(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6673719
(24)【登録日】2020年3月9日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】回転伝達機構
(51)【国際特許分類】
F16H 25/06 20060101AFI20200316BHJP
F16H 25/18 20060101ALI20200316BHJP
【FI】
F16H25/06 Z
F16H25/18 B
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-37010(P2016-37010)
(22)【出願日】2016年2月29日
(65)【公開番号】特開2017-155760(P2017-155760A)
(43)【公開日】2017年9月7日
【審査請求日】2019年1月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】山岡 守
【審査官】
岡本 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−154002(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 25/06
F16H 25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動部材の第1軸線周りの一方側への1回転未満の回転を従動部材に伝達して、前記従動部材を前記第1軸線に平行な第2軸線周りの一方側に1回転未満の角度範囲で回転させる回転伝達機構であって、
前記駆動部材に前記第1軸線周りの一方側に向くようにインボリュート曲線をもって形成された1つの伝達面と、前記従動部材に前記第2軸線周りの他方側に向くようにインボリュート曲線をもって形成された1つの被伝達面とによって、前記駆動部材から前記従動部材に前記角度範囲の回転を伝達し、
前記駆動部材は、前記第1軸線が延在する方向の一方側に向いた面からなる第1端面と、前記第1端面から前記第1軸線が延在する方向の一方側に突出した部分である第1軸部と、前記第1軸部の周りから径方向外側に円弧状に突出した部分である第1円弧部と、を備え、
前記従動部材は、前記第2軸線が延在する方向において前記第1端面が位置する側の面からなる第2端面と、前記第2端面から突出して前記第1軸部と並列する部分である第2軸部と、前記第2軸部の周りから径方向外側に円弧状に突出した部分である第2円弧部と、を備え、
前記伝達面は、前記第1円弧部の前記第1軸線周りの一方側に位置する端部に設けられ、
前記被伝達面は、前記第2円弧部の前記第2軸線周りの他方側に位置する端部に設けられていることを特徴とする回転伝達機構。
【請求項2】
前記第1端面と前記第2軸部とが、前記第1軸線が延在している方向で離間し、
前記第2端面と前記第1軸部とが、前記第1軸線が延在している方向で離間していることを特徴とする請求項1に記載の回転伝達機構。
【請求項3】
前記駆動部材と前記従動部材とは、前記伝達面と前記被伝達面とにおいてのみ接触していることを特徴とする請求項1に記載の回転伝達機構。
【請求項4】
前記従動部材には、前記従動部材を前記第2軸線周りの他方側に向けて付勢する付勢部材が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の回転伝達機構。
【請求項5】
前記伝達面のインボリュート曲線の基礎円の直径と、前記被伝達面のインボリュート曲線の基礎円の直径とが等しいことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の回転伝達機構。
【請求項6】
前記伝達面のインボリュート曲線の基礎円の直径と、前記被伝達面のインボリュート曲線の基礎円の直径とが異なることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の回転伝達機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動部材の回転を従動部材に伝達する回転伝達機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
駆動部材の回転を従動部材に伝達するにあたって、駆動部材と従動部材とをカップリング部材を介して接続することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−194085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の構成では、駆動部材と従動部材とが共通の軸線周りに回転する場合には適用できるが、駆動部材および従動部材が各々、互いに平行な第1軸線および第2軸線の周りを回転する場合には適用することができない。一方、駆動部材と従動部材とを通常の歯車伝達機構を介して接続する構成が考えられるが、歯の強度不足等の問題が発生することがある。
【0005】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、駆動部材の第1軸線周りの回転を従動部材に伝達して、従動部材を第1軸線に平行な第2軸線周りの一方側に1回転未満の角度範囲で回転させるのに適した回転伝達機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、駆動部材の第1軸線周りの一方側への1回転未満の回転を従動部材に伝達して、前記従動部材を前記第1軸線に平行な第2軸線周りの一方側に1回転未満の角度範囲で回転させる回転伝達機構であって、前記駆動部材に前記第1軸線周りの一方側に向くようにインボリュート曲線をもって形成された1つの伝達面と、前記従動部材に前記第2軸線周りの他方側に向くようにインボリュート曲線をもって形成された1つの被伝達面とによって、前記駆動部材から前記従動部材に前記角度範囲の回転を伝達
し、前記駆動部材は、前記第1軸線が延在する方向の一方側に向いた面からなる第1端面と、前記第1端面から前記第1軸線が延在する方向の一方側に突出した部分である第1軸部と、前記第1軸部の周りから径方向外側に円弧状に突出した部分である第1円弧部と、を備え、前記従動部材は、前記第2軸線が延在する方向において前記第1端面が位置する側の面からなる第2端面と、前記第2端面から突出して前記第1軸部と並列する部分である第2軸部と、前記第2軸部の周りから径方向外側に円弧状に突出した部分である第2円弧部と、を備え、前記伝達面は、前記第1円弧部の前記第1軸線周りの一方側に位置する端部に設けられ、前記被伝達面は、前記第2円弧部の前記第2軸線周りの他方側に位置する端部に設けられていることを特徴とする。
【0007】
本発明では、駆動部材および従動部材が各々、互いに平行な第1軸線および第2軸線を中心に1回転未満の回転を行うことを着目して、駆動部材にインボリュート曲線をもって形成された1つの伝達面と、従動部材にインボリュート曲線をもって形成された1つの被伝達面とによって、駆動部材の回転を従動部材に伝達し、従動部材に第2軸線周りの1回転未満の角度範囲にわたる回転を行わせる。このため、通常の歯車伝達機構と違って、歯に相当する部分を1個所に設ければよいので、歯の強度不足等の問題が発生しにくい等、駆動部材の第1軸線周りの回転を従動部材に伝達して、従動部材を第1軸線に平行な第2軸線周りの一方側に1回転未満の角度範囲で回転させるのに適している。
【0009】
この場合、前記第1端面と前記第2軸部とが、前記第1軸線が延在している方向で離間し、前記第2端面と前記第1軸部とが、前記第1軸線が延在している方向で離間していることが好ましい。かかる構成によれば、駆動部材と従動部材との間に余計な負荷が発生しにくい。
【0010】
本発明において、前記駆動部材と前記従動部材とは、前記伝達面と前記被伝達面とにおいてのみ接触していることが好ましい。かかる構成によれば、駆動部材と従動部材との間に余計な負荷が発生しにくい。
【0011】
本発明において、前記従動部材には、前記従動部材を前記第2軸線周りの他方側に向けて付勢する付勢部材が設けられているが好ましい。かかる構成によれば、駆動部材の伝達面と従動部材の被伝達面とが確実に接する状態となる。
【0012】
本発明において、前記伝達面のインボリュート曲線の基礎円の直径と、前記被伝達面のインボリュート曲線の基礎円の直径とが等しい態様を採用することができる。かかる構成によれば、駆動部材と従動部材とを同じ角度範囲で同じ速度で回転させることができる。
【0013】
本発明において、前記伝達面のインボリュート曲線の基礎円の直径と、前記被伝達面のインボリュート曲線の基礎円の直径とが異なる態様を採用してもよい。かかる構成によれば、駆動部材と従動部材とを異なる角度範囲で異なる速度で回転させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、駆動部材および従動部材が各々、互いに平行な第1軸線および第2軸線を中心に1回転未満の回転を行うことを着目して、駆動部材にインボリュート曲線をもって形成された1つの伝達面と、従動部材にインボリュート曲線をもって形成された1つの被伝達面とによって、駆動部材の回転を従動部材に伝達し、従動部材に第2軸線周りの1回転未満の角度範囲にわたる回転を行わせる。このため、通常の歯車伝達機構と違って、歯に相当する部分を1個所に設ければよいので、歯の強度不足等の問題が発生しにくい等、駆動部材の第1軸線周りの回転を従動部材に伝達して、従動部材を第1軸線に平行な第2軸線周りの一方側に1回転未満の角度範囲で回転させるのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明を適用したモータ装置の内部を一方側からみた斜視図である。
【
図2】
図1に示すモータ装置の内部を他方側からみた斜視図である。
【
図3】
図1に示すモータ装置から従動部材およびセンサ機構を分離させたときの分解斜視図である。
【
図4】
図1に示すモータ装置の回転伝達機構を構成する部材の説明図である。
【
図5】
図1に示すモータ装置の回転伝達機構の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面を参照して、本発明を適用したモータ装置を説明する。なお、以下の説明では、モータ1の軸線方向にLを付し、モータ1において、回転軸12が突出している側をモータ軸線方向Lの「出力側La」とし、回転軸12が突出している側とは反対側をモータ軸線方向Lの「反出力側Lb」として説明する。また、駆動部材4の中心軸線である第1軸線にL1を付し、第1軸線L1方向の一方側にL1aを付し、第1軸線L1方向の他方側にL1bを付し、第1軸線L1周りの一方側にCCW1を付し、第1軸線L1周りの他方側
にCW1を付して説明する。また、従動部材7の中心軸線である第2軸線にL2を付し、第2軸線L2方向において第1軸線L1方向の一方側L1aと同じ側の一方側にL2aを付し、第2軸線L2方向において第1軸線L1方向の他方側L1bと同じ側の他方側にL2bを付し、第2軸線L2周りの一方側にCW2を付し、第2軸線L2周りの他方側にCCW2を付して説明する。
【0017】
(モータ装置100の構成)
図1は、本発明を適用したモータ装置100の内部を一方側からみた斜視図である。
図2は、
図1に示すモータ装置100の内部を他方側からみた斜視図である。
図3は、
図1に示すモータ装置100から従動部材7およびセンサ機構6を分離させたときの分解斜視図である。
【0018】
図1、
図2および
図3に示すモータ装置100は、開閉部材等の部材の姿勢等を切り換えるための装置であり、ハウジング(図示せず)の内部に、モータ1と、駆動部材4を含む歯車列3と、出力部材として従動部材7とを有している。モータ1は、ステッピングモータ1aであり、回転軸12の外周面に固着された永久磁石(図示せず)を備えたロータ10と、永久磁石の外周面を覆う筒状のステータ20と有している。永久磁石の外周面には、N極とS極が周方向において交互に配置されている。ステータ20は、モータ軸線方向Lに重ねて配置された一対のステータ組21、22を有している。ステータ20の両端面のうち、出力側Laの端面にはフレーム9が固定されている。フレーム9は、ステータ20の端面に固定された第1板部91と、第1板部91に出力側Laで対向する第2板部92と、第1板部91と第2板部92とを繋ぐ第3板部93とを備えており、回転軸12の先端部は、第2板部92に形成された軸穴(図示せず)によって回転可能に支持されている。回転軸12の外周面には、ウォームからなる歯車18が固定されている。
【0019】
(歯車列3の構成)
歯車列3は、第1歯車31と、第2歯車32と、第3歯車33と、第4歯車34と、第5歯車からなる駆動部材4とを有している。第1歯車31は支軸310に回転可能に支持され、第2歯車32は支軸320に回転可能に支持され、第3歯車33は支軸330に回転可能に支持され、第4歯車34は支軸340に回転可能に支持され、駆動部材4は支軸40に回転可能に支持されている。支軸310、320、330、340、40はハウジジング(図示せず)に支持されている。
【0020】
第1歯車31は、歯車18と噛み合うウォームホイール311と、ウォームホイール311と一体の歯車312とを有しており、歯車312は、ウォームホイール311より小径である。第2歯車32は、歯車312と噛み合う歯車321と、歯車321と一体の歯車322とを有している。歯車321は、歯車322より大径であり、歯車312より大径である。第3歯車33は、歯車322と噛み合っており、歯車322より大径である。第4歯車34は、第3歯車33と噛み合う歯車341と、歯車341と一体の歯車342とを有している。歯車341は、第3歯車33より大径であり、歯車342より大径である。
【0021】
駆動部材4は、筒部41と、筒部41から径方向外側に突出した扇形歯車42とを有しており、扇形歯車42は、歯車342と噛み合っている。扇形歯車42の曲率半径は、歯車342の半径より大である。また、筒部41には、支軸40が嵌る軸穴47が形成されている。
【0022】
このように構成した駆動部材4の回転は、後述する回転伝達機構5を介して、従動部材7に伝達される。その際、駆動部材4は、第1軸線L1周りに1回転未満の範囲で回転し、かかる回転によって、従動部材7は、第2軸線L2周りに1回転未満の角度範囲で回転
する。
【0023】
(センサ機構6の構成)
図3に示すように、モータ装置100には、ロータ10の回転を検出するセンサ機構6が設けられている。本形態において、センサ機構6は、ロータ10と一体に回転する磁石61と、磁石61に対向する磁気センサ素子62とからなる。本形態において、磁石61は、回転軸12の反出力側Lb側の端部に連結された回転板63に保持されている。本形態において、磁石61は、回転板63の出力側Laの面において、周方向の1か所に設けられた磁石保持穴631の内側に保持されている。従って、磁石61は、周方向の1か所に設けられている。磁気センサ素子62は、モータ基板25に保持されており、ロータ10が回転して磁石61が磁気センサ素子62の近傍を通過する際、磁石61に径方向外側で対向する。従って、センサ機構6によれば、ロータ10の角度位置や回転数を検出することができる。本形態において、磁気センサ素子62はホール素子である。なお、モータ基板25にはコネクタ29が保持されている。
【0024】
(回転伝達機構5の構成)
図4は、
図1に示すモータ装置100の回転伝達機構5を構成する部材の説明図であり、
図4(a)、(b)は、回転伝達機構5を構成する駆動部材4の斜視図、および回転伝達機構5を構成する従動部材7の斜視図である。
図5は、
図1に示すモータ装置100の回転伝達機構5の説明図であり、
図5(a)、(b)は、回転伝達機構5の側面図、および回転伝達機構5のA−A′断面図である。
【0025】
モータ装置100において、駆動部材4と従動部材7との間には、
図4および
図5に示す回転伝達機構5が構成されており、回転伝達機構5は、駆動部材4の第1軸線L1周りの一方側CCW1への1回転未満の回転を従動部材7に伝達し、従動部材7を第1軸線L1に平行な第2軸線L2周りの一方側CW2に1回転未満の所定の角度範囲で回転させる。また、従動部材7には、ハウジング(図示せず)等との間に、従動部材7を第2軸線L2周りの他方側CCW2に向けて付勢する付勢部材8が設けられている。かかる付勢部材8は、例えば、一方端が従動部材7に保持され、他方端がハウジング等に保持された捩りコイルバネ等からなる。
図5等には、付勢部材8を矢印で示してある。
【0026】
本形態では、回転伝達機構5を構成するにあたって、駆動部材4には第1軸線L1周りの一方側CCW1に向くようにインボリュート曲線をもって形成された1つの伝達面49が形成され、従動部材7には、第2軸線L2周りの他方側CCW2に向くようにインボリュート曲線をもって形成された1つの被伝達面79が形成されており、伝達面49および被伝達面79は、駆動部材4から従動部材7に1回転未満の所定の角度範囲の回転を伝達する。
【0027】
より具体的には、駆動部材4は、筒部41において第1軸線L1が延在する方向の一方側L1aに向いた面からなる第1端面43と、第1端面43から第1軸線L1が延在する方向の一方側L1aに突出した部分である第1軸部44と、第1軸部44の周りから径方向外側に円弧状に突出した部分である第1円弧部45とを備えており、第1円弧部45の第1軸線L1周りの一方側CCW1に位置する端部48に伝達面49が設けられている。
【0028】
従動部材7は、円盤部71において第2軸線L2が延在する方向の他方側L2b(第1端面43が位置する側)に向いた面からなる第2端面73と、第2端面73から第2軸線L2が延在する方向の他方側L2bに突出して第1軸部44と並列する部分である第2軸部74と、第2軸部74の周りから径方向外側に円弧状に突出した部分である第2円弧部75とを備えており、第2円弧部75の第2軸線L2周りの他方側CCW2に位置する端部78に被伝達面79が設けられている。
【0029】
ここで、駆動部材4の第1端面43と従動部材7の第2軸部74とは、第1軸線L1および第2軸線L2が延在している方向で離間し、従動部材7の第2端面73と駆動部材4の第1軸部44とは、第1軸線L1および第2軸線L2が延在している方向で離間している。すなわち、駆動部材4と従動部材7とは、伝達面49と被伝達面79とにおいてのみ接触している。本形態において、伝達面49のインボリュート曲線の基礎円L49の直径と、被伝達面79のインボリュート曲線の基礎円L79の直径とは等しく設定されている。
【0030】
このように構成したモータ装置100において、モータ1が正回転すると、モータ1の回転は、歯車列3を介して駆動部材4に伝達される。このため、回転伝達機構5において、駆動部材4が第1軸線L1周りに一方側CCW1に回転し、駆動部材4の伝達面49が従動部材7の被伝達面79を押圧する。その結果、従動部材7は、付勢部材8の付勢力に抗して、第2軸線L2周りに一方側CW2に回転し、所定の角度位置で停止する。この状態は、ウォームギアからなる歯車18とウォームホイール311との間の負荷等によって維持される。
【0031】
これに対して、従動部材7を元の位置に戻す際には、モータ1が逆回転する。その結果、駆動部材4が第1軸線L1周りに他方側CW1に回転する。この場合でも、従動部材7は、付勢部材8の付勢力によって第2軸線L2周りに他方側CCW2に付勢されているので、伝達面49と被伝達面79とが接する状態が常に維持される。
【0032】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態のモータ装置100の回転伝達機構5では、駆動部材4および従動部材7が各々、互いに平行な第1軸線L1および第2軸線L2を中心に1回転未満の回転を行うことを着目して、駆動部材4にインボリュート曲線をもって形成された1つの伝達面49と、従動部材7にインボリュート曲線をもって形成された1つの被伝達面79とによって、駆動部材4の回転を従動部材7に伝達し、従動部材7に第2軸線L2周りの1回転未満の角度範囲にわたる回転を行わせる。このため、通常の歯車伝達機構と違って、駆動部材4あるいは従動部材7が偏心していても余計な負荷が発生しにくい。また、回転を伝達する際、伝達面49と被伝達面79との滑りが少ないので、回転トルクを高い伝達効率で伝えることができる。また、モータ装置100や回転伝達機構5を組み立てる際、駆動部材4と従動部材7とが干渉するおそれがある部分が少ないので、駆動部材4と従動部材7とを噛み合わせるのに多大な手間がかからない。さらに、通常の歯車伝達機構と違って、1か所に歯に相当する部分(伝達面49および被伝達面79)を設ければよいので、第1円弧部45および第2円弧部75を周方向で十分な寸法に形成することができる。本形態では、第1円弧部45および第2円弧部75を各々、約180°の角度範囲に形成されている。従って、歯の強度不足等の問題が発生しない。それ故、本形態の回転伝達機構5は、駆動部材4の第1軸線L1周りの回転を従動部材7に伝達して、従動部材7を第1軸線L1に平行な第2軸線L2周りの一方側CW2に1回転未満の角度範囲で回転させるのに適している。
【0033】
また、駆動部材4の第1端面43と従動部材7の第2軸部74とは、第1軸線L1および第2軸線L2が延在している方向で離間し、従動部材7の第2端面73と駆動部材4の第1軸部44とは、第1軸線L1および第2軸線L2が延在している方向で離間している等、駆動部材4と従動部材7とは、伝達面49と被伝達面79とにおいてのみ接触している。従って、駆動部材4と従動部材7との間に余計な負荷が発生しにくい。
【0034】
また、従動部材7には、従動部材7を第2軸線L2周りの他方側CCW2に向けて付勢する付勢部材8が設けられているため、付勢部材8を第2軸線L2周りの他方側CCW2
に回転させることができるとともに、駆動部材4の伝達面49と従動部材7の被伝達面79とを常に確実に接する状態とすることができる。
【0035】
また、本形態では、伝達面49のインボリュート曲線の基礎円L49の直径と、被伝達面79のインボリュート曲線の基礎円L79の直径とは等しく設定されている。従って、駆動部材4と従動部材7とを同じ角度範囲同じ速度で回転させることができる。また、伝達面49から被伝達面79へのトルクの伝達効率を高めることができる。
【0036】
(他の実施の形態)
上記実施の形態では、伝達面49のインボリュート曲線の基礎円L49の直径と、被伝達面79のインボリュート曲線の基礎円L79の直径とが等しく設定されていたが、基礎円L49の直径と基礎円L79の直径とを相違させてもよい。この場合、駆動部材4と従動部材7とを異なる角度範囲で異なる速度で回転させることができる。
【0037】
また、上記実施の形態では、第5歯車と出力部材との間に回転伝達機構5を設けたが、歯車列3を構成する歯車の間に回転伝達機構5を設けてもよい。
【符号の説明】
【0038】
L1…第1軸線、L2…第2軸線、L49、L79…基礎円、1…モータ、1a…ステッピングモータ、3…歯車列、4…駆動部材、5…回転伝達機構、7…従動部材、8…付勢部材、41…筒部、42…扇形歯車、43…第1端面、44…第1軸部、45…第1円弧部、47…軸穴、49…伝達面、71…円盤部、73…第2端面、74…第2軸部、75…第2円弧部、79…被伝達面、100…モータ装置