(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記弾性片は、先端側に、前記受け部内に配置される前記角材に向けて突出し、該角材の外面に食い込みあるいは傷付けるように係止しまたは圧接する爪部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の角材固定具。
固定対象面に角材及び請求項5に記載の角材固定具をあてがい、該角材固定具の固定部で前記固定対象面に該角材固定具を固定した後、前記角材を軸方向に移動させて該角材の位置を調整し、前記角材固定具の下孔から釘やビスを前記角材に打ち込んで該角材をずれ止め状態にすることを特徴とする角材の固定方法。
角材を接着剤によって固定対象面に貼着し、前記接着剤の硬化前に、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の角材固定具を前記角材に仮取着し、該角材固定具の固定部で前記固定対象面に固定した後、前記角材を軸方向に移動させて該角材の位置を調整することを特徴とする角材の固定方法。
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の角材固定具を角材に仮取着し、該角材を把持して固定対象面に前記角材及び前記角材固定具をあてがい、前記角材固定具の固定部で前記固定対象面に該角材固定具を固定することを特徴とする角材の固定方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、角材を接着剤を使用した貼着によりコンクリート壁等に固定するときには、接着剤が硬化するまで角材に配線材、配管材や器具等を固定し支持させることはできないため、角材の固定に時間を要し、作業効率は低かった。
【0006】
そこで、本発明は、角材を基礎壁に短時間で効率良く固定できる角材固定具及び角材の固定方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の角材固定具は、固定対象面に当接され、釘やビスが打ち込まれる固定部と、前記固定対象面に留め付けられる角材の反固定対象面側の面にあてがわれる前面板と、前記固定部と前記前面板とを連結する第1壁と、前記第1壁と対面するように前記前面板から延設された第2壁と、を備え、前記前面板と前記第1壁と前記第2壁とにより前記角材を受ける受け部が構成されている。そして、前記受け部内に前記角材が配置された状態で前記角材に弾接する弾性片が前記第1壁及び前記第2壁の少なくとも一方に設けられ、角材固定具は、前記弾性片により前記角材に
その軸方向に移動可能に仮取着されるものである。
【0008】
請求項2の角材固定具は、特に、弾性片の先端側に、前記受け部内に配置される前記角材に向けて突出し、該角材の外面に食い込みあるいは傷付けるように係止しまたは圧接する爪部が設けられている。
請求項3の角材固定具は、特に、爪部が、突出するに従って前記前面板側に向けて傾斜する傾斜面を有している。
請求項4の角材固定具は、特に、爪部が、先端部に前記傾斜面と交差する方向に傾斜する交差傾斜部を有している。
請求項5の角材固定具は、特に、前面板に、前面側から前記角材に釘やビスを打ち込むための下孔が設けられている。
【0009】
請求項6の角材の固定方法は、固定対象面に角材及び請求項5に記載の角材固定具をあてがい、該角材固定具の固定部で前記固定対象面に該角材固定具を固定した後、前記角材を軸方向に移動させて該角材の位置を調整し、前記角材固定具の下孔から釘やビスを前記角材に打ち込んで該角材をずれ止め状態にするものである。
請求項7の角材の固定方法は、角材を接着剤によって固定対象面に貼着し、前記接着剤の硬化前に、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の角材固定具を前記角材に仮取着し、該角材固定具の固定部で前記固定対象面に固定した後、前記角材を軸方向に移動させて該角材の位置を調整するものである。
請求項8の角材の固定方法は、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の角材固定具を角材に仮取着し、該角材を把持して固定対象面に前記角材及び前記角材固定具をあてがい、前記角材固定具の固定部で前記固定対象面に該角材固定具を固定するものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1、6〜8の発明は、角材に弾接する弾性片が設けられているので、角材固定具は、角材が角材固定具の受け部に配置されたとき、弾性片の弾性力により第1壁と第2壁とで角材を挟持し、角材に仮取着される。これにより、弾性片によって角材に仮取着された角材固定具と、角材とを、固定対象面にあてがって仮配置した後、固定部で角材固定具を固定対象面に固定してから、角材を軸方向に移動させることができるので、角材固定具を固定対象面の概略的な位置で固定しておいてから角材を軸方向に移動させつつ最適な位置に調整することができ、作業し易い。また、角材固定具を固定対象面に固定した後角材は角材固定具によって保持されているので、位置合わせの間常時角材を把持している必要はなく、単に角材を固定対象面に沿って移動させるだけでよいから、作業性が良い。更に、角材固定具の固定時に、固定部から離間した位置で角材を把持できるので、固定部に安全に釘やビスを打ち込むことができる。
そして、角材固定具は弾性片により角材に仮取着されることにより、角材に角材固定具を仮取着してからこれらを一体に固定対象面にあてがい、固定部で角材固定具を固定対象面に固定する場合には、角材のみを把持して固定対象面に角材及び角材固定具をあてがい、角材固定具の固定部に釘やビスを打ち込むことができるから、作業性が良い。
これらのことから、角材を短時間で効率良く基礎壁の固定対象面に固定することができる。
【0011】
加えて、弾性片により、サイズが多少異なる角材にも対応してこれを角材固定具の受け部内に挿入配置し、角材固定具を仮取着することができる。
【0012】
ここで、請求項6の発明の場合は、角材固定具の下孔から釘やビスを角材に打ち込んでこれを強固に固定することができる。また、請求項7の発明の場合は、角材を接着剤で所定位置に強固に固定することができる。
【0013】
請求項2の発明は、弾性片の爪部が角材の外面に食い込みあるいは傷付けるように係止しまたは圧接するので、角材が不用意に軸方向に移動するのを抑えることができる。
請求項3の発明は、爪部が前面板側に向けて傾斜する傾斜面を有するので、角材を円滑に受け部内に挿入し配置することができる。
請求項4の発明は、爪部の先端部に、請求項3に記載の傾斜面と交差する方向に傾斜する交差傾斜部を有するので、前記傾斜面と相俟って、爪部の先端部を先細りに尖った形状として角材との当接面積を小さくし、爪部の押圧力を角材の外面の狭い範囲に集中的に作用させて、角材を強く押さえ付けることができる。その一方で、爪部は、傾斜面と交差傾斜部とを有し先端部が傾斜しているとともに、先細りに尖った形状をなすから、先端部が角材の外面に食い込んだりしている状態において先端部を角材の外面の外側に容易に抜け出させることもでき、角材は格別抵抗を受けることなく軸方向に往復移動させることが可能である。その結果、角材固定具を固定対象面に固定した後に角材を軸方向に移動させて位置調整する作業を円滑に行なうことができる。
【0014】
請求項5の発明は、前面板に下孔が設けられているので、前面側から角材に釘あるいはビスを打ち込むことにより、角材を角材固定具の一定位置ひいては固定対象面の一定位置に強固に固定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態の角材固定具を図に基づいて説明する。
角材固定具は、
図6等に示すように、建物のコンクリート壁等の基礎壁51の固定対象面52に角材61を固定するためのものである。
角材61は、木材、発泡樹脂材等で矩形棒状に形成されており、これに配線材、配管材や給水管継手等の器具などがビス等を使用して取り付けられる。本実施形態では、角材61は、幅30mm、高さ30mmのもの、あるいは幅30mm、高さ33mmのものを使用している。
【0017】
角材固定具1は、合成樹脂等で形成され、
図1、
図2及び
図6に示すように、基礎壁51の固定対象面52に固定される固定部11と、角材61の反固定対象面側の面62にあてがわれる前面板21と、固定部11と前面板21とを連結する第1壁31と、第1壁31と対面するように前面板21から延設された第2壁41と、を備えており、前面板21と第1壁31と第2壁41とにより角材61を受ける受け部1aが構成されている。角材固定具1は、全体として、受け部1aが略コ字板状をなし、第1壁31から固定部11が前面板21と平行して下方に突出した形状となっている。更に、第1壁31には、受け部1a内に配置される角材61に弾接する弾性片33が設けられている。なお、角材固定具1は、幅方向両端部に補強リブ1bが端部に沿って立設されている。
【0018】
前記固定部11は、四角板状に形成され、中央に釘やビスが挿通されて打ち込まれる固定孔12が形成されている。固定部11において基礎壁51の固定対象面52に当接する面には固定対象面52に食い込む小さい円錐状の小突起13が複数、本実施形態では4個設けられている。
【0019】
前面板21は、四角板状に形成され、前面側の表面22とは反対側の裏面23すなわち受け部1a側の内面が角材61の反固定対象面側の面62にあてがわれる。ここで、「前面側」とは、固定対象面52の前方すなわち固定対象面52と対面する側をいう。また、角材61の「反固定対象面側の面」とは、角材61において基礎壁51の固定対象面52とは反対側の面すなわち前面をいう。前面板21の略中央部には、前面側から角材61に釘やビスを打ち込むための下孔24が設けられている。
【0020】
次に、第1壁31は、固定部11と前面板21との間にあって、矩形板状をなし、固定部11と前面板21とを段差L1を有する平行状態で連結している。段差L1は第1壁31の奥行方向の寸法でもあり、角材61の幅と同一の30mmに形成されている。第1壁31は平面部分が前面板21と直交する平面より僅かに下方に傾斜するテーパ面になっている。これにより、受け部1aの開口は下方に拡大し、内部に角材61を挿入し易くなっているとともに、テーパ面は成形金型から角材固定具1を取り出すための抜き勾配ともなっている。
【0021】
第1壁31の幅方向の2箇所には、間隔をおいて、奥行方向の途中から前面板21の下端部に連通する切欠空間32が形成され、切欠空間32は一辺を残した略コ字状に形成されている。切欠空間32の内側部分には、前記一辺を基端として前面板21方向に延出し弾性的に内外に撓む矩形状の弾性片33が設けられている。更に、弾性片33の延出方向の先端部の受け部1a側の面には、角材61に向けて突出し、略三角柱状をなす爪部34が設けられている。爪部34は、突出するに従って弾性片33の上面から前面板21側に向けて傾斜する傾斜面35を有している。そして、爪部34の先端部は、
図1(b)に拡大して示すように、幅方向の左右両側に傾斜面35と交差して先端頂部36から弾性片33の幅方向の端縁に向かって下方に傾斜する三角平面形状の交差傾斜部37が形成されている。つまり、爪部34は、先端部が角材61の外面に食い込みあるいは傷付けるように係止しまたは圧接する略四角錐形状の先細りの尖った形状となっている。爪部34において前面板21と対向する側は垂直面に形成されている。
【0022】
更に、第1壁31の受け部1a側の面において幅方向における切欠空間32の近傍の3箇所には、前面板21の下端側から固定部11の上端に向けて延びる小突条39が設けられている。小突条39は断面が半円状に形成され、その突出高さは前面板21と接する基点では0で、固定部11に向かうに従って徐々に直線的に大きくなっている。小突条39の頂部を通る直線が第1壁31の平面部分との間になす傾斜角度は、前述した、第1壁31の平面部分の下方に傾斜するテーパ面の傾斜角度と等しくなっており、但し傾斜方向は全く逆になっている。つまり、これらの傾斜角度は相殺されて小突状39の頂部は前面板21に対して90度の角度で交差している。
【0023】
第2壁41は、矩形板状に形成され、第1壁31と対面するように前面板21の上端部から略水平方向に延設され、延設方向の長さすなわち奥行方向の寸法は第1壁31より小さくなっている。第2壁41は前面板21に直交する平面より僅かに上方に傾斜するテーパ面になっている。これにより、受け部1aの開口は上方に拡大し、第1壁31のテーパ面と相俟って内部に角材61を挿入し易くなっているとともに、テーパ面は成形金型から角材固定具1を取り出すための抜き勾配ともなっている。
【0024】
更に、第2壁41の受け部1a側の内面において幅方向における3箇所には第1壁の小突条39と対向する位置に、前面板21側から第2壁41の先端に向けて延びる小突条42が突設されている。小突条42は、第1壁31の小突条39と同様に、断面が半円状に形成され、その高さは前面板21と接する基点では0で、固定部11側の先端に向かうに従って徐々に直線的に大きくなっている。小突条42の頂部を通る直線が第2壁41の平面部分との間になす傾斜角度は、第2壁41の平面部分の上方に傾斜するテーパ面の傾斜角度と等しくなっており、但し傾斜方向は全く逆になっている。つまり、小突状42の頂部は前面板21に対して90度の角度で交差している。
【0025】
したがって、第1壁31の小突条39と第2壁41の小突条42とは、受け部1aの奥行方向全体に至って間隔が一定の平行状態にある。なお、本実施形態においては、その間隔L2は33mmに設定されている。
【0026】
次に、このように構成された角材固定具1を使用して角材61を基礎壁51の固定対象面52に取り付ける方法を説明する。なお、角材61は、幅30mm、高さ30mmのものを取り付ける場合を示す。
最初に、角材61を接着剤によって基礎壁51の固定対象面52に貼着する。このとき、角材61は正確な取付位置を罫書いてそれに位置合わせするまでの必要はなく、固定対象面52の概略位置に貼着する。
【0027】
次に、接着剤が硬化する前に、
図3(a)、
図4、
図5(a)に示すようにして、前面側から角材61の2箇所に角材固定具1を仮取着し、次いで、固定部11の固定孔12に釘あるいはビス53を挿通しこれを固定対象面52に打ち込んで角材固定具1を固定する。これにより、角材61は、
図3(b)、
図5(b)に示すように、角材固定具1によって支持される。このとき、
図5(b)に示すように、角材固定具1の第1壁31の弾性片33の爪部34は角材61の下面に押圧され、弾性片33は基端33aを中心に弾性的に第1壁31の外側に僅かに撓む。また、角材61が木材からなる場合は、爪部34の先端頂部36は角材61の外面に食い込みあるいは前面を傷付けるように係止する。角材61が硬い発泡樹脂材等からなる場合は、爪部34の先端頂部36は角材61の外面に圧接する。なお、角材61の高さは30mmであり、第1壁31の小突条39と第2壁41の小突条42との間隔L2は33mmであるので、角材61の下面と第1壁31の小突条39との間には、3mmの隙間Sが形成される。
【0028】
続いて、角材61が角材固定具1で支持された仮保持状態において、
図3(b)に示すように、角材61を固定対象面52に沿って矢印で示す軸方向に移動させて最適位置に調整する。このとき、角材固定具1の弾性片33の爪部34の先端頂部36が角材61の外面に食い込みあるいは外面を傷付けるように係止しまたは圧接しているが、爪部34は、傾斜面35及び交差傾斜部37を有して先端部が傾斜しているとともに、先細りに尖った形状をなしているから、移動操作したときには先端部は角材61の外面の外側に抜け出し易く、角材61は格別抵抗を受けることなく軸方向に往復移動させ易い。
【0029】
その後、
図3(c)、(d)に示すように、前面側から角材固定具1の前面板21の下孔24に釘あるいはビス63を挿通し、角材61に打ち込んで角材固定具1と角材61とを固定する。固定後の状態を
図3(d)、
図5(c)、
図6に示す。これにより、角材61は、角材固定具1に対して位置ずれするのが確実に防止され、ひいては、固定対象面52から位置ずれするのが防止され、最適位置に保持される。そして、その後に接着剤が硬化することにより角材61は一層強固に固定対象面52の一定位置に保持される。
【0030】
なお、上記実施形態では、角材61は、幅30mm、高さ30mmのものを取り付けているが、角材61が幅30mm、高さ33mmのものである場合は、第1壁31の小突条39と第2壁41の小突条42との間隔L2が33mmであるので、角材固定具1の受け部1a内に角材61を挿入配置したときには、角材61の下面と第1壁31の小突条39との間には隙間は形成されず、角材61の下面は第1壁31の小突条39の全体に至って均等に当接する。
このように、角材61の高さが多少異なる場合でも、弾性片33は第1壁31の平面と直交する方向に撓むので、常に爪部34は弾性的に角材61の下面を押圧し第2壁41とで角材61を挟持する。
【0031】
ところで、この取付方法においては、最初に、角材61を接着剤によって基礎壁51の固定対象面52に貼着してから、角材61に角材固定具1をあてがい、これを固定部11で固定対象面52に固定しているが、最初に、角材61に角材固定具1を仮取着するとともに角材61に接着剤を塗布してから、角材61と角材固定具1とを一体に固定対象面52にあてがって仮配置した後、固定部11で角材固定具1を固定対象面52に固定することもできる。なお、これ以後は、同様にして、接着剤が硬化する前に、角材61が角材固定具1で支持された仮保持状態において、角材61を固定対象面52に沿って軸方向に移動させて最適位置に調整する。ところで、この取り付けの場合、最初の作業において、弾性片33は弾性的に角材61を保持するとともに、爪部34において前面板21と対向する側は垂直面に形成されていて、爪部34は角材61の外面と係止して角材61は抜け出しにくくなっているから、角材61に角材固定具1を仮取着した後角材61を把持して固定対象面52にあてがうまでの作業中に、角材固定具1が不用意に角材61から外れて落下してしまうのを回避できる。
【0032】
ここで、角材固定具1の弾性片33の爪部34と角材61の移動との関係について付説する。
今、角材固定具1の弾性片33の爪部が、
図7(e)、(f)に示すように、弾性片33の先端で一側のみに傾斜する係止片で形成されているとすると、係止片からなる爪部71が角材61の外面に係止した状態で角材61を
図7(e)に示すように右方向に移動させるときは、爪部71との引掛かりが少なく角材61は格別支障なく移動させることができるが、角材61を
図7(f)に示すように係止片の傾斜方向とは逆の左方向に移動させるときは、爪部71との引掛かりが大きく大きな摺動抵抗を受けるので、角材61の移動は困難となる。
【0033】
そこで、弾性片33の爪部を、
図7(c)、(d)に示すように、爪部72の先端頂部72aから両側に傾斜面を有する三角柱状のものとすれば、角材61を左右いずれの方向に移動させる場合も爪部72の先端は角材61の外面に強く引掛かって移動に対して大きな抵抗になることはないので、角材61は割合楽に左右方向に移動させることができる。しかし、
図7(c)、(d)に示す爪部72は角材61との当接面積は比較的小さく、
図7(e)、(f)に示す爪部71と比較すると、角材61の外面との間に生じる摺動抵抗は小さいものの、先端頂部72aは直線状の当接面となっているので、移動にはなお比較的大きな力を要するし、左右以外の方向にも移動させにくい。
【0034】
これらの爪部に対して、本発明の角材固定具1の爪部34は、
図7(a)、(b)に示すように、傾斜面35及び交差傾斜部37を有して先端部が3面において傾斜する四角錐に近似した形状をなすとともに、先細りの尖った形状に形成されていて爪部34の先端頂部36は角材61の外面とはほぼ点の状態で当接する。このため、角材61は軸方向に往復移動させ易く、円滑に移動させることができる。
【0035】
次に、本実施形態の角材固定具1の作用を説明する。
角材固定具1は、角材61に弾接する弾性片33が設けられているので、角材61が受け部1aに配置されたとき、弾性片33の弾性力により第1壁31と第2壁41とで角材61を挟持し、角材61に仮取着される。これにより、角材61を固定対象面52にあてがって仮配置し、角材固定具1を弾性片33により角材61に仮取着した後、固定部11で角材固定具1を固定対象面52に固定してから、角材61を軸方向に移動させることができるので、最初に固定対象面52に角材61の正確な取付位置を罫書いてから角材61を罫書き線に位置合わせして角材固定具1を固定対象面52に固定する、という面倒な作業を行なうことなく、角材61を固定対象面52の概略的な位置に仮配置しておいてから軸方向に移動させつつ最適な位置に調整することができ、作業し易い。また、角材固定具1を固定対象面52に固定した後角材61は角材固定具1によって保持されるので、位置合わせの間常時角材61を把持している必要はなく、単に角材61を固定対象面52に沿って移動させながら位置合わせすればよいので、作業性が良い。更に、固定部11から離間した位置で角材61を把持できるので、固定部11に安全に釘やビスを打ち込む作業を行なうことができる。
【0036】
そして、角材固定具1は弾性片33により角材61に仮取着されるので、角材61に角材固定具1を仮取着してからこれらを一体に固定対象面52にあてがい、固定部11で角材固定具1を固定対象面52に固定する場合には、角材61のみを把持して固定対象面52に角材61及び角材固定具1を一体にあてがい、角材固定具1の固定部11に釘やビスを打ち込むことができるから、作業性が良い。
これらのことから、角材61を短時間で効率良く基礎壁51の固定対象面52に固定することができる。
【0037】
加えて、弾性片33が設けられているので、サイズが多少異なる角材61にも対応してこれを角材固定具1の受け部1a内に挿入配置し、角材固定具1を仮取着できる。
【0038】
更に、弾性片33の爪部34が角材61の外面に食い込みあるいは傷付けるように係止しまたは圧接する。また、爪部34は、傾斜面35を有するとともに、先端部に傾斜面35と交差する方向に傾斜する交差傾斜部37を有するので、爪部34の先端部は先細りに尖った形状であって角材61との当接面積は小さいために、先端頂部36は角材61の外面の狭い範囲に集中的に強く押圧される。これらのことから、角材61は角材固定具1に安定して仮保持され、不用意に軸方向に移動するのが抑えられる。
【0039】
その一方で、爪部34は、傾斜面35と交差傾斜部37とを有し先端部が傾斜しているとともに、先細りに尖った形状をなすから、先端部が角材61の外面に食い込んだりしている状態において先端部を角材61の外面の外側に容易に抜け出させることもできるため、角材61は格別抵抗を受けることなく軸方向に往復移動させることが可能である。その結果、角材固定具1を固定対象面52に固定した後に角材61を軸方向に移動させて位置調整する作業を円滑に行なうことができる。
加えて、爪部34は傾斜面35を有するので、角材61を円滑に受け部1a内に挿入し配置することができる。
【0040】
次に、本発明の別の角材固定具1を
図8に示す。
図8において、角材固定具1は、
図1、2等に示した角材固定具1と比較して、固定部11のみが異なる。
図8に示す角材固定具1の固定部11は、固定孔12の外周部に内側円筒状部14が一体に立設されている。そして、内側円筒状部14の外周面にはこの高さと同一の長さを有する複数の円弧板状の羽根部15が周方向に所定の間隔をおいて外周方向に突設されている。更に、羽根部15の外側には内側円筒状部14より高さが小さい外側円筒状部16が立設されている。
【0041】
固定部11の固定孔12に釘あるいはビスを挿通し、コンクリート壁のように非常に硬い基礎壁51に打ち込む場合には、ガス式鋲打機がよく使用される。しかし、ガス式鋲打機は高圧で釘等を打ち込むので、その衝撃圧により固定部11が割れてしまうことがある。このため、
図8に示す角材固定具1では、内側円筒状部14及び外側円筒状部16を固定孔12の外周部分に設けている。これらの円筒状部があると、固定部11が補強されて打ち込み時の割れを防ぐことができる。また、これらの円筒状部は釘等の打ち込みの案内ともなる。
【0042】
ところで、上記実施形態の弾性片33は、第1壁31に設けられているが、第2壁41に設けてもよく、あるいは第1壁31と第2壁41との双方に設けてもよい。また、弾性片33は、第1壁31の2箇所に設けているが、これに限定されるものでもない。
【0043】
また、上記実施形態の弾性片33の爪部34の先端部は、傾斜面35と、傾斜面35と交差する方向に傾斜する交差傾斜部37とを有し、前面板21と対向する側の面は垂直面に形成されているが、前面板21と対向する側の面の先端も傾斜面に形成する、すなわち先端部の4面とも傾斜面に形成してもよい。更に、爪部34の先端部は、他の多角錘形状や円錐形状、楕円錘形状等に形成してもよい。
加えて、爪部34の交差傾斜部37は三角平面形状に形成されているが、山形に尖った突条等で形成してもよい。
そして、爪部34はこれらの形状に限定されるものでもなく、また、爪部34同士で形状が相違していてもよい。
【0044】
更に、上記実施形態において、角材61は、接着剤を使用した貼着により基礎壁51に固定するとともに、角材固定具1の前面板21の下孔24に釘等を打ち込むことによって基礎壁51に固定しているが、これらのいずれか一方のみの手段によって基礎壁51に固定してもよい。なお、角材61を接着剤の貼着によって基礎壁51に固定する場合は、釘等を打ち込む下孔24は不要とすることもできる。
【0045】
また、上記実施形態の角材固定具1は、角材61の左右に各1個取り付けているが、角材61が長尺の場合などでは、3箇所以上に取り付けてもよい。
更に、上記実施形態の角材固定具1は、固定部11が下側となる向きで角材61に取り付けているが、固定部11が逆の上側となる向きで取り付けてもよい。角材61が基礎壁51の固定対象面52に取り付けられる高さによっては、固定部11で固定対象面52に固定する際に固定部11が上側となる向きで取り付けた方が、作業し易いことがあるからである。
【0046】
加えて、第1壁31に小突条39が突設され、第2壁41に小突条42が突設されているが、小突条は第1壁31、第2壁41のいずれか一方のみに設けてもよく、あるいは、いずれにも設けないものとしてもよい。また、小突条を前記各壁に設ける数も問わない。
【0047】
なお、上記実施形態で使用される角材61は矩形棒状に形成されているが、本発明は、必ずしもこの形状の角材61に限定して適用されるものでもない。