特許第6673679号(P6673679)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6673679
(24)【登録日】2020年3月9日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】交通機関用の表示灯装置
(51)【国際特許分類】
   B61L 29/28 20060101AFI20200316BHJP
   G02B 6/04 20060101ALI20200316BHJP
   G02B 6/42 20060101ALI20200316BHJP
   H01L 33/00 20100101ALI20200316BHJP
   G09F 13/00 20060101ALI20200316BHJP
   E01F 9/615 20160101ALI20200316BHJP
【FI】
   B61L29/28 A
   G02B6/04 A
   G02B6/04 F
   G02B6/42
   H01L33/00 L
   G09F13/00 D
   G09F13/00 F
   G09F13/00 G
   E01F9/615
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-237096(P2015-237096)
(22)【出願日】2015年12月4日
(65)【公開番号】特開2017-100635(P2017-100635A)
(43)【公開日】2017年6月8日
【審査請求日】2018年10月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000144348
【氏名又は名称】株式会社三工社
(73)【特許権者】
【識別番号】391009936
【氏名又は名称】株式会社住田光学ガラス
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野口 隆文
(72)【発明者】
【氏名】石井 琢
(72)【発明者】
【氏名】宮地 雄也
(72)【発明者】
【氏名】渡部 洋己
(72)【発明者】
【氏名】猪股 敏一
(72)【発明者】
【氏名】佐野 翔太郎
(72)【発明者】
【氏名】寺嶋 徹
【審査官】 大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭57−24696(JP,U)
【文献】 米国特許第04039250(US,A)
【文献】 特開平7−158020(JP,A)
【文献】 特開2004−354800(JP,A)
【文献】 特開2000−182420(JP,A)
【文献】 特開2005−71870(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 1/00−99/00
G02B 6/04,6/42
H01L 33/00
G09F 13/00
E01F 9/615
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が複数の光ファイバーを束ねた構成である複数の入射ファイバー束と、各々が複数の光ファイバーを束ねた構成である複数の出射ファイバー束と、前記入射ファイバー束から前記出射ファイバー束まで複数の光ファイバーによって光を導くケーブル部とを有する光ケーブルと、
前記複数の入射ファイバー束へ光を入射する光源部と、
前記複数の入射ファイバー束の端部を前記光源部に対向させて固定及び固定解除が可能な位置決め機構と、
前記光源部及び前記位置決め機構を収容しかつ前記光ケーブルを通す貫通孔を有する筐体と、
前記複数の出射ファイバー束から出射される光により発光する表示灯と、
を備え、
前記光ケーブルは、
前記複数の入射ファイバー束のうち各1つの前記入射ファイバー束を構成する複数の光ファイバーに入射した光が、前記複数の出射ファイバー束のうちの全部または複数の出射ファイバー束に分かれて導かれるように、導光方向に沿って複数の光ファイバーの配列が変化する配列変更部と、
前記光ケーブルの途中で分断と接続が可能な一対のコネクタ部と、
を有することを特徴とする交通機関用の表示灯装置。
【請求項2】
前記光源部は、
基板面に配列された複数の発光素子と、
前記複数の入射ファイバー束の端部を前記複数の発光素子の配列に対応した配列で保持するファイバー保持体と、
を有し、
前記複数の入射ファイバー束の各入射端面は、前記複数の発光素子の各発光面より大きく、且つ、前記発光面に対向するように配置されることを特徴とする請求項1記載の交通機関用の表示灯装置。
【請求項3】
前記表示灯には、前記複数の出射ファイバー束の端部が互いに離間し且つ前記複数の出射ファイバー束の端面が表示方向を向くように配列され、
前記光ファイバーは、線径が直径300μm以下の多成分ガラスファイバーであることを特徴とする請求項1又は2記載の交通機関用の表示灯装置。
【請求項4】
前記光ファイバーは、受光角が15°以上、120°以下であることを特徴とする請求項2記載の交通機関用の表示灯装置。
【請求項5】
前記光源部は、前記複数の発光素子が実装された基板を保持する基板保持部を有し、
前記基板が前記基板保持部に着脱可能な構成であることを特徴とする請求項2に記載の交通機関用の表示灯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、踏切警報灯または鉄道用信号機などの交通機関用の表示灯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
以前より、踏切警報灯または鉄道用信号機など、高所に表示灯が設置される交通機関用の表示灯装置がある。このような表示灯装置においては、光源が劣化或いは故障した場合に、高所作業車を用いて光源の補修または交換等を行わなければならない。この場合、高所作業車が道路または線路を占有することになるため、通常の交通が妨げられたり、或いは、交通量の少ない時間帯に作業時間が制限されるといった課題が生じる。
従来、メンテナンスの作業性を向上するために、光源を地上付近に設置し、光ファイバーを用いて光源の光を高所に導いて表示灯を点灯する交通信号機の提案がある(例えば特許文献1)。この構成により、道路を占有したり高所作業車を用いたりせずに光源のメンテナンスを行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−208192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、交通機関用の表示灯装置に、光ファイバーを用いた構成を適用する場合、次のような要求を満たす必要がある。先ず、視認性確保のため、表示灯には大きな光量、大きな点灯面積、および点灯の均一さが要求される。さらに、メンテナンスの作業性の向上のため、光ファイバーは長年交換不要とする必要がある。また、光源の補修または交換周期も長ければ長いほどよい。また、光源の交換時に、光源と光ファイバーとの高精度な位置合わせを要求することは難しく、光源を簡単に交換できる仕組みも要求される。
さらに、交通機関用の表示灯装置においては、表示灯の奥行寸法を小さくしたいという要求もある。例えば、踏切内の道路の上方に配置されて踏切の警報を行うオーバーハング型の警報灯では、警報灯と列車の通過領域との距離を保つために奥行寸法を大きくできない。また、豪雪地帯の信号機などでは、積雪面積を小さくするために信号機の奥行きを大きくできない。現在、LED(発光ダイオード)を光源として用いることで、奥行寸法の小さな表示灯が実現されている。
【0005】
これらの要求の中には一般に相反すると考えられるものも含まれており、全ての要求を満たすことは容易でなかった。
例えば、大きな光量を確保するために、多数の光源を用いて多数の光ファイバーにより光を表示灯まで導く構成を適用することが考えられる。また、大きな点灯面積を確保するために、表示灯において多数の光ファイバーの出射端を互いの間隔を開けて配置し、複数の箇所から光を照射する構成を適用することが考えられる。しかしながら、この構成では、多数の光源のうち幾つかが故障した場合に、故障した光源に対応する光ファイバーから光の照射が行われなくなる。この場合、表示灯の一部にドット欠けのような目立った暗部が生じてしまい、均一な点灯が損なわれる。よって、残りの正常な光源により全体の光量が足りている場合でも、光源の補修または交換を行わなければならなくなる。
【0006】
また、光源を簡単に交換できるようにするためには、線径の大きな光ファイバーを用いて、光源と光ファイバーとの位置合わせの許容誤差を大きくすることが考えられる。これにより、光源の配置に誤差が生じても、光ファイバーに取り込まれる光量の誤差を小さくできる。しかしながら、光ファイバーの線径を大きくすると、光ファイバーの許容曲率半径が大きくなってしまう。一方、表示灯において均一な点灯を実現するには、光ファイバーを90°曲げて出射端面を正面に向けて配列するのが好ましい。しかしながら、許容曲率半径の大きな光ファイバーを表示灯において90°曲げた場合、表示灯の奥行寸法が大きくなってしまう。
【0007】
この発明は、光ファイバーを用いることで光源部のメンテナンスの作業性を向上しつつ、表示灯の大きな光量および大きな点灯面積を確保することができ、且つ、表示灯の奥行寸法を小さくできる、交通機関用の表示灯装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の交通機関用の表示灯装置は、上記目的を達成するため、各々が複数の光ファイバーを束ねた構成である複数の入射ファイバー束と、各々が複数の光ファイバーを束ねた構成である複数の出射ファイバー束と、前記入射ファイバー束から前記出射ファイバー束まで複数の光ファイバーによって光を導くケーブル部とを有する光ケーブルと、
前記複数の入射ファイバー束へ光を入射する光源部と、
前記複数の入射ファイバー束の端部を前記光源部に対向させて固定及び固定解除が可能な位置決め機構と、
前記光源部及び前記位置決め機構を収容しかつ前記光ケーブルを通す貫通孔を有する筐体と、
前記複数の出射ファイバー束から出射される光により発光する表示灯と、
を備え、
前記光ケーブルは、前記複数の入射ファイバー束のうち各1つの前記入射ファイバー束を構成する複数の光ファイバーに入射した光が、前記複数の出射ファイバー束のうちの全部または複数の出射ファイバー束に分かれて導かれるように、導光方向に沿って複数の光ファイバーの配列が変化する配列変更部と、前記光ケーブルの途中で分断と接続が可能な一対のコネクタ部と、を有することを特徴としている。
【0009】
ここで、前記光源部は、
基板面に配列された複数の発光素子と、
前記複数の入射ファイバー束の端部を前記複数の発光素子の配列に対応した配列で保持するファイバー保持体と、
を有し、
前記複数の入射ファイバー束の各入射端面は、前記複数の発光素子の各発光面より大きく、且つ、前記発光面に対向するように配置されるとよい。
さらに、前記表示灯には、前記複数の出射ファイバー束の端部が互いに離間し且つ前記複数の出射ファイバー束の端面が表示方向を向くように配列され、
前記光ファイバーは、線径が直径300μm以下の多成分ガラスファイバーであるとよい。
【0010】
上記のような構成によれば、基板面に配列された複数の発光素子から複数の入射ファイバー束を介して光を入射するので、大きな光量を確保することができる。さらに、互いに離間して配置される複数の出射ファイバー束の端面から表示方向に光を出射して表示灯から光を放つ構成なので、均一な点灯および大きな点灯面積を実現することができる。
一方、このような構成を採用しているため、なんら工夫なく複数の発光素子から表示灯の複数の出射位置まで光を導くと、幾つかの発光素子が故障した場合に、表示灯にドット欠けのような目立った暗部が生じかねない。しかしながら、本発明によれば、線径の細い光ファイバーを用いて、多数の光ファイバーを束ねることで、複数の入射ファイバー束と複数の出射ファイバー束とを設けている。さらに、光ケーブルには光ファイバーの配列が変更される配列変更部が含まれている。これらによって、幾つかの発光素子が故障しても、故障の影響を複数の出射ファイバー束に分散することができ、表示灯にドット欠けのような目立った暗部が生じることを回避できる。
さらに、1本の光ファイバーの線径を小さくしても、複数の光ファイバーを束ねて入射ファイバー束が構成されるので、入射ファイバー束の径(以下、「結束径」と呼ぶ)を大きくして、この入射端面を発光素子の発光面より大きく形成することができる。これにより、発光素子と入射ファイバー束の入射端面との位置合わせの許容誤差が大きくなり、光源の交換時の作業を容易にできる。
【0011】
さらに、表示灯では、複数の光ファイバーが束ねられて出射ファイバー束となって配置されるため、1本の光ファイバーの線径を直径300μm以下のように小さく設定しても、表示灯の製造工程で、光ファイバーの取り回しが容易になる。さらに、光ファイバーの上記線径により、光ファイバーを曲げる際の許容曲率半径を小さくできる。よって、表示灯の奥行寸法を大きくせずに、出射ファイバー束の端面を表示方向に向けることができる。加えて、複数の出射ファイバー束の端面が互いに離間して表示方向に向いて配置されることで、均一な点灯を実現するための構成(例えば拡散レンズなど)を、単純な光学系の構成により実現できる。これらによって、表示灯の奥行を小さくできる。
さらに、光ファイバーとして多成分ガラスファイバーを適用しているので、石英ガラスファイバーと比較しても光ファイバーの耐用年数が余り低下することがなく、プラスチックファイバーと比較して大幅に耐用年数の向上が図れる。
【0012】
ここで、前記光ファイバーは、受光角が15°以上、120°以下であるとよい。
この構成によれば、入射ファイバー束の結束径、および、発光素子の発光面積が大きくなっても、発光素子の近傍に入射ファイバー束の端面を配置して多くの光を取り込むことができる。よって、効率的に大きな光量を確保できる。
さらに、前記光源部は、前記複数の発光素子が実装された基板を保持する基板保持部を有し、
前記基板が前記基板保持部に着脱可能な構成であるとよい。
この構成によれば、光源を基板ごと容易に交換できる。また、基板を基板保持部から外して、基板単体でメンテナンスを行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、交通機関用の表示灯装置において、光ファイバーを用いることでメンテナンスの作業性を向上しつつ、表示灯の大きな光量および大きな点灯面積を確保することができ、且つ、表示灯の奥行寸法を小さくできるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の形態の踏切警報機を示す正面図である。
図2】実施の形態の踏切警報機に含まれる光ケーブルを示すもので、(a)は全体の構成図、(b)は配列変更部を説明する図である。
図3】光源と入射ファイバー束の保持構成とを示す斜視図である。
図4】光源と入射ファイバー束との位置合わせのための構造を示す斜視図である。
図5】発光素子と入射ファイバー束とを示す側面図である。
図6】実施の形態の踏切警報機の警報灯の内部構造を示す正面図である。
図7】実施の形態の踏切警報機の警報灯の内部構造を示す一部破断の側面図である。
図8】光ケーブルの変形例を示す図である。
図9】光源から光ケーブルへ光を入射する構成の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態の踏切警報機を示す正面図である。
本実施の形態の踏切警報機1は、警報灯40が踏切内の道路R1、R2の上方に覆いかぶさるように配置されるオーバーハング形の踏切警報機である。踏切警報機1は本発明に係る交通機関用の表示灯装置の一実施形態である。踏切警報機1は、主柱10および支え柱15と、地上近傍に配置される光源部20と、光ケーブル30と、高所に配置される警報灯40とを有する。警報灯40は本発明に係る表示灯の一例に相当する。
主柱10は、踏切内の道路R1、R2の傍らに立てられ、支え柱15が水平方向に延在するように主柱10の上部に支持されている。道路R1は例えば歩道であり、道路R2は例えば車道である。
【0016】
図2は、実施の形態の踏切警報機に含まれる光ケーブルを示すもので、(a)は全体の構成図、(b)は配列変更部を説明する図である。図2(a)において多数ある同一の構成要素については、煩雑を避けるため一部にのみ符号を付している。
光ケーブル30は、多数の光ファイバーを束ねて構成されている。光ケーブル30の入射側には複数の入射ファイバー束31が設けられ、光ケーブル30の出射側には複数の出射ファイバー束33が設けられている。各々の入射ファイバー束31、および、各々の出射ファイバー束33は、複数の光ファイバーが束ねられて構成されている。入射ファイバー束31と出射ファイバー束33との間は、例えば1つのケーブル部32となっている。本実施の形態では、光ケーブル30に含まれる多数の光ファイバーは、入射ファイバー束31から出射ファイバー束33まで連続した構成となっている。
【0017】
光ファイバーは、線径が直径300μm以下の多成分ガラスファイバーである。このような線径および材質により、この光ファイバーは、少ない経年劣化、低い光の伝搬損失、小さい曲率半径で曲げられるという特性を有している。
光ファイバーの線径は、より好ましくは直径30μm〜70μmである。このような線径とすることで、警報灯40の中で出射ファイバー束33をより小さい曲率半径で曲げることができる。これにより、表示灯にLED光源を配した構成と同程度に、警報灯40の奥行を小さく形成することができる。
また、光ファイバーの受光角は15°以上120°以下とされる。さらに好ましくは、光ファイバーの受光角は25°以上80°以下とされる。このような構成により、入射ファイバー束31の端面および発光素子22の発光面22aが大きくなっても、光を効率的に取り込むことが可能となる。さらに、出射ファイバー束33の端面から照射される光を広角にすることができる。一方、受光角を余り大きくすると光の伝搬損失が高くなるが、上記の値であれば伝搬損失が増大することを抑えることができる。
【0018】
複数の入射ファイバー束31の各々は、特に制限されないが、700本〜4000本の光ファイバーを束ねて構成され、結束径は直径2mm程度である。
同様に複数の出射ファイバー束33の各々は、特に制限されないが、700本〜4000本の光ファイバーを束ねて構成され、結束径は直径2mm程度である。
ケーブル部32は、複数の出射ファイバー束33および複数の入射ファイバー束31を構成する多数の光ファイバーを束ねて構成される。
【0019】
ケーブル部32の一部分Cには、図2(b)に示すように、ケーブルの長手方向に進むに従って光ファイバーの配列が擬似ランダム的に変化する配列変更部32Aが設けられている。図2(b)では、ケーブル部32に含まれる一部分32a、32bの光ファイバーのみを抽出して描いている。配列変更部32Aによって、1つの入射ファイバー束31に含まれる複数の光ファイバーに入射した光は、複数の出射ファイバー束33に分かれて導かれる。また、入射ファイバー束31における一部の範囲(中央または端など)に配置された光ファイバーは、出射ファイバー束33においては様々な範囲に分散されて配置されることになる。
【0020】
図3は、光源と入射ファイバー束の保持構成とを示す斜視図である。図4は、光源と入射ファイバー束との位置合わせのための構造を示す斜視図である。図5は、発光素子と入射ファイバー束とを示す側面図である。図3図4において多数ある同一の構成要素については、煩雑を避けるため一部にのみ符号を付している。
光源部20は、防水機能を有する筐体20aと、複数の発光素子22が実装された基板21と、複数の入射ファイバー束31を保持するファイバー保持体24と、基板21とファイバー保持体24とを所定の位置関係で固定するための位置決め機構28とを有している。
複数の発光素子22は、例えば、高輝度LED(発光ダイオード)であり、間隔を開けて縦横に配列されて基板21に実装されている。このような構成により、大きな光量を確保することができ、且つ、複数の発光素子22の効率的な放熱を単純な構造によって実現することができる。なお、複数の発光素子22は、一列に配列されていても良いし、ランダムに配列されていてもよい。
【0021】
ファイバー保持体24は、複数の発光素子22の配置と対応する配置で入射ファイバー束31の各端部を保持する。具体的には、ファイバー保持体24は、板材に設けた複数の貫通孔にそれぞれ複数の入射ファイバー束31の端部を通して固定する構造を採用できる。
位置決め機構28としては、例えば、図4に示すように、互いに所定の配置関係で嵌合可能な被嵌合体28aと嵌合体28bとを設け、一方に基板21を保持させ、他方にファイバー保持体24を固定する構造を採用することができる。被嵌合体28aは、基板21を保持する基板保持部としても機能し、被嵌合体28aと嵌合体28bとの嵌合を解いたときに、基板21が着脱可能になる。これにより、発光素子22に異常が生じたときに、基板21ごと光源の交換を行うことができる。位置決め機構28の嵌合構造は、図4の構造に限られず、例えば嵌合溝に嵌合片が嵌合して互いに位置決めされる構造など、種々の構造を採用してもよい。
【0022】
図5に示すように、基板21とファイバー保持体24とが固定された状態において、入射ファイバー束31の端面は、発光素子22に対向して発光素子22に近接される。発光素子22の発光面22aの面積(縦幅および横幅)は、入射ファイバー束31の端面の面積(縦幅および横幅)よりも小さい。この構成により、発光素子22の配置に少しの誤差が生じても、発光面22aから照射された光を、入射ファイバー束31の端面から高い効率で複数の光ファイバーに取り込むことができる。
【0023】
図6は、実施の形態の踏切警報機の警報灯を示す正面図である。図7は、実施の形態の踏切警報機の警報灯を示す一部破断の側面図である。図6図7において多数ある同一の構成要素については、煩雑を避けるため一部にのみ符号を付している。
警報灯40は、出射ファイバー束33を収容し、出射ファイバー束33の各端部を保持するファイバー保持体41と、ファイバー保持体41の前面で出射光を拡散する図示略のレンズ等を備えて構成される。警報灯40は、支え柱15に支持されて高所に配置される。
ファイバー保持体41は、正面から見て円形で、奥行寸法の小さな筐体状の構成である。ファイバー保持体41の前面部には、出射ファイバー束33の端面を前方(表示方向)に向けて、複数の出射ファイバー束33の端部を通す複数の固定パイプ42が設けられている。複数の固定パイプ42は、互いに離間するように配置されている。また、ファイバー保持体41には、側方に光ケーブル30を導入するパイプ部45が接続されている。複数の出射ファイバー束33は、パイプ部45を通してファイバー保持体41の内部に導入され、ファイバー保持体41の中で90°曲げられて端部が複数の固定パイプ42にそれぞれ通されて固定されている。なお、出射ファイバー束33が曲げられる角度は、90°に限られない。警報灯40の向きと、光ケーブル30が警報灯40に導入される角度とに基づいて、出射ファイバー束33の端面が警報灯40の表示方向を向くように適宜な角度を曲げればよい。
【0024】
以上のように構成された踏切警報機1によれば、縦横に配列されて基板21上に実装された複数の発光素子22によって、大きな光量を確保することができる。また、発光素子22の発光面22aよりも結束径の大きな入射ファイバー束31を適用しているので、発光素子22の光を入射ファイバー束31の端面に少ない漏れで照射することができる。さらに、光ファイバーとしては、上述した所定の受光角を有する多成分ガラスファイバーが適用されているため、発光面22aの大きな発光素子22を用いても、入射ファイバー束31の端面に照射された光を効率的に光ファイバーの中に取り込むことができる。また、このような作用は、発光素子22の配置に少しの誤差があっても同様に奏されることから、発光素子22と入射ファイバー束31との高精度な位置合わせが不要となり、光源を容易に交換することが可能となる。
【0025】
さらに、光ケーブル30の出射側に複数の出射ファイバー束33が設けられ、警報灯40において複数の出射ファイバー束33の端部が互いに離間した配置で、各端面が前方に向いた状態で固定されている。これにより、警報灯40の大きな面積を確保できるとともに、例えば拡散レンズなど簡単な光学系の構成を付加することで、警報灯40の均一な点灯が可能となる。
また、光ファイバーとしては、上述した所定の線径を有する多成分ガラスファイバーが適用されているため、出射ファイバー束33をファイバー保持体41の中で小さな曲率半径で90°曲げて固定することができる。これによって警報灯40の奥行の寸法を小さくすることが可能となる。また、光ファイバーとして多成分ガラスファイバーを適用しているので、石英ガラスファイバーと比較しても光ファイバーの耐用年数が余り低下することがなく、プラスチックファイバーと比較して大幅に耐用年数の向上が図れる。
【0026】
さらに、光ケーブル30の配列変更部32Aにより、幾つかの発光素子22が故障して幾つかの入射ファイバー束31に光が入射しなくなった場合でも、この故障の影響が複数の出射ファイバー束33に分散されて、1つの出射ファイバー束33に集中することがない。よって、故障していない残りの発光素子22により全体的な光量が足りていれば、警報灯40は正常に点灯することになる。従って、全体的な光量が足りているのに光源の補修または交換が必要となるといった事態を避けることができる。
【0027】
さらに、本実施の形態の踏切警報機1においては、主柱10および支え柱15などの警報灯40を支持する構成は、従前のLED光源を用いた踏切警報機のものを流用することができる。よって、従前の踏切警報機の警報灯を、本実施の形態の警報灯40に交換し、光源部20と光ケーブル30とを主柱10等に取り付けることで、本実施の形態の踏切警報機1を実現することができる。
【0028】
(第1変形例)
図8は、光ケーブルの変形例を示す図である。
第1変形例の踏切警報機は、光源部20から警報灯40へ光を導く構成として、図8の光ケーブル30Aを適用している。光ケーブル30Aは、入射ファイバー束31を含んだ入射側の部分を、ケーブル部32から分断可能としたものである。分断部分は、コネクタ35a、35bによって接続と分断が可能な構成としている。コネクタ35a、35bにより分断部分を接続することで、入射側とケーブル部32との間で個々の光ファイバーが互いに対向および近接して、入射側からケーブル部32へ光が伝播するようになっている。
【0029】
このような構成によれば、光源部20の筐体20aに貫通孔を設け、コネクタ35a(または35b)側から光ケーブル30Aを貫通孔に通すことで、光ケーブル30Aを筐体20aにセットすることができる。このような構成により、筐体20aの光ケーブル30Aを通す部分の防水機能も容易な構造により実現することが可能となる。
【0030】
(第2変形例)
第2変形例の踏切警報機は、図示を省略するが、警報灯において複数の出射ファイバー束33の端面を警報灯の表示方向に向けずに、複数の出射ファイバー束33の端面にそれぞれ対向させて複数の反射ミラーを設置した例である。複数の反射ミラーは、複数の出射ファイバー束33の端面から出射された光を、警報灯40の表示方向へ反射するように、警報灯の内部で傾斜して固定される。
【0031】
第2変形例の踏切警報機によれば、図1の実施の形態の踏切警報機1と比較して、反射鏡により光の損出が大きくなり、さらに、警報灯の内部に設置される光学系の構成が増えることで警報灯の奥行も大きくなる。しかしながら、この構成であっても、光ケーブル30を用いることで踏切警報機のメンテナンスの作業性を向上することができる。
【0032】
(第3変形例)
図9は、光源から光ケーブルへ光を入射する構成の変形例を示す図である。
第3変形例の踏切警報機は、複数の発光素子22から光ケーブル30へ光を入射する構成を変形したものである。
第3変形例では、基板21上の複数の発光素子22と、光ケーブル30の複数の入射ファイバー束31との間に、導光体29が設けられている。導光体29は、例えば円錐台状であり、面積の大きな端面が基板21の複数の発光素子22に対向して光を取り込み、面積の小さな端面が複数の入射ファイバー束31の入射端面に対向して光を入射ファイバー束31へ導くようになっている。
【0033】
導光体29は、例えば、透明なガラス又は樹脂により構成される。導光体29の側面は、導光体29を通過する光が外部に漏れないように、例えば導光体29の内部より屈折率の低い材質により構成するか、或いは、金属膜でコーティングしてもよい。
或いは、導光体29は、多数の光ファイバーを円錐台状に固めた構成としてもよい。
第3変形例の踏切警報機によれば、図3の光を入射する構成と比較して、光ケーブル30に光を取り込む際に光の損出が大きくなるが、光源部20の製造工程を単純化することができる。
【0034】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限られるものではない。例えば、上記実施の形態では、1本の主柱の上部に支え柱が固定された標準的なオーバーハング形の踏切警報機に、本発明を適用した構成を例にとって説明した。しかしながら、本発明は、例えば門型の踏切警報機など、特殊な形状の踏切警報機に適用することもできる。
また、上記実施の形態では、入射ファイバー束31と出射ファイバー束33との具体的な構成例を示したが、例えば、1つの入射ファイバー束31又は1つの出射ファイバー束33を構成する光ファイバーの数は、10オーダ、100オーダ、1000オーダなどの適宜な本数を選定すればよい。また、複数の入射ファイバー束31と、複数の出射ファイバー束33とが異なる数であってもよいし、1つの入射ファイバー束31を構成する光ファイバーの数と、1つの出射ファイバー束33を構成する光ファイバーの数とが異なっていてもよい。
【0035】
また、上記実施の形態では、複数の発光素子が実装された1つの基板が光源部に収容された構成を例にとって説明した。しかしながら、発行素子が実装される基板は複数あってもよいし、また、1つの警報灯に1つの光源部が対応するように複数の光源部が設けられていてもよい。また、光源部には複数の基板が設けられ、複数の基板の各々に1つの発光素子が実装された構成としてもよい。
また、上記実施の形態では、本発明を踏切警報機に適用した例を説明したが、本発明は、鉄道用の信号機など、様々な交通機関用の表示灯装置に適用することができる。また、上記実施の形態では、入射ファイバー束と出射ファイバー束とを同数としたが異なる数としてもよい。また、複数の表示灯にそれぞれ対応させて複数の光源部を設けてもよい。その他、実施の形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 踏切警報機(交通機関用の表示灯装置)
10 主柱
15 支え柱
20 光源部
21 基板
22 発光素子
22a 発光面
24 ファイバー保持体
28 位置決め機構
28a 被嵌合体
28b 嵌合体
30、30A 光ケーブル
31 入射ファイバー束
32 ケーブル部
32A 配列変更部
33 出射ファイバー束
35a、35b コネクタ
40 警報灯(表示灯)
41 ファイバー保持体
42 固定パイプ
45 パイプ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9