギヤ13は、シリンダ3外に取り付けられたハンドル8を回すことで回動させることができる。このハンドル8は、ロッド4側から荷重が加えられても、筒状の雌ねじ部14と噛合する棒状の雄ねじ部12では、差動しないので、アウトリガー本体5が降下することはない。このように、ロッド4に外力が加わったときに、ロッド4が不用意に動作しないようになっている。
なお、
図2のような構成は、一例であって、更に従動側から荷重が掛っても、能動側が動作しないギヤ構成であれば、図示するような構成に限定されないことは勿論である。
【0029】
<フック部材の構成>
フック部材6は重量物Hを引っ掛ける部材である。フック部材6は、シリンダ3と共に上下動する部材である。本発明のフック部材6は、
図1(a)、(b)に示すように、重量物Hの下部と壁面の2面に同時に当たり安定した状態で掛け止められるように、フック部15の上部に連続して縦部材16が形成されている。そこで、フック部材6の縦部材16
は、その上部は鉤状に形成され、飛び出した部分16aがシリンダ3の上端部に被さるように取り付けられ
、フック部材6の縦部材16の中間位置
も、取付具17を介してシリンダ3に取り付けられている
(図1(b)参照)。
【0030】
フック部材6の縦部材16のフック部15側には、この縦部材16には、容易にボルト固定できるねじ孔18が複数開けられている。また、重量物Hとしてのプレハブ家屋、コンテナCなどの壁面に傷がつかないように、これらのねじ孔18と干渉しないように、合成樹脂製の緩衝材19が貼られている。
【0031】
フック部材6の縦部材16の上部には、ロープ掛止め孔20が設けられている。このロープ掛止め孔20は、後述する
図5に示すように、本発明の設置・移動用アウトリガー1をコンテナCなどに取り付けたときに、不意に転倒し、外れることを防止する効果がある。
図5に示すように、コンテナCの上部に取り付けられた掛止めリングC1にロープRの一端を掛け、そのロープRの他端をこのロープ掛止め孔20に締結することで本発明の設置・移動用アウトリガー1が不用意に転倒することを防止できる。
【0032】
<スタンドの構成>
図3はスタンドの構成を示し、(a)は平面図、(b)は側面図である。
スタンド7はロッド4の下端部に、首振り自在に取り付けられたものである。例えば、ボールジョイント21を用いてロッド4の下端部に取り付けられる。このボールジョイント21の作動角は10度程度を有すれば十分である。設置・移動用アウトリガー1のスタンド7を、緩やかな傾斜地に接地させ、その状態で安定できれば十分だからである。勿論、設置・移動用アウトリガー1の設置場所に応じて、ボールジョイント21の作動角を10度以上にすることは可能である。
【0033】
本発明のスタンド7は、透孔22が開けられた板材23を複数枚分離自在に重ね合わせたものである。これらの透孔22にボルト24を螺合することで、複数枚の板材23を固定するためである。例えばこの板材23はアルミのような軽量な素材のものがよい。なお、図示例では5枚の板材23を重ねた状態を示しているが、この5枚に限定されないことは勿論である。
【0034】
スタンド7を構成する1枚の板材23には、本発明の設置・移動用アウトリガー1を移動させる際に把持するための把手25を側方へ突出するように形成してある。図示例では5枚の板材23の中間に、把手25が形成された板材23を配置した状態を示している。しかし、この配置状態は一例であって、この位置に限定されない。また、この把手25が形成された板材23を必ずしも使用する必要はない。
【0035】
<動作状態の説明>
図4は本発明の設置・移動用アウトリガーの動作状態を示す側面図であり、(a)はフック部材を上昇させる前の状態、(b)はフック部材を上昇させた状態である。
本発明の設置・移動用アウトリガー1では、使用の際には、設置・移動するプレハブ家屋、コンテナ、パレットのような重量物Hの下部にフック部材6を掛け止める。この状態でハンドル8を回すと、アウトリガー本体5を構成するシリンダ3からロッド4を離間させることによりシリンダ3が上昇する。このシリンダ3に取り付けられたフック部材6も上昇する(
図4(b)の状態)。そこで、フック部材6の上昇に応じて重量物Hを持ち上げることができる。
【0036】
次に、この状態からハンドル8を逆に回すと、駆動機構2によりロッド4をシリンダ3に近接させることにより、シリンダ3が下降する。このシリンダ3に取り付けられたフック部材6も下降する(
図4(b)から
図4(a)の状態)。そこで、フック部材6を重量物Hから外すことができる。
【0037】
図示するように、スタンド7の底面からフック部材6のフック部15の上端までの間隔(d1)が、設置する接地面から重量物Hの下縁部までの距離となる。また、重量物Hを上下動させる間隔(d2)は、この間隔(d1)の約4倍程度あれば十分である、これ以上の間隔は傾斜面が急傾斜を意味し、本発明の設置・移動用アウトリガー1が、重量物Hを安定した状態で設置することができなくなるからである。
【0038】
<使用例の説明>
図5は本発明の設置・移動用アウトリガーをコンテナに取り付けて使用する状態を示す説明斜視図であり、(a)はコンテナの表側、(b)はコンテナの裏側である。
本発明の設置・移動用アウトリガー1を重量物HのコンテナCに取り付けて使用するときは、設置・移動用アウトリガー1を4基使用する。図示例では傾斜面にコンテナCを設置した状態を説明する。この傾斜面は、紙面の手前側(正面側)が高く、紙面の後側(背面側)が低い、なだらかな傾斜面である。このような傾斜面にコンテナCを設置した状態である。
【0039】
図5(a)に示すように、コンテナCの表側には、フック部材6が下降した状態で、これをコンテナCの下部に掛け止める。
図5(b)に示すように、コンテナCの裏側には、フック部材6が上昇した状態で、これをコンテナCの下部に掛け止めている。図示例ではコンテナCの4ヶ所に掛け止めているが、接地面の状況に応じて、6か所又は3カ所と適宜変更できる。
【0040】
<スタンドの変形例1の構成>
図6はスタンドの変形例1の構成を示し、(a)は側面図、(b)は底面図である。
スタンドの変形例1は、スタンド7の底面の板材23に滑り止め31を着脱自在に取り付けたものである。図示例の滑り止め31は、強靭なプラスチックの素材で、下向きのカップ形状をした部材である。接地面が芝生のような柔軟な場合に適している。また、室内の床が滑りやすい接地面のときにも適している。
図示例では、滑り止め31を板材23の透孔22に部分的に取り付けた。滑り止め31は、必ずしも全ての透孔22に取り付ける必要はない。スタンド7が接地面に対して安定した状態になるようにすればよいので、スタンド7(板材23)の中心点から点対称に滑り止め31を配置することが好ましい。
【0041】
<スタンドの変形例2の構成>
図7はスタンドの下部にキャスターを取り付けた状態のスタンドの変形例2の構成を示す側面図である。
本発明の設置・移動用アウトリガー1を用いて、プレハブ家屋、コンテナ、パレットのような重量物を移動する際には、スタンド7の変形例2のようにスタンド7の底面の板材23にキャスター32を取り付けたものを用いる。例えば、このキャスター32は、板材23に数か所開けられた透孔22にキャスター32の基部を螺合させるだけで、板状のスタンド7からキャスター32に変えることができる。
【0042】
<スタンドの変形例3の構成>
図8はスタンドを外し、ロッドの下部にキャスターを取り付けた状態のスタンドの変形例3の構成を示す正面図である。
本発明の設置・移動用アウトリガー1を主に重量物Hの移動の際に用いるときは、スタンドの変形例3のように、スタンド7に代えて、ロッド4の下部に直接キャスター32を取り付ける。このように構成された設置・移動用アウトリガー1では、スタンド7がないために軽量になり、移動用補助具として利用しやすくなる。
【0043】
<フック部材の変形例の構成>
図9はフック部材の変形例を示す側面図である。
フック部材6のフック部33は、厚みの異なる種々の重量物Hの下部形状に適合できるように、上方向に徐々に拡開傾斜した形状にすることも可能である。このようにフック部材6のフック部33が、縦部材16面から離れるように上方向に徐々に拡開傾斜した形状になるものでは、厚みの薄いもの(t1)から厚いもの(t2)といった異なる種々の重量物Hの下部形状に無段階で適合できる。そこで、本発明の設置・移動用アウトリガー1を種々の形状の重量物に取り付けることができる。