(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、データベースに記憶されたファン回転数に対応する設定燃料流量に基づいて、前記実燃料流量が、流量異常を引き起こす蓋然性が高い警告範囲であると判定した場合、警告の発報処理を実行することを特徴とする請求項5記載の混合気供給装置。
【背景技術】
【0002】
従来の燃焼器には、予め燃料と空気を混合した予混合気を燃焼領域に導入して燃焼させるものがある。このような予混合燃焼方式の燃焼器では、何らかの原因で燃焼用空気の流量が減少して空気比が設定範囲を逸脱すると、燃料と空気の混合比である当量比が設定範囲から逸脱することとなる。この当量比の設定範囲からの逸脱は、例えば、不安定な燃焼や燃焼ガス中の窒素酸化物(NOx)の増大などを引き起こす。
【0003】
そこで、従来の予混合燃焼方式の燃焼器は、燃料を供給する燃料供給路に均圧弁などの流量調整手段を設けて、空気比の変動に応じて燃料流量を調整する混合気供給装置を備えている。なお、この混合気供給装置において形成された予混合気は、燃焼器に導入される。
【0004】
このような均圧弁を備えた混合気供給装置として、ファンの吸引部に筒状の混合室を設け、この混合室内に燃料を供給するものがある。この混合室では、ファンを作動することで混合室の一端から吸引された空気と、混合室内に吸引された燃料とが均一に混合する。そして、混合した混合気は、ファンの吸引口からファン内に吸引され、ファン内を通過して燃焼器に導入される。
【0005】
この際、均圧弁では、均圧弁に導入される信号圧に基づいて、一次圧で供給された燃料を二次圧になるよう調整して燃焼器に供給している。ここで、信号圧は、均圧弁内のダイヤフラムに作用して、二次圧を信号圧に応じた圧力に調整するための圧力である。信号圧としては、例えば、空気を吸引する混合室などの静圧が用いられる。なお、混合室における圧力は負圧となるため、信号圧は負圧となる。また、燃料の二次圧も負圧となる。なお、ここでいう負圧とは、大気圧を0気圧としたゲージ圧で大気圧より低い圧力をいう(以下、同じ)。
【0006】
このような従来の負圧式の混合室を備える混合気供給装置に使用される均圧弁300の構成について説明する。
【0007】
図7は、従来の負圧式の混合室を備える混合気供給装置に使用される均圧弁300の縦断面を模式的に示した図である。
【0008】
図7に示すように、均圧弁300は、ガス通路の開度を調整する弁体310、空気を吸引する混合室の静圧である信号圧P13と均圧弁300の出口圧力P12の圧力差を受けるダイヤフラム311、弁体310およびダイヤフラム311を支えるスプリング312、スプリング312を調節する調節機構313を備える。
【0009】
例えば、ファンの回転数が増加して、信号圧P13がより負圧側に圧力変動したときには、ダイヤフラム311がその圧力変動に伴って調節機構313側(
図7では下方側)に引かれ、弁体310が下方に移動する。そして、均圧弁300の出口圧力P12は、負圧側に圧力変動した信号圧P13になるように調整される。これによって、混合室に導入される燃料流量は増加する。
【0010】
このように、従来の燃焼器では、混合室などの静圧を均圧弁300の信号圧P13として使用し、空気流量の変動に応じて燃料流量を変動させ、燃焼装置に供給する燃料と空気の混合比を一定に維持するようにしている。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0019】
図1は、実施の形態の混合気供給装置10を備えた燃焼装置1の概要を模式的に示した図である。
図2は、実施の形態の混合気供給装置10の一部の断面を拡大して模式的に示した図である。
図3は、実施の形態の混合気供給装置10に備えられる燃料流量調整部70の縦断面を模式的に示した図である。
【0020】
図1に示すように、燃焼装置1は、混合気供給装置10と、燃焼器100とを備える。
【0021】
混合気供給装置10は、燃料(ガス燃料)と空気を均一に混合して予混合気を形成する。混合気供給装置10は、ファン20と、混合器30と、燃料供給管40と、筒体50と、全圧検出部60と、燃料流量調整部70と、制御部90と、操作パネル150とを備える。
【0022】
ファン20は、
図2に示すように、ケーシング21を備え、このケーシング21内には、例えば、回転羽根22が設けられている。さらに、ファン20は、回転羽根22を回転させるモータ23を備える。ファン20のケーシング21には、ファン20の内部に混合器30からの予混合気を吸引する吸引口24、吸引した予混合気を排出する吐出口25が形成されている。
【0023】
また、ファン20には、例えば、ファン20の回転数を検出するファン回転数計26が備えられている。なお、ファン回転数計26は、回転数検出部として機能する。ファン20は、例えば、シロッコファンやターボファンなどで構成される。
【0024】
なお、ファン20の吐出口25は、後述する燃焼器100の予混合気導入空間102に、直接または配管などを介して連通している。
【0025】
混合器30は、内部に通路31を有する筒体で構成される。この混合器30は、いわゆるミキサである。混合器30の一端32は、ファン20の吸引口24に接続されている。具体的には、混合器30の通路31が吸引口24を介してファン20の内部と連通するように、混合器30の一端は、例えば、ファン20のケーシング21に接続されている。そのため、混合器30を通過した空気と燃料の予混合気は、ファン20の内部に吸引され、さらに混合される。
【0026】
通路31は、空気流れ方向(
図2に示す矢印方向)に流路断面積が徐々に減少してスロート部33を有するベンチュリ構造を有している。そして、スロート部33の下流の通路31は、例えば、流れ方向に流路断面積が徐々に増加している。
【0027】
燃料供給管40は、燃料供給源41から供給された燃料(ガス燃料)を混合器30の通路31に供給する。燃料供給管40の一端40aは、
図2に示すように、通路31のスロート部33の内部に連通している。
【0028】
また、燃料供給管40において、燃料流量調整部70よりも混合器30側、および燃料流量調整部70よりも燃料供給源41側には、燃料供給管40の燃料の流れを遮断する遮断弁42、43が介在している。また、例えば、遮断弁43と燃料供給源41との間には、燃料供給管40を流れる燃料の流量を検出する燃料流量計44が介在している。なお、燃料流量計44は、燃料流量検出部として機能する。
【0029】
混合器30の他端34に連結された筒体50は、
図2に示すように、例えば、円筒状の両端開口の筒体である。混合器30側と異なる側の筒体50の開口端部には、整流板51が備えられている。すなわち、整流板51は、筒体50における、空気流れ方向の上流側の開口端部に備えられる。
【0030】
また、筒体50には、筒体50内の圧力(静圧)を検出する圧力センサ52が備えられている。圧力センサ52は、例えば、筒体50内の圧力が、後述する異常範囲となったことを検出するために設けられる。なお、圧力センサ52は、圧力検出部として機能する。
【0031】
例えば、
図2に示すように、筒体50の混合器30側の内径が、混合器30の他端34側の内径よりも大きい場合、筒体50の混合器30側の端部は、通路断面積が混合器30に向かって徐々に減少するテーパ状形状に構成されてもよい。これによって、筒体50から混合器30に空気が流れる際の圧力損失を抑制できる。
【0032】
整流板51は、ファン20の送風に伴って筒体50内に吸引される空気の流れを整流する。整流板51は、例えば、多孔質体、ハニカム構造体、パンチングメタルなどの平板で構成される。なお、整流板51は、整流部として機能する。
【0033】
全圧検出部60は、筒体50内に吸引された燃焼用空気の全圧を検出する。全圧検出部60は、
図1および
図2に示すように、例えば、管状のプローブ61と、このプローブ61で検出した全圧を燃料流量調整部70に伝達する伝達管62を備える。プローブ61は、
図2に示すように、燃焼用空気の流れ方向に対向して開口する全圧検出口63を有する。そして、全圧検出口63では流れがせき止められ、全圧検出口63において流れの全圧が検出される。
【0034】
プローブ61は、例えば、筒体50の中心軸上に全圧検出口63の中心が位置するように配置される。プローブ61は、空気の流れを阻害しないように、管径が小さいことが好ましい。また、ここでは、一つのプローブ61を備えた一例を示しているが、複数のプローブ61を備えてもよい。
【0035】
複数のプローブ61を備える場合、例えば、筒体50の中心軸上に全圧検出口63の中心が位置するように配置されたプローブ61と、このプローブ61よりも半径方向外側に配置された他のプローブ61とを備えてもよい。すなわち、筒体50の中心軸上に一つのプローブを備えるとともに、筒体50の中心軸から半径方向外側に離れた位置に他のプローブ61を備えてもよい。
【0036】
なお、複数のプローブ61を備える場合、各プローブ61に連通する伝達管62を下流側で一つの集合管とし、この集合管を燃料流量調整部70に連通させてもよい。この場合、複数のプローブ61で検出された全圧の平均圧が燃料流量調整部70に伝達される。
【0037】
燃料流量調整部70は、
図1に示すように、燃料供給管40に介在する。燃料流量調整部70は、全圧検出部60において検出された全圧に基づいて、一次圧で供給された燃料を二次圧に調整して混合器30側に排出する。燃料流量調整部70は、例えば、均圧弁、ゼロガバナなどによって構成される。
【0038】
図3に示すように、燃料流量調整部70は、燃料導入口71と、燃料排出口72と、信号圧導入口73とを備える。信号圧導入口73は、全圧検出部60の伝達管62と連結される。
【0039】
燃料流量調整部70では、燃料導入口71から導入された一次圧(入口圧力P1)の燃料を、信号圧導入口73から導入される信号圧である全圧P3に応じた二次圧(出口圧力P2)に調整して排出する。すなわち、燃料排出口72から排出される燃料の圧力が、全圧P3に依存して変化する。
【0040】
燃料流量調整部70のケーシング79内には、ガス通路が形成され、弁体74と、ダイヤフラム75と、スプリング76と、調節機構77とが備えられている。なお、弁体74は、ガス通路の開度を調整する。
【0041】
ダイヤフラム75は、ケーシング79の内部で信号圧室80を形成する。信号圧室80には、信号圧導入口73から導入される全圧P3がかかる。そのため、ダイヤフラム75の一方には、全圧P3がかかる。
【0042】
ダイヤフラム75の他方側には、二次圧連通室81が形成される。二次圧連通室81は、二次圧連通路82を介して二次側の燃料排出口72と連通している。そのため、ダイヤフラム75は、全圧P3と出口圧力P2の圧力差が生じる。
【0043】
スプリング76は、ダイヤフラム75を支えるものであり、スプリング76の強さは、調節機構77によって調節される。なお、燃料導入口71と二次圧連通室81とは、仕切膜83で区画されている。
【0044】
弁体74は、ガス通路の開度を調整するものであり、弁棒78を介してダイヤフラム75に接続されている。なお、弁棒78は、仕切膜83に対して弁棒78の軸方向に摺動可能に設けられている。また、弁棒78と仕切膜83との間は、燃料が漏れないように構成されている。
【0045】
燃焼器100は、
図1に示すように、ケーシング101と、バーナ103とを備える。
【0046】
ケーシング101内の下方側には、ファン20の吐出口25から排出された燃料と空気の予混合気を導入する予混合気導入空間102を備える。この予混合気導入空間102の上方に、バーナ103が備えられる。
【0047】
バーナ103の出口には、予混合気導入空間102に導入された予混合気を燃焼領域107に噴出する燃料噴出孔104を有する。バーナ103は、燃料噴出孔104から噴出された予混合気に着火する着火装置106を備える。なお、着火装置106は、例えば、イグナイタなどで構成される。火炎105は、
図1に示すように、燃料噴出孔104の下流側に形成する。
【0048】
操作パネル150は、例えば、運転の開始・停止を指令する運転スイッチ151、燃焼器100の出力を設定する出力設定スイッチ152などが備えられている。なお、操作パネル150の構成は、これらに限られるものではなく、必要に応じてモニタや各種設定スイッチを備えることができる。
【0049】
図1に示す制御部90は、例えば、演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)やランダムアクセスメモリ(RAM)などの記憶手段、出入力手段などを主に備えている。CPUでは、例えば、記憶手段に格納されたプログラムやデータベースなどを用いて各種の演算処理を実行する。
【0050】
出入力手段は、外部機器から電気信号を入力したり、外部機器に電気信号を出力する。具体的には、出入力手段は、例えば、ファン20、遮断弁42、43、燃料流量計44、圧力センサ52、操作パネル150などと各種信号の出入力が可能になるよう接続されている。ファン20においては、出入力手段は、例えば、ファン20の回転数を制御するモータや、ファン20の回転数を検出するファン回転数計26などと信号の出入力が可能に接続されている。
【0051】
なお、出入力手段は、燃焼器100の各機器とも、各種信号の出入力が可能に接続されている。この制御部90が実行する処理は、例えば、マイクロコンピュータなどのコンピュータ装置などで実現される。
【0052】
記憶手段には、例えば、ファン20の回転数に対応する設定燃料流量のデータベース、燃焼器100の設定出力に対応するファン回転数のデータベース、ファン回転数に対応する筒体50内の基準圧力のデータベースなどが記憶されている。また、記憶手段には、例えば、燃焼器100を制御するための各種データベースなどが記憶されている。なお、記憶手段に記憶されるデータベースは、これらに限られるものではなく、必要に応じて適宜他のデータベースを記憶することができる。
【0053】
制御部90は、例えば、ファン回転数計26や燃料流量計44からの出力信号に基づいて、遮断弁42、43などを制御する。また、制御部90は、例えば、ファン回転数計26や圧力センサ52からの出力信号に基づいて、遮断弁42、43などを制御する。また、制御部90は、操作パネル150で入力された情報に基づいて、例えば、ファン20などを制御する。さらに、制御部90は、例えば、燃焼器100の各機器からの出力信号に基づいて、燃焼器100の各機器や混合気供給装置10の各機器などを制御する。
【0054】
なお、制御部90における制御は、これらに限られるものではない。制御部90は、例えば、混合気供給装置10、燃焼器100の運転動作全体を制御することができる。
【0055】
次に、混合気供給装置10および燃焼器100の作用について説明する。
【0056】
制御部90は、
図1に示す操作パネル150の運転の開始・停止を指令する運転スイッチ151が押されたと判定した場合、ファン20を作動させる。
【0057】
続いて、制御部90は、燃焼器100の着火装置106を作動させる。そして、制御部90は、遮断弁42、43を開き、燃料を混合器30に供給する。
【0058】
具体的には、ファン20が作動することで、外気が整流板51を通り筒体50内に吸引される。筒体50内は、負圧となる。吸引された空気は、混合器30に導かれる。
【0059】
また、遮断弁42、43が開いたことで、燃料供給源41から燃料が燃料供給管40を通り混合器30内に導入される。燃料が燃料供給管40を通過する際、燃料流量調整部70によって流量が調整され、燃料流量計44によって流量が計測される。燃料流量調整部70では、プローブ61、伝達管62を介して伝達された筒体50内の全圧P3を信号圧として流量が調整される。
【0060】
混合器30内に導入された空気および燃料は、混合器30内の通路31を通過する際に混合し、所定の空気比、換言すると所定の当量比の予混合気となる。この混合気は、吸引口24からファン20内に流入し、さらに混合され、燃焼器100の予混合気導入空間102に導入される。
【0061】
予混合気導入空間102に導入された予混合気は、バーナ103内を通り燃料噴出孔104から燃焼領域107に噴出する。燃焼領域107に噴出した予混合気は、着火装置106によって着火され、燃焼して火炎105を形成する。
【0062】
バーナ103を着火後、制御部90は、例えば、操作パネル150の出力設定スイッチ152によって設定された出力になるように、記憶手段に記憶されたその設定出力に対応するファン回転数を参照し、例えば、ファン回転数計26からの出力に基づいて、ファン20のモータ23を制御してファン20の回転数を調整する。ファン20の回転数が調整されることで、空気流量が調整される。そして、空気流量の調整に伴って、燃料流量調整部70では、燃料流量が調整される。
【0063】
ここで、例えば、制御部90は、操作パネル150の出力設定スイッチ152によって、設定出力が増加されたと判定した場合、ファン20の回転数を増加させる。具体的には、制御部90は、操作パネル150からの増加された設定出力に係る信号に基づいて、記憶手段に記憶されたその設定出力に対応するファン回転数のデータベースを参照する。そして、制御部90は、参照した設定出力に対応するファン回転数、およびファン回転数計26からの出力に基づいて、ファン20のモータ23を制御してファン20の回転数をデータベースのファン回転数に調整する。
【0064】
ファン20の回転数が増加することで、信号圧である全圧P3がより負圧側に圧力変動する。すなわち、ファン20の回転数が増加することで、負圧である全圧P3の絶対値は増加する。これによって、
図3に示すダイヤフラム75が信号圧室80側(
図3では下方側)に引かれ、弁体74が下方に移動する。そして、出口圧力P2は、負圧側に圧力変動した全圧P3になるように調整される。これによって、混合器30に導入される燃料流量は増加する。なお、燃料流量は、所定の当量比を維持できるように、空気流量の増加量に対応して、増加される。
【0065】
一方、例えば、制御部90は、操作パネル150の出力設定スイッチ152によって、設定出力が減少されたと判定した場合、ファン20の回転数を減少させる。具体的には、制御部90は、操作パネル150からの減少された設定出力に係る信号に基づいて、記憶手段に記憶されたその設定出力に対応するファン回転数のデータベースを参照する。そして、制御部90は、参照した設定出力に対応するファン回転数、およびファン回転数計26からの出力に基づいて、ファン20のモータ23を制御してファン20の回転数をデータベースのファン回転数に調整する。
【0066】
ファン20の回転数が減少することで、負圧の信号圧である全圧P3が大気圧側に変動する。すなわち、ファン20の回転数が減少することで、負圧である全圧P3の絶対値は減少する。これによって、
図3に示すダイヤフラム75が二次圧連通室81側(
図3では上方側)に押され、弁体74が上方に移動する。そして、出口圧力P2は、大気圧側に圧力変動した全圧P3になるように調整される。これによって、混合器30に導入される燃料流量は減少する。なお、燃料流量は、所定の当量比を維持できるように、空気流量の減少量に対応して、減少される。
【0067】
このように、混合気供給装置10では、燃料流量調整部70において筒体50の全圧P3を信号圧として使用し、空気流量の変動に応じて燃料流量を変動させ、燃焼器100に供給する燃料と空気の混合比である当量比を一定に維持している。
【0068】
なお、燃焼器100に供給される混合気における空気比は、例えば、1.30〜1.60程度に設定される。すなわち、この混合気は、当量比が0.63〜0.77程度の希薄予混合気である。
【0069】
すなわち、空気流量が増加したときには、燃料流量調整部70において、その空気流量の増加(負圧である全圧P3の絶対値の増加)に応じて燃料流量を増加させ、燃焼器100に供給する燃料と空気の混合比を一定に維持している。また、空気流量が減少したときには、燃料流量調整部70において、その空気流量の減少(負圧である全圧P3の絶対値の減少)に応じて燃料流量を減少させ、燃焼器100に供給する燃料と空気の混合比、すなわち当量比を一定に維持している。
【0070】
混合気供給装置10から予混合気が供給される燃焼器100では、空気流量が変動する出力負荷を変化させた場合でも、一定の当量比の予混合気が供給される。これによって、燃焼器100では、各出力負荷に亘って、安定した燃焼を維持することができるとともに、窒素酸化物(NOx)などを抑制することができる。
【0071】
なお、上記した混合気供給装置10および燃焼器100の作用は、一例を示したものであり、上記した作用に限られるものではない。混合気供給装置10において、燃料流量調整部70における信号圧として筒体50の全圧を使用していればよい。
【0072】
ここで、混合気供給装置10の異常検知処理について説明する。
【0073】
図4は、実施の形態の混合気供給装置10のファン回転数に対応する設定燃料流量のデータベースの一例を示す図である。
図5は、実施の形態の混合気供給装置10における異常検知処理のフローチャートである。
【0074】
制御部90の記憶手段には、例えば、
図4に示すようなファン回転数に対応する設定燃料流量のデータベースが記憶されている。
図4において、横軸は、ファン回転数を示し、縦軸は、設定燃料流量を示している。なお、
図4では、所定のファン回転数について、具体的に、後述する適正範囲W1、警告範囲W2、異常範囲W3を示しているが、他のファン回転数の場合もこれらの範囲の定義は同じである。
【0075】
図4に示すように、ファン回転数に対応する基準燃料流量は、例えば、ラインL1上に設定されている。そして、ラインL2で囲まれる範囲は、ファン回転数に対応する実際の燃料流量(実燃料流量)の適正な範囲(適正範囲W1)として設定されている。なお、適正範囲W1には、ラインL2上の範囲を含む。すなわち、実燃料流量が、基準燃料流量から所定の範囲で増加側または減少側に変動しても適正な燃料流量範囲としている。
【0076】
また、適正範囲W1を超え、ラインL3で囲まれる範囲は、ファン回転数に対応する実燃料流量が直ちに流量異常であると判定して動作を停止する範囲ではないが、流量異常を引き起こす蓋然性が高い範囲(警告範囲W2)として設定されている。なお、警告範囲W2には、ラインL3上の範囲を含む。換言すると、警告範囲W2は、ラインL2とラインL3との間の範囲である。
【0077】
さらに、警告範囲W2を超えた範囲は、ファン回転数に対応する実燃料流量が流量異常であると判定して動作を停止する範囲(異常範囲W3)として設定されている。なお、警告範囲W2を超えた範囲とは、ラインL3よりも設定燃料流量が大きい側および小さい側である。
【0078】
ここで、ファン回転数に対応する実燃料流量がデータベースに記憶された設定燃料流量よりも少なくなる場合として、ファン回転数に対応する適正な空気流量が流れていない場合などが挙げられる。
【0079】
この場合の原因として、例えば、整流板51の目詰まりが挙げられる。すなわち、整流板51が目詰まりすると、ファン回転数に対応する適正な流量よりも少ない流量の空気が流れる。燃料流量調整部70においては、実際に流れている空気流量に対応して燃料流量が調整されるため、空気流量が減少すると実燃料流量も減少する。
【0080】
ファン回転数に対して燃料流量がデータベースに記憶された設定燃料流量よりも多くなる場合として、信号圧が信号圧室80に伝わらない場合、すなわち信号圧が信号圧室80に掛からない場合などが挙げられる。
【0081】
この場合の原因として、例えば、プローブ61が破損して、大気と連通している場合などが挙げられる。
【0082】
次に、混合気供給装置10の異常検知処理を
図5に示したフローチャートを参照して説明する。
【0083】
制御部90は、データベースに記憶されたファン回転数に対応する設定燃料流量を参照し、ファン回転数計26および燃料流量計44からの出力に基づいて、ファン回転数に対して実燃料流量が適正範囲W1内であるか否かを判定する(ステップS200)。
【0084】
具体的には、制御部90は、ファン回転数計26からの出力に基づいて実ファン回転数を特定し、その実ファン回転数における設定燃料流量をデータベースから特定する。続いて、制御部90は、燃料流量計44からの出力に基づいて実燃料流量を特定し、その実燃料流量とデータベースから特定した設定燃料流量と比較して、実ファン回転数において実燃料流量の範囲が適正範囲W1内であるか否かを判定する。
【0085】
ステップS200の判定で、ファン回転数に対して実燃料流量が適正範囲W1内であると判定した場合(ステップS200のYes)、制御部90は、再度ステップS200の処理を実行する。
【0086】
ステップS200の判定で、ファン回転数に対して実燃料流量が適正範囲W1内でないと判定した場合(ステップS200のNo)、制御部90は、データベースに記憶されたファン回転数に対応する設定燃料流量を参照し、ファン回転数計26および燃料流量計44からの出力に基づいて、ファン回転数に対して実燃料流量が警告範囲W2内であるか否かを判定する(ステップS202)。
【0087】
具体的には、制御部90は、ファン回転数計26からの出力に基づいて実ファン回転数を特定し、その実ファン回転数における設定燃料流量をデータベースから特定する。続いて、制御部90は、燃料流量計44からの出力に基づいて実燃料流量を特定し、その実燃料流量とデータベースから特定した設定燃料流量と比較して、実ファン回転数において実燃料流量の範囲が警告範囲W2内であるか否かを判定する。
【0088】
ステップS202の判定で、ファン回転数に対して実燃料流量が警告範囲W2内であると判定した場合(ステップS202のYes)、制御部90は、警告の発報処理を実行する(ステップS204)。
【0089】
警告の発報処理では、例えば、操作パネル150にモニタなどの表示部がある場合には、制御部90は、その表示部に警告情報を表示する。また、操作パネル150に警告ランプがある場合には、制御部90は、その警告ランプを点灯または点滅させる。さらに、操作パネル150に音を発する音源機能を備える場合には、制御部90は、音源機能を作動して警告音を鳴らす。
【0090】
なお、警告の発報処理において、ファン回転数に対して実燃料流量がデータベースに記憶された設定燃料流量よりも少なくなる場合には、制御部90は、例えば、整流板51が目詰まりしている旨の表示を表示部に表示してもよい。また、操作パネル150に、整流板51が目詰まりしている旨を示す警告ランプや音源機能を備えてもよい。
【0091】
ステップS202の判定で、ファン回転数に対して実燃料流量が警告範囲W2内でないと判定した場合(ステップS202のNo)、制御部90は、作動停止処理を実行する(ステップS206)。
【0092】
ステップS202の判定で、ファン回転数に対して実燃料流量が警告範囲W2内でない場合とは、適正範囲W1かつ警告範囲W2でないときであり、すなわち、前述した異常範囲W3に相当する。
【0093】
作動停止処理では、制御部90は、遮断弁42、43を閉じて、例えば、混合器30への燃料の供給を遮断する。この場合、例えば、操作パネル150にモニタなどの表示部がある場合には、制御部90は、その表示部に異常検知情報を表示してもよい。また、操作パネル150に異常ランプがある場合には、制御部90は、その異常ランプを点灯または点滅させてもよい。さらに、操作パネル150に音を発する音源機能を備える場合には、制御部90は、音源機能を作動して音を鳴らしてもよい。
【0094】
このように、異常検知処理機能を備えることで、混合気供給装置10における異常を確実に検知することができる。また、異常検知処理機能を備えることで、混合気供給装置10の安全性を向上させることができる。さらに、異常検知処理機能を備えることで、使用者が混合気供給装置10の稼働状態を確認することができ、例えば、整流板51などのメンテナンス時期を認識することができる。
【0095】
ここで、混合気供給装置10の異常検知処理は、上記した処理に限られるものではない。混合気供給装置10において、次のように異常を検知してもよい。
【0096】
制御部90は、圧力センサ52からの出力信号に基づいて筒体50内の実圧力(静圧)を検出する。そして、制御部90は、データベースに記憶されたファン回転数に対応する筒体50内の基準圧力に基づいて、ファン回転数に対して実圧力が、例えば、基準圧力の±20%を超えていると判定した場合、異常範囲であると判定する。
【0097】
制御部90は、データベースに記憶されたファン回転数に対応する筒体50内の基準圧力に基づいて、ファン回転数に対して実圧力が異常範囲であると判定した場合、制御部90は、作動停止処理を実行する。なお、この作動停止処理は、前述したステップS206における処理と同じである。
【0098】
混合気供給装置10において、
図5に示した異常検知処理とともに、上記した筒体50内の実圧力に基づく異常検知処理を備えることで、二重の異常検知機能を備えることとなる。これによって、混合気供給装置10の安全性をさらに向上させることができる。
【0099】
次に、燃焼器100の出力負荷に対する混合気供給装置10の筒体50内の圧力変化について説明する。
【0100】
図6は、燃焼器100の出力負荷に対する混合気供給装置10の筒体50内の、全圧、静圧、動圧の圧力変化を示した図である。
図6の横軸は、燃焼器100の出力負荷を示し、縦軸は、圧力を示している。また、
図6では、0以上の圧力を正圧とし、0より小さい圧力を負圧として縦軸に併記している。なお、圧力は、ゲージ圧である。
【0101】
図6に示すように、静圧は、燃焼器100の出力負荷の増加に伴って減少する。すなわち、
図6に示す静圧は、負圧であるため、その絶対値が、燃焼器100の出力負荷の増加に伴って増加する。
【0102】
全圧も静圧同様に、燃焼器100の出力負荷の増加に伴って減少する。しかしながら、動圧が正圧であり、かつ動圧が燃焼器100の出力負荷の増加に伴って増加するため、全圧の減少(全圧の絶対値の増加)は、静圧の減少(静圧の絶対値の増加)よりも小さい。
【0103】
そして、
図6に示すように、燃焼器100の出力負荷が高くなるほど、全圧と静圧の圧力差は大きくなる。
【0104】
すなわち、燃料流量調整部70における信号圧として、負圧となる筒体50内の全圧を使用する方が、負圧となる筒体50内の静圧を使用するよりも、適正な燃料流量を供給することができる。
【0105】
ここで、前述したように、負圧式の混合室を備え均圧弁の信号圧として静圧を使用する従来の混合気供給装置において、均圧弁は、低出力負荷時における燃料流量が確保できるように調節機構によって調整されている。そのため、高出力負荷時において、適正な燃料流量よりも多くの燃料流量が均圧弁から排出されていた。
【0106】
しかしながら、本実施の形態の混合気供給装置10のように、負圧となる筒体50内の全圧を燃料流量調整部70の信号圧として使用することで、燃焼器100の出力負荷の増加に伴う信号圧の増加が抑制される。これによって、燃焼器100の出力負荷が増加したときにおいても、適正な燃料流量を供給することができる。
【0107】
上記したように、本実施の形態の混合気供給装置10によれば、負圧となる筒体50内の全圧を燃料流量調整部70の信号圧として使用することで、低出力負荷時における燃料流量を確保するために燃料流量調整部70が調整されていても、高出力負荷時においても適正な燃料流量を供給できる。そのため、本実施の形態の混合気供給装置10では、低出力負荷時から高出力負荷時まで、燃料と空気の混合比、すなわち当量比が一定に維持された予混合気を供給することができる。
【0108】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。