特許第6673820号(P6673820)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6673820マイクロ流体デバイスの段階的ロードのための毛細管バリア
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6673820
(24)【登録日】2020年3月9日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】マイクロ流体デバイスの段階的ロードのための毛細管バリア
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/00 20060101AFI20200316BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20200316BHJP
【FI】
   G01N1/00 101G
   G01N37/00 101
【請求項の数】34
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-502964(P2016-502964)
(86)(22)【出願日】2014年3月14日
(65)【公表番号】特表2016-512886(P2016-512886A)
(43)【公表日】2016年5月9日
(86)【国際出願番号】US2014029017
(87)【国際公開番号】WO2014153092
(87)【国際公開日】20140925
【審査請求日】2017年3月14日
(31)【優先権主張番号】61/785,255
(32)【優先日】2013年3月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503115205
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】サンティアゴ、 ジュアン、 ジー.
(72)【発明者】
【氏名】マーシャル、 ルイス、 エー.
(72)【発明者】
【氏名】ロガクス、 アニータ
【審査官】 北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2002−527250(JP,A)
【文献】 特表2012−516414(JP,A)
【文献】 HOSOKAWA Kazuo et al.,Power-free poly(dimethylsiloxane) microfluidic devices for gold nanoparticle-based DNA analysis,Lab on a Chip,2004年11月 3日,4/3,181-185
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00− 1/44
G01N 37/00
B81B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体システムの1つ以上の流体チャネル内で第1の液体と第2の液体とを相互作用させる方法であって、前記方法は、
前記流体チャネルのうちの第1の流体チャネルの終端部に位置する流体界面領域に向かって前記第1の液体が流れるための、前記第1の流体チャネルに沿った経路を提供し、
前記流体界面領域内に配置されて、毛細管力を使用して前記第1の液体のメニスカスを前記流体界面領域に位置付けるための毛細管バリアを提供し、
前記第2の液体が前記流体界面領域に向かって流れるための、前記流体チャネルのうちの第2の流体チャネルに沿った経路を提供し、
前記第2の流体チャネルの終端部に連結された脱出経路であってそれを通して流体が前記流体界面領域から脱出し得る脱出経路を提供し、
前記脱出経路は、ガス流出ポートに接続されると共に、前記流体の体積流量を制限するように構成及び配置された領域を含み、
前記第2の液体が前記第2の流体チャネル内を前記流体界面領域に向かって流れる間に、前記脱出経路及び前記ガス流出ポートを介してガス圧力を解放し、
前記第1の液体の流れが前記毛細管バリアによって阻止されている間に、前記第1の液体と前記第2の液体との界面を形成すること
を含む、方法。
【請求項2】
前記第2の液体は空気圧力差によって前記流体界面領域に向けて動かされ、前記第1の液体が流れるための経路及び前記第2の液体が流れるための経路は、装置であって、回路を含み、かつ、前記第1の液体と前記第2の液体との間の相互作用を示すデータを受信するように構成及び配置された装置に接続された、マイクロ流体チップによって支持されるマイクロ流体チャネルであり、ここで、前記脱出経路は、前記ガス流出ポートによってガスの流出が可能にされる経路を通した流体損失を軽減するように構成及び配置される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記流体界面領域の上流部分に位置すると共に、前記第1の液体が前記流体界面領域に向かって流れるための経路の壁上に含まれる、柱の形態の突起又はランプの形態の突起を更に提供する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の液体が流れるための経路及び前記第2の液体が流れるための経路はマイクロ流体チャネルであり、前記マイクロ流体チャネルの交点は前記ガス流出ポートの近くでジャンクションを形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記毛細管バリアが前記第1の液体の流れを阻止した状態の間、前記第2の液体が前記流体界面領域に向かって流れている間に、前記流体界面領域から前記ガス流出ポートを介してガス圧力を解放する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記毛細管バリアは、前記第1の液体が前記流体界面領域に向かって移動している間に、前記第1の液体の流れを阻止し、ここで、前記毛細管バリアは、前記第1の液体を前記流体界面領域に向かって移動させる毛細管力により生じる圧力差のための及びそれに対するメニスカスバリアを前記第1の液体に提供するように構成及び配置される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の液体及び前記第2の液体のうちの少なくとも1つは、DNA、RNA、蛋白質、及び細胞のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記1つ以上の流体チャネルは、装置に接続されたマイクロ流体チップ上に配置され、
前記装置は、
回路を含み、
前記第1の液体と前記第2の液体との間の相互作用を示すデータを受信し、
前記第1の液体及び前記第2の液体のうちの少なくとも1つ内のDNA、RNA、蛋白質、及び細胞のうちの1つ以上の定量化及び品質管理のマイクロ流体分析を実行する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記1つ以上の流体チャネルは、装置に接続されたマイクロ流体チップ上に配置され、
前記装置は、
回路を含み、
前記第1の液体と前記第2の液体との間の相互作用を示すデータを受信し、
前記第1の液体及び前記第2の液体のうちの少なくとも1つ内のDNAフラグメントの電気泳動の分析、分離の分析又は抽出の分析を実行する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記1つ以上の流体チャネルは、装置に接続されたマイクロ流体チップ上に配置され、
前記装置は、
回路を含み、
前記第1の液体と前記第2の液体との間の相互作用を示すデータを受信し、
前記第1の液体及び前記第2の液体のうちの少なくとも1つ内の標的核酸濃縮を分析するように構成及び配置される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
第1の液体を流体界面領域に向けて案内するよう構成及び配置された第1のマイクロ流体チャネル又はリザーバと、第2の液体を前記流体界面領域に向けて案内するよう構成及び配置された第2のマイクロ流体チャネルとを含み、前記第1のマイクロ流体チャネルの前記第1の液体の進行方向における終端部と、前記第2のマイクロ流体チャネルの前記第2の液体の進行方向における終端部又は終端部近傍とが連結された、流体システムと、
前記第1のマイクロ流体チャネルの前記終端部に配置されて、毛細管力を使用して前記第1の液体のメニスカスを前記流体界面領域に位置付けるように構成された、毛細管バリアであって、少なくとも部分的に断面積の変化によって画定され、前記変化は前記流体界面領域において前記第1の液体と前記第2の液体との界面が形成されるまで前記第1の液体の流れを阻止するのに十分である、毛細管バリアと、
前記第2のマイクロ流体チャネルの終端部に連結されると共に流体の体積流量を制限するための領域を含む脱出経路であってそれを通して流体が前記流体界面領域から脱出し得る脱出経路と
を備え装置。
【請求項12】
前記第1の液体及び前記第2の液体は真空を使用せずにロードされる、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記第1のマイクロ流体チャネル及び前記第2のマイクロ流体チャネルはポリジメチルシロキサン(PDMS)から形成される、請求項11に記載の装置。
【請求項14】
前記第1のマイクロ流体チャネル及び前記第2のマイクロ流体チャネルはそれぞれ疎水性表面を含む、請求項11に記載の装置。
【請求項15】
前記断面積の変化は、前記流体界面領域において前記第1の液体の流れを阻止する表面力をもたらす、請求項11に記載の装置。
【請求項16】
毛細管構造を含むマイクロ流体チップと、
前記第1の液体と前記第2の液体との間の相互作用を示すデータを受信するように、かつ前記第1の液体及び前記第2の液体のうちの少なくとも1つ内のDNA、RNA、蛋白質、及び細胞のうちの1つ以上の定量化及び品質管理のマイクロ流体分析を実行するように構成及び配置される回路と、
を更に含む、請求項11に記載の装置。
【請求項17】
毛細管構造を含むマイクロ流体チップと、
前記第1の液体と前記第2の液体との間の相互作用を示すデータを受信するように、かつ前記第1の液体及び前記第2の液体のうちの少なくとも1つ内のDNAフラグメントの電気泳動の分析、分離の分析又は抽出の分析を実行するように構成及び配置される回路と、
を更に含む、請求項11に記載の装置。
【請求項18】
毛細管構造を含むマイクロ流体チップと、
前記第1の液体と前記第2の液体との間の相互作用を示すデータを受信するように、かつ、前記第1の液体及び前記第2の液体のうちの少なくとも1つ内の標的核酸の濃縮の分析を実行するように構成及び配置される回路と、
を更に含む、請求項11に記載の装置。
【請求項19】
前記第1の液体の流れが阻止されている間にガス圧力を解放するように構成及び配置されたガス流出ポートを含む、請求項11に記載の装置。
【請求項20】
前記脱出経路は、前記毛細管バリアよりも前記第2のマイクロ流体チャネル側に配置されている、請求項11に記載の装置。
【請求項21】
前記脱出経路は、前記第1の液体の流れが阻止されている間にガス圧力を解放するように構成及び配置されたガス流出ポートに接続されている、請求項11に記載の装置。
【請求項22】
前記断面積の変化は、前記断面積の拡張である、請求項11に記載の装置。
【請求項23】
前記断面積の変化は、前記断面積の実効的なチャネル寸法が減少する領域と、断面積が拡張する領域とを含み、前記断面積が拡張する領域は、前記流体界面領域に向かって流れる前記第1の液体の流れを阻止するのに十分である、請求項11に記載の装置。
【請求項24】
前記毛細管バリアは、前記流体界面領域の上流において前記第1のマイクロ流体チャネルの壁上に含まれる、柱の形態の突起を含む、請求項11に記載の装置。
【請求項25】
前記脱出経路は、低容量チャネル、又は狭窄チャネルを含む、請求項11に記載の装置。
【請求項26】
前記流体の体積流量を制限するための領域は、前記断面積の拡張を含む、請求項20に記載の装置。
【請求項27】
前記脱出経路は、前記脱出経路の前記断面積の寸法を減少させるように構成及び配置された毛細管バリア構造を含む、請求項11に記載の装置。
【請求項28】
前記流体界面領域から前記脱出経路を通して脱出し得る前記流体は、ガスである、請求項11に記載の装置。
【請求項29】
前記ガス流出ポートは、前記第1の液体の流れが阻止されている間に空気の解放を可能にするように構成及び配置される、請求項19に記載の装置。
【請求項30】
1つ以上の流体チャネル内で第1の液体と第2の液体とを相互作用させる方法であって、前記方法は、
前記流体チャネルのうちの第1の流体チャネルの終端部に位置する流体界面領域に向かって前記第1の液体が流れるための、前記第1の流体チャネルに沿った経路を提供し、
前記流体界面領域内に配置されて、毛細管力を使用して前記第1の液体のメニスカスを前記流体界面領域に位置付けるための毛細管バリアを提供し、
前記第2の液体が前記流体界面領域に向かって流れるための、前記流体チャネルのうちの第2の流体チャネルに沿った経路を提供し、
前記第2の流体チャネルの終端部に連結されて脱出流体を前記第1及び第2の液体の間の領域から出すと共に、前記脱出流体の体積流量を制限するための脱出経路を提供し、
前記第1の流体チャネル内に、前記毛細管バリアの作成を補助するための第1のバリア構造を提供すると共に、前記脱出経路内に、前記脱出流体の体積流量を制限するための第2のバリア構造を提供し、
前記毛細管バリアを使用して前記第1の液体の流れを阻止し、
前記第1の液体の流れが前記毛細管バリアによって阻止されている間に、前記第1の液体と前記第2の液体との界面を形成すること
を含む、方法。
【請求項31】
前記脱出経路に接続されたガス流出ポートを更に含み、ここで、前記第1の液体と前記第2の液体とは前記流体界面領域内で接触する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記脱出経路は、前記毛細管バリアよりも前記第2の流体チャネル側に配置されている、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
前記毛細管バリアは、前記流体界面領域の上流において前記第1の流体チャネルの壁上に含まれるランプの形態の突起を含む、請求項1又は請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記毛細管バリアは、前記流体界面領域の上流において前記第1のマイクロ流体チャネルの壁上に含まれるランプの形態の突起を含む、請求項11に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府の支援による研究及び開発
本発明は、国防高等研究計画局(Defense Advanced Research Projects Agency)によって授与された契約HR0011−12−C−0080の下で政府の支援を受けて行われた。米国政府は本発明における一定の権利を有する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ流体チップに複数の液体をロードすることは、多くの点で困難である。例えば、試料ポートが少数しかないことに基づくマイクロ流体チップへの制限されたアクセスにより、ロードは困難になり得る。加えて、チャネル寸法は100μmのオーダーの場合がある。そのような実装のためには表面力(surface forces)が重要になり得、なぜなら、水性液体は外部圧力によって駆動されない限り疎水性チャネル内に進行せず、複数の方向からチャネルがロードされる場合、泡が閉じ込められる可能性があるからである。マイクロ流体チップの特定の適用例は、複数の液体間の液体−液体界面を作成することを含む。これらの場合、ロードされる液体は、希少な細胞あるいは珍しいDNA又はRNA試料を含む液体などのように、入手可能性に限りがある可能性がある。従って、液体−液体界面を作成する場合の流体損失を最小にすることが望ましい。
【0003】
本開示の様々な態様は、試料液体の損失なしにマイクロ流体チャネル内に液体界面が作成されることを可能にするために提供される。これらの及びその他の態様に関連して、本開示は、1つ以上の流体チャネル内で第1の液体と第2の液体とを相互作用させるための装置及び方法に関する。そのような装置及び方法は、毛細管力を使用して第1の液体のメニスカスを流体界面領域に位置付ける毛細管バリアを含んでもよい。加えて、第2の液体のための脱出経路又はチャネルが、流体界面領域に向けた第2の液体の流れを可能にし、ここで、経路は流体が出るために設けられる。更に、脱出経路内に、脱出する流体の体積流量を制限するための手段が設けられる。
【0004】
本開示の特定の他の実施形態は、流体界面領域を有する毛細管構造内で第1の液体と第2の液体とを相互作用させるための装置及び方法に関する。そのような方法は、第1の液体を流体界面領域に向けて案内するための第1のマイクロ流体チャネルと、第2の液体を流体界面領域に向けて案内するための第2のマイクロ流体チャネルとを含む毛細管構造を提供することを含む。流体界面領域は、公称流体圧力において第1のマイクロ流体チャネルに沿って流体界面領域に向かって流れる第1の液体の流れを阻止するための、毛細管バリアを有する。毛細管バリアの上流部分は、第1の液体のためのメニスカスバリアを提供する。加えてこれらの方法は、第1の液体が、毛細管バリアが第1のマイクロ流体チャネル内の第1の液体の流れを阻止した状態になるまで、第1のマイクロ流体チャネル内を流れることをもたらすことを含む。毛細管バリアが第1のマイクロ流体チャネル内の第1の液体の流れを阻止した状態の間、ガス圧力が流体界面領域からガス流出ポートを介して解放される。この解放は、第2の液体が第2のマイクロ流体チャネル内を流体界面領域に向かって流れている間に、それに起因して発生する。
【0005】
上記の態様のうちの多くと一致して、関連する装置の例は、第1の液体を流体界面領域に向けて案内するための第1のマイクロ流体チャネルと、第2の液体を流体界面領域に向けて案内するための第2のマイクロ流体チャネルとを有する毛細管構造を含む。流体界面領域は、公称流体圧力において第1のマイクロ流体チャネルに沿って流体界面領域に向かって流れる第1の液体を阻止する毛細管バリアを含む。毛細管バリアの上流部分は、第1の液体のためのメニスカスバリアを提供する。このタイプの装置は、流体の損失を減らすか又は防止するように構築された、流体界面領域内のガス圧力を解放するガス流出ポートも含んでもよい。このポートは、毛細管バリアが第1のマイクロ流体チャネル内の第1の液体の流れを阻止した状態、かつ第2の液体が第2のマイクロ流体チャネル内を流体界面領域に向かって流れる状態の間、有用である。
【0006】
上記の説明/概要は、本開示の各実施形態又はあらゆる実装を説明することを意図したものではない。以下の図面及び詳細な説明も、様々な実施形態を例示するものである。
【0007】
様々な例示的実施形態は、以下の詳細な説明を添付の図面と関連付けて考慮すればより完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の様々な態様と一致する例示的毛細管構造及び状態図を示す。
図2A】本開示の様々な態様と一致する、流体界面領域に向かって流れている第1の液体を含む例示的毛細管構造を示す。
図2B】本開示の様々な態様と一致する、阻止された第1の液体と流体界面領域に向かって流れている第2の液体とを含む例示的毛細管構造を示す。
図2C】本開示の様々な態様と一致する、毛細管構造内の第1の液体と第2の液体との液体−液体界面を示す。
図2D】本開示の様々な態様と一致する、毛細管構造内の第1の液体及び第2の液体の例示的画像を示す。
図3A】本開示の様々な態様と一致する第1の例示的毛細管バリアを示す。
図3B】本開示の様々な態様と一致する第2の例示的毛細管バリアを示す。
図4】本開示の様々な態様と一致する例示的毛細管構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示は様々な修正及び代替形態が可能であるが、それらのうちの特定のものを例として図面に示し詳細に説明する。しかし本開示は、記載される特定の実施形態のみに限定されるものではないということを理解されたい。反対に本開示は、特許請求の範囲において規定された態様を含む、本開示の範囲内に入る全ての修正、均等物、及び代替を網羅するものである。加えて、本出願を通して使用される「例」という用語は、限定ではなく、例としてのみである。
【0010】
本開示の態様は、液体の進行を界面点において停止するための毛細管バリアを介した流体−流体界面の作成を含む、様々な異なるタイプのデバイス、システム、及び構成に適用可能と考えられる。本開示の様々な態様と一致する毛細管バリアは、表面力を利用して、流体の液体メニスカスを所望の静止位置内に保持又は固定する。流体のメニスカスがジャンクションにおいて固定されたら、異なる液体がロードされ、第1の流体のメニスカスに充填される。作成された液体−液体界面は、例えば、等速電気泳動(ITP)による非常に効率的な核酸の抽出のための、細胞溶解物の有限注入に役立つ。本開示は必ずしもそのように限定されないが、この文脈を使用した例の説明を通して本開示の様々な態様が理解されるであろう。
【0011】
様々な例示的実施形態は、流体界面領域を有する毛細管構造内で第1の液体と第2の液体とを相互作用させるための方法及び装置に関する。毛細管構造内に、第1の液体を流体界面領域に向けて案内するための第1のマイクロ流体チャネルが設けられ、第2の液体を流体界面領域に向けて案内するための第2のマイクロ流体チャネルが設けられる。流体界面領域は、第1の液体の流れを、それが公称流体圧力において第1のマイクロ流体チャネルに沿って流体界面領域に向かって移動する際に阻止する毛細管バリアを含む。毛細管バリアの上流部分は、第1の液体のためのメニスカスバリアを提供する。第1の液体は、毛細管バリアが第1の液体の流れを阻止した状態になるまで、第1のマイクロ流体チャネル内を流れる。毛細管バリアが第1のマイクロ流体チャネル内の第1の液体の流れを阻止した状態の間、ガス圧力が解放される。ガス圧力は、第2の液体が第2のマイクロ流体チャネル内を流体界面領域に向かって流れている間に(及びそれに起因して)流体界面領域からガス流出ポートを介して解放される。特定の実施形態では、第1の液体の流れが阻止された後、第2の液体が、第1の液体と第2の液体との間に液体−液体界面が作成されるまで、第2のマイクロ流体チャネル内に流れる。
【0012】
本開示の様々な態様は、試料液体の損失なしにマイクロ流体チャネル内に液体界面が作成されることを可能にするために提供される。そのような装置及び方法は、毛細管力を使用して第1の液体のメニスカスを流体界面領域に位置付ける毛細管バリアを含んでもよく、同時に、脱出経路を使用して、流体界面領域に向かう第2の液体の流れを可能にする。脱出する流体の体積流量を制限するための手段が脱出経路内に設けられ、その構造は図4及び以下の関連する説明に関連して例示され、例としては、低容量チャネル、狭窄チャネル、及び/又は途中での急激な変化が含まれる。
【0013】
特定の他の実施形態では、毛細管構造を支持するためのマイクロ流体チップが提供される。例えば柱の形態の突起が、流体界面領域の上流部分において又はその近くに、及び第1の液体が流体界面領域に向かって流れるための経路の壁上に含まれてもよく、突起は、(第2の)液体の体積流量に対抗する力をもたらすことによって制限するように構成及び配置される。マイクロ流体チップは、第1の液体と第2の液体との間の相互作用を示すデータを受信する回路も含む。本開示の様々な態様と一致する特定の他の実施形態では、第1の流体導入ポートが、第1の流体を第1のマイクロ流体チャネルにもたらすためにマイクロ流体チップ上に設けられ、第2の流体導入ポートが、第2の流体を第2のマイクロ流体チャネルにもたらすためにマイクロ流体チップ上に設けられる。
【0014】
第1のマイクロ流体チャネル及び第2のマイクロ流体チャネルのうちの1つ以上は、本開示の特定の実施形態では、流体界面領域内での液体流の阻止を補助するための疎水性表面をそれぞれ含む。特定の実施形態では、第1のマイクロ流体チャネル及び第2のマイクロ流体チャネルはポリジメチルシロキサン(PDMS)から形成される。加えて、本開示の特定の実施形態では、毛細管バリアの上流部分は、少なくとも部分的に、毛細管構造内を流れる第1の液体のための断面積における変化によって画定される。これらの実施形態において、断面積の変化は、流体界面領域内で第1の液体流を阻止するのに十分である。更に、これらの実施形態において、毛細管バリアは、第1の液体が第1のマイクロ流体チャネル内を流れている場合の、第1の液体の阻止を補助する。加えて、本開示の他の実施形態では、第1のマイクロ流体チャネル内の流体流を阻止する表面力は、毛細管バリア内で流体流を阻止する表面力とほぼ等しい。このように、毛細管バリアの上流部分における毛細管バリアは、毛細管構造内を流れる第1の液体のための断面積における変化によって画定され、これは第1の液体が第1のマイクロ流体チャネル内を流れている場合の、第1の液体の阻止を補助する。本開示の特定の実施形態では、第1のマイクロ流体チャネルと第2のマイクロ流体チャネルとの交点はT−ジャンクションを形成する。本開示の様々な実施形態は、真空を使用せずに第1の流体及び第2の流体をロードする。
【0015】
本開示の特定の実施形態では、第1の流体及び第2の流体のうちの少なくとも1つは、DNA、RNA、蛋白質、及び/又は細胞を含む流体である。加えて、本開示の特定の実施形態は、毛細管構造と、第1の液体と第2の液体との間の相互作用を示すデータを受信する回路とを支持するマイクロ流体チップも含む。様々な実施形態において、回路は、第1の流体又は第2の流体内に存在するDNA、RNA、蛋白質、及び/又は細胞の定量化及び品質管理のマイクロ流体分析(microfluidics analysis of quantification and quality control)を実行する。加えて、他の実施形態では、マイクロ流体チップ上の回路は、第1の流体又は第2の流体内に存在するDNAフラグメントの分離及び抽出の分取電気泳動分析(preparative electrophoresis analysis)を実行する。他の実施形態では、回路は、第1の流体及び第2の流体のうちの少なくとも1つにおける標的核酸濃縮を分析する。回路は、他の実施形態では、ポリメラーゼ連鎖反応に基づいて第1の流体又は第2の流体の側面(aspects)の遺伝分析を実行するために提供される。様々な実施形態、及び回路の適用例によって説明されるように、マイクロ流体チップ上に配置された毛細管構造は、多数の異なる適用例のために有用である。
【0016】
毛細管構造は、2つの液体間の相互作用を分析及び/又は処理する様々なシステム及び装置に適合する。更に、マイクロ流体チップ上に配置された、かつDNA、RNA、蛋白質、及び/又は細胞の定量化及び品質管理を分析する回路を有する毛細管構造の実施形態は、例えば、キアゲン(Qiagen)のQiaxcel、アジレントバイオアナライザ(Agilent Bioanalyzer)、バイオラッド(Bio−Rad)のエクスペリオン(Experion)、島津製作所(Shimadzu) − MCE−202 MultiNA、及びパーキンエルマー(Perkin Elmer)のLabChip GX IIなどの様々な装置及びシステムに適合する。加えて、マイクロ流体チップ上に配置された、かつDNAフラグメントの分離及び抽出の分取電気泳動分析を実行する回路を有する毛細管構造の実施形態は、例えば、セージサイエンス(Sage Science)のピッピンプレップ(Pippin Prep)及びブルーピッピンプレップ(BluePippen Prep)、並びにパーキンエルマー(Perkin Elmer)のLabchip XTなどの様々な装置及びシステムに適合する。更に、マイクロ流体チップ上に配置された、かつ標的核酸濃縮を分析する回路を有する毛細管構造の実施形態は、例えば、フリューダイム(Fluidigm)のアクセスアレイ(Access Array)などの様々な装置及びシステムに適合する。毛細管構造は、マイクロ流体サーモサイクラ(例えば、キアゲン(Qiagen)のLabDisk Player)において発生するような、試薬及び/又は試料ボリュームのロードにおいても有用である。
【0017】
次に図面を参照すると、図1は、本開示の様々な態様と一致する例示的毛細管構造及び状態図を示す。図1は、第1のマイクロ流体チャネル105と第2のマイクロ流体チャネル115とを含む毛細管構造100を示す。第1のマイクロ流体チャネル105は、第1の液体を流体界面領域110に向けて案内するために設けられ、第2のマイクロ流体チャネル115は、第2の液体を流体界面領域110に向けて案内するために設けられる。流体界面領域110は、第1の液体が公称流体圧力において流体界面領域110に向かって流れるのに応えて第1の液体の流れを阻止する、毛細管バリア120を含む。毛細管バリア120の上流部分は、第1の液体のためのメニスカスバリア125を提供する。第1の液体は、毛細管バリア120が流れを阻止した状態になるまで、第1のマイクロ流体チャネル105内を流れる。この状態の間、第2の液体が第2のマイクロ流体チャネル115内を流体界面領域110に向かって流れている間に、流体界面領域110から流体−ガス流出ポート130を介してガス圧力が解放されてもよい。
【0018】
図1の状態図に示すように、第1の液体がメニスカスバリアに達した後、第2の液体がメニスカスバリアにおいて第1の液体に接触するまで、第2のマイクロ流体チャネル115が第2の液体で充填される。この段階で、第1及び第2の液体の間のウェッティング(wetting)はガス流出ポート130を介した流体損失をもたらし得、ガス流出ポート130は、ガスが流出することを可能にする経路を通した流体流を妨げるか又は減らすことによって(第2の)流体の体積流量を(それに対する対向力をもたらすことによって)制限するように設計される。次に、界面ベースの分析が、第1の液体と第2の液体との界面において実行される。
【0019】
図2A図2Dは、本開示の様々な態様と一致する例示的毛細管構造を示す。図2Aは、マイクロ流体チャネル内を流れている第1の液体205を含む1つのそのような毛細管構造200を示す。流体流は、図2Bの破線によって示されるバリア210において停止し、図2Bは、阻止された第1の液体205と、毛細管構造200の第2のチャネル220内を流れている第2の液体215とを含む毛細管構造200を示す。第2の液体215は、第1の液体が阻止された点(又はバリア210)まで、その点において液体−液体界面が作成されるまで流れる。液体−液体界面は、図2Cでは、液体バリア210において分離するものとして示されている。図2A図2B、及び図2Cのそれぞれに共通するのは流出ポート230である(ポート130に関連して表記されている)。
【0020】
図2Dは、本開示の様々な態様と一致する、同様に構築された毛細管構造の例示的画像を示し、ここで、第1の液体は血液溶解物であり、第2の液体は電気泳動緩衝液である。加えて、液体がロードされる毛細管構造は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)チップである。図2Dの左上隅に示されているように、チップの右下部分において真空を印加することによって、血液溶解物が左からロードされる。図2Dの右上部分は、溶解物がバリアにおいて固定されたことを示す。図2Dの左下部分は、ITPのためのリーディング電解液(電気泳動緩衝液)が上部毛細管からロードされることを示す。電解液と血液溶解物ボリュームとの鮮明な界面が次に形成される。図2Dの右下部分は、溶解物とリーディング電解液とが遭遇した時点でのスナップショットを示す。これらの液体が遭遇した後、圧力駆動流が発生して界面を乱す。しかし、本開示の様々な態様と一致するチップの設計により、血液溶解物ボリュームは出口廃棄チャネル内に流れることによって廃棄される。
【0021】
図3は、本開示の様々な態様と一致する例示的毛細管バリアを示す。例えば、図3Aは、第1の例示的毛細管バリアを示す。図3Aでは、液体毛細管又はチャンバ形状に遭遇する、進行する液体の接触線(いくらかのガスによって占められる領域内に進行している)に基づいて毛細管バリアが作成される。液体側とガス側との間での、印加される圧力の差の存在下でさえ、毛細管力は液体の動きを阻止し、静止した液体前面を形成する。図3Aからわかるように、流体流は、断面積の変化に基づいて毛細管の上流部分において表面力により阻止され、断面積の変化は、毛細管の上流部分と毛細管の下流部分との間の代表的角度差(φ及びΦ)に基づいて示されている。特定の実施形態ではφとΦとは等しく、他の実施形態ではφとΦとは等しくない。
【0022】
図3Bは、本開示の様々な態様と一致する第2の例示的流体流毛細管バリアを示す。図3Bに示す毛細管バリアは、毛細管の内側の一連の柱の結果である。この構造は、高分解能を有するが完全な3次元構造を作る能力は有さない製造を可能にする。例えば、SU−8マスク上に注入されるポリジメチルシロキサン(PDMS)が、鋭いエッジを有する柱を作成するために容易に使用され得るが、毛細管は単一のマスク厚さに限定される。図3Bに示す実施形態では、毛細管バリアは、毛細管に沿って位置する一連の小さな(例えば長さ120μmの)三角形の柱を含む。第1の液体が1つの毛細管に沿ってデバイス内に流れるにつれて、第1の液体は毛細管バリアにおいて固定されるようになり、それによりメニスカスが形成される。第2の流体(例えば電気泳動緩衝液)が接続毛細管(図示せず)から充填され、空気が(例えば図1に示すような)狭いサイドチャネルを通して流出するとき、このメニスカスは静止したままである。液体が毛細管バリアに到達すると、第1の液体は第2の液体と接触する。図3Bに示す毛細管バリア構造はランプ構造である。他の実施形態では、毛細管チャネルの内側に毛細管バリアを作成するためにランプ構造が使用される。
【0023】
そのようなランプ構造は熱可塑性成形を使用して実装及び製造されてもよく、その場合、3Dモールドが機械加工される。毛細管バリア構造は実効的なチャネル寸法を減少させ、次に拡張を可能にする。液体メニスカスは、拡張を横断するために必要な表面積の増加によって停止される。
【0024】
図4は、本開示の様々な態様と一致する例示的毛細管構造を示す。図4の毛細管構造400は、第1のマイクロ流体チャネル405と第2のマイクロ流体チャネル410とを含む。第1のマイクロ流体チャネル405は、第1の液体を流体界面領域415に向けて案内するために設けられ、第2のマイクロ流体チャネル410は、第2の液体を流体界面領域415に向けて案内するために設けられる。第1のマイクロ流体チャネル405及び第2のマイクロ流体チャネル410は、それぞれのバリア構造420を含み、その後の毛細管内にそれぞれの拡張(又は拡張領域)425を含む。これらのバリア構造420及び拡張425は毛細管バリア430の作成を補助し、毛細管バリア430は、第1の液体が(公称流体圧力において)流体界面領域415に向かって流れるのに応えて第1の液体の流れを阻止する。毛細管バリア430の上流部分は、例えば第1のマイクロ流体チャネル405内の拡張425において、メニスカスバリアを提供する。第1の液体は、毛細管バリア430が第1の液体の流れを、バリア構造420と拡張425とに基づいて少なくとも部分的に阻止した状態になるまで、第1のマイクロ流体チャネル405内を流れる。毛細管バリア430が第1のマイクロ流体チャネル405内の第1の液体の流れを阻止した状態の間、第2の液体が第2のマイクロ流体チャネル410内を流体界面領域415に向かって流れている間に、ガス圧力が、流体界面領域415からガス流出ポート435を介して解放される。ガス流出ポート435を介した液体の損失を減らすために、バリア構造420と拡張425とは第2のマイクロ流体チャネル410の近くに配置される。図示されているように、ガス流出ポート435は、流体損失を発生させる消極的手段を提供するための、容量が制限された領域(図示されているのはチャネル寸法の急激な変化)を有する。
【0025】
本開示の様々な態様は、真空を使用せずに、マイクロ流体チャネルの表面疎水性、及び/又はチャネル寸法の急激な変化を利用して流れを停止させる毛細管バルブを作成することによって流体流を制御する、毛細管バリアに関する。進行する液体が、より広い断面に拡張するチャネルの領域に入ると、液体−空気界面の表面積が増加して液体の進行の継続を可能にする。この拡張した表面積は(液体の流れに対抗する力によって)体積流量を制限する力をもたらす。表面の拡張が十分に大きい場合、液体は進行を停止する。本開示の様々な実施形態は、疎水性表面の領域に基づく毛細管バリア、液体の流れに対抗する力をもたらすように構成及び配置されたチャネル内の1つ以上のランプ又は柱などのバリア、及び/又は、マイクロ流体毛細管内の突然の拡張をマイクロ流体毛細管内の突然の収縮と共に実現するその他の方法も形成する。
【0026】
マイクロ流体チップに関する更なる詳細については、本明細書が優先権の利益を主張する2013年3月14日出願の米国特許仮出願第61/785,255号明細書を参照されたい。この特許文献は参照によって本明細書中に完全に援用される。
【0027】
上記の説明及び図に基づいて、当業者は、本開示に対する様々な修正及び変更が、本明細書中で図示及び説明された例示的実施形態及び適用例に厳密に従うことなく行われてもよいということを容易に認識するであろう。そのような修正は、特許請求の範囲において述べられたものを含む本開示の真の精神及び範囲から逸脱するものではない。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図4