(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本開示の一態様に係る実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に説明する各実施形態は一例であり、本開示はこれらの実施の形態により限定されるものではない。
【0021】
(実施の形態1)
[携帯無線装置100の構成]
図1は、本実施の形態に係る携帯無線装置100の構成の一例を示すブロック図である。
【0022】
図1に示す携帯無線装置100は、例えば、
図2に示すような腕時計型端末等のユーザの身体に装着して使用されるウェアラブル用無線機器である。
【0023】
また、
図1に示す携帯無線装置100は、一例として、セルラシステムと、無線LANシステム(例えば、WiFi(登録商標)システム)の2つの無線システムを搭載する。
【0024】
また、本実施の形態では、セルラシステムと無線LANシステムとに対して優先度が設定されているものとする。本実施の形態では、一例として、セルラシステムの優先度が、無線LANシステムの優先度よりも高い場合について説明する。
【0025】
図1に示す携帯無線装置100は、アンテナ101、整合回路部102、無線部103、アンテナ104、整合回路部105、無線部106、及び、制御部107を有する。なお、アンテナ101、整合回路部102、無線部103は、セルラシステム用の構成部であり、アンテナ104、整合回路部105、無線部106は、無線LANシステム用の構成部である。
【0026】
アンテナ101は、セルラシステムを用いたデータ通信(セルラ通信)の信号を送受信する。
【0027】
整合回路部102は、アンテナ101及び無線部103にそれぞれ接続される。整合回路部102は、アンテナ101のインピーダンスを、例えば、セルラ通信の周波数帯である2GHz帯で無線部103の回路インピーダンスに整合を取る。なお、整合を取る無線部103の回路インピーダンスは、一般的には50Ω程度である。
【0028】
無線部103は、制御部107からの指示に従って、アンテナ101を介して送受信されるセルラシステムを用いたデータ通信の信号に対して、変復調処理等の無線信号処理を行う。
【0029】
アンテナ104は、無線LANシステムを用いたデータ通信(無線LAN通信)の信号を送受信する。
【0030】
整合回路部105は、アンテナ104及び無線部106にそれぞれ接続される。整合回路部105は、アンテナ104のインピーダンスを、例えば、無線LAN通信の周波数帯である2.4GHz帯で無線部106の回路インピーダンスに整合を取る。なお、整合を取る無線部106の回路インピーダンスは、一般的には50Ω程度である。
【0031】
無線部106は、制御部107からの指示に従って、アンテナ104を介して送受信される無線LANシステムを用いたデータ通信の信号に対して、変復調処理等の無線信号処理を行う。
【0032】
制御部107は、セルラシステムの無線部102及び無線LANシステムの無線部105における無線信号処理の制御、ディスプレイ等の表示装置における表示画面の制御、及び、マイク及びスピーカ等の音声信号処理の制御を行う。また、制御部107は、携帯無線装置100を利用するユーザの操作入力を制御する。
【0033】
制御部107は、例えば、検出部171、及び、送信制御部172を含む構成を採る。
【0034】
検出部171は、データ通信中におけるユーザによる携帯無線装置100の使用形態を検出する。具体的には、検出部171は、携帯無線装置100をユーザの口元又は頭部に近接させた状態であるか否かを判定する。なお、以下では、携帯無線装置100がユーザの口元又は頭部に近接した状態をまとめて「頭部近接状態」と呼ぶこともある。換言すると、「頭部近接状態」は、Mouth-wornの条件が適用される状態である。
【0035】
送信制御部172は、携帯無線装置100において発生する通信(通話)がセルラ通信であるか、無線LAN通信であるかを判定する。
【0036】
上記使用形態検出及び使用される無線システム判定の処理によって、送信制御部172は、携帯無線装置100をユーザの口元及び頭部に近接させた頭部近接状態で、無線LAN通信と、セルラ通信とが同時に発生したか否かを判定する。
【0037】
そして、送信制御部172は、頭部近接状態で無線LAN通信とセルラ通信とが同時に発生したと判定した場合、優先度が低い無線LANシステムの無線部106から出力される信号の送信電力を低下させる。例えば、送信制御部172は、頭部近接状態で無線LAN通信とセルラ通信とが同時に発生したと判定した場合、優先度が低い無線LANシステムの送信処理を停止する。つまり、送信制御部172は、無線部106に対して送信信号の送信処理を停止させる。
【0038】
一方、送信制御部172は、頭部近接状態で無線LAN通信とセルラ通信とが同時に発生したと判定した場合、優先度が低い無線LANシステムの受信処理を継続させる。
【0039】
[携帯無線装置100の動作]
次に、上述した携帯無線装置100における送信方法について詳細に説明する。
【0040】
図3は、本実施の形態に係る携帯無線装置100の動作を示すフローチャートである。
【0041】
なお、
図3は、携帯無線装置100において、無線LAN通信環境下でデータ通信が行われている状態から開始される処理を示す。
【0042】
また、ここでは、無線LAN通信としては、映像配信等のマルチキャスト通信(映像データの受信処理)等が想定される。
【0043】
図3において、ステップ(以下、「ST」と表す)101では、制御部107は、音声通話の着信を検出する。
【0044】
ST102では、制御部107は、音声通話がセルラ通信であるか否かを判定する。例えば、制御部107は、表示装置に電話着信画面が表示されている場合、又は、携帯無線装置100が参照するアドレス帳に登録された電話番号又は「090」、「080」、「070」などから始まる携帯電話番号又は「0」から始まる市外局番などに対する着信/発呼である場合に、音声通話がセルラ通信であると判定してもよい。なお、音声通話がセルラ通信であるか否かの判定方法は、これらに限定されるものではない。
【0045】
音声通話がセルラ通信ではない場合(ST102:NO。つまり、無線LAN通信の場合)、ST103において、制御部107は、音声通話の着信に応答する。例えば、無線LAN通信を用いた音声通話には、OTT(Over The Top)による音声通話が挙げられる。また、制御部107は、無線LAN通信環境下のデータ通信を継続させる。
【0046】
音声通話がセルラ通信である場合(ST102:YES)、ST104において、制御部107は、音声通話の着信に応答する。
【0047】
ST105では、ユーザが携帯無線装置100を用いて音声通話を行う使用状態が、携帯無線装置100をユーザの口元又は頭部に近接させる頭部近接状態であるか否かを判定する。すなわち、制御部107は、音声通話におけるSARの評価条件としてMouth-wornの条件が適用されるか否かを判定する。例えば、制御部107は、ユーザが携帯無線装置100に搭載されたマイクを利用して通話している場合(マイクの電源がONの場合等)、頭部近接状態であると判定してもよい。又は、制御部107は、ユーザがヘッドセット等の携帯無線装置100以外の外部の装置を利用して通話している場合には、頭部近接状態ではないと判定してもよい。なお、頭部近接状態であるか否かの判定方法は、これらに限定されるものではない。
【0048】
ユーザが音声通話を行う状態が頭部近接状態ではない場合(ST105:NO)、ST106において、制御部107は、セルラ通信を用いた音声通話、及び、無線LAN通信を用いたデータ通信を継続させる。
【0049】
つまり、携帯無線装置100は、頭部近接状態ではない状態において無線LAN通信及びセルラ通信が同時に動作する場合には、Mouth-wornの条件が適用されないので、セルラ通信及び無線LAN通信での送信処理を同時に実施する。
【0050】
ユーザが音声通話を行う状態が頭部近接状態である場合(ST105:YES)、ST107において、制御部107は、セルラ通信を用いた音声通話を継続させるとともに、無線LAN通信における送信処理を切断(停止)する。なお、制御部107は、無線LAN通信における受信処理はそのまま継続させる。
【0051】
ST108では、制御部107は、音声通話が終了(切断)したか否かを判定する。音声通話が終了していない場合(ST108:NO)、制御部107は、ST108の処理を繰り返す。音声通話が終了した場合(ST108:YES)、ST109において、制御部107は、ST107において停止させた無線LAN通信の送信処理を再開させる。
【0052】
以上のように、本実施の形態では、携帯無線装置100は、頭部近接状態において無線LAN通信及びセルラ通信が同時に動作する場合には、優先度が高いセルラ通信を継続させ、優先度が低い無線LAN通信における送信処理を停止する。つまり、携帯無線装置100は、頭部近接状態、つまり、Mouth-wornの条件が適用される場合には、セルラ通信と無線LAN通信とを同時に動作させるものの、送信処理を同時に動作させることを回避する。
【0053】
このように、携帯無線装置100は、頭部近接状態で無線LAN通信とセルラ通信とが同時に発生した場合でも優先度が低い無線LAN通信の送信処理を停止させる。よって、携帯無線装置100では、複数の無線システムにおける同時の送信処理を回避し、優先度が高いセルラ通信の送信処理のみを単独で行うことができる。よって、SARの評価は、送信処理が行われているセルラ通信のみが対象となる。また、携帯無線装置100では、優先度が高いセルラ通信の送信電力を低減させることなく送信処理を実施でき、セルラ通信の通信品質の低下を回避することができる。
【0054】
よって、本実施の形態によれば、携帯無線装置100をユーザの口元及び頭部に近接させた状態での通信に対して、通信品質を低下させることなく、SAR特性を改善することができる。
【0055】
また、本実施の形態では、携帯無線装置100は、頭部近接状態でセルラ通信と無線LAN通信とが同時に発生した場合に無線LAN通信の送信処理を停止させるものの、無線LAN通信の受信処理を継続させる。このため、例えば、無線LAN通信として上述した映像配信等のマルチキャスト通信が行われている場合には、携帯無線装置100は、映像データ等の受信処理を引き続き行うことができる。すなわち、携帯無線装置100を用いて映像配信サービスを利用しているユーザには、無線LAN通信における送信処理の停止による影響は無い。
【0056】
なお、本実施の形態では、無線システムの種類(セルラシステム又は無線LANシステム)に応じて優先度が設定される場合について説明したが、各無線システムに設定される優先度は、当該無線システムにおける通信環境(例えば、通信品質)に応じて設定されてもよい。すなわち、通信品質がより良好な無線システムほど、優先度をより高くしてもよい。
【0057】
(実施の形態2)
本実施の形態に係る携帯無線装置は、実施の形態1に係る携帯無線装置100と基本構成が共通するので、
図1を援用して説明する。
【0058】
図4は、本実施の形態に係る携帯無線装置100の動作を示すフローチャートである。なお、
図4において、実施の形態1(
図3)と同様の処理には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0059】
なお、ここでは、無線LAN通信を利用した動作としては、Web(World Wide Web)サイトの閲覧等が想定される。
【0060】
また、本実施の形態では、実施の形態1と同様、セルラシステムの優先度が、無線LANシステムの優先度よりも高い場合について説明する。
【0061】
ユーザが音声通話を行う状態が頭部近接状態であると判定された場合(ST105:YES)、ST201において、携帯無線装置100の制御部107は、セルラ通信を用いた音声通話を継続させるとともに、無線LAN通信を切断(停止)する。すなわち、本実施の形態では、制御部107は、無線LANシステムの送信処理及び受信処理を停止する。
【0062】
音声通話が終了した場合(ST108:YES)、ST202において、制御部107は、ST201において停止させた無線LAN通信を再開させる。
【0063】
以上のように、本実施の形態では、携帯無線装置100は、頭部近接状態において無線LAN通信及びセルラ通信が同時に動作する場合には、優先度が高いセルラ通信を継続させ、優先度が低い無線LAN通信を一時的に停止する。つまり、携帯無線装置100は、頭部近接状態、つまり、Mouth-wornの条件が適用される場合には、セルラ通信のみを動作させる。
【0064】
このように、携帯無線装置100は、無線LANシステムを用いたデータ通信中に、頭部近接状態でセルラシステムを用いたデータ通信が発生した場合、優先度が低い無線LANシステムの送信処理及び受信処理を停止する。よって、携帯無線装置100では、複数の無線システムにおける同時の送信処理を回避し、優先度が高いセルラ通信の送信処理のみを単独で行うことができる。よって、SARの評価は、送信処理が行われているセルラ通信のみが対象となる。また、携帯無線装置100では、優先度が高いセルラ通信の送信電力を低減させることなく送信処理を実施することができ、セルラ通信の通信品質の低下を回避することができる。
【0065】
よって、本実施の形態によれば、実施の形態1と同様、携帯無線装置100をユーザの口元及び頭部に近接させた状態での通信に対して、通信品質を低下させることなく、SAR特性を改善することができる。
【0066】
また、頭部近接状態において音声通話を行う際、例えば、携帯無線装置100に搭載されたスピーカがユーザの耳元に配置され、マイクがユーザの口元に配置された状態が想定される。このため、ユーザが音声通話をしながら、無線LAN通信を用いて行われていたWebサイト閲覧のために、携帯無線装置100に搭載された表示装置を見ることは困難である。このため、音声通話処理とWebサイト閲覧処理とが同時に発生した場合に、音声通話処理が優先され、Webサイト閲覧処理が停止されたとしても、ユーザに対する影響は無い。
【0067】
なお、本実施の形態では、無線システムの種類(セルラシステム又は無線LANシステム)に応じて優先度が設定される場合について説明したが、各無線システムに設定される優先度は、当該無線システムにおける通信環境(例えば、通信品質)に応じて設定されてもよい。すなわち、通信品質がより良好な無線システムほど、優先度をより高くしてもよい。
【0068】
(実施の形態2の変形例)
実施の形態2の変形例では、無線LAN通信の送受信処理を停止している間、無線LAN通信において未使用となるアンテナをセルラ通信に使用する場合について説明する。
【0069】
図5は、本変形例に係る携帯無線装置200の構成の一例を示すブロック図である。なお、
図5において、
図1に示す携帯無線装置100と同一の動作を行う構成部には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0070】
具体的には、携帯無線装置200は、携帯無線装置100の構成に加え、スイッチ201、整合回路202、スイッチ203、スイッチ204、分配合成器205を備える。
【0071】
スイッチ201は、一方の端子がアンテナ104に接続され、他方の端子(端子A、B)が整合回路105又は整合回路202に接続される。スイッチ201は、制御部107からの指示(図示せず)に基づいて端子A及び端子Bの接続を切り替える。
【0072】
整合回路202は、アンテナ104及び分配合成器205にそれぞれ接続される。整合回路部202は、アンテナ104のインピーダンスを、例えば、セルラ通信の周波数帯である2GHz帯で無線部103の回路インピーダンスに整合を取る。なお、整合を取る無線部103の回路インピーダンスは、一般的には50Ω程度である。
【0073】
スイッチ203は、一方の端子がアンテナ101に接続され、他方の端子(端子C、D)がスイッチ204又は分配合成器205に接続される。スイッチ203は、制御部107からの指示(図示せず)に基づいて端子C及び端子Dの接続を切り替える。
【0074】
スイッチ204は、一方の端子が無線部103に接続され、他方の端子(端子E、F)がスイッチ203又は分配合成器205に接続される。スイッチ204は、制御部107からの指示(図示せず)に基づいて端子E及び端子Fの接続を切り替える。
【0075】
分配合成器205は、無線部103から入力されるセルラ通信のデータ信号(高周波信号)をセルラ通信用のアンテナ101と、無線LAN通信用のアンテナ104とに分配する。
【0076】
図6は、本変形例に係る携帯無線装置200の動作を示すフローチャートである。なお、
図6において、実施の形態2(
図4)と同様の処理には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0077】
ST201において無線LAN通信が切断(停止)されると、ST251では、携帯無線装置200の制御部107は、無線LAN用のアンテナ104を、セルラシステム側に切り替えて、分配合成器205における分配給電を開始する。
【0078】
具体的には、
図5において、通常時には、スイッチ201は端子A側に接続されており、アンテナ104は、整合回路105を介して無線LAN通信用の無線部106に接続されている。また、
図5において、通常時には、スイッチ203は端子D側に接続され、スイッチ204は端子F側に接続されており、アンテナ101は、整合回路102を介してセルラ通信用の無線部103に直接接続されている。
【0079】
これに対して、ST251では、スイッチ201の接続が端子B側に切り替えられることにより、アンテナ104は、整合回路202、分配合成器205を介して無線部103に接続される。
【0080】
また、ST251では、スイッチ203の接続が端子C側に切り替えられ、スイッチ204の接続が端子E側に切り替えられる。これにより、アンテナ101は、整合回路102、分配合成器205を介して無線部103に接続される。
【0081】
これにより、無線部103から出力されるセルラシステムの送信信号は、セルラシステムのアンテナ101と無線LANシステムのアンテナ104とに分配して送信される。
【0082】
次いで、音声通話が終了すると(ST108:YES)、ST252において、制御部107は、無線LAN用のアンテナ104を、無線LANシステム側に切り替えて、分配給電を停止する。すなわち、
図5において、スイッチ201の接続が端子A側に切り替えられ、スイッチ203の接続が端子D側に切り替えられ、スイッチ204の接続が端子F側に切り替えられる。
【0083】
そして、制御部107は、ST201において停止させた無線LAN通信を再開させる(ST202)。
【0084】
このようにして、頭部近接状態において無線LAN通信とセルラ通信とが同時に発生した場合において、無線部103から出力されるデータ信号は、分配合成器205を介して、セルラシステムのアンテナ101に加え、通信が停止された無線LANシステムのアンテナ103に分配して送信される。このように、セルラ通信の高周波信号が2つのアンテナに分配されるので、各アンテナでのアンテナ電流分布密度は低くなり、SARが低くなる。よって、本変形例によれば、セルラ通信での音声通話の品質を向上させつつ、SAR特性を改善することができる。
【0085】
(実施の形態3)
本実施の形態に係る携帯無線装置は、実施の形態2に係る携帯無線装置100と基本構成が共通するので、
図1を援用して説明する。
【0086】
図7は、本実施の形態に係る携帯無線装置100の動作を示すフローチャートである。なお、
図7において、実施の形態2(
図4)と同様の処理には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0087】
なお、ここでは、無線LAN通信を利用した動作としては、Web(World Wide Web)サイトからのデータダウンロード等が想定される。
【0088】
また、本実施の形態では、実施の形態1と同様、セルラシステムの優先度が、無線LANシステムの優先度よりも高い場合について説明する。
【0089】
図7において、ユーザが音声通話を行う状態が頭部近接状態であると判定された場合(ST105:YES)、ST301では、携帯無線装置100の制御部107は、無線LAN通信を用いて行われていたデータ通信をセルラ通信に切り替える。
【0090】
ST201において無線LAN通信を用いたデータ通信が切断(停止)されると、ST302では、制御部107は、セルラ通信を用いて、音声通話とデータ通信とに対してマルチタスク処理を行う。
【0091】
このように、携帯無線装置100は、頭部近接状態で、無線LAN通信とセルラ通信とが同時に発生した場合、無線LANシステムを用いて行われていたデータ通信を、セルラシステムを用いて行う。
【0092】
こうすることで、携帯無線装置100では、複数の無線システムにおける同時の送信処理を回避し、優先度が高いセルラ通信の送信処理のみを単独で行うことができるので、実施の形態2と同様、SARの評価は、送信処理が行われているセルラ通信のみが対象となる。また、携帯無線装置100では、優先度が高いセルラ通信の送信電力を低減させることなく送信処理を実施することができ、セルラ通信の通信品質の低下を回避することができる。
【0093】
また、頭部近接状態において音声通話を行う際、携帯無線装置100は、SAR特性の改善のために無線LAN通信が切断されるものの、無線LANシステムを用いて行われていたデータ通信をセルラシステムのデータ通信に切り替える。これにより、携帯無線装置100は、無線LANシステムを用いて行われていたデータ通信を継続することができる。
【0094】
よって、本実施の形態では、音声通話とデータ通信とをセルラ通信においてマルチタスク処理することにより、音声通話とデータ通信とを同時に実行しつつ、セルラ通信による音声の通信品質を低下させることなく、SAR特性を改善することができる。
【0095】
なお、音声通話が終了した場合(
図7に示すST108:YES)、携帯無線装置100は、データ通信を、セルラシステムを用いて引き続き実行してもよく、無線LANシステムに再び切り替えて実行してもよい。例えば、携帯無線装置100は、音声通話の切断後におけるセルラ通信の通信環境が安定している場合にはセルラシステムを引き続き用いてデータ通信を行い、無線LAN通信の通信環境が安定している場合には無線LANシステムに切り替えてデータ通信を再開してもよい。
【0096】
また、本実施の形態では、無線システムの種類(セルラシステム又は無線LANシステム)に応じて優先度が設定される場合について説明したが、各無線システムに設定される優先度は、当該無線システムにおける通信環境(例えば、通信品質)に応じて設定されてもよい。すなわち、通信品質がより良好な無線システムほど、優先度をより高くしてもよい。
【0097】
(実施の形態4)
本実施の形態に係る携帯無線装置は、実施の形態2に係る携帯無線装置100と基本構成が共通するので、
図1を援用して説明する。
【0098】
実施の形態1〜3では、無線システムに対して優先度が予め設定されている場合について説明した。これに対して、本実施の形態では、携帯無線装置100のユーザが使用する無線システムを選択することにより、無線システムの優先度が設定される場合について説明する。
【0099】
図8は、本実施の形態に係る携帯無線装置100の動作を示すフローチャートである。なお、
図8において、実施の形態2(
図4)と同様の処理には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0100】
なお、ここでは、無線LAN通信を利用した動作としては、Web(World Wide Web)サイトからのデータダウンロード等が想定される。
【0101】
また、ここでは、携帯無線装置100は、無線LANシステムを用いたOTTによる音声通話サービス(例えば、VoIP(Voice over Internet Protocol)サービス)に対応しているものとする。
【0102】
図8において、ユーザが音声通話を行う状態が頭部近接状態であると判定された場合(ST105:YES)、ST401では、携帯無線装置100の制御部107は、セルラ通信の音声通話を、無線LAN通信に切り替えるか否かをユーザに対して促す情報を表示装置に表示させる。ユーザは、表示装置に表示された情報に基づいて、音声通話をセルラ通信又は無線LAN通信の何れを用いて実施するかを選択する。ユーザによって選択された無線システムを示す情報は、制御部107に出力される(図示せず)。
【0103】
ST402では、制御部107は、音声通話の実施にユーザがセルラ通信を選択したか、無線LAN通信を選択したかを判定する。
【0104】
ユーザが無線LAN通信を選択した場合(ST402:無線LAN通信)、制御部107は、音声通話の通話相手の端末に対して、音声通話に用いる無線システムの切り替えを示す切替情報を表示する。これにより、通話相手の端末の表示画面には、携帯無線装置100において音声通話の切り替えが要求されている旨が表示される(ST403)。また、通話相手の端末では、携帯無線装置100(ST401,ST402)と同様、セルラ通信の音声通話を、無線LAN通信に切り替えるか否かをユーザに対して促す情報が表示装置に表示され、ユーザは、表示装置に表示された情報に基づいて、音声通話をセルラ通信又は無線LAN通信の何れを用いて実施するかを選択する。通話相手の端末において選択された無線システムを示す情報は、携帯無線装置100に送信される。
【0105】
ST404では、制御部107は、通話相手の端末から送信された情報に基づいて、音声通話の実施に通話相手がセルラ通信を選択したか、無線LAN通信を選択したかを判定する。
【0106】
ST402及びST404において、ユーザ又は通話相手がセルラ通信を選択した場合(ST402,ST404:セルラ通信)、ST405では、制御部107は、実施の形態3で説明したように、セルラシステムにおいて、音声通話とデータ通信とに対してマルチタスク処理を行う。なお、ST405の処理は、例えば、
図7に示すST301、ST201、ST302、ST108の処理と同様の処理である。
【0107】
一方、通話相手が無線LAN通信を選択した場合(ST404:無線LAN通信)、ST406では、制御部107は、セルラ通信を用いた音声通話を切断する。
【0108】
つまり、携帯無線装置100のユーザ及び通話相手が無線システムを選択することによって、無線システムの優先度が設定される。例えば、
図8では、携帯無線装置100のユーザ及び通話相手が無線LANシステムを選択した場合、無線LANシステムの優先度が、セルラシステムの優先度よりも高く設定されたことになる。一方、
図8では、携帯無線装置100のユーザ又は通話相手がセルラシステムを選択した場合、セルラシステムの優先度が、無線LANシステムの優先度よりも高く設定されたことになる。
【0109】
ST407では、制御部107は、無線LANシステム(例えば、VoIPサービス)を介して通話相手の端末に対して発呼する。通話相手は、携帯無線装置100からの発呼に対して着信し、応答する(ST408)。
【0110】
ST409では、制御部107は、無線LANシステムにおいて、音声通話とデータ通信に対してマルチタスク処理を行う。
【0111】
このように、携帯無線装置100は、無線LANシステムを用いたデータ通信(データ通信Aと呼ぶ)中に、頭部近接状態でセルラシステムを用いたデータ通信(データ通信Bと呼ぶ)が発生した場合、携帯無線装置100のユーザ及び通話相手によって選択された無線システム(優先度が高い無線システム)を用いて、上記データ通信A及びデータ通信Bを行う。
【0112】
すなわち、携帯無線装置100は、セルラシステムが選択された場合には、実施の形態3と同様にしてセルラシステムを用いて、データ通信A及びデータ通信Bを行い、無線LANシステムが選択された場合には、無線LANシステムを用いて、データ通信A及びデータ通信Bを行う。
【0113】
こうすることで、携帯無線装置100では、複数の無線システムにおける同時の送信処理を回避し、セルラシステム又は無線LANシステムのうち、携帯無線装置100を利用するユーザに選択された優先度の高い一方の無線システムの送信処理のみを単独で行うことができる。これにより、SARの評価は、通信が行われている一方の無線システムのみが対象となる。また、携帯無線装置100では、優先度が高い無線システムでのデータ通信の送信電力を低減させることなく送信処理を実施することができ、当該無線システムの通信品質の低下を回避することができる。
【0114】
また、
図8において、無線LANシステムが選択されたとしても、携帯無線装置100は、SAR特性の改善のためにセルラ通信を切断するものの、セルラシステムを用いて行われていたデータ通信を無線LAN通信に切り替える。これにより、携帯無線装置100は、セルラ通信を用いて行われていた音声通話を継続することができる。
【0115】
よって、本実施の形態では、音声通話とデータ通信とを複数の無線システムのうち優先度が最も高い何れか1つの無線システムにおいてマルチタスク処理することにより、音声通話とデータ通信とを同時に実行しつつ、当該無線システムでの音声の通信品質を低下させることなく、SAR特性を改善することができる。
【0116】
なお、本実施の形態では、携帯無線装置100のユーザ(又は通話相手)の選択(例えば、
図8に示すST402,ST404)によって無線システムの優先度が設定される場合について説明した。しかし、本実施の形態では、無線システムの優先度は、無線システムにおける通信環境(例えば、通信品質)に応じて設定されてもよい。この場合、例えば、
図8に示すST401〜ST404の処理の代わりに、携帯無線装置100は、優先度の高い無線システムを判定し、セルラシステムの優先度が高い場合にはST405の処理に進み、無線LANシステムの優先度が高い場合にはST406〜ST409の処理に進めばよい(図示せず)。
【0117】
また、本実施の形態において、携帯無線装置100は、音声通話を行う状態が頭部近接状態であるか否かに依らず、着信があった時点で無線LAN通信に切り替えてもよい。この場合には、携帯無線装置100は、着信時に、通話開始前に無線LAN通信に切り替えるか否かを表示する。なお、その場合には、
図8において、ST105の処理は不要となる。
【0118】
以上、本開示の各実施の形態について説明した。
【0119】
なお、
図1又は
図5に示す携帯無線装置100,200は、使用状況に応じて上記各実施の形態における送信処理を切り替えて適用してもよい。例えば、携帯無線装置100は、無線LAN通信を利用した処理内容が映像配信サービス等のように主に受信処理のみの場合には、実施の形態1に係る送信処理(無線LAN通信の送信処理のみを停止)を適用すればよい。また、携帯無線装置100は、通信中の無線LAN通信を利用した処理内容がWebブラウザの閲覧等のように頭部近接状態での利用が困難である処理である場合には、実施の形態2に係る送信処理(無線LAN通信の送受信処理を停止)を適用すればよい。また、携帯無線装置100は、通信中の無線LAN通信を利用した処理内容がWebサイトからのデータダウンロード等である場合には、実施の形態3又は4に係る送信処理(一方の無線システムでのマルチタスク処理)を適用すればよい。
【0120】
また、上記実施の形態では、携帯無線装置100がセルラシステムと無線LANシステムとにそれぞれ対応する構成分を搭載する場合について説明したが、無線システムは、これらに限定されるものではない。また、実施の形態1〜3では、セルラシステムの優先度が無線LANシステムの優先度よりも高い場合について説明したが、複数の無線システムに設定される優先度は、これに限定されない。
【0121】
また、上記実施の形態では、無線LAN通信環境下でのデータ通信中に音声通話の着信があった場合について説明したが(例えば、
図3,
図4,
図6〜
図8)、無線LAN通信環境下でのデータ通信中に音声通話の発呼があった場合についても、携帯無線装置100は同様にして送信処理を行えばよい。
【0122】
また、上記実施の形態では、本開示の一態様をハードウェアで構成する場合を例にとって説明したが、本開示はハードウェアとの連携においてソフトウェアで実現することも可能である。
【0123】
また、上記実施の形態の説明に用いた各機能ブロックは、典型的には集積回路であるLSIとして実現される。集積回路は、上記実施の形態の説明に用いた各機能ブロックを制御し、入力と出力を備えてもよい。これらは個別に1チップ化されてもよいし、一部または全てを含むように1チップ化されてもよい。ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
【0124】
また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路または汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。
【0125】
さらには、半導体技術の進歩または派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。バイオ技術の適用等が可能性としてありえる。