(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6673782
(24)【登録日】2020年3月9日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】耳装着装置
(51)【国際特許分類】
H04R 1/10 20060101AFI20200316BHJP
【FI】
H04R1/10 104A
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-166581(P2016-166581)
(22)【出願日】2016年8月29日
(65)【公開番号】特開2018-37716(P2018-37716A)
(43)【公開日】2018年3月8日
【審査請求日】2019年7月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000130329
【氏名又は名称】株式会社コルグ
(74)【代理人】
【識別番号】100121706
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128705
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147773
【弁理士】
【氏名又は名称】義村 宗洋
(72)【発明者】
【氏名】谷川 孝史
【審査官】
大石 剛
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−056698(JP,A)
【文献】
米国特許第06097827(US,A)
【文献】
特開2006−108945(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
耳孔に挿入されることなく、耳孔の周囲の窪みに保持され、入力される音響信号を耳孔に向けて放音するスピーカを内蔵する耳挿入部と、
耳の周縁位置に配置されて耳垂を挟み込むクリップ部と、
上記耳挿入部と上記クリップ部とを連絡し、上記スピーカへ音響信号を出力する回路を内蔵する本体部と、
を含み、
上記耳挿入部が上記本体部の一方の端に回転自在に接続されており、上記クリップ部が上記本体部の他方の端に固定されており、その回転軸が上記スピーカの中心から放射方向にずれた位置に配置される、
耳装着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、本体に内蔵された回路が発生する音響信号を使用者へ聴取させるために人間の耳に装着可能な構造とされた耳装着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の耳装着装置として、例えば、特許文献1に記載された装置がある。特許文献1に記載された耳装着装置は、クリップ構造で耳の肉厚を挟み込んだ状態で頭部を耳孔に挿入することなく耳孔の周囲の窪みに保持させる特殊な形式で耳に装着される。この耳装着装置は、装着状態で頭部から耳面上を伸びて耳の外側まで達する連絡部に音響信号を発生する回路が内蔵されている。回路により発生した音響信号は、頭部に内蔵されたスピーカから耳孔へ向けて放音される。
【0003】
このような耳装着装置は、例えば、タイマー、メトロノーム、ガスセンサ等の警報装置、携帯電話着信通知等の通報装置、トランシーバー等の通信機、補聴器、ラジオ、イヤホン、時計、音声ガイド装置に利用することができる。特に、耳装着型のリズム発生装置、例えば、メトロノーム、ペースメーカー、ゴルフスイングリズム練習装置、ジョギングリズム発生装置、各種のタイミング練習装置など、活動中に使用する小型かつ携帯可能な装置として利用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3524892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
耳装着装置は、回路や電池を内蔵するため、面積や重量が大きくなる場合が多い。特に、運動時に使用することを想定した種類の耳装着装置では、強固な装着力と快適で違和感のない装着感が求められる。しかしながら、人間の耳の形状は個人差が大きいため、従来の耳装着装置のように頭部とクリップ構造との距離が一定であると、各使用者の耳の形状に合わせた微調整ができなかった。特に、運動中に使用する耳装着装置では、使用しているうちに装着が緩む場合もあり、耳に装着したまま、より強く装着されるように簡単に調整できることが望ましい。
【0006】
この発明の目的は、上述のような点に鑑みて、使用者の耳の形状や装置の使用状況に合わせて装着状態を簡単に調整することが可能な耳装着装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、この発明の耳装着装置は、耳孔に挿入されることなく、耳孔の周囲の窪みに保持され、入力される音響信号を耳孔に向けて放音するスピーカを内蔵する耳挿入部と、耳の周縁位置に配置されて耳垂を挟み込むクリップ部と、耳挿入部とクリップ部とを連絡し、スピーカへ音響信号を出力する回路を内蔵する本体部と、を含み、クリップ部が本体部の一方の端に固定されており、耳挿入部が本体部の他方の端に回転自在に接続されており、その回転軸がスピーカの中心から放射方向にずれた位置に配置される。
【発明の効果】
【0008】
この発明の耳装着装置によれば、回転自在に接続される耳挿入部と本体部との接続部分を回転させる操作のみにより耳挿入部とクリップ部との距離が伸縮するため、使用者の耳の形状や使用状況に合わせて装着状況を簡単に調整することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態の耳装着装置の正投影図である。
図1(A)は正面図である。
図1(B)は背面図である。
図1(C)は側面図である。
図1(D)は平面図である。
図1(E)は底面図である。
【
図2】
図2は、実施形態の耳装着装置の斜視図である。
図2(A)は正面側斜視図である。
図2(B)は背面側斜視図である。
【
図3】
図3は、耳挿入部とクリップ部との距離の変化を説明するための図である。
【
図4】
図4は、耳装着装置を調整する操作を説明するための図である。
図4(A)は人間の耳の構造を説明するための図である。
図4(B)は通常の装着状態を説明するための図である。
図4(C)は
図4(B)の状態から耳挿入部を回転させて調整する操作を説明するための図である。
図4(D)は
図4(B)の状態からクリップ部を回転させて調整する操作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、図面中において同じ機能を有する構成部には同じ番号を付し、重複説明を省略する。
【0011】
実施形態の耳装着装置は、小型かつ軽量に設計され、耳に装着して使用者の耳元でリズムを刻むイヤークリップ型のメトロノームである。
図1に実施形態の耳装着装置の正投影図を示す。
図1に示すように、
図1(A)は正面図、
図1(B)は背面図、
図1(C)は側面図、
図1(D)は平面図、
図1(E)は底面図である。
図2に実施形態の耳装着装置の斜視図を示す。
図2に示すように、
図2(A)は正面側斜視図、
図2(B)は背面側斜視図である。
【0012】
耳装着装置は、例えば、耳挿入部、本体部、およびクリップ部からなる。耳挿入部は、
図1−2に示す、スピーカ収納部11、スピーカ12、回転軸13、および顎部14から構成される。本体部は、
図1−2に示す、電池収納部21、回路収納部22、操作ボタン23、操作ボタン24、および軸受け部25から構成される。クリップ部は、
図1−2に示す、クリップ31、回転軸32、および押さえ部33から構成される。
【0013】
耳挿入部は、例えば、以下のように構成される。スピーカ収納部11は、耳孔に挿入不可能、かつ、耳孔の周囲の窪みに挿入可能な大きさの円形に形成される。耳装着装置を耳に装着した状態では、スピーカ収納部11は、耳孔に挿入されることなく耳孔の周囲の窪みに保持される。スピーカ12は、その中心がスピーカ収納部11の中心に位置するように、スピーカ収納部11に内蔵されている。
【0014】
本体部は、例えば、以下のように構成される。電池収納部21と回路収納部22とは一体成形されている。電池収納部21は回路を駆動させるための電源である一次電池もしくは二次電池を収納する。電池収納部21へ収納する電池は、例えばボタン型電池である。外部の電源から有線または無線により回路へ電力供給可能であれば、電池収納部21は備えなくともよい。回路収納部22は、耳装着装置を耳に装着した状態では、耳面上を耳の外側へ向かって伸びて耳の縁の外側へ達する大きさに形成される。また、回路収納部22は耳装着装置の用途に則して音響信号を発生する回路を内蔵している。音響信号は、例えば、メトロノームにおいてリズムを刻むための短い電子音や、使用者へ操作や状態を案内するための予め録音した音声などである。回路収納部22に内蔵される回路が発生させた音響信号は、装置内部の配線を経由してスピーカ収納部11に内蔵されたスピーカ12へ供給され、その音響信号に対応する音がスピーカ12から耳孔へ向けて放音される。回路収納部22の側面には2個の押しボタン23、24が設けられている。使用者が押しボタン23、24を定められた手順で押下することで、例えば、耳装着装置の開始、停止、ボリューム操作、テンポ変更等の各種操作が行われる。
【0015】
クリップ部は、例えば、以下のように構成される。軸受け部25は回路収納部22の腹面から立ち上がる。軸受け部25の先端側にはクリップ31が回転軸32によって回転可能に取り付けられる。耳装着装置を耳へ装着した状態では、回路収納部22の腹面と押さえ部33との間に耳垂が挟み込まれ、その挟み込み力がスピーカ収納部11を耳面上に位置決めして耳孔の周囲の窪みに押し込む。スピーカ収納部11が耳孔の周囲の窪みに落ち込むと、スピーカ収納部11の腹側に突出した顎部14が耳の窪みの縁に引っ掛かって、クリップ31の挟み込み力に頼ることなく耳装着装置全体の重量を支持する。また、耳の窪みの縁がスピーカ収納部11を四方から拘束して、スピーカ収納部11が窪みの中で動いたり窪みの縁に衝突したりしないようにしている。
【0016】
耳挿入部と本体部とは回転軸13の位置において回転自在に接続されている。回転軸13はスピーカ収納部11の中心から放射方向にずれた位置に配置される。回転軸13をずらす方向は、例えば顎部14の方向とする。スピーカ収納部11の中心からずらす距離が大きいほど、耳挿入部とクリップ部との距離の調整可能な幅が大きくなるが、必要な調整幅を考慮して任意に定めればよい。このように構成することにより、耳挿入部と本体部との接続部分を回転させる操作を行うだけで、スピーカ収納部11(およびスピーカ12)の中心と押さえ部33の位置との距離を調整することができる。
【0017】
図3を参照して、距離の調整の仕組みについて、より詳しく説明する。スピーカ12の中心点をP1、耳挿入部と本体部との接続部分の回転軸をP2、押さえ部33の位置をP3とする。耳挿入部と本体部との接続部分を回転させていない状態、すなわち、P2がP1とP3とを結ぶ直線上にある場合、P1とP3との距離L1は最も長い状態となる。この状態から耳挿入部と本体部の接続部分を回転させると、P1とP3との距離L2は、P1、P2、P3が描く三角形の斜辺となり、距離L1よりも短くなる。距離L2は、耳挿入部が本体部に対して180度回転すると最も短くなるが、耳挿入部と本体部との最大回転角度は必要な調整幅を考慮して任意に定めればよい。
【0018】
図4を参照して、耳装着装置の調整方法について詳細に説明する。
図4(A)は、人間の耳の模式図である。一般的に人間の耳は、耳垂の周縁から耳孔までの距離が周縁位置によって異なる形状となっている。耳孔から耳垂の最下部への距離L3が最も長くなり、耳垂の周縁を上部へ上がるにつれて耳孔から周縁位置への距離L4が短くなる。
図4(B)は、耳垂の最下部をクリップ部で挟み込むことで装着した状態を示している。
図4(C)は、
図4(B)の状態からクリップ部を固定したまま耳挿入部をD1方向へ回転することで、クリップ31がD2方向へ移動して耳挿入部へ近付き、より深い位置で装着されるように調整する操作を示している。
図4(D)は、
図4(B)の状態から耳挿入部を固定したままクリップ31をD3方向へ回転することで、クリップ31が耳挿入部へ近付き、より安定する位置へ押さえ部33の位置を調整する操作を示している。仮に耳挿入部と本体部とを接続する回転軸13が耳挿入部の中心に位置する場合、耳挿入部が耳の周囲の窪みにおいて安定する位置へ調整することはできるとしても、耳挿入部とクリップ部との距離は一定であるため、装着力が向上することにはならない。
【0019】
この発明の耳装着装置は、上記のように構成することにより、耳挿入部もしくはクリップ部を回転させるという簡単な操作で、装着力を強くしたり装着感を改善したりすることができる。特に、運動中に使用することを前提とした耳装着装置であれば、より強固に装着することができ、仮に運動中に緩むようなことがあっても、運動を中断することなく装着状況を簡単に調整することが可能である。
【0020】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、これらの実施の形態に限られるものではなく、この発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計の変更等があっても、この発明に含まれることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0021】
11 スピーカ収納部
12 スピーカ
13 回転軸
14 顎部
21 電池収納部
22 回路収納部
23、24 操作ボタン
25 軸受け部
31 クリップ
32 回転軸
33 押さえ部