(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
吸着材からなる蓄熱材を収容した収容体と、ファンと、当該ファンによって取り入れた外気に対して加熱する加熱部とを有し、前記加熱部によって加熱した後の空気を、前記ファンによって前記収容体内の蓄熱材に供給可能である蓄熱システムであって、
前記加熱部は、温排熱によって前記外気を加熱するように構成され、
蓄熱運転時には、前記加熱部によって加熱された空気を前記収容体に供給して前記蓄熱材で蓄熱し、
放熱運転時には、取り入れた外気を前記収容体に供給して前記蓄熱材で外気中の水分を吸着し、前記水分が吸着された後の空気を、給気として熱の需要先に供給するようにし、
前記放熱運転時に、熱の需要先に供給する給気の温度または湿度の調整を行うことを特徴とする、温排熱利用蓄熱システム。
吸着材からなる蓄熱材を収容した収容体と、ファンと、当該ファンによって取り入れた外気に対して加熱する加熱部とを有し、前記加熱部によって加熱した後の空気を、前記ファンによって前記収容体内の蓄熱材に供給可能である蓄熱システムであって、
前記加熱部は、温排熱によって前記外気を加熱するように構成され、
蓄熱運転時には、前記加熱部によって加熱された空気を前記収容体に供給して前記蓄熱材で蓄熱し、
放熱運転時には、取り入れた外気を前記収容体に供給して前記蓄熱材で外気中の水分を吸着し、前記水分が吸着された後の空気を、給気として熱の需要先に供給するようにし、
前記放熱運転時に、前記給気の一部を前記外気と合流させて前記収容体に供給する空気の温度または湿度を制御することを特徴とする、温排熱利用蓄熱システム。
吸着材からなる蓄熱材を収容した収容体と、ファンと、当該ファンによって取り入れた外気に対して加熱する加熱部とを有し、前記加熱部によって加熱した後の空気を、前記ファンによって前記収容体内の蓄熱材に供給可能である蓄熱システムの運転方法であって、
前記加熱部は、温排熱によって前記外気を加熱するように構成され、
蓄熱運転時には、前記加熱部によって加熱された空気を前記収容体に供給して前記蓄熱材で蓄熱し、
放熱運転時には、取り入れた外気を前記収容体に供給して前記蓄熱材で外気中の水分を吸着し、前記水分が吸着された後の空気を、給気として熱の需要先に供給するようにし、
前記放熱運転時に、熱の需要先に供給する給気の温度または湿度の調整を行うことを特徴とする、温排熱利用蓄熱システムの運転方法。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施の形態にかかる蓄熱システムの構成の概略を模式的に示した説明図である。
【
図2】放熱運転時の実施の形態にかかる蓄熱システムの構成の概略を模式的に示した説明図である。
【
図3】蓄熱システムの実験装置の構成の概略を模式的に示した説明図である。
【
図4】
図3の実験装置を用いて蓄熱運転したときの蓄熱材充填槽の各点の温度の経時変化を示すグラフである。
【
図5】
図3の実験装置を用いて蓄熱運転したときの蓄熱材充填槽の各点の湿度等の経時変化を示すグラフである。
【
図6】
図3の実験装置を用いて大風量で放熱運転したときの蓄熱材充填槽の各点の温度の経時変化を示すグラフである。
【
図7】
図3の実験装置を用いて大風量で放熱運転したときの蓄熱材充填槽の各点の湿度等の経時変化を示すグラフである。
【
図8】
図3の実験装置を用いて小風量で放熱運転したときの蓄熱材充填槽の各点の温度の経時変化を示すグラフである。
【
図9】
図3の実験装置を用いて小風量で放熱運転したときの蓄熱材充填槽の各点の湿度等の経時変化を示すグラフである。
【
図10】放熱運転終期の給気の温度低下を抑えるための熱交換器を備えた蓄熱システムの構成の概略を模式的に示した説明図である。
【
図11】放熱運転終期の給気の温度低下を抑えるための熱交換器を備えた他の蓄熱システムの構成の概略を模式的に示した説明図である。
【
図12】放熱運転終期の給気の温度低下を抑えるためにインバータを備えた蓄熱システムの構成の概略を模式的に示した説明図である。
【
図13】
図12の蓄熱システムによって給気風量制御を実施したときの給気温度と風量割合との関係を経時変化で示したグラフである。
【
図14】放熱運転終期の給気の温度低下を抑えるために給気風量制御を実施するための他の蓄熱システムの構成の概略を模式的に示した説明図である。
【
図15】放熱運転終期の給気の温度低下を抑えるために再循環風量制御を実施するための他の蓄熱システムの構成の概略を模式的に示した説明図である。
【
図16】
図15の蓄熱システムによって再循環風量制御を実施したときの風量割合の経時変化を示したグラフである。
【
図17】
図15の蓄熱システムによって再循環風量制御を実施したときの蓄熱材充填槽の出入口温度の経時変化を示したグラフである。
【
図18】放熱運転終期の給気の温度低下を抑えるために再循環風量制御を実施するための他の蓄熱システムの構成の概略を模式的に示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、実施の形態について説明すると、
図1は、実施の形態にかかる
温排熱を利用した蓄熱システム1の構成の概略を示しており、この蓄熱システム1は、吸着材充填槽内における乾燥吸着材の発熱によって、各種のバイオマス工場をはじめ、工場の乾燥工程に高温低湿の空気を供給するシステムとして構成されており、給気ユニット11と、蓄熱材充填槽21とを有している。
【0019】
蓄熱材充填槽21は、筐体21a内の上部空間21b、下部空間21cとの間に、吸着材の造粒体からなる蓄熱材Mが、通風性を有する部材、たとえばパンチングメタル等によって構成された収容体内に充填収納されている。
【0020】
給気ユニット11は、ケーシング12内にファン13、加熱部としての加熱コイル14を有しており、ダクトなどによって構成される導入流路15から導入した外気を加熱可能である。
【0021】
この加熱コイル14には、太陽熱、コジェネレーション廃熱、工場廃熱などの熱によって加熱された流体、例えば温水や加熱された空気が使用される。すなわち、加熱コイル14の熱源は、これら太陽熱、コジェネレーション廃熱、工場廃熱などである。
【0022】
そしてファン13によって送り出された空気は、蓄熱材充填槽21内の上部空間21bと下部空間21cに各々切り替えて供給可能になっている。すなわち、給気ユニット11に接続された、ダクトなどによって構成された供給路16は、第1供給流路17、第2供給流路18に分岐され、これら第1供給流路17、第2供給流路18は、蓄熱材充填槽21内の上部空間21b、下部空間21cに夫々接続されている。そして後述のダンパD2、D3、D4、D5の開閉操作によって、蓄熱材充填槽21内の上部空間21bと下部空間21cに、必要に応じて調温された屋外空気やその他の外気(系外の空気)を各々切り替え供給可能となっている。
【0023】
蓄熱材充填槽21内の上部空間21b、下部空間21cには、各々ダクトなどによって構成された排気路22に通ずる第1排気流路23、第2排気流路24が接続されている。排気路22は、蓄熱材充填槽21から排気される意味での排気流路であるが、運転モードにより、負荷への給気、後述の循環利用では還気の各流路として機能する。すなわち、排気路22は、給気ユニット11に接続されている副導入路19(循環利用の際の還気の流路)と分岐し、分岐後には系外へ排気する排気路25(系外への排気路)を構成する。排気路22には、たとえば熱の需要先の一形態である需要家に通ずる高温低湿給気路26(負荷への給気路)が接続されている。以上の各流路は、たとえばダクト等によって構成されている。なお本実施の形態は、たとえば地域熱供給において、温風を直接住戸や施設などの単位需要家にも供給できることをも想定しているために、需要家という語を使用している。
【0024】
供給路16には、第1の湿度計31、第1の温度計32が設けられており、供給路16内を流れる空気の湿度、温度が夫々計測される。また排気路22には、第2の湿度計33、第2の温度計34が設けられており、排気路22内を流れる空気の湿度、温度が夫々計測される。
【0025】
そして導入流路15には、ダンパD1が、供給路16から分岐した第1供給流路17、第2供給流路18には、ダンパD2、D3が各々設けられ、排気路22に通ずる第1排気流路23、第2排気流路24には、ダンパD4、D5が各々設けられ、副導入流路19にはダンパD6が設けられ、排気路25にはダンパD7が設けられ、高温低湿給気路26にはダンパD8が設けられている。
【0026】
実施の形態にかかる蓄熱システム1は、以上のように構成されており、まず蓄熱運転時においては、
図1に示したように、ダンパD1、D3、D4、D7が開放、ダンパD2、D5、D6、D8が閉鎖される。そしてファン13によって導入流路15から取り入れられた外気は、加熱コイル14によって昇温され、供給路16から第2供給流路18を経て、蓄熱材充填槽21内の下部空間21cに供給されて、蓄熱材Mを加熱する。これによって、吸着材造粒体からなる蓄熱材Mは乾燥される。
【0027】
かかる蓄熱運転時においては、加熱コイル14には未利用の排熱が温熱媒として導入される。この場合、排熱が排気ならそのまま利用してもよい。また加熱コイル14自体は、空気対空気熱交換器を採用してもよい。利用しようとする排熱が液体で排出される場合には、水対空気熱交換器を採用することで、当該排熱の温水を直接利用することができる。また排熱源の側に熱交換器を設けて間接的に排熱を熱交換した後の熱媒(例えば温水)を水対空気熱交換器に送るようにしてもよい。
【0028】
そのような蓄熱材Mの乾燥に供された後の空気は、蓄熱材充填槽21内の上部空間21bから、第1排気流路23、排気路22、排気路25を経て、系外に排気される。かかる運転を通じて、蓄熱材Mを構成する吸着材の造粒体からは水分が脱着される一方、蓄熱される。
【0029】
そして既述した各種のバイオマス工場をはじめ、工場の乾燥工程に高温低湿の空気を供給する場合には、放熱運転に切り替える。すなわち、
図2に示したように、ダンパD1、D2、D5、D8が開放、ダンパD3、D4、D6、D7が閉鎖される。また加熱コイル14への温熱媒の供給は停止する。そしてファン13によって導入流路15から取り入れられた外気は、供給路16から第1供給流路17を経て、蓄熱材充填槽21内の上部空間21bに供給される。そうすると当該外気中の水分は、蓄熱材Mを構成する吸着材に吸着される。このとき熱が発生し、それによって蓄熱材Mの吸着材は水分を吸着するとともに昇温され、また蓄熱材Mで蓄熱されていた熱によっても昇温された空気は、蓄熱材充填槽21内の下部空間21cから、第2排気流路24、排気路22から高温低湿給気路26へと送られ、需要家であるたとえば各種のバイオマス工場や、工場の乾燥工程に対して高温低湿の空気を供給することができる。なお
図1、
図2に示した蓄熱システム1は、ダクト量の節約のために蓄熱運転時、放熱運転時とも、導入流路15、供給路16を用いて、第1供給流路17、第2供給流路18から外気を蓄熱材充填槽21内に供給するようにしているが、放熱運転時には、加熱コイル14を通過させる必要はないので、たとえば第1供給流路17、第2供給流路18に別途、外気の取り入れダクトを接続して、当該外気の取り入れダクトからの外気を、直接蓄熱材充填槽21内に供給するようにしてもよい。
【0030】
このように本実施の形態にかかる蓄熱システム1によれば、太陽熱、コジェネレーション廃熱、工場廃熱などからの熱を利用して、少ないエネルギーコストで高温低湿の空気を、各種のバイオマス工場をはじめ、工場の乾燥工程に供給することができる。
【0031】
なお前記したように、蓄熱運転と放熱運転を行うにあたり、たとえば夜は蓄熱運転を行い、昼は放熱運転を行うようにしてもよい。また放熱運転後に再び蓄熱運転を実施する場合、放熱が完了していなくとも、効率よく蓄熱することができる。
【0032】
前記実施の形態では蓄熱材Mに、造粒された吸着材を使用している。この吸着材には、たとえばシリカゲルやゼオライト等公知の吸着材を用いることができるが、通風抵抗や熱/物質伝達など、所望の性能を有する吸着材の造粒体を蓄熱材として用いることができる。例えば、非晶質アルミニウムケイ酸塩と低結晶性粘土からなる複合体、たとえばハスクレイ(登録商標)や高分子収着剤の低温再生型吸着材は、従来の吸着材(シリカゲルやゼオライト等)に比べて幅広い湿度帯において水蒸気を吸着できるため、高密度な蓄熱材になり得る。
【0033】
ところで、
図2に示した給気としての高温低湿空気を得るための放熱運転では、蓄熱材充填槽21の入口、すなわち上部空間21bに近い蓄熱材M(吸着材造粒体)は、供給された湿潤空気(外気)の水分を吸着、発熱して、通風空気が昇温されるが、放熱運転の時間経過とともに、水分を吸着、発熱する蓄熱材Mは、空気の入口部分である上部空間21bから、出口部分に近い下部空間21cに移動する。そうすると、放熱運転の終期では水分を吸着、発熱する蓄熱材Mの量(蓄熱材充填槽内21における水分吸着/発熱の領域)が減少することで、蓄熱材充填槽21出口となる第2排気流路24の入口での空気温度は次第に低下することになる。
【0034】
この点について検証するために、
図3の実験装置41を用いて、蓄熱、放熱運転を行った実験結果を基に説明する。
図3に示した実験装置41は、給気部42、調温調湿部43、蓄熱槽部44から構成されている。給気部42は、給気ファン42aを有している。調温調湿部43は、給気ファン42aからの給気を減湿する減湿器45、減湿後の給気を流量調整する流量制御器46、流量調整した後の給気に対してダンパD10を介して加湿する加湿器47、加湿後の給気を加熱するヒータ48を有している。ヒータ48は、下流側に設置された温度検出器49の検出温度に基づいて、温度指示調節器50により加熱温度が制御される。温度検出器49の下流側には湿度検出器51が設けられている。
【0035】
そしてヒータ48によって加熱された給気は、ダンパD11、D12を介して、蓄熱槽部44の蓄熱材充填槽52の下部空間52aへと送られる。蓄熱材充填槽52は、内部に吸着材からなる蓄熱材を収容している。蓄熱材充填槽52の上部空間52bからの空気は、ダンパD13、流量制御器53を経て系外に排気される。蓄熱材充填槽52は、直径が98.6mm、高さが300mmの円筒形を有している。
【0036】
そして蓄熱材充填槽52には、下部空間52a内の温度、すなわち入口空気の温度を検出する温度センサTinと上部空間52b内の温度、すなわち出口空気の温度を検出する温度センサToutが設けられている。そして蓄熱材充填槽52が収容している蓄熱材の温度を高さ方向に順次計測するための温度センサT1〜T5が下から順に等間隔で上下方向に設けられている。
【0037】
この実験装置41を使用して、蓄熱運転、放熱運転での蓄熱材充填槽52の出入口の温湿度ととともに、蓄熱材充填槽52の出入口温度及び高さ方向の5点の温度を測定して、蓄熱材充填槽内の状態を確認した。なお蓄熱材には、汎用の「ゼオライト(13X)の造粒物」を用いた。
【0038】
蓄熱材充填槽52に対して、約130℃の高温空気を供給したときの蓄熱運転の結果を
図4、
図5に示した。
図4はそのときの温度の経時変化、
図5は湿度の経時変化を各々示している。
【0039】
図4からわかるように、実験装置41の熱容量の影響によって蓄熱材充填槽52の入口温度は常温から上昇し、運転開始後約0.2時間後に120℃に達した。槽内の温度は入口に近い順番(温度センサT1〜T5の順番)で順次、常温から上昇し、蓄熱材充填槽52の出口温度は運転開始後約0.7時間後に上昇を開始し、運転開始後約2時間後に120℃に達した。このとき、
図5に示したように、蓄熱材充填槽52内の出口相対湿度は殆ど0%RHを示し、蓄熱材充填槽52内の吸着材は乾燥状態となり、蓄熱運転は完了した。
【0040】
このような乾燥状態の蓄熱材充填槽52を初期条件として、約30℃/約50%RHの常温空気を蓄熱材充填槽52に供給した際の、2種類の放熱運転(水分吸着運転)を行った結果を説明する。
図6は蓄熱材充填槽52に供給する風量が多い場合(137L/minの場合)の温度の経時変化、
図7はそのときの湿度変化を示し、
図8は蓄熱材充填槽52に供給する風量が少ない場合(46L/minの場合)の放熱運転をおこなったときの温度の経時変化、
図9はそのときの湿度変化を示している。
【0041】
図6に示したように、まず槽内の入口に近い場所(温度センサT1の場所)の吸着材が水分を吸着し発熱して温度上昇が起こった。そして入口に近い順番(温度センサT1〜T5の順番)で順次、発熱して温度上昇が起こり、蓄熱材充填槽52内出口温度(Tout)は運転開始後約0.2時間後に急上昇を開始し、70℃以上に達した。その後、運転開始後約1時間以降では蓄熱材充填槽52内出口温度(Tout)は低下して、運転開始から約1.5時間後には、蓄熱材充填槽52内出口温度(Tout)は蓄熱材充填槽52内入口温度(Tin)と同等の常温となり、放熱運転は完了した。運転開始から約1.5時間以降では、
図7に示したように、蓄熱材充填槽52内出口相対湿度は急上昇し約40%RHを示した。
【0042】
同様に、蓄熱材充填槽に約30℃/約50%RHの常温空気を約46L/minで供給した放熱運転の温度の経時変化を
図8に、湿度の経時変化を
図9に示されているが、
図8に示したように、まず蓄熱材充填槽52の入口に近い場所(温度センサT1の場所)の吸着材が水分を吸着し発熱して温度上昇が起こった。入口に近い順番(温度センサT1〜T5の順番)で順次、発熱して温度上昇が起こり、蓄熱材充填槽52内の出口温度は運転開始後約0.5時間経過後に急上昇を開始し、70℃以上に達した。その後、運転開始後約3.6時間以降では蓄熱材充填槽52内の出口温度は低下して、運転開始後約5.3時間経過後には蓄熱材充填槽52内の出口温度は蓄熱材充填槽52の入口温度と同等の常温となり、放熱運転は完了した。
【0043】
運転開始後約4.3時間経過以降では
図9に示したように、蓄熱材充填槽52内出口相対湿度は急上昇し、運転開始後約5.3時間経過後には約40%RHを示した。
【0044】
蓄熱材充填槽52に供給した常温空気と、蓄熱材充填槽52内の出口温度である80℃給気との温度差50degであるから、平均的な供給空気温度の低下速度を計算すると、風量が137L/minの場合(
図6)は50/(1.5−1)・(1/60)=1.67deg./minであり、風量が46L/minの場合(
図8)は、50/(5.3−3.6)・(1/60)=0.49deg./minであった。この
図9の供給空気温度の低下速度は
図7の低下速度の29%(0.49/1.67)であった。なお、この
図8での風量は
図6での風量の34%(46/137)である。
【0045】
図6と
図8のように、何れの風量の場合においても、放熱運転の終期には給気温度は徐々に低下することが判った。したがって、各種のバイオマス工場をはじめ、工場の乾燥工程に高温低湿の空気を供給する場合、放熱運転の終期に温度の低下(相対湿度の上昇)を抑えることが必要になる。
【0046】
蓄熱システム1に対して、別の加熱熱交換器やボイラー等の熱源設備が直列接続された場合は、たとえば利用者側で、高温低湿給気の温度、湿度の調整を、これら加熱熱交換器やボイラー等の熱源設備で行うことができる。
【0047】
すなわち、高温低湿の空気を供給する場合に、放熱運転の終期に温度の低下を防止するには、たとえば
図10に示したように、高温低湿給気流路26に熱交換器61を設け、ボイラ(図示せず)からの蒸気または温水と、高温低湿給気流路26を流れる給気との間で熱交換して、温度低下分を補償すればよい。この場合、例えば
図10に示したように、熱交換器61下流側の高温低湿給気流路26に温度検出器62を設け、当該温度検出器62の検出値に基づいて、熱交換を終えてボイラ(図示せず)に戻る還管63に設けたバルブ64の開閉を制御するようにすればよい。
【0048】
また高温低湿の空気を供給する場合に、放熱運転の終期に温度の低下を防止すると共に湿度の調整を行うには、たとえば
図11に示したように、熱交換器61、温度検出器62の他に湿度検出器65を設け、さらにボイラ(図示せず)からの蒸気を、熱交換器61に向かう往管66から分岐した分岐管67を通じて、熱交換器61上流に導入するようにしてもよい。この場合、湿度検出器65の検出値に基づいて、分岐管67に設けたバルブ68の開閉を制御するようにしてもよい。
【0049】
これら
図10、
図11に示した例は、蓄熱システム1に対して熱交換器61を付加した例であったが、蓄熱システム1の単独での設置や、他の熱源設備と並列設置した場合には、蓄熱システム1自身で、そのような放熱運転の終期に温度及び湿度の低下を防止することも可能である。
【0050】
図12は、ファン13に対してインバーター71によって回転数制御を行なって給気風量を制御する例を示している。かかる場合、蓄熱材充填槽21の出口温度が低下したときには、インバーター71によってファン13の回転数を低下させ給気風量を低下させる。この温度低下は水分の吸着量の低下によるものなので、温度の代わりに湿度の上昇によって制御することも可能であるが、一般には湿度計は温度計よりも高価であるので、温度によって制御する方が経済的である。このような給気の温度制御により、蓄熱材充填槽21の出口温度の低下を抑制する効果を、
図13に基づいて説明する。
【0051】
まず、既述した
図6の放熱運転の状態を、
図13のCase1として示す。
図13において、上図は蓄熱材充填槽21の出入口温度の経時変化を、下図は風量(
図6の風量を100%としたときの風量割合)の経時変化を示す。
図13に示したように、Case1では運転開始後約1時間弱で出口温度は低下し、運転開始から約2時間経過後には、出口温度は入口温度と同等になった。ここで運転開始から約1時間後の時点で、風量を34%に低減したCase2の場合は、前述の
図8の実験結果から、運転開始後約2時間弱までは80℃程度の出口温度が維持できることが推定できる。また、運転開始後約1時間経過後の時点から同約1.2時間後の間、風量を徐々に低下させて34%にした(出口温度による風量制御をした)Case3の場合は、Case2ほどではないが、Case1よりは長時間、出口温度が維持できると推定できる。
【0052】
これらのことから、放熱運転開始後に給気風量を低減させることで、給気温度の維持を図ることが可能である。ただし、給気風量自体は低減するが、需要家によっては、たとえば需要家がある乾燥工程を実施するために高温低湿の給気を必要としている場合、乾燥物の処理量が夕刻になって少なくなった際、風量は少なくとも初期の高温低湿の給気が必要な場合には、有効である。
【0053】
なお
図12に示した例は、インバーター71によってファン13の回転数を調整して給気風量を制御する方法を採用したものであったが、インバーター制御ではなく、
図14に示したように、蓄熱材充填槽21の出口の空気の温度や湿度に基づいて、高温低湿給気流路26に設けたダンバーD8の開度を制御するようにしてもよい。このように高温低湿給気流路26に設けたダンバーD8の開度を直接制御することで、高温低湿給気の風量を制御することも可能である。
【0054】
そのような給気風量の制御に代えて、次に説明するような再循環給気制御によっても、放熱運転終期の給気温度、湿度の低下を抑えることができる。
【0055】
実施の形態で説明した吸着材を利用した蓄熱システム1は、いわばヒートポンプシステムと捉えることができる。すなわち、既述した
図13の上図での右軸の温度上昇がヒートポンプの作用であるため、蓄熱材充填槽21の入口温度を高くすることができると、高温低湿給気流路26に供給する給気の温度を高温に維持できる。
【0056】
そこで、
図15に示したように、高温低湿給気流路26に供給する給気の一部を給気ユニット11から蓄熱材充填槽21へと戻し、蓄熱材充填槽21からの高温低湿空気を再循環させることで、蓄熱材充填槽21の入口温度を高くすることが可能になり、これによって高温低湿給気流路26を通じて供給する高温低湿給気の温湿度を制御することができる。
【0057】
すなわち
図15に示した例では、蓄熱材充填槽21の出口の空気の温度を計測する第2の温度検出器34、蓄熱材充填槽21の出口の空気の湿度を計測する第2の湿度検出器33の検出値に基づいて、高温低湿給気流路26に設けたダンパD8の開度と、高温低湿給気ユニット11の高温低湿空気の副導入流路19に設けたダンパD6の開度を制御するようになっている。
【0058】
このような制御を
図16、
図17に基づいて説明すると、
図16は、再循環風量割合と給気風量割合の変化を示し、
図17はそのときの蓄熱材充填槽21の出入口空気の変化を表している。
【0059】
図16に示したように、運転時間後1時間経過の時点で、それまで0%だった再循環流量を徐々に増加させることで、
図17に示したように、蓄熱材充填槽21の入口温度Tinが高くなり、それによって、蓄熱材充填槽21の出口温度Toutは約80℃に維持される。ただし、再循環流量の増加に伴い、高温低湿給気流路26を通じて供給される給気風量は減少することになる。
【0060】
このようなダンパの開度を調整して再循環給気制御することに、
図18に示したように、さらにファン13のインバーター71による給気風量制御を加えるようにしてもよい。
【0061】
図18に示した例では、蓄熱材充填槽21の出口の空気の温度を計測する第2の温度検出器34、蓄熱材充填槽21の出口の空気の湿度を計測する第2の湿度検出器33の検出値に基づいて、高温低湿給気ユニット11の高温低湿空気の副導入流路19に設けたダンパD6の開度を制御するとともに、これら第2の温度検出器34、第2の湿度検出器33の検出値に基づいてインバーター71を制御してファン13による風量を制御するものである。これによってより現実的で制御範囲の広い運転が可能になる。
【0062】
以上のように、
図15、
図18に示した再循環給気制御は、蓄熱材充填槽21の入口温度によって、高温低湿給気の温湿度を制御できるということは、蓄熱材充填槽21が単なる熱交換器ではなく、蓄熱材充填槽21内に収容されている吸着材からなる蓄熱材が、水分を含有している外気の供給によって発熱反応を起こしているために制御できる手法であり、吸着材を利用した蓄熱システムの独特の制御方法である。
【0063】
以上の実施の形態でも分かるように、本発明は、工場廃熱、太陽熱、ヒートポンプ廃熱からの熱を利用して、吸着材からなる蓄熱材を加熱して蓄熱し、需要家での使用時、すなわち放熱運転時には、水分を含んだ外気を蓄熱材に供給することで、蓄熱された熱、及び吸着材の水分吸着時の発熱によって、高温低湿度の給気を需要家など、熱の需要先に供給することが可能である。
【0064】
こんにち我が国のエネルギー需要の大きな割合を占める家庭・業務部門では「ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)」や「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」の実現に向けて、大幅な省エネルギーが求められている。したがって、都市域や工場・工業団地におけるCGS廃熱、工場廃熱、太陽熱、ヒートポンプ廃熱から冷暖房熱源を再生する大規模地域熱ネットワーク(以下、「メガストック」と称す))の展開を想定した場合、本発明を採用することで、空調システム系外からの熱を利用して空調システムのエネルギー消費(電力・ガス消費)を限りなくゼロに近づけられ、ZEBの実現やZEHの実現に寄与できる。
【0065】
また本発明を利用したメガストックは、従来未利用だった各所の廃熱を吸着材の乾燥に用い、冷温熱を必要とする利用側において吸着材を用いた空調技術に応用して供給することができる。さらにまた今後のESP(Energy Service Provider)は、ガス/電気/再生可能エネルギーのベストミックスが基本になると考えられるが、本発明を利用したメガストックはそのKey Technologyとして、民生/業務産業用での「ハード+ESP型or運営受託型」のビジネス展開を可能にする。