特許第6673717号(P6673717)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6673717
(24)【登録日】2020年3月9日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】光学安全システム
(51)【国際特許分類】
   G01S 17/93 20200101AFI20200316BHJP
   G01S 7/497 20060101ALI20200316BHJP
【FI】
   G01S17/93
   G01S7/497
【請求項の数】8
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-31513(P2016-31513)
(22)【出願日】2016年2月22日
(65)【公開番号】特開2017-150860(P2017-150860A)
(43)【公開日】2017年8月31日
【審査請求日】2018年8月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000129253
【氏名又は名称】株式会社キーエンス
(74)【代理人】
【識別番号】100107847
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 聡
(72)【発明者】
【氏名】友師 悟
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 健太郎
【審査官】 ▲高▼場 正光
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−282640(JP,A)
【文献】 特開2009−296087(JP,A)
【文献】 特開2009−276173(JP,A)
【文献】 特開2010−175487(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0273723(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48 − G01S 7/51
G01S 17/00 − G01S 17/95
G08B 13/00 − G08B 15/02
G08B 19/00 − G08B 31/00
H01H 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護エリア内の侵入物を検知して検知信号を出力する安全スキャナと、
上記保護エリアを指定するエリア指定情報を生成する設定支援装置とを備え、
上記安全スキャナは、上記設定支援装置から上記エリア指定情報を受信するエリア指定情報受信手段と、
上記エリア指定情報を、登録エリア指定情報として記憶する記憶部と、
上記保護エリアを含む検出エリアに対し、検出光を投光する投光手段と、
上記検出エリア内の対象物からの反射光を受光して受光信号を生成する受光手段と、
上記受光信号に基づいて、上記対象物までの距離を求める距離算出手段と、
回転軸を中心として上記検出光を周方向に走査させる走査手段と、
上記距離及び上記検出光の走査角に対応する測距情報を求める測距手段と、
上記設定支援装置から受信したエリア指定情報、及び、上記測距手段により求められた測距情報に基づいて、上記保護エリア内における侵入物の有無を判定し、その判定結果に応じた検知信号を出力する侵入検知手段とを有し、
上記設定支援装置は、上記エリア指定情報を作成するための編集画面を表示する編集画面表示手段と、
上記エリア指定情報を生成するエリア指定情報生成手段と、
上記エリア指定情報を上記安全スキャナへ送信する送信手段と、
上記安全スキャナから上記測距情報を受信する測距情報受信手段と、
上記安全スキャナに送信前の上記エリア指定情報、及び、上記安全スキャナから受信した測距情報に基づいて、上記保護エリア内における侵入物の有無を判定し、その判定結果を示す擬似判定情報を生成する擬似判定情報生成手段とを有し、
上記擬似判定情報に対応する判定結果が上記安全スキャナへ送信前の上記エリア指定情報を表示する上記編集画面に表示され、
ユーザのデータ転送指示に基づき、上記擬似判定情報に対応する上記エリア指定情報が上記送信手段により安全スキャナへ送信され、上記記憶手段内の上記エリア指定情報が更新されることを特徴とする光学安全システム。
【請求項2】
上記安全スキャナは、さらに、上記検知信号の出力状態を表示する表示灯と、
上記設定支援装置から上記擬似判定情報を受信する擬似判定情報受信手段と、
上記表示灯を点灯制御し、上記設定支援装置から受信した擬似判定情報に対応する判定結果を表示する表示灯制御手段とを有することを特徴とする請求項1に記載の光学安全システム。
【請求項3】
上記表示灯制御手段は、上記擬似判定情報の受信期間中、上記検知信号の出力状態とは識別可能に、上記擬似判定情報に対応する判定結果の表示を行うことを特徴とする請求項2に記載の光学安全システム。
【請求項4】
上記侵入検知手段は、上記擬似判定情報の受信期間中であっても、上記設定支援装置から受信したエリア指定情報に対応する検知信号の出力を継続することを特徴とする請求項2又は3に記載の光学安全システム。
【請求項5】
上記侵入検知手段は、上記擬似判定情報の受信期間中、侵入物が存在する場合の検知信号を出力することを特徴とする請求項2又は3に記載の光学安全システム。
【請求項6】
上記設定支援装置は、さらに、ユーザ操作に基づいて、上記検出光のスキャン面上の位置を指定する位置指定手段を有し、
上記編集画面表示手段は、上記スキャン面を上記編集画面に表示するとともに、上記安全スキャナから受信した測距情報に対応する測距位置と、上記位置指定手段により指定された位置とを上記スキャン面上に表示し、
上記エリア指定情報生成手段は、上記位置指定手段により指定された位置に基づいて、上記エリア指定情報を生成することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の光学安全システム。
【請求項7】
上記安全スキャナは、さらに、上記検出エリア内に移動可能に配置されたマーカーを判別するマーカー判別手段と、
上記保護エリアを決定するためのエリア生成情報として、上記マーカーの測距情報を上記設定支援装置へ送信するエリア生成情報送信手段とを有し、
上記編集画面表示手段は、上記検出光のスキャン面を上記編集画面に表示するとともに、上記マーカーの測距情報に対応する測距位置を上記スキャン面上に表示し、
上記エリア指定情報生成手段は、上記マーカーの測距情報に基づいて、上記エリア指定情報を生成することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の光学安全システム。
【請求項8】
上記エリア指定情報生成手段は、上記検出光の走査周期内に得られる複数の測距情報に基づいて、上記エリア指定情報を生成することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の光学安全システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学安全システムに係り、さらに詳しくは、保護エリア内の侵入物を検知して検知信号を出力する安全スキャナと、保護エリアを指定するエリア指定情報を生成する設定支援装置とを備えた光学安全システムの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
光学安全センサは、保護エリア内に侵入した侵入物、例えば、人を光学的に検知し、工作機械、産業用ロボット等の機械を緊急停止させるための安全制御信号を出力するエリア監視装置である(例えば、特許文献1及び2)。例えば、安全スキャナは、検出光を対象物に向けて投光する投光部と、対象物からの反射光を受光して受光信号を生成する受光部と、受光信号に基づいて、対象物までの距離を求める距離算出部と、回転軸を中心として検出光を周方向に走査させる走査部とを備えた光走査式のエリア監視装置である。侵入物の検知は、対象物までの距離と検出光の走査角とから対象物の位置を特定し、保護エリアと照合することによって行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−296087号公報
【特許文献2】特開2009−294734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
保護エリアを指定するエリア指定情報と、計測条件を指定する計測設定情報とを含む設定データは、設定支援装置を用いて作成される。設定支援装置には、パーソナルコンピュータ等の情報処理端末が用いられ、安全スキャナから測距情報を取得して画面に表示することができる。例えば、設定支援装置では、検出光を走査して得られる複数の測距情報が検出光のスキャン面上の複数の測距位置として示されたスキャン画像が表示される。この様なスキャン画像を表示することにより、多数の測距情報を迅速に把握することができる。
【0005】
しかしながら、従来の光学安全システムでは、設定支援装置を用いて指定した保護エリアにより、侵入物の検知が適切に行われるか否かを確認する場合、エリア指定情報を安全スキャナに送信して安全スキャナが保持する設定データを更新した後、安全スキャナに測距情報を取得させる必要があった。このため、エリア指定情報の編集作業が煩雑であるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、エリア指定情報の編集作業を簡素化することができる光学安全システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様による光学安全システムは、保護エリア内の侵入物を検知して検知信号を出力する安全スキャナと、上記保護エリアを指定するエリア指定情報を生成する設定支援装置とを備える。上記安全スキャナは、上記設定支援装置から上記エリア指定情報を受信するエリア指定情報受信手段と、検出エリアに対し、検出光を投光する投光手段と、上記検出エリア内の対象物からの反射光を受光して受光信号を生成する受光手段と、上記受光信号に基づいて、上記対象物までの距離を求める距離算出手段と、回転軸を中心として上記検出光を周方向に走査させる走査手段と、上記距離及び上記検出光の走査角に対応する測距情報を求める測距手段と、上記設定支援装置から受信したエリア指定情報、及び、上記測距手段により求められた測距情報に基づいて、上記保護エリアへの侵入物の有無を判定し、その判定結果に応じた検知信号を出力する侵入検知手段とを有する。上記設定支援装置は、上記エリア指定情報を作成するための編集画面を表示する編集画面表示手段と、上記エリア指定情報を生成するエリア指定情報生成手段と、上記安全スキャナから上記測距情報を受信する測距情報受信手段と、上記安全スキャナに送信前の上記エリア指定情報、及び、上記安全スキャナから受信した測距情報に基づいて、上記保護エリアへの侵入物の有無を判定し、その判定結果を示す擬似判定情報を生成する擬似判定情報生成手段とを有し、上記編集画面表示手段は、上記擬似判定情報に対応する判定結果を上記編集画面に表示する。
【0008】
この様な構成によれば、安全スキャナに送信前のエリア指定情報と安全スキャナから受信した測距情報とに基づいて、保護エリアへの侵入物の有無を判定して擬似判定情報が生成され、編集画面に表示される。このため、エリア指定情報を安全スキャナに送信しなくても、設定支援装置を用いて指定した保護エリアにより、侵入物の検知が適切に行われるか否かを擬似判定情報によって確認することができる。
【0009】
本発明の第2の態様による光学安全システムは、上記構成に加え、上記安全スキャナが、さらに、上記検知信号の出力状態を表示する表示灯と、上記設定支援装置から上記擬似判定情報を受信する擬似判定情報受信手段と、上記表示灯を点灯制御し、上記設定支援装置から受信した擬似判定情報に対応する判定結果を表示する表示灯制御手段とを有するように構成される。
【0010】
この様な構成によれば、安全スキャナが設定支援装置から受信した擬似判定情報に対応する判定結果を表示するため、設定支援装置を用いて指定した保護エリアにより、侵入物の検知が適切に行われるか否かを安全スキャナの表示灯によって確認することができる。
【0011】
本発明の第3の態様による光学安全システムは、上記構成に加え、上記表示灯制御手段が、上記擬似判定情報の受信期間中、上記検知信号の出力状態とは識別可能に、上記擬似判定情報に対応する判定結果の表示を行うように構成される。この様な構成によれば、表示灯が、検知信号の出力状態を表示しているのか、或いは、擬似判定情報を表示しているのかを容易に識別することができる。
【0012】
本発明の第4の態様による光学安全システムは、上記構成に加え、上記侵入検知手段が、上記擬似判定情報の受信期間中であっても、上記設定支援装置から受信したエリア指定情報に対応する検知信号の出力を継続するように構成される。この様な構成によれば、安全スキャナが設定データに基づいて運転している場合であっても、設定支援装置を用いて作成したエリア指定情報による侵入物の検知が適切に行われるか否かを安全スキャナの表示灯によって確認することができる。
【0013】
本発明の第5の態様による光学安全システムは、上記構成に加え、上記侵入検知手段が、上記擬似判定情報の受信期間中、侵入物が存在する場合の検知信号を出力するように構成される。この様な構成によれば、エリア指定情報の作成中に、検知信号の出力状態が切り替えられるのを防止することができる。
【0014】
本発明の第6の態様による光学安全システムは、上記構成に加え、上記設定支援装置が、さらに、ユーザ操作に基づいて、上記検出光のスキャン面上の位置を指定する位置指定手段を有し、上記編集画面表示手段が、上記スキャン面を上記編集画面に表示するとともに、上記安全スキャナから受信した測距情報に対応する測距位置と、上記位置指定手段により指定された位置とを上記スキャン面上に表示し、上記エリア指定情報生成手段が、上記位置指定手段により指定された位置に基づいて、上記エリア指定情報を生成するように構成される。この様な構成によれば、ユーザは、測距位置を確認しながらスキャン面上の位置を指定するだけで、エリア指定情報を作成することができる。
【0015】
本発明の第7の態様による光学安全システムは、上記構成に加え、上記安全スキャナが、さらに、上記検出エリア内に移動可能に配置されたマーカーを判別するマーカー判別手段と、上記保護エリアを決定するためのエリア生成情報として、上記マーカーの測距情報を上記設定支援装置へ送信するエリア生成情報送信手段とを有し、上記編集画面表示手段が、上記検出光のスキャン面を上記編集画面に表示するとともに、上記マーカーの測距情報に対応する測距位置を上記スキャン面上に表示し、上記エリア指定情報生成手段が、上記マーカーの測距情報に基づいて、上記エリア指定情報を生成するように構成される。
【0016】
この様な構成によれば、検出エリア内のマーカーを判別してその測距位置がスキャン面上に表示されるため、スキャン面上の測距位置と実空間との対応関係を検出エリアにおけるマーカーの位置によって容易に把握することができる。また、マーカーの測距情報を利用してエリア指定情報が自動的に生成されるため、設定データの作成作業を簡素化することができる。
【0017】
本発明の第8の態様による光学安全システムは、上記構成に加え、上記エリア指定情報生成手段が、上記検出光の走査周期内に得られる複数の測距情報に基づいて、上記エリア指定情報を生成するように構成される。この様な構成によれば、走査周期内に得られる複数の測距情報を利用してエリア指定情報が自動的に生成されるため、設定データの作成作業を簡素化することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、エリア指定情報を安全スキャナに送信しなくても、設定支援装置を用いて指定した保護エリアにより、侵入物の検知が適切に行われるか否かを編集画面上の擬似判定情報によって確認できるため、エリア指定情報の編集作業を簡素化した光学安全システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施の形態による光学安全システム1の一構成例を示したシステム図である。
図2図1の安全スキャナ10の構成例を示した図である。
図3図2の計測ユニット12内の機能構成の一例を示したブロック図である。
図4図2の表示ユニット11内の機能構成の一例を示したブロック図である。
図5図1の設定支援装置20内の機能構成の一例を示したブロック図である。
図6図5の設定支援装置20の動作の一例を示した図であり、ディスプレイ21に表示される編集画面6が示されている。
図7図5の設定支援装置20の動作の一例を示した図であり、保護エリア75を指定してシミュレータボタン70を操作した場合の編集画面6が示されている。
図8図5の設定支援装置20の動作の一例を示した図であり、保護エリア75に追加エリア76が付加されている場合が示されている。
図9図5の設定支援装置20の動作の一例を示した図であり、設定データの送信後に表示される設定確認画面9が示されている。
図10図5の設定支援装置20のシミュレーション時の動作の一例を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
まず、本発明が前提とする光学安全システムの概略構成について、図1及び図2を用いて以下に説明する。
【0021】
<光学安全システム1>
図1は、本発明の実施の形態による光学安全システム1の一構成例を示したシステム図である。この光学安全システム1は、保護エリア内の侵入物を検知して検知信号を出力する安全スキャナ10と、安全スキャナ用の設定データを生成する設定支援装置20とにより構成される。安全スキャナ10及び設定支援装置20は、通信ケーブル2を介して互いに接続されている。
【0022】
検知信号は、工作機械、産業用ロボット等の機械を緊急停止させるための安全制御信号である。この検知信号は、機械を制御する安全制御機器(図示せず)、例えば、PLC(プログラマブルロジックコントローラ)へ出力される。検知信号の出力状態をオフ状態に切り替えることにより、安全制御機器が制御対象とする機械の動作を停止させることができる。
【0023】
保護エリアは、侵入物検知の監視対象とするエリアである。例えば、工作機械や産業用ロボットの作業エリア、搬送車両の移動エリアなど、機械設備周辺の領域が保護エリアとして指定される。
【0024】
安全スキャナ10は、保護エリア内の侵入物を光学的に検知する光走査型のセーフティセンサであり、表示ユニット11及び計測ユニット12により構成される。表示ユニット11は、ユーザ操作を受け付け、動作状態、設定データ等を表示するユーザインターフェースユニットであり、通信ケーブル2の接続口、安全制御信号の出力ポート等が設けられる。
【0025】
計測ユニット12は、検出エリアに対し、検出光を投光し、検出エリア内の対象物からの反射光を受光して侵入物を検知するセンサヘッドユニットである。検出エリアは、計測ユニット12により検出可能な最大のエリアである。保護エリアは、検出エリア内において指定される領域である。計測ユニット12には、回転軸を中心として検出光を周方向に走査させる回転光学系、検出エリアを撮影してカメラ画像を生成するカメラ等が設けられる。
【0026】
安全スキャナ10には、保護エリア以外に警告エリアを設定することができる。安全スキャナ10は、警告エリア内の侵入物を検知すれば、補助出力信号を出力し、表示灯の点灯等によりユーザ報知を行う。
【0027】
例えば、計測ユニット12は、水平な床面等に設置される。表示ユニット11は、OSSD(Output Signal Switching Device)を有し、保護エリア内に侵入物が存在していない状態では、OSSDがオン状態になり、オン状態の検知信号が出力される。一方、保護エリア内に侵入物が存在している状態では、OSSDがオフ状態になり、オフ状態の検知信号が出力される。
【0028】
設定支援装置20は、ディスプレイ21、キーボード22及びマウス23を備えた情報処理端末、例えば、パーソナルコンピュータである。例えば、設定支援装置20では、保護エリアや計測条件を指定するための設定データが作成される。設定データには、保護エリアを指定するエリア指定情報と、計測条件を指定する計測設定情報とが含まれる。また、設定支援装置20では、安全スキャナ10から測距情報やカメラ画像を取得してディスプレイ21に表示する動作が行われる。
【0029】
例えば、設定支援装置20は、安全スキャナ用の設定支援プログラムに基づいて、コンピュータを動作させることにより実現することができる。また、その様な設定支援プログラムは、CD−ROMなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して提供され、或いは、ネットワークを介して提供される。
【0030】
<安全スキャナ10>
図2は、図1の安全スキャナ10の構成例を示した図であり、表示ユニット11を計測ユニット12から分離させることができる分離型のセーフティセンサが示されている。図中には、安全スキャナ10を前方から見た場合が示されている。表示ユニット11及び計測ユニット12は、図示しない配線ケーブルを介して互いに接続される。この表示ユニット11には、同時に2以上の計測ユニット12を接続することができる。
【0031】
計測ユニット12のスキャナ筐体120は、検出光を水平方向に向けて出射するとともに検出光を水平なスキャン面3に沿って走査させる回転光学系を収容する筐体であり、回転光学系の収容部には、回転光学系を保護するための保護カバー121が装着されている。スキャン面3は、回転光学系の回転軸に直交する平面である。
【0032】
検出光には、例えば、赤外線領域の波長を有するレーザー光が用いられる。検出光は、一定の走査周期で繰返し走査される。スキャナ筐体120には、2つの固定カメラ122及び123と、検知信号の出力状態を表示する表示灯124とが配設されている。固定カメラ122,123及び表示灯124は、回転光学系の収容部よりも上側に配置されている。
【0033】
固定カメラ122及び123は、いずれも検出エリアを撮影してカメラ画像を生成する撮像装置であり、互いに向きを異ならせて配置される。固定カメラ122は、計測ユニット12に向かう方向から見れば、表示灯124よりも左側に配置されている。一方、固定カメラ123は、計測ユニット12に向かう方向から見れば、表示灯124よりも右側に配置されている。つまり、固定カメラ122及び123は、回転光学系の回転軸に対し、周方向の位置を異ならせて配置され、固定カメラ122が、計測ユニット12から見て前後方向よりも右側の領域を画角内に収めるカメラであるのに対し、固定カメラ123は、計測ユニット12から見て前後方向よりも左側の領域を画角内に収めるカメラである。固定カメラ122及び123は、スキャン面3よりも上側に配置されるため、スキャン面3を俯瞰するカメラ画像を得ることができる。
【0034】
固定カメラ122及び123は、好ましくは、保護エリアだけでなく保護エリアの周辺も撮影する。或いは、固定カメラ122及び123は、さらに好ましくは、警告エリアとして設定可能な領域とその周辺とを撮影する。
【0035】
表示灯124は、検知信号の出力状態や動作状態を表示するLEDインジケータである。この表示灯は、検知信号の出力状態に応じて異なる表示色で点灯する。例えば、表示灯124は、OSSDがオフ状態である場合に赤色で点灯し、OSSDがオン状態である場合に緑色で点灯する。
【0036】
表示ユニット11は、計測ユニット12の上面に配置される。表示ユニット11の表示筐体110には、表示パネル111、表示灯112、操作キー113及びケーブル接続口114が配設されている。
【0037】
表示パネル111は、動作状態、測距情報、カメラ画像、設定データ等を画面表示する表示装置である。例えば、表示パネル111は、LCD(液晶ディスプレイ)パネルである。表示灯112は、動作状態、検知信号の出力状態等を表示するためのLEDインジケータである。表示ユニット11は、計測ユニット12との通信を行い、計測ユニット12から離間した位置にあっても、動作状態や侵入物の検知履歴を確認することができる。ケーブル接続口114は、通信ケーブル2が着脱可能に接続される入出力端子部である。
【0038】
次に、本発明による光学安全システム1のさらに詳細な構成について、図3図10を用いて以下に説明する。
【0039】
<計測ユニット12>
図3は、図2の計測ユニット12内の機能構成の一例を示したブロック図である。この計測ユニット12は、投光制御部30、投光光源部31、走査部32、ロータリーエンコーダ33、受光部34、距離算出部35、測距部36、侵入検知部37、入出力ポート38、揮発メモリ39、表示灯制御部40、マーカー判別部41及びエリア生成情報送信部42により構成される。
【0040】
投光光源部31は、LD(レーザダイオード)又はLED(発光ダイオード)などの発光素子からなり、検出光を生成する。投光制御部30は、投光光源部31を制御し、パルス状の検出光を一定の時間間隔で発生させる。走査部32は、検出光を対象物に向けて出射するとともに、回転軸を中心として検出光を周方向に走査させる回転光学系と、回転軸を中心として回転光学系を回転させる駆動部とにより構成される。例えば、走査部32の回転光学系は、検出光を対象物に向けて反射する投光ミラーと、対象物からの反射光を入射させる受光レンズと、受光レンズを透過した反射光を受光素子に向けて反射する受光ミラーとにより構成される。
【0041】
受光部34は、PD(フォトダイオード)などの受光素子からなり、対象物からの反射光を受光して受光信号を生成する。ロータリーエンコーダ33は、回転光学系の回転を検出し、パルス繰り返し間隔が回転速度に対応するパルス信号を生成する回転検出装置である。投光制御部30は、ロータリーエンコーダ33のパルス信号に基づいて、投光光源部31を制御し、検出光の投光タイミングを調整する。例えば、走査部32の回転光学系が360°/1000回転するごとに、検出光が出射される。
【0042】
距離算出部35は、受光部34からの受光信号に基づいて、対象物までの距離を求める。この距離算出部35は、TOF(Time Of Flight:飛行時間)方式で距離計測を行う計測部であり、受光信号の受光タイミングをロータリーエンコーダ33のパルス信号のタイミングを基準に計時し、検出光を投光したときから当該検出光に対応する反射光が受光されるまでの遅延時間を特定することにより、対象物までの距離を検出距離として算出する。測距部36は、距離算出部35により求められた検出距離と検出光の走査角とに対応する測距情報を求める。
【0043】
侵入検知部37は、設定支援装置20から受信したエリア指定情報であって、揮発メモリ39内に格納されたエリア指定情報と、測距部36により求められた測距情報とに基づいて、保護エリアへの侵入物の有無を判定し、その判定結果に応じた検知信号を出力する。検出光の走査角は、ロータリーエンコーダ33のパルス信号に基づいて、特定される。また、侵入物が保護エリア内に存在するか否かは、検出距離と検出光の走査角とから侵入物の2次元位置を特定し、保護エリアの位置情報と照合することによって判別される。検知信号は、入出力ポート38を介して表示ユニット11へ送信される。
【0044】
入出力ポート38は、表示ユニット11との通信を行う通信インターフェース部である。この入出力ポート38は、表示ユニット11から、エリア指定情報を含む設定データと、後述する擬似判定情報とを受信する一方、動作状態、測距情報、検知信号、スキャン画像及びカメラ画像を表示ユニット11へ送信する。擬似判定情報は、侵入物の判定結果を示す情報であり、設定支援装置20において作成される。
【0045】
揮発メモリ39は、計測ユニット12に内蔵された揮発性の記憶素子である。揮発メモリ39には、表示ユニット11から受信した設定データ及び擬似判定情報が保持される。測距情報は、表示ユニット11及び設定支援装置20に対し、一定の時間間隔で繰り返し送信される。例えば、検出光を一定の角度だけ走査させるごとに、測距情報が送信される。
【0046】
表示灯制御部40は、表示灯124を点灯制御し、表示灯124を点灯させることにより、検知信号の出力状態、又は、擬似判定情報に対応する判定結果を表示する。点灯制御に用いられる擬似判定情報は、設定支援装置20から受信した擬似判定情報であって、揮発メモリ39内に格納された擬似判定情報である。
【0047】
この表示灯制御部40は、擬似判定情報の受信期間中、検知信号の出力状態とは識別可能に、擬似判定情報に対応する判定結果の表示を行う。侵入検知部37は、擬似判定情報の受信期間中であっても、設定支援装置20から受信したエリア指定情報に対応する検知信号の出力を継続する。なお、侵入検知部37は、擬似判定情報の受信期間中、侵入物が存在する場合の検知信号、すなわち、オフ状態の検知信号を出力するような構成であっても良い。
【0048】
マーカー判別部41は、検出エリア内に移動可能に配置されたマーカーを判別し、その判別結果をエリア生成情報送信部42へ出力する。マーカーは、保護エリアを指定するために検出エリア内に配置される位置指定物である。このマーカー判別部41は、受光部34の受光信号から反射光の受光量を特定し、その受光量に基づいて、マーカーを判別する。例えば、反射光の受光量を判定用の光量閾値と比較し、その比較結果に応じてマーカーが判別される。
【0049】
エリア生成情報送信部42は、保護エリアを決定するためのエリア生成情報として、マーカーの測距情報を設定支援装置20へ送信する。例えば、エリア生成情報送信部42は、一時停止中におけるマーカーの測距情報を送信する。マーカーの測距情報を含むエリア生成情報は、入出力ポート38を介して表示ユニット11に送信される。
【0050】
なお、1台の表示ユニット11に対して1台の計測ユニット12が接続される安全スキャナ10の例を示したが、1台の表示ユニット11に対して複数台の計測ユニット12を接続することが可能な構成であっても良い。この場合、表示ユニット11のOSSDは、対象となる全ての計測ユニット12が、各々の保護エリアにおいてOSSDをオン状態とすべき状態と確認した場合に、OSSDがオン状態となり、その他の場合にはOSSDがオフ状態となる。
【0051】
<表示ユニット11>
図4は、図2の表示ユニット11内の機能構成の一例を示したブロック図である。この表示ユニット11は、操作部50、制御部51、入出力ポート52、表示部53、外部通信ポート54、外部出力ポート55、バッファ56及び不揮発メモリ57により構成される。
【0052】
入出力ポート52は、計測ユニット12との通信を行う通信インターフェース部であり、設定データ及び擬似判定情報を計測ユニット12へ送信する一方、計測ユニット12から動作状態、測距情報、検知信号、スキャン画像及びカメラ画像を受信する。
【0053】
外部通信ポート54は、設定支援装置20との通信を行う通信インターフェース部であり、設定支援装置20から設定データ及び擬似判定情報を受信する一方、動作状態、測距情報、スキャン画像及びカメラ画像を設定支援装置20へ送信する。外部出力ポート55は、OSSDの出力信号(オン状態又はオフ状態)を検知信号(安全制御信号)として安全制御機器へ出力するインターフェース部である。なお、外部出力ポート55は、安全制御機器との双方向の通信によって、OSSDの出力信号(オン状態又はオフ状態)を検知信号(安全制御信号)として安全制御機器へ送信するような構成であっても良い。
【0054】
操作部50は、操作キー113の押下操作に基づいて、操作信号を生成し、制御部51へ出力する。表示部53は、表示パネル111及び表示灯112を駆動し、設定データ、動作状態、測距情報、スキャン画像及びカメラ画像を表示パネル111に表示し、動作状態を表示灯112に表示する。
【0055】
この表示部53は、検知信号の出力状態、スキャン画像又はカメラ画像をモニタ画面に表示する監視画像表示手段である。表示部53は、保護エリアをスキャン画像上に表示する。また、操作部50が、操作キー113の操作による切替指示を受け付ければ、表示部53は、その切替指示に基づいて、スキャン画像及びカメラ画像間で表示画像を切り替える。また、表示部53は、複数の測距位置をカメラ画像上に表示する。
【0056】
制御部51は、入出力ポート52を介して計測ユニット12から、測距情報、スキャン画像及びカメラ画像を取得し、バッファ56内に格納する。制御部51は、バッファ56内に蓄積されたデータが一定量を超えれば、最も古いデータに上書きして新たなデータを格納する。バッファ56は、安全スキャナ10に内蔵された一時記録用の揮発性記憶素子である。
【0057】
また、制御部51は、計測ユニット12から侵入物の検知情報を取得し、この検知情報に基づいて検知履歴を生成する。検知履歴は、検知された侵入物の位置(検知位置)と、侵入物が検知された時刻(検知時刻)と、当該検知時刻が取得期間に含まれる監視用動画像(カメラ画像及びスキャン画像)等を含み、これらの検知情報が検知履歴として互いに関連づけて記憶される。
【0058】
不揮発メモリ57は、安全スキャナ10に内蔵された不揮発性の記憶素子である。不揮発メモリ57には、設定支援装置20から取得した設定データ及び擬似判定情報と、制御部51により作成された検知履歴とが保持される。
【0059】
この制御部51は、入出力ポート52が、侵入物検知による取込信号を受信すれば、その取込信号に基づいて、バッファ56内の監視用動画像(スキャン画像及びカメラ画像)を読み出し、不揮発メモリ57内に履歴情報として格納する。
【0060】
不揮発メモリ57には、最新の設定データのみが登録データとして保持され、新たな設定データが設定支援装置20から取得されれば、当該設定データによって不揮発メモリ47内の設定データが更新される。不揮発メモリ47内の設定データが更新されれば、更新後の設定データが計測ユニット12へ送信される。
【0061】
<設定支援装置20>
図5は、図1の設定支援装置20内の機能構成の一例を示したブロック図である。この設定支援装置20は、操作部201、設定データ作成部202、通信部203、登録データ取得部204、設定データ記憶部205、設定データ送信部206、測距情報取得部207、測距情報記憶部208、擬似判定情報生成部209、擬似判定情報記憶部210及び擬似判定情報送信部211により構成される。
【0062】
操作部201は、キーボード22又はマウス23の操作に基づいて、操作信号を生成し、設定データ作成部202、登録データ取得部204及び設定データ送信部206へ出力する。通信部203は、安全スキャナ10の表示ユニット11との通信を行うインターフェース部であり、設定データを安全スキャナ10へ送信する一方、安全スキャナ10から動作状態、測距情報、スキャン画像、カメラ画像及び検知履歴を受信する。
【0063】
設定データ作成部202は、設定データを作成し、設定データ記憶部205内に格納する。設定データには、保護エリアを指定するためのエリア指定情報と、計測条件を指定するための計測設定情報とが含まれる。例えば、エリア指定情報は、保護エリアのスキャン面3上の位置、形状又はサイズを指定することによって作成される。一方、計測設定情報は、応答速度、検知対象とする侵入物のサイズ、走査周期又は分解能を指定することによって作成される。
【0064】
この設定データ作成部202は、編集画面表示部221、位置指定部222及びエリア指定情報生成部223により構成される。編集画面表示部221は、ディスプレイ21を駆動し、エリア指定情報を作成するための編集画面をディスプレイ21上に表示する。
【0065】
編集画面には、スキャン画像が表示される。スキャン画像は、検出光の走査周期内において得られる複数の測距情報が2次元表示された画像であり、各測距情報は、その走査角及び検出距離によって特定されるスキャン面3上の測距位置として示される。つまり、スキャン画像は、スキャン面3に対応する平面上に、測距情報に対応する2次元位置が示された監視用画像である。例えば、スキャン画像は、反射光の受光時に取得された測距情報に基づいて作成される動画像であり、検出光の走査周期に同期して更新される。
【0066】
位置指定部222は、ユーザ操作に基づいて、スキャン面3上の位置を指定する。編集画面表示部221は、スキャン面3を編集画面に表示するとともに、安全スキャナ10から受信した測距情報に対応する測距位置と、位置指定部222により指定された位置とをスキャン面3上に表示する。
【0067】
エリア指定情報生成部223は、位置指定部222により指定された位置に基づいて、エリア指定情報を生成する。編集画面には、検出光の走査周期内に得られる複数の測距位置を時系列に結ぶ測距線からなるスキャン画像が表示される。ユーザは、スキャン画像上で位置を指定する。例えば、所望のエリアの境界に沿って複数の位置を順に指定することにより、これらの位置を時系列に結ぶ折れ線を境界の一部とするエリアが保護エリアに指定される。
【0068】
登録データ取得部204は、ユーザ操作による取込指示に基づいて、通信部203を介して安全スキャナ10から登録データを取得し、設定データ記憶部205内に格納する。設定データ作成部202では、安全スキャナ10から取得された登録データを変更することにより、新たな設定データを作成することができる。設定データ送信部206は、ユーザ操作による転送指示に基づいて、設定データ記憶部205から設定データを読み出し、通信部203を介して安全スキャナ10へ送信する。
【0069】
測距情報取得部207は、通信部203を介して安全スキャナ10から測距情報を取得し、測距情報記憶部208内に格納する。擬似判定情報生成部209は、安全スキャナ10に送信前のエリア指定情報と、安全スキャナ10から受信した測距情報であって、測距情報記憶部208内に格納された測距情報とに基づいて、保護エリアへの侵入物の有無を判定し、その判定結果を示す擬似判定情報を生成する。
【0070】
侵入物の判定は、測距情報から侵入物の2次元位置を特定し、保護エリアの位置情報と比較照合することによって行われる。擬似判定情報記憶部210には、擬似判定情報が保持される。例えば、擬似判定情報記憶部210内の擬似判定情報は、測距情報が新たに取得されるごとに、更新される。
【0071】
編集画面表示部221は、擬似判定情報記憶部210内の擬似判定情報に対応する判定結果を編集画面に表示する。擬似判定情報送信部211は、擬似判定情報記憶部210から擬似判定情報を読み出し、通信部203を介して安全スキャナ10へ送信する。擬似判定情報は、安全スキャナ10に対し、一定の時間間隔で繰り返し送信される。例えば、測距情報が新たに取得されるごとに、擬似判定情報が送信される。
【0072】
この光学安全システム1では、リアルドローイング機能又はオートドローイング機能を利用してエリア指定情報を作成することもできる。リアルドローイング機能は、エリアの外縁に沿ってマーカーを移動させることによって保護エリアを指定する機能である。一方、オートドローイング機能は、現在の測距情報を利用して保護エリアを自動的に指定する機能である。
【0073】
リアルドローイング機能を選択した場合、編集画面表示部221は、スキャン面3を編集画面に表示するとともに、マーカーの測距情報に対応する測距位置をスキャン面3上に表示する。エリア指定情報生成部223は、マーカーの測距情報に基づいて、エリア指定情報を生成する。
【0074】
オートドローイング機能を選択した場合、エリア指定情報生成部223は、検出光の走査周期内に得られる複数の測距情報に基づいて、エリア指定情報を生成する。オートドローイング機能を利用すれば、スキャン画像の測距線よりも計測ユニット12側に、測距線に沿って延びる折れ線を境界の一部とするエリアが保護エリアとして自動的に指定される。
【0075】
<編集画面6>
図6は、図5の設定支援装置20の動作の一例を示した図であり、ディスプレイ21に表示される編集画面6が示されている。この編集画面6は、設定データを作成するためのシステム画面であり、ディスプレイ21に表示される。
【0076】
この編集画面6には、画像表示領域60、設定タブ61、モニタタブ62、検知履歴タブ63及び表示対象選択タブ64が配置されている。画像表示領域60には、現在のスキャン画像が表示されている。
【0077】
スキャン画像は、検出光の走査周期内に得られる複数の測距位置を結ぶ測距線71からなる線画像であり、検出光の走査周期に対応する一定のフレームレートで更新される。測距線71は、検出領域の境界を示す図形であり、順に取得された複数の測距位置を時系列に結ぶ折れ線からなる。スキャン画像を見れば、計測ユニット12の周辺の現在の様子を把握することができる。
【0078】
この例では、編集画面6の上方向を計測ユニット12の正面方向として、スキャン画像が描画されている。このスキャン画像には、計測ユニット12を原点とし、前後方向をy軸、左右方向をx軸とする直交座標軸72が配置されている。また、座標軸に平行な複数のグリッド線73及び74がスキャン画像上に表示されている。
【0079】
設定タブ61は、設定データ作成機能を選択するための操作アイコンである。モニタタブ62は、現在のスキャン画像又はカメラ画像を画像表示領域60に表示するための操作アイコンである。検知履歴タブ63は、検知履歴を表示するための操作アイコンである。
【0080】
この例では、設定タブ61が選択され、画像表示領域60よりも左側にサブパネルが配置され、サブパネルには、安全スキャナ10の動作設定を行うためのメニュー項目ボタン65〜68と、読出ボタン69とが配置されている。
【0081】
表示対象選択タブ64は、表示対象の計測ユニット12を選択するための操作アイコンである。設定支援装置20に接続された表示ユニット11に対し、複数の計測ユニット12が連結されている場合、表示対象選択タブ64を操作することにより、任意の計測ユニット12を表示対象として選択し、対応するスキャン画像又はカメラ画像を画像表示領域60に表示させることができる。この例では、計測ユニット「ヘッド1」が表示対象として選択され、対応するスキャン画像が表示されている。
【0082】
メニュー項目ボタン65は、安全スキャナ10のユニット構成を指定するための操作アイコンである。メニュー項目ボタン66は、安全スキャナ10の計測条件を指定するための操作アイコンである。メニュー項目ボタン67は、保護エリアを指定するための操作アイコンである。メニュー項目ボタン68は、設定データを安全スキャナ10へ送信するための操作アイコンである。この例では、メニュー項目ボタン67が選択されている。読出ボタン69は、安全スキャナ10から登録データを取得するための操作アイコンである。
【0083】
この編集画面6には、安全スキャナ10へ送信する前のエリア指定情報と、安全スキャナ10から取得した測距情報とを用いて侵入物検知をシミュレーションするためのシミュレータボタン70が配置されている。シミュレータボタン70を操作することにより、編集中の設定データと、安全スキャナ10から取得した測距情報とに基づいて、保護エリアへの侵入物の有無が判定され、その判定結果が編集画面に表示される。
【0084】
図7は、図5の設定支援装置20の動作の一例を示した図であり、保護エリア75を指定してシミュレータボタン70を操作した場合の編集画面6が示されている。図中の(a)には、保護エリア75を指定した後の編集画面6が示されている。
【0085】
保護エリア75は、キーボード22又はマウス23を操作してスキャン面3上の位置や形状を指定することにより、指定される。例えば、マウス23を操作してマウスポインタを移動させながら、多角形エリアの頂点の位置を順に指定することにより、各頂点を時系列に結ぶ折れ線を境界の一部とするエリアが保護エリアとして指定される。この様に構成することにより、ユーザは、測距位置を確認しながらスキャン面3上の位置を指定するだけで、エリア指定情報を作成することができる。
【0086】
図中の(b)には、シミュレータボタン70を操作した後の編集画面6が示されている。編集画面6内のシミュレータボタン70を操作すれば、編集中のエリア指定情報、すなわち、安全スキャナ10へ送信する前のエリア指定情報と、安全スキャナ10から取得した測距情報とに基づいて、保護エリアへの侵入物の有無が判定され、その判定結果が表示される。
【0087】
この例では、判定結果を確認するための結果確認画面8が編集画面6上に表示されている。結果確認画面8には、侵入物の判定結果を示す検知状態メッセージ81と、シミュレーションモードを終了するための終了ボタン82とが配置されている。この結果確認画面8では、検知状態メッセージ「非検知」が表示され、侵入物が検知されていないことが判る。
【0088】
安全スキャナ10では、シミュレータボタン70が操作されたときから終了ボタン82が操作されるまでの期間、シミュレーションモードとなり、この期間中、表示灯124を点灯させることにより、検知信号の出力状態とは識別可能に、擬似判定情報に対応する判定結果が表示される。
【0089】
例えば、表示灯124は、検知信号の出力状態がオン状態(非検知状態)であれば、緑色で点灯し、オフ状態(検知状態)であれば、赤色で点灯する。一方、シミュレーションモードでは、擬似判定情報がオン状態(非検知状態)であれば、緑色で点滅し、オフ状態(検知状態)であれば、赤色で点滅する。
【0090】
安全スキャナ10が設定支援装置20から受信した擬似判定情報に対応する判定結果を表示するため、設定支援装置20を用いて指定した保護エリアにより、侵入物の検知が適切に行われるか否かを安全スキャナ10の表示灯124によって確認することができる。例えば、設定支援装置20から離間した場所であっても、検知状態を確認することができる。
【0091】
この光学安全システム1では、シミュレーションモード時に、エリアマーカー指定機能を選択することができる。エリアマーカー指定機能は、エリアの外縁に沿ってマーカーを移動させることにより、監視対象エリアが自動的に指定される機能(リアルドローイング機能)である。
【0092】
動作モードがシミュレーションモードであれば、安全スキャナ10のOSSD出力は、強制的にオフ状態に制御され、或いは、現在設定されている保護エリアに基づいて、オン状態又はオフ状態に制御される。表示灯124は、OSSD出力の状態に応じて点灯する。例えば、OSSD出力がオン状態のときは緑色点灯し、OSSD出力がオフ状態のときは赤色点灯する。ただし、シミュレーションモード中は、擬似判定情報に応じて、緑色点滅と赤色点滅とが切り替えられる。
【0093】
また、安全スキャナ10は、マーカーを検知すると、マーカーを検知したことを表示灯124によって表示する。例えば、シミュレーションモード中、表示灯124は、擬似判定情報に応じて、緑色点滅又は赤色点滅する。そして、エリアマーカー指定機能が選択され、安全スキャナ10がマーカーを検知すると、表示灯124は、一定時間、橙色点灯する。設定支援装置20は、安全スキャナ10からマーカーの測距情報を取得し、取得した測距情報に基づいて擬似判定情報を更新する。表示灯124は、マーカーの検知後、一定時間、橙色点灯した後、更新された擬似判定情報に応じて、緑色点滅又は赤色点滅する。なお、擬似判定情報に応じた判定表示やマーカーを検知したことを示す表示は、表示灯124に代えて、設定支援装置20で表示するようにしても良い。或いは、擬似判定情報に応じた判定表示やマーカーを検知したことを示す表示を表示灯124に加えて、設定支援装置20で表示するようにしても良い。
【0094】
図8は、図5の設定支援装置20の動作の一例を示した図であり、保護エリア75に追加エリア76が付加されている場合のシミュレーション結果が示されている。図中には、安全スキャナ10に設定データとして登録されている保護エリア75に対し、新たなエリアを追加エリア76として付加した後、シミュレータボタン70を操作した場合が示されている。この追加エリア76は、保護エリア75に隣接する矩形エリアである。
【0095】
安全スキャナ10に登録されている保護エリア75に対し、追加エリア76を付加することにより、新たなエリア指定情報が作成される。この新たなエリア指定情報を安全スキャナ10へ送信するまでの間、安全スキャナ10では、元の保護エリア75を監視対象として侵入物の有無が判定され、その判定結果に応じた検知信号が出力される。
【0096】
一方、設定支援装置20では、保護エリア75及び追加エリア76からなるエリアを監視対象として侵入物の有無が判定され、その判定結果が編集画面6に表示される。この様なケースでは、実空間において、物体を追加エリア76内へ移動させれば、結果確認画面8の検知状態メッセージ81が「非検知」から「検知」へ変化することになる。この様な検知状態の変化を確認することにより、エリアが適切に指定されたか否かを容易に識別することができる。また、実空間において物体を移動させる際に、物体が誤って保護エリア75内に侵入したとしても、検知信号の出力状態は、オフ状態に正しく切り替えられる。
【0097】
図9は、図5の設定支援装置20の動作の一例を示した図であり、設定データの送信後に表示される設定確認画面9が示されている。安全スキャナ10内の設定データを更新する際の作業手順について、以下に説明する。
【0098】
(1)設定データの転送ステップ
保護エリア75を変更したい場合、設定支援装置20上で保護エリア75を編集し、保護エリア75の編集作業が完了すれば、編集結果を反映した設定データが設定支援装置20から安全スキャナ10に転送される。
【0099】
例えば、編集画面6上のメニュー項目ボタン「設定転送」をクリックすれば、設定転送を確認するための確認ダイアログが表示される。この確認ダイアログ内のOKボタンをクリックすれば、設定データの転送が開始される。設定データの転送中は、編集画面6上に転送処理(設定データを安全スキャナ10に書き込む処理)の進捗状況を示すポップアップ画面が表示される。
【0100】
(2)設定データの読出ステップ
設定データの転送後、設定データが安全スキャナ10に正しく書き込まれたか否かを確認するために、安全スキャナ10から設定支援装置20に設定データが読み出される。この設定データの読み出しは、自動的に開始される。設定データの読出中は、編集画面6上に読出処理(設定データを安全スキャナ10から読み出す処理)の進捗状況を示すポップアップ画面が表示される。
【0101】
(3)設定データの確認ステップ
安全スキャナ10から設定支援装置20に設定データが読み出されれば、安全スキャナ10に書き込んだ保護エリア75を確認するための設定確認画面9が設定支援装置20上に表示される。設定確認画面9は、保護エリア75等の監視対象エリアが正しく設定されているか否かを確認するためのダイアログ画面であり、ディスプレイ21上に表示される。
【0102】
この設定確認画面9には、監視対象エリアがスキャン面3上に表示されるエリア表示領域91と、承認ボタン92及び非承認ボタン93とが設けられている。監視対象エリアには、OSSD出力に関係する保護エリア75と、ユーザ報知に関係する警告エリア77及び78とがある。この例では、保護エリア75に隣接する領域からなる警告エリア77が指定されている。また、警告エリア78は、保護エリア75と一部分が重複する領域からなる。
【0103】
ユーザは、実際の保護エリア75の境界上でテストピース(検出対象物)を移動させ、所望の位置に保護エリア75が設定されているか否かを安全スキャナ10の表示灯124等により確認する。保護エリア75の境界をテストピースでなぞり終えれば、設定確認画面9上の承認ボタン92及び非承認ボタン93がクリック可能な状態になる。
【0104】
(4)設定データの承認ステップ
ユーザは、保護エリア75の確認の結果、意図通りの保護エリア75であることを確認した場合、承認ボタン92をクリックする。承認ボタン92を操作することにより、転送された設定データが安全スキャナ10に反映され、安全スキャナ10は、反映された設定内容に基づいて、OSSD出力のオン状態又はオフ状態を制御する。
【0105】
一方、ユーザは、保護エリア75の確認の結果、意図通りではない保護エリア75であることを確認した場合、非承認ボタン93をクリックする。非承認ボタン93を操作することにより、設定転送処理は中止となり、転送された設定データは安全スキャナ10から消去され、安全スキャナ10は、設定無効状態(動作しない状態)になる。
【0106】
シミュレーションモードでは、設定データの転送ステップ、読出ステップ、確認ステップ、承認ステップ、安全スキャナ10における動作確認の各プロセスを経ることなく、編集後の保護エリア75の設定状態の確認をすることができる。従って、シミュレーションモードで得られた編集後の保護エリア75は、最終的には、設定データとして上述した各プロセスを経て、安全スキャナ10の設定として反映され、安全スキャナ10は、当該保護エリア75に基づいて、OSSD出力をオン状態又はオフ状態に制御する。
【0107】
図10のステップS101〜S107は、図5の設定支援装置20のシミュレーション時の動作の一例を示したフローチャートである。図中には、エリア指定情報を作成した後にシミュレータボタン70が操作された場合の処理手順が示されている。まず、設定支援装置20は、安全スキャナ10から測距情報を取得し、保護エリアと照合して侵入物の有無を判定する(ステップS101〜S103)。
【0108】
次に、設定支援装置20は、侵入物の判定結果を示す擬似判定情報を生成し、擬似判定情報に対応する判定結果を編集画面6に表示するとともに、擬似判定情報を安全スキャナ10へ送信する(ステップS104〜S106)。ステップS101からステップS106までの処理手順は、終了ボタン82が操作されるまで繰り返され、終了ボタン82が操作されれば、この処理は終了する(ステップS107)。
【0109】
本実施の形態によれば、安全スキャナ10に送信前のエリア指定情報と安全スキャナ10から受信した測距情報とに基づいて、保護エリアへの侵入物の有無を判定して擬似判定情報が生成され、編集画面6に表示される。このため、エリア指定情報を安全スキャナ10に送信しなくても、設定支援装置20を用いて指定した保護エリアにより、侵入物の検知が適切に行われるか否かを擬似判定情報によって確認することができる。
【符号の説明】
【0110】
1 光学安全システム
10 安全スキャナ
11 表示ユニット
110 表示筐体
111 表示パネル
112 表示灯
113 操作キー
12 計測ユニット
120 スキャナ筐体
121 保護カバー
122,123 固定カメラ
124 表示灯
20 設定支援装置
21 ディスプレイ
22 キーボード
23 マウス
30 投光制御部
31 投光光源部
32 走査部
33 ロータリーエンコーダ
34 受光部
35 距離算出部
36 測距部
37 侵入検知部
38 入出力ポート
39 揮発メモリ
40 表示灯制御部
41 マーカー判別部
42 エリア生成情報送信部
50 操作部
51 制御部
52 入出力ポート
53 表示部
54 外部通信ポート
55 外部出力ポート
56 バッファ
57 不揮発メモリ
201 操作部
202 設定データ作成部
203 通信部
204 登録データ取得部
205 設定データ記憶部
206 設定データ送信部
207 測距情報取得部
208 測距情報記憶部
209 擬似判定情報生成部
210 擬似判定情報記憶部
211 擬似判定情報送信部
221 編集画面表示部
222 位置指定部
223 エリア指定情報生成部
2 通信ケーブル
3 スキャン面
6 編集画面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10