特許第6673847号(P6673847)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6673847癌治療に使用するためのアドレノメデュリンバインダー
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  • 特許6673847-癌治療に使用するためのアドレノメデュリンバインダー 図000013
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6673847
(24)【登録日】2020年3月9日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】癌治療に使用するためのアドレノメデュリンバインダー
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/30 20060101AFI20200316BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20200316BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20200316BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20200316BHJP
【FI】
   C07K16/30ZNA
   A61P35/00
   A61P35/02
   A61K39/395 E
   A61K39/395 T
【請求項の数】12
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2016-560037(P2016-560037)
(86)(22)【出願日】2014年12月19日
(65)【公表番号】特表2017-508781(P2017-508781A)
(43)【公表日】2017年3月30日
(86)【国際出願番号】EP2014078870
(87)【国際公開番号】WO2015092021
(87)【国際公開日】20150625
【審査請求日】2017年10月5日
(31)【優先権主張番号】13199000.4
(32)【優先日】2013年12月20日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516183794
【氏名又は名称】アンギオビオメト ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087871
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 積
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197169
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 潤二
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ベルクマン
【審査官】 川合 理恵
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/072511(WO,A1)
【文献】 J. Biol. Chem., 1996, Vol. 271, No. 38, pp. 23345-23351
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 16/00−16/46
C12N 15/00−15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌を治療するための、ADMのC末端部分、ADMのaa42〜52(配列番号1):APRSKISPQGY−NH2に結合する、抗ADM IgG抗体又は抗ADM IgG抗体フラグメント含む医薬組成物。
【請求項2】
前記抗ADM IgG抗体又は抗ADM IgG抗体フラグメント、結合するために、ADMのC末端部分、ADMのaa42〜52(配列番号1):APRSKISPQGY−NH2内のC末端がアミド化されたチロシン残基の存在を必要とする、請求項1に記載の癌を治療するための抗ADM IgG抗体又は抗ADM IgG抗体フラグメント含む医薬組成物。
【請求項3】
前記癌が、前立腺、乳房、結腸、肺、膀胱、皮膚、子宮、頸部、口腔及び咽頭、胃、卵巣、腎臓、膵臓、非ホジキンリンパ腫、白血病、肝臓、食道、精巣、甲状腺、中枢神経系、喉頭、胆嚢、形質細胞腫(plasmocytome)、ホジキン病(morbus hodgekin)、からなる群から選択される、請求項1又は2に記載の癌を治療するための抗ADM IgG抗体又は抗ADM IgG抗体フラグメント含む医薬組成物。
【請求項4】
前記抗ADM IgG抗体又は抗ADM IgG抗体フラグメント、単一特異的である、請求項1、2又は3に記載の癌を治療するための抗ADM IgG抗体又は抗ADM IgG抗体フラグメント含む医薬組成物。
【請求項5】
前記抗体又はフラグメント、ADMに対して少なくとも10-7の結合親和性を示すことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の、癌を治療するための抗ADM IgG抗体又は抗ADM IgG抗体フラグメント含む医薬組成物。
【請求項6】
前記抗体又はフラグメント、ADM結合プロテイン−1(補体因子H)ではない、請求項1〜5のいずれか1項に記載の癌を治療するための抗ADM IgG抗体又は抗ADM IgG抗体フラグメント含む医薬組成物。
【請求項7】
前記抗体又はフラグメント、ADMのaa42〜52(配列番号1):APRSKISPQGY−NH2の配列内の、少なくとも4又は5アミノ酸の領域へ結合する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の癌を治療するための抗ADM IgG抗体又は抗ADM IgG抗体フラグメント含む医薬組成物。
【請求項8】
他の抗癌剤と組み合わせて使用される、又は、単独療法(mono therapeuticum)として使用される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の、癌を治療するための抗ADM IgG抗体又は抗ADM IgG抗体フラグメント含む医薬組成物。
【請求項9】
細胞増殖抑制剤、VEGF阻害剤、CD20阻害剤、HER−2阻害剤、CD−52阻害剤、EGFR阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤と組み合わせて使用される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の、癌を治療するための抗ADM IgG抗体又は抗ADM IgG抗体フラグメント含む医薬組成物。
【請求項10】
細胞増殖抑制剤、VEGF阻害剤、CD20阻害剤、HER−2阻害剤、CD−52阻害剤、EGFR阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤と組み合わせて使用される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の癌を治療するための医薬組成物。
【請求項11】
ベバシズマブ(商品名 アバスチン(登録商標);ロッシュ社)と組み合わせて使用される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の癌を治療するための医薬組成物。
【請求項12】
前記医薬組成物が、静脈内投与される、請求項1〜11のいずれか1項に記載の癌を治療するための医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、癌の治療に使用するための、ADMのC末端部分、ADMのaa43〜52(配列番号1):APRSKISPQGY−NH2、に結合する抗ADM抗体又は抗ADM抗体フラグメント又は抗ADM非Igスキャフォールドスキャフォールドである。
【0002】
本発明の主題は、一実施形態において、請求項1に記載の癌の治療に使用するための抗ADM抗体又は抗ADM抗体フラグメント又は抗ADM非Igスキャフォールドであって、ここで抗ADM抗体又は抗ADM抗体フラグメント又は抗ADM非Igスキャフォールドは、結合するために、ADMのC末端部分、ADMのaa43〜52(配列番号1):APRSKISPQGY−NH2、内のC末端がアミド化されたチロシン残基の存在を必要とする。
【背景技術】
【0003】
ペプチドアドレノメデュリン(ADM)は、52アミノ酸を含む新規血圧降下ペプチドとして1993年に初めて記述され(Kitamura,K.,et al.,“Adrenomedullin:A Novel Hypotensive Peptide Isolated From Human Pheochromocytoma”,Biochemical and Biophysical Research Communications,Vol.192(2),pp.553−560(1993))、それは、ヒト褐色細胞種(pheochromocytome)から単離された(配列番号2)。同年に185個のアミノ酸を含む前駆体ペプチドをコードするcDNA及びその前駆体ペプチドの完全なアミノ酸配列をもまた記載された。特に、N末端に21アミノ酸のシグナル配列含む、前駆体ペプチドは、「プレプロアドレノメデュリン」(プレプロADM)と呼ばれる。本明細書において、指定されたすべてのアミノ酸位置は、通常、185アミノ酸を含むプレプロADMに関する。ペプチドアドレノメデュリン(ADM)は、52個のアミノ酸(配列番号2)を含むペプチドであり、プレプロADMのアミノ酸95〜146を含み、タンパク質分解切断によって形成される。現在まで、実質的に、わずかなプレプロADMの開裂で形成されたペプチドフラグメント、特に、生理活性ペプチドアドレノメデュリン(ADM)及びプレプロADMのシグナルペプチドの21アミノ酸に続く20個のアミノ酸を含むペプチド(22〜41)「PAMP」しか、より正確に特徴付けされていない。1993年のADMの発見及び特徴付けは、集中的な研究活動を引き起こし、その結果は、様々なレビュー論文、本明細書の文脈、特にADMに貢献する「ペプチド」の問題で見出された論文となっている参照(論説、Takahashi,K.,”Adrenomedsu11in: from a pheochromocytoma to the eyes”,Peptides,Vol.22,p.1691(2001))及び(Eto,T.,”A review of the biological properties and clinical implications of adrenomedullin and proadrenomedullin N−terminal 20 peptide(PAMP),hypotensive and vasodilating peptides”,Peptides,Vol.22,pp.1693−1711(2001))でまとめられている。さらなる総説は、(Hinson,et al.,”Adrenomedullin,a Multifunctional Regulatory Peptide”,Endocrine Reviews,Vol.21(2),pp.138−167(2000))である。これまでの科学的な研究では、特に、ADMは多機能調節ペプチドとみなされてもよいことが、見出されている。それは、グリシンによって伸長した非活性形態が循環器へ放出される(Kitamura,K.,Ret al.,“The intermediate form of glycine−extended adrenomedullin is the major circulating molecular form in human plasma”,Biochem.Biophys.Res.Commun.,Vol.244(2),pp.551−555(1998).要約のみ)。ADMに特異的であり、おそらく同様にADMの効果を調節する結合タンパク質も存在する(Pio.R.,et al.,“Complement Factor H is a Serum−binding Protein for adrenomedullin,and the Resulting Complex Modulates the Bioactivities of Both Partners”,The Journal of Biological Chemistry,Vol.276(l5),pp.12292−12300(2001))。これまでのところ、調査において、第一に重要なADM並びにPAMPのこれらの生理学的効果は、血圧に影響を与える効果であった。
【0004】
従って、ADMは有効な血管拡張剤であり、従って、ADMのC末端部分の特定のペプチドセグメントと降圧効果とを関連付けることが可能である。さらに、プレプロADMから形成された上述のさらなる生理活性ペプチドPAMPは、ADMとは異なる作用機序を有するような場合でさえ、同様に血圧降下作用を示すことが見出されている(参照 上記の総説論文((Eto,T.,“A review of the biological properties and clinical implications of adrenomedullin and proadrenomedullin N−terminal 20 peptide(PAMP),hypotensive and vasodilating peptides”,Peptides,Vol.22,pp.1693−1711(2001))及び(Hinson,et.al.,“Adrenomedullin, a Multifunctional Regulatory.Peptide”,Endocrine Reviews,Vol.21(2),pp.138〜167(2000))に加えて、(Kuwasako,K.,et al.,”Purification and characterization of PAMP−12(PAMP−20)in porcine adrenal medulla as a major endogenous biologically active peptide”,FEBS Lett,Vol.414(1),pp.105−110(1997).要約のみ)、(Kuwasaki,K,et al,“Increased plasma proadrenomedullin N−terminal 20 peptide in patients with essential hypertension”,Ann.Clin.Biochem.,Vol.36(Pt.5),pp.622−628(1999).要約のみ)、又は、(Tsuruda,T.,et al,”Secretion of proadrenomedullin N−terminal20 peptide from cultured neonatal rat cardiac cells”,Life Sci.,Vol.69(2),pp.239−245(2001).要約のみ)及び、欧州特許出願公開第0622458号明細書を参照)。さらに、循環及び他の生物学的液体中で測定可能なADMの濃度は、病理学的状態の数において、健常の対照者内で見出される濃度よりも有意に高いことが見出された。従って、急性期ショック及び敗血症及び敗血症性ショックにおける、うっ血性心不全、心筋梗塞、腎疾患、高血圧性疾患、糖尿病患者におけるADMレベルは、異なる程度までではあるが、有意に増加する。PAMP濃度は、前記病理学的状態の一部でも増加するが、血漿レベルはADMと比較してより低い(Eto,T.,“A review of the biological properties and clinical implications of adrenomedullin and proadrenomeduUin N−terminal 20 peptide(PAMP),hypotensive and vasodilating peptides”,Peptides,Vol.22,pp.1693−1711(2001));page 1702))。さらに、ADMの異常に高い濃度が敗血症で観察され、敗血症性ショックで最高濃度が観察されることが知られている((Eto,T.,”A review of the biological properties and clinical implications of adrenomedullin and proadrenomedullin N−terminal 20 peptide(PAMP),hypotensive and vasodilating peptides”,Peptides,Vol.22,pp.1693−1711(2001))及び(Hirata, et al.,“Increased Circulating Adrenomedullin, a Novel Vasodilatory Peptide, in Sepsis”,Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism,Vol.81(4),pp.1449−1453(1996))、(Ehlenz, K.,et al,”High levels of circulating adrenomedullin in severe illness:Correlation with C−reactive protein and evidence against the adrenal medulla as site of origin”,Exp Clin Endocrinol Diabetes, Vol.105,pp.156−162(1997))、(Tomoda,Y.,et al,“Regulation of adrenomedullin secretion from cultured cells”,Peptides,Vol.22,pp.1783−1794(2001))、(Ueda,S.,et al,“Increased Plasma Levels of Adrenomedullin in Patients with Systemic Inflammatory Response Syndrome”, Am.J.Respir.Crit.Care Med.,Vol.160,pp.132−136(1999))及び(Wang,P.,”Adrenomedullin and cardiovascular responses in sepsis”,Peptides,Vol.22,pp.1835−1840(2001)を参照)
【0005】
当技術分野で公知であることは、診断目的、特に、敗血症の診断、心臓の診断及び癌の診断の範囲内において、生物学的液体中のアドレノメデュリン免疫反応性を識別するためのさらなる方法である。国際公開第2004/090546号によれば、全体のプレプロアドレノメデュリンのアミノ酸(45〜92)を含むプロアドレノメデュリンの中間領域部分ペプチドが、特に、中央のプロADMの配列を特異的に認識する少なくとも1つの標識された抗体で働くイムノアッセイを用いて測定される(国際公開第2004/090546号)。
【0006】
国際公開第2004/097423号は、診断、予後、及び心血管疾患の治療のためのアドレノメデュリンに対する抗体の使用を記載している。ADM受容体を遮断することによる疾患の治療は、当技術分野で記載されており(例えば、国際公開第2006/027147、PCT/EP2005/012844)、前記疾患が、敗血症、敗血症性ショック、心臓血管疾患、感染症、皮膚疾患、内分泌疾患、代謝性疾患、消化器疾患、癌、炎症、血液疾患、呼吸器疾患、筋骨格疾患、神経系疾患、泌尿器疾患であってもよい。
【0007】
ペプチド(ADM22−52)[1]及び小分子ADM受容体アンタゴニスト[2]並びにADM受容体[3]若しくはADM[4]のいずれかに対する抗体の使用を含む、腫瘍細胞の成長を抑制するためのADMシグナル系を調節することの可能性が記載されている。より詳細には、抗ADM抗体の使用が以下に記載されている:ポリクローナル抗ADM1−52抗体を用いるアドレノメデュリンの中和がインビトロにおけるヒト神経膠芽腫の成長を阻害し、インビボで、腫瘍異種移植片の成長を抑制することが記載されている[5]。使用した抗体は、全長ADM 1−52に対してのみ完全な反応性を示し、一方で、N末端が切断されたADMペプチド改変体に対しては顕著に減少した。
【0008】
モノクローナル抗ADM抗体(MoAb−G6)は、100μg/mLで適用した場合、いくつかの腫瘍細胞株(NCI−H157、NCI−H720、MCF−7、NIH:OVCAR−3)の成長を30〜50%抑制することが示された[6]。MoAb−G6は、ペプチドのプレプロADM116〜146(T−V−Q−K−L−A−H−Q−I−Y−Q−F−T−D−K−D−K−D−N−V−A−P−R−S−K−I−S−P−Q−G−Y−NH2(配列番号3))(P072とも呼ばれる)で免疫して開発されたIgA型抗体である[7]。モノクローナル抗体MoAb−G6の正確なエピトープは知られていない。
【0009】
モノクローナル抗体MoAb−G6は、ADMの生物活性を中和すると言われ(米国特許第7939639号)、その受容体へADMが結合することを完全に阻害することが示された。国際公開第2006/027147号は、ADM受容体に対するバインダー(抗体を含む)で癌を治療するアプローチを記述する。
【発明の概要】
【0010】
本発明の主題は、癌の治療に使用するための、ADMのC末端部分、ADMのaa43〜52(配列番号1):APRSKISPQGY−NH2に結合する抗ADM抗体又は抗ADM抗体フラグメント又は抗ADM非Igスキャフォールドである。
【0011】
ADMのC末端部分、ADMのaa43〜52(配列番号1):APRSKISPQGY−NH2に結合する抗ADM抗体又は抗ADM抗体フラグメント又は抗ADM非Igスキャフォールドは、癌を治療する場合に、公知の抗体と比較して、良好な特性を示す。ADMのC末端部分、ADMのaa43〜52(配列番号1):APRSKISPQGY−NH2に結合する抗ADM抗体又は抗ADM抗体フラグメント又は抗ADM非Igスキャフォールドは、公知のADM抗体と比較して有意に腫瘍増殖を減少させる能力を有する。
【0012】
このような抗体は、CT−H、CT−H−1、CT−H−2、CT−H−3、CT−H−Gly、CT−H−OH(表3)からなる群から選択されてもよく、それは、以下に記載されている:
・群CT−H、CT−H−1、CT−H−2、CT−H−3からの抗体は、ADMのC末端部分、ADMのaa43〜52(配列番号1):APRSKISPQGY−NH2に結合する抗ADM抗体又は抗ADM抗体フラグメント又は抗ADM非Igスキャフォールドスキャフォールドであって、ビオチン−FTDKDKDNVAPRSKISPQGY−NH2(配列番号4)に結合し、比較可能な条件下において、ビオチン−FTDKDKDNVAPRSKISPQGY−NH2(配列番号4)への結合と比較して、ビオチン−FTDKDDNVAPRSKISPQGYG−OH(配列番号5)へ20%の未満、好ましくは10%未満、より好ましくは5%未満、及び、最も好ましくは1%未満結合するものとして、定義される。
・抗体CT−H−Glyは、ADMのC末端部分、ADM(配列番号1)のaa43〜52に結合する抗ADM抗体又は抗ADM抗体フラグメント又は抗ADM非Igスキャフォールドスキャフォールドとして定義され、ビオチン−FTDKDKDNVAPRSKISPQGY−NH2(配列番号4)に結合し、比較可能な条件下において、ビオチン−FTDKDKDNVAPRSKISPQGY−NH2(配列番号4)への結合と比較して、ビオチン−FTDKDDNVAPRSKISPQGYG−OH(配列番号5)へ100%以上、好ましくは200%以上、より好ましくは300%以上、及び、最も好ましくは400%以上結合する。
・抗体CT−H−OH、ADMのC末端部分、ADM(配列番号1)のaa43〜52に結合する抗ADM抗体又は抗ADM抗体フラグメント又は抗ADM非Igスキャフォールドスキャフォールドとして定義され、ビオチン−FTDKDKDNVAPRSKISPQGY−NH2(配列番号4)に結合し、比較可能な条件下において、ビオチン−FTDKDKDNVAPRSKISPQGY−NH2(配列番号..)への結合と比較して、ビオチン−FTDKDKDNVAPRSKISPQGY−OH(配列番号4)へ500%以上、好ましくは1000%以上、より好ましくは1500%以上、及び、最も好ましくは2500%以上結合する。
【0013】
明細書全体を通して、ADMはアドレノメデュリンを意味する。明細書を通じて、本発明の「抗体」又は「抗体フラグメント」又は「非Igスキャフォールド」はADMに結合することが可能であり、従って、ADMに指向し、従って、「抗ADM抗体」、「抗ADM抗体フラグメント」又は「抗ADM非Igスキャフォールド」と呼ぶことができる。
【0014】
本発明の別の実施形態において、本発明によって提供される、抗ADM抗体、抗ADM抗体フラグメント、又は抗ADM非Igスキャフォールドは、循環しているADMへ結合することが可能であり、従って、循環するADMに向けられる。
【0015】
抗アドレノメデュリン(ADM)抗体はADMに特異的に結合する抗体であり、抗アドレノメデュリン抗体フラグメントは、ADM抗体のフラグメントであって、前記フラグメントはADMに特異的に結合する。抗ADM非Igスキャフォールドは、ADMに特異的に結合する非Igスキャフォールドである。ADMへの特異的な結合は、他の抗原に結合することを同様に許容する。これは、当該特異性が、抗体が惹起されたもの以外の他のポリペプチドと交差反応できることを排除しないことを意味する。これはまた、本発明の抗ADM抗体フラグメント又は抗ADM非Igスキャフォールドの特異性にも関係する。
【0016】
本発明の主題は、一実施形態において、抗ADM抗体又は抗ADM抗体フラグメント又は抗ADM非Igスキャフォールドが、癌の治療に使用するためのものであって、ここで、前記抗ADM抗体又は抗ADM抗体フラグメント又は抗ADM非Igスキャフォールドが、結合のために、ADMのC末端部分、ADMのaa43〜52(配列番号1):APRSKISPQGY−NH2内のC末端がアミド化されたチロシン残基の存在を必要とする。
【0017】
結合するために、ADMのC末端部分、ADMのaa43〜52(配列番号1):APRSKISPQGY−NH2内のC末端がアミド化されたチロシン残基の存在を必要とする抗体は、以下のように定義される:ビオチン−FTDKDKDNVAPRSKISPQGY−NH2(配列番号4)に結合し、比較可能な条件下において、ビオチン−FTDKDKDNVAPRSKISPQGY−NH2(配列番号4)への結合と比較して、ビオチン−FTDKDDNVAPRSKISPQGYG−OH(配列番号5)へ20%の未満、好ましくは10%未満、より好ましくは5%未満、及び、最も好ましくは1%未満結合する抗体である。
【0018】
換言すれば、本発明の主題は、一実施形態において、癌の治療に使用するための抗ADM抗体又は抗ADM抗体フラグメント又は抗ADM非Igスキャフォールドであって、ここで、前記抗ADM抗体又は抗ADM抗体フラグメント又は抗ADM非Igスキャフォールドは、ADMのC末端部分、ADMのaa43〜52(配列番号1):APRSKISPQGY−NH2内のC末端がアミド化されたチロシン残基へ結合し、比較可能な条件下において、ビオチン−FTDKDKDNVAPRSKISPQGY−NH2(配列番号4)への結合と比較して、ビオチン−FTDKDDNVAPRSKISPQGYG−OH(配列番号5)へ20%の未満、好ましくは10%未満、より好ましくは5%未満、及び、最も好ましくは1%未満結合する。比較可能な条件とは、実施例1に記載されているアッセイのような、同一の結合アッセイの使用を意味する。
【0019】
ADMのC末端部分のC末端アミド化されたチロシン残基の存在を必要とする抗体は、ADMの遊離C末端アミド化チロシン残基(ADMの位置52)を含む、ADMのC末端部分を含む抗原で免疫することによって開発され得る。そのような免疫後、ADMのC末端部分のC末端アミド化されたチロシン残基の存在を必要とする抗体は、ADMの遊離C末端アミド化チロシン残基(ADMの位置52)を含むADMのC末端部分、及び、関連するペプチドへの結合を試験することによる、この免疫工程より選択され得る(モノクローナル抗体の開発の場合、代表的なハイブリドーマ細胞株から選択された抗体が試験される)。このような抗体は、遊離C末端アミド化チロシンを含むADMのC末端部分に結合しなければならないが、C末端がアミド基の代わりにCOOH基を有するC末端のチロシン残基(ADMの位置52)を含むADMのC末端部分には結合してはならない。それはまた、少なくともC末端チロシン残基(ADMの位置52)を欠くADMのC末端部分に結合してはならない。
【0020】
C末端がアミド化された生物学的に活性があるアドレノメデュリンの血漿中濃度は、C末端グリシンが伸長した生物学的に不活性なアドレノメデュリンバリアントよりも、約5倍少ないことが記載されている(1 Kitamura K,Kato J,Kawamoto M,Tanaka M,Chino N,Kangawa K,Eto T.The intermediate form of glycine−extended adrenomedullin is the major circulating molecular form in human plasma. Biochemical and biophysical research communications 1998;244:551−5.)。従って、C末端がアミド化された生物学的に活性があるアドレノメデュリンに特異的に結合し、本質的にはC末端のグリシンが伸長した生物学的に不活性なアドレノメデュリンバリアントに結合しない抗体は、インビボでC末端アミド化された生物学的に活性なアドレノメデュリンと同様に結合を達成するために、この差動(differential)結合特異性のない抗体と比較して、少なくとも約5倍少ない量が適用され得る。さらに、アミド化されたC末端に特異的に結合しない抗体はまた、プロ又はプレプロアドレノメデュリンへ結合してもよく、予測不可能に早い速度で、この結合によって消費されてもよい。従って、及びアミド化されたC末端に対する結合特異性を有する抗体は、インビボでC末端がアミド化された生物学的に活性なアドレノメデュリンと同様の結合を達成するために、この差動結合特異性のない抗体と比較して、少なくとも約5倍少ない量が適用され得ることが期待される。より少ない用量の治療用化合物を適用することは、より少ない副作用と関連し、また、よりコスト効果的である。
【0021】
ADMは、種々の腫瘍で発現しており、そこで、分裂促進的細胞の分子及び生理学的特徴のいくつかを悪化させる。ADMは、いくつかの癌タイプで成長を刺激する分裂促進因子であって、より攻撃的な腫瘍表現型を促進することが示されている。また、ADMは、癌細胞に対するアポトーシス生存因子及び免疫応答の間接的な抑制因子である。ADMは、固形腫瘍近傍の典型的な特徴である、低酸素圧に曝された環境で重要な役割を果たしている。これらの条件下で、ADMは、低酸素誘導因子1(HIF−1)依存性経路を介してアップレギュレートされ、血管新生を促進する強力な血管新生因子として働く[8、9]。
【0022】
本発明の特定の実施形態において、前記抗ADM抗体又は抗ADM抗体フラグメント又は抗ADM非Igスキャフォールドは、癌の治療における使用のためであって、ここで、前記癌は:前立腺、乳房、結腸、肺、膀胱、皮膚、子宮、頸部、口腔及び咽頭、胃、卵巣、腎臓、膵臓、非ホジキンリンパ腫、白血病、肝臓、食道、精巣、甲状腺、中枢神経系、喉頭、胆嚢、形質細胞腫(plasmocytome)、並びにホジキン病(morbus hodgekin)からなる群から選択される。
【0023】
本発明の別の特定の実施形態において、前記抗ADM抗体又は抗ADM抗体フラグメント又は抗ADM非Igスキャフォールドは、癌の治療における使用のためであって、ここで、前記癌は:前立腺、乳房、結腸、肺、膀胱、皮膚、子宮、頸部、腎臓、膵臓、口腔及び咽頭、胃、並びに卵巣からなる群から選択される。
【0024】
特定の実施形態において、治療される癌は、K−RAS陽性の癌である。 RASタンパク質は、細胞内シグナルを伝達する小さなGTPアーゼ酵素である。細胞の増殖及び生存に中心的な役割を果たすため、それらは細胞に重要である。ほぼ30年前に発見されたこれらの遺伝子の一つである、K−RASは、膵臓癌の90%、結腸癌の40%、及び非小細胞肺癌の20%を含む、ヒトの腫瘍の30%で変異している。
【0025】
活性化しているK−RASの変異は、ヒトの癌において最も頻度の高い発癌性変異である。K−RAS変異を有する癌は高悪性であり、標準的な治療にほとんど反応しない。K−RASの持続的な活性化及びシグナル伝達経路の下流の刺激は、多くの癌の特徴である、持続的増殖、代謝再プログラミング、抗アポトーシス、腫瘍微小環境の再構築、免疫応答の浸潤、細胞遊走および転移を駆動する(Pylayeva−Gupta et al,2011)。Pylayeva−Gupta Y,Grabocka E,Bar−Sagi D(2011) RAS 発がん遺伝子:weaving a tumorigenic web.Nat Rev Cancer 11:761−774.
【0026】
臨床の現場では、K−RAS変異は、予後が一般に不良であり、治療の選択肢が限られている人患者のサブセットを定義する。RASタンパク質を直接又は間接的に標的とする薬剤が存在せず、RAS駆動型癌に効果的な治療が存在しない。従って、RAS及びK_RAS癌は、標的療法を用いる治療から除外されている。
【0027】
単一のアミノ酸置換、特に、K−Ras遺伝子における単一ヌクレオチド置換は、突然変異を活性化する原因である。ほとんどのKRAS変異は、遺伝子のコドン12又は13で起こる。種々の実験室での方法は、KRAS遺伝子の変異の状態を評価するために開発されている。対立遺伝子特異的PCR、溶融曲線分析を用いるリアルタイムPCR法及び核酸配列決定法を含むこれらの方法の多くは、KRAS変異のためのアンダーソンSM実験方法、Expert Rev Mol Diagn.2011 Jul;11(6):635−42.で記述されるような、腫瘍サンプル中の組織不均一性に対処するための適切な分析性能を提供する。K−RAS試験の現在のゴールドスタンダードは、PCR増幅産物の直接的シークエンシングのままである(Nollau P,Wagener C:Methods for detection of point mutations:performance and quality assessment.IFCC Scientific Division,Committee on Molecular Biology Techniques.Clin Chem 1997,43:1114−1128)。
【0028】
アドレノメデュリン(ADM)は、Wangら(2014)[Wang L,Gala M,Yamamoto M,Pino MS,Kikuchi H,Shue DS,Shirasawa S,Austin TR,Lynch MP,Rueda BR,Zukerberg LR,Chung DC:Adrenomedullin is a therapeutic target in colorectal cancer,Int.J.Cancer:134,2041−2050(2014)]によって、特に、固形腫瘍で発生する低酸素条件下で、KRAS癌遺伝子を発現するヒト大腸癌細胞株の中で最も大幅にアップレギュレートされた遺伝子の一つとして同定された。結腸腫瘍異種移植片において、ADMの様々なコード領域に対する短鎖ヘアピンRNA(shRNA)によるADMのインビボノックダウンは、血管新生をブロックし、アポトーシスを刺激し、腫瘍抑制をもたらした。CRCを有する56人の患者のうち、有意に高いADMの発現レベルが、KRAS変異を保有するサンプルにおいて観察された。変異KRASは、低酸素環境での腫瘍の生存に特異的な役割を果たし、ADMをアップレギュレートするために相乗的に作用し得ることが示唆されている。まとめると、変異K−RasによるADMの活性化増強は、結腸腫瘍の低酸素ストレス条件への適応に重要な役割を果たしている可能性がある。
【0029】
本発明の抗ADM抗体又は抗アドレノメデュリン抗体フラグメント又は抗ADM非Igスキャフォールドは、ヒトADMに対し、親和性定数(affinity constant)が10-7M未満、好ましくは10-8M未満、好ましい親和性定数は10-9M未満、最も好ましくは10-10M未満であるような親和性を示す。当業者は、高用量の化合物を適用することによって、低親和性を補償することも考えられ、この測定値が、本発明の範囲外を導かないであろうことを知っている。親和性定数は、実施例1に記載の方法に従って決定されてもよい。
【0030】
本発明の抗体は、特異的に抗原に結合する免疫グロブリン遺伝子によって実質的にコードされる1以上のポリペプチドを含むタンパク質である。認識される免疫グロブリン遺伝子は、カッパ、ラムダ、アルファ(IgA)、ガンマ(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、デルタ(IgD)、イプシロン(IgE)及びミュー(IgM)定常領域遺伝子、並びに、無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子を含む。全長免疫グロブリン軽鎖は、一般的に約25Kd又は長さが214アミノ酸である。全長免疫グロブリン重鎖は、一般に、約50Kd又は長さが446アミノ酸である。軽鎖は、NH2末端で可変領域遺伝子(長さが約110アミノ酸)及びCOOH末端のカッパ又はラムダ定常領域遺伝子によってコードされている。重鎖は、同様に可変領域遺伝子(長さ約116アミノ酸)及び他の定常領域遺伝子の一つによりコードされている。
【0031】
抗体の基本構造単位は、一般的に同一免疫グロブリン鎖の2つの対からなる四量体であって、各ペアが、1つの軽鎖及び1つの重鎖を有する。各対において、軽鎖及び重鎖可変領域は抗原に結合し、定常領域は、エフェクター機能を媒介する。免疫グロブリンは、例えば、Fv、Fab、及びF(ab’)2並びに二機能性(bifunctional)ハイブリッド抗体及び一本鎖を含む、様々な他の形態も示す(例えば、Lanzavecchia et al.,Eur.J.Immunol.17:105,1987;Huston et al,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,85:5879−5883,1988; Bird et al.,Science 242:423−426,1988;Hood et al,Immunology,Benjamin,N.Y.,2nd ed.,1984;Hunkapiller and Hood,Nature 323:15−16,1986)。免疫グロブリンの軽鎖又は重鎖の可変領域はまた、相補性決定領域(CDR)とも呼ばれる、3つの超可変領域によって中断されるフレームワーク領域を含む(Sequences of Proteins of Immunological Interest,E.Kabat et al.,U.S.Department of Health and Human Services,1983 参照)。上述のように、CDRは抗原のエピトープへの結合に主に関与している。免疫複合体は、抗体、例えば、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体又はヒト抗体又は機能的抗体フラグメントであって、抗原に特異的に結合する。
【0032】
キメラ抗体は、その軽鎖及び重鎖遺伝子が、異なる種に属する免疫グロブリン可変及び定常領域遺伝子から、典型的には遺伝子工学によって構築された抗体である。例えば、マウスモノクローナル抗体由来の遺伝子の可変セグメントは、ヒト定常セグメント、例えばカッパ及びガンマ1又はガンマ3へ結合され得る。一実施例において、治療用キメラ抗体は、従って、マウス抗体由来の可変若しくは抗原結合ドメイン、及び、ヒト抗体(他の哺乳動物種を使用することができるが)からの定常若しくはエフェクタードメインから構成されるハイブリッドタンパク質である、又は、可変領域が分子技術によって製造され得る。キメラ抗体を作製する方法は当技術分野でよく知られている。例えば、米国特許第5807715号を参照。「ヒト化」免疫グロブリンは、ヒトフレームワーク領域及び非ヒト(例えば、マウス、ラット、又は合成等)免疫グロブリン由来の1以上のCDRを含む免疫グロブリンである。CDRを提供する非ヒト免疫グロブリンは「ドナー」と呼ばれ、フレームワークを提供するヒト免疫グロブリンは、「アクセプター」と呼ばれる。一実施形態では、全てのCDRは、ヒト化免疫グロブリンにおけるドナー免疫グロブリンに由来する。定常領域は存在する必要はないが、それらがある場合、それらはヒト免疫グロブリン定常領域と実質的に同一でなければならず、すなわち、少なくとも約85〜90%、例えば約95%以上同一である。従って、ヒト化免疫グロブリンの全ての部分は、おそらくCDRを除いて、天然のヒト免疫グロブリン配列の対応する部分と実質的に同一である。「ヒト化抗体」は、ヒト化軽鎖及びヒト化重鎖免疫グロブリンを含む抗体である。ヒト化抗体は、CDRを提供するドナー抗体と同じ抗原に結合する。ヒト化免疫グロブリン又は抗体のアクセプターフレームワークは、ドナーフレームワークから採取したアミノ酸による置換数が限定されてもよい。ヒト化又は他のモノクローナル抗体は、抗原結合又は他の免疫グロブリン機能に実質的に影響を及ぼさない追加の保存的アミノ酸置換を有し得る。典型的な保存的置換は、gly、ala;val、ile、leu;asp、glu;asn、gln;ser、thr;lys、arg;及びphe、tyr等である。ヒト化免疫グロブリンは、遺伝子工学によって構築することができる(例えば、米国特許第5585089を参照のこと)。ヒト抗体は、軽鎖及び重鎖遺伝子がヒト起源である、抗体である。
【0033】
ヒト抗体は、当技術分野で公知の方法を用いて作製することができる。ヒト抗体は、目的の抗体を分泌するヒトB細胞を不死化することにより製造することができる。不死化は、例えば、EBV感染によって、又はトリオーマ細胞を産生するために骨髄腫若しくはハイブリドーマ細胞とヒトB細胞とを融合することによって達成することができる。ヒト抗体はまた、ファージディスプレイ法で製造(例えば、Dowerら、国際出願公開第91/17271号;McCaffertyら,国際出願公開第92/001047号;及び、Winter,国際出願公開第92/20791号)又は、ヒトコンビナトリアルモノクローナル抗体ライブラリーから選択され得る(Morphosysのウェブサイトを参照)。ヒト抗体はまた、ヒト免疫グロブリン遺伝子を保有するトランスジェニック動物を用いて調製することができる(例えば、Lonbergら、国際出願公開第93/12227号、及び、Kucherlapati、国際出願公開第91/10741号を参照)。
【0034】
従って、抗ADM抗体は、当技術分野で既知のフォーマットを有してもよい。例としては、ヒト抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、CDRグラフト抗体である。好適な実施形態において、本発明に係る抗体は、組換えにより製造した抗体、例えばIgG、典型的な完全長の免疫グロブリン、又は、重鎖及び/又は軽鎖の少なくともF−可変ドメインを含む抗体フラグメント、例えば、これに限定されないが、Fabミニボディ、短鎖Fab抗体、エピトープタブを有する一価Fab抗体、例えばFab−V5Sx2;CH3ドメインと二量体化した二価Fab(ミニ抗体);二価Fab若しくは多価Fab、例えば、異種ドメインの助けを借りた多量体を介して形成された、例えば、dHLXドメイン(例えば、Fab−dHLX−FSx2)の二量体化を介した;F(ab’)2フラグメント、scFvフラグメント、多量体化した多価及び/又は多特異的scFvフラグメント、二価及び/又は二重特異的抗体、BITE(登録商標)(二重特異的T細胞エンゲージャ(engager))、三重機能抗体、多価抗体、例えば、G以外異なるクラス由来;シングルドメイン抗体、例えば、ラクダ科若しくは魚類免疫グロブリン及び多数由来のナノボディ、を含む化学的に結合した抗体(フラグメント抗原結合)である。
【0035】
好ましい実施形態において、抗ADM抗体フォーマットは、Fvフラグメント、scFvフラグメント、Fabフラグメント、scFabフラグメント、F(ab)2フラグメント及びscFv−Fc融合タンパク質からなる群から選択される。他の好ましい実施形態では、抗体フォーマットは、scFabフラグメント、Fabフラグメント、scFvフラグメント及びバイオアベイラビリティ(bioavailability)最適化コンジュゲート、例えばPEG化フラグメントを含む群から選択される。最も好ましいフォーマットの1つは、scFabフォーマットである。
【0036】
抗ADM抗体に加えて、他の生体高分子スキャフォールドは、ターゲット分子を複合化することが当該分野で知られており、高度に標的特異的な生体高分子を生成するために使用されてきた。例としては、アプタマー、スピーゲルマー、アンチカリン及びコノトキシンである。アプタマーは、特定の標的分子に結合するオリゴヌクレオチド酸又はペプチド分子である。シュピーゲルマーは、特定の標的分子に結合するL−リボース単位から構築されたRNA様分子である。アンチカリンは、特定の標的分子に結合する人工的なタンパク質である。これらは、天然に結合するタンパク質のファミリーであるヒトリポカリンに由来する。アンチカリンは、モノクローナル抗体の代わりに使用されているが、約180アミノ酸のサイズで、約20kDaを有し、約8倍小さい(Gebauer M,Skerra A:Engineered protein scaffolds as next−generation antibody therapeutics. Current opinion in chemical biology 2009,13(3):245−255.;Wurch T,Pierre A,Depil S:Novel protein scaffolds as emerging therapeutic proteins: from discovery to clinical proof−of−concept. Trends in biotechnology 2012,30(ll):575−582.,Skerra A(June 2008).“Alternative binding proteins:anticalins − harnessing the structural plasticity of the lipocalin ligand pocket to engineer novel binding activities”.FEBS J.275(11):2677−83.)。
【0037】
非Igスキャフォールドは、タンパク質スキャフォールド又はペプチドスキャフォールドであってもよく、それらはリガンド又は抗原に結合することが可能であるように、抗体模倣物として使用されてもよい。非Igスキャフォールドは、テトラネクチンベース非Igスキャフォール(例えば、米国特許出願公開第2010/0028995号明細書に記載)、フィブロネクチンスキャフォールド(例えば、欧州特許第1266025号明細書に記載)、リポカリンベーススキャフォールド(例えば、国際公開第2011/154420号に記載)、ユビキチンスキャフォールド(例えば、国際公開第2011/073214号に記載)、トランファースキャフォールド(transferring scaffolds)(例えば、米国特許出願公開第2004/0023334号明細書に記載)、プロテインAスキャフォールド(例えば、欧州特許出願公開第2231860号明細書に記載)、アンキリンリピートベーススキャフォールド(例えば、国際公開第2010/060748号に記載)、マイクロプロテイン、好ましくはシスチンノットを形成するマイクロプロテインスキャフォールド(例えば、欧州特許出願公開第2314308号明細書に記載)、Fyn SH3ドメインベーススキャフォールド(例えば、国際公開第2011/023685号に記載)、EGFR−A−ドメインベーススキャフォールド(例えば、国際公開第2005/040229号に記載)及びクニッツ(Kunitz)ドメインベーススキャフォールド(例えば、欧州特許第1941867号明細書に記載)、からなる群から選択されてもよい。
【0038】
さらに、本発明の一実施形態において、抗アドレノメデュリン(ADM)抗体又は抗アドレノメデュリン抗体フラグメント又は抗ADM非Igスキャフォールドは、単一特異的である。単一特異的抗アドレノメデュリン(ADM)抗体又は単一特異的抗アドレノメデュリン抗体フラグメント又は単一特異的非Igスキャフォールドとは、標的ADM内の好ましくは少なくとも4、又は少なくとも5アミノ酸を包含する一つの特異的領域に結合する抗体又は抗体フラグメント又は非Igスキャフォールドを意味する。単一特異的抗アドレノメデュリン(ADM)抗体又は単一特異的抗アドレノメデュリン抗体フラグメント又は単一特異的非Igスキャフォールドとは、同一の抗原に対して全て親和性を有する抗アドレノメデュリン(ADM)抗体又は抗アドレノメデュリン抗体フラグメント又は抗ADM非Igスキャフォールドである。別の特別な実施形態において、抗ADM抗体又はADMに結合する抗体フラグメントは、単一特異的抗体である。単一特異的とは、前記抗体若しくは抗体フラグメントが、標的ADM内の好ましくは少なくとも4又は好ましくは少なくとも5アミノ酸を包含する1つの特異的領域へ結合することを意味する。単一特異的抗体又はフラグメントは、同一の抗原に対して全て親和性を有する抗体又はフラグメントである。モノクローナル抗体は、単一特異的であるが、単一特異的抗体はまた、一般的な生殖細胞からそれらを製造する以外の手段によって製造されてもよい。
【0039】
本発明の特定の実施形態では、抗体は、モノクローナル抗体又はそのフラグメントである。本発明の一実施形態において、抗ADM抗体又は抗ADM抗体フラグメントは、ヒト若しくはヒト化抗体である又はそれに由来する。特定の一実施形態において、一以上の(マウス)CDRが、ヒト抗体又は抗体フラグメントに移植される。
【0040】
本発明の1つの好ましい実施態様において、本発明にかかる抗体は、以下のように製造されてもよい:
【0041】
Balb/cマウスは、100μgのペプチド−BSAコンジュゲート(Peptide−BSA−Conjugate)(表1参照)を0日目及び14日目(100μLの完全フロイントアジュバント中で乳化させたもの)、及び、50μgを21日目及び28日目(100μLの不完全フロイントアジュバント中で乳化させたもの)に免疫した。融合実験の3日前に、100μL生理食塩水に溶解したコンジュゲート50μgを、動物1匹は腹腔内に、1匹は静脈内に、注射で与えられた。
【0042】
免疫したマウスの脾細胞と、骨髄腫細胞株SP2/0細胞を37℃で30秒間1mLの50%ポリエチレングリコールを用いて融合させた。洗浄後、細胞を96ウェル細胞培養プレートに播種した。ハイブリッドクローンは、HAT培地[20%ウシ胎児血清及びHATサプリメントを補充したRPMI1640培地]中で成長するものとして選択された。2週間後、HAT培地をHT培地と交換し、3継代後に、通常の細胞培養培地に戻した。
【0043】
細胞培養上清は、融合の三週間後の抗原特異的IgG抗体について最初にスクリーニングを行った。CT−H抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を選択するための基準は、ペプチドAPRSKISPQGY−NH2(配列番号1)に対して陽性結合であるが、ペプチドAPRSKISPQGY−COOH(配列番号1)に対して結合ネガティブであった。
【0044】
陽性反応を示したマイクロ培養物は、増殖のために24ウェルプレートに移した。再試験後に選択した培養物はクローン化され、限界希釈法を用いて再クローニングし、アイソタイプを決定した。
【0045】
(Lane,R.D.“A short−duration polyethylene glycol fusiontechnique for increasing production of monoclonal antibody−secreting hybridomas”,J.Immunol.Meth.81:223−228;(1985),Ziegler,B.et al.“Glutamate decarboxylase(GAD) is not detectable on the surface of rat islet cells examined by cytofluorometry and complement−dependent antibody−mediated cytotoxicity of monoclonal GAD antibodies”,Horm.Metab.Res.28:11−15,(1996))。
【0046】
抗体は、以下の手順に従って、ファージディスプレイを用いて製造されてもよい:
【0047】
ヒトナイーブ抗体遺伝子ライブラリーHAL7/8を、アドレノメデュリンペプチドに対する組換え単鎖F−可変ドメイン(scFv)の単離のために使用した。抗体遺伝子ライブラリーは、アドレノメデュリンペプチド配列へ2つの異なるスペーサを介して連結されたビオチンタグを含むペプチドの使用を含むパニング戦略を用いてスクリーニングした。非特異的結合抗原及びストレプトアビジン結合抗原を使用するパニングラウンドの混合が、非特異的バインダーのバックグラウンドを最小化するために使用された。パニングの第三ラウンドで溶出したファージは、モノクローナルscFvを発現する大腸菌株の生成のために使用された。これらのクローン株の培養物からの上清を、直接、抗原ELISA試験に使用した(Hust,M.,Meyer,T.,Voedisch,B.,Riilker,T,,Thie,H.,El−Ghezal,A.,Kirsch,M.I.,Schutte,M.,Helmsing,S.,Meier,D.,Schirrmann,T.,Diibel,S.,2011.A human scFv antibody generation pipeline for proteome research.Journal of Biotechnology 152,159−170;Schutte,M.,Thullier,P.,Pelat,T.,Wezler,X.,Rosenstock,P.,Hinz,D.,Kirsch,M.I.,Hasenberg,M.,Frank,R., Schirrmann, T.,Gunzer,M.,Hust,M.,Diibel,S.,2009.Identification of a putative Crf splice variant and generation of recombinant antibodies for the specific detection of Aspergillus fumigatus.PloS One 4,e6625、も参照)。
【0048】
マウス抗体のヒト化は、以下の手順に従って行っても良い:マウス起源の抗体のヒト化するために、相補性決定領域(CDR)及び抗原を有するフレームワーク領域(FR)の構造的相互作用のために、抗体配列をモデリングする。構造モデリングに基づいて、ヒト起源の適切なFRを選択し、マウスのCDR配列がヒトFRに移植される。CDR又はFRのアミノ酸配列の変異が、FR配列に対する種の変更によって廃止された構造的な相互作用を回復するために導入されてもよい。構造的な相互作用のこの回復は、ファージディスプレイライブラリーを用いるランダムなアプローチによって、又は、分子モデリングによって導かれる直接アプローチを介して達成されてもよい(Almagro JC,Fransson J.,2008.Humanization of antibodies.Front Biosci.2008 Jan 1;13:1619−33)。
【0049】
好ましい実施形態では、ADM抗体フォーマットは、Fvフラグメント、scFvフラグメント、Fabフラグメント、scFabフラグメント、F(ab)2フラグメント及びscFv−Fc融合プロテインからなる群から選択される。別の好ましい実施形態では、抗体フォーマットは、scFabフラグメント、Fabフラグメント、scFvフラグメント及びその生体利用能最適化コンジュゲート、例えば、PEG化フラグメントを含む群から選択される。
【0050】
最も好適なフォーマットの一つは、ヒト化抗体である。
【0051】
別の好ましい実施形態では、抗ADM抗体、抗ADM抗体フラグメント、又は抗ADM非Igスキャフォールドは、完全長抗体、抗体フラグメント、又は非Igスキャフォールドである。
【0052】
好ましい実施形態において、抗アドレノメデュリン抗体又は抗アドレノメデュリン抗体フラグメント又は抗アドレノメデュリン非Igスキャフォールドは、ADMに含まれる少なくとも長さ5アミノ酸のエピトープに対するものであり、結合することができる。
【0053】
特定の実施形態において、抗アドレノメデュリン抗体又は抗アドレノメデュリン抗体フラグメント又は抗アドレノメデュリン非Igスキャフォールドは、ADMに含まれる少なくとも長さ4アミノ酸のエピトープに対するものであり、結合することができる。
【0054】
特定の一実施形態において、前記抗アドレノメデュリン抗体又は抗アドレノメデュリン抗体フラグメント又は抗アドレノメデュリン非Igスキャフォールドは、癌の治療に使用するものであって、ここで、前記抗体又はフラグメント又はスキャフォールドは、ADM結合タンパク質1(補体因子H)ではない。
【0055】
特定の一実施形態において、前記抗アドレノメデュリン抗体又は抗アドレノメデュリン抗体フラグメント又は抗アドレノメデュリン非Igスキャフォールドは、癌の治療に使用するものであって、ここで、前記抗体又は抗体フラグメント又は非Igスキャフォールドは、ADMのaa43〜52(配列番号1):APRSKISPQGY−NH2の配列内の少なくとも4又は5アミノ酸の領域と結合する。
【0056】
特定の一実施形態において、前記抗アドレノメデュリン抗体又は抗アドレノメデュリン抗体フラグメント又は抗アドレノメデュリン非Igスキャフォールドは、他の癌の薬剤と組み合わせて使用される、癌の治療に使用するものである。特定の一実施形態において、前記抗アドレノメデュリン抗体又は抗アドレノメデュリン抗体フラグメント又は抗アドレノメデュリン非Igスキャフォールドは、ジトスタチカ(Zytostatika)、CD阻害剤、EGFR阻害剤、VEGFR阻害剤、TNFR阻害剤又はチロシンキナーゼ阻害剤と組み合わせて使用される、癌の治療に使用するものである。別の実施形態において、前記抗アドレノメデュリン抗体又は抗アドレノメデュリン抗体フラグメント又は抗アドレノメデュリン非Igスキャフォールドは、単独療法(mono−therapeuticum)として使用される。
【0057】
ジトスタチカ(Zytostatika)は、化学療法剤であり、当業者に知られており、以下を含む群から選択されてもよい:
【0058】
アビラテロン、アファチニブ、アリトレチノイン、アナストロゾル(Anastrozol)、バゼドキシフェン(Bazedoxifen)、ベバシズマブ、ビカルタミド(Bicalutamid)、ブレオマイシン、カペシタビン、カルボプラチン、セツキシマブ、シスプラチン、クロミフェン(Clomifen)、クリゾチニブ(Crizotimb)、シクロホスファミド、シプロテロン(Cyproteron)、ダブラフェニブ(Dabrafenib)、ダカルバジン(Dacarbazin)、ダサチニブ、ドセタキセル、ドキソルビシン、エンザルタミド、エピルビシン、エリブリン、エルロチニブ、エトポシド、エキセメスタン、フィルグラスチム、フルダラビン、フルオロウラシル、フルベストラント、ゲフィチニブ、ゲムシタビン、ヒドロキシカルバミド(Hydroxycarbamid)、イホスファミド、イマチニブ、イピリムマブ、イリノテカン、ラパチニブ、レナリドミド、レトロゾル(Letrozol)、メトトレキサート、マイトマイシン、ニロチニブ、オビヌツズマズ(Obinutuzumab)、オファツムマブ、オキサリプラチン、パクリタキセル、パニツムマブ、ペルメトレクセド(Permetrexed)、ペルツズマブ、ポマリドミド、ポナチニブ(Ponatinib)、ラロキシフェン、レゴラフェニブ、タモキシフェン、テモゾロミド、トラスツズマブ、ベムラフェニブ、ビンブラスチン、ビンフルニン(Vinflunin)、ビノレルビン、ビスモデギブ。
【0059】
一実施形態において、前記抗アドレノメデュリン抗体又は抗アドレノメデュリン抗体フラグメント又は抗アドレノメデュリン非Igスキャフォールドは、CD阻害剤と組み合わせて使用される、癌の治療に使用するものであって、ここで、前記CD阻害剤が、アフツズマブ、アレムツズマブ、ビバツズマブメルタンシン(Bivatuzumab mertansine)、ブリナツモマブ(Blinatumomab)、ブレンツキシマブベドチン、ダセツズマブ(Dacetuzumab)、エプラツズマブ、ガリキシマブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、イブリツモマブチウキセタン、イノツズマブ(Inotuzumab)オゾカマイシン、インテツムマブ(Intetumumab)、イラツムマブ(Iratumumab)、リンツズマブ(Lintuzumab)、ロルボツズマブメルタシン(Lorvotuzumab mertansine)、ルカツムマブ(Lucatumumab)、ルミリキシマブ(Lumiliximab)、ミラツズマブ(Milatuzumab)、モキセツモマブパスドトクス(Moxetumomab pasudotox)、オカラツズマブ(Ocaratuzumab)、オファツムマブ、リツキシマブ、サマリズマブ(Samalizumab)、タプリツモマブパプトクス(Taplitumomab paptox)、テプロツムマブ(Teprotumumab)、トシツモマブ(ベキサール)、ベルツズマブ及びボルセツズマブマフォドチン(Vorsetuzumab mafodotin)、を含む群から選択される。
【0060】
一実施形態において、前記抗アドレノメデュリン抗体又は抗アドレノメデュリン抗体フラグメント又は抗アドレノメデュリン非Igスキャフォールドは、EGFR阻害剤と組み合わせて使用される、癌の治療に使用するものであって、ここで、前記EGFR阻害剤が、セツキシマブ、エルツマキソマブ(Ertumaxomab)、イムガツズマブ(Imgatuzumab)、マツズマブ、ネシツムマブ(Necitumumab)、ニモツズマブ、パニツムマブ、パトリツマブ(Patritumab)、ペルツズマブ、トラスツズマブ、ザルツムマブ及びザツキシマブ(Zatuximab)を含む群から選択される。
【0061】
一実施形態において、前記抗アドレノメデュリン抗体又は抗アドレノメデュリン抗体フラグメント又は抗アドレノメデュリン非Igスキャフォールドは、VEGFR阻害剤と組み合わせて使用される、癌の治療に使用するものであって、ここで、前記VEGFR阻害剤が、アラシズマブペゴル(Alacizumab pegol)、イクルクマブ(Icrucumab)及びラムシルマブを含む群から選択される。
【0062】
一実施形態において、前記抗アドレノメデュリン抗体又は抗アドレノメデュリン抗体フラグメント又は抗アドレノメデュリン非Igスキャフォールドは、癌の治療に使用するものであって、ここで、前記TNFR阻害剤が、コナツムマブ(Conatumumab)、レキサツムマブ(Lexatumumab)、マパツムマブ及びチガツズマブ(Tigatuzumab)を含む群から選択される。
【0063】
特定の一実施形態では、前記抗アドレノメデュリン抗体又は抗アドレノメデュリン抗体フラグメント又は抗アドレノメデュリン非Igスキャフォールドは、ブレンツキシマブベドチン、ゲムツズマブオゾガマイシン、イブリツモマブチウキセタン、オファツムマブ、パニツムマブ、ペルツズマブ、リツキシマブ、トシツモマブ(ベキサール)及びトラスツズマブを含む群から選択される薬剤と組み合わせて使用する、癌の治療に使用するためのものである。
【0064】
別の好ましい実施形態では、前記抗アドレノメデュリン抗体又は抗アドレノメデュリン抗体フラグメント又は抗アドレノメデュリン非Igスキャフォールドは、アレムツズマブ、ベバシズマブ、ブレンツキシマブ(Brentuximab)、カツマキソマブ(Catumaxomab)、セツキシマブ、イブリツモマブ−チウキセタン、オファツムマブ、パニツムマブ、リツキシマブ、トラスツズマブを含む群から選択される薬剤と組み合わせて使用する、癌の治療に使用するためのものである。
【0065】
本発明の主題は、本発明にかかる、すなわち、本明細書に記載の実施態様の抗アドレノメデュリン抗体又は抗アドレノメデュリン抗体フラグメント又は抗アドレノメデュリン非Igスキャフォールドを含む医薬組成物である。本発明の主題は、単独療法として使用される、前記医薬組成物である。
【0066】
本発明の主題は、一実施形態において、ジトスタチカ(Zytostatika)、CD阻害剤、EGFR阻害剤、VEGFR阻害剤、TNFR阻害剤又はチロシンキナーゼ阻害剤と組み合わせて使用する、癌の治療に使用するための医薬組成物である。
【0067】
ジトスタチカ、CD阻害剤、EGFR阻害剤、VEGFR阻害剤、TNFR阻害剤又はチロシンキナーゼ阻害剤は、上記に開示したものから選択されてもよい。
【0068】
一実施形態において、本発明の主題は、癌の治療に使用するための医薬組成物であり、アレムツズマブ、ベバシズマブ、ブレンツキシマブ、カツマキソマブ、セツキシマブ、イブリツモマブ−チウキセタン、オファツムマブ、パニツムマブ、リツキシマブ、トラスツズマブと組み合わせて使用される。
【0069】
一実施態様における本発明の主題は、上述のような、癌の治療で使用するための医薬組成物であって、ここで、前記医薬組成物が、例えば、静脈内に投与され得る。
【0070】
本発明の主題は、癌を治療する方法であって、ここで、治療上有効な量の前記抗ADM抗体又は抗ADM抗体フラグメント又は抗ADM非Igスキャフォールドが、それを必要とする患者に投与される。前記抗ADM抗体又は抗ADM抗体フラグメント又は抗ADM非Igスキャフォールドは、上述の他の抗癌剤と共に、又は、無しで投与されてもよい。本発明の主題は、癌を治療する方法であって、ここで、前記抗ADM抗体又は抗ADM抗体フラグメント又は抗ADM非Igスキャフォールドを含む治療上有効な量の医薬組成物が必要とする患者に投与される。前記医薬組成物は、上記のような他の抗癌剤を含んでもよい。
【0071】
前記抗ADM抗体又は抗ADM抗体フラグメント又は抗ADM非Igスキャフォールドは、循環するADMを過剰に超えるモル濃度をもたらす用量を投与してもよい。これは、0.1〜10mg/kgの範囲であり得る。長い時間にわたって所望の濃度範囲を維持するためには、インビボでのその半減期に依存する間隔で繰り返し適用し得る。これらの間隔は2〜7日の間とすることができる。前記抗ADM抗体又は抗ADM抗体フラグメント又は抗ADM非Igスキャフォールドは、好ましくは、生理食塩水ベースの溶液として処方され、好ましくは静脈内にボーラス注射又は注入して適用される。
【0072】
概念的には、その腫瘍にADM及び/又はADM受容体を過剰発現する癌患者は、前記抗ADM抗体又は抗ADM抗体フラグメント又は抗ADM非Igスキャフォールドを用いた治療から最も利益を得ることが期待される。従って、患者は、腫瘍生検からADM及び/又はADM受容体の発現レベルを決定することによって階層化することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
図1】化合物を用いた治療に依存した時間経過における腫瘍体積の増加。研究中の化合物は、NT−H(ヒトアドレノメデュリンのN末端部分に対して惹起されたモノクローナル抗体)、MR−H(ヒトアドレノメデュリンの中間部分に対して惹起されたモノクローナル抗体)、CT−H(ヒトアドレノメデュリンのC末端部分に対して惹起されたモノクローナル抗体)及びCon(非特異的コントロール抗体)であった。腫瘍増殖の減少はCT−Hに有意であった(P=0.038)。NT−HとMR−Hに対しては有効性の傾向はあったが、効果は統計的に有意ではなかった。
【実施例】
【0074】
実施例1
抗体の作製と特性評価アドレノメデュリンの異なる部分に対するいくつかのモノクローナル抗体を作製し、それらの親和性定数を決定した。
【0075】
抗体は、以下の方法に従って作製した:Balb/cマウスは、100μgのペプチド−BSAコンジュゲート(Peptide−BSA−Conjugate)(表1参照)を0日目及び14日目(100μLの完全フロイントアジュバント中で乳化させたもの)、及び、50μgを21日目及び28日目(100μLの不完全フロイントアジュバント中で乳化させたもの)に免疫した。融合実験の3日前に、100μL生理食塩水に溶解したコンジュゲート50μgを、動物1匹は腹腔内に、1匹は静脈内に注射で与えた。
【0076】
免疫したマウスの脾細胞と、骨髄腫細胞株SP2/0細胞を37℃で30秒間1mLの50%ポリエチレングリコールを用いて融合させた。洗浄後、細胞を96ウェル細胞培養プレートに播種した。ハイブリッドクローンは、HAT培地[20%ウシ胎児血清及びHATサプリメントを補充したRPMI1640培地]中で成長するものとして選択された。2週間後、HAT培地をHT培地と交換し、3継代後に、通常の細胞培養培地に戻した。
【0077】
細胞培養上清は、融合の三週間後、抗原特異的IgG抗体について最初にスクリーニングを行った。CT−H抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を選択するための基準は、ペプチドAPRSKISPQGY−NH2(配列番号1)に対しては陽性結合、ペプチドAPRSKISPQGY−COOH(配列番号1)に対して陰性結合であった。
【0078】
陽性反応を示したマイクロ培養物は、増殖のために24ウェルプレートに移した。再試験後に選択した培養物はクローン化され、限界希釈法を用いて再クローニングし、アイソタイプを決定した。
【0079】
(Lane,R.D.“A short−duration polyethylene glycol fusiontechnique for increasing production of monoclonal antibody−secreting hybridomas”,J.Immunol.Meth.81:223−228;(1985),Ziegler,B.et al.“Glutamate decarboxylase(GAD)is not detectable on the surface of rat islet cells examined by cytofluorometry and complement−dependent antibody−mediated cytotoxicity of monoclonal GAD antibodies”,Horm.Metab.Res.28:11−15,(1996))。
【0080】
モノクローナル抗体産生:
抗体は、標準的な抗体産生方法を介して産生され(Marx et al,Monoclonal Antibody Prodcution,ATLA 25,121,1997)、プロテインAを使用して精製された。抗体の純度は、SDSゲル電気泳動分析に基づいて>95%であった。
【0081】
親和性定数
アドレノメデュリンに対する抗体の親和性を決定するために、固定化抗体に対するアドレノメデュリンの結合のカイネティクス(kinetics)は、ビアコア2000システム(GEヘルスケアヨーロッパ社、フライブルク、ドイツ)を使用して、標識無し表面プラズモン共鳴で測定した。抗体の可逆的固定化は、製造業者の説明書(マウス抗体捕捉キット;GEヘルスケア社)に従って、CM5センサー表面に高密度に共有結合的に結合した抗マウスFc抗体を用いて行った(Lorenz et al.,“Functional Antibodies Targeting IsaA of Staphylococcus aureus Augment Host Immune Response and Open New Perspectives for Antibacterial Therapy”;Antimicrob Agents Chemother.2011 January;55(1):165−173.)。
【0082】
モノクローナル抗体は、ヒトADMの下記に示す領域に対して惹起された。以下の表1は、さらに実験で使用した得られた抗体の選択を表す。
【0083】
【表1】
【0084】
抗体CT−Hのエピトープマッピング
ADMのC末端領域に関連するいくつかのペプチドを合成した(表2)。
【0085】
【表2】
【0086】
標識の手順:
100μg(100uL)の抗体CT−H(PBS中1mg/ml、pH7.4)は、10μLのアクリジニウム(Akridinrum)NHSエステル(アセトニトリル中1mg/mL、インベント社、ドイツ)と混合し、20分間室温でインキュベートした。標識されたCT−Hは、Bio−Sil(登録商標)SEC400−5(バイオ・ラッド社、米国)でゲル濾過HPLCによって精製された。精製された標識抗体は、(300mmol/L リン酸カリウム、100mmol/L NaCl、10mmol/L Na−EDTA、5g/Lウシ血清アルブミン、pH7.0)中で希釈された。最終濃度は、300μL毎に、約800.000相対光単位(RLU)の標識抗体(約20ng標識抗体)であった。アクリジニウムエステル(Akridiniumester)化学発光は、AutoLumat LB953(ベルトールドテクノロジーズ社、KG)を用いて測定した。
【0087】
固相:
ポリスチレンチューブ(グライナーバイオワンインターナショナルAG、オーストリア)をストレプトアビジン(1.5μg/0.3mL、100mmol/L NaCl、50mmol/L トリス/塩酸、pHは7.8)で被覆した(18時間室温)。コーティング溶液を吸引し、チューブを3%カリオンFP(Karion FP)、0.5%ウシ血清アルブミンでブロッキングし、1時間インキュベーションした。ブロッキング溶液を廃棄した。表2に列挙されたペプチドは、300mmol/L リン酸カリウム、100mmol/L NaCl、10mmol/L Na−EDTA、0.5%ウシ血清アルブミン;20錠/L完全プロテアーゼインヒビターカクテル錠(ロシュ社);pH7.0に、各10ng/0.3mLの濃度で溶解し、ペプチド溶液毎に0.3mLをストレプトアビジンチューブごとにピペットで移した。ペプチド溶液を攪拌しながら22℃、2時間、チューブ中でインキュベートし、PBS緩衝液、pH7.4で2回洗浄した。
【0088】
結合アッセイ:
標識されたCT−H抗体は、(300mmol/L リン酸カリウム、100mmol/L NaCl、10mmol/L Na−EDTA、5g/Lウシ血清アルブミン、pH7.0)中で希釈した。最終濃度は、300μLあたり、約800.000相対光単位(RLU)の標識抗体(約20ngの標識抗体)であった。この溶液300μLをそれぞれペプチド/ストレプトアビジンチューブにピペットで移し、攪拌しながら2時間22℃チューブをインキュベートした。非結合トレーサーを洗浄液(20mM PBS、pH7.4、0.1%トリトンX−100)で5回(各1mL)洗浄することにより除去した。チューブに結合した化学発光を、LB 953ルミノメーター(ベルソルド)を用いて測定した。各ペプチドへのCT−Hの結合は、ペプチドP33−52NH2に対して得られた結合と比較して観察された結合のパーセンテージとして表した(表2)。
【0089】
CT−H抗体は、特異的にペプチドP33−52NH2ペプチドに著しく結合することが表2から明らかである。C末端アミド官能基がカルボキシル基(P33−52 COOH)で置換された場合、実質的に同じペプチドに対して結合が検出されなかった。同様に、より長いペプチド又はより短いペプチドのいずれかを試験した場合、実質的には結合が観察されなかった。これらの結果は、抗体CT−Hは特異的にADMのC末端領域に結合し、結合に、遊離アミド化チロシン残基(ADM内の位置52)を必要とすることを示している。
【0090】
CT−H抗体に加えて、追加の抗体は、CT−Hで使用された同じ免疫化手順によって作製され、ペプチドAPRSKISPQGY−NH2(配列番号1)に結合する能力によって選択された。CT−H抗体について上述したように、それらのエピトープ特異性は、同じ方法で測定された。各ペプチドに対する抗体の結合は、ペプチドP33−52NH2に対して得られた結合と比較して観察された結合のパーセンテージとして表した(表3)。
【0091】
【表3】
【0092】
実施例2
異種移植乳房腫瘍モデル
【0093】
十分に確立された乳癌細胞株である単層MDA−MB−231細胞(CPQ−82、Proqinase社)は、DMEM+10%FCS中で増殖させた。細胞は37℃で90%空気及び10%二酸化炭素の加湿雰囲気中で培養した。培地は、日常的に3日ごとに交換した。トリプシン/EDTAを使用して、3〜4日ごとにコンフルエント培養物を1:3に分け、約3〜4×106細胞/15cm2の密度+25mL培地で播種した。
【0094】
出産後4〜5週齢で、体重約15〜18gの体重の雌のBALB/cヌード(CAnN.Cg−Foxn1nu/Crl)マウス(チャールズリバー社、スルツフェルド、ドイツ)は、最適な衛生条件、1時間あたり10〜15回空気を交換する空調、継続的に監視された温度22±3℃の標的範囲、相対湿度30〜70℃、12時間は人工蛍光灯/12時間は闇の下で、飼育された。最大4匹の動物を個々の換気ケージ(IVC)で飼育し、M−Zucht(スニッフ スペチアルディアテン(ssniff Spezialdiaten)社)及びオートクレーブ処理コミュニティタブ水を含む餌を供給した。
【0095】
5日(0日目)の馴化期間後、100μLPBS緩衝液中の5×106MDA−MB−231を、29G針注射器を用いてメスのBALB/cヌードマウスの左脇腹に皮下移植した。続いて、動物の体重を測定した(天秤:メトラー トレドPB602−L)。原発腫瘍の体積は、ノギス(callipering)にて測定した(手動キャリパー、OMCフォンタナ)。腫瘍体積は、式 W2×L/2(L=長さ、W=腫瘍の垂直幅、L>W)に従って計算した。40日後、約150mm3の平均腫瘍体積に到達し、腫瘍を有する動物を4群に無作為に分けた。次の日(41日目)、抗アドレノメデュリン抗体及びコントロールとして非特異的マウスIgGの(表4)の投与を開始した。
【0096】
抗体は、2日毎スケジュールで静脈内(i.v.)に投与した。抗体は、PBS緩衝液中に溶解し、適用前に無菌濾過した。
【0097】
【表4】
【0098】
動物の行動や福祉は週5回(営業日)観察した。動物の体重は、無作為化後、週三回(毎週月曜日、水曜日、金曜日)測定した。原発腫瘍の増殖は、ランダム化した後、ノギス測定により週二回(月曜日と金曜日)記録した。
【0099】
スケジュールした研究期間(56日目)の終わりまで、いずれの動物も死亡しなかった。56日目に研究を終了した。全ての動物を屠殺し、剖検を行った。
【0100】
統計分析 すべてのデータ分析は、グラフパッドソフトウエア社、サンディエゴ、米国のグラフパッドプリズム5、及び、IBM社、ニューヨーク、米国のIBM SPSS統計スタンダードを使用して行った。
【0101】
グループあたりの平均絶対腫瘍体積を計算した。腫瘍成長は、処置の最初の日(41日目)の腫瘍体積と比較して、x日の腫瘍体積の相対的な変化として計算した。
【0102】
【数1】
【0103】
抗アドレノメデュリン抗体処置群の各々についての相対腫瘍増殖を、非特異的マウスIgGで処置した群における腫瘍増殖と比較した。
【0104】
結果
アドレノメデュリンのN末端及び中間領域部分に対する抗体は、腫瘍の増殖にわずかであるが統計的に有意ではない効果を示した(図1)。抗中間領域抗体の効果は、抗N末端抗体よりも、より顕著であった(図1)。対照的に、アドレノメデュリンのC末端に対する抗体は、コントロール群と比較して有意に腫瘍増殖を減少させた(図1)。
【0105】
詳細データは以下の通りである:各グループ(NT−H、MR−H、CT−H、コントロール抗体でそれぞれ処理したもの)の腫瘍体積は、以下の表5〜8に示した。
【0106】
【表5】
【0107】
【表6】
【0108】
【表7】
【0109】
【表8】
【0110】
【表9-1】
【表9-2】
【0111】
図の説明
図1は、化合物を用いた治療に依存した時間経過における腫瘍体積の増加を示している。研究中の化合物は、NT−H(ヒトアドレノメデュリンのN末端部分に対して惹起されたモノクローナル抗体)、MR−H(ヒトアドレノメデュリンの中間部分に対して惹起されたモノクローナル抗体)、CT−H(ヒトアドレノメデュリンのC末端部分に対して惹起されたモノクローナル抗体)及びCon(非特異的コントロール抗体)であった。腫瘍増殖の減少はCT−Hに有意であった(P=0.038)。NT−HとMR−Hに対しては有効性の傾向はあったが、効果は統計的に有意ではなかった。
図1
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]