特許第6673792号(P6673792)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6673792
(24)【登録日】2020年3月9日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
   E06B 5/16 20060101AFI20200316BHJP
   E06B 3/26 20060101ALI20200316BHJP
【FI】
   E06B5/16
   E06B3/26
【請求項の数】1
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-184589(P2016-184589)
(22)【出願日】2016年9月21日
(65)【公開番号】特開2018-48483(P2018-48483A)
(43)【公開日】2018年3月29日
【審査請求日】2019年3月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000175560
【氏名又は名称】三協立山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人 英知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢内 貴之
(72)【発明者】
【氏名】能登谷 肇
【審査官】 家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−218832(JP,A)
【文献】 特開2015−42801(JP,A)
【文献】 米国特許第6327826(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 5/16
E06B 3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物開口部に固定される枠体と、アルミ形材からなる框材と樹脂材料からなる框材とからなる縦框及び横框を有し、縦框の内周面に横框の端面を突き合わせて接合して框組してなる障子を備え、
縦框のアルミ形材からなる框材の内周面の見込み寸法が横框のアルミ形材からなる框材の中空部の見込み寸法よりも小さく形成されており、
横框のアルミ形材からなる框材の中空部内に加熱膨張材を取り付けた補強部材が設けられ、加熱膨張材は火災時に膨張して横框と縦框との接合部において横框のアルミ形材からなる框材の中空部が縦框のアルミ形材からなる框材の室内側に露出して形成される連通孔を塞ぐ
ことを特徴とする建具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
アルミ形材と樹脂形材とからなる框材を框組みしてなる障子を備える複合サッシに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、枠体及び框体をアルミ形材と樹脂形材とからなる複合枠、複合框として形成し、断熱性を高めた複合サッシが周知となっている。(特許文献1)
そして、特許文献1のような複合サッシにおいて、さらなる断熱性を向上させることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−65234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複合サッシにおいて、さらなる断熱性を向上させるためには、アルミ形材部分の見込み寸法を小さくして、樹脂材料からなる部分の見込み寸法を大きくすることが考えられるが、アルミ形材部分は、障子の強度を保つために重要な部分であり、また、ロック装置等の設備を取り付ける必要から、所定の見込み寸法が必要である。
また、近年、建具に対して求められている防火性能を維持するためにアルミ形材の中空部内にスチール等の金属材料からなる補強部材を配置することがあるが、アルミ形材の見込み寸法を小さくすることで、縦框と横框とを接合するタッピングホールとアルミ形材部分の室外側壁との間の壁面に沿って補強部材を配置することが困難となり、補強部材をタッピングホールとを見付け方向で重ねた状態でアルミ形材に固定する必要が生じ、補強部材による十分な防火構造ができなくなることがあった。
【0005】
本発明は、上記の事情を鑑み、複合サッシにおいて、樹脂形材の見込み寸法を大きくすることによって生じる防火性能の低下を防ぎ、框の樹脂形材の見込み寸法を大きくして断熱性のさらなる向上を図ることができる複合サッシを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、建物開口部に固定される枠体と、アルミ形材からなる框材と樹脂材料からなる框材とからなる縦框及び横框を有し、縦框の内周面に横框の端面を突き当てて框組してなる障子を備え、縦框のアルミ形材からなる框材の内周面の見込み寸法が横框のアルミ形材からなる框材の端面の見込み寸法よりも小さく形成されており、横框のアルミ形材からなる框材の中空部内に加熱膨張材を取り付けた補強部材が設けられ、加熱膨張材は火災時に膨張して横框と縦框との接合部において横框のアルミ形材からなる框材の中空部が縦框のアルミ形材からなる框材の室内側に露出して形成される連通孔を塞ぐことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれは、防火性能を低下させることなく、複合サッシにおける樹脂形材部分の見込み方向寸法を大きくすることで、見込み方向に断熱部分を増やすことができるので、断熱性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る勝手口ドアの内観図である。
図2】本発明の実施形態に係る勝手口ドアの縦断面図である。
図3】本発明の実施形態に係る勝手口ドアの横断面図である。
図4】本発明の実施形態に係る勝手口ドアの上框の縦断面図である。
図5】本発明の実施形態に係る勝手口ドアの金属上框と金属右縦框との接続部分のずであり、(a)は当接前の分解であり、(b)は当接した後の斜視図である。
図6】本発明の実施形態に係る勝手口ドアの上方部分の図であり、上框と左、右縦框の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(建具の全体構成)
本発明の建具を、実施形態として建物の勝手口ドアを用いて説明する。
本発明の実施形態に係る勝手口ドアは、図1に示すように、上枠11,下枠12及び左、右縦枠13,14を四周に組んでなり、建物の開口部に設置されてなる枠体1に対して、上框21、下框22及び左、右縦框23,24を四周に組んでなる框枠の内周にパネル等が装着されてなるドア本体(障子)2をヒンジhにより開閉自在に支持して構成されている。
【0010】
枠体1を構成する上枠11は、図2に示すように、建物開口部に固定されるアルミ形材からなる金属上枠111と、金属上枠111の室内側内周を覆う樹脂材料からなる樹脂上枠112とを備えている。
金属上枠111は、建物開口部の室外側から室外側に張り出すように固定される中空の上枠本体部111aと、上枠本体部111aの室内側側面から室内側に延びる上枠室内側部111bを有しており、内周面(下面)には上枠本体部111aと上枠室内側部111bとに亘って上方に凹む凹部111cが形成されている。
【0011】
樹脂上枠112は、金属上枠111の凹部111cに配置される樹脂上枠室外側部112aと、樹脂上枠室外側部112aの室内側から下方(内周)方向に延設される中空構造の上戸当部112bと、上戸当部112bの室内側に設けられる下方に開口する溝状の樹脂上枠固定部112cと、樹脂上枠固定部112cの室内側に設けられ躯体に固定される顎部112dと、樹脂上枠固定部112cの開口を閉塞する上樹脂キャップ112eとを備え、全体として略L字状に形成されている。
そして、金属上枠111の上枠本体部111aの内周面から樹脂上枠112の樹脂上枠室外側部112aの内周面および上戸当部112bの室外側面にかけて、ステンレス等の金属部材からなる断面L字状の補強部材51が固定されている。
さらに、金属上枠111の上枠本体部111aの室外側の内周面(下面)には、加熱により膨張する加熱膨張材f1が配置されているとともに、樹脂上枠112の上戸当部112bの室外側面の下端には、一部が加熱膨張材により形成された気密材s1が室外側に向けて配置されている。
【0012】
枠体1を構成する下枠12は、図2に示すように、建物開口部に固定されるアルミ形材からなる金属下枠121と、金属下枠121の室内側内周を覆う樹脂材料からなる樹脂下枠122とを備えている。
金属下枠121は、建物開口部の室外側の内周から室外側に張り出すように固定される下枠本体部121aと、下枠本体部121aの室内側上端から室内側に延びる下枠立上り部121bを有している。
【0013】
樹脂下枠122は、中空構造の下戸当部122aと、下戸当部122aの室内側から延設される顎部122bとを備え、下戸当部122aが金属下枠121の下枠立上り部121bの上面に取り付けられて、顎部122bが躯体に固定されている。
樹脂下枠122の下戸当部122aの室外側面には、一部が加熱膨張材により形成された気密材s2が室外側に向けて配置されている。
【0014】
枠体1を構成する左、右縦枠13,14は、図3に示すように、建物開口部に固定されるアルミ形材からなる左、右金属縦枠131,141と、左、右金属縦枠131,141の室内側内周を覆う左、右樹脂縦枠を備えている。
左、右金属縦枠131,141は、建物開口部の室外側から室外側に張り出すように固定される中空の左、右縦枠本体部131a,141aと、左、右縦枠本体部131a,141aの室内側に延びる左、右縦枠室内側部131b,141bを有しており、左、右縦枠本体部131a,141aの内周面の室内側端部に外周に凹む段部131c,141cが形成されている。
【0015】
左、右樹脂縦枠は、左、右金属縦枠131,141の左、右縦枠室内側部131b,141bに固定される左、右主樹脂縦枠132,142と、左、右主樹脂縦枠132,142の内周に固定される左、右副樹脂縦枠133,143を有している。左、右主樹脂縦枠132,142は、室外側の左、右主樹脂縦枠中空部132a,142aと、左、右主樹脂縦枠中空部132a,142aの室内側に連設され内周方向に開口する左、右主樹脂縦枠溝部132b,142bと、左、右主樹脂縦枠中空部132a,142aの内周側面から内周側に突設される左、右戸当部132c,142cを有している。
左、右副樹脂縦枠133,143は、室内側の左、右副樹脂縦枠中空部133a,143aと、左、右副樹脂縦枠中空部133a,143aの室外側に連設される左、右副樹脂縦枠室外側部133b、143bと、左、右副樹脂縦枠中空部133a,143aの室内側に延び躯体に固定される顎部133c、143cを有している。そして、左、右主樹脂縦枠132,142に左、右副樹脂縦枠133,143を固定することで、両者間に、さらに2つの中空部が形成され、全体として、左、右金属縦枠131,141の左、右縦枠室内側部131b,141bから内周に突出する戸当たりが形成される。
【0016】
そして、左、右金属縦枠131,141の左、右縦枠本体部131a,141aの室内側内周面から左、右主樹脂縦枠132,142の左、右主樹脂縦枠中空部132a,142aの内周面および左、右戸当部132c,142cの室内側面にかけてステンレス等の金属部材からなる断面L字状の補強部材53,54が固定されている。
左、右樹脂縦枠の左、右戸当部132c,142cの室外側面内周端には、一部が加熱膨張材により形成された気密材s3,s4が室外側に向けて配置されている。
【0017】
ドア本体2を構成する上框(横框)21は、図2に示すように、室外側を構成するアルミ形材からなる金属上框(框材)211と、金属上框211の室内側に配置される樹脂材料からなる樹脂上框(框材)212を備えている。
金属上框211は、中空部からなる上框本体部211aと、上框本体部211aの室外側上端から上方に延設される上框上壁部211bと、上框本体部211aの室外側下端から下方に延設される上框間口外壁部211cを有しており、上框本体部211aの中空部内には、金属材料からなる補強部材61が配置されている。
【0018】
補強部材61は、上框本体部211aの中空部の室外側面に沿って配置される室外側壁部61aと、室外側壁部61aの上下端から室内側に向かって屈曲されて延設される上壁部61bおよび底壁部61cとからなる断面略U字状の長尺部材からなり、上框本体部211aの長さ方向略全長に亘って配置されている。
補強部材61の上下方向の見付け寸法は、上框本体部211aの中空部内に設けられている上下タッピングホール間の寸法と略同等となっており、室外側壁部61aを上框本体部211aの中空部の室外側面に対向させた状態で、上下タッピングホールと上壁部61bおよび底壁部61cが見付け方向に重なるように配置され、上壁部61bおよび底壁部61cがそれぞれ上框本体部211aの中空部の上面および底面にネジ等の固定手段によって固定されている。
【0019】
樹脂上框212は、中空部を上下方向に並べて形成され上框本体部211aの室内側面を覆う樹脂上框本体部212aと、樹脂上框本体部212aの室内側下端から下方に延設され、上框間口外壁部211cとともに上パネル間口21aを構成する上框間口内壁部212cを有している。
そして、樹脂上框本体部212aには、室外側から上框本体部211aに向かって複数の条片212dが設けられており、上框本体部211aの室内側に当接することで上框本体部211aと樹脂上框本体部212aとの間に複数の中空部が形成されている。
また、金属上框211の上面と樹脂上框212の上面にかけてステンレス等の金属部材からなる補強部材56が固定されている。
【0020】
ドア本体2を構成する下框(横框)22は、図2に示すように、上框21と略同様に形成されており、室外側を構成するアルミ形材からなる金属下框(框材)221と、金属下框221の室内側に配置される樹脂材料からなる樹脂下框(框材)222を備えている。
金属下框221は、中空部からなる下框本体部221aと、下框本体部221aの室外側下端から下方に延設される下框下壁部221bと、下框本体部221aの室外側上端から上方に延設される下框間口外壁部221cを有しており、下框本体部221aの中空部内には、金属材料からなる補強部材62が配置されている。
【0021】
補強部材62は、下框本体部221aの室外側面に沿って配置される室外側壁部62aと、室外側壁部62aの上下端から室内側に向かって屈曲されて延設される上壁部62bおよび底壁部62cとからなる断面略U字状の長尺部材からなり、下框本体部221aの長さ方向略全長に亘って配置されている。
補強部材62の上下方向の見付け寸法は、下框本体部221aの中空部内に設けられている上下タッピングホール間の寸法と略同等となっており、室外側壁部62aを下框本体部221aの中空部の室外側面に対向させた状態で、上下タッピングホールと上壁部62bおよび底壁部62cが見付け方向に重なるように配置され、上壁部62bおよび底壁部62cがそれぞれ下框本体部221aの中空部の上面および底面にネジ等の固定手段によって固定されている。
【0022】
樹脂下框222は、中空部を上下方向に並べて形成され下框本体部221aの室内側面を覆う樹脂下框本体部222aと、樹脂下框本体部222aの室内側上端から上方に延設され下框間口外壁部221cともに下パネル間口22aを構成する下框間口内壁部222cを有している。
そして、樹脂下框本体部222aには、室外側から下框本体部221aに向かって複数の条片222dが設けられており、下框本体部221aの室内側に当接することで下框本体部221aと樹脂下框本体部222aとの間に複数の中空が形成されている。
また、金属下框221の下面と樹脂下框222の下面にかけてステンレス等の金属部材からなる補強部材57が固定されている。
【0023】
ドア本体2を構成する左縦框(縦框)23は、図3に示すように、室外側を構成するアルミ形材からなる金属左縦框(框材)231と、金属左縦框231の室内側に配置される樹脂材料からなる樹脂左縦框(框材)232を備えている。
金属左縦框231は、中空部からなる左縦框本体部231aと、左縦框本体部231aの室外側内周端から内周方向に延設される左縦框間口外壁部231bを有しており、
左縦框本体部231aの中空部内には、金属材料からなる補強部材63が配置されている。
【0024】
左縦框本体部231aは、外周側見込み面にヒンジhの一方側ヒンジ板h1が固定されている。外周側見込み面に連続する室内側面と内周側見込み面に連続する室内側面は段部231dにより連結され、見込み寸法の大きな外周側中空部分と見込み寸法の小さな内周側中空部分とが形成されており、内周側見込み面の見込み寸法が外周側見込み面の見込み寸法に比べて小さく形成されている。
【0025】
補強部材63は、左縦框本体部231aの室外側面に沿って配置される室外側壁部63aと、室外側壁部63aの左右端から室内側に向かって屈曲されて延設される外周壁部63bおよび内周壁部63cとからなる断面略U字状の長尺部材からなり、左縦框本体部231aの長さ方向略全長に亘って配置されている。
補強部材63の左右方向の見付け寸法は、左縦框本体部231aの中空部において見込み寸法の小さな内周側中空部分の左右方向見付け寸法と略同等となっており、室外側壁部63aおよび内周壁部63cを左縦框本体部231aの中空部の室外側面及び内周側面に対向させた状態で、内周壁部63cが左縦框本体部231aの中空部の内周面にネジ等の固定手段により固定されている。
【0026】
樹脂左縦框232は、中空部を左右方向に並べて形成され左縦框本体部231aの室内側面を覆う樹脂左縦框本体部232aと、樹脂左縦框本体部232aの室内側内周端から内周方向に延設され左縦框間口外壁部231bとともに左パネル間口23aを構成する左縦框間口内壁部232cを有している。
樹脂左縦框本体部232aの室外側には、左縦框本体部231aに向かって複数の条片232dが突設され、内周端部には左縦框本体部231aの内周側端に向かって中空部232eが設けられており、それぞれ左縦框本体部231aの室内側に当接することで左縦框本体部231aと樹脂左縦框本体部232aとの間に複数の中空部が形成されている。
また、金属左縦框231の外周面と樹脂左縦框232の外周面にかけてステンレス等の金属部材からなる補強部材58が固定されている。
【0027】
ドア本体2を構成する右縦框(縦框)24は、図3に示すように、室外側を構成するアルミ形材からなる金属右縦框(框材)241と、金属右縦框241の室内側に配置される樹脂材料からなる樹脂右縦框(框材)242を備えている。
金属右縦框241は、中空の右縦框本体部241aと、右縦框本体部241aの室外側外周端から室外側に延びその後外周側に屈曲して延設される右縦框煙返し部241bと、右縦框本体部241aの室外側内周端から内周方向に延設される右縦框間口外壁部241cを有しており、右縦框本体部241aの中空部内には、金属材料からなる補強部材64が配置されている。
【0028】
右縦框本体部241aは、外周側見込み面にロック装置等の金具が固定されている。外周側見込み面に連続する室内側面と内周側見込み面に連続する室内側面は段部241dにより連結され、見込み寸法の大きな外周側中空部分と見込み寸法の小さな内周側中空部分とが形成されており、内周側見込み面の見込み寸法が外周側見込み面の見込み寸法に比べて小さく形成されている。
【0029】
補強部材64は、右縦框本体部241aの室外側面に沿って配置される室外側壁部64aと、室外側壁部64aの左右端から室内側に向かって屈曲されて延設される外周壁部64bおよび内周壁部64cとからなる断面略U字状の長尺部材からなり、左縦框本体部231aの長さ方向略全長に亘って配置されている。
補強部材64の左右方向の見付け寸法は、右縦框本体部241aの中空部の見付け寸法と略同等となっており、室外側壁部64aおよび内周壁部64cを右縦框本体部241aの中空部の室外側面及び内周側面に対向させた状態で、内周壁部64cが左縦框本体部231aの中空部の内周面にネジ等の固定手段により固定されている。
【0030】
樹脂右縦框242は、中空部を左右方向に並べて形成され右縦框本体部241aの室内側面を覆う樹脂右縦框本体部242aと、樹脂右縦框本体部242aの室内側内周端から内周方向に延設され右縦框間口外壁部241cとともに右パネル間口24aを構成する右縦框間口内壁部242cを有している。
樹脂右縦框本体部242aの室外側には、右縦框本体部241aに向かって複数の条片242dが突設され、内周端部には右縦框本体部241aの内周側端に向かって中空部242eが設けられており、それぞれ右縦框本体部241aの室内側に当接することで右縦框本体部241aと樹脂右縦框本体部242aとの間に複数の中空部が形成されている。
【0031】
そして、上框21及び下框22に形成される上、下パネル間口21a,22aと、左、右縦框23,24に形成される左、右パネル間口23a,24aに対してガラス等のパネル体がグレイジングチャンネルを介して装着されることにより、ドア本体2が形成されている。
【0032】
(障子の断熱・防火構造)
本実施形態の勝手口ドアは、ドア本体2を構成する各框材を、アルミ形材からなる金属框材の室内側に樹脂材料からなる樹脂框材を配置してなる複合框で形成することにより、断熱性を有する障子として形成されているが、金属框材の見込み寸法を効率的にできるだけ小さくすることにより、断熱性をさらに向上させているとともに、見込み寸法を小さくすることによる防火性能の低下をおさえることができる構成を備えている。
以下に、説明する。
【0033】
ドア本体2の断熱性能を向上させるためには、アルミ形材からなる框材の見込み寸法をできるだけ小さくすることが有効である。そのため、上框21および下框22については、強度が許す限り、金属上框211、金属下框221の上框本体部211a、下框本体部221aの見込み寸法を小さくし、見込み寸法全体のほぼ半分程度に形成することで断熱性の向上をはかることができる。
一方、左、右縦框23,24については、ヒンジhやロック装置等の部材を強固に固定するために金属左縦框231、金属右縦框241の外周側見込み面の見込み寸法は所定寸法以下に形成することができないが、外周側見込み面の見込み寸法を大きく形成することで強度を確保することができ、その分、左縦框本体部231a、右縦框本体部241aの室内側面に段部を形成するなどして内周側見込み面を小さく形成することができる。
【0034】
しかし、上框21および下框22などの横框と左、右縦框23,24について、それぞれをできるだけ見込み寸法を小さく形成することによって、断熱性を向上させることはできるが、防火性の点からみると好ましくないことがある。
具体的に、上框部分を用いて説明すると、図4に示すように、断熱性を向上させるために、金属上框211の上框本体部211aの見込み寸法を上框21の見込み寸法全体のほぼ半分程度まで小さく形成すると、上框本体部211aの中空部内に配置される略U字状の補強部材61は、上壁部61b、底壁部61cが左、右縦框本体部231a,241aと上框本体部211a、下框本体部221aとを連結するためのタッピングホール211d,211eと上框本体部211aの中空部の室外側面との間に収まらず、タッピングホール211d,211eに重ねて配置されることとなる。
そのため、補強部材61の室外側壁部61aが上框本体部211aの見付け面全体を補強することができず、火災時に上框本体部211aの室外側面が溶解した場合に、補強部材61の上壁部61bの上方および底壁部61cの下方に連通孔a1,a2が生じてしまい、上框本体部211a内への煙や炎の侵入を防ぐことができない。
【0035】
また、図5(a)に示すように、金属右縦框241の右縦框本体部241aの室内側面に段部241dを形成して内周側見込み面の見込み寸法をできるだけ小さく形成することにより、金属上框(框材)211の上框本体部211aの中空部の見込み寸法よりも小さく形成され、図4(b)に示すように、上框(横框)21と右縦框(縦框)24との接合部において、右縦框24の内周面に対して上框(横框)21の端部を突き合わせて連結した際に上框本体部211aの中空部が右縦框本体部241aの室内側に露出して室内側に連通する連通孔a3が形成されてしまう。そのため、上框本体部211a内へ侵入した煙や炎がさらに室内に侵入する可能性があった。
【0036】
そこで、本実施形態の勝手口ドアにおいては、上記煙や炎の室内への侵入を防ぐために、図4図6に示すように、上框本体部211aの中空部内に配置される補強部材61の左右両端部の室外側壁部61aの室内側および上壁部61bの下面、底壁部61cの上面に加熱により膨張する加熱膨張材7が設けられている。
したがって、火災時には、火炎や熱によって横框の室外側面が熔解して横框の中空部内に火炎や煙が侵入しても、補強部材61の左右両端部に配置した加熱膨張材7が膨張して上框(横框)21と左、右縦框23,24との連結部に形成される連通孔a3を加熱膨張材により塞ぐので、横框内に侵入した炎や煙がさらに障子の室内側に侵入することを防ぐことができる。
【0037】
以上のように、本実施形態の勝手口ドアにおいては、縦框の内周側見込み面の見込み寸法を、外周側見込み面の見込み寸法より小さく形成して、横框の内周側見込み面の見込み寸法よりも小さく形成するとともに、横框の中空部内に配置される補強部材の端部に加熱により膨張する加熱膨張材を設けているので、さらなる断熱性能の向上をはかりながら、火災時には、膨張した加熱膨張材により横框と縦框との当接部における連通孔を防ぐことで、横框と縦框の当接部の見込み寸法の違いによる防火性能の低下を抑止することができる。
そのため、横框と縦框の当接部において、両者を面一に連結する等の見込み寸法上の制約がなく、横框と縦框の見込み寸法をそれぞれ独立して設計することができ、さらなる断熱性の向上をはかることができる。
【0038】
なお、横框の中空部内に配置される補強部材の形状は、断面略U字状に限るものではなく、補強部材の室外側壁や内周壁部等の壁部は、横框の中空部の室外側面や内周側面等の内面に当接していてもよいし、一部もしくは全部が離間した状態で配置されていてもよい。
また、加熱膨張材が配置される部位も補強部材の端部であれば、何ら限定されるものではない。
【符号の説明】
【0039】
1 :枠体
11 :上枠
111 :金属上枠
111a :上枠本体部
111b :上枠室内側部
111c :凹部
112 :樹脂上枠
112a :樹脂上枠室外側部
112b :上戸当部
112c :樹脂上枠固定部
112d :顎部
112e :上樹脂キャップ
12 :下枠
121 :金属下枠
121a :下枠本体部
121b :部
122 :樹脂下枠
122a :下戸当部
122b :顎部
13 :右縦枠
131 :右金属縦枠
131a :右縦枠本体部
131b :右縦枠室内側部
131c :段部
132 :右主樹脂縦枠
132a :右主樹脂縦枠中空部
132b :右主樹脂縦枠溝部
132c :右戸当部
133 :右副樹脂縦枠
133a :右副樹脂縦枠中空部
133b :右副樹脂縦枠室外側部
14 :右縦枠
141 :右金属縦枠
141a :右縦枠本体部
141b :右縦枠室内側部
141c :段部
142 :右主樹脂縦枠
142a :右主樹脂縦枠中空部
142b :右主樹脂縦枠溝部
142c :右戸当部
143 :右副樹脂縦枠
143a :右副樹脂縦枠中空部
143b :右副樹脂縦枠室外側部
2 :ドア本体
7 :加熱膨張材
21 :上框
21a :上パネル間口
211 :金属上框
211a :上框本体部
211b :上框上壁部
211c :上框間口外壁部
211d :タッピングホール
211e :タッピングホール
212 :樹脂上框
212a :樹脂上框本体部
212c :上框間口内壁部
212d :条片
22 :下框
22a :下パネル間口
221 :金属下框
221a :下框本体部
221b :下框下壁部
221c :下框間口外壁部
222 :樹脂下框
222a :樹脂下框本体部
222b :下框間口内壁部
23 :右縦框
23a :左パネル間口
231 :金属左縦框
231a :左縦框本体部
231b :左縦框間口外壁部
231d :段部
232 :樹脂左縦框
232a :樹脂左縦框本体部
232c :左縦框間口内壁部
232d :条片
232e :中空部
24 :右縦框
24a :右パネル間口
241 :金属右縦框
241a :右縦框本体部
241b :右縦框煙返し部
241c :右縦框間口外壁部
241d :段部
242 :樹脂右縦框
242a :樹脂右縦框本体部
242c :右縦框間口内壁部
242d :条片
51 :補強部材
53 :補強部材
54 :補強部材
56 :補強部材
57 :補強部材
58 :補強部材
61 :補強部材
61a :室外側壁部
61b :上壁部
61c :底壁部
62 :補強部材
62a :室外側壁部
62b :上壁部
62c :底壁部
63 :補強部材
63a :室外側壁部
63b :外周壁部
63c :内周壁部
64 :補強部材
64a :室外側壁部
64b :内周壁部
64c :外周壁部

図1
図2
図3
図4
図5
図6