【実施例】
【0016】
  実施例に係る飲食物の注文搬送決済設備につき、
図1から
図9を参照して説明する。
図1及び
図3に示されるように、飲食物の注文搬送決済設備1は、例えば回転寿司店等の飲食店で利用され、搬送装置2と注文決済装置3とから主に構成されている。
【0017】
  図1に示されるように、搬送装置2は、料理人が調理を行う厨房Cと飲食客が飲食を行う店内Kとに亘って形成された搬送路7が設けられており、飲食客から注文を受けた料理人が調理した飲食物9を搬送トレー7aに載置し、搬送路7上を搬送させて提供することができる装置である。
【0018】
  店内Kでは飲食カウンター4と飲食テーブル5とが搬送路7に沿って配備されている。この飲食カウンター4は、椅子毎に区切られた複数の客席4aを備えており、各々の客席4aの正面側には、注文装置10が配備されている。また、飲食テーブル5には複数の客席5aとの注文装置10とが設けられており、家族連れ等のグループ客が座ることができるようになっている。
【0019】
  また、店内Kと厨房Cとの間には、店内Kと厨房Cとを隔てる壁Wが設けられており、搬送路7に載置された飲食物9は、壁Wに設けられた開口8を通過して店内Kに搬送されることで飲食客に提供可能になっている。
【0020】
  この搬送路7は、飲食物9を載置した状態で走行する搬送トレー7aを搬送路7の略全長に沿って搬送路7上で走行させるためのレール7bを備えている。また、レール7bを駆動させる図示しない駆動手段を備えており、当該駆動手段により飲食客が注文した飲食物9を載置した搬送トレー7aを飲食客に搬送することが可能となっている。
【0021】
  続いて、注文装置10について説明する。
図2に示されるように、注文装置10は、タッチパネル式のディスプレイ10aを有しており、このディスプレイ10aが注文情報を入力する入力手段としても機能するようになっている。また、注文装置10の近傍には、注文装置10及び後述する演算装置6(
図3参照)と接続された取得装置12が配置されている。
【0022】
  図3に示されるように、注文装置10は、厨房C側に設置された演算装置6と接続されている。演算装置6は、注文装置10から送信されてくる注文情報を受け取り、当該注文情報を厨房C側の店員が使いやすい位置に設置された厨房端末15の表示装置15aに表示させる機能を有している。また、演算装置6は、注文装置10や厨房端末15等を制御する所謂CPUである制御回路30と、飲食物の品名・金額等の情報を有する飲食物リストが記憶された記憶部31と、レール7bを駆動させる駆動手段を制御する駆動制御部32とを備えている。また、演算装置6は、制御回路30を介して後述する入金装置11と厨房端末15とそれぞれ接続されている。
【0023】
  飲食客は、店内の空いている客席4aに着席した後、所有する電子マネー媒体Mを客席4aに設置された取得装置12と通信させる。この電子マネー媒体Mは、非接触型ICカードであり、取得装置12は、非接触型ICカードと通信可能な所謂リーダ・ライタである。非接触型ICカードには、それぞれ固有の識別情報を有しており、この識別情報に入金される等して貯められた保有残高が対応している。尚、この電子マネー媒体Mは当該飲食店で利用できる専用のカードであり、入金装置11により入金された保有残高が、内蔵された記憶媒体に記憶されている。
【0024】
  続いて、飲食物の注文搬送決済設備1を利用して注文,搬送,決済が行われる態様を説明する。飲食客により電子マネー媒体Mが客席4aに設置された取得装置12にかざされると、
図4に示される着席時登録処理が行われる。
【0025】
  着席時登録処理において、まず取得装置12は、電子マネー媒体Mから当該電子マネー媒体Mの識別情報と保有残高とを取得し(ステップSa01)、これら電子マネー媒体Mの識別情報と保有残高を取得装置12自身の識別情報とともに演算装置6に送信する(ステップSa02)。
【0026】
  演算装置6は、受信した電子マネー媒体Mの識別情報と保有残高と、注文装置10の識別情報とを前記記憶部31内の記憶テーブル20(
図5参照)に記憶する(ステップSa03)。
【0027】
  このとき電子マネー媒体Mの識別情報と保有残高と注文装置10の識別情報とのいずれかが取得できなかった場合、当該取得装置12と接続されている注文装置10のディスプレイ10aに電子マネー媒体Mを取得装置12に再度かざすよう促す表示を行う等の報知を行う。
【0028】
  図5に示されるように、演算装置6の記憶テーブル20には、注文装置10の識別情報と、取得装置12と注文装置10とが設置されている客席4aの客席番号と、電子マネー媒体Mの識別情報と保有残高と、注文装置10から受け取った注文金額の合計と、保有残高から注文金額の合計を引いた差引保有残高と、が対応付けられて記憶される。
【0029】
  演算装置6は、上記した記憶テーブル20に電子マネー媒体Mの識別情報等の情報が記憶されたことを条件に、注文画面21(
図6参照)を当該記憶された注文装置10のディスプレイ10aに対して表示させる(ステップSa04)。換言すると、記憶テーブル20に電子マネー媒体Mの識別情報等の情報が記憶されるまでは、注文装置10には飲食物の注文画面21が表示されないようになっている。尚、この注文画面21が表示されていない状態では、ディスプレイ10aには何も表示されない状態としてもよいし、おすすめの飲食物の広告画面等を表示させてもよい。
【0030】
  図6(a)に示されるように注文画面21には、飲食物のボタン22,注文確定ボタン23,保有残高表示24,精算ボタン25が表示されており、飲食客は飲食物のボタン23を適宜選択し、注文が確定した時点で注文確定ボタン23を選択することで厨房Cに向け注文を行う。
【0031】
  注文確定ボタン23を選択されると、注文装置10から演算装置6へ注文情報が送信され、演算装置6は、受信した注文情報を厨房C側の表示装置15aに表示させるようになっている(
図7参照)。注文装置10から送信される注文情報には、飲食物の品名,金額,個数等の情報と注文装置10の識別情報とが対応付けられて送信されるようになっている。
【0032】
  演算装置6は、受信した注文情報に含まれる注文を行った注文装置10の識別情報を記憶テーブル20内で検索し、当該注文装置10が設置されている客席4aの客席番号を割り出し、厨房C側の表示装置15aに、この客席番号と、飲食物の品名と個数を注文No.毎に表示する。
【0033】
  厨房C側の表示装置15aには、搬送トレー7aを発車させる発車ボタンDが注文No.毎に表示されており、店員は注文内容を選択操作してから調理を開始し、調理を完了した飲食物9を搬送トレー7aに載置後、発車ボタンDを操作して搬送トレー7aを客席4aへ搬送させる。飲食客は、客席4aに搬送された搬送トレー7a上から飲食物9を取り上げ、図示しない受取完了ボタン等を押下することで、搬送トレー7aを厨房Cまで搬送させる。尚、詳述しないが、客席に搬送された飲食物の食器は、飲食客の手で図示しない返却カウンターに運ばれ回収されるか、例えば各客席近傍にそれぞれ回収ボックスを設け、回収ボックスから厨房まで自動的に搬送される態様であってもよい。
【0034】
  図6(b)に示されるように、飲食物のボタン22が1度選択されると、選択した飲食物のボタン22の周囲に選択状態を示す表示22aが出現するとともに、保有残高表示24が選択した飲食物の金額分差し引かれて更新される。
【0035】
  また、注文画面21は保有残高に応じて選択可能な飲食物のボタン22が更新されるようになっている。飲食客により飲食物のボタン22が選択されると、
図8に示される表示更新処理が開始され、選択された飲食物の品名・金額等の情報が注文装置10の識別情報とともに注文情報として演算装置6に送信される(ステップSb01)
【0036】
  演算装置6は、注文装置10の識別情報を基に、記憶テーブル20を検索し(ステップSb02)、記憶テーブル20に記憶された当該注文装置10の識別情報と対応する電子マネー媒体Mの差引保有残高を呼び出す(ステップSb03)。次いで差引保有残高から、その時点で選択されている飲食物の合計金額を差し引き、仮の保有残高を算出する(ステップSb04)。
【0037】
  更に、算出された仮の保有残高を基に記憶部31内の飲食物リスト(
図5参照)を検索(ステップSb05)し、飲食物リスト内に記憶されている飲食物のうち、仮の保有残高よりも金額の高いものがあるか否かを判断する(ステップSb06)。
【0038】
  そして、ステップSb06にて、仮の保有残高よりも金額の高い飲食物が飲食物リストに記憶されている場合、該当する飲食物の選択ボタン22を見えづらい表示とする(
図9「パフェ」の飲食物の選択ボタン22参照)とともに、選択不能の状態とする処理(ステップSb07)を行う。尚、仮の保有残高よりも金額の高い飲食物が飲食物リストに記憶されていなかった場合、通常の注文画面21をディスプレイ10aに表示する(ステップSb08)。尚、この更新処理は、飲食客の着席後、最初に表示される注文画面21(ステップSa04参照)の表示前にも動作し、保有残高に応じて選択可能な飲食物のボタン22が始めから表示されるようになっている。
【0039】
  上記したように、飲食客により注文確定ボタン23が選択されたことにより、演算装置6へ注文情報が送信されると、演算装置6は、記憶テーブル20内で注文情報に含まれる注文装置10の識別情報を検索し、取得対応付けられた電子マネー媒体Mの保有残高より当該注文情報の小計金額を差し引いて差引保有残高を更新するとともに、前時点の注文金額の合計に当該注文情報の小計金額を足して更新する。
【0040】
  精算時には、飲食客は注文装置10の精算ボタン25を選択する。この精算ボタン25を選択に基づき、注文装置10は、演算装置6に対して注文装置10の識別情報と精算ボタン25が選択されたことを示す信号を送信するとともに、電子マネー媒体Mを再度、取得装置12にかざすように促す画面をディスプレイ10aに表示し、取得装置12を通信待機状態とする。
【0041】
  再度、電子マネー媒体Mが取得装置12にかざされると、取得装置12が電子マネー媒体Mの識別情報を取得し、電子マネー媒体Mの識別情報とともに精算時に電子マネー媒体Mと取得装置12とが通信されたことを示す情報即ち、精算を示す所定の信号を演算装置6に送信する。
【0042】
  演算装置6は、記憶テーブル20内で注文装置10の識別情報を検索し、受信した電子マネー媒体Mの識別情報が、取得装置12と注文装置10とに既に対応付けられた電子マネー媒体であることを確認した後、当該電子マネー媒体Mの保有残高から注文の合計金額を差し引き、差し引かれた金額を、取得装置12を通じて電子マネー媒体Mの更新された保有金額として記憶させる通信を行う。
【0043】
  また、取得装置12を通信待機状態となった後に、飲食客が失念し、再度電子マネー媒体Mと取得装置12とが通信されないまま店を退出してしまった場合等には、演算装置6は、取得装置12を通信待機状態となった後に一定時間が経過したことに基づき、強制精算処理が動作するようになっており、更に一定時間が経過した後に精算を示す所定の信号が発せられ、当該電子マネー媒体Mの保有残高から注文の合計金額を差し引く処理を行う。このとき、取得装置12は電子マネー媒体Mと通信できないため、注文の合計金額を電子マネー媒体Mの識別情報と来店日時・注文履歴等とともに、記憶部31における未精算処理データベースに記憶する。
【0044】
  そして、次回当該電子マネー媒体Mを有する飲食客が来店し、取得装置12と通信した際に、未精算処理データベースから前回精算が完了していない注文の合計金額を電子マネー媒体Mの保有残高から差し引き、差し引かれた金額を、取得装置12を通じて電子マネー媒体Mの更新された保有金額として記憶させる通信を行う。
【0045】
  尚、飲食客が電子マネー媒体Mと取得装置12とが通信されないまま店を退出してしまったことを、店員が気づいた場合には、厨房端末15を操作することで指定した電子マネー媒体Mに対して強制的に精算を行うように、演算装置6に対して精算を示す所定の信号を送信させることができるようになっていてもよい。
【0046】
  上記したように、演算装置6は、飲食客が着席し、注文を行う段階で既に電子マネー媒体Mの識別情報を取得していることから、飲食客が電子マネー媒体Mによる精算を行わずに店を退出した場合にも、電子マネー媒体Mの識別情報宛で精算を行うことができ、確実に飲食代金の回収を行うことができる。更に、注文のあった飲食物9は搬送装置2により客席4aまで搬送されるため、注文と配膳と精算処理にかかる人員を削減することができる。
【0047】
  また、演算装置6は、飲食客の持つ電子マネー媒体Mの識別情報に対応する保有残高を最大値として注文装置10から送信される注文情報を受け付けるという構成と、注文装置10から注文情報を受け付ける度に、当該注文装置10に対応付けられた電子マネー媒体Mの保有残高で注文可能な金額の飲食物の選択ボタン22をディスプレイ10aに表示するという構成と、を有しているため、注文により配膳された飲食物9を残高不足で精算できないといった問題を防止でき、飲食物代金を確実に回収できる。
【0048】
  また、演算装置6は注文装置10から注文情報が注文される度に、注文装置10に対応付けられた電子マネー媒体Mの保有残高を更新して注文画面21に表示するため、飲食客は注文画面21を見ることで、保有残高に応じて注文する飲食物を調整できるため、残高不足で精算できないといった問題を防止できる。
【0049】
  また、記憶テーブル20に電子マネー媒体Mの識別情報等の情報が記憶されるまでは、注文装置10には飲食物の注文画面21が表示されないようになっているため、飲食客は演算装置6が電子マネー媒体Mの識別情報及び保有残高を取得しない限り飲食物の注文を行うことができないため、確実に飲食代金の回収を行うことができる。
【0050】
  また、演算装置6は注文情報の合計金額を電子マネー媒体Mの識別情報に対応付けて差引保有残高を更新し、精算を示す所定の信号を受信するまでは、実際の電子マネー媒体Mの保有残高の更新が行われないため、例えば、注文のキャンセル等が有った場合でも、返金処理を必要としないため、このような事態への対応が容易となり、店内に余計な人員を必要としない。
【0051】
  尚、上述した着席時登録処理の後、当該電子マネー媒体Mに図示しない入金装置11により追加の入金があった場合には、入金装置11から演算装置6に当該電子マネー媒体Mの識別情報と入金金額とが送信され、これを受信した演算装置6は、記憶テーブル20に記憶された当該電子マネー媒体Mの保有残高と差引保有残高とを更新する処理を行い、更新された差引保有残高で注文可能な飲食物の選択ボタン22を表示するように注文画面21を更新する。
【0052】
  以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0053】
  例えば、前記実施例の電子マネー媒体Mには、保有残高が記憶される構成となっているが、世界的に多様な電子マネー媒体が存在するため、例えば、保有残高が電子マネー媒体自体には保有残高が記憶されておらず、インターネット等に接続された管理サーバに電子マネー媒体の識別情報を問い合わせることで、演算装置が管理サーバに当該識別情報と対応付けられた保有残高を受け取るような構成であってもよい。この場合、精算を示す信号を受信した演算装置は、電子マネー媒体の識別情報と注文合計金額を管理サーバに送信し、当該電子マネー媒体の識別情報に対して精算の要求を行うことになる。
【0054】
  また、このような電子マネー媒体を利用する場合にあって、指定した電子マネー媒体Mに対して強制的に精算を行う際には、演算装置は当該電子マネー媒体の識別情報と注文合計金額を管理サーバに送信し、当該電子マネー媒体の識別情報に対して精算の要求を行うことができる態様であってもよい。
【0055】
  また、前記実施例のように、注文装置10と取得装置12とが直接繋がった構成に限らず、例えば、注文装置10と取得装置12とが、それぞれ演算装置6に対して接続され、それぞれ個々に演算装置6と通信を行う態様であってもよい。尚、注文装置10と取得装置12とは別体に限らず、例えば電子マネー媒体と通信する取得装置としての機能が注文装置に内蔵されていてもよい。更に、このような構成を採用した場合、例えば注文画面の裏に取得装置を配置し、注文画面に電子マネー媒体Mをかざす目標位置を表示させるようにしてもよい。
【0056】
  また、演算装置は上述した様々な処理を行う演算部分であるため、厨房C側にその機能を集約する構成に限られず、例えば、演算装置を司る機能の一部又は全てを各注文装置10に設け、演算装置を介さずに、注文装置と厨房端末とを互いに直接接続させる等することで、前述した様々な処理を注文装置側で動作させるようにしてもよい。
【0057】
  また、前記実施例では、仮の保有残高よりも金額の高い飲食物が飲食物リストに記憶されている場合、該当する飲食物の選択ボタン22を見えづらい表示とするとともに、選択不能の状態とする処理を行っているが、この態様に限らず、例えば、仮の保有残高よりも金額の高い飲食物が飲食物リストに記憶されている場合、仮の保有残高よりも金額の低い飲食物の選択ボタンのみを表示するように注文画面21を更新する態様であってもよい。