(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6673826
(24)【登録日】2020年3月9日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】熱交換器のための高強度アルミニウム合金フィン素材
(51)【国際特許分類】
C22C 21/00 20060101AFI20200316BHJP
C22C 21/10 20060101ALI20200316BHJP
C22F 1/04 20060101ALI20200316BHJP
C22F 1/053 20060101ALI20200316BHJP
C22F 1/00 20060101ALN20200316BHJP
【FI】
C22C21/00 J
C22C21/00 L
C22C21/10
C22F1/04 B
C22F1/053
!C22F1/00 622
!C22F1/00 623
!C22F1/00 630A
!C22F1/00 630M
!C22F1/00 650A
!C22F1/00 650F
!C22F1/00 651A
!C22F1/00 682
!C22F1/00 683
!C22F1/00 685Z
!C22F1/00 686A
!C22F1/00 691B
!C22F1/00 691C
!C22F1/00 694A
!C22F1/00 694B
【請求項の数】20
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-533429(P2016-533429)
(86)(22)【出願日】2014年8月7日
(65)【公表番号】特表2016-531204(P2016-531204A)
(43)【公表日】2016年10月6日
(86)【国際出願番号】US2014050086
(87)【国際公開番号】WO2015021244
(87)【国際公開日】20150212
【審査請求日】2016年2月5日
【審判番号】不服2018-2758(P2018-2758/J1)
【審判請求日】2018年2月27日
(31)【優先権主張番号】61/863,572
(32)【優先日】2013年8月8日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/863,568
(32)【優先日】2013年8月8日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506110243
【氏名又は名称】ノベリス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】NOVELIS INC.
(73)【特許権者】
【識別番号】516039907
【氏名又は名称】デンソー・インターナショナル・アメリカ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】DENSO INTERNATIONAL AMERICA, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100088801
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 宗雄
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・ディ・ハウエルズ
(72)【発明者】
【氏名】ケビン・マイケル・ゲイテンビー
(72)【発明者】
【氏名】ヘイニー・アーメッド
(72)【発明者】
【氏名】ジョティ・カダリ
(72)【発明者】
【氏名】デレク・ウィリアム・アルイア
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・マイケル・バチアック・ザ・サード
【合議体】
【審判長】
平塚 政宏
【審判官】
亀ヶ谷 明久
【審判官】
土屋 知久
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−84060(JP,A)
【文献】
特開平10−88265(JP,A)
【文献】
特開2000−169926(JP,A)
【文献】
特開平10−81932(JP,A)
【文献】
特開2013−40367(JP,A)
【文献】
特表2016−534223(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC C22C 21/00-21/18, C22F 1/04-1/057, B23K 35/00-35/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.8〜1.4重量%Si、0.4〜0.8重量%Fe、0.05〜0.2重量%Cu、1.2〜1.7重量%Mn、1.20〜1.6重量%Zn、及び他の微量要素0.05重量%を下回る量を含み、残りがAlからなる、アルミニウム合金からなるインゴットを冷間圧延することと、
冷間圧延後275〜400℃の温度で中間アニーリングすることと、
中間アニーリング後、最終冷間圧延ステップを行い、20〜35%の冷間加工%(CW%)を達成すること
により得られ、
アルミニウム合金フィン素材が再結晶化されている、アルミニウム合金フィン素材。
【請求項2】
アルミニウム合金が0.9〜1.3重量%Si、0.45〜0.75重量%Fe、0.10〜0.2重量%Cu、1.3〜1.7重量%Mn、1.30〜1.6重量%Zn、及び他の微量要素0.05重量%を下回る量を含み、残りがAlからなる、請求項1に記載のアルミニウム合金フィン素材。
【請求項3】
アルミニウム合金が0.9〜1.2重量%Si、0.5〜0.75重量%Fe、0.15〜0.2重量%Cu、1.4〜1.6重量%Mn、1.4〜1.6重量%Zn、及び他の微量要素0.05重量%を下回る量を含み、残りがAlからなる、請求項1に記載のアルミニウム合金フィン素材。
【請求項4】
アルミニウム合金が0.9〜1.1重量%Si、0.5〜0.6重量%Fe、0.15〜0.2重量%Cu、1.5〜1.6重量%Mn、1.5〜1.6重量%Zn、及び他の微量要素0.05重量%を下回る量を含み、残りがAlからなる、請求項1に記載のアルミニウム合金フィン素材。
【請求項5】
アルミニウム合金が0.90〜1.0重量%Si、0.55重量%Fe、0.15〜0.20重量%Cu、1.5重量%Mn、1.5重量%Zn、及び他の微量要素0.05重量%を下回る量を含み、残りがAlからなる、請求項1に記載のアルミニウム合金フィン素材。
【請求項6】
アルミニウム合金が0.95重量%Si及び0.15重量%Cuを含む、請求項5に記載のアルミニウム合金フィン素材。
【請求項7】
アルミニウム合金が0.95重量%Si、0.2重量%Cu、0.6重量%Fe、1.45重量%Mn、及び1.55重量%Znを含む、請求項1に記載のアルミニウム合金フィン素材。
【請求項8】
アルミニウム合金フィン素材を作製するための方法であって、
0.8〜1.4重量%Si、0.4〜0.8重量%Fe、0.05〜0.2重量%Cu、1.2〜1.7重量%Mn、1.20〜1.6重量%Zn、及び他の微量要素0.05重量%を下回る量を含み、残りがAlからなる、アルミニウム合金をインゴットに直接チル鋳造することと、
前記インゴットを450〜500℃まで2〜16時間予熱することと、
前記予熱されたインゴットを熱間圧延することと、
前記インゴットを冷間圧延することと、
275〜400℃の温度で中間アニーリングすることと、
中間アニーリング後、最終冷間圧延ステップを行い、20〜35%の冷間加工%(CW%)を達成することと、を含み
前記アルミニウム合金フィン素材が再結晶化されている、前記方法。
【請求項9】
前記インゴットが、480℃で2〜16時間予熱される、請求項8に記載の前記方法。
【請求項10】
前記インゴットが、2〜12時間予熱される、請求項8に記載の前記方法。
【請求項11】
前記中間アニーリング温度が、325〜375℃である、請求項8に記載の前記方法。
【請求項12】
前記中間アニーリング温度が、300℃、350℃または400℃である、請求項8に記載の前記方法。
【請求項13】
前記中間アニーリング温度が300℃であり、CW%が25%である、請求項8に記載の前記方法。
【請求項14】
前記中間アニーリング温度が350℃または400℃であり、CW%が29%である、請求項8に記載の前記方法。
【請求項15】
前記アルミニウム合金が0.9〜1.3重量%Si、0.45〜0.75重量%Fe、0.10〜0.2重量%Cu、1.3〜1.7重量%Mn、1.30〜1.6重量%Zn、及び他の微量要素0.05重量%を下回る量を含み、残りがAlからなる、請求項8に記載の前記方法。
【請求項16】
前記アルミニウム合金が0.9〜1.2重量%Si、0.5〜0.75重量%Fe、0.15〜0.2重量%Cu、1.4〜1.6重量%Mn、1.4〜1.6重量%Zn、及び他の微量要素0.05重量%を下回る量を含み、残りがAlからなる、請求項8に記載の前記方法。
【請求項17】
前記アルミニウム合金が0.9〜1.1重量%Si、0.5〜0.6重量%Fe、0.15〜0.2重量%Cu、1.5〜1.6重量%Mn、1.5〜1.6重量%Zn、及び他の微量要素0.05重量%を下回る量を含み、残りがAlからなる、請求項8に記載の前記方法。
【請求項18】
前記アルミニウム合金が0.90〜1.0重量%Si、0.55重量%Fe、0.15〜0.20重量%Cu、1.5重量%Mn、1.5重量%Zn、及び他の微量要素0.05重量%を下回る量を含み、残りがAlからなる、請求項8に記載の前記方法。
【請求項19】
前記アルミニウム合金が0.95重量%Si及び0.15重量%Cuを含む、請求項18に記載の前記方法。
【請求項20】
前記アルミニウム合金が0.95重量%Si、0.2重量%Cu、0.6重量%Fe、1.45重量%Mn、及び1.55重量%Znを含む、請求項8に記載の前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2013年8月8日に出願された米国仮特許出願通し番号第61/863,572号、ならびに2013年8月8日に出願された米国仮特許出願通し番号第61/863,568号の利益を主張するものであり、それらは、それらの全体が参照によって本明細書に共に組み込まれる。
【0002】
本発明は、材料科学、材料化学、冶金学、アルミニウム合金、アルミニウム製造の分野、ならびに関連分野に関するものである。本発明は、熱交換器フィンの生産における使用のための新規アルミニウム合金を提供し、それらは、次いで、様々な熱交換器デバイス、例えば、自動車の放熱器、凝縮器、蒸発器及び関連デバイスにおいて利用される。
【背景技術】
【0003】
自動車用の放熱器を含む様々な熱交換器用途における使用のために、高い強度を備えたアルミニウム合金フィン素材の必要性がある。また、高性能熱交換器用途における使用のために、強いろう付け前の機械的特性、ろう付けの間の良好な挙動、すなわち、ろう付けされた材料の耐たわみ性の強化、及びフィン腐食の削減、ならびにろう付け後の良好な強度及び伝導率特性を備えたアルミニウム合金フィン素材を取得する必要性もある。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、熱交換器用途、例えば自動車用熱交換器などにおける使用のためのアルミニウム合金フィン素材を提供する。このアルミニウム合金フィン素材合金材料は、直接チル(DC)鋳造によって作製した。本発明の実施形態に係るアルミニウム合金フィン素材は、以下の特性、すなわち、高強度、所望のろう付け後の機械的特性、所望の耐たわみ性、所望の耐腐食性及び所望の伝導率のうちの1つ以上を有する。本発明のいくつかの実施形態に係るアルミニウム合金フィン素材は、ろう付け前により大きな粒子分散質及び改良された強度を示す。アルミニウム合金フィン素材のいくつかの実施形態は、所望のろう付け前のテンパー、例えばH14に生産される。
【0005】
改良されたアルミニウム合金フィン素材が、様々な用途、例えば、熱交換器において使用され得る。一実施形態では、アルミニウム合金フィン素材が、自動車用熱交換器、例えば放熱器、凝縮器及び蒸発器などにおいて使用され得る。いくつかの実施形態において、アルミニウム合金フィン素材が、高性能、軽量の自動車用熱交換器に有用である。いくつかの他の実施形態では、アルミニウム合金フィン素材が、限定されるものではないが、HVAC用途を含む、他のろう付けされた用途のために使用され得る。発明の他の目的及び利点は、発明の実施形態の以下の発明を実施するための形態から明らかになる。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明は、アルミニウム合金フィン素材を提供する。このアルミニウム合金フィン素材合金材料は、直接チル(DC)鋳造によって作製した。アルミニウム合金フィン素材のいくつかの実施形態は、改良された強度、改良された耐腐食性または改良された耐たわみ性のうちの1つ以上を有する。いくつかの実施形態では、アルミニウム合金フィン素材が、所望のろう付け前の(H14)テンパー機械的特性及び所望のろう付け後の機械的特性、耐たわみ性、耐腐食性及び伝導率を呈する。いくつかの他の実施形態では、アルミニウム合金フィン素材が、ろう付け後により大きな粒子サイズ及びろう付け前の改良された強度を示す。アルミニウム合金フィン素材は、様々な用途、例えば、熱交換器において使用され得る。一実施例において、アルミニウム合金フィン素材が、自動車用熱交換器、例えば放熱器、凝縮器及び蒸発器などにおいて使用され得る。
【0007】
アルミニウム合金フィン素材の組成は、本発明の範囲内にある。アルミニウム合金フィン素材組成のいくつかの例示的な実施形態が、以下に記載される。アルミニウム合金フィン素材組成の構成要素の量に関して以下に及びこの書類の全体にわたって使用される全ての%値は、重量%(wt%)単位である。
【0008】
一実施形態では、アルミニウム合金フィン素材が、約0.8〜1.4%Si、0.4〜0.8%Fe、0.05〜0.4%Cu、1.2〜1.7%Mn及び1.2〜2.3%Zn、残りのアルミニウムを含む。
【0009】
別の実施形態では、アルミニウム合金フィン素材が、約0.9〜1.3%Si、0.45〜0.75%Fe、0.10〜0.30%Cu、1.3〜1.7%Mn及び1.30〜2.2%Zn、残りのアルミニウムを含む。
【0010】
更に別の実施形態では、アルミニウム合金フィン素材が、約0.9〜1.2%Si、0.50〜0.75%Fe、0.15〜0.30%Cu、1.4〜1.6%Mn及び1.4〜2.1%Zn、残りのアルミニウムを含む。
【0011】
一実施形態では、DCフィン素材が、0.9〜1.1%Si、0.10〜0.25%Cu、0.45〜0.7%Fe、1.4〜1.6%Mn、及び1.4〜1.7%Znを残りのAlと共に含む。
【0012】
更に別の実施形態では、アルミニウム合金フィン素材が、0.90〜1.0%Si、0.15〜0.25%Cu、0.5〜0.6%Fe、1.5〜1.6%Mn、及び1.5〜1.6%Zn、残りのAlを含む。
【0013】
更に別の実施形態では、アルミニウム合金フィン素材が、0.9〜1%Si、0.2%Cu、0.5〜0.6%Fe、1.5〜1.6%Mn、及び1.5〜1.6%Zn、残りのAlを含む。
【0014】
更に別の実施形態では、アルミニウム合金フィン素材が、0.9〜0.95%Si、0.2%Cu、0.5〜0.6%Fe、1.5〜1.6%Mn、及び1.5〜1.6%Zn、残りのAlを含む。
【0015】
別の実施形態では、アルミニウム合金フィン素材が、0.90〜0.95%Si、0.15〜0.20%Cu、0.55%Fe、1.5%Mn、及び1.5%Zn、残りのAlを含む。
【0016】
更に別の実施形態では、アルミニウム合金フィン素材が、0.95%Si、0.15%Cu、0.55%Fe、1.5%Mn、及び1.5%Zn、残りのAlを含む。
【0017】
更に別の実施形態では、アルミニウム合金フィン素材が、0.90〜0.95%Si、0.15〜0.20%Cu、0.5〜0.6%Fe、1.5%Mn及び1.5%Zn、残りのAlを含む。
【0018】
更に別の実施形態では、アルミニウム合金フィン素材が、1.0〜1.2%Si、0.2〜0.3%Cu、0.5〜0.6%Fe、1.4〜1.55%Mn、及び1.9〜2.1%Zn、残りのAlを含む。
【0019】
更に別の実施形態では、アルミニウム合金フィン素材が、0.95%±0.05Si、0.2%±0.05Cu、0.6%±0.1Fe、1.45%±0.05Mn、及び1.55%±0.1Zn、残りのAlを含む。
【0020】
もう1つの実施形態では、アルミニウム合金フィン素材が、1.15%±0.05Si、0.25%±0.05Cu、0.6%±0.1Fe、1.5%±0.05Mn、及び2.0%±0.1Zn、残りのAlを含む。
【0021】
任意選択的に、Cr及び/もしくはZrまたは他の粒子サイズ制御要素が、それぞれ最大0.2%、それぞれ最大0.15%、それぞれ最大0.1%、それぞれ最大0.05%、あるいはそれぞれ最大0.03%の量でアルミニウム合金フィン素材組成において存在してもよい。本明細書に記載されたアルミニウム合金フィン素材組成が、典型的には0.05%を下回る量で、意図しない要素とも呼ばれることがある他の微量要素を含有してもよいことが理解されることになる。
【0022】
本発明のアルミニウム合金フィン素材のいくつかの実施形態が、溶融の開始として呼ばれる、より高い固相線温度を呈し、ろう付けされたアルミニウム合金単位が所望の形状を有さないコア収縮の現象の改良をもたらす。以下の記述によって制約されることを望まないものの、示差走査熱量測定(DSC)計量及びThermo−Calc(登録商標)ソフトウェア(Stockholm、Sweden)シミュレーションに基づいて、アルミニウム合金フィン素材組成におけるSi含有量及びZn含有量を低くして、Mn含有量を高くすることが、溶融温度(固相線)のより高い開始をもたらし得、それは、コア収縮の削減に寄与することが、信じられている。一実施例において、本発明の実施形態に係るアルミニウム合金フィン素材組成は、617℃を上回る固相線温度及び約400μmの粗いろう付け後の粒子サイズを呈する。もう1つの実施例では、合金のSi含有量を0.9〜1%に(好適には、0.9〜0.95%に)及びZn含有量を1.5〜1.6%に限定する一方で、Mn含有量を比較的高く(例えば、約1.5%)に維持することが、合金の固相線温度を上昇させ、それは、次いで、材料をろう付け温度で強化させ、それ故、それは、コア収縮を結果としてもたらし得るたわみまたは高温クリープに耐えることができる。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態は、定義された組成を有するアルミニウム合金フィン素材であって、定義された方法ステップ及び条件を含む方法によって取得されたアルミニウム合金フィン素材に関する。定義された組成と生産方法の組み合わせは、アルミニウム合金フィン素材の改良された特性をもたらし得る。そのような改良された特性の一実施例は、改良されたろう付け前の機械的特性である。改良されたろう付け前の機械的特性(「ろう付け前の条件における」特性とも呼ばれる)は、組み立ての間における改良されたフィンの耐破砕性を結果としてもたらしながら、ろう付けした後(ろう付け後)に適切な耐たわみ性及び熱伝導率を維持する。
【0024】
本発明の実施形態に係るアルミニウム合金フィン素材を生産する方法は、直接チル(DC)鋳造方法によってインゴットを生産するステップを含み、これは、アルミニウム産業全体にわたって一般的に使用され、それによって、大きなインゴット約1.5m×0.6m×4mが、冷却水が供給される浅い鋳型または複数鋳型に金属を供給する大型保持炉から鋳造される。凝固インゴットは、冷却水の直接衝突によって連続的に冷却され、十分なインゴットまたは複数のインゴットが完成されるまで鋳型の基部からゆっくりと引き抜かれる。鋳造プロセスから一旦冷却されると、インゴット圧延表面が機械加工されて、表面分離及び不規則性が取り除かれる。機械加工されたインゴットは、熱間圧延のために予熱される。予熱温度及び持続期間は、低いレベルに制御され、仕上がったフィン素材がろう付けされた後に大きな粒子サイズ及び高い強度を保つ。いくつかのインゴット(約8〜30)が炉に入れられ、ガスまたは電気で圧延温度まで予熱される。予熱によって達成される温度を維持する期間はまた、「ソーク」または「ソーキング」とも呼ばれ得る。一実施形態では、約480℃における最小ソーク時間は、約2時間(換言すれば、少なくとも2時間)である。別の実施形態では、ソーク時間は、480℃で4〜16時間である。アルミニウム合金は、典型的には、約450℃〜約560℃の範囲内で圧延される。温度が冷た過ぎる場合、圧延負荷が高すぎて、温度が熱過ぎる場合には、金属が、柔らかくなりすぎ得、ミルにおいて壊れ得る。
【0025】
アルミニウム合金フィン素材のいくつかの実施形態を作製するための方法が、1つ以上の冷間圧延ステップを含んでもよい。冷間圧延ステップのそれぞれが、次いで、複数の冷間圧延パスを含んでもよい。冷間圧延ステップは、達成された「冷間加工%」またはCW%によって特徴付けられる。一般に、CW%が、アルミニウム合金フィン素材に適用される冷間圧延の度合いとして定義され得る。本書において使用される際、CW%は以下のように計算される。
【0026】
CW%の特定の範囲または値を達成することが、アルミニウム合金フィン素材の要求された強度範囲を実現するために望ましいであろう。アルミニウム合金フィン素材のうちのいくつかの実施形態は、25〜35CW%を達成する冷間圧延ステップを含む方法によって生産される。いくつかの実施例では、25%または29%のCW%を達成する冷間圧延ステップが、利用され得る。いくつかの場合では、CW%を例えば35%に増加することが、アルミニウム合金フィン素材のろう付け前の引張強度における増加をもたらし、それは、次いで、放熱器の組み立ての間におけるフィン破砕を有益に削減する。しかしながら、いくつかの他の場合では、CW%を増加することが、所望されない可能性がある。なぜなら、それは再結晶のための駆動力における増加に起因してより細かいろう付け後の粒子サイズをもたらし得るからであり、耐たわみ性の削減を結果としてもたらす。
【0027】
アルミニウム合金フィン素材のいくつかの実施形態を作製するための方法がまた、本発明の実施形態に係るアルミニウム合金フィン素材の所望の特性を実現するための中間アニーリングステップを含んでもよい。用語「中間アニーリング」または「中間アニール」(IA)は、冷間圧延ステップの間に適用される熱処理のことを言う。IA温度は、本発明の実施形態に係るアルミニウム合金フィン素材の特性に影響を与え得る。例えば、アルミニウム合金フィン素材の一定の実施形態を作製するための方法において使用されるIA温度の調査は、400℃から350℃までIA温度を低減することが、より粗いろう付け後の粒子サイズを結果としてもたらしたことを示した。アルミニウム合金フィン素材のいくつかの実施形態では、生産プロセスにおいて利用されたCW%とIA温度の組み合わせが、所望の特性を結果としてもたらす。一実施例では、350℃のIA温度と35%のCW%の組み合わせが、ろう付け後の粒子サイズと耐たわみ性の有益な組み合わせをアルミニウム合金フィン素材にもたらした。別の実施例では、300℃のIA温度と25%のCW%の組み合わせが、ろう付け後の粒子サイズと耐たわみ性の有益な組み合わせをアルミニウム合金フィン素材にもたらした。別の実施例では、H14テンパーにおけるアルミニウム合金フィン素材の処理の間におけるIA温度とCW%の組み合わせが、耐フィン破砕性の改良を結果としてもたらした。従って、いくつかの実施例では、組み立ての間においてより高いろう付け前の引張強度と改良された耐フィン破砕性をもたらす、特定のIA温度及びCW%を利用するアルミニウム合金フィン素材を生産する方法が、本発明の実施形態内に含まれる。
【0028】
一旦予熱されると、インゴットが熱間圧延されコイルを形成し、そのコイルは、次いで冷間圧延される。冷間圧延プロセスは、いくつかのステップにおいて行われ、中間アニーリングのステップが、冷間圧延ステップの間に利用され、最終冷間圧延ステップの前に材料を再結晶化する。約275〜400℃、300〜400℃、300〜450℃、340〜460℃、または325〜375℃の範囲におけるIA温度が、利用され得る。例えば、約300℃、350℃または400℃のIA温度が、本発明の実施形態に係るアルミニウム合金フィン素材を生産する方法において利用されてもよい。中間アニーリング後、アルミニウム合金フィン素材が、最終冷間圧延ステップにおいて冷間圧延され、所望の最終ゲージまたは厚さを取得する。最終冷間圧延ステップ後、アルミニウム合金フィン素材が、放熱器及び他の自動車用熱交換器の製造に適した細長い片に切り込まれ得る。いくつかの実施形態において、本発明の実施形態に係るアルミニウム合金フィン素材を生産する方法、最終冷間圧延ステップにおいて利用されるCW%が、20〜35%または25〜35%、例えば、約25%または29%である。
【0029】
生産パラメータの様々な組み合わせが、本発明の実施形態に係るアルミニウム合金フィン素材を生産する方法のためのプロセスにおいて有益に利用され得る。一実施例では、25〜35%の範囲にあるCW%が、最終圧延ステップにおいて利用され、アルミニウム合金フィン素材の改良されたろう付け前の降伏強度及び引張強度を結果としてもたらし、それは、次いで、組み立ての間におけるフィン破砕の発生の削減をもたらす。別の実施例では、約350℃のIA温度の選択が、より大きなろう付け後の粒子サイズを結果としてもたらす。もう1つの実施例では、最終冷間圧延ステップの間の約29%のCW%の使用が、ろう付け後の粒子サイズを更に増加する。更に別の実施例では、350℃で4時間の中間アニーリングが、最終冷間圧延ステップにおける29CW%と組み合わせて利用され、それは、良好なろう付け前の強度及び大きなろう付け後の粒子サイズという所望の特性、高熱伝導率ならびに良好なたわみ挙動を備える材料を結果としてもたらす。更に別の実施例では、400℃で平均約3時間の中間アニーリングが利用され、続いて、約29%の冷間加工(CW)%を適用することが続き、最終ゲージを達成する。更に別の実施例では、約480℃で平均4時間のソーキングが、約300〜400℃ならびに最終ゲージに対する約25〜35%の最終冷間圧延ステップにおけるCW%での中間アニーリングと組み合わせて、熱間圧延ステップの間に利用される。更に別の実施例では、熱間圧延ステップにおける480℃で4〜16時間のソーキングが、最終圧延ステップにおける350℃及び29%のCW%での中間アニーリングと組み合わせて利用される。更に別の実施例では、熱間圧延ステップにおける480℃で4〜16時間のソーキングが、最終圧延ステップにおける400℃及び29%のCW%での中間アニーリングと組み合わせて利用される。もう1つの実施例では、熱間圧延ステップにおける480℃で平均4時間のソーキングが、最終圧延ステップにおける350℃及び35%のCW%での中間アニーリングと組み合わせて利用される。もう1つの実施例では、325〜375℃及び20〜35CW%での中間アニーリング、例えば、最終冷間圧延ステップにおける300℃及びCW25%での中間アニーリングなどが利用される。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態に従って生産されたアルミニウム合金フィン素材は、45μm〜80μmの間のゲージ(厚さ)において変動するシートとして生産される。本発明の実施形態に係るアルミニウム合金フィン素材は、以下の特性のうちの1つ以上を有する。すなわち、ろう付け後に測定される130MPaの最小極限引張強度(UTS)(換言すれば、130MPa以上、または少なくとも130MPa)(例えば、134または137MPa)、約43%、約41.5%、約42.7%または約43.3%(国際軟銅規格(IACS)の平均伝導率値、−680mV以下、−700mV以下または−740以下(例えば、−710mv、−720mv、−724mv、−725mv、−743mv、−740mVまたは−758mV)の標準カロメル電極(SCE)に対する開路電位腐食値、35mmの片持ち式長さで、最終ゲージが47.5μmであった7mmと最終ゲージが50μmであった5mmとの間のたわみ値。アルミニウム合金フィン素材シートの上記特性は、高速ろう付け周期を適用した後に測定され、それによって、材料は、605℃の温度まで加熱され、約20分間室温まで冷却され、商業用ろう付けプロセスの温度時間プロファイルをシミュレーションする。本発明の実施形態に係るアルミニウム合金フィン素材は、180〜220MPa(例えば、185または190MPa)の範囲にあるろう付け前のUTSを有することができる。本発明の実施形態に係るアルミニウム合金フィン素材はまた、200μmを超える粒子サイズ、例えば、200または400μmを有することができる。
【実施例】
【0031】
以下の実施例は、同時に、しかしながら、それらの何の限定も構成せずに、本発明を更に例示するのに役立つことになる。その反対に、再分類をそれらの様々な実施形態、修正及び等価物にする必要があり得、それらは、本明細書における記載を読んだ後に、発明の趣旨から逸脱することなく、当業者にそれら自体を提案し得ることが明確に理解されることになる。
【0032】
・実施例1
アルミニウム合金フィン素材は、DC鋳造することと、インゴットを480℃まで約8時間予熱することと、続いて、約2.5mmまで熱間圧延することと、冷間圧延することと、最終冷間圧延ステップの前に350℃で約2時間中間アニーリングすることと、を含んだ方法によって作製した。アルミニウム合金フィン素材の組成範囲は、以下の仕様、すなわち、1.1±0.1%Si、0.6±0.1%Fe、0.2±0.05%Cu、1.4±0.1%Mn及び1.50±0.1%Znと、残りのAlを含むものの範囲内であった。アルミニウム合金フィン素材は、49μm〜83μmの間のゲージにおいて変動させて生産した。アルミニウム合金フィン素材は、約130MPaの最小極限引張強度を有した。アルミニウム合金フィン素材は、約43IACSのろう付け後の平均伝導率及び−741mVのSCEに対する開路電位腐食値を有した。これらの値は、シミュレーションしたろう付け周期を適用した後に測定した。それによって、サンプルを605℃の温度まで加熱して、約20分間室温まで冷却して、商業用ろう付けプロセスの温度時間プロファイルをシミュレーションした。
【0033】
・実施例2
アルミニウム合金フィン素材の2つのサンプルが、DC鋳造、続いて、480℃で4〜16時間予熱することを用いる熱間圧延することと、冷間圧延することと、29%のCW%までの最終冷間圧延の前に、第1のサンプルについて350℃で及び第2のサンプルについて400℃で中間アニーリングすることと、を含んだ方法によって作製した。第1のサンプルの組成は、0.95%Si、0.6%Fe、0.2%Cu、1.45%Mn及び1.55%Znと残りのAlを含んだものであった。第2のサンプルの組成は、1.15%Si、0.6%Fe、0.25%Cu、1.5%Mn及び2%Znと残りのAlを含んだものであった。アルミニウム合金フィン素材が、第1のサンプルについて約134MPa及び第2のサンプルについて約137MPaのろう付け後の極限引張強度を有した。アルミニウム合金フィン素材が、第1のサンプルについて約42.7IACS及び第2のサンプルについて約43.3IACSのろう付け後の平均伝導率を有した。アルミニウム合金フィン素材は、第1のサンプルについて−710mV及び第2のサンプルについて−743mVのSCEに対する開路電位腐食値を有した。アルミニウム合金フィン素材は、第1のサンプルについて400μm及び第2のサンプルについて200μmの粒子サイズを有した。アルミニウム合金フィン素材が、第1のサンプルについて185MPa及び第2のサンプルについて190MPaのろう付け前のUTSを呈した。2つのサンプル間の比較は、両方のサンプルが魅力的な機械的特性を生み出したものの、第1のサンプルの開路電位腐食値がより低かったことを明らかにし、Zn含有量における増加が望ましいであろうことを示す。第2のサンプルは、有利により低い開路電位腐食値を有した。
【0034】
上記した全ての特許、特許出願、公報、及び要約は、それらの全体が参照によって本明細書に組み込まれる。発明の様々な実施形態が、発明の様々な目的の履行において記載された。これらの実施形態が本発明の原理の単なる例示的なものであることを認識されたい。それらの多数の修正及び適合は、以下の特許請求の範囲に定義されるような発明の趣旨及び範囲から逸脱すること無く、当業者に容易に明らかになる。