【文献】
BARTYNSKI Andrew N. et al.,A Fullerene-Based Organic Exciton Blocking Layer with High Electron Conductivity,Nano Letters,米国,2013年 6月10日,Vol.13 No.7,Page.3315-3320
【文献】
WU H. R. et al.,Stable small-molecule organic solar cells with 1,3,5-tris(2-N-phenylbenzimidazolyl) benzene as an organic buffer,Thin Solid Films,Elsevier,2007年 4月12日,Vol.515,pp.8050-8053
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記少なくとも一つのカソード側の広エネルギーギャップ材料は、3,3’,5,5’−テトラ[(m−ピリジル)−フェン−3−イル]ビフェニル(BP4mPy)、2,2’,2”−(1,3,5−ベンジントリイル)−トリス(1−フェニル−1−H−ベンズイミダゾール)(TPBi)、ビス(2−メチル−8−キノリノレート)−4−(フェニルフェノラト)アルミニウム(BAlq)、トリス(8−ヒドロキシ−キノリナト)アルミニウム(Alq3)、トリス(2,4,6−トリメチル−3−(ピリジン−3−イル)フェニル)ボラン(3TPYMB)、4,40−(1,3−フェニレン)ビス(2,6−ジ−トリルピリジン−3,5−ジカルボニトリル)(m−MPyCN)、4,40−(1,3−フェニレン)ビス(2,6−ジ(ビフェニル−4−イル)ピリジン−3,5−ジカルボニトリル)(m−PhPyCN)、4,40−(1,3−フェニレン)ビス(2,6−ジフェニルピリジン−3,5−ジカルボニトリル)(m−PyCN)、6,60−(1,4−フェニレン)ビス(2−フェニル−4−p−トリルニコチノニトリル)(p−PPtNN)、4,40−(1,4−フェニレン)ビス(2−フェニル−6−p−トリルニコチノニトリル)(p−PPtNT)、およびそれらの誘導体から選択される材料を含む請求項1に記載のデバイス。
前記少なくとも一つのアクセプタ材料は、サブフタロシアニン、サブナフタロシアニン、ジピリン錯体、BODIPY錯体、ペリレン、ナフタレン、フラーレン、官能基化フラーレン誘導体、およびそれらの誘導体から選択される材料を含む請求項1に記載のデバイス。
前記少なくとも一つの電子伝導材料は、サブフタロシアニン、サブナフタロシアニン、ジピリン錯体、BODIPY錯体、ペリレン、ナフタレン、フラーレン、官能基化フラーレン誘導体、およびそれらの誘導体から選択される材料を含む請求項1に記載のデバイス。
前記混合物は、前記少なくとも一つのカソード側の広エネルギーギャップ材料および前記少なくとも一つの電子伝導材料を、体積比で10:1〜1:10となる範囲の比率で含む請求項1に記載のデバイス。
前記混合物は、前記少なくとも一つのカソード側の広エネルギーギャップ材料および前記少なくとも一つの電子伝導材料を、体積比で2:1〜1:2となる範囲の比率で含む請求項1に記載のデバイス。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本明細書で使用する用語「有機」は、有機感光性デバイスを作製するために使用されてもよいポリマー材料および小分子有機材料を含む。「小分子」は、ポリマーでない任意の有機材料を意味し、「小分子」は、実際にはかなり大きくてもよい。小分子は、状況次第で繰り返し単位を含んでもよい。たとえば、長鎖アルキル基を置換基として用いても、分子は「小分子」の分類から除外されない。また、小分子は、たとえばポリマー骨格上のペンダント基として、または、当該骨格の一部として、ポリマーに組み込まれてもよい。
【0039】
本開示の有機材料において、用語「ドナー」および「アクセプタ」は、接合しているが異なる二つの有機材料の、最高被占軌道(HOMO)および最低空軌道(LUMO)エネルギー準位の相対的な位置を意味する。他の材料と接するある材料のLUMOエネルギー準位が真空準位から遠い場合、その材料はアクセプタである。そうでない場合、それはドナーである。外部のバイアスがない場合、ドナー−アクセプタ接合における電子がアクセプタ材料に移動すること、および、正孔がドナー材料に移動することは、エネルギー的に起こりやすい。
【0040】
本明細書では、用語「カソード」は、次のように使用される。周囲の照射の下で、外部の印加電圧なく抵抗負荷に接続される非積層のPVデバイスまたは積層のPVデバイスの単一ユニット(たとえば太陽電池)において、電子が、隣接する光伝導性材料からカソードに移動する。同様に、用語「アノード」は、照射の下の太陽電池において、正孔が、隣接する光伝導性材料からアノードに移動するというように本明細書では使用され、電子が逆に移動することに相当する。「アノード」および「カソード」の電極は、直列の光起電性デバイスにおいて使用される電極のように、電荷輸送領域または再結合領域であってもよいことに留意すべきである。感光性光電子デバイスでは、デバイスの外部からの周囲の電磁放射の最大量が、光伝導的に活性である内部領域に受け入れられることが望ましい。つまり、電磁放射は、光伝導性の吸収によってそれが電気に変換されうる場所である、光伝導層に到達しなければならない。これは、電気接点の少なくとも一つが、入射する電磁放射を最小限に吸収し、最小限に反射しているべきであることをしばしば決定づける。場合によっては、そのような接点は、透明または少なくとも半透明であるべきである。電極は、関連する波長において、周囲の電磁放射の少なくとも50%を透過させる場合、「透明」であると言われる。電極は、関連する波長において、周囲の電磁放射の幾分かであるが、50%未満を透過させる場合、「半透明」であると言われる。反射電極は、吸収されることなくセルを通過した光が、セルを通して逆側に反射されるような、反射性の材料であってもよい。
【0041】
本明細書で使用する「光活性領域」は、励起子を発生させるために電磁放射を吸収するデバイスの領域を意味する。同様に、層が励起子を発生させるために電磁放射を吸収する場合、層は「光活性」である。励起子は、電流を発生させるために電子および正孔に解離しうる。
【0042】
本明細書で使用し、記載する「層」は、主な次元がX−Yである(すなわち、自身の長さおよび幅に沿う)感光性デバイスの要素または構成要素を意味する。層の用語は、単層または材料のシートに必ずしも限定されないことを理解すべきである。さらに、そのような層と他の材料または層との接合面を含む、ある層の表面は、不完全であってもよく、当該表面は、他の材料または層と浸透したり、混在されたり、入り組んだりするネットワークを示すことを理解すべきである。同様に、X−Y次元に沿う当該層の連続は、他の層または材料によって妨げられたり、あるいは干渉されたりしてもよいように、層が不連続であってもよいことも理解すべきである。
【0043】
本明細書で使用する第1のHOMOまたはLUMOエネルギー準位は、第2のHOMOまたはLUMOエネルギー準位より真空準位に近い場合、第2のHOMOまたはLUMOエネルギー準位「より小さい」。同様に、第1のHOMOまたはLUMOエネルギー準位は、第2のHOMOまたはLUMOエネルギー準位より真空準位から遠い場合、第2のHOMOまたはLUMOエネルギー準位「より大きい」。
【0044】
本明細書で使用する二つの軌道のエネルギー準位は、それらのエネルギーが小数第10位まで一致する場合、本明細書でその用語を使用するように、互いに「等しい」。たとえば、本開示においては、−3.70eVのLUMOエネルギーは、−3.79eVのLUMOエネルギーと「等しい」とみなされる。
【0045】
本明細書で使用するLUMO
AccおよびHOMO
Accは、少なくとも一つのアクセプタ材料の、最低空軌道エネルギー準位および最高被占軌道エネルギー準位を、それぞれ表す。
【0046】
本明細書で使用するLUMO
DonおよびHOMO
Donは、少なくとも一つのドナー材料の、最低空軌道エネルギー準位および最高被占軌道エネルギー準位を、それぞれ表す。
【0047】
本明細書で使用するLUMO
CS−WGおよびHOMO
CS−WGは、少なくとも一つのカソード側の広エネルギーギャップ材料の、最低空軌道エネルギー準位および最高被占軌道エネルギー準位を、それぞれ表す。
【0048】
本明細書で使用するLUMO
AS−WGおよびHOMO
AS−WGは、少なくとも一つのアノード側の広エネルギーギャップ材料の、最低空軌道エネルギー準位および最高被占軌道エネルギー準位を、それぞれ表す。
【0049】
本明細書で使用するLUMO
ECおよびHOMO
ECは、少なくとも一つの電子伝導材料の、最低空軌道エネルギー準位および最高被占軌道エネルギー準位を、それぞれ表す。
【0050】
本明細書で使用するLUMO
HCおよびHOMO
HCは、少なくとも一つの正孔伝導材料の、最低空軌道エネルギー準位および最高被占軌道エネルギー準位を、それぞれ表す。
【0051】
本明細書で使用するHOMO−LUMOギャップは、材料のHOMOとLUMOとの間のエネルギー差である。
【0052】
本明細書で使用する、広エネルギーギャップ材料に関するガラス転移温度(T
g)の値の範囲を記載した文脈における用語「間」は、終点値を含むことを意味する。
【0053】
本開示のデバイスは、少なくとも一つの励起子阻止電荷キャリアフィルタを含む。例として、本開示に係る有機感光性光電子デバイスの概略図を、
図1に示す。電極110は、アノードまたはカソードを含む。電極110がカソードを含む場合、電極140はアノードを含む。電極110がアノードを含む場合、電極140はカソードを含む。光活性領域は、ドナー/アクセプタ有機層120および130を含み、本明細書に記載するようなドナー−アクセプタヘテロ接合を形成する。光活性領域は、追加のドナーおよび/またはアクセプタ層を含み、たとえば、ハイブリッド平面混合ヘテロ接合を形成してもよい。有機層120は、少なくとも一つのドナー材料または少なくとも一つのアクセプタ材料を含む。有機層120が少なくとも一つのアクセプタ材料を含む場合、有機層130は、少なくとも一つのドナー材料を含む。有機層120が少なくとも一つのドナー材料を含む場合、有機層130は、少なくとも一つのアクセプタ材料を含む。
図1におけるドナー/アクセプタ層は、平面である必要はないことに留意すべきである。つまり、本開示は、有機光起電性デバイスに関する技術分野において周知である、あらゆる種類のドナー−アクセプタヘテロ接合を考慮し、特に、本明細書に記載するものを含む。
【0054】
図1のデバイスAにおいて、電極110がカソードを含み、有機層120が少なくとも一つのアクセプタ材料を含み、有機層130が少なくとも一つのドナー材料を含み、電極140がアノードを含む場合、層115は、励起子阻止電子フィルタである。電極110がアノードを含み、有機層120が少なくとも一つのドナー材料を含み、有機層130が少なくとも一つのアクセプタ材料を含み、電極140がカソードを含む場合、層115は、励起子阻止正孔フィルタである。
【0055】
いくつかの実施形態において、デバイスは、デバイスBのように、励起子阻止電子フィルタおよび励起子阻止正孔フィルタの両方を含む。電極110がカソードを含み、有機層120が少なくとも一つのアクセプタ材料を含み、有機層130が少なくとも一つのドナー材料を含み、層135が励起子阻止正孔フィルタであり、電極140がアノードを含む場合、層115は、励起子阻止電子フィルタである。電極110がアノードを含み、有機層120が少なくとも一つのドナー材料を含み、有機層130が少なくとも一つのアクセプタ材料を含み、層135が励起子阻止電子フィルタであり、電極140がカソードを含む場合、層115は、励起子阻止正孔フィルタである。
【0056】
図1には示していないが、デバイスAおよびBは、励起子阻止電子/正孔フィルタと最も近い電極との間に位置する、追加のバッファ層またはキャップ層を含んでもよい。
【0057】
励起子阻止電子フィルタは、カソードと少なくとも一つのアクセプタ材料との間に配置され、少なくとも一つのカソード側の広エネルギーギャップ材料および少なくとも一つの電子伝導材料を含む混合物を含む。少なくとも一つのカソード側の広エネルギーギャップ材料は、
・LUMO
Acc以下である最低空軌道エネルギー準位(LUMO
CS−WG)と、
・HOMO
Acc以上である、またはHOMO
Accより0.3eVの範囲内で小さい最高被占軌道エネルギー準位(HOMO
CS−WG)と、
・HOMO
Acc−LUMO
Accのエネルギーギャップより広いHOMO
CS−WG−LUMO
CS−WGのエネルギーギャップと、を有する。
【0058】
少なくとも一つの電子伝導材料は、LUMO
Acc以上である、またはLUMO
Accより0.3eVの範囲内で小さい(たとえば、0.2eVの範囲内で小さい)最低空軌道エネルギー準位(LUMO
EC)を有する。
【0059】
形態的に安定した材料を用いることによって、デバイスの動作寿命を延ばすために、本発明のいくつかの実施形態は、たとえば、デバイスが一般に動作する温度または温度範囲より高い、デバイスの最高動作温度より高い、閾値の温度より高いなどの十分に高いガラス転移温度を有する、カソード側の広エネルギーギャップ材料を用いる。
【0060】
いくつかの実施形態において、HOMO
CS−WGは、HOMO
Accより大きく、たとえば、少なくとも0.2eV大きく、少なくとも0.3eV大きく、少なくとも0.5eV大きく、少なくとも1eV大きく、少なくとも1.5eV大きく、または少なくとも2eV大きく、LUMO
CS−WGは、LUMO
Accより小さく、たとえば、少なくとも0.2eV小さく、少なくとも0.3eV小さく、少なくとも0.5eV小さく、少なくとも1eV小さく、少なくとも1.5eV小さく、または少なくとも2eV小さい。
【0061】
いくつかの実施形態において、LUMO
ECは、LUMO
Accに等しい。
【0062】
いくつかの実施形態において、LUMO
ECは、LUMO
Accより大きく、たとえば、0.5eVの範囲内で大きく、0.4eVの範囲内で大きく、0.3eVの範囲内で大きく、または0.2eVの範囲内で大きい。
【0063】
いくつかの実施形態において、LUMO
ECは、LUMO
Accより0.1eVだけ小さい、または大きい。
【0064】
いくつかの実施形態において、LUMO
CS−WGは、LUMO
ECより小さく、たとえば、少なくとも0.2eV小さく、少なくとも0.3eV小さく、少なくとも0.5eV小さく、少なくとも1eV小さく、少なくとも1.5eV小さく、または少なくとも2eV小さい。
【0065】
いくつかの実施形態において、LUMO
CS−WGは、LUMO
Accより0.2eVを超えて小さく、たとえば、0.3eVを超えて小さく、0.5eVを超えて小さく、1eVを超えて小さく、1.5eVを超えて小さく、または2eVを超えて小さい。
【0066】
いくつかの実施形態において、少なくとも一つのカソード側の広エネルギーギャップ材料は、バソキュプロイン(BCP)、バソフェナントロリン(BPhen)、p−ビス(トリフェニルシリル)ベンゼン(UGH−2)、(4,4’−N,N’−ジカルバゾール)ビフェニル(CBP)、N,N’−ジカルバゾリル−3,5−ベンゼン(mCP)、ポリ(ビニルカルバゾール)(PVK)、フェナントレン、アルキルおよび/またはアリール置換フェナントレン、アルキルおよび/またはアリール置換されたベンゼンの誘導体、トリフェニレンならびにアルキルおよび/またはアリール置換トリフェニレン、アザ置換トリフェニレン、オキサジアゾール、トリアゾール、アリール−ベンズイミダゾール、アダマンタンならびにアルキルおよび/またはアリール置換アダマンタン、テトラアリールメタンおよびその誘導体、9,9−ジアルキル−フルオレンおよびそのオリゴマー、9,9−ジアリール−フルオレンおよびそのオリゴマー、スピロ−ビフェニルおよびその置換誘導体、コランニュレンならびにそのアルキルおよび/またはアリール置換誘導体、ならびにそれらの誘導体から選択される材料を含む。
【0067】
たとえば、デバイスが一般に動作する温度または温度範囲より高い、デバイスの最高動作温度より高い、閾値の温度より高いなどの十分に高いT
gを有する、カソード側の広エネルギーギャップ材料を用いることによって、デバイスの動作寿命を増加させてもよい。たとえば、
図31A〜
図31Cおよび
図32A〜
図32Dに見られるように、動作温度が50℃から80℃に増加するのに伴う、BPhen:C
60(BPhenのT
g≒62℃)の混合物を含む励起子阻止電荷キャリアフィルタの経時的な性能(すなわち、正規化された応答性、曲線因子、V
OCおよびPCE)の低下は、動作温度が50℃から130℃に増加するのに伴う、TPBi:C
70(TPBiのT
g≒122℃)の混合物を含む励起子阻止電荷キャリアフィルタの経時的な性能の低下よりも速い。つまり、TPBi:C
70を用いるデバイスの性能は、BPhenを用いるデバイスより高い動作温度でも、時間の経過に伴い、よりゆっくり低下する。したがって、デバイスの効率および動作寿命は、たとえば、同様のT
g値を有するBPhenおよび阻止材料を、TPBiなどのより高いT
gを有するカソード側の広エネルギーギャップ材料に置き換えることによって、改善されうる。
【0068】
いくつかの実施形態において、少なくとも一つのカソード側の広エネルギーギャップ材料は、たとえば、デバイスが一般に動作する温度または温度範囲より高い、デバイスの最高動作温度より高い、閾値の温度より高いなどの十分に高いT
gを有する材料を含む。たとえば、いくつかの実施形態において、少なくとも一つのカソード側の広エネルギーギャップ材料は、3,3’,5,5’−テトラ[(m−ピリジル)−フェン−3−イル]ビフェニル(BP4mPy)、2,2’,2”−(1,3,5−ベンジントリイル)−トリス(1−フェニル−1−H−ベンズイミダゾール)(TPBi)、ビス(2−メチル−8−キノリノレート)−4−(フェニルフェノラト)アルミニウム(BAlq)、トリス(8−ヒドロキシ−キノリナト)アルミニウム(Alq3)、トリス(2,4,6−トリメチル−3−(ピリジン−3−イル)フェニル)ボラン(3TPYMB)、4,40−(1,3−フェニレン)ビス(2,6−ジ−トリルピリジン−3,5−ジカルボニトリル)(m−MPyCN)、4,40−(1,3−フェニレン)ビス(2,6−ジ(ビフェニル−4−イル)ピリジン−3,5−ジカルボニトリル)(m−PhPyCN)、4,40−(1,3−フェニレン)ビス(2,6−ジフェニルピリジン−3,5−ジカルボニトリル)(m−PyCN)、6,60−(1,4−フェニレン)ビス(2−フェニル−4−p−トリルニコチノニトリル)(p−PPtNN)、4,40−(1,4−フェニレン)ビス(2−フェニル−6−p−トリルニコチノニトリル)(p−PPtNT)、トリス(6−フルオロ−8−ヒドロキシ−キノリナト)アルミニウム(6FAlq3)、2,6−ビス(4−シアノフェニル)−4−フェニルピリジン−3,5−ジカルボニトリル(CNPyCN)、4,40−(1,4−フェニレン)ビス(2,6−ジ−トリルピリジン−3,5−ジカルボニトリル)(p−MPyCN)、ビスベンズイミダゾ[2,1−a:1’,2−b’]アントラ[2,1,9−def:6,5,10−d’e’f’]ジイソキノリン−10,21−ジオン(PTCBI)、5,10,15−トリベンジル−5H−ジインドロ[3,2−a:3’,2’−c]カルバゾール(TBDI)、5,10,15−トリフェニル−5H−ジインドロ[3,2−a:3’,2’−c]カルバゾール(TPDI)、1,3−ビス[3,5−ジ(ピリジン−3−イル)フェニル]ベンゼン(BmPyPhB)、1,3,5−トリ(m−ピリジン−3−イルフェニル)ベンゼン、1,3,5−トリス(3−ピリジル−3−フェニル)ベンゼン、3,3’−[5’−[3−(3−ピリジニル)フェニル][1,1’:3’,1”−ターフェニル]−3,3”−ジイル]ビスピリジン(TmPyPB),9,9−ジメチル−10−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)−9,10−ジヒドロアクリジン(PCZAC)、3,3−ジ(9H−カルバゾール−9−イル)ビフェニル(mCBP)、4,40−ビス(トリフェニルシリル)−ビフェニル(BSB)、およびそれらの誘導体から選択される材料を含む。
【0069】
いくつかの実施形態において、カソード側の広エネルギーギャップ材料のガラス転移温度は、85℃以上、95℃以上、105℃以上、115℃以上、125℃以上、135℃以上、145℃以上、155℃以上、165℃以上、175℃以上、185℃以上、195℃以上、200℃以上、225℃以上、または250℃以上である。
【0070】
いくつかの実施形態において、カソード側の広エネルギーギャップ材料のガラス転移温度は、85〜200℃の間であり、たとえば、90〜195℃の間、95〜190℃の間、100〜185℃の間、105〜180℃の間、110〜175℃の間、115〜170℃の間、または120〜165℃の間である。200℃より高い、たとえば、200〜300℃、200〜275℃、200〜250℃、または200〜225℃の間のガラス転移温度を有する材料が用いられてもよいことに留意すべきである。
【0071】
デバイスの動作温度は変化し、たとえば、(温度、光強度などの)周囲条件や、(太陽光の集光器などの)増強機構がデバイスと併用されるかどうかなどの、多くの要因に依存しうる。たとえば、周囲温度は、デバイスの地理的な位置、時期、時刻などによって変化しうる。同様に、光強度も、地理的な位置、時期、時刻、雲量、入射角および他の要因に依存しうる。したがって、いくつかの実施形態において、カソード側の広エネルギーギャップ材料は、たとえば、デバイスが一般に(たとえば、通常の周囲条件で)動作する温度または温度範囲より高い、通常の周囲条件の下でのデバイスの最高動作温度より高いなどの、十分に高いT
gを有する。
【0072】
いくつかの実施形態において、太陽光の集光器は、デバイスに向けられる光を増加させたり、強化したり、増進させたりするために、デバイスと統合されたり、併用されたりしてもよい。集光器および/または他の増強機構の使用により、通常の周囲条件の下でデバイスが経験する温度を超えて、デバイスの動作温度が上昇しうる。したがって、デバイスの安定性および動作寿命を増加させるために、カソード側の広エネルギーギャップ材料は、強化された照明条件の下でデバイスが経験する最高動作温度より高いT
gを有してもよい。
【0073】
いくつかの実施形態において、少なくとも一つのアクセプタ材料は、サブフタロシアニン、サブナフタロシアニン、亜鉛ジピリン錯体などのジピリン錯体、BODIPY錯体、ペリレン、ナフタレン、フラーレンおよびフラーレン誘導体(たとえばPCBM、ICBA、ICMAなど)、ならびにカルボニル置換ポリチオフェン、シアノ置換ポリチオフェン、ポリフェニレンビニレン、またはペリレンジイミド、ベンゾチアジアゾールなどの電子不足のモノマーを含むポリマー、またはフラーレンポリマーなどのポリマーから選択される材料を含む。C
60、C
70、C
76、C
82、C
84またはそれらの誘導体、たとえば、フェニル−C
61−酪酸−メチルエステル([60]PCBM)、フェニル−C
71−酪酸−メチルエステル([70]PCBM)またはチエニル−C
61−酪酸−メチルエステル([60]ThCBM)、ならびに3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸−ビスベンズイミダゾール(PTCBI)、ヘキサデカフルオロフタロシアニン(F
16CuPc)、およびそれらの誘導体などの他のアクセプタから選択されるものに限定されない。
【0074】
いくつかの実施形態において、少なくとも一つの電子伝導材料は、サブフタロシアニン、サブナフタロシアニン、亜鉛ジピリン錯体などのジピリン錯体、BODIPY錯体、ペリレン、ナフタレン、フラーレンおよびフラーレン誘導体(たとえばPCBM、ICBA、ICMAなど)、ならびにカルボニル置換ポリチオフェン、シアノ置換ポリチオフェン、ポリフェニレンビニレンなどのポリマー、もしくはペリレンジイミド、ベンゾチアジアゾールなどの電子不足のモノマーを含むポリマー、またはフラーレンポリマーから選択される材料を含む。C
60、C
70、C
76、C
82、C
84またはそれらの誘導体、たとえばフェニル−C
61−酪酸−メチルエステル([60]PCBM)、フェニル−C
71−酪酸−メチルエステル([70]PCBM)またはチエニル−C
61−酪酸−メチルエステル([60]ThCBM)、ならびに3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸−ビスベンズイミダゾール(PTCBI)、ヘキサデカフルオロフタロシアニン(F
16CuPc)、およびそれらの誘導体などの他のアクセプタから選択されるものに限定されない。
【0075】
いくつかの実施形態において、少なくとも一つのアクセプタ材料は、フラーレンおよび官能基化フラーレン誘導体から選択される材料を含む。いくつかの実施形態において、少なくとも一つの電子伝導材料は、フラーレンおよび官能基化フラーレン誘導体から選択される材料を含む。
【0076】
フラーレンは、少なくとも一つの電子伝導材料としての使用に関して、特に興味深い。C
60は、たとえば、長い波長における吸収が対称禁制遷移に起因する一方で、フレンケル型(すなわち単分子)の励起状態をもたらす許容電子遷移に起因する、260nmおよび340nmの波長における二つのピークを有するという特性によって支配される液体において、吸収スペクトルを有する。液体から固体への状態の遷移において、C
60は、たとえば、一つのフラーレンのHOMOからその最も隣接したLUMOへの電子の励起から生じる、分子間の電荷移動(CT)状態の発生によって、λ=400〜550nm間において、著しい吸収の増加を示す。C
60を、BCPなどのカソード側の広エネルギーギャップ材料と混合する場合、CT状態の吸収は、フレンケル型の特性による吸収よりも急速に減少する。したがって、フラーレンは、カソード側の広エネルギーギャップ材料と混合される場合、デバイスの効率に寄与しないフラーレン電子伝導材料において励起子を発生させないように、(70%のC
60および30%の広ギャップ材料などの、中程度の希釈物であっても)減少した吸収率を有する、優れた電子伝導材料として用いられうる。
【0077】
いくつかの実施形態において、少なくとも一つの電子伝導材料は、C
60およびC
70から選択される材料を含む。
【0078】
いくつかの実施形態において、少なくとも一つのアクセプタ材料および少なくとも一つの電子伝導材料は、同一の材料を含む。ある実施形態において、当該同一の材料は、フラーレンまたは官能基化フラーレン誘導体である。ある実施形態において、当該同一の材料は、C
60またはC
70である。いくつかの実施形態において、少なくとも一つのアクセプタ材料および少なくとも一つの電子伝導材料は、異なる材料を含む。
【0079】
いくつかの実施形態において、少なくとも一つのアクセプタ材料および少なくとも一つの電子伝導材料は、異なるフラーレンおよび官能基化フラーレン誘導体から選択される。
【0080】
いくつかの実施形態において、混合物は、少なくとも一つのカソード側の広エネルギーギャップ材料および少なくとも一つの電子伝導材料を、体積比で約10:1〜1:10、たとえば、体積比で約8:1〜1:8、体積比で約6:1〜1:6、体積比で約4:1〜1:4、または体積比で約2:1〜1:2となる範囲の比率で含む。ある実施形態において、当該比率は、約1:1である。特定される比率は、整数値および非整数値を含むことを理解すべきである。
【0081】
いくつかの実施形態において、ドナー−アクセプタヘテロ接合は、混合ヘテロ接合、バルクヘテロ接合、平面ヘテロ接合およびハイブリッド平面混合ヘテロ接合から選択される。ある実施形態において、ドナー−アクセプタヘテロ接合は、ハイブリッド平面混合ヘテロ接合(PM−HJ)である。たとえば、PM−HJ構造においては、低いFFをもたらしうる二つの主要な損失機構がある。一つは、速度がkBM=γ・n・pによって与えられる、PM−HJ構造の広範囲のドナー−アクセプタ混合領域における、自由電荷キャリアの二分子の再結合である。ここで、γはランジュバン再結合定数、n(p)は自由電子(正孔)密度である。二つ目の主要な損失は、純アクセプタ層における、励起子−ポーラロン消光に起因する。電子−ポーラロンの蓄積は、純アクセプタ/阻止層の接合面において観察され、消光、ひいては内部量子効率(IQE)の減少をもたらす。励起子およびポーラロンの濃度はともに、強度に比例するため、励起子−ポーラロン消光は、二分子の再結合と同様の関係に従うことに留意すべきである。両方の機構は、第四象限における電流密度−電圧(J−V)特性の傾きを増加させる順方向バイアスの下で、光電流の損失をもたらし、最終的に、FFおよびPCEの両方を減少させうる。
【0082】
光活性領域とカソードとの間に配置される励起子阻止電子フィルタは、二重層OPVセルの効率を増加させうる。電子伝導材料は、電子−ポーラロンを効率よく伝導し、広エネルギーギャップ材料は、励起子を阻止する。阻止する接合面において、励起子およびポーラロンを空間的に分離する電子フィルタの能力によって、励起子−ポーラロン消光は、当該電子フィルタを用いる二重層セルにおいて著しく減少されうる。同様に、これは、V
OCおよびFFが変化しないままである一方で、J
SCの著しい増加をもたらしうる。また、PM−HJセルは、混合光活性層における二分子の再結合の問題を抱える。しかし、本開示のフィルタ(混合層)は、純層である従来の阻止バッファ層と比較して、増加した伝導性によって、活性層を含む界面領域の減少をもたらす。結果として生じる、感光性の領域にわたる電界の増加は、より急速な電荷抽出をもたらす。同様に、これは、セルにおける二分子の再結合の減少をもたらす。
【0083】
いくつかの実施形態において、デバイスは、励起子阻止電子フィルタとカソードとの間に配置される、少なくとも一つの追加のバッファ層またはキャップ層をさらに含む。いくつかの実施形態において、少なくとも一つのキャップ層は、電子をカソードに伝導するために、LUMO
EC以上である、またはLUMO
ECより0.3eVの範囲内で小さい(たとえば、0.2eVの範囲内で小さい)LUMOエネルギー準位を有する。ある実施形態において、キャップ層のLUMOエネルギー準位は、LUMO
ECより0.5eVの範囲内で大きく、たとえば、0.4eVの範囲内で大きく、0.3eVの範囲内で大きく、0.2eVの範囲内で大きい。いくつかの実施形態において、キャップ層は、LUMO
ECより0.1eVだけ小さい、または大きいLUMOエネルギー準位を有する。いくつかの実施形態において、少なくとも一つのキャップ層は、フラーレンおよび官能基化フラーレン誘導体から選択される。いくつかの実施形態において、少なくとも一つのキャップ層は、PTCBIを含む。
【0084】
いくつかの実施形態において、キャップ層は、電子のカソードへの伝導を促さないLUMOエネルギー準位を有する材料を含む。これらの実施形態において、キャップ層は、損傷誘導性の状態を通して電子を輸送するために、十分に薄くてもよい。いくつかの実施形態において、少なくとも一つのキャップ層は、BCP、BPhen、UGH−2およびCBPから選択される材料を含む。
【0085】
いくつかの実施形態において、少なくとも一つのキャップ層および少なくとも一つの電子伝導材料は、同一の材料を含む。いくつかの実施形態において、少なくとも一つのキャップ層、少なくとも一つの電子伝導材料および少なくとも一つのアクセプタ材料は、同一の材料を含む。
【0086】
いくつかの実施形態において、少なくとも一つのキャップ層および少なくとも一つのカソード側の広エネルギーギャップ材料は、同一の材料を含む。
【0087】
励起子阻止正孔フィルタは、アノードと少なくとも一つのドナー材料との間に配置され、少なくとも一つのアノード側の広エネルギーギャップ材料および少なくとも一つの電子伝導材料を含む混合物を含む。少なくとも一つのアノード側の広エネルギーギャップ材料は、
・HOMO
Don以上である最高被占軌道エネルギー準位(HOMO
AS−WG)と、
・LUMO
Don以下である、またはLUMO
Donより0.3eVの範囲内で大きい最低空軌道エネルギー準位(LUMO
AS−WG)と、
・HOMO
Don−LUMO
Donのエネルギーギャップより広いHOMO
AS−WG−LUMO
AS−WGのエネルギーギャップと、を有する。
【0088】
少なくとも一つの正孔伝導材料は、HOMO
Don以下である(真空により近い)、またはHOMO
Donより0.2eVの範囲内で大きい(真空からより遠い)最高被占軌道エネルギー準位(HOMO
HC)を有する。
【0089】
形態的に安定した材料を用いることによって、デバイスの動作寿命を延ばすために、本発明のいくつかの実施形態は、たとえば、デバイスが一般に動作する温度または温度範囲より高い、デバイスの最高動作温度より高い、閾値の温度より高いなどの十分に高いガラス転移温度を有する、アノード側の広エネルギーギャップ材料を用いる。
【0090】
いくつかの実施形態において、HOMO
AS−WGは、HOMO
Donより大きく、たとえば、少なくとも0.2eV大きく、少なくとも0.3eV大きく、少なくとも0.5eV大きく、少なくとも1eV大きく、少なくとも1.5eV大きく、または少なくとも2eV大きく、LUMO
AS−WGは、LUMO
Donより小さく、たとえば、少なくとも0.2eV小さく、少なくとも0.3eV小さく、少なくとも0.5eV小さく、少なくとも1eV小さく、少なくとも1.5eV小さく、または少なくとも2eV小さい。
【0091】
いくつかの実施形態において、HOMO
HCは、HOMO
Donに等しい。
【0092】
いくつかの実施形態において、HOMO
HCは、HOMO
Donより小さく、たとえば、0.5eVの範囲内で小さく、0.4eVの範囲内で小さく、0.3eVの範囲内で小さく、または0.2eVの範囲内で小さい。
【0093】
いくつかの実施形態において、HOMO
HCは、HOMO
Donより0.1eVだけ小さい、または大きい。
【0094】
いくつかの実施形態において、HOMO
AS−WGは、HOMO
HCより大きく、たとえば、少なくとも0.2eV大きく、少なくとも0.3eV大きく、少なくとも0.5eV大きく、少なくとも1eV大きく、少なくとも1.5eV大きく、または少なくとも2eV大きい。
【0095】
いくつかの実施形態において、HOMO
AS−WGは、HOMO
Donより0.2eVを超えて大きく、たとえば、0.3eVを超えて大きく、0.5eVを超えて大きく、1eVを超えて大きく、1.5eVを超えて大きく、または2eVを超えて大きい。
【0096】
いくつかの実施形態において、少なくとも一つのアノード側の広エネルギーギャップ材料は、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(1−ナフチル)−1−1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(NPD)およびN,N’−ビス−(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス−(フェニル)−ベンジジン(TPD)などのテトラアリールベンジジン、トリアリールアミン、5,10−二置換アントラセン、オリゴチオフェン、9,9−ジアルキル−フルオレンおよびそのオリゴマー、9,9−ジアリール−フルオレンおよびそのオリゴマー、オリゴフェニレン、スピロ−ビフェニルおよびその置換誘導体、ならびにそれらの誘導体から選択される材料を含む。
【0097】
たとえば、デバイスが一般に動作する温度または温度範囲より高い、デバイスの最高動作温度より高い、閾値の温度より高いなどの十分に高いT
gを有する、アノード側の広エネルギーギャップ材料を用いることによって、デバイスの動作寿命を増加させてもよい。たとえば、いくつかの実施形態において、少なくとも一つのアノード側の広エネルギーギャップ材料は、3,3’,5,5’−テトラ[(m−ピリジル)−フェン−3−イル]ビフェニル(BP4mPy)、2,2’,2”−(1,3,5−ベンジントリイル)−トリス(1−フェニル−1−H−ベンズイミダゾール)(TPBi)、ビス(2−メチル−8−キノリノレート)−4−(フェニルフェノラト)アルミニウム(BAlq)、トリス(8−ヒドロキシ−キノリナト)アルミニウム(Alq3)、トリス(2,4,6−トリメチル−3−(ピリジン−3−イル)フェニル)ボラン(3TPYMB)、4,40−(1,3−フェニレン)ビス(2,6−ジ−トリルピリジン−3,5−ジカルボニトリル)(m−MPyCN)、4,40−(1,3−フェニレン)ビス(2,6−ジ(ビフェニル−4−イル)ピリジン−3,5−ジカルボニトリル)(m−PhPyCN)、4,40−(1,3−フェニレン)ビス(2,6−ジフェニルピリジン−3,5−ジカルボニトリル)(m−PyCN)、6,60−(1,4−フェニレン)ビス(2−フェニル−4−p−トリルニコチノニトリル)(p−PPtNN)、4,40−(1,4−フェニレン)ビス(2−フェニル−6−p−トリルニコチノニトリル)(p−PPtNT)、トリス(6−フルオロ−8−ヒドロキシ−キノリナト)アルミニウム(6FAlq3)、2,6−ビス(4−シアノフェニル)−4−フェニルピリジン−3,5−ジカルボニトリル(CNPyCN)、4,40−(1,4−フェニレン)ビス(2,6−ジ−トリルピリジン−3,5−ジカルボニトリル)(p−MPyCN)、ビスベンズイミダゾ[2,1−a:1’,2−b’]アントラ[2,1,9−def:6,5,10−d’e’f’]ジイソキノリン−10,21−ジオン(PTCBI)、5,10,15−トリベンジル−5H−ジインドロ[3,2−a:3’,2’−c]カルバゾール(TBDI)、5,10,15−トリフェニル−5H−ジインドロ[3,2−a:3’,2’−c]カルバゾール(TPDI)、1,3−ビス[3,5−ジ(ピリジン−3−イル)フェニル]ベンゼン(BmPyPhB)、1,3,5−トリ(m−ピリジン−3−イルフェニル)ベンゼン、1,3,5−トリス(3−ピリジル−3−フェニル)ベンゼン、3,3’−[5’−[3−(3−ピリジニル)フェニル][1,1’:3’,1”−ターフェニル]−3,3”−ジイル]ビスピリジン(TmPyPB),9,9−ジメチル−10−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)−9,10−ジヒドロアクリジン(PCZAC)、3,3−ジ(9H−カルバゾール−9−イル)ビフェニル(mCBP)、4,40−ビス(トリフェニルシリル)−ビフェニル(BSB)、およびそれらの誘導体から選択される材料を含む。
【0098】
いくつかの実施形態において、アノード側の広エネルギーギャップ材料のガラス転移温度は、85℃以上、95℃以上、105℃以上、115℃以上、125℃以上、135℃以上、145℃以上、155℃以上、165℃以上、175℃以上、185℃以上、195℃以上、200℃以上、225℃以上、または250℃以上である。
【0099】
いくつかの実施形態において、アノード側の広エネルギーギャップ材料のガラス転移温度は、85〜200℃の間、90〜195℃の間、95〜190℃の間、100〜185℃の間、105〜180℃の間、110〜175℃の間、115〜170℃の間、または120〜165℃の間である。200℃より高い、たとえば、200〜300℃、200〜275℃、200〜250℃、または200〜225℃の間のガラス転移温度を有する材料が用いられてもよいことに留意すべきである。
【0100】
デバイスの動作温度は変化し、たとえば、(温度、光強度などの)周囲条件や、(太陽光の集光器などの)増強機構がデバイスと併用されるかどうかなどの、多くの要因に依存しうる。たとえば、周囲温度は、デバイスの地理的な位置、時期、時刻などによって変化しうる。同様に、光強度も、地理的な位置、時期、時刻、雲量、入射角および他の要因に依存しうる。したがって、いくつかの実施形態において、アノード側の広エネルギーギャップ材料は、たとえば、デバイスが一般に(たとえば、通常の周囲条件で)動作する温度または温度範囲より高い、通常の周囲条件の下でのデバイスの最高動作温度より高いなどの、十分に高いT
gを有する。
【0101】
いくつかの実施形態において、太陽光の集光器は、デバイスに向けられる光を増加させたり、強化したり、増進させたりするために、デバイスと統合されたり、併用されたりしてもよい。集光器および/または他の増強機構の使用により、通常の周囲条件の下でデバイスが経験する温度を超えて、デバイスの動作温度が上昇しうる。したがって、デバイスの安定性および動作寿命を増加させるために、アノード側の広エネルギーギャップ材料は、強化された照明条件の下でデバイスが経験する最高動作温度より高いT
gを有してもよい。
【0102】
いくつかの実施形態において、少なくとも一つのドナー材料は、銅フタロシアニン(CuPc)、クロロアルミニウムフタロシアニン(ClAlPc)、スズフタロシアニン(SnPc)、亜鉛フタロシアニン(ZnPc)および他の修飾されたフタロシアニンなどのフタロシアニン、ホウ素サブフタロシアニン(SubPc)などのサブフタロシアニン、ナフタロシアニン、メロシアニン色素、ホウ素ジピロメテン(BODIPY)色素、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)(P3HT)などのチオフェン、低バンドギャップポリマー、ペンタセンおよびテトラセンなどのポリアセン、ジインデノペリレン(DIP)、スクアライン(SQ)色素、テトラフェニルジベンゾペリフランテン(DBP)、ならびにそれらの誘導体から選択される材料を含む。スクアラインのドナー材料の例は、2,4−ビス[4−(N,N−ジプロピルアミノ)−2,6−ジヒドロキシフェニル]スクアライン、2,4−ビス[4−(N,N−ジイソブチルアミノ)−2,6−ジヒドロキシフェニル]スクアライン、および2,4−ビス[4−(N,N−ジフェニルアミノ)−2,6−ジヒドロキシフェニル]スクアライン(DPSQ)を含むが、これらに限定されない。
【0103】
いくつかの実施形態において、少なくとも一つの正孔伝導材料は、銅フタロシアニン(CuPc)、クロロアルミニウムフタロシアニン(ClAlPc)、スズフタロシアニン(SnPc)、亜鉛フタロシアニン(ZnPc)および他の修飾されたフタロシアニンなどのフタロシアニン、ホウ素サブフタロシアニン(SubPc)などのサブフタロシアニン、ナフタロシアニン、メロシアニン色素、ホウ素ジピロメテン(BODIPY)色素、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)(P3HT)などのチオフェン、低バンドギャップポリマー、ペンタセンおよびテトラセンなどのポリアセン、ジインデノペリレン(DIP)、スクアライン(SQ)色素、テトラフェニルジベンゾペリフランテン(DBP)、ならびにそれらの誘導体から選択される材料を含む。スクアラインのドナー材料の例は、2,4−ビス[4−(N,N−ジプロピルアミノ)−2,6−ジヒドロキシフェニル]スクアライン、2,4−ビス[4−(N,N−ジイソブチルアミノ)−2,6−ジヒドロキシフェニル]スクアライン、および2,4−ビス[4−(N,N−ジフェニルアミノ)−2,6−ジヒドロキシフェニル]スクアライン(DPSQ)を含むが、これらに限定されない。
【0104】
いくつかの実施形態において、少なくとも一つのドナー材料および少なくとも一つの正孔伝導材料は、同一の材料を含む。いくつかの実施形態において、少なくとも一つのドナー材料および少なくとも一つの正孔伝導材料は、異なる材料を含む。
【0105】
いくつかの実施形態において、混合物は、少なくとも一つのアノード側の広エネルギーギャップ材料および少なくとも一つの正孔伝導材料を、体積比で約10:1〜1:10、たとえば、体積比で約8:1〜1:8、体積比で約6:1〜1:6、体積比で約4:1〜1:4、または体積比で約2:1〜1:2となる範囲の比率で含む。ある実施形態において、当該比率は、約1:1である。特定される比率は、整数値および非整数値を含むことを理解すべきである。
【0106】
いくつかの実施形態において、デバイスは、励起子阻止正孔フィルタとアノードとの間に配置される、少なくとも一つの追加のバッファ層またはキャップ層をさらに含む。
【0107】
本明細書に開示する有機感光性光電子デバイスは、所望の構造特性を提供する任意の基板上に生成され、配置されうる。したがって、いくつかの実施形態において、デバイスは、基板をさらに含む。たとえば、基板は、フレキシブルでも固くてもよく、平面でも非平面でもよい。基板は、透明でも、半透明でも、不透明でもよい。基板は、反射性でもよい。プラスチック、ガラス、金属および石英は、固い基板の材料の例である。プラスチック箔、金属箔および薄いガラスは、フレキシブル基板の材料の例である。基板の材料および厚さは、所望の構造特性および光学特性を取得するように選択されてもよい。
【0108】
本開示の有機感光性光電子デバイスは、たとえば、太陽電池、光検出器または光伝導体などのPVデバイスとして作用してもよい。
【0109】
本明細書に記載する有機感光性光電子デバイスが、PVデバイスとして作用する場合、光伝導性の有機層において用いられる材料およびそれらの厚さは、たとえば、デバイスの外部量子効率を最適化するように、選択されてもよい。たとえば、適切な厚さは、デバイスにおいて所望の光の間隔を達成させ、および/または、デバイスにおいて抵抗を減少させるように、選択されうる。本明細書に記載する有機感光性光電子デバイスが、光検出器または光伝導体として作用する場合、光伝導性の有機層において用いられる材料およびそれらの厚さは、たとえば、所望のスペクトル領域に対するデバイスの感度を最大化させるように、選択されてもよい。
【0110】
そして、デバイスは、少なくとも一つの平滑層をさらに含んでもよい。平滑層は、たとえば、光活性層と、電極のいずれか一方または両方との間に位置してもよい。3,4−ポリエチレンジオキシチオフェン:ポリスチレンスルホン酸塩(PEDOT:PSS)を含む膜は、平滑層の例である。
【0111】
本開示の有機感光性光電子デバイスは、二つ以上のサブセルを含む直列のデバイス(直列デバイス)として存在してもよい。本明細書で使用するサブセルは、少なくとも一つのドナー−アクセプタヘテロ接合を含むデバイスの構成要素を意味する。サブセルが感光性光電子デバイスとして個別に使用される際、それは、一般的に電極一式を含む。直列デバイスは、直列のドナー−アクセプタヘテロ接合間に、電荷輸送材料、電極、または電荷再結合材料もしくはトンネル接合を含んでもよい。いくつかの直列の構造において、隣接したサブセルは、共有物(すなわち共有された電極、電荷輸送領域または電荷再結合領域)を使用できる。他の場合、隣接したサブセルは、共通の電極または電荷輸送領域を共有しない。サブセルは、並列または直列に、電気的に接続されてもよい。
【0112】
いくつかの実施形態において、電荷輸送層または電荷再結合層は、Al、Ag、Au、MoO
3、Li、LiF、Sn、Ti、WO
3、インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化スズ(TO)、ガリウムインジウムスズ酸化物(GITO)、酸化亜鉛(ZO)または亜鉛インジウムスズ酸化物(ZITO)から選択されてもよい。他の実施形態において、電荷輸送層または電荷再結合層は、金属ナノクラスター、ナノ粒子またはナノロッドから構成されてもよい。
【0113】
他の実施形態によれば、本開示のデバイスは、本明細書に記載するように、二つ以上のサブセルを含むデバイスの、第1のサブセルと第2のサブセルとの間に配置される励起子阻止電荷キャリアフィルタを含んでもよい。例として、本開示に係る有機直列感光性光電子デバイスの概略図を
図29に示す。電極110は、アノードまたはカソードを含む。電極110がカソードを含む場合、電極140はアノードを含む。電極110がアノードを含む場合、電極140はカソードを含む。直列デバイスは、二つの光活性領域150および160を含む。これらの領域の各々は、ドナーおよびアクセプタの有機材料を含み、本明細書に記載するようなドナー−アクセプタヘテロ接合を形成してもよい。
【0114】
図29のデバイスAにおいて、層115は、本明細書に記載するような励起子阻止電子フィルタである。いくつかの実施形態において、層115は、本明細書に記載するような励起子阻止正孔フィルタであってもよい。層115は、サブセルの、光活性領域150と光活性領域160との間に配置される。さらに他の実施形態において、
図29のデバイスBに示すように、直列デバイスは、追加の励起子阻止電荷キャリアフィルタを含んでもよい。たとえば、直列感光性デバイスは、サブセル間に配置される二つの電荷キャリアフィルタを含んでもよい。この構造では、励起子阻止電荷フィルタ115が励起子阻止正孔フィルタである場合、励起子阻止電荷フィルタ135は励起子阻止電子フィルタであり、逆の場合も同様である。また、直列デバイスは、光活性領域150と電極140との間など、光活性領域と電極との間に配置される励起子阻止電荷キャリアフィルタをさらに含んでもよい。
【0115】
図29には示していないが、デバイスAおよびBは、サブセル間に配置される追加の分離層をさらに含んでもよい。分離層は、少なくとも一つの電極、少なくとも一つの電荷輸送層、または、少なくとも一つの電荷再結合層を含んでもよい。たとえば、デバイスAにおいて、分離層は、励起子阻止電荷フィルタ115と、光活性領域150または光活性領域160のいずれか一方との間に配置されてもよく、任意で、励起子阻止電荷フィルタ115と隣接する。いくつかの実施形態において、分離層は、本技術分野で周知であるような、あるいは、本明細書に記載するような、電荷再結合層である。
【0116】
さらなる例として、デバイスBにおいて、分離層は、励起子阻止電荷フィルタ115と励起子阻止電荷フィルタ135との間に配置されてもよく、任意で、層115および層135のいずれか一方または両方と隣接する。いくつかの実施形態において、分離層は、本技術分野で周知であるような、あるいは、本明細書に記載するような、電荷再結合層である。
【0117】
図示するように、
図29のデバイスAにおいて、電荷再結合層が層115と光活性領域150との間に配置される場合であって、電極110がカソードを含むとき、層115は、励起子を阻止し、光活性領域160から電荷再結合層に正孔を伝導する、励起子阻止正孔フィルタであってもよい。
【0118】
あるいは、電極110がアノードである場合以外は同じ構造において、層115は、励起子を阻止し、光活性領域160から電荷再結合層に電子を伝導する、励起子阻止電子フィルタであってもよい。
【0119】
また、直列デバイスは、
図29のデバイスBに示すように、サブセル間に配置される二つ以上の励起子阻止電荷フィルタを含みうる。電荷再結合層が層115と層135との間に配置される場合であって、電極110がカソードを含むとき、層135は、励起子を阻止し、光活性領域160から電荷再結合層に正孔を伝導する、励起子阻止正孔フィルタであってもよい。層115は、励起子を阻止し、光活性領域150から電荷再結合層に電子を伝導する、励起子阻止電子フィルタであってもよい。
【0120】
あるいは、電極110がアノードである場合以外は同じ構造において、層135は、励起子を阻止し、光活性領域160から電荷再結合層に電子を伝導する、励起子阻止電子フィルタであってもよい。層115は、励起子を阻止し、光活性領域150から電荷再結合層に正孔を伝導する、励起子阻止正孔フィルタであってもよい。
【0121】
本開示の利点は、励起子阻止電荷キャリアフィルタが、広エネルギーギャップ材料を用いるため、透明であってもよいということである。透明な広エネルギーギャップ材料を電子伝導材料または正孔伝導材料と混合することによって、電子伝導材料または正孔伝導材料は、十分に希釈され、関連する波長において、励起子阻止電荷キャリアフィルタを透明にする。励起子阻止電荷キャリアフィルタは、関連する波長において、入射する電磁放射の少なくとも50%を透過させる場合、「透明」であると言われる。いくつかの実施形態において、当該フィルタは、関連する波長において、入射する電磁放射の少なくとも少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または約100%を透過させる。電荷キャリアフィルタは、関連する波長において、電磁放射をほとんど吸収しない場合(<1%)、光学的に無損失であると言われる。
【0122】
様々な実施形態において、デバイスは、好ましくは可視スペクトルにわたって透明である、一つ以上のバッファ層を用いてもよい。電荷を収集する/輸送するバッファ層は、たとえば、光活性領域と対応する電極との間にあってもよい。また、電荷を収集する/輸送するバッファ層は、たとえば、分離層と光活性領域との間に配置されてもよい。ある実施形態において、電荷を収集する/輸送する層は、金属酸化物から選択される材料を含む。ある実施形態において、当該金属酸化物は、MoO
3、V
2O
5、ZnOおよびTiO
2から選択される。
【0123】
層および材料は、本技術分野で周知である技術を用いて積層されてもよい。たとえば、本明細書に記載する層および材料は、溶液、蒸気または両方の組み合わせから、積層または共積層されうる。いくつかの実施形態において、有機材料または有機層は、溶液処理によって、たとえば、スピンコーティング、スピンキャスティング、スプレーコーティング、ディップコーティング、ドクターブレーディング、インクジェット印刷または転写印刷から選択される一つ以上の技術などによって、積層または共積層されうる。
【0124】
他の実施形態において、有機材料は、真空熱蒸着を用いて、たとえば、真空蒸着、有機気相堆積または有機蒸気ジェット印刷などを用いて、積層または共積層されてもよい。
【0125】
材料の混合物を含む、本開示の励起子阻止電荷キャリアフィルタは、積層の条件を変化させることによって作製されてもよい。たとえば、混合物における各材料の濃度は、各材料の積層の速度を変化させることによって制御されうる。
【0126】
本明細書に記載する実施形態は、多種多様な構造に関連して用いられてもよいことを理解すべきである。機能的な有機光起電性デバイスは、異なる方法で記載される様々な層を組み合わせることによって達成されてもよく、あるいは、設計、性能およびコストの要因に基づいて、層が完全に省略されてもよい。また、具体的に記載していない追加の層が、含まれてもよい。具体的に記載した材料以外の材料が、用いられてもよい。本明細書において様々な層に与えられる名称は、厳密に限定することを目的としたものではない。
【0127】
実施例以外において、あるいは特記しない限り、本明細書および特許請求の範囲で使用される、成分の量、反応条件、分析の測定結果などを示す全ての数字は、全ての場合において、用語「約」によって修飾されるものとして理解すべきである。したがって、そうでないと明記しない限り、本明細書および添付の特許請求の範囲に記載する数値パラメーターは、本開示によって取得しようとする所望の特性に応じて、変更してもよい概算値である。少なくとも、特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限するための試みとしてではなく、各数値パラメーターは、有効数字および通常の丸め技法による近似の数字を考慮して解釈すべきである。
【0128】
本開示の広い範囲に記載する数値的な範囲およびパラメーターは、概算値であるにも関わらず、特記しない限り、具体的な実施例において記載する数値は、可能な限り正確に記録されている。しかし、任意の数値は、それらのそれぞれの試験の測定結果において見られる標準偏差から必然的に生じる、一定の誤差を本質的に含む。
【0129】
本明細書に記載するデバイスおよび方法は、単なる例示を目的とする、以下の限定的でない例によってさらに説明される。
【0130】
(実施例)
(実施例1)
C
60およびバソキュプロイン(BCP)を様々な濃度で混合し、励起子阻止電子フィルタを形成した。BCPは、C
60(1.86eVの一重項、1.55eVの三重項)より高い一重項(3.17eV)および三重項(2.62eV)エネルギーと、LUMO(−1.6eV)とを有する広エネルギーギャップ材料であり、BCPを不活性なドーパントにし、C
60からのエネルギーおよび電子の両方の移動を妨げる。ドープされたC
60:BCP膜は、電子をなお伝導する一方で、励起子を効果的に阻止する。これらの特性に基づいて、他のバッファを含むデバイスと比較して改善されたデバイス性能をもたらすバッファ層/フィルタとして、ドープされた膜を利用した。
【0131】
フラーレンにドーピングするBCPの吸収の効果を、C
60:BCP膜を様々な体積比率で作製することによって調べた。純C
60膜およびドープされたC
60膜の吸収スペクトルを、
図2に示す。C
60の比率が減少すると、吸収は減少し、BCPの吸収に近づく。しかし、
図2の挿入図において示すように、フレンケル励起子および電荷移動(CT)励起子にそれぞれ対応する、340nmおよび450nmにおける二つの吸収のピークの減衰は、全く異なる速度を取った。340nmにおける許容フレンケル遷移の吸光係数は、この遷移の単分子の性質を反映する、ベールの法則によって予測されるような、C
60の比率に伴う線形的な減衰に一致していた。興味深いことに、450nmにおける分子間のCT吸収の吸光係数は、指数関数的な減衰を示し、xをC
60の体積比率とした式α=x
−2.4に一致した。これは、CT励起子の形成が2〜3の分子を伴うことを意味した。C
60:BCP膜の吸収スペクトルは、ドーピングの濃度がCT励起子に対して有意な効果を示し、適度なドーピングレベルであっても、その形成を抑制することを示した。
【0132】
(実施例2)
デバイスを、次の通りに作製した。パターニングされたITOで覆われたガラス基板(パターニングされたストライプの幅は2mm、厚さ=150nm±10nm、シート抵抗=20±5Ωcm
−2、透過率は550nmにおいて84%、Thin Film Devices社の厚意により作製)を石鹸を用いて洗浄し、テトラクロロエチレン、アセトンおよびプロパノールにおいて(各5分間)煮沸した。ITO基板を、高真空チャンバーの内部に投入する直前に、オゾン雰囲気(UVOCS T10X10/OES)に10分間曝露した。純性の材料の層を積層する速度は、次の通り、MoO
x(0.02nm/s)、NPD(0.1nm/s)、C
60(0.1nm/s)、BCP(0.1nm/s)およびAl(0.2nm/s)とした。ドープされた膜(C
60:BCPの体積含有率)を積層する速度は、次の通り、C
60:BCP(2:1)の場合は、C
60(0.08nm/s):BCP(0.04nm/s)の共積層とし、C
60:BCP(1:1)の場合は、C
60(0.06nm/s):BCP(0.06nm/s)の共積層とし、C
60:BCP(1:2)の場合は、C
60(0.04nm/s):BCP(0.08nm/s)の共積層とした。有機層の積層の後、2mmのストライプ幅を有するマスクをN
2の下で基板上に配置し、100nmのAlカソードを積層した。デバイスの面積は4mm
2であった。
【0133】
C
60からのはっきりとした光反応を観察するために、広いギャップの正孔輸送材料である、N,N’−ジ−[(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル]−1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(NPD)をドナーとして用いる、
図3に示す構造を有する二重層デバイスを作製した。デバイス間で観察される全ての変化が、界面効果の代わりに、ドープされた膜の体積に関連するように、D/A接合面におけるC
60の純層は、電荷分離の熱力学および動力学を守ることが意図された。
【0134】
1sunの強度(100mW/cm
2)を有する擬似AM1.5G照射の下での、デバイスの電流−電圧(J−V)特性と、外部量子効率(EQE)曲線とを、
図3に示す。表1に示すように、C
60:BCP層のドーピングの濃度が1:0から1:2に増加するにつれて、短絡回路電流(J
SC)は、3.0±0.1mA/cm
2から1.3±0.1mA/cm
2になり、1.7mA/cm
2ほど減少した。この減少は、EQEの測定結果に反映されるように、C
60の光反応の減少に起因しており、一方で、C
60の比率が減少するにつれて、開回路電圧(V
OC)は、0.87±0.01で大きく変化しないままであり、曲線因子(FF)は、0.45±0.01から0.49±0.01に増加した。EQEの反応の減少は、400nm〜550nmの間における反応の減少が、400nmより短い波長における反応より急速に生じるという、ドープされたC
60膜の吸収のプロファイルと、相互に大きく関連があった。CT励起子の影響は、D1およびD2を比較することによって、最も明確に確認されうる。これらのデバイスにおいて、350nmにおけるEQEの反応は、変化しないままであり、一方で、450nmにおけるEQEの反応は、23%から15.5%になり約3分の1ほど減少した。
【0135】
混合層におけるBCPのドーピングの濃度の増加に伴い光反応が減少するという観察は、広エネルギーギャップ材料であるUGH2を用いたSubPCの希釈物が、光電流の著しい増加をもたらしたという、J. Nat. Mater.2012年のMenkeらの観察とは、全く対照的であった。SubPcの場合、Menkeは、光電流の増加が、フォルスター半径が平均的な分子の分離距離より高速に増加した濃度の型があったという事実によって引き起こされた、励起子の拡散長の増加に起因したことを示した。拡散長の増加は、ドープされた膜における、フォトルミネッセンスの効率、励起状態の持続時間およびスペクトルの重なり積分の増加、ならびに無放射減衰速度の減少に起因した。これらの結果の間の対照性は、二つのシステムに関する励起子の起源を調べることによって、説明されうる。SubPcにおいては、単分子のフォルスター励起子が形成された。希釈物において、励起子の拡散長の増加が指数関数的である一方で、吸収の減少は、線形的であった。逆に、C
60においては、かなりの数の多分子により形成されたCT励起子が存在した。希釈物において、これは、拡散長のいかなる増加をも上回る、CT励起子の形成の指数関数的な減衰をもたらした。C
60におけるCTの吸収特性が、高い太陽放射照度の領域に存在するという事実によって、デバイスの全体の性能は低下した。
【0136】
混合デバイスが低い光電流を有する一方で、デバイスのV
OCは変化しないままであり、D/A接合面の維持がその所望の効果を達成したことを示した。C
60の希釈物において、FFが減少しなかったという事実は、混合膜が電子を効率よく輸送できたことを示した。J
SCの減少と組み合わせられた、変化しないV
OCおよびFFの増加は、希釈物において、電力変換効率(η)の50%より大きい減少をもたらし、1.14%(D1)から0.56%(D4)になった。しかし、混合膜の透明度の増加、および効率のよい電荷の輸送は、C
60:BCP膜を、バッファ層に関する魅力的な候補にする。
【0138】
(実施例3)
図4に示すデバイスを、実施例2に開示する作製方法によって作製した。
図4は、1sun、AM1.5G照射の下でのデバイスのJ−V曲線と、波長の関数としての外部量子効率のプロットとを、挿入図におけるデバイスの構造(x=10nm(D7)、20nm(D6)、30nm(D5)と共に示す。表2は、このデバイスに関する性能データを提供する。
【0140】
(実施例4)
図5に示すデバイスを、実施例2に開示する作製方法によって作製した。
図5は、1sun、AM1.5G照射の下でのデバイスのJ−V曲線と、波長の関数としての外部量子効率のプロットとを、挿入図におけるデバイスの構造(x=0nm(D8)、20nm(D9)、40nm(D10))と共に示す。表3は、このデバイスに関する性能データを提供する。
【0142】
(実施例5)
図6(下図の挿入図)に示す、OPVデバイスを作製した。二つのC
60層(一方は、x≦35nm厚であり、他方は、[40nm−x]厚である)の間に挟まれる、10nm厚のBCP:C
60層を含むOPVを、赤吸収ドナー(2,4−ビス[4−(N,N−ジフェニルアミノ)−2,6−ジヒドロキシフェニル]スクアライン)(DPSQ)を用いて作製した。純C
60およびBCP:C
60膜の合計の厚さは、50nmであった。
図6は、x=5nm〜35nmを有するデバイスD20〜D23の、J−VおよびEQEの特性を示し、他の性能パラメーターを、表4に示す。BCP:C
60層がD/A接合面の方に移動するにつれて(すなわち、xが減少するにつれて)、J
SCは、6.2±0.3mA/cm
2から4.1±0.2mA/cm
2に減少した。この傾向は、D/A接合面に隣接する純C
60層の厚さが減少するにつれて(表4のD20〜D23)、C
60からの反応が減少したEQEスペクトルにおいても見られた。これらのデータは、金属電極に隣接するC
60膜において発生する励起子が、自由電荷への解離が発生しうるD/A接合面に拡散することを、BCP:C
60が防ぐことを示した。一方で、混合層は、一定の高いFF=0.72±0.01およびV
OC=0.94±0.01Vから推測されるように、電荷の輸送を妨げない。D/A接合面に隣接するC
60層の厚さを、x=5nmから35nmに増加させると、1sun、AM1.5G照射の下での電力変換効率は、2.7±0.1%から4.1±0.1%に増加した。
【0144】
(実施例6)
図7に示すデバイスを、実施例2に開示する作製方法によって作製した。
図7は、1sun、AM1.5G照射の下でのデバイスのJ−V曲線(挿入図は、デバイスの特性を示す)と、波長の関数としての外部量子効率(挿入図は、デバイスの構造を示す)とを示す。これらのデバイスにより、電荷の収集を改善するための追加の層で覆われた混合バッファ層の性能を、単一の純PTCBIバッファ層と比較した。
【0145】
(実施例7)
図8に示すデバイスを、実施例2に開示する作製方法によって作製した。
図8は、様々なバッファ層に関する、ゼロバイアスにおけるEQEに正規化された、印加バイアス(+0.5Vは破線、−1Vは実線)の下での、外部量子効率を示す。これらのデータは、混合バッファ層が、デバイスのバイアス依存性を減少させ、活性層/バッファの接合面における電荷の蓄積の減少を示し、結果として、励起子−ポーラロン消光の量を減少させたことを示した。
【0146】
(実施例8)
ドープされた層において用いられる状態の密度の減少が、励起子の移動の速度を減少させるという統計的な方法において、混合層が励起子を阻止する機構を評価できる。混合層においては、エネルギーが移動できる、著しく減少した状態の数があり、それらの過程を効果的に阻止する。状態の密度における変化の効果を、モンテカルロシミュレーションによってモデル化し、その結果を
図9で確認できる。このモデルにおいては、励起子を、混合膜に隣接する純膜においてランダムに発生させた。そして、拡散をシミュレーションするために、励起子は、所定のステップ数の間のランダムウォークによって移動し、それらの最終的な位置が記録された。励起子は、最隣接ホッピングによってのみ移動すると仮定した。ドープされた層と純層との間の接合面において、層間のホッピングに関する確率を、各々の層において用いられるサイトの相対数によって測定した。当該モデルは、等しいサイトの密度を有する二つの材料の間の接合に関して、励起子の50%がバッファに拡散したことを予測した。1:1のC
60:BCPのバッファに近づくC
60のフレンケル励起子の場合に対応した、バッファにおけるサイトの50%が減少した場合、励起子の20%のみが移動した。80%のサイトの減少において、1:1のC
60:BCPのバッファに近づくCT励起子の場合をシミュレーションすると、励起子の5%未満が移動した。これらのシミュレーションは、統計的な手段を考慮するのみにすぎないが、ドープされたバッファが、励起子をかなり良好に阻止したことを示した。
【0147】
(実施例9)
図10に示すように、上図において、異なるバッファ層で覆われたC
70の正規化された吸光スペクトルを、波長の関数としてプロットした。これらのデータは、混合するほど、励起子のエネルギーが大きくなり、励起子の阻止に役立つことを示した。下図は、消光層(NPD)、阻止層(BCP)および混合バッファ層で覆われた(450nmで励起された)C
70の発光スペクトルを示す。
【0148】
(実施例10)
図11に示すように、様々なバッファ層で覆われたデバイスのEQEスペクトル(上図)と、0.8sun、AM1.5G照射の下でのデバイスのJ−V曲線(下図)は、他のバッファ層と比較して、化合物のバッファの含有による性能の改善を示した。
【0149】
(実施例11)
C
60:BCPからなるバッファの使用に関して調べ、その性能を、以前に開発されたバッファであるBCPおよびPTCBIの性能と、C
60:BCPがBCPまたはPTCBIで覆われた化合物のバッファにおける性能と比較した。これらのデバイスにおいては、活性層をDPSQ/C
60から構成した。J−V、EQEおよびデバイスの構造を
図12に示し、関連するデータを表5に示す。デバイスのV
OCは、バッファとは無関係に、0.95±0.01Vで一定のままであった。10nmのPTCBIバッファで覆われたデバイス(D13)は、PTCBI
20からの寄生の光吸収によって、最も小さいJ
SCである7.1±0.1mA/cm
2を示した。PTCBIとは異なり、10nmの厚さを有すその他のバッファである、BCP(D11)およびC
60:BCP(D12)は、吸収せず、7.5±0.1mA/cm
2および7.6±0.1mA/cm
2へのJ
SCの増加をそれぞれもたらした。15nmの厚さを有する化合物のバッファ層である、C
60:BCP/PTCBI(D14)およびC
60:BCP/BCP(D15)は、8.1±0.1mA/cm
2および8.3±0.1mA/cm
2という、よりいっそう高いJ
SCをそれぞれ有した。EQEの測定結果は、C
60の反応の変化と、バッファの10nmから15nmへの遷移に対するJ
SCの増加が光学効果に起因したことを確認した、転送行列形式
9を用いた光学モデルとに、光電流の変化が起因したことを示した。また、著しい変化は、デバイス間のFFにおいても生じた。BCPで覆われたデバイスであるD11およびD15は、0.64±0.01および0.65±0.01という、最も小さいFFをそれぞれ示した。C
60:BCPのみからなるバッファ(D12)は、0.66±0.01という、わずかにより良好なFFを有した。PTCBIで覆われたデバイスであるD13およびD14は、0.68±0.01および0.71±0.01という、最も大きいFFをそれぞれ示した。光電流およびFFの増加によって、C
60:BCP/PTCBIバッファの電力変換効率は5.3±0.1%であり、C
60:BCP/BCPの5.0±0.1%、C
60:BCPの4.8±0.1%、PTCBIの4.8±0.1%、BCPの4.8±0.1%と比較して、最も大きかった。
【0150】
印加バイアスの下でのEQEと、照射強度の関数としての応答性(R)とを調べることによって、バッファ層の間のFFの差分を説明できた。
図13は、様々なバッファ層を含むデバイスに関して、それらの0VのEQEに正規化された、−1Vバイアスの下でのEQEを示す。400nm〜550nmの間におけるC
60からの信号を、外部バイアスを適用することによって調節し、一方で、600nm〜825nmの間におけるDPSQ反応は、一定のままであった。ゼロバイアスのEQEからの偏差の大きさにおいて、バッファ層の効果を確認できた。電圧依存性は、10nmのBCPのバッファで覆われたデバイス(D11)に関して最も大きく、一方で、10nmのC
60:BCPバッファ(D12)に関して、最も小さかった。
【0151】
10nmのC
60:BCP/5nmのBCPで覆われたデバイス(D15)は、10nmのBCP(D11)より小さい電圧依存性を示した。これは、二つの要因に起因した。第一に、BCP層がより薄く、捕らえられる電子の数を減少させたことである。第二に、上に示したように、C
60:BCP層が、電子をなお輸送する一方で、励起子がC
60:BCP/BCP接合面に拡散することを阻止したことである。これにより、励起子の、C
60:BCP/BCP接合面において捕らえられた電子との相互作用が防止された。
【0152】
10nmのPTCBIバッファ(D13)は、C
60からの等エネルギーの電子の輸送を、それらのLUMOの調整によって可能とした。同時に、PTCBI/Ag接合面は、電荷抽出のための双極子またはエネルギー的な障壁を形成しなかった。10nmのC
60:BCP/5nmのPTCBI(D14)は、同様に作用し、一方で、励起子がPTCBIに到達することも防いだ。
【0153】
図13に示すように、照射強度の関数としての応答性を調べることによって、ポーラロン−励起子に誘導される励起子の消光を、さらに証明した。応答性を、入射面積の光強度で除算した、デバイスの短絡回路電流密度として定義した。このパラメーターは、様々な照射強度の下で、デバイスの電流発生効率を比較することを可能とした。BCPで覆われたデバイスであるD11およびD15は、照射が1W/m
2(0.01sun)から100W/m
2(1sun)に増加するにつれて、はっきりとした非線形の応答性の減少を示した。減衰の非線形性は、励起子−ポーラロンに誘導される励起子の消光と整合し、増加した照射強度は、励起子およびポーラロンの両方の数の増加をもたらした。D12、D13およびD14に用いられたその他のバッファは全て、照射強度の関数としての応答性の小さい変化を示し、励起子−ポーラロンに誘導される励起子の消光が減少したことを示した。
【0155】
(実施例12)
C
60:BCPの励起子を阻止する特性を調べるために、二つの純C
60層の間に挟まれる、ドープされたC
60層を含むデバイスを、赤吸収ドナー(2,4−ビス[4−(N,N−ジフェニルアミノ)−2,6−ジヒドロキシフェニル]スクアライン)(DPSQ)
20,21を用いて作製した(
図14)。純C
60およびC
60:BCP膜の合計の厚さは一定であり、ドープされた膜の位置のみを、D/A接合面からAg電極の方に移動させた。
【0156】
デバイスD16〜19のJ−VおよびEQEの特性を
図14に示し、関連するデータを表6に示す。D/A接合面に隣接する純C
60層の厚さが、35nmから5nmに減少する(または、C
60:BCP層を、D/A接合面の方に移動させる)につれて、デバイスの光電流は、6.2±0.1mA/cm
2から4.1±0.1mA/cm
2に、著しく減少した。この傾向は、D/A接合面に隣接する純C
60層の厚さが減少するにつれて(D16〜D19)C
60からの反応が減少した、EQEスペクトルにおいてもみられた。これらの結果は、金属電極に隣接する純C
60膜において発生する励起子が、電荷を分離するためにD/A接合面に拡散することを、C
60:BCPが、効果的に阻止することによって、励起子阻止層として作用したことをはっきりと示した。その励起子を阻止する作用とは対照的に、デバイスのFFは、約0.72±0.01で一定のままであったため、ドープされた層は、優れた電荷伝導性を示した。V
OCも、0.94±0.01で一定のままであった。全体として、D/A接合面に隣接する純C
60層の厚さを、5nmから35nmに増加させると、ηは、2.7±0.1%から4.1±0.1%に増加した。
【0158】
(実施例13)
図15は、上図に、1sun、AM1.5G照射の下でのJ−V曲線を示し、下図に、様々なバッファ層を含むデバイスの、波長の関数としての外部量子効率のプロットを示す。これらのデバイスは、混合バッファ層の含有による性能の改善を示した。
【0159】
(実施例14)
図16は、上図に、C
60対BCPの様々な比率を含む様々なバッファ層を含むデバイスの、1sun、AM1.5G照射の下でのJ−V曲線を示し、下図に、外部量子効率のプロットを示す。これらのデバイスは、体積比で1:1となる最適な混合比率を示した。
【0160】
(実施例15)
ガラス基板/100nmのITO/10nmのMoO
3/54nmの1:8のDBP:C
70/バッファ/100nmのAgという構造を用いて、デバイスを作製した。
図17は、比較的厚い、DBPとC
70の純層との1:8の体積比を有する活性層を含む平面混合OPVセルに関する、1sun、擬似AM1.5G照射における、照射に関するJ−V(左上)、EQE(右上)および抽出された効率のパラメーター(下)を示す。各バッファに関する厚さおよびBPhen:C
70の体積比を、表に示す。最も良い曲線因子および効率は、混合領域と接点との間にある、追加のBPhen層またはPTCBI層を含む混合バッファを含むデバイスに関するものであり、また、この接点は、混合またはバルクヘテロ接合のデバイスを改善したことを示した。
【0161】
(実施例16)
ガラス基板/100nmのITO/5nmのMoO
3/25nmの1:8のDBP:C
70/バッファ/100nmのAgという構造を用いて、デバイスを作製した。
図18は、比較的薄い、DBPとC
70の純層との1:8の体積比を有する活性層、および様々なバッファを含む平面混合OPVセルに関する、0.7sun、擬似AM1.5G照射における、照射に関するJ−V(左上)、EQE(右上)および抽出された効率のパラメーター(下)を示す。各バッファに関する厚さおよびBCP:C
70の体積比を、表に示す。最も良い曲線因子および効率は、混合領域と接点との間にある、追加のBPhen層またはPTCBI層を含む混合バッファを含むデバイスに関するものであり、また、この接点は、混合またはバルクヘテロ接合のデバイスを改善し、混合層のデバイスにおいて、指数関数的な曲線因子を取得できたことを示した。
【0162】
(実施例17)
図19において特定される構造を用いて、デバイスを作製した。
図19(a)におけるデバイスは、ITO/MoO
3/DPSQ/C
60/C
60:BPhen(x)/BPhen/Alという構造を有した。
図19(b)におけるデバイスは、ITO/MoO
3/DPSQ/C
60/C
60:BCP(x)/BPhen/Alという構造を有した。
図19(c)におけるデバイスは、ITO/MoO
3/DPSQ/C
60/C
60:UGH2(x)/BPhen/Alという構造を有した。
図19は、BPhen、CBPおよびUGH2を用いた希釈物に関する、EQEおよびJ−V曲線を示す。全ての場合において改善が見られ、C
60/バッファ接合面における電荷の蓄積の減少が、改善をもたらしたことを確認した。
【0163】
(実施例18)
OPVセルを、2×10
−7torrの基準圧における真空熱蒸着(VTE)によって、インジウムスズ酸化物(ITO、シート抵抗:15Ω/□)を用いてプレコートされたガラス基板上に生成した。積層の前に、基板を、希釈されたTergitol(登録商標)(タイプNP−10)、脱イオン水、アセトンおよびイソプロピルアルコールにおいて洗浄し、紫外線オゾンに10分間曝露した。MoO
3をAcros Organics社から、C
60をMaterials and Electrochemical Research社から、BPhenおよびDBPをLuminescence Technology社から、C
70をSES Research社から取得した。DBP、C
60およびC
70を、温度勾配昇華によって、一度精製した。
【0164】
MoO
3層およびBPhen層を、0.1nm/sの速度で生成し、DBPおよびC
70を、DBPの0.02nm/sの積層速度と、C
70の0.16nm/sの積層速度とを用いて共積層し、1:8の比率を達成した。BPhen:C
60混合バッファを、BPhenおよびC
60をそれぞれ0.05nm/sの速度で共積層することによって生成し、1:1の混合物を作り出した。続いて、100nm厚のAgカソードを、15の配列であり、1mmの直径のデバイス(0.008cm
2のデバイス面積)を定義するシャドーマスクを通して積層した。作製に続いて、J−V特性およびEQEの測定のために、超高純度のN
2で満たされたグローブボックスの中に、デバイスを移動した。測定の間、試験されるデバイスのみを照射の下に置き、一方で、他のデバイスを暗闇において保管した。太陽シミュレーターの強度を、NRELにトレースできるSi基準セルを用いて校正し、J
SCを、スペクトル不整合に関して補正した。波長(l)の関数としてのEQEを、ロックインアンプと、200Hzにおいて三角波にされたXeランプからの単色光とを用いて取得した。J
SCおよびPCEの誤差は、光強度およびスペクトル校正の不確実性から主に生じる。
【0165】
混合HJセルを、真空熱蒸着(VTE)によって、MoO
3(10nm)/DBP:C
70(54nm、体積比1:8)/バッファ/Ag(100nm)という構造を用いて生成した。二つの異なるバッファ層として、8nm厚のBPhen(制御)と、5nm厚の純BPhen層で覆われた、10nm厚のBPhen:C
60の(体積比で)1:1の比率の混合層とを用いた。
図20は、制御および化合物のバッファを用いた混合HJデバイスの、J−V特性およびEQEスペクトルを示す。制御は、上述したように、擬似AM1.5G、1sunの照射(スペクトル不整合率=1.00±0.01)の下で、FF=55±1%、J
SC=12.5±0.3mA/cm
2、V
OC=0.91±0.1VおよびPCE=6.3±0.3%を有した。化合物の電子フィルタのバッファを含むセルは、三つの性能パラメーターの全てにおいて改善を示し、FF=63±1%、J
SC=12.8±0.3mA/cm
2、V
OC=0.93±0.1VおよびPCE=7.5±0.4%をもたらし、後者は、制御と比較して19%の増加に相当した。
【0166】
化合物のバッファを含むデバイスに関するFFの著しい改善を、(曲線の間の網掛け領域によって示した)
図20(a)に示し、エネルギー準位の図を、
図20(b)の挿入図に示す。以前の研究は、左の挿入図に示すように、エネルギー準位の屈曲がフラーレン/BCP接合面において生じ、電子の蓄積および大きい電圧降下をもたらしたことを示した。結果として、電圧が再分配されるにつれて、活性層にわたる電界は減少し、電荷抽出時間と、ひいては、電子および正孔が再結合する機会を有したドナー−アクセプタヘテロ接合面における電子および正孔の滞留時間とを増加させた。化合物のバッファの場合、1:1のBPhen:C
60の混合物の高い伝導性が、より少ない電子の蓄積と、それゆえに、接合面におけるより小さい電圧降下(
図20(b)の右の挿入図)と、DBP:C
70混合領域におけるより高い電界とをもたらした。同様に、このことは、減少した二分子の消光をもたらし、結果として、増加したFFと、
図20(b)に示すような、l=400nm〜550nmの間の波長において増加したEQEとをもたらした。
【0167】
両方のセルは、l<400nmおよびλ>550nmにおいて、ほぼ同一のEQEを示した(
図20(b)参照)。λ<400nmにおいては、減少した二分子の再結合によって、内部量子効率(IQE)が増加した一方で、BPhen:C
60混合バッファにおける寄生の吸収率から生じる、化合物のバッファのセルにおける光活性領域の吸収率が減少した。全体として、化合物のバッファのセルのEQEは、制御セルとほぼ等しかった。λ>550nmにおいては、DBP:C
70の混合領域において発生した励起子が、ほぼすぐに電荷に解離したため、吸収された光学パワーのピークは、電荷分布のピークと同様に、アノードの方に移動した。このことは、制御セルにおいて電子が蓄積される(カソード側に近い)DBP:C
70/BPhen接合面における正孔の数を減少させ、一方で、同時に、正孔の抽出を改善した。より長い励起波長における正孔および電子の空間的な分離は、制御セルにおける二分子の再結合を減少させ、同様に、ほぼ同一のEQEをもたらした。
【0168】
二分子の再結合の役割を理解するために、光強度(I)の関数として、両方のセルに関する応答性(R)を調べた。制御セルは、Iに伴うRの単調な減少を有し、I=0.6sunにおけるR=12.7±0.4A/Wから、I=2.7sunにおける11.8±0.3A/Wとなることがわかり、一方で、化合物のバッファのセルに関しては、Rは、同一の強度の範囲にわたって、0.2A/Wだけ減少した(
図21参照)。一般的に、J
SC=J
G−J
MM−J
BMであり、J
Gは光発生電流密度、J
MMは単分子の再結合電流密度、J
BMは二分子の再結合電流密度である。J
GおよびJ
MMはともに、Iに対して線形的に比例し、一方で、J
BM∝γ・n・p∝b・I
2であり、γはランジュバン係数、bは定数である。したがって、R=J
SC/I=R
0−β・Iであり、R
0は、二分子の再結合がない場合における応答性である。この解析に対する線形適合(
図21の破線)は、両方のセルに関して、R
0=12.9A/Wを取得した。ゼロの光強度における、両方のセルに関する同一の切片は、両方のOPVセルが、二分子の再結合がない場合にI→0になるにつれて、同一の応答性を有したことを示した。しかし、制御に関するβは、化合物のバッファを含むセルに関するβより、4倍大きかった。化合物のバッファのセルに関するより小さいβは、二分子の再結合が、制御セルのそれのわずか25%であったことを意味し、混合領域における増加した電界によって、電子および正孔の濃度が、平均して50%ほどそれぞれ減少したことを示した。供給される外部バイアスに関して、化合物のバッファのセルにおけるヘテロ接合にわたり、制御の内部電界と比較してより大きいこの内部電界は、改善された電荷抽出、ひいてはより高いFFをもたらした。
【0169】
化合物のバッファの電荷の輸送特性を、Matlabにおいてプログラムされた、層の3Dモンテカルロシミュレーションによって、さらに調べた。C
60の分子間の再隣接ホッピングに起因する電子の移動を伴う、立体格子におけるBPhenおよびC
60の分子のランダムな分布として、バッファをモデル化した。このモデルにおいては、電荷間のコロンビウムの相互作用を無視し、格子サイトを等エネルギーであると仮定し、印加電界によって与えられるエネルギー差を除外した。バッファ層の片側に注入された電荷に関する平均抽出時間を取得する、Miller−Abrahamsの理論によって、移動の可能性を算出した。そして、層の移動度を、抽出時間と電界との間の関係から算出し、純C
60層における電子のゼロ電界の移動度を設定することによって、5.1×10
−2cm
2/V・sという実験値に正規化した。1:1の混合バッファに関して、当該モデルは、4.7×10
−3cm
2/V・sという、純C
60のそれより一桁だけ低い、効果的な移動度を予測した。比較すると、純BPhen膜は、1.9×10
−5cm
2/V・sという有意に低い電子移動度を有し、消光を促進したバッファ接合面における電荷の蓄積をもたらした。
【0170】
1:1の混合バッファの異なる厚さに関する予測を調べることによって、モデルを分析し、結果を
図22(a)に示した。一定の電荷密度(すなわち、一定の照射強度)を仮定すると、供給電圧における(膜の移動度に対応する)抽出時間と、混合層の厚さとの間に、線形的な関係、言い換えれば直列抵抗の線形的な増加があることを確認した。混合バッファのDBP:C
60 OPVに関する実験データに対する適合を、
図22(a)の挿入図に示す。純BPhen層は、金属を積層する間に誘導される欠陥状態を通して電子を伝導し、その結果、厚さと抵抗との間に、超線形的な関係をもたらした。一方で、混合バッファの抵抗は、20nmまでもの厚さに伴い線形的に増加し、混合バッファにおける電子が、混合物におけるC
60によって、主に伝導されたことを示した。
【0171】
石英上における1:1のBPhen:C
60の混合物で覆われた40nm厚のC
70膜の、フォトルミネッセンス(PL)励起スペクトルを用いて、励起子を阻止する効率を実験的に調べた。検討中の混合物の表面に積層された層のPL強度を、「完全な」阻止層または消光層のいずれかのPL強度と比較することによって、これらの過程の相対的な重要性を確認できた。したがって、このために、8nm厚のBPhen層、または、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(1−ナフチル)−1−1’−ビフェニル−4,4’ジアミン(NPD)層を、基準となる、完全な励起子阻止層または消光層としてそれぞれ用いた。混合バッファのPL強度は、基準の阻止層に関して見られた強度とほぼ同一であり(
図22(b)参照)、BPhen:C
60の混合層が、効率よく励起子を阻止できたことを示した。BPhen:C
60の混合物は、比較的高い電子移動度を有するため、混合バッファ層は、効果的なフィルタとして作用して、励起子およびポーラロンを空間的に分離でき、純フラーレン層の内部における励起子−ポーラロン消光の減少をもたらした。
【0172】
(実施例19)
ハイブリッド平面混合ヘテロ接合(PM−HJ)を含むOPVセルを、実施例18に開示する実験によって作製した。OPVセルにおいて、DBPおよびC
70を、ドナーおよびアクセプタとしてそれぞれ用いた。OPVセルは、インジウムスズ酸化物(ITO)/MoO
3(10nm)/DBP:C
70(54nm、体積比で1:8)/C
70(9nm)/バッファ/Ag(100nm)というデバイス構造を有した。DBP:C
70のPM−HJ OPVセルにおいて、次の三つの異なるバッファ層、(1)8nm厚のバソフェナントロリン(BPhen)(制御)、(2)10nm厚のBPhen:C
60の1:1の比率の混合層、(3)5nm厚の純BPhen層で覆われた(2)と同一の混合バッファ、を用いた。
【0173】
図23は、バッファ層の構造(1)〜(3)を用いたデバイスに関する性能を比較して、電圧に対する電流密度(J−V)の特性と、外部量子効率であるEQEのスペクトルとを、表7のまとめと共に示した。
【0175】
制御セルは、以前の結果に相当する、あるいは以前の結果
1よりわずかに良好な、FF=56%および短絡回路電流J
SC=13.8±0.4mA/cm
2を有した。したがって、制御セルは、擬似AM1.5G、1sunの照射の下で、電力変換効率PCE=7.1±0.2%を示した。制御セルと比較して、BPhen:C
60(1:1)のフィルタのみを含むセルは、同様の開回路電圧(V
OC)=0.91±0.01Vを有したが、減少したポーラロン−励起子消光
2’3に起因して、FF=62±1%に増加させた。しかし、J
SC=12.8±0.3mA/cm
2であり、これは、上記に起因してわずかに小さくなっており、
図23(b)に示すように、λ<420nmおよびλ>550nmに関して、減少したEQEをもたらした。全体として、PCEは、1sunの照射の下で、7.2±0.2%にわずかに増加した。
【0176】
BPhen:C
60/BPhenの化合物のバッファを含むOPVセルは、制御と比較して18%の改善があり、FF=66±1%を有した。また、V
OCは、制御に関する0.91±0.1Vから、BPhen:C
60/BPhenバッファを含むセルに関する0.93±0.1Vに増加した。しかし、J
CSは、制御と比較して5%減の、13.2±0.4mA/cm
2に減少した。全体として、BPhen:C
60/BPhenバッファを含むOPVセルは、擬似AM1.5G、1sunの照射の下で、制御セルと比較して14%増の、PCE=8.1±0.4%を示した。
【0177】
図24において、両方のセルに関して、有機光活性領域(すなわち、DBP:C
70の混合層および純C
70のキャップ層)の吸収率η
Aを、転送行列法
4’5を用いて算出し、さらに、内部量子効率(IQE)を算出した。覆われたバッファのセルの吸収は、上述したように
3、BPhen:C
60の混合バッファの吸収によって、λ=350nm〜500nmの間で減少した。λ>500nmにおいては、混合バッファが透明であったため、二つのセルは、ほぼ同一の吸収スペクトルを有した。
【0178】
同様に、IQEは、BPhen:C
60/BPhenのバッファを含むセルに関して、制御セルと比較して、λ=350nm〜550nmの間で増加した。たとえば、BPhen:C
60/BPhenのバッファを含むセルに関するIQEは、λ=350nm〜500nmの間でEQEの〜90%を有し、λ=430nmにおいて〜100%に達し、吸収された全ての光子が、電極によって収集される電荷キャリアに変換されたことを示した。
【0179】
BPhen:C
60/BPhenのフィルタ化されたセルおよび制御に関する、0.4sunから2.7sunまでの範囲の光強度の関数として、応答性(R)およびPCEを調べた(
図25)。制御セルの応答性は、0.4sunにおけるR=14.9±0.4A/Watから、2.7sunにおける13.0±0.4A/Wに、強度に伴い単調に減少し、一方で、フィルタ化されたセルは、太陽強度のこの同一の範囲にわたって、変化しないままであった。また、制御セルは、
図25に示すように、応答性の単調な減少によって、光強度が増加するにつれて、PCEのロールオフを示した。BPhen:C
60/BPhenバッファを含むセルのPCEは、1sunにおいて、わずかに増加して最大になり、FFの減少によって、高い光強度において促進された二分子の再結合によって恐らく生じた、より高い光強度におけるロールオフを開始した。
【0180】
BPhen:C
60/BPhenバッファを含むDBP:C
70 PM−HJセルにおける、混合バッファ層の厚さも変化させた。1sunの照射の下でのJ−V特性およびEQEスペクトルを
図26に示し、デバイス性能を表8にまとめる。
【0182】
混合バッファの厚さが増加するにつれて、J
SCは単調に減少した。
図26(b)に示すように、混合層の厚さが増加するにつれて、EQEは、可視スペクトルにわたって減少した。V
OCは、混合バッファ層を含まないセルに関する0.91±0.01Vから、10nm厚の混合バッファを含むセルに関する0.93±0.01Vに、わずかに増加し、より厚い混合バッファ層に関しては、一定のままであった。FFは、制御セルに関する0.56±0.01から、10nm厚の混合バッファに関する0.66±0.01に増加し、より厚い混合バッファに関しては、表8に示すような増加した直列抵抗に起因して、ロールオフした。
【0183】
一方で、C
60およびBPhenの分子のランダムな分布としてモデル化された混合層を含む、立体格子における再隣接ホッピングの輸送についての3Dモンテカルロシミュレーションを用いて、混合バッファ層を通した電荷の輸送をモデル化した。電荷間のコロンビウムの相互作用を無視し、格子サイトを等エネルギーであると仮定し、印加電界によるエネルギー差を除外した。サイト間の相対的なホッピングの確率を、Miller−Abrahamsの式を用いて算出した。モデルの各々の時間ステップの間、電荷は、相対的なホッピングの確率によって重み付けされた、ホッピングするためのランダムな再隣接を選択した。選択されたサイトがBPhen分子を含む場合、電荷は、代わりに、そのステップの間動かないままであった。混合層および純層における電荷の動きは、その他の点では同一であった。
【0184】
電界の下で、サイトの100×100の擬似格子の片側に電荷を注入し、反対側から電荷が逃げる時間を測定することによって、異なる厚さに関する平均抽出時間を算出した。
図27は、混合層の厚さの関数として、電界に対する平均抽出時間を示す。対象となる混合層の厚さに関して、電界は、混合層における電荷の輸送を加速し、それゆえに、電界が増加するにつれて、平均抽出時間を減少させた。混合バッファの厚さが増加するにつれて、電荷が混合層を通って移動する時間が、より長くかかった。したがって、混合層の厚さが増加するにつれて、平均抽出時間はより長くなった。
【0185】
モデルの予測を分析するために、表8に示すような、暗闇におけるJ−V特性の適合によって取得される直列抵抗を、異なる混合層の厚さを有するPM−HJセルに関するモデル化からの値と比較した。異なる厚さを有する混合層の移動度を、1/抽出時間の電界依存性として、抽出時間の電界依存性から算出し、全てのシミュレーションされた層は、4.7x10
−3cm
2/V・sという効果的な移動度を示した。これは、
図27の挿入図に示すように、層の抵抗が、厚さに対して線形的に依存するはずであることを予測した。1:1の混合バッファ層の予測された移動度は、純C
60より一桁だけ小さく、有機物としては比較的高く、これらの層がいかに電荷を純層から効率よく抽出できたかを説明した。上記のシミュレーションに示すように、これらの層は、励起子の阻止に効果的であり、消光を抑制する、励起子およびポーラロンの空間的な分離をもたらした。
【0186】
(実施例20)
図28に示すデバイスを、図示するように作製した。全体の構造は、ガラス基板/ITO(100nm)/MoO
3(100nm)/バッファ1/DBP(20nm)/C
60(40nm)/バッファ2/Ag(100nm)であり、バッファ1およびバッファ2、ならびに対応する測定された効率のパラメーターを、表9に示す。
図28(a)は、DBPおよびC
60からなる活性層と、様々なバッファとを含むOPVセルに関する、1sun、擬似AM1.5G照射の下での、照射に関するJ−Vを示し、挿入図はNPDを示し、
図28(b)は、DBPおよびC
60からなる活性層と、様々なバッファとを含むOPVセルに関する、外部量子効率を示す。
【0188】
各フィルタに関する厚さ、組成および測定された効率のパラメーターを、表9に示す。基準と比較して、フィルタとしてのNPDの純層の含有は、FFの減少を伴い、J
SCの著しい増加をもたらした。DBPおよびNPDの1:1の混合物からなるフィルタの使用は、基準デバイスと比較して、J
CSをなお改善しながらも、NPD単体の使用と比較して、FFを改善することに役立った。カソードにおける電子フィルタと併用すると、NDP:DBPの正孔フィルタは、PCEの10%の増加をもたらした。
【0189】
(実施例21)
図30に示すデバイスを、図示するように作製した。全体の構造は、ガラス基板/ITO/MoO
3(10nm)/DBP:C
70(1:8)(54nm)/C
70(9nm)/バッファ/Al(100nm)であった。デバイスを、市販の事前にパターニングされたITO基板上に成長させた。基板を、溶剤およびUV−オゾンシステムを使用して洗浄した。有機層、金属酸化物およびカソードを、0.1nm/秒の速度で、熱蒸着器において堆積した。そして、デバイスの周囲にエポキシ層を配置し、スライドガラスを上に押し付けることによって、デバイスを封入した。このエポキシをUV硬化させた。
【0190】
一つのデバイスにおいて、バッファ層は、BPhenキャップ層(5nm)を伴うBPhen:C
60(1:1)(10nm)の混合層であった。別のデバイスにおいて、バッファ層は、TPBiキャップ層(3nm)を伴うTPBI:C
70(1:1)(10nm)の混合層であった。以下の表10に記載された材料や上述した他の材料などの、他の広エネルギーギャップ材料を用いてもよいことに留意すべきである。
【0191】
高温における寿命を試験するために、プリント回路基板から作製されたキャリアボードにデバイスを配置した。接点を半田付けした。抵抗加熱器を使用して、デバイスに銅板を貼りつけて、デバイス領域全体に熱を広げた。熱対を使用して温度を測定した。1000W/m
2のキセノンアークランプを使用してデバイスを照射し、Matlabプログラムにより制御された電流−電圧源メーターを使用して、30分毎に測定した。
【0192】
図31A〜Cは、BPhenを用いたデバイスに関する、様々な温度における正規化された性能値を示し、
図32A〜Dは、TPBiを用いたデバイスに関する、様々な温度における正規化された性能値を示す。
図31A〜Cおよび
図32A〜Dに示す、それぞれのTgによって示されるように、BPhenにはTPBiと比較して形態的な不安定性があるため、BPhenを用いたデバイスの性能は、TPBiを用いたデバイスの性能よりも、特に温度が上昇するにつれて、時間の経過に伴い著しく速く低下した。
【0194】
(実施例22)
図33に示すデバイスを、図示するように、実施例21に記載した方法と同じ方法を用いて作製した。全体の構造は、ガラス基板/ITO/MoO
3(10nm)/C
70:DBP(8:1)(54nm)/C
70(9nm)/バッファ(15nm)/Al(100nm)であり、図示するような様々なバッファ層を含み、当該バッファ層は、広エネルギーギャップ材料と電子伝導材料との混合層と、広いエネルギーギャップ材料のキャップ層とを含んだ。上述した材料などの、他の広エネルギーギャップ材料を用いてもよいことに留意すべきである。
図33は、バッファ層にBPhenを用いるデバイスと、BPhenより高いTgを有する異なる広エネルギーギャップ材料(すなわちBAlq、3TPYMBおよびTPBi)をそれぞれ用いる三つのデバイスとを比較した、55℃における、相対的に正規化された電力変換効率を示す。
【0195】
図33に示すように、BPhenより高いTgを有する広エネルギーギャップ材料を含む混合バッファ層を含むデバイスに関して、時間の経過に伴うデバイス性能の低下は、有意に小さかった。これらの材料の分子構造を、他の広エネルギーギャップ材料(Alq
3およびBP4mPy)の分子構造と共に、
図34〜
図38に示した。
【0196】
図39〜
図41は、C
70とTPBi、3TPYMBおよびBAlqの一つとの混合物をそれぞれ含む混合バッファを含むデバイスに関する、時間の経過に伴う55℃における正規化された応答性、曲線因子、V
OCおよびPCEを示す図である。図示するように、TPBi、3TPYMBおよびBAlqの一つを含むデバイスの(たとえば、PCE、V
OC、FFおよびRに基づく)正規化された性能値は、BPhenを含むデバイスの性能(
図31A〜Cおよび
図33に示すBPhenデバイスの性能)と比較して、時間が経過しても有意に高いままであった。
【0197】
(実施例23)
図42に示すデバイスを、図示するように、実施例21に記載した方法と同じ方法を用いて作製した。全体の構造は、ガラス基板/ITO(160nm)/MoO
3(10nm)/C
70:DBP(8:1)(54nm)/C
70(9nm)/3TPYMB:C
60(1:1)(10nm)/Al(100nm)であった。3TPYMN:C
60の10nm層は、広エネルギーギャップ材料である3TPYMB(3TPYMBのTg≒106℃)を含むバッファ層であった。高温におけるデバイスの寿命を、実施例21に記載した方法と同じ方法を用いて試験した。
図43〜46は、
図42のデバイスに関する、55℃、70℃、85℃および100℃における、時間の経過に伴う正規化された応答性、曲線因子、V
OCおよびPCEをそれぞれ示す。