(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6673907
(24)【登録日】2020年3月9日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】騒音低減のための延伸された取付けラグを備えた液圧機械
(51)【国際特許分類】
F04B 53/00 20060101AFI20200316BHJP
F04B 53/16 20060101ALI20200316BHJP
F04B 1/2064 20200101ALI20200316BHJP
【FI】
F04B53/00 H
F04B53/00 B
F04B53/16 A
F04B1/2064
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-516916(P2017-516916)
(86)(22)【出願日】2015年9月9日
(65)【公表番号】特表2017-530296(P2017-530296A)
(43)【公表日】2017年10月12日
(86)【国際出願番号】FR2015052393
(87)【国際公開番号】WO2016051037
(87)【国際公開日】20160407
【審査請求日】2018年9月3日
(31)【優先権主張番号】1459413
(32)【優先日】2014年10月2日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】513185641
【氏名又は名称】テクノブースト
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】バレンギエン, オリヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】シロト, ジャン クリスチャン
【審査官】
岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2005/0135953(US,A1)
【文献】
特開平02−075775(JP,A)
【文献】
特開平06−288459(JP,A)
【文献】
特開2009−150342(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 53/00
F04B 53/16
F04B 1/2064
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力軸(6)によって駆動される複数のピストンを含むケーシング(2)を備える液圧回転機械であって、
前記ケーシングには、支持部材に支えられるように設けられた前方横断面(28)と、前記複数のピストンに連結されたマニホールド(24)を支える後方カバー(4)を受ける後方横断面(34)とが有り、
前記ケーシングは複数の側方取付け支脚(30、40)を備え、各側方取付け支脚には、後方締結表面を終端とする軸方向の貫通穴(32)であって、前記支持部材に対する液圧回転機械の締結要素(60)を受けるように設けられた貫通穴が形成され、少なくとも1つの側方取付け支脚が軸方向に延伸された延伸ラグ(40)で構成され、当該延伸ラグの丈(H)である延伸ラグの2つの軸方向端間の長さが前記ケーシングの前方横断面(28)から後方横断面(34)までの長さ(L)の半分を超え、
前記延伸ラグ(40)の軸方向端が、前記ケーシング(2)の前方横断面(28)または後方横断面(34)と位置合わせされた、液圧回転機械。
【請求項2】
入力軸(6)によって駆動される複数のピストンを含むケーシング(2)を備える液圧回転機械であって、
前記ケーシングには、支持部材に支えられるように設けられた前方横断面(28)と、前記複数のピストンに連結されたマニホールド(24)を支える後方カバー(4)を受ける後方横断面(34)とが有り、
前記ケーシングは複数の側方取付け支脚(30、40)を備え、各側方取付け支脚には、後方締結表面を終端とする軸方向の貫通穴(32)であって、前記支持部材に対する液圧回転機械の締結要素(60)を受けるように設けられた貫通穴が形成され、少なくとも1つの側方取付け支脚が軸方向に延伸された延伸ラグ(40)で構成され、延伸ラグの丈(H)である延伸ラグの2つの軸方向端間の長さが前記ケーシングの前方横断面(28)から後方横断面(34)までの長さ(L)の半分を超え、
前記延伸ラグ(40)の2つの軸方向端の1つである前端が前記前方横断面(28)に対して後退している、液圧回転機械。
【請求項3】
前記延伸ラグ(40)の2つの軸方向端の1つである後端が前記後方横断面(34)に対して後退している、請求項1または2に記載の液圧回転機械。
【請求項4】
前記後方カバー(4)が前記ケーシング(2)のラグと位置合わせされたラグ(62)を備え、位置合わせされた2つのラグを軸方向の締結手段(60)が貫通する、請求項1から3のいずれか一項に記載の液圧回転機械。
【請求項5】
前記位置合わせされた2つのラグ(40、62)が前記後方横断面(34)レベルで互いに衝合する、請求項4に記載の液圧回転機械。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の液圧回転機械を装備した駆動ラインを備える液圧ハイブリッド車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド自動車両のための液圧回転機械およびその液圧機械を装備したハイブリッド車両に関する。
【背景技術】
【0002】
シリンダバレル式液圧機械、特に文献US−A−5358388で紹介されているような既知の種類のものは、慣例的に前方側と称される側に原動機で駆動される入力軸を備えており、その入力軸が、その軸の軸線周りに分散して配置された平行またはわずかに傾斜した連続するシリンダ群を有するシリンダバレルを回転駆動する。それぞれのシリンダは、機械の軸に回転固定された斜板に対してスラスト軸受を形成するベアリングを介して前方側で軸方向に支えられたピストンを受け入れる。液圧機械の軸と垂直な軸に対するその斜板の傾きは決まったものであっても、または液圧機械のシリンダ容積を変化させるために可変であってもよい。
【0003】
シリンダバレルの1回転は、傾き制御によって調整可能な斜板の傾き角に依存する行程からなる1つの完全なサイクルの運動をそれぞれのピストンに与える。傾斜可能な板と反対側のシリンダバレルの後方面は、シリンダの端部を閉じる固定円形プレートであって、低圧および高圧マニホールドを備えるカバーによって保持されるプレートに支えられる。
【0004】
こうした機械は一般にモータまたはポンプとして動作するものであることができる。変形例として、シリンダ容積は固定で、斜板の傾き角は一定であることができる。
【0005】
この種の機械の動作時には、シリンダ内における急激な圧力変化や、周期的な応力の作用を受ける各種コンポーネントのたわみが生じ、それによってピストンの数や軸の回転数が関係する周波数に応じた振動が発生し、それが機械の外側ケーシングに伝わる。
【0006】
こうした回転機械は通常、シリンダを含む本体を形成するケーシングであって、前方支え横断面であると同時に支持部材への取付面である面と、流体のマニホールドを備えるプレートを受ける後方横断面とを有するケーシングを備える。
【0007】
こうした液圧機械を支持部材に固定するに当たっては、軸に対して心合わせされるセンタリング部を備えるフランジを前方支え面に形成し、さらにケーシングの本体から側方に突出する複数の横断方向の取付け支脚であって、各々が軸方向に明けられた穴を有する取付け支脚をその周囲に形成するというものが知られている。一般には、軸方向に10から20mmの、丈の短い2つ、3つまたは4つの支脚が用意される。
【0008】
液圧回転機械を受ける支持部材は、ケーシングの支脚の穴に挿着されたネジをそれぞれ受ける穴を有しており、そのネジはネジ頭またはその支脚の裏側から受けるナットによって締め付けられる。この種の取付手段は、機械的堅牢性および機械の耐用期間中の耐疲労強度が得られるように設計される。
【0009】
この種の取付手段を備えた機械のケーシングは、回転機械の動作中に様々な脈動によって引き起こされ得る固有の振動モードを有する。そこで出てくる問題の1つは、回転数および液圧によっては、それらの振動モードによって発せられるサイレン音が生じ得るというものである。
【0010】
とりわけ、一般に産業用にその分野で許容される音のレベルで設計されるこの種の液圧回転機械は、乗員の快適さを確保する目的から騒音面の制約が大きい液圧ハイブリッド自動車両での利用には適さない可能性がある。
【0011】
一方で、たとえば前掲の文献に記載されているもののように、固定円形プレートにおけるマニホールドの特定の開口形状など、既知の様々な方法によってこの種の液圧機械で励起レベルを下げることができる。しかし、それらの解決法は機械のコストを上昇させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】US−A−5358388
【発明の概要】
【0013】
本発明は、従来技術のそうした不都合をなくすことをとりわけ目的とする。
【0014】
そこで、本発明は、入力軸によって駆動される複数のピストンを含むケーシングを備える液圧回転機械であって、そのケーシングは、支持部材に支えられるように設けられた前方横断面と、それらのピストンに連結されたマニホールドを支える後方カバーを受ける後方横断面とを有しており、ケーシングが、後方締結表面を終端とする軸方向の穴であって、支持部材に対するその機械の締結要素を受けるように設けられた穴をそれぞれが有する側方取付け支脚を備える液圧回転機械において、少なくとも1つの支脚が軸方向に延伸されたラグを形成し、その丈がそのケーシングの前方面から後方面までの長さの半分を超えることを特徴とする液圧機械を提案する。
【0015】
この液圧機械の利点の1つは、ケーシングの長さの半分を超える長い丈を有する支脚が、そのケーシングの本体に沿う形で自然と補強をなし、さらにネジなど、ケーシングを貫通する締結要素によって一段と剛性を高められることで、ケーシングの固有のたわみモードが引き上げられて騒音が減らされることが試験によって示されたところにある。
【0016】
音レベルが低減され、サイレン音が減衰された機械が簡易かつ経済的に得られる。
【0017】
本発明による液圧回転機械は以下の1つまたは複数の特徴をさらに備えることが可能であり、それらの特徴は互いに組み合わせることができる。
【0018】
一実施形態によれば、ラグは、ケーシングの前方横断面または後方横断面と位置合わせされた2つの軸方向端を有する。
【0019】
変形例として、ラグは前方横断面に対して後退した前端を有することができる。
【0020】
ラグは後方横断面に対して後退した後端を有することもできる。
【0021】
補完的に、後方カバーはケーシングのラグと位置合わせされたラグを備えることができ、軸方向の締結手段が位置合わせされたその2つのラグを貫通する。
【0022】
その際、有利には位置合わせされた2つのラグは後方横断面レベルで互いに衝合する。
【0023】
本発明はまた、上述の特徴のいずれか1つを有する液圧回転機械を装備した駆動ラインを備える液圧ハイブリッド車両も対象とする。
【0024】
添付の図面を参照しながら例として非限定的に行う以下の説明を読むことによって本発明はよりよく理解され、その他の特徴や利点がより鮮明となろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】従来技術による液圧回転機械の軸方向断面図である。
【
図2】従来技術によるその種の回転機械の外形図である。
【
図3】本発明によるその種の回転機械の外形図である。
【
図4】それら2つの回転機械の放射騒音を比較したグラフである。
【
図5】本発明による回転機械の3つのタイプの取付けラグを示した概略図である。
【
図6】本発明による回転機械の3つのタイプの取付けラグを示した概略図である。
【
図7】本発明による回転機械の3つのタイプの取付けラグを示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、2つの回転方向に回転することができる液圧機械であって、後方側をカバー4によって閉ざされた全体的に円筒形のケーシング2を備える液圧機械を示している。ケーシング2とカバー4は、その本体の軸線に沿って配置された入力軸6を案内する円錐ころ軸受8をそれぞれ支えている。
【0027】
入力軸6と連動して回転するシリンダバレル12は、軸線と平行にその軸線周りに分散して配置された9つのシリンダ14を備える。それぞれのシリンダ14は、操作用液圧シリンダ22および復帰ばね26の作用を受けて入力軸6と垂直をなす軸線Oの周りを枢動することができる傾斜可能な円板20に対してスラスト軸受18によって前端を支えられるピストン16を備える。
【0028】
シリンダバレル12の後方側は、カバー4内に形成された低圧および高圧のマニホールドに対向して配置されたポートを備える横断方向の円形プレート24に支えられ、カバー4はそのプレートを保持してシリンダ14の後端を閉ざす。
【0029】
たとえばポンプとして動作するときは、シリンダバレル12が回転するたびに、摺動ピストン16は、低圧マニホールドに相対しているときには前方に移動し、次いで高圧マニホールドに相対しているときには後方に移動して加圧流体を内部に吐き出すという摺動ピストン16全体の1回の完全な運動サイクルを得る。
【0030】
圧力の変動や各構成要素における応力によってケーシング2固有のモードによるたわみが引き起こされ、それによって不快な騒音が発生する。
【0031】
ケーシング2は、支持部材に支えられるようにされた前方横断面28と、その前方面よりも側方に延びる支脚30であって、軸方向の丈が短く、その支持部材への締結ネジを受ける軸方向の穴32を各々有する支脚を備える。
【0032】
ケーシング2は、その前方面28から、カバー4によって支えられる後方面34までの距離である軸方向長さLを有する。
【0033】
図2は、支持部材に対する液圧機械の前方面の規則的な締結を保証するためのものとして、図示されている5つの支脚30をそのケーシングの下部、左側面および上部にそれぞれ分散して備える液圧機械を示している。ケーシング2の鋳造時に鋳造工程で作り出されるそれらの支脚30の各々は、機械の機械的堅牢性を保証するのに十分であるように計算された短めの丈を有する。
【0034】
この液圧機械ではケーシング2の壁厚はかなり薄く、その壁は動作時に励起される可能性のある低めの固有のたわみモードを有する。
【0035】
図3は、同じ液圧機械で、軸方向に延伸されてケーシング2の長さL全体にわたるラグ40を形成する2つの下部支脚と2つの上部支脚を備えるものを示している。
【0036】
ラグ40は側方にカバー4よりも外側に出ているため、ラグの後方支え面は自由になっており、それにより、穴32に差し込んだネジの頭のような軸方向の締結手段による支持部材に対する支えや、ネジ締め機の先端を受け入れることができる。
【0037】
ケーシング2の左側に配置された支脚30は延伸されたラグを形成していないことがわかるであろうが、これは、この支脚の後方に確保できる容積部分にネジ締め機の先端が入り込むことができないためである。
【0038】
そのため、ケーシング2の周囲には分散して配置された4つのラグ40が得られ、それによって、そのケーシングの鋳型にわずかな変更を加えるだけで、その機械を受ける支持部材の取付穴の位置を変更することなく、簡易かつ経済的により高いケーシングの剛性がもたらされ、その固有たわみモードを引き上げることができる。
【0039】
図4は、縦軸にデシベルで表した放射騒音レベルを、横軸にrpmで表した入力軸の回転数との関係で示したものである。
【0040】
曲線50は
図2に示した従来技術による液圧機械の放射騒音であり、曲線52は
図3に示した本発明による改良型液圧機械の曲線である。1000から3000rpmまでの回転数域でおよそ5dBの利得があることがわかる。
【0041】
図5は、ケーシング2の長さLと同じ丈Hの2つのラグ40であって、軸方向の締結ネジ60がそれぞれを貫通するラグを備えた液圧機械を示している。
【0042】
図6は、前端がケーシング2の前方面28よりもやや後退しており、後端もそのケーシングの後面から後退したラグ40を備える液圧機械を示している。2つのラグ40はケーシング2の長さLの半分を超える丈Hを有する。
【0043】
図7は、ケーシング2の長さLと同じ丈Hの2つのラグ40であって、それぞれが後方カバー4に配置された、位置合わせされた補完ラグ62によって後方に延長されるラグを備える液圧機械を示している。各々の締結ネジ60は、後方横断面34のレベルで互いに衝合する2つの位置合わせされたラグ40、62を貫通する。
【0044】
ケーシング2のラグ40のうちのいくつかに相対する補完ラグ62を設けることができる。補完ラグ62に対して設ける補完ネジに加え、ケーシング2に対して後方カバー4のみを締結する補完ネジを設けることで、その2つの要素の間の高い密封性を確保するのが一般的であろう。
【0045】
こうした様々な方策を講じることにより、特にそれらネジ頭を収容するために必要な容積やネジ締め機の先端の進入路に応じて、ネジ60の頭を軸方向の様々なレベルにずらすことができる。