(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
金属から成る第1パターンが形成された第1表面と、前記第1表面の反対側にあり、かつ、金属から成る第2パターンが形成された第1裏面、および前記第1表面と前記第1裏面の間に位置する複数の側面を有する基板と、
前記第1パターンの第2表面上に搭載された複数の半導体チップと、
前記基板の前記第1表面に、接着材を介して固定されたケースと、
前記基板の前記第1表面と、前記複数の半導体チップを封止する封止材と、を備え、
前記基板の前記第2パターンは、前記基板の前記第1裏面と同じ側を向く第2裏面を有し、
前記基板の前記第1裏面側から視た平面視において、前記ケースは、第1方向に延びる第1長辺と、前記第1方向に延び、かつ、前記第1長辺の反対側に位置する第2長辺と、前記第1方向に延び、かつ、前記第1長辺と前記第2長辺の間に位置する第3長辺と、前記第1方向に延び、かつ、前記第3長辺と前記第2長辺の間に位置する第4長辺と、前記第1方向と交差する第2方向に沿って延びる第1短辺と、前記第2方向に延び、かつ、前記第1短辺の反対側に位置する第2短辺と、前記第2方向に延び、かつ、前記第1短辺と前記第2短辺の間に位置する第3短辺と、前記第2方向に延び、かつ、前記第3短辺と前記第2短辺の間に位置する第4短辺と、を有し、
前記基板は、前記第1方向に延び、かつ、前記第1長辺と前記第3長辺の間に位置する第5長辺と、前記第5長辺に沿って延び、かつ、前記第2長辺と前記第4長辺の間に位置する第6長辺と、前記第2方向に沿って延び、かつ、前記第1短辺と前記第3短辺の間に位置する第5短辺と、前記第5短辺に沿って延び、かつ、前記第2短辺と前記第4短辺の間に位置する第6短辺と、を有し、
前記ケースは、平面視において前記第1短辺と前記基板の前記第5短辺の間に位置する第1面と、前記基板の前記第1表面および前記第1裏面のうち一方から他方に向かう方向である第3方向において前記第1面の反対側にある第2面と、平面視において前記第2短辺と前記基板の前記第6短辺の間に位置する第3面と、前記第3方向において前記第3面の反対側にある第4面と、平面視において前記第3長辺と前記第5長辺の間に位置し、かつ、前記第3方向において前記基板の前記第1表面と前記接着材を介して対向する第5面と、平面視において前記第3短辺と前記第5短辺の間に位置し、かつ、前記第3方向において前記接着材を介して前記基板の前記第1表面と対向する第6面と、前記第6面と前記第1面に交差し、前記第6面と前記第1面に連なる第1側面を有し、
前記第1方向において、前記第1短辺と前記第3短辺の間には、前記第1面または前記第2面のうち一方から他方に達する第1孔が形成され、
前記第1方向において、前記第2短辺と前記第4短辺の間には、前記第3面または前記第4面のうち一方から他方に達する第2孔が形成され、
前記第1方向において、前記ケースの前記第1側面と前記基板の複数の面のうちの第2側面は、互いに対向し、
前記基板の前記第1表面から前記ケースの前記第6面までの高さは、前記基板の前記第1表面から前記ケースの前記第5面までの高さより大きい、電子装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本願における記載形式・基本的用語・用法の説明)
本願において、実施の態様の記載は、必要に応じて、便宜上複数のセクション等に分けて記載するが、特にそうでない旨明示した場合を除き、これらは相互に独立別個のものではなく、記載の前後を問わず、単一の例の各部分、一方が他方の一部詳細または一部または全部の変形例等である。また、原則として、同様の部分は繰り返しの説明を省略する。また、実施の態様における各構成要素は、特にそうでない旨明示した場合、理論的にその数に限定される場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、必須のものではない。
【0012】
同様に実施の態様等の記載において、材料、組成等について、「AからなるX」等といっても、特にそうでない旨明示した場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、A以外の要素を含むものを排除するものではない。たとえば、成分についていえば、「Aを主要な成分として含むX」等の意味である。たとえば、「シリコン部材」等といっても、純粋なシリコンに限定されるものではなく、SiGe(シリコン・ゲルマニウム)合金やその他シリコンを主要な成分とする多元合金、その他の添加物等を含む部材も含むものであることはいうまでもない。また、金めっき、Cu層、ニッケル・めっき等といっても、そうでない旨、特に明示した場合を除き、純粋なものだけでなく、それぞれ金、Cu、ニッケル等を主要な成分とする部材を含むものとする。
【0013】
さらに、特定の数値、数量に言及したときも、特にそうでない旨明示した場合、理論的にその数に限定される場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、その特定の数値を超える数値であってもよいし、その特定の数値未満の数値でもよい。
【0014】
また、実施の形態の各図中において、同一または同様の部分は同一または類似の記号または参照番号で示し、説明は原則として繰り返さない。
【0015】
また、添付図面においては、却って、煩雑になる場合または空隙との区別が明確である場合には、断面であってもハッチング等を省略する場合がある。これに関連して、説明等から明らかである場合等には、平面的に閉じた孔であっても、背景の輪郭線を省略する場合がある。更に、断面でなくとも、空隙でないことを明示するため、あるいは領域の境界を明示するために、ハッチングやドットパターンを付すことがある。
【0016】
本実施の形態では、複数の半導体装置が基板に搭載された電子装置の例として、インバータ回路(電力変換回路)を備える半導体モジュールである、電力変換装置を取り上げて説明する。
【0017】
インバータ回路とは、直流電力を交流電力に変換する回路である。例えば、直流電源のプラスとマイナスを交互に出力すれば、これに応じて電流の向きが逆転する。この場合、電流の向きが交互に逆転するので、出力は交流電力と考えることができる。これがインバータ回路の原理である。ここで、交流電力といっても、単相交流電力や3相交流電力に代表されるように様々な形態がある。本実施の形態では、直流電力を3相の交流電力に変換する3相インバータ回路を例に挙げて説明することにする。ただし、本実施の形態における技術的思想は、3相インバータ回路に適用する場合に限らず、例えば、単相インバータ回路などにも幅広く適用することができる。
【0018】
<3相インバータ回路の構成>
図1は、直流電源と3相誘導モータの間に3相のインバータ回路を配置した回路図である。
図1に示すように、直流電源Eから3相交流電力に変換するためには、スイッチSW1〜SW6の6個のスイッチで構成された3相のインバータ回路INVを使用する。具体的に、
図1に示すように、3相のインバータ回路INVは、スイッチSW1とスイッチSW2を直列接続したレグLG1と、スイッチSW3とスイッチSW4を直列接続したレグLG2と、スイッチSW5とスイッチSW6を直列接続したレグLG3とを有し、レグLG1〜レグLG3は並列に接続されている。このとき、スイッチSW1、スイッチSW3、スイッチSW5は、上アームを構成し、スイッチSW2、スイッチSW4、スイッチSW6は、下アームを構成する。
【0019】
また、スイッチSW1とスイッチSW2の間の点Uと、3相誘導モータMTのU相と、は互いに接続されている。同様に、スイッチSW3とスイッチSW4の間の点Vと、3相誘導モータMTのV相と、は互いに接続され、スイッチSW5とスイッチSW6の間の点Wと、3相誘導モータMTのW相と、は互いに接続されている。このようにして、3相のインバータ回路INVが構成されている。
【0020】
<回路動作>
次に、上述した構成を有する3相のインバータ回路INVの動作について説明する。
図2は、3相のインバータ回路の動作を説明するタイミングチャートである。
図2に示すように、3相のインバータ回路INVにおいて、スイッチSW1およびスイッチSW2から成るレグLG1(
図1参照)は以下のように動作する。例えば、スイッチSW1がオンしているとき、スイッチSW2はオフしている。一方、スイッチSW1がオフしているとき、スイッチSW2はオンする。また、スイッチSW3およびスイッチSW4から成るレグLG2(
図1参照)、およびスイッチSW5およびスイッチSW6から成るレグLG3(
図1参照)のそれぞれも、レグLG1と同様に動作する。すなわち、スイッチSW3がオンしているとき、スイッチSW4はオフしている。一方、スイッチSW3がオフしているとき、スイッチSW4はオンする。また、スイッチSW5がオンしているとき、スイッチSW6はオフしている。一方、スイッチSW5がオフしているとき、スイッチSW6はオンする。
【0021】
そして、
図2に示すように、3組のスイッチペア(すなわち、
図1に示すレグLG1、LG2、およびLG3)のスイッチング動作は、互いに120度の位相差を有するように行なわれる。このとき、点U、点V、点Wのそれぞれの電位は、3組のスイッチペアのスイッチング動作に応じて、E2(例えば0[V]の接地電位)とE1とに変化する。また、例えば、U相とV相との間の線間電圧は、U相の電位からV相の電位を引いたものであるから、+E1、E2(0)、−E1と変化する電圧波形を描く。V相とW相との間の線間電圧は、U相とV相との間の線間電圧に対して位相が120度ずれた電圧波形となり、さらに、W相とU相との間の線間電圧は、V相とW相との間の線間電圧に対して位相が120度ずれた電圧波形となる。このようにスイッチSW1〜スイッチSW6をスイッチング動作させることにより、それぞれの線間電圧は、階段状の交流電圧波形となり、かつ、互いの線間電圧の交流電圧波形が120度の位相差を有するようになる。したがって、3相のインバータ回路INVによれば、直流電源Eから供給される直流電力を3相交流電力に変換することができることになる。
【0022】
<回路構成例>
本実施の形態における電子装置EA1(
図3参照)は、例えば、自動車や空気調節装置(エアコン:air conditioner)、あるいは産業機器などに使用される3相誘導モータの駆動回路に使用されるものである。この駆動回路には、インバータ回路が含まれ、このインバータ回路は直流電力を交流電力に変換する機能を有する回路である。
図3は、本実施の形態におけるインバータ回路および3相誘導モータを含むモータ回路の構成を示す回路図である。
【0023】
図3において、モータ回路は、3相誘導モータMTおよびインバータ回路INVを有している。3相誘導モータMTは、位相の異なる3相の電圧により駆動するように構成されている。3相誘導モータMTでは、互いに120度ずれた位相を持つU相、V相、W相と呼ばれる3相交流を利用して、導体であるロータRTの回りに回転磁界を発生させる。この場合、ロータRTの回りを磁界が回転することになる。このことは、導体であるロータRTを横切る磁束が変化することを意味する。この結果、導体であるロータRTに電磁誘導が生じて、ロータRTに誘導電流が流れる。回転磁界中で誘導電流が流れるということは、フレミングの左手の法則によって、ロータRTに力が加わることを意味し、この力によって、ロータRTが回転することになる。このように3相誘導モータMTでは、3相交流を利用することにより、ロータRTを回転させることができる。したがって、3相誘導モータMTでは、3相交流が必要となる。そこで、モータ回路では、直流から交流を作り出すインバータ回路INVを利用することにより、3相誘導モータに3相交流を供給している。
【0024】
以下に、このインバータ回路INVの実際の構成例について説明する。
図3に示すように、例えば、本実施の形態におけるインバータ回路INVには、3相に対応してトランジスタQ1とダイオードFWDが設けられている。すなわち、実際のインバータ回路INVでは、例えば、
図1に示すスイッチSW1〜スイッチSW6のそれぞれは、
図3に示すようなトランジスタQ1とダイオードFWDを逆並列接続した構成要素から構成される。すなわち、
図3において、レグLG1の上アームおよび下アーム、レグLG2の上アームおよび下アーム、レグLG3の上アームおよび下アームのそれぞれは、トランジスタQ1とダイオードFWDを逆並列接続した構成要素から構成されることになる。
【0025】
図3に示すトランジスタQ1は、電力変換回路など、大電流が流れる回路に組み込まれる、パワートランジスタ(電力回路用トランジスタ)であって、本実施の形態の例では例えば、IGBTである。変形例として、インバータ回路INVのスイッチング素子として、パワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)を使用しても良い。このパワーMOSFETによれば、オン/オフ動作をゲート電極に印加する電圧で制御する電圧駆動型であるため、高速スイッチングが可能な利点がある。一方、パワーMOSFETでは、高耐圧化を図るに伴ってオン抵抗が高くなり発熱量が大きくなる性質がある。なぜなら、パワーMOSFETでは、低濃度のエピタキシャル層(ドリフト層)の厚さを厚くすることにより耐圧を確保しているが、低濃度のエピタキシャル層の厚さが厚くなると副作用として抵抗が大きくなるからである。
【0026】
また、スイッチング素子として、大きな電力を取り扱うことができるバイポーラトランジスタも存在するが、バイポーラトランジスタは、ベース電流によりオン/オフ動作を制御する電流駆動型であるため、スイッチング速度が前述のパワーMOSFETに比べて一般的に遅いという性質がある。
【0027】
したがって、大電力で、かつ、高速スイッチングが必要とされる用途においては、スイッチング素子としてIGBTを用いることが好ましい。このIGBTは、パワーMOSFETとバイポーラトランジスタの組み合わせから構成されており、パワーMOSFETの高速スイッチング特性と、バイポーラトランジスタの高耐圧性を兼ね備えた半導体素子である。すなわち、IGBTによれば、大電力で、かつ、高速スイッチングが可能であるため、大電流で、かつ、高速スイッチングが必要とされる用途に適している半導体素子ということになる。以上より、本実施の形態におけるインバータ回路INVには、スイッチング素子を構成するトランジスタQ1として、IGBTを採用している。
【0028】
また、本実施の形態におけるインバータ回路INVでは、相対的に高い電位が供給されるハイサイド端子(正電位端子)HTと3相誘導モータMTの各相(U相、V相、W相)との間にトランジスタQ1とダイオードFWDが逆並列に接続されている。また、3相誘導モータMTの各相と相対的に低い電位が供給されるロウサイド端子(負電位端子)LTとの間にもトランジスタQ1とダイオードFWDが逆並列に接続されている。すなわち、単相ごとに2つのトランジスタQ1と2つのダイオードFWDが設けられており、3相で6つのトランジスタQ1と6つのダイオードFWDが設けられている。そして、個々のトランジスタQ1のゲート電極には、ゲート制御回路GCが接続されており、このゲート制御回路GCによって、トランジスタQ1のスイッチング動作が制御されるようになっている。このように構成されたインバータ回路INVにおいて、ゲート制御回路GCでトランジスタQ1のスイッチング動作を制御することにより、直流電力を3相交流電力に変換して、この3相交流電力を3相誘導モータMTに供給するようになっている。
【0029】
本実施の形態におけるインバータ回路INVには、スイッチング素子として、トランジスタQ1が使用されているが、このトランジスタQ1と逆並列接続するようにダイオードFWDが設けられている。単に、スイッチング素子によってスイッチ機能を実現する観点から、スイッチング素子としてのトランジスタQ1は必要であるが、ダイオードFWDを設ける必要性はないものと考えられる。この点に関し、インバータ回路INVに接続される負荷にインダクタンスが含まれている場合には、ダイオードFWDを設ける必要がある。
【0030】
ダイオードFWDは、負荷がインダクタンスを含まない純抵抗である場合、還流するエネルギーがないため不要である。しかし、負荷にモータのようなインダクタンスを含む回路が接続されている場合、オンしているスイッチとは逆方向に負荷電流が流れるモードがある。すなわち、負荷にインダクタンスが含まれている場合、負荷のインダクタンスからインバータ回路INVへエネルギーが戻ることがある(電流が逆流することがある)。
【0031】
このとき、IGBTであるトランジスタQ1単体では、この還流電流を流し得る機能をもたないので、トランジスタQ1と逆並列にダイオードFWDを接続する必要がある。すなわち、インバータ回路INVにおいて、モータ制御のように負荷にインダクタンスを含む場合、トランジスタQ1をターンオフしたとき、インダクタンスに蓄えられたエネルギー(1/2LI
2)を必ず放出しなければならない。ところが、トランジスタQ1単体では、インダクタンスに蓄えられたエネルギーを開放するための還流電流を流すことができない。そこで、このインダクタンスに蓄えられた電気エネルギーを還流するため、トランジスタQ1と逆並列にダイオードFWDを接続する。つまり、ダイオードFWDは、インダクタンスに蓄えられた電気エネルギーを開放するために還流電流を流すという機能を有している。以上のことから、インダクタンスを含む負荷に接続されるインバータ回路においては、スイッチング素子であるトランジスタQ1と逆並列にダイオードFWDを設ける必要性がある。このダイオードFWDは、フリーホイールダイオードと呼ばれる。
【0032】
また、本実施の形態におけるインバータ回路INVの場合、例えば、
図3に示すように、ハイサイド端子HTとロウサイド端子LTとの間に、容量素子CAPが接続されている。この容量素子CAPは、例えば、インバータ回路INVでのスイッチングノイズの平滑化や、システム電圧の安定化を図る機能を有している。
図3に示す例では、容量素子CAPは、インバータ回路INVの外部に設けられているが、容量素子CAPはインバータ回路INVの内部に設けられていても良い。
【0033】
<半導体チップの構造>
次に、
図3に示すインバータ回路INVを構成するトランジスタQ1とダイオードFWDを備えた半導体チップの構造について図面を参照しながら説明する。
図4は、
図3に示すトランジスタが形成された半導体チップの表面側の形状を示す平面図である。
図5は、
図4に示す半導体チップの裏面を示す平面図である。
図6は、
図4および
図5に示す半導体チップが有するトランジスタの構造例を示す断面図である。
【0034】
図3に示す電子装置EA1の場合、インバータ回路INVを構成するトランジスタQ1とダイオードFWDとは、互いに独立した半導体チップに形成されている。以下では、トランジスタQ1が形成された半導体チップについて説明した後、ダイオードFWDが形成された半導体チップについて説明する。
【0035】
図4および
図5に示すように、本実施の形態における半導体チップSC1は、表面(面、上面、主面)SCt(
図4参照)、および表面SCtの反対側の裏面(面、下面、主面)SCb(
図5参照)を有している。半導体チップSC1の表面SCtおよび裏面SCbは、それぞれ四角形である。表面SCtの面積と裏面SCbの面積とは、例えば等しい。
【0036】
また、
図4に示すように、半導体チップSC1は、表面SCtに形成されたゲート電極(ゲート電極パッド、表面電極)GPおよびエミッタ電極(エミッタ電極パッド、表面電極)EPを有している。
図4に示す例では、表面SCtには、一つのゲート電極GPと、複数の(
図4では4個の)エミッタ電極EPとが露出している。複数のエミッタ電極EPのそれぞれの露出面積は、ゲート電極GPの露出面積より大きい。詳細は後述するが、エミッタ電極EPは、インバータ回路INV(
図3参照)の出力端子、またはロウサイド端子LT(
図3参照)に接続される。このため、エミッタ電極EPの露出面積を大きくすることで、大電流が流れる伝送経路のインピーダンスを低減できる。また、複数のエミッタ電極EPは、互いに電気的に接続されている。また、
図4に対する変形例として、複数のエミッタ電極EPに代えて、一つの大面積のエミッタ電極EPが設けられていても良い。また、一つの大面積のエミッタ電極EPが設けられている場合において、エミッタ電極EPを覆う絶縁膜の複数箇所に開口部が設けられ、複数の開口部において、エミッタ電極EPの複数の部分が露出していても良い。
【0037】
また、
図5に示すように、半導体チップSC1は、裏面SCbに形成されたコレクタ電極(コレクタ電極パッド、裏面電極)CPを有している。半導体チップSC1の裏面SCb全体にわたって、コレクタ電極CPが形成されている。
図4と
図5を比較して判るように、コレクタ電極CPの露出面積は、エミッタ電極EPの露出面積よりもさらに大きい。詳細は後述するが、コレクタ電極CPは、インバータ回路INV(
図3参照)の出力端子、またはハイサイド端子HT(
図3参照)に接続される。このため、コレクタ電極CPの露出面積を大きくすることで、大電流が流れる伝送経路のインピーダンスを低減できる。
【0038】
なお、
図4および
図5では、半導体チップSC1の基本構成について説明したが、種々の変形例を適用可能である。例えば、
図4に示す電極に加え、温度検出用の電極、電圧検知用の電極、あるいは電流検知用の電極など、半導体チップSC1の動作状態の監視用、あるいは半導体チップSC1の検査用の電極などが設けられていても良い。これらの電極を設ける場合、ゲート電極GPと同様に、半導体チップSC1の表面SCtにおいて露出する。また、これらの電極は信号伝送用の電極に相当し、各電極の露出面積は、エミッタ電極EPの露出面積より小さい。
【0039】
また、半導体チップSC1が備えるトランジスタQ1は、例えば、
図6に示すような構造を持っている。半導体チップSC1の裏面SCbに形成されたコレクタ電極CP上には、p
+型半導体領域PR1が形成されている。p
+型半導体領域PR1上にはn
+型半導体領域NR1が形成され、このn
+型半導体領域NR1上にn
−型半導体領域NR2が形成されている。そして、n
−型半導体領域NR2上にはp型半導体領域PR2が形成され、このp型半導体領域PR2を貫通し、n
−型半導体領域NR2に達するトレンチTRが形成されている。さらに、トレンチTRに整合してエミッタ領域となるn
+型半導体領域ERが形成されている。トレンチTRの内部には、例えば、酸化シリコン膜よりなるゲート絶縁膜GOXが形成され、このゲート絶縁膜GOXを介してゲート電極GEが形成されている。このゲート電極GEは、例えば、ポリシリコン膜から形成され、トレンチTRを埋め込むように形成されている。
【0040】
このように構成されたトランジスタQ1において、ゲート電極GEは、
図4に示すゲート電極GPと接続されている。同様に、エミッタ領域となるn
+型半導体領域ERは、エミッタ電極EPと電気的に接続されている。コレクタ領域となるp
+型半導体領域PR1は、半導体チップSC1の裏面SCbに形成されているコレクタ電極CPと電気的に接続されている。
【0041】
このように構成されているトランジスタQ1は、パワーMOSFETの高速スイッチング特性および電圧駆動特性と、バイポーラトランジスタの低オン電圧特性を兼ね備えている。
【0042】
なお、n
+型半導体領域NR1は、バッファ層と呼ばれる。このn
+型半導体領域NR1は、トランジスタQ1がターンオフしているときに、p型半導体領域PR2からn
−型半導体領域NR2内に成長する空乏層が、n
−型半導体領域NR2の下層に形成されているp
+型半導体領域PR1に接触してしまうパンチスルー現象を防止するために設けられている。また、p
+型半導体領域PR1からn
−型半導体領域NR2へのホール注入量の制限などの目的のために、n
+型半導体領域NR1が設けられている。
【0043】
また、トランジスタQ1のゲート電極は、
図3に示すゲート制御回路GCに接続されている。このとき、ゲート制御回路GCからの信号がゲート電極GP(
図6参照)を介してトランジスタQ1のゲート電極GE(
図6参照)に印加されることにより、ゲート制御回路GCからトランジスタQ1のスイッチング動作を制御することができるようになっている。
【0044】
次に、
図3に示すダイオードFWDが形成された半導体チップについて説明する。
図7は、
図3に示すダイオードが形成された半導体チップの表面側の形状を示す平面図である。
図8は、
図7に示す半導体チップの裏面を示す平面図である。また、
図9は、
図7および
図8に示す半導体チップが有するダイオードの構造例を示す断面図である。
【0045】
図7および
図8に示すように、本実施の形態における半導体チップSC2は、表面(面、上面、主面)SCt(
図7参照)、および表面SCtの反対側の裏面(面、下面、主面)SCb(
図8参照)を有している。半導体チップSC2の表面SCtおよび裏面SCbは、それぞれ四角形である。表面SCtの面積と裏面SCbの面積とは、例えば等しい。また、
図4と
図7を比較して判るように、半導体チップSC1(
図4参照)の表面SCtの面積は、半導体チップSC2(
図7参照)の表面SCtの面積より大きい。
【0046】
また、
図7に示すように、半導体チップSC2は、表面SCtに形成されたアノード電極(アノード電極パッド、表面電極)ADPを有している。また、
図8に示すように、半導体チップSC2は、裏面SCbに形成されたカソード電極(カソード電極パッド、裏面電極)CDPを有している。半導体チップSC2の裏面SCb全体にわたって、カソード電極CDPが形成されている。
【0047】
また、半導体チップSC2が備えるダイオードFWDは、例えば、
図9に示すような構造を持っている。
図9に示すように、半導体チップSC2の裏面SCbに形成されたカソード電極CDP上には、n
+型半導体領域NR3が形成されている。そして、n
+型半導体領域NR3上にn
−型半導体領域NR4が形成されており、n
−型半導体領域NR4上に、互いに離間したp型半導体領域PR3が形成されている。p型半導体領域PR3の間には、p
−型半導体領域PR4が形成されている。p型半導体領域PR3とp
−型半導体領域PR4上には、アノード電極ADPが形成されている。アノード電極ADPは、例えば、アルミニウム−シリコンから構成されている。
【0048】
このように構成されたダイオードFWDによれば、アノード電極ADPに正電圧を印加し、カソード電極CDPに負電圧を印加すると、n
−型半導体領域NR4とp型半導体領域PR3の間のpn接合が順バイアスされ電流が流れる。一方、アノード電極ADPに負電圧を印加し、カソード電極CDPに正電圧を印加すると、n
−型半導体領域NR4とp型半導体領域PR3の間のpn接合が逆バイアスされ電流が流れない。このようにして、整流機能を有するダイオードFWDを動作させることができる。
【0049】
<電子装置の構造>
次に、
図3に示すインバータ回路INVを構成する電子装置EA1の構成例について説明する。
図10は、
図3に示す電子装置の外観を示す斜視図である。また、
図11は、
図10に示す電子装置の裏面側を示す平面図である。
図11は平面図であるが、基板CS1の下面CSbの周囲において露出する接着材BD1にハッチングを付して示している。また、
図12は、
図11のA−A線に沿った断面図である。また、
図13は、
図11に示す基板の上面側のレイアウトを示す平面図である。
【0050】
図3に示すインバータ回路INVを構成する本実施の形態の電子装置EA1は、
図10に示すように、上面側が筐体(ケース、ハウジング)HSに覆われている。電子装置EA1は、互いに電気的に接続された複数の半導体チップSC1、SC2(
図13参照)が筐体HS内に収容され、外部端子である複数の端子LDが筐体HSから露出する、ケースモジュールである。
【0051】
筐体HSは、複数の半導体チップSC1、SC2(
図13参照)を覆う蓋部(蓋材、キャップ)HSTと、蓋部HSTを支持する支持部(フレーム)HSFとを有する。筐体HSを構成する支持部HSFおよび蓋部HSTのそれぞれは、樹脂製の部材であって、例えば、ポリエチレンテレフタラート(以下、PETと記載する)を主要な原料としている。なお、本実施の形態の場合、蓋部HSTと支持部HSFとは互いに独立し、分離可能な部材である。ただし、蓋部HSTと支持部HSFとが互いに分離不可能であっても良い。例えば、蓋部HSTと支持部HSFとが接着材を介して接着固定されていても良い。あるいは、蓋部HSTと支持部HSFとが一体に形成されていても良い。
【0052】
また、
図11に示すように、支持部HSFは基板CS1の周囲を連続的に囲んでいる。
図12に示すように蓋部HSTは基板CS1の上面(面、表面、主面)CSt全体を覆っている。支持部HSFの内側には、空間が設けられ、支持部HSF、蓋部HST、および基板CS1に囲まれた空間(収容部PKT)内に、基板CS1上に搭載された、複数の半導体チップSC1、SC2が収容されている。詳細は後述するが、基板CS1の上面CStの周縁部は、接着材(グルー)BD1を介して筐体HSと接着固定されている。
【0053】
また、筐体HSの蓋部HSTからは、複数の端子LDが突出している。筐体HSの蓋部HSTには複数の貫通孔(図示は省略)が形成され、複数の端子LDは複数の貫通孔にそれぞれ挿入されている。複数の端子LDのそれぞれは、電子装置EA1の外部端子であって、
図13に示す基板CS1上に搭載された複数の半導体チップSC1と電気的に接続されている。
【0054】
また、
図11に示すように、電子装置EA1の筐体HSは、平面視において、X方向に沿って延びる辺(長辺)HSe1、辺HSe1の反対側に位置する辺(長辺)HSe2、X方向に交差(
図11では直交)するY方向に沿って延びる辺(短辺)HSe3、および辺HSe3の反対側に位置する辺(短辺)HSe4を有する。また、辺HSe1および辺HSe2は、辺HSe3および辺HSe4と比較して相対的に長い。なお、
図11に示す例では、電子装置EA1の筐体HSは、平面視において、四角形(
図11では長方形)を成す。ただし、電子装置EA1の平面形状は四角形以外に種々の変形例がある。例えば、四角形の四つの角部のうち、辺HSe3と辺HSe1とが交差する交点の部分をX方向およびY方向に対して斜めにカットして、五角形にしても良い。この場合、斜めにカットされた角部は、電子装置EA1の向きを識別するためのアライメントマークとして利用可能になる。
【0055】
また、
図10および
図11に示すように、筐体HSは、電子装置EA1を例えばヒートシンクや支持部材などに固定するための取り付け部分である、フランジ部(部分)FLGを有している。
図11に示すように、フランジ部FLGは、平面視における筐体HSの長手方向であるX方向において、支持部HSFの両端に設けられている。言い換えれば、X方向において、二つのフランジ部FLGは、基板CS1が収容される収容部PKTを介して互いに反対側に配置されている。また、複数のフランジ部FLGの中央には、それぞれ貫通孔(孔、ネジ穴、ネジ挿入孔)THHが形成されている。貫通孔THHは、筐体HSのフランジ部FLGを厚さ方向に貫通する開口部であって、電子装置EA1を例えばヒートシンクや支持部材などに固定する際には、貫通孔THHにネジBOL(後述する
図15参照)を挿入することにより、電子装置EA1をネジ止め固定することができる。
【0056】
図11に示す例では、辺HSe3の中心と辺HSe4の中心を結ぶように長手方向であるX方向に延びる仮想線(中心線)VL1に沿って、二個の貫通孔THHが形成されている。
図11に示す例では、仮想線VL1は、X方向において、一方の側に配置された貫通孔THHの中心点と、他方の側に配置された貫通孔THHの中心点を結ぶ(通過する)直線である。また、
図11に示す例では、基板CS1の下面(面、裏面、主面)CSb側から視た平面視において、仮想線VL1は、基板CS1の下面CSbを通る(通過する)。ここで、基板CS1の下面CSbの中心点は、
図13に示す基板CS1の上面(面、表面、主面)CStの中心点と同様に定義できる。すなわち、
図13に示す基板CS1の下面CSb(
図11参照)および上面CStの中心点は、基板CS1の辺(長辺、基板辺)CSe1の中点と辺(長辺、基板辺)CSe2の中点とを結ぶ線(図示しない仮想線)と、辺(短辺、基板辺)CSe3の中点と辺(短辺、基板辺)CSe4の中点とを結ぶ線(図示しない仮想線)と、の交点である。筐体HSに関し、上記以外の詳細な構造については、後述する。
【0057】
次に、電子装置EA1の筐体HSの収容部PKTに収容される基板CS1および基板CS1に固定される各部材について説明する。
【0058】
図12および
図13に示すように、電子装置EA1は、基板CS1と、基板CS1の上面CStに形成された複数の金属パターン(金属から成るパターン、金属膜、パターン)MPと、複数の金属パターンMPのうちの一部に搭載される複数の半導体チップSC1と、を有する。
【0059】
図12に示すように基板CS1は、複数の半導体チップSC1が搭載されるチップ搭載面である上面(表面、主面、面)CStと、上面CStの反対側に位置する下面(裏面、主面、面)CSbとを有する。基板CS1は、セラミック材料から成るセラミック基板である。基板CS1を構成する材料としては、アルミナ(酸化アルミニウム:Al
2O
3)などの酸化物系の材料の他、窒化アルミニウム(AlN)などの窒化物系の材料を用いることができる。また、基板の主成分を構成する材料として、上記したアルミニウムの他、シリコン(珪素:Si)を主成分とする材料を用いることができる。シリコンを主成分として用いる材料としては、例えば、窒化珪素(Si
3N
4)などの窒化物系の材料が例示できる。
【0060】
図13に示すように、基板CS1は、平面視において、X方向に沿って延びる(延在する)辺(長辺、基板辺)CSe1、辺CSe1の反対側に位置する辺(長辺、基板辺)CSe2、X方向に交差(
図13では直交)するY方向に沿って延びる(延在する)辺(短辺、基板辺)CSe3、および辺CSe3の反対側に位置する辺(短辺、基板辺)CSe4を有する。また、辺CSe1および辺CSe2は、辺CSe3および辺CSe4と比較して相対的に長い。
図13に示す例では、基板CS1は、平面視において、四角形(詳しくは長方形)を成す。
【0061】
また、
図12に示すように、基板CS1の上面CStおよび下面CSbには、複数の金属パターンMPが接合されている。これら複数の金属パターンMPは、例えば、銅(Cu)膜の表面にニッケル(Ni)膜が積層された積層膜であって、基板CS1の上面CStまたは下面CSbに銅膜が直接的に接合されている。本実施の形態のように、銅から成る金属パターンMP上に直接的に半導体チップSC1が搭載される基板CS1は、DBC(Direct Bonding Cupper)基板と呼ばれる場合もある。
【0062】
基板CS1の下面CSb側に形成された金属パターンMPBは電子装置EA1の放熱経路を構成する金属膜であって、基板CS1の下面CSbの大部分を覆うように一様に形成されている。セラミック基板である基板CS1の下面CSbに金属膜を形成することで、電子装置EA1の放熱性を向上させることができる。また、基板CS1の上面CStに形成された複数の金属パターンMPのそれぞれは、インバータ回路INV(
図3参照)の導電経路の一部を構成し、互いに分離されている(離間している)。
【0063】
複数の金属パターンMPには、ハイサイド側の電位E1(
図3参照)が供給される金属パターンMPHが含まれている。また、複数の金属パターンMPには、ローサイド側の電位E2(
図3参照)が供給される金属パターンMPLが含まれている。また、複数の金属パターンMPには、トランジスタQ1のスイッチング動作に応じて変化する電位が供給される金属パターンMPU、MPV、MPWが含まれている。また、複数の金属パターンMPには、電子装置EA1の外部端子である端子LDを接続するための複数の金属パターンMPTが含まれている。
【0064】
金属パターンMPU、金属パターンMPV、および金属パターンMPWのそれぞれには、120度の位相差を持つようにそれぞれ異なる電位が供給される。このため、金属パターンMPU、金属パターンMPV、および金属パターンMPWのそれぞれは、互いに分離されている(離間している)。また、金属パターンMPU、金属パターンMPV、および金属パターンMPWのそれぞれは、出力用の端子LD(出力端子TU、TV、およびTW)が接続された金属パターンMPTと複数のワイヤBWを介して接続されている。このため、
図3に示すU相、V相、およびW相の出力用の伝送経路には、
図13に示すワイヤBWが含まれる。
【0065】
金属パターンMPHには、U相、V相、W相(
図3参照)のそれぞれにおいて、同じ電位(ハイサイド側の電位E1(
図3参照))が供給される。したがって、金属パターンMPHは、U相、V相、およびW相の区別に対応して分割されず、一体に形成されている。言い換えれば、ハイサイド側の電位E1はワイヤBWを介さずに複数の半導体チップSCHのそれぞれに供給される。なお、
図13に対する変形例としては、金属パターンMPHを、U相、V相、およびW相の区別に対応して分割し、分割された金属パターンMPHのそれぞれが、ワイヤなどの
導電性部材(図示は省略)を介して電気的に接続されていても良い。
【0066】
また、金属パターンMPLには、U相、V相、W相(
図3参照)のそれぞれにおいて、同じ電位(ローサイド側の電位E2(
図3参照))が供給される。したがって、金属パターンMPLは、U相、V相、およびW相の区別に対応して分割されず、一体に形成されている。なお、
図13に対する変形例としては、
図13に示す金属パターンMPLが、U相、V相、およびW相の区別に対応して分割され、分割された金属パターンMPLのそれぞれが、ワイヤなどの導電性部材(図示は省略)を介して電気的に接続されていても良い。
【0067】
また、上記した複数の金属パターンMPのうち、複数の金属パターンMPTにはそれぞれ一つの端子LDが接続されている。また、複数の金属パターンMPのうち、金属パターンMPHおよび金属パターンMPLには、それぞれ複数の端子LDが形成されている。また、金属パターンMPHおよび金属パターンMPLには、基板CS1の上面CStが有する四辺のうち、短辺である辺CSe3および辺CSe4に沿って、それぞれ一つずつ端子LDが搭載されている。
【0068】
また、上記した複数の金属パターンMPのうち、金属パターンMPU、金属パターンMPV、および金属パターンMPWのそれぞれには、端子LDが搭載されていない。言い換えれば、複数の金属パターンMPのうち、金属パターンMPU、金属パターンMPV、および金属パターンMPWのそれぞれには、端子LDは直接的には接続されていない。金属パターンMPU、金属パターンMPV、および金属パターンMPWのそれぞれは、複数のワイヤBWを介して金属パターンMPTと電気的に接続されている。つまり、金属パターンMPU、金属パターンMPV、および金属パターンMPWのそれぞれは、複数のワイヤBWおよび金属パターンMPTを介して端子LDと電気的に接続されている。
【0069】
また、複数の金属パターンMPのうちの一部(金属パターンMPH、金属パターンMPU、金属パターンMPV、および金属パターンMPW)には、複数の半導体チップSC1および半導体チップSC2が搭載されている。複数の半導体チップSC1は、
図6を用いて説明したように、IGBTであるトランジスタQ1が形成されたスイッチ素子であって、金属パターンMPH、金属パターンMPU、金属パターンMPV、および金属パターンMPWのそれぞれに搭載されている。半導体チップSC1のうち、金属パターンMPHに搭載されているものは、ハイサイド側のスイッチSW1、SW3、SW5(
図1参照)に相当する半導体チップSCHである。また、半導体チップSC1のうち、金属パターンMPU、金属パターンMPV、および金属パターンMPWに搭載されているものは、ロウサイド側のスイッチSW2、SW4、SW6(
図1参照)に相当する半導体チップSCLである。また、複数の半導体チップSC2は、
図9を用いて説明したように、ダイオードFWDを備えている。複数の半導体チップSC2のそれぞれは、複数の半導体チップSC1のそれぞれとセットになるように、金属パターンMPH、金属パターンMPU、金属パターンMPV、および金属パターンMPWに搭載されている。
【0070】
図12に示すように、本実施の形態では、半導体チップSC1のそれぞれは、半導体チップSC1の裏面SCbが金属パターンMPの上面(表面)MPtと対向するように、導電性接着材(ダイボンド材、導電性部材、接続部材、接合材)SDを介して金属パターンMP上に接着固定されている。導電性接着材SDは、例えば、半田、あるいは、複数(多数)の導電性粒子(例えば銀粒子)を樹脂中に含有する導電性樹脂などである。
図5に示すように、半導体チップSC1の裏面SCbには、コレクタ電極CPが形成されており、コレクタ電極CPは、
図12に示す導電性接着材SDを介して金属パターンMPと電気的に接続されている。
【0071】
また、
図13では図示を省略しているが、半導体チップSC2のそれぞれは、半導体チップSC2の裏面SCb(
図8参照)が金属パターンMPの上面(表面)MPt(
図12参照)と対向するように、導電性接着材SD(
図12参照)を介して金属パターンMP上に接着固定されている。
図8に示すように、半導体チップSC2の裏面SCbには、カソード電極CDPが形成されており、カソード電極CDPは、
図12に示す導電性接着材SDを介して金属パターンMPと電気的に接続されている。
【0072】
また、
図13に示すように、半導体チップSC1のエミッタ電極EP(
図4参照)には、複数のワイヤBWが接続されている。詳しくは、ハイサイド用の半導体チップSCHのエミッタ電極EPは複数のワイヤBWを介して金属パターンMPU、金属パターンMPV、および金属パターンMPWのうちのいずれかに接続されている。言い換えれば、ハイサイド用の半導体チップSCHのエミッタ電極EPは、U相の出力端子TU、V相の出力端子TV、またはW相の出力端子TWのうちのいずれかに接続されている。また、ロウサイド用の半導体チップSCLのエミッタ電極EPは複数のワイヤBWを介して金属パターンMPLに接続されている。言い換えれば、ロウサイド用の半導体チップSCLのエミッタ電極EPは、
図3に示すロウサイド用の電位E2が供給されるロウサイド端子LTと電気的に接続されている。
【0073】
また、
図13に示すように、半導体チップSC1のゲート電極GP(
図4参照)には、一本のワイヤBWが接続されている。詳しくは、
図13に示すように、ハイサイド用の半導体チップSCHおよびロウサイド用の半導体チップSCLのそれぞれが有するゲート電極GP(
図4参照)のそれぞれは、ワイヤBWを介して金属パターンMPTと電気的に接続されている。金属パターンMPTからは、半導体チップSCHおよび半導体チップSCLが有するトランジスタQ1(
図3参照)のスイッチング動作を駆動する駆動信号(ゲート信号)が供給される。
【0074】
また、アノード電極ADP(
図7参照)には、複数のワイヤBWが接続されている。詳しくは、ハイサイド用の半導体チップSC2のアノード電極ADPは複数のワイヤBWを介して金属パターンMPU、金属パターンMPV、または金属パターンMPWのいずれかに接続されている。また、ハイサイド用の半導体チップSC2のアノード電極ADPは複数のワイヤBWを介して出力用の金属パターンMPTにも接続されている。言い換えれば、ハイサイド用の半導体チップSC2のアノード電極ADPは、U相の出力端子TU、V相の出力端子TV、またはW相の出力端子TWのうちのいずれかに接続されている。また、ロウサイド用の半導体チップSC2のアノード電極ADPは複数のワイヤBWを介して金属パターンMPLに接続されている。言い換えれば、ロウサイド用の半導体チップSC2のアノード電極ADPは、
図3に示すロウサイド用の電位E2が供給されるロウサイド端子LTと電気的に接続されている。
【0075】
図13に示す複数のワイヤBWは、金属ワイヤであって、本実施の形態では例えばアルミニウムから成る。ただし、ワイヤBWの材料には種々の変形例があって、アルミニウムの他、金、あるいは銅を用いることもできる。
【0076】
また、
図12に示すように、筐体HSと基板CS1との間の空間には、封止材(ゲル状絶縁材)MGが充填されている。複数の半導体チップSC1および複数のワイヤBWのそれぞれは、この封止材MGにより封止されている。封止材MGは、複数の半導体チップSC1、SC2、複数のワイヤBWおよび端子LDの一部を保護する部材である。封止用の部材としては、例えばエポキシ樹脂など、加熱することで硬化し、ある程度の強度が確保できる樹脂材料を用いる方法がある。しかし、封止材MGが硬化すると、電子装置EA1に温度変化が生じた時に基板CS1と封止材MGの線膨張係数の差に起因して、電子装置EA1の内部に応力が発生する。そこで、本実施の形態では、エポキシ樹脂よりも柔らかいゲル状の材料(高分子化合物)を用いて封止材MGを形成している。詳しくは、本実施の形態では、封止材MGは、シリコーンゲルである。シリコーンゲルは、シロキサン結合による主骨格を持つ高分子化合物である、シリコーン樹脂の一種である。シリコーン樹脂は、熱エネルギーを付与することにより硬化する、熱硬化性樹脂に分類されるが、硬化後の弾性が、例えば天然ゴムのように低弾性であるという特性を備えている。また、シリコーン樹脂のうち、シリコーンゲルは、硬化後にゲル状態になる樹脂であって、鎖状高分子の架橋構造の密度がシリコーンゴムと呼ばれるエラストマーより低い。このため、シリコーンゲルの硬化後の弾性は、シリコーンゴムの硬化後の
弾性より低い。本実施の形態では、
図12に示す接着材BD1として、シリコーンゴムを用いているが、封止材MGは、接着材BD1より低弾性である。言い換えれば、封止材MGは、接着材BD1より柔らかく、変形し易い。電子装置EA1に温度変化が生じた時に発生した応力は、シリコーンゲルである封止材MGが変形することにより、低減される。
【0077】
<電子装置の実装>
次に、ケースモジュールである電子装置EA1の実装態様として、実装基板上に、電子装置EA1を実装する方法について説明する。
図14は、
図10に示す電子装置を実装基板上に接着した後、ネジ止め固定した状態を示す断面図である。また、
図15は、
図14に対する検討例である電子装置を実装基板上に接着した後、ネジ止め固定した状態を示す断面図である。なお、
図14および
図15では、ネジBOLを締め込むことにより、電子装置EAHに印加される外力EF1を、白抜きの矢印を用いて模式的に示している。また、
図14および
図15では、外力EF1の大きさを矢印の太さで模式的に示している。また、
図14および
図15は、
図13に示すA−A線に沿った断面に対応している。
【0078】
図14に示す電子装置EA1と
図15に示す電子装置EAHとは、貫通孔THH(
図11参照)の近傍において、基板CS1と筐体HSとの間に介在する接着材BD1の量が相違する。詳しくは、電子装置EA1と電子装置EAHとは、筐体HSのうち、貫通孔THHの近傍において、基板CS1と対向する段差面の高さが異なる。
図15を用いて説明する電子装置EAHの場合、後述する
図16の距離D1および
図17の距離D2に相当する間隔が、
図19に示す距離D3および
図20に示す距離D4と同じである点で、
図14に示す電子装置EA1と相違する。そして、段差面の高さが異なっていることに起因して、
図15に示す電子装置EAHにおいて、基板CS1と筐体HSとの間に介在する接着材BD1の量は、
図14に示す電子装置EA1において、基板CS1と筐体HSとの間に介在する接着材BD1の量より少ない。電子装置EA1と電子装置EAHは、上記相違点を除き、同様なので、重複する説明は省略する。
図14に示す電子装置EA1の段差面の詳細な構造は後述する。
【0079】
図14に示すように、ケースモジュールである電子装置EA1を基板(実装基板、ベースプレート)BP1に固定する方法として、熱伝導材(放熱グリス)BD2を介して基板BP1上に電子装置EA1を配置した後、ネジBOLを締め込む方法がある。熱伝導材BD2は、例えば、熱伝導率が高い金属粒子や金属酸化物の粒子が、グリスのような高粘度の液体(半固体)中に混合された材料である。グリスは、潤滑油(基油)に、粘度等を調整する材料(増ちょう剤)を添加したものであって、油よりも粘度が高い。本実施の形態では、耐熱性、耐寒性に優れる、シリコーングリスを基油として使用した放熱グリスを熱伝導材BD2として使用している。基板CS1の下面CSb(
図11参照)に形成された金属パターンMPBと基板BP1との間に熱伝導材BD2を介在させることにより、金属パターンMPBから基板BP1に至る放熱パスの経路断面積が広くなるので、放熱特性が向上する。また、熱伝導材BD2であるグリスは、基板CS1や接着材BD1よりも柔らかく、変形し易い材料である。このため、熱伝導材BD2は、ネジBOLを締め込んで基板BP1に電子装置EA1を固定した時に、基板BP1から電子装置EA1の基板CS1に伝達される応力を分散させる応力緩和層として機能する。
【0080】
ネジBOLを締め込むと、
図14に示すように、フランジ部FLGの下面Hf1および下面Hf3のそれぞれが、基板BP1の上面(面、主面、実装面)BPtに近づくように押し下げられる。これに伴い、筐体HSには、基板BP1に近づく方向に、外力EF1が印加される。
図14に模式的に示すように、外力EF1の大きさは一定ではなく、電子装置EA1において、ネジBOLからの距離が近い位置では外力EF1が相対的に大きい。また、ネジBOLからの距離が遠い位置では、外力EF1が相対的に小さい。本実施の形態の電子装置EA1および
図15に示す検討例の電子装置EAHのそれぞれは、フランジ部FLGの中央に貫通孔THH(
図11参照)が形成され、この貫通孔THHにネジBOLが挿入されている。このため、Y方向において、支持部HSFの両端にあるフランジ部FLGに印加される外力EF1は、フランジ部FLGの間の領域に印加される外力EF1より大きい。この結果、筐体HSのフランジ部FLG周辺の部分が変形し、フランジ部FLGは、他の部分と比較して基板BP1の上面BPtに対してより近い位置まで押し下げられる。
【0081】
この時、
図14および
図15に拡大図として示すように、基板CS1のうち、ネジBOLまでの距離が短い辺(短辺)CSe3(および辺(短辺)CSe4)では、筐体HSから外力EF1が印加される。そして、基板CS1に印加される外力EF1の程度によっては、基板CS1が損傷してしまう場合があることが判った。
【0082】
特に、電子装置EA1の平面積(実装面積)を小型化する観点からは、ネジBOLから基板CS1までの距離を小さくすることが好ましいが、ネジBOLから基板CS1までの距離を小さくする程、基板CS1には強い力が印加される。
【0083】
以下に示す数値は、一例であって、種々の変形例が適用可能であることは言うまでもないが、例えば、
図11に示す本実施の形態の電子装置EA1の場合(
図15に示す電子装置EAHも同様)、平面視において、二つの貫通孔THHの中心間距離は、55mmである。また、貫通孔THHの開口径(円形の開口部の直径)は、4mm程度であって、筐体HSの辺HSe1と基板CS1の辺CSe1の距離(3mm程度)より大きい。また、基板CS1の長手方向であるX方向の長さ(すなわち、辺CSe1および辺CSe2の長さ)は42mmであって、Y方向の長さ(辺CSe3および辺CSe4の長さ)は36mmである。したがって、一方の貫通孔THHの中心から、基板CS1の辺CSe3、CSe4までの長さは、5〜6mm程度である。また、一方の貫通孔THHの縁から、基板CS1の辺CSe3、CSe4までの最短距離は、貫通孔THHの開口径より小さい。
【0084】
上記した数値例を、
図15に示す電子装置EAHに適用した場合、基板CS1の損傷が顕在化することが判った。
【0085】
また、本願発明者の検討によれば、ネジBOLから基板CS1までの距離を十分に長くすれば、基板CS1の損傷を低減できることが判った。これは、ネジBOLの位置が基板CS1から遠くなったことにより、基板CS1に印加される外力EF1を低減できたためと考えられる。しかし、この場合、ネジBOLと基板CS1の距離が長いことに起因して、電子装置の実装面積が大きくなるという課題が残る。
【0086】
<筐体の構造詳細>
そこで、本願発明者は、実装面積を低減しつつ、基板CS1の損傷を抑制する技術について検討し、以下の方法を見出した。すなわち、
図14に示すように、基板CS1と筐体HSの支持部HSFとの間に介在する、接着材BD1の厚さを厚くすることにより、基板CS1に印加される外力EF1を緩和する方法である。上記したように、接着材BD1はシリコーンゴムなどの低弾性の材料から成る。このため接着材BD1に外力EF1が印加されると、基板CS1よりも低弾性材料から成る接着材BD1が変形することにより、外力EF1の方向が分散される。言い換えれば、外力EF1のうち、基板CS1に損傷を与える方向に作用する成分は、接着材BD1が変形することにより緩和される。上記した基板CS1に損傷を与える方向に作用する成分とは、例えば、基板CS1の厚さ方向(Z方向)の成分である。基板CS1の厚さ方向とは、
図12に示す基板CS1の上面CStおよび下面CSbのうち、一方から他方に向かう方向である。言い換えれば、基板CS1の厚さ方向とは、X方向とY方向の両方に交差する方向である。接着材BD1により外力EF1が緩和される程度は、接着材BD1の量に比例して大きくなる。したがって、基板CS1の辺CSe3および辺CSe4において、基板CS1と筐体HSとの間に介在する接着材BD1の量を増加させることにより、基板CS1の損傷を抑制できる。
【0087】
基板CS1の辺CSe3および辺CSe4において、基板CS1と筐体HSとの間に介在する接着材BD1の量を増加させることは、以下の方法により実現可能である。
図16は、
図14に拡大して示す接着材が変形する前の状態を示す拡大断面図である。また、
図17は、
図16に示すフランジ部の反対側に位置するフランジ部における接着材の周辺を示す拡大断面図である。
【0088】
図16に示す下面Hf1および上面Hf2は、
図11に示す二つのフランジ部FLGのうち、辺HSe3側のフランジ部FLGの上面および下面を構成する。
図11に示す貫通孔THHのうち、辺HSe3側に形成された貫通孔(第1孔)THHは、下面Hf1および上面Hf2のうち、一方から他方にまで達する開口部である。また、
図17に示す下面Hf3および上面Hf4は、
図11に示す二つのフランジ部FLGのうち、辺HSe4側のフランジ部FLGの上面および下面を構成する。
図11に示す貫通孔THHのうち、辺HSe4側に形成された貫通孔(第2孔)THHは、下面Hf3および上面Hf4のうち、一方から他方にまで達する開口部である。
【0089】
図16に示すように、筐体HSの支持部HSFは、筐体HSの下面HSb(フランジ部FLGの下面)を構成する下面(面、被実装面、フランジ部下面)Hf1と、下面Hf1の反対側に位置する上面(面、ネジ挿入面、フランジ部上面)Hf2と、を有している。また、筐体HSの支持部HSFは、下面Hf1を基準面として、下面Hf1と上面Hf2との間の高さに位置し、その一部分が基板CS1の上面CStと対向する段差面(面、基板保持面)Hf6を有している。この時、段差面Hf6と基板CS1の上面CStとの間隔である距離D1を大きくすることにより、基板CS1の辺CSe3において、基板CS1と筐体HSとの間に介在する接着材BD1の量(厚さ)が増加する。
【0090】
また、
図16に示すフランジ部FLGの反対側のフランジ部FLGの周辺を示す
図17に示すように、筐体HSの支持部HSFは、筐体HSの下面HSb(フランジ部FLGの下面)を構成する下面(面、被実装面、フランジ部下面)Hf3と、下面Hf3の反対側に位置する上面(面、ネジ挿入面、フランジ部上面)Hf4と、を有している。また、筐体HSの支持部HSFは、下面Hf3を基準面として、下面Hf3と上面Hf4との間の高さに位置し、その一部分が基板CS1の上面CStと対向する段差面(面、基板保持面)Hf8を有している。この時、段差面Hf8と基板CS1の上面CStとの間隔である距離D2を大きくすることにより、基板CS1の辺CSe4において、基板CS1と筐体HSとの間に介在する接着材BD1の量(厚さ)が増加する。
図16および
図17に示す例では、距離D1および距離D2は互いに等しく、例えば、基板CS1の厚さと同じ、0.5mm程度である。距離D1および距離D2の値は、
図13に示す複数の金属パターンMPのうち、半導体チップSC1が搭載される金属パターンMPの厚さより大きい。なお、本実施の形態の例では、複数の金属パターンMPの厚さ(Z方向の長さ、膜厚)はそれぞれ等しく、例えば0.3mm程度である。なお、金属パターンMPの厚さは、種々の変形例が適用できる。したがって、例えば、金属パターンの厚さが厚い場合には、
図16に示す距離D1や
図17に示す距離D2が金属パターンMPの厚さより小さい場合もある。
【0091】
また、
図16に示す距離D1および
図17に示す距離D2のそれぞれの大きさは以下のように表現することができる。すなわち、
図12に示す複数の半導体チップSC1は、表面SCtおよび裏面SCbを有している。基板CS1の厚さ方向であるZ方向において、
図16に示す筐体HSの段差面Hf6は、
図12に示す半導体チップSC1の表面SCtと裏面SCbの間の高さに位置する。また、基板CS1の厚さ方向であるZ方向において、
図17に示す筐体HSの段差面Hf8は、
図12に示す半導体チップSC1の表面SCtと裏面SCbの間の高さに位置する。
【0092】
また、
図16および
図17に示すように、本実施の形態では、基板CS1の厚さ方向であるZ方向において、筐体HSの下面Hf1(および
図17に示す下面Hf3)は、基板CS1の上面CStと金属パターンMPBの下面MPbの間の高さに位置している。言い換えれば、筐体HSの下面HSbにおいて、少なくとも基板CS1の下面CSbに形成された金属パターンMPBの一部分は、下面Hf1(および
図17に示す下面Hf3)を延長させた面に対して、上面CStから下面CSbに向かう方向に突出している。これにより、
図16に示す距離D1や
図17に示す距離D2を大きくすることができるので、基板CS1と筐体HSとの間に介在する接着材BD1の量(Z方向の厚さ)が多くなる。
【0093】
また、
図16や
図17に示すX方向において、基板CS1と筐体HSとの間に介在する接着材BD1の量(厚さ)を増加させる方法として、
図16に示す距離P1や
図17に示す距離P2を大きくする方法もある。詳しくは、
図16に示すように、筐体HSの支持部HSFは、筐体HSの下面Hf1に連なり、かつ、その一部分が基板CS1の側面(短側面)Css3と対向する内側面Hsi3を有する。
図16に示す例では、内側面Hsi3は、下面Hf1および段差面Hf6のそれぞれに連なっている。また、
図17に示すように、筐体HSの支持部HSFは、筐体HSの下面Hf3に連なり、かつ、その一部分が基板CS1の側面(短側面)Css4と対向する内側面Hsi4を有する。
図17に示す例では、内側面Hsi4は、下面Hf3および段差面Hf8のそれぞれに連なっている。ここで、
図16に示す内側面Hsi3と基板CS1の側面Css3との間隔である距離P1が大きければ、内側面Hsi3と基板CS1の側面Css3の間において接着材BD1の量を増加できる。また、
図17に示す内側面Hsi4と基板CS1の側面Css4との間隔である距離P2が大きければ、内側面Hsi4と基板CS1の側面Css4の間において接着材BD1の量を増加できる。しかし、
図16に示す距離P1や
図17に示す距離P2が大きくなると、電子装置EA1の実装面積が増加する原因になる。このため、実装面積を低減させる観点からは、距離P1、P2は小さいことが好ましい。本実施の形態の例では、
図16に示す距離D1は距離P1より大きく、
図17に示す距離D2は距離P2より大きい。
【0094】
ところで、
図18に示すように、本実施の形態の筐体HSの下面HSb側には、収容部PKTを囲むように段差面Hf5、Hf6、Hf7、およびHf8が設けられている。
図18は、
図11に示す筐体の下面側を示す平面図である。また、
図19および
図20は、
図18のA−A線に沿った断面において、段差面の周辺を拡大して示す拡大断面図である。
図18では、筐体HSの支持部HSFが有する各面の範囲を示すため、平面図ではあるが、複数の面のそれぞれに互いに異なるハッチングを付している。また、
図18では、
図11に示す基板CS1の輪郭を点線で示している。
【0095】
図18に示すように、筐体HSは平面視において、以下の辺を有している。まず、筐体HSは、その最外周に、X方向に延びる(延在する)辺(長辺)HSe1、辺(長辺)HSe2、X方向に交差(
図18では直交)するY方向に延びる(延在する)辺(短辺)HSe3、および辺(短辺)HSe4を有する。また、筐体HSは、最外周の各辺の内側に、以下の辺を有する。すなわち、筐体HSは、X方向に延び、かつ辺HSe1と辺HSe2との間に位置する辺(長辺)HSe5と、X方向に延び、かつ辺HSe5と辺HSe2との間に位置する辺(長辺)HSe6と、を有している。また、筐体HSは、Y方向に延び、かつ辺HSe3と辺HSe4との間に位置する辺(短辺)HSe7と、Y方向に延び、かつ辺HSe7と辺HSe4との間に位置する辺(短辺)HSe8と、を有している。
【0096】
また、平面視において、基板CS1は、筐体HSの収容部PKT内に以下のように収容されている。すなわち、基板CS1の辺(長辺)CSe1は、筐体HSの辺HSe1に沿って延び、かつ、辺HSe1と辺HSe5の間に配置されている。基板CS1の辺(長辺)CSe2は、筐体HSの辺HSe2に沿って延び、かつ、辺HSe2と辺HSe6の間に配置されている。基板CS1の辺(短辺)CSe3は、筐体HSの辺HSe3に沿って延び、かつ、辺HSe3と辺HSe7の間に配置されている。基板CS1の辺(短辺)CSe4は、筐体HSの辺HSe4に沿って延び、かつ、辺HSe4と辺HSe8の間に配置されている。
【0097】
また、筐体HSは、辺HSe1と辺CSe1との間にある下面(面、被実装面)Hf9と、辺HSe2と辺CSe2との間にある下面(面、被実装面)Hf10と、辺HSe3と辺CSe3との間にある下面Hf1と、辺HSe4と辺CSe4との間にある下面Hf3と、を有している。これらの面のそれぞれは、筐体HSの最下面である、下面HSbを構成する。
【0098】
また、筐体HSは、X方向に沿って延び、辺HSe5と辺CSe1の間に位置する部分を有する段差面(面、基板保持面)Hf5と、X方向に沿って延び、辺HSe6と辺CSe2の間に位置する部分を有する段差面(面、基板保持面)Hf7と、を有する。また、筐体HSは、Y方向に沿って延び、辺HSe7と辺CSe3の間に位置する部分を有する段差面(面、基板保持面)Hf6と、Y方向に沿って延び、辺HSe8と辺CSe4の間に位置する部分を有する段差面(面、基板保持面)Hf8と、を有する。
【0099】
また、
図18に示す例では、筐体HSは、X方向に沿って順に配列され、それぞれが辺HSe5を含む、段差面(面、基板保持面)Hf11、Hf5、およびHf12と、X方向に沿って順に配列され、それぞれが辺HSe6を含む、段差面(面、基板保持面)Hf13、Hf7、およびHf14と、を有している。段差面Hf5、Hf6、Hf7、Hf8、Hf11、Hf12、Hf13、およびHf14のそれぞれは、基板CS1の厚さ方向において、基板CS1の上面CSt(
図16参照)と対向する部分を有している。
【0100】
言い換えれば、基板CS1は、上面CSt(
図13参照)の最外周の一部分が、全周に亘って、段差面Hf5、Hf6、Hf7、Hf8、Hf11、Hf12、Hf13、およびHf14のうちのいずれかと対向している。また、段差面Hf5、Hf6、Hf7、Hf8、Hf11、Hf12、Hf13、およびHf14のそれぞれと、基板CS1の上面CStの間には、全周に亘って接着材BD1(
図16参照)が介在している。このように、基板CS1の最外周が全周に亘って、段差面と対向している場合、基板CS1を安定的に保持することができる。
【0101】
ここで、上記した
図16および
図17に示すように、距離D1や距離D2を大きくする場合、
図19や
図20に示す距離D3、D4も
図16および
図17に示す距離D1、D2と同じ値にすることが考えられる。ところが、距離D1、D2、D3、D4のそれぞれを、等しく大きな値にした場合、接着材BD1の塗布量のバラつき等の影響により、基板CS1の位置精度が低下することが判った。例えば、
図18において、基板CS1の位置が全体に筐体HSの辺HSe3の方向に寄りすぎると、
図16に示す距離P1が狭くなり、内側面Hsi3と基板CS1の側面Css3の間の接着材BD1が不足する。また例えば、基板CS1の位置が全体に筐体HSの辺HSe4の方向に寄りすぎると、
図17に示す距離P2が狭くなり、内側面Hsi4と基板CS1の側面Css4の間の接着材BD1が不足する。また例えば、段差面Hf5、Hf6、Hf7、およびHf8のそれぞれと、基板CS1の上面CStの間の一部分で接着材BD1の塗布量が極端に多い場合、
図18に示す基板CS1が傾いた状態で収容部PKT内に収容される原因になる。
図16、
図17、
図19、または
図20のいずれかに示す、段差面Hf5、Hf6、Hf7、およびHf8のそれぞれと、基板CS1の上面CStとは、理想的には平行であることが好ましい。しかし、基板CS1が傾いている場合、各段差面と基板CS1の上面CStとが平行にならない。
【0102】
例示したように、筐体HSの収容部PKT内における基板CS1の位置精度が低下すると、基板CS1の周縁領域の一部で、接着材BD1の量が不足する場合が考えられる。そして、
図18に示す貫通孔THHの近傍において、接着材BD1(
図16参照)の不足が生じると、基板CS1に大きな外力が印加される原因になる。
【0103】
そこで、本願発明者は、基板CS1の損傷を抑制し、かつ、筐体HSの収容部PKT内における基板CS1の位置精度を向上させる技術について検討した。上記したように、
図14に示すネジBOLを締め付けることにより、基板CS1の損傷が生じるのは、筐体HSの長手方向、すなわち、
図18に示すX方向において、貫通孔THHの近傍の領域において発生し易い。したがって、例えばX方向に延びる段差面Hf5や段差面Hf7では、接着材BD1(
図19参照)の量に関わらず基板CS1の損傷はほとんど発生しない。本願発明者は、この点に着目し、接着材BD1の量が少なくても基板CS1の損傷が発生し難い領域において、意図的に接着材BD1の量が少なくなっていることにより、筐体HSの収容部PKT内における基板CS1の位置精度を向上させる技術を見出した。
【0104】
すなわち、
図16と
図19を比較して判るように、本実施の形態の電子装置EA1は、
図16に示す基板CS1の上面CStと筐体HSの段差面Hf6との距離D1は、
図19に示す基板CS1の上面CStと筐体HSの段差面Hf5との距離D3より大きい。言い換えれば、本実施の形態の電子装置EA1は、
図16に示す基板CS1の上面CStから筐体HSの段差面Hf6までの高さ(距離D1)は、
図19に示す基板CS1の上面CStから筐体HSの段差面Hf5までの高さ(距離D3)より大きい。このように、電子装置EA1の場合、
図19に示す基板CS1の上面CStと筐体HSの段差面Hf5との距離D3が小さくなっている。
図19および
図20に示す例では、
図19に示す距離D3および
図20に示す距離D4のそれぞれは、
図19に示す距離P3および
図20に示す距離P4のそれぞれと同程度であって、例えば0.2mm程度である。また、
図19に示す距離D3および
図20に示す距離D4のそれぞれは、基板CS1の厚さ(上面CStおよび下面CSbの一方から他方までの距離)より小さい。このため、基板CS1と筐体HSとを接着固定する際に、基板CS1の傾きが発生し難い。なお、
図19や
図20に示す例に対する変形例としては、距離D3や距離D4がさらに小さくても良い。例えば、距離D3や距離D4が0.1mm未満であっても良い。この場合、距離D3や距離D4は、基板CS1の上面CSt上に形成されている金属パターンMPの厚さより小さくなる。
【0105】
なお、
図19に示す距離P3および
図20に示す距離P4は以下のように定義できる。すなわち、
図19に示すように、筐体HSの支持部HSFは、筐体HSの下面Hf9に連なり、かつ、その一部分が基板CS1の側面(長側面)Css1と対向する内側面Hsi1を有する。
図19に示す例では、内側面Hsi1は、下面Hf9および段差面Hf5のそれぞれに連なっている。また、
図20に示すように、筐体HSの支持部HSFは、筐体HSの下面Hf10に連なり、かつ、その一部分が基板CS1の側面(長側面)Css2と対向する内側面Hsi2を有する。
図20に示す例では、内側面Hsi2は、下面Hf10および段差面Hf7のそれぞれに連なっている。ここで、
図19に示す距離P3は、内側面Hsi1と基板CS1の側面Css1との間隔である。また、
図20に示す距離P4は、内側面Hsi2と基板CS1の側面Css2との間隔である。電子装置EA1の実装面積を低減する観点からは、距離P3および距離P4はできる限り小さいことが好ましく、本実施の形態では、距離P3および距離P4のそれぞれは、
図16に示す距離P1および
図17に示す距離P2と同じ値である。
【0106】
また、
図18に示すように、段差面Hf5は、段差面Hf6および段差面Hf8のそれぞれと離間している。言い換えれば、X方向において、段差面Hf6と段差面Hf5の間には、段差面Hf11が配置されている。このため、段差面Hf5は、貫通孔THHからの距離が離れている。例えば、
図19に示す断面は、筐体HSの辺HSe1の中心と、辺HSe5の中心を結ぶ仮想線に沿って切断した断面である。したがって、段差面Hf5は、X方向において、二つの貫通孔THHの中間に位置している。言い換えれば、段差面Hf5は、筐体HSの辺HSe5の中点を含んでいる。このように、貫通孔THHからの距離が遠い位置において、
図19に示す距離D3の値が小さくなっていた場合であっても、
図14を用いて説明した外力EF1の影響は小さい。したがって、
図19に示す距離D3が小さい場合でも、基板CS1の損傷は発生し難い。
【0107】
また、
図18に示す貫通孔THHに近い位置に配置されている段差面Hf6では、
図16に示すように、基板CS1の上面CStと筐体HSの段差面Hf6との距離D1が大きくなっている。これにより、貫通孔THH(
図18参照)にネジBOL(
図14参照)を挿入し、締め込んだ場合でも、
図16に示す段差面Hf6の近傍から基板CS1の辺CSe3の近傍に印加される外力EF1(
図14参照)を分散させることができるので、基板CS1の損傷を抑制できる。
【0108】
また、上記では、
図16と
図19とを比較した構成について説明したが、
図16に示す段差面Hf6の周辺の構造と
図17に示す段差面Hf8の周辺の構造は、同様である。また、
図19に示す段差面Hf5の周辺の構造と
図20に示す段差面Hf7の周辺の構造は、同様である。したがって、全ての構成について、重複的に説明することは省略するが、
図16と
図20の比較、
図17と
図19の比較、あるいは、
図17と
図20の比較においても同様の関係が成り立つ。例えば、
図17と
図19を比較して判るように、本実施の形態の電子装置EA1は、
図17に示す基板CS1の上面CStと筐体HSの段差面Hf8との距離D2は、
図19に示す基板CS1の上面CStと筐体HSの段差面Hf5との距離D3より大きい。このため、貫通孔THH(
図18参照)にネジBOL(
図14参照)を挿入し、締め込んだ場合でも、
図17に示す段差面Hf8の近傍から基板CS1の辺CSe4の近傍に印加される外力EF1(
図14参照)を分散させることができるので、基板CS1の損傷を抑制できる。
【0109】
また例えば、
図16と
図20を比較して判るように、本実施の形態の電子装置EA1は、
図16に示す基板CS1の上面CStと筐体HSの段差面Hf6との距離D1は、
図20に示す基板CS1の上面CStと筐体HSの段差面Hf7との距離D4より大きい。このため、基板CS1を筐体HSの収容部PKT(
図18参照)に配置する際には、基板CS1の上面CStは、
図18に示す段差面Hf5および段差面Hf7の両方に支持される。このように、基板CS1を互いに離間した複数の位置で支持することにより、基板CS1の姿勢が安定する。言い換えれば、筐体HSの複数の段差面と、基板CS1の上面CStとがなす角度の制御が容易になる。このため、筐体HSの複数の段差面と、基板CS1の上面CStとは、略平行な状態(実質的に平行と見做せる程度の状態)で互いに対向するように配置される。この場合、
図11に示すように基板CS1の下面CSb側から視た平面視において、基板CS1の下面CSbの中心点と収容部PKTの中心点とは、ほぼ一致する。また、基板CS1の下面CSb側から視た平面視において、基板CS1と筐体HSとの間隔(
図16に示す距離P1、
図17に示す距離P2、
図19に示す距離P3、および
図20に示す距離P4)がほぼ同じ値になるので、接着材BD1の量のバラつきを低減できる。
【0110】
また、
図18に示す複数の段差面のうち、長辺方向に並ぶ段差面は、例えば
図21に示す構造になっている。
図21は、
図18のB−B線に沿った断面において、段差面と基板の関係を示す拡大断面図である。なお、
図21は、
図18の辺HSe5を持つ段差面の拡大断面図であるが、
図18に示す辺HSe6を持つ段差面の構造も同様なので、
図21では、辺HSe6を持つ段差面の符号も併せて付している。また、以下の説明においては、
図18の辺HSe5を持つ段差面の構造について説明するが、( )内に
図18に示す辺HSe6を持つ段差面の構造についての説明も併記する。
【0111】
図21に示すように、筐体HSは、X方向において、段差面Hf6と段差面Hf5(または段差面Hf7)の間に位置し、かつZ方向において接着材BD1を介して基板CS1の上面CStと対向する段差面Hf11(または段差面Hf13)を有する。また、基板CS1の上面CStと筐体HSの段差面Hf11(または段差面Hf13)との距離D5は、基板CS1の上面CStと筐体HSの段差面Hf5(または段差面Hf7)との距離D3(または距離D4)より大きい。また、
図21に示す例では、段差面Hf11(または段差面Hf13)は、段差面Hf6に連なっており、距離D5は距離D1と同じ値である。したがって、
図18に示す辺HSe5(または辺HSe6)を持つ複数の段差面のうち、短辺側の段差面Hf6に最も近い位置に配置されている段差面Hf11(または段差面Hf13)と基板CS1の上面CStとの間に、十分な量の接着材BD1が配置される。
【0112】
また、筐体HSは、X方向において、段差面Hf8と段差面Hf5(または段差面Hf7)の間に位置し、かつZ方向において接着材BD1を介して基板CS1の上面CStと対向する段差面Hf12(または段差面Hf14)を有する。また、基板CS1の上面CStと筐体HSの段差面Hf12(または段差面Hf14)との距離D6は、基板CS1の上面CStと筐体HSの段差面Hf5(または段差面Hf7)との距離D3(または距離D4)より大きい。また、
図21に示す例では、段差面Hf12(または段差面Hf14)は、段差面Hf8に連なっており、距離D6は距離D2と同じ値である。したがって、
図18に示す辺HSe5(または辺HSe6)を持つ複数の段差面のうち、短辺側の段差面Hf8に最も近い位置に配置されている段差面Hf12(または段差面Hf14)と基板CS1の上面CStとの間に、十分な量の接着材BD1が配置される。
【0113】
<電子装置の製造方法>
次に、
図1〜
図21を用いて説明した電子装置EA1の製造工程について、
図22に示す工程フローに沿って説明する。
図22は、
図13に示す電子装置の組立てフローを示す説明図である。
【0114】
<基板準備>
まず、
図22に示す基板準備工程では、
図23に示す基板CS1を準備する。
図23は、
図22に示す基板準備工程で準備する基板の断面図である。なお、
図23は、
図11に示すA−A線に沿った断面に対応している。
【0115】
本工程で準備する基板CS1は、複数の半導体チップSC1が搭載されるチップ搭載面である上面(表面、主面、面)CStと、上面CStの反対側に位置する下面(裏面、主面、面)CSbとを有する。基板CS1は、セラミック材料から成るセラミック基板である。
【0116】
また、基板CS1の上面CStおよび下面CSbには、複数の金属パターンMPが接合されている。これら複数の金属パターンMPは、例えば、銅(Cu)膜の表面にニッケル(Ni)膜が積層された積層膜であって、基板CS1の上面CStまたは下面CSbに銅膜が直接的に接合されている。アルミナなどのセラミックからなる板材に銅膜を接合する場合、共晶反応を利用して接合する。また、銅膜の表面にニッケル膜を積層する方法は、例えば電気メッキ法を用いることができる。
【0117】
なお、複数の金属パターンMPの種類やレイアウトは、既に説明した通りなので、重複する説明は省略する。
【0118】
<チップ搭載>
次に、
図22に示すチップ搭載工程では、
図24に示すように、基板CS1の金属パターンMP上に、複数の半導体チップSC1を搭載する。
図24は、
図23に示す基板上に複数の半導体チップを搭載した状態を示す断面図である。
【0119】
本工程では、
図13を用いて説明したように、複数の金属パターンMPのうち、ハイサイド側の電位E1(
図3参照)が供給される金属パターンMPHには、複数(本実施の形態では3個)の半導体チップSCHおよび複数(本実施の形態では3個)の半導体チップSC2が搭載される。また、複数の金属パターンMPのうち、交流電力の出力端子に接続される金属パターンMPU、MPV、MPWには、それぞれ1個の半導体チップSC1および1個の半導体チップSC2が搭載される。また、複数の金属パターンMPのうち、ロウサイド側の電位E2(
図3参照)が供給される金属パターンMPLには半導体チップSC1は搭載されない。また、複数の金属パターンMPのうち、入出力用の端子LDを接続するための複数の金属パターンMPTには、半導体チップSC1、SC2は搭載されない。
【0120】
また、
図24に示すように、本工程では、複数の半導体チップSC1、SC2(
図13参照)のそれぞれは、半導体チップSC1、SC2の裏面SCbと金属パターンMPの上面MPtを対向させた状態で、所謂フェイスアップ実装方式で搭載される。また、半導体チップSC1の裏面SCbには、コレクタ電極CP(
図5参照)、半導体チップSC2の裏面SCbには、カソード電極CDP(
図8参照)が形成されており、コレクタ電極CPやカソード電極CDPと金属パターンMPとを電気的に接続するため、半導体チップSC1、SC2は導電性接着材(ダイボンド材、導電性部材、接続部材、接合材)SDを介して搭載される。本実施の形態では、導電性接着材SDとして例えば半田を利用する例を取り上げて説明する。
【0121】
半田である導電性接着材SDを介して半導体チップSC1、SC2(
図13参照)を搭載する方法は、以下のように行う。まず、半導体チップの搭載予定領域に、ペースト状の半田を塗布する。このペースト状の半田には、半田成分と、フラックス成分が含まれる。次に、複数の半導体チップSC1、SC2(
図13参照)を準備して(
図22に示す半導体チップ準備工程)それぞれをペースト状の半田に押し付ける。複数の半導体チップSC1がペースト状の半田を介して金属パターンMP上に仮接着された状態で、半田に対してリフロー処理(加熱処理)を施す。リフロー処理は、例えば真空状態(減圧状態)の加熱炉内で実施される(このようなリフロー処理は、真空リフロー処理と呼ばれる)。このリフロー処理により、半田が溶融し、一方は金属パターンMPに接合され、他方が半導体チップSC1、SC2の裏面SCbの電極に接合される。そして半田を冷却することで、硬化させると、半導体チップSC1のそれぞれが金属パターンMP上に固定される。また、この後、硬化した導電性接着材SDの周囲にフラックス成分の残渣が残っている場合があるので、基板CS1を洗浄して残渣を除去する。
【0122】
なお、半導体チップSC1、SC2の他、例えばコンデンサなど、半導体チップSC1以外のチップ部品(電子部品、機能性素子)を搭載する場合には、本工程において、一括して搭載することができる。
【0123】
また、上記は、チップ搭載工程の一例であり、種々の変形例が適用可能である。例えば、非破壊検査により、半導体チップSC1、SC2と金属パターンMPの接合部分の状態を検査しても良い。
【0124】
<ワイヤボンド>
次に、
図22に示すワイヤボンド工程では、
図25に示すように、半導体チップSC1と金属パターンMPとをワイヤ(導電性部材)BWを介して電気的に接続する。
図25は、
図24に示す半導体チップにワイヤを接続した後の状態を示す断面図である。
【0125】
図13を用いて説明したように、本工程では、ハイサイド用の半導体チップSCHのエミッタ電極EP(
図4参照)は複数のワイヤBWを介して金属パターンMPU、金属パターンMPV、および金属パターンMPWのうちのいずれかに接続される。また、ロウサイド用の半導体チップSCLのエミッタ電極EPは、複数のワイヤBWを介して金属パターンMPLに接続される。また、ハイサイド用の半導体チップSCHおよびロウサイド用の半導体チップSCLのそれぞれが有するゲート電極GP(
図4参照)のそれぞれは、ワイヤBWを介して金属パターンMPTと電気的に接続される。
【0126】
また、ハイサイド用の半導体チップSC2のアノード電極ADP(
図7参照)は複数のワイヤBWを介して金属パターンMPU、金属パターンMPV、または金属パターンMPWのいずれか一つ、および出力用の金属パターンMPTに接続される。また、ロウサイド用の半導体チップSC2のアノード電極ADPは複数のワイヤBWを介して金属パターンMPLに接続される。
【0127】
図13に示す複数のワイヤBWは、金属ワイヤであって、本実施の形態では例えばアルミニウムから成る。ただし、ワイヤBWの材料には種々の変形例があって、アルミニウムの他、金、あるいは銅を用いることもできる。なお、本実施の形態では、半導体チップSC1と金属パターンMPとを電気的に接続する部材としてワイヤを用いる例を示しているが、変形例としては、帯状に形成された金属(例えばアルミリボン)を用いることもできる。またあるいは、パターニングされた金属板(銅クリップ)を用いて、半田を介して接続することもできる。
【0128】
また、上記は、ワイヤボンド工程の一例であり、種々の変形例が適用可能である。例えば、ワイヤBWと被接合部との接合部分の状態を検査しても良い。
【0129】
<端子搭載>
次に、
図22に示す端子搭載工程では、
図26に示すように、複数の金属パターンMP上に端子LDを搭載する。
図26は、
図25に示す基板上に複数の端子を搭載した状態を示す断面図である。端子LDは、複数の金属パターンと、図示しない外部機器とを電気的に接続するためのリード端子であって、細長く伸びる一方の端部を金属パターンMPに接続する。
図26に示す例では、複数の端子LDのそれぞれは、導電性接着材SDを介して金属パターンMP上に搭載される。
【0130】
また、
図13に示す例では、複数の金属パターンMPのうち、ハイサイド側の電位が供給される金属パターンMPH、およびロウサイド側の電位が供給される金属パターンMPLには、それぞれ長手方向の両端(短辺である辺CSe3側および辺CSe4側)に端子LDが搭載される。また、複数の金属パターンMPTのそれぞれには、一本ずつ端子LDが搭載される。また、金属パターンMPU、金属パターンMPV、および金属パターンMPWのそれぞれには、端子LDは直接的には接続されない。
【0131】
なお、
図26では図示を省略したが、多数の端子LDを一括して接続する場合、複数の端子LDを保持する図示しない治具を用いることが好ましい。例えば、複数の端子LDが図示しないフレーム枠を介して互いに連結されていれば、治具を用いてフレーム枠を保持することにより、複数の端子LDを一括して保持することができる。この場合、複数の端子LDを接続した後、フレーム枠を切断することにより、複数の端子LDのそれぞれが分離される。
【0132】
<筐体取付>
次に、
図22に示す筐体取付工程では、
図27に示すように、基板CS1の周囲を囲むように、筐体HSを取り付け、接着材BD1を介して基板CS1と筐体HSを固定する。
図27は、
図26に示す基板に、筐体を取り付ける工程を模式的に示す断面図である。本工程では、基板CS1の上面CStの周縁部を覆うように筐体HSの支持部HSFを接着固定する。基板CS1の上面CStの周縁部と筐体HSの支持部HSFとは、接着材BD1を介して接着固定される。
【0133】
また、本工程では、
図27に示すように、Z方向において、基板CS1の上下を反転させた状態で基板CS1を筐体HSに取り付ける方法が好ましい。すなわち、
図27に示す例では、まず筐体HSの段差面Hf5、Hf7が上方を向いた状態で、筐体HSを支持台STGに固定する。次に、筐体HSの段差面Hf5、Hf7上に、接着材BD1を塗布する。なお、
図27では、代表的に、筐体HSの段差面Hf5、Hf7上に、接着材BD1が塗布された状態を示しているが、本工程では、
図18に示す段差面Hf5、Hf6、Hf7、Hf8、Hf11、Hf12、Hf13、およびHf14のそれぞれの上に接着材BD1を塗布する。
【0134】
次に、
図27に白抜きの矢印を付して模式的に示すように、基板CS1の上面CStを筐体HSの支持部HSFに向かって押し付ける。これにより、各段差面に塗布された
接着材BD1が変形し、基板CS1と筐体HSの段差面の間において広がる。この状態で接着材BD1を硬化させると、基板CS1の上面CStの周縁部と筐体HSの支持部HSFの段差面とが、接着材BD1を介して接着固定される。
【0135】
本実施の形態の方法によれば、各段差面が上方を向いた状態で接着材BD1を塗布するので、接着材BD1の粘度が低い場合であっても、接着材BD1が周囲に広がり難い。言い換えれば、接着材BD1の材料選択の自由度が高い。また、硬化前の接着材BD1の粘度が低ければ、基板CS1を筐体HSに押し付けた時に、接着材BD1が濡れ広がり易くなる。この場合、
図18に示す各段差面と基板CS1との間に隙間やボイドが残留し難い。つまり、本実施の形態によれば、基板CS1と筐体HSとの間に介在する接着材BD1の量を制御し易い。
【0136】
図14を用いて説明したように、電子装置EA1を実装する時、接着材BD1は筐体HSから基板CS1に伝達される外力EF1を分散する機能を備えている。そして、基板CS1と筐体HSとの間に介在する接着材BD1の量を制御することにより、基板CS1の損傷を安定的に抑制することができる。
【0137】
<封止>
次に、
図22に示す封止工程では、
図12に示すように基板CS1および筐体HSとに囲まれた空間内に封止材MGを供給し、複数の端子LDのそれぞれの一部分、複数の半導体チップSC1、および複数のワイヤBWを封止する。本実施の形態では、
図12に示す蓋部(蓋材、キャップ)HSTが取り付けられていない状態で封止工程を実施する。また、
図27に示すように筐体HSの支持部HSFの内側には開口部が設けられている。このため、本実施の形態では開口部からゲル状の封止材MGを充填し、
図13に示す複数の半導体チップSC1、SC2、および複数のワイヤBWを封止する。
【0138】
また、本実施の形態のように、比較的に流動性が高いゲル状の封止材MGを用いる場合、筐体HSの支持部HSFと基板CS1との接着部分(接着材BD1と基板CS1や筐体HSとの接触界面)に隙間があると、封止材MGが隙間から漏れる可能性もある。したがって、封止材MGの漏れを防止する観点からは、基板CS1の上面CStと
図18に示す各段差面との間隔は小さい方が好ましい。したがって、
図18に示す各段差面のうち、基板CS1の上面CStとの間隔が大きい段差面は、
図14および
図15を用いて説明した、基板CS1の損傷に対する影響が小さい部分では、例えば
図19に示す距離D3や
図20に示す距離D4のように、段差面と基板CS1との間隔を小さくすることが好ましい。
【0139】
また、上記したように、筐体取付工程において、硬化前の接着材BD1の粘度が低ければ、接着材が濡れ広がり易くなるので、筐体HSの支持部HSFと基板CS1との接着部分(接着材BD1と基板CS1や筐体HSとの接触界面)に隙間が生じ難くなる。
【0140】
<蓋部取付>
次に、
図22に示す封止工程では、
図12に示すように筐体HSの上部に蓋部HSTを取り付け、封止材MGで封止された領域を覆う。封止材MGで封止された領域を蓋部HSTで覆うことにより、筐体HSの内部の空間への異物の侵入などを防止することができる。筐体HSの蓋部HSTには複数の貫通孔が形成されており、複数の端子LDは複数の貫通孔(図示は省略)にそれぞれ挿入される。
【0141】
蓋部HSTと支持部HSFは、例えば図示しない接着材を介して固定される。あるいは、蓋部HSTは、接着材を介さずに、支持部HSFの収容部PKT(
図12参照)上に載置されていても良い。支持部HSF上において、蓋部HSTの位置がずれなければ、完全に固定されていなくても、筐体HSの内部の空間への異物の侵入は防ぐことができる。
【0142】
以上の各工程により、
図3〜
図21を用いて説明した電子装置EA1が得られる。その後、外観検査や電気的試験など、必要な検査、試験を行い、出荷される。また、
図14に示す基板BP1に実装される。
図22に対する変形例として、
図14に示す基板BP1に実装する工程までを含めて電子装置の製造方法として考えることもできる。
【0143】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。なお、上記実施の形態中でもいくつかの変形例について説明したが、以下では、上記実施の形態で説明した変形例以外の代表的な変形例について説明する。
【0144】
<変形例1>
例えば、上記実施の形態では、
図18に示す辺HSe5に沿った段差面と辺HSe6に沿った段差面の構造例について、
図21を用いて説明したが、種々の変形例がある。
図28および
図29のそれぞれは、
図21に対する変形例を示す拡大断面図である。
【0145】
図28に示す電子装置EA2および
図29に示す電子装置EA3のそれぞれは、筐体HSの長手方向に沿って延びる段差面の形状が
図21に示す電子装置EA1と相違する。
【0146】
図28に示す電子装置EA2が備える筐体HSは、X方向において段差面Hf5(または段差面Hf7)と段差面Hf6の間に位置し、かつ、Z方向において接着材BD1を介して基板CS1の上面CStと対向する段差面Hf11(または段差面Hf13)を有している。段差面Hf11(または段差面Hf13)は、段差面Hf5(または段差面Hf7)と段差面Hf6とを接続するようにX方向に延びる曲面である。
【0147】
また、筐体HSは、X方向において、段差面Hf8と段差面Hf5(または段差面Hf7)の間に位置し、かつZ方向において接着材BD1を介して基板CS1の上面CStと対向する段差面Hf12(または段差面Hf14)を有する。段差面Hf12(または段差面Hf14)は、段差面Hf5(または段差面Hf7)と段差面Hf8とを接続するようにX方向に延びる曲面である。
【0148】
電子装置EA2の場合、距離D5および距離D6の値が徐々に変化する。言い換えれば、段差面Hf6(または段差面Hf8)から段差面Hf5(または段差面Hf7)に至る経路において、距離D5(または距離D6)が急激に変化する変曲点がない。このため、筐体HSのフランジ部FLG(
図14参照)が変形した時に、局所的に強い力が加わる箇所が生じ難い。
【0149】
なお、図示は省略するが、
図28に対する変形例として、段差面Hf11、Hf12、Hf13、およびHf14のそれぞれが段差面Hf5と平行な基準面に対して傾斜する傾斜面であっても良い。この場合、
図21に示す電子装置EA1と比較すると、筐体HSのフランジ部FLG(
図14参照)が変形した時に、局所的に強い力が加わる箇所が生じ難い。ただし、傾斜面と水平面が交差する部分では、他の部分よりも強い力が加わる可能性があるので、
図28に示すように曲面である方がより好ましい。
【0150】
また、図示は省略するが、
図21に示す電子装置EA1の場合と同様に、
図28に示す電子装置EA2の場合にも、段差面Hf5(または段差面Hf7)は、X方向において、二つの貫通孔THH(
図18参照)の中間に位置している。言い換えれば、
図18に示す段差面Hf5(または段差面Hf7)は、筐体HSの辺HSe5(または辺HSe6)の中点を含んでいる。
【0151】
また、
図29に示す電子装置EA3が備える筐体HSは、Y方向(
図18参照)において辺HSe5(
図18参照)と基板CS1の辺CSe1(
図18参照)の間に位置し、かつ、Z方向において接着材BD1を介して基板CS1の上面CStと対向する複数の段差面Hf5、および複数の段差面Hf5の間に挟まれるように配置される段差面(面、基板保持面)Hf15を有している。また、筐体HSは、Y方向(
図18参照)において辺HSe6(
図18参照)と基板CS1の辺CSe2(
図18参照)の間に位置し、かつ、Z方向において接着材BD1を介して基板CS1の上面CStと対向する複数の段差面Hf7、および複数の段差面Hf7の間に挟まれるように配置される段差面(面、基板保持面)Hf16を有している。また、基板CS1の上面CStと筐体HSの段差面Hf15(または段差面Hf16)との間隔である距離D7は、基板CS1の上面CStと筐体HSの段差面Hf5(または段差面Hf7)との間隔である距離D3(または距離D4)より大きい。
【0152】
言い換えれば、電子装置EA3の場合、筐体HSの長辺に沿って設けられた段差面において、複数の箇所に凸形状の部分(段差面Hf5または段差面Hf7)が設けられている。この場合、上記した筐体取付工程において、複数箇所の凸形状の部分により基板CS1が支持されるので、基板CS1の姿勢が安定する。言い換えれば、筐体HSの複数の段差面と、基板CS1の上面CStとがなす角度の制御が容易になる。
【0153】
図29に示すように、筐体HSは、X方向において、複数の段差面Hf5(または段差面Hf7)のうち、最も段差面Hf6に近い位置にある段差面Hf5(または段差面Hf7)と、段差面Hf6との間に位置し、かつZ方向において接着材BD1を介して基板CS1の上面CStと対向する段差面Hf11(または段差面Hf13)を有する。また、基板CS1の上面CStと筐体HSの段差面Hf11(または段差面Hf13)との距離D5は、基板CS1の上面CStと筐体HSの段差面Hf5(または段差面Hf7)との距離D3(または距離D4)より大きい。また、
図29に示す例では、段差面Hf11(または段差面Hf13)は、段差面Hf6に連なっており、距離D5は距離D1と同じ値である。したがって、
図18に示す辺HSe5(または辺HSe6)を持つ複数の段差面のうち、短辺側の段差面Hf6に最も近い位置に配置されている段差面Hf11(または段差面Hf13)と基板CS1の上面CStとの間に、十分な量の接着材BD1が配置される。
【0154】
また、筐体HSは、X方向において、複数の段差面Hf5(または段差面Hf7)のうち、最も段差面Hf8に近い位置にある段差面Hf5(または段差面Hf7)と、段差面Hf8との間に位置し、かつZ方向において接着材BD1を介して基板CS1の上面CStと対向する段差面Hf12(または段差面Hf14)を有する。また、基板CS1の上面CStと筐体HSの段差面Hf12(または段差面Hf14)との距離D6は、基板CS1の上面CStと筐体HSの段差面Hf5(または段差面Hf7)との距離D3(または距離D4)より大きい。また、
図29に示す例では、段差面Hf12(または段差面Hf14)は、段差面Hf8に連なっており、距離D6は距離D2と同じ値である。したがって、
図18に示す辺HSe5(または辺HSe6)を持つ複数の段差面のうち、短辺側の段差面Hf8に最も近い位置に配置されている段差面Hf12(または段差面Hf14)と基板CS1の上面CStとの間に、十分な量の接着材BD1が配置される。
【0155】
また、
図29に示す段差面Hf15(または段差面Hf16)は、筐体HSの長辺に沿って設けられた段差面の中間地点に設けられている。言い換えれば、段差面Hf15(または段差面Hf16)は、
図18に示す筐体HSの辺HSe5(または辺HSe6)の中点を含んでいる。この場合、辺HSe5(または辺HSe6)の中点を挟んで両側に凸形状の部分が配置されることになるので、基板CS1の姿勢を安定させ易い。
【0156】
また、
図29に示す例では、段差面Hf15(または段差面Hf16)の距離D7は距離D1と同じ値である。したがって、Z方向において、段差面Hf15(または段差面Hf16)は、
図12に示す半導体チップSC1の表面SCtと裏面SCbの間の高さに位置する。
【0157】
<変形例2>
また例えば、上記実施の形態では、スイッチング素子を構成するトランジスタQ1としてIGBTを使用する例について説明した。しかし、変形例として、インバータ回路のスイッチング素子として、パワーMOSFETを使用しても良い。パワーMOSFETの場合、トランジスタを構成する半導体素子内に、寄生ダイオードであるボディダイオードが形成される。このボディダイオードは、
図9に示すダイオード(フリーホイールダイオード)FWDの機能を果たす。このため、パワーMOSFETを備えた半導体チップを使用すれば、その半導体チップの内部にボディダイオードが内蔵される。したがって、パワーMOSFETを用いる場合には、一つのスイッチング素子として一つの半導体チップを用いれば良い。
【0158】
また、インバータ回路のスイッチング素子として、パワーMOSFETを使用する場合、上記実施の形態でした説明において、エミッタと記載した部分をソースと読み替え、コレクタと記載した部分をドレインと読み替えて適用することができる。このため、重複する説明は省略する。
【0159】
<変形例3>
また例えば、上記実施の形態では、一例として電子装置EA1の各構成部材の寸法例を記載したが、上記実施の形態で説明した例の他、種々の変形例が適用できる。例えば、上記実施の形態では、
図11に示す貫通孔THHの開口径(円形の開口部の直径)を例示して、開口径が、筐体HSの辺HSe1と基板CS1の辺CSe1の距離より大きい実施態様について説明した。また上記実施の形態では、一方の貫通孔THHの縁から、基板CS1の辺CSe3、CSe4までの最短距離は、貫通孔THHの開口径より小さい実施態様について説明した。電子装置EA1の固定強度を向上させる観点からは、
図14に示すネジBOLの径を大きくすることが好ましい。このため、ネジBOLの挿入位置を基板CS1に近づけると上記の関係は成り立ち易くなり、これにより、基板CS1が損傷し易くなる。しかし、貫通孔THHの開口径が小さい電子装置の場合であっても、上記実施の形態や変形例で説明した技術を適用することができる。
【0160】
<変形例4>
また、例えば、上記の通り種々の変形例について説明したが、上記で説明した各変形例同士を組み合わせて適用することができる。
【0161】
また、上記実施の形態で説明した電子装置およびその製造方法について技術的思想を抽出すれば、下記のように表現することができる。
【0162】
〔付記1〕
(a)複数の半導体チップが搭載され、金属から成る第1パターンが形成された第1表面と、前記第1表面の反対側であり、かつ、金属から成る第2パターンが形成された第1裏面を有する第1基板を準備する工程、
(b)前記第1基板の周縁部を囲むように、接着材を介してケースを固定する工程、
(c)前記(b)工程の後、前記ケース内に封止材を充填し、前記複数の半導体チップを封止する工程、
(d)前記(c)工程の後、前記第1基板の前記第1裏面と第2基板とが熱伝導材を介して対向した状態で、前記ケースを前記第2基板にネジ止め固定する工程、
を有し、
前記第1基板の前記第1裏面側から視た平面視において、前記ケースは、第1方向に延びる第1長辺と、前記第1方向に延び、かつ、前記第1長辺の反対側に位置する第2長辺と、前記第1方向に延び、かつ、前記第1長辺と前記第2長辺の間に位置する第3長辺と、前記第1方向に延び、かつ、前記第3長辺と前記第2長辺の間に位置する第4長辺と、前記第1方向と交差する第2方向に沿って延びる第1短辺と、前記第2方向に延び、かつ、前記第1短辺の反対側に位置する第2短辺と、前記第2方向に延び、かつ、前記第1短辺と前記第2短辺の間に位置する第3短辺と、前記第2方向に延び、かつ、前記第3短辺と前記第2短辺の間に位置する第4短辺と、を有し、
前記第1基板は、前記第1方向に延び、かつ、前記第1長辺と前記第3長辺の間に位置する第5長辺と、前記第5長辺に沿って延び、かつ、前記第2長辺と前記第4長辺の間に位置する第6長辺と、前記第2方向に沿って延び、かつ、前記第1短辺と前記第3短辺の間に位置する第5短辺と、前記第5短辺に沿って延び、かつ、前記第2短辺と前記第4短辺の間に位置する第6短辺と、を有し、
前記ケースは、平面視において前記第1短辺と前記第1基板の前記第5短辺の間に位置する第1面と、前記第1基板の前記第1表面および前記第1裏面のうち一方から他方に向かう方向である第3方向において前記第1面の反対側にある第2面と、平面視において前記第2短辺と前記第1基板の前記第6短辺の間に位置する第3面と、前記第3方向において前記第3面の反対側にある第4面と、平面視において前記第3長辺と前記第5長辺の間に位置し、かつ、前記第3方向において前記第1基板の前記第1表面と前記接着材を介して対向する第5面と、平面視において前記第3短辺と前記第5短辺の間に位置し、かつ、前記第3方向において前記接着材を介して前記第1基板の前記第1表面と対向する第6面と、を有し、
前記第1方向において、前記第1短辺と前記第3短辺の間には、前記第1面または前記第2面のうち一方から他方に達し、前記(d)工程でネジが挿入される第1孔が形成され、
前記第1方向において、前記第2短辺と前記第4短辺の間には、前記第3面または前記第4面のうち一方から他方に達し、前記(d)工程でネジが挿入される第2孔が形成され、
前記第3方向において、前記ケースの前記第1面は、前記第1基板の前記第1表面と前記第2パターンの裏面の間の高さに位置し、
前記第1基板の前記第1表面と前記ケースの前記第6面との間隔は、前記第1基板の前記第1表面と前記ケースの前記第5面との間隔より大きい、電子装置の製造方法。