特許第6673930号(P6673930)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6673930香り馴化に抗するフレッシュニング組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6673930
(24)【登録日】2020年3月9日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】香り馴化に抗するフレッシュニング組成物
(51)【国際特許分類】
   C11B 9/00 20060101AFI20200316BHJP
   A61L 9/01 20060101ALI20200316BHJP
【FI】
   C11B9/00 H
   C11B9/00 L
   C11B9/00 W
   A61L9/01 Q
【請求項の数】12
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-546871(P2017-546871)
(86)(22)【出願日】2016年3月10日
(65)【公表番号】特表2018-508634(P2018-508634A)
(43)【公表日】2018年3月29日
(86)【国際出願番号】US2016021692
(87)【国際公開番号】WO2016145145
(87)【国際公開日】20160915
【審査請求日】2017年9月5日
(31)【優先権主張番号】14/642,913
(32)【優先日】2015年3月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590005058
【氏名又は名称】ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー
【氏名又は名称原語表記】THE PROCTER & GAMBLE COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ ケビン モーガン ザ サード
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン ロバート チェッティ
(72)【発明者】
【氏名】ゼルリーナ グズダール デュボア
(72)【発明者】
【氏名】バージニア ツォン−ウェイ ハッチンズ
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ウェイン キンジー
(72)【発明者】
【氏名】マイケル−ヴィンセント ナリオ マランヤオン
(72)【発明者】
【氏名】ジェニファー リア リンカー
(72)【発明者】
【氏名】ロナルド デイビッド ターナー
(72)【発明者】
【氏名】クリスティーヌ マリー リードヌール
【審査官】 井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/093807(WO,A1)
【文献】 特開2011−068836(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11B 1/00−15/00
C11C 1/00− 5/02
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−99/00
A61L 9/00− 9/22
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
香料配合物を含むフレッシュニング組成物であって、前記香料配合物は、前記香料配合物の0.0000001重量%〜10重量%の硫黄アコードを含み、前記硫黄アコードは、
(a)前記硫黄アコードの1重量%〜99重量%の1−ブチルスルファニルブタンと、
(b)前記硫黄アコードの1重量%〜99重量%の、2−(4−メチル−1,3−チアゾール−5−イル)エタノール;2−メチルチオ−3−メチルスルファニルピラジン;5−メルカプト−5−メチル−3−ヘキサノン;4,7,7−トリメチル−6−チアビシクロ[3.2.1]オクタン;2−イソブチルチアゾール;2−イソプロピル−4−メチルチアゾール;5−メチル−2−(2−スルファニルプロパン−2−イル)シクロヘキサン−1−オン;リモネンチオール;4−メチル−4−メルカプトペンタン−2−オン;2−アセチルチアゾール;オキサン((2R,4S)−2−メチル−4−プロピル−1,3−オキサチアン);4−メトキシ−2−メチル−2−ブタンチオール、及びこれらの混合物からなる群から選択される硫黄含有香料原材料と、を含み、
前記硫黄アコードは、前記組成物の0.003重量%〜0.01重量%の1−ブチルスルファニルブタン、前記組成物の0.1重量%〜0.2重量%の5−メルカプト−5−メチル−3−ヘキサノン、及び前記組成物の0.1重量%〜0.2重量%の4,7,7−トリメチル−6−チアビシクロ[3.2.1]オクタンを含み、前記組成物は、前記フレッシュニング組成物に対する消費者の芳香馴化に抗するものである、フレッシュニング組成物。
【請求項2】
前記硫黄アコードが、エチル3−メチルスルファニルプロパノエート;2−(メチルスルファニルメチル)フラン;メチルスルファニルメタン;メチルスルファニルエタン;3−メチルスルファニルプロプ−1−エン;S−メチルエタンチオエート;エチルスルファニルエタン;1−メチルスルファニルプロパン;S−エチルエタンチオエート;1−メチルスルファニルブタン;2−プロパン−2−イルスルファニルプロパン;ビス(メチルスルファニル)メタン;1−エチルスルファニルプロパン;チオラン;1−プロピルスルファニルプロパン;1−エチルスルファニルブタン;S−エチルプロパンチオエート;S−メチルブタンチオエート;S−メチル−3−メチルブタンチオエート;3−メチルスルファニルプロパナール;3−プロプ−2−エニルスルファニルプロプ−1−エン;メチル2−メチルスルファニルアセテート;S−プロプ−2−エニルプロパンチオエート;1−メチルスルファニルブタン−2−オン;4−メチルスルファニルブタン−2−オン;3−メチルスルファニルプロパン−1−アン(3-methylsulfanylpropan-1-am);2,4,6−トリメチル−1,3,5−トリチアン;3−メチルスルファニルブタナール;2−メチル−1,3−チアゾリジン;2−メチル−4,5−ジヒドロ−1,3−チアゾール;エチル2−メチルスルファニルアセテート;メチル−3−メチルスルファニルプロパノエート;S−プロパン−2−イル−3−メチルブタンチオエート;4−メチル−4−メチルスルファニルペンタン−2−オン;2−メチル−1,3−ジチオラン;メチル2−メチルスルファニルブタノエート;S−メチルフラン−2−カルボチオエート;S−プロパン−2−イル−3−メチルブタ−2−エンチオエート;チオラン−3−オン;3,5−ジエチル−1,2,4−トリチオラン;メチルスルファニルメチルベンゼン;3−メチルスルファニルプロパン−1−オール;2−(プロパン−2−イルスルファニルメチル)フラン;2−メチル−5−メチルスルファニルフラン;S−(フラン−2−イルメチル)メタンチオエート;1,2,4−トリチオラン;2−メチルチオラン−3−オン;4−メチルスルファニルブタン−1−オール;S−ブタン−2−イル−3−メチルブタンチオエート;S−ブタン−2−イル−3−メチルブタ−2−エンチオエート;S−(フラン−2−イルメチル)エタンチオエート;2−プロピル−1,3−チアゾリジン;3−メチル−1,1−ビス(メチルスルファニル)ブタン;3−エチルスルファニルプロパン−1−オール;S−メチルベンゼンカルボチオエート;3,5−ジメチル−1,2,4−トリチオラン;S−ブタン−2−イル2−メチルブタンチオエート;メチルスルファニルベンゼン;1−ペンチルスルファニルペンタン;(2R,4S)−2−メチル−4−プロピル−1,3−オキサチアン;2−メチル−4−プロピル−1,3−オキサチアン;エチル2−メチル−2−メチルスルファニルプロパノエート;S−(フラン−2−イルメチル)プロパンチオエート;4,7,7−トリメチル−6−チアビシクロ[3.2.1]オクタン;3−メチル−1,2,4−トリチアン;メチルスルファニルメチルヘキサノエート;1−(4,5−ジヒドロ−1,3−チアゾール−2−イル)エタノン;3−メチルスルファニルプロパン酸;5−メチルスルファニル−2−(メチルスルファニルメチル)ペント−2−エナル;4,5−ジメチル−2−(2−メチルプロピル)−2,5−ジヒドロ−1,3−チアゾール;3−メチルスルファニルヘキサン−1−オール;2−メチル−4,5−ジヒドロフラン−3−チオールアセテート;4−(3−オキソブチルスルファニル)ブタン−2−オン;3−メチルスルファニルブタン酸;2−メチルスルファニルピラジン;2−メチル−3−メチルスルファニルピラジン;2−(フラン−2−イルメチルスルファニルメチル)フラン;2−(メチルスルファニルメチル)ピラジン;3,5−ジ(プロパン−2−イル)−1,2,4−トリチオラン;2−メチルスルファニルフェノール;2−メチル−3−メチルスルファニルピラジン;エチル3−(フラン−2−イルメチルスルファニル)プロパノエート;2,2,4,4,6,6−ヘキサメチル−1,3,5−トリチアン;2−メチル−5,7−ジヒドロチエノ[3,4−d]ピリミジン;2−アミノ−4−メチルスルファニルブタン酸;(2S)−2−アミノ−4−メチルスルファニルブタン酸;2’,3a−ジメチルスピロ[6,6a−ジヒドロ−5H−[1,3]ジチオロ[4,5−b]フラン−2,3’−オキソラン];2,5−ジメチル−1,4−ジチアン−2,5−ジオール;メチル2−チオフロエート、及びこれらの混合物からなる群から選択されるスルフィド部分を有する香料原材料を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記(b)硫黄含有香料原材料が、
(i)5−メルカプト−5−メチル−3−ヘキサノン又は4,7,7−トリメチル−6−チアビシクロ[3.2.1]オクタンと、
(ii)2−(4−メチル−1,3−チアゾール−5−イル)エタノール;2−(2−メチルプロピル)−1,3−チアゾール;4−メチル−2−プロパン−2−イル−1,3−チアゾール;5−メチル−2−(2−スルファニルプロパン−2−イル)シクロヘキサン−1−オン;6−チアビシクロ[3.2.1]オクタン;4−メチル−4−スルファニルペンタン−2−オン;8−メルカプトメントン;(2R,4S)−2−メチル−4−プロピル−1,3−オキサチアン、及びこれらの混合物からなる群から選択される硫黄含有原材料と、を含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記硫黄アコードが、1−ブチルスルファニルブタン、5−メルカプト−5−メチル−3−ヘキサノン、及び4,7,7−トリメチル−6−チアビシクロ[3.2.1]オクタンを含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項5】
前記1−ブチルスルファニルブタンが、前記フレッシュニング組成物の0.003重量%〜0.01重量%の量で存在する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記香料配合物が、25℃での蒸気圧が0.133Pascal(0.001Torr)未満の少なくとも1種の低揮発性芳香物質を更に含み、前記低揮発性芳香物質は、前記香料配合物の重量を基準にして0.1重量%〜30重量%の量で存在する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記1−ブチルスルファニルブタンが、前記硫黄アコードの1重量%〜10重量%の量で存在する、請求項1〜のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記5−メルカプト−5−メチル−3−ヘキサノンが、前記硫黄アコードの40重量%〜99重量%の量で存在する、請求項1〜のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記4,7,7−トリメチル−6−チアビシクロ[3.2.1]オクタンが、前記硫黄アコードの40重量%〜99重量%の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
香料送達系、官能性香料構成成分、悪臭活性物質、界面活性剤、及びこれらの混合物からなる群から選択されるフレッシュニング物質を更に含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物が、
a)少なくとも0、1、2、3、若しくは4の2週間抗馴化指数、
b)少なくとも0、1、2、3、若しくは4の4週間抗馴化指数、
c)0、1、2、3、若しくは4の2週間抗馴化指数、及び/又は
d)0、1、2、3、若しくは4の4週間抗馴化指数を有する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項を提供することを含む、芳香馴化の低減方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、香料配合物と、香り馴化に抗する硫黄含有香料原材料と、を含むフレッシュニング組成物、並びに消費者の香り馴化に抗するそのような組成物の製造及び使用プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
空気ケア製品は、そのような製品及び/若しくはそのような製品と接触する部位に対して所望の香りを提供し、かつ/又は望ましくない匂いをマスキングすることができる1種以上の香料原材料(複数又は単独の「PRM」)を有するフレッシュニング組成物を含み得る。現行のPRMは望ましい匂いを提供しているが、消費者は、持続性がより高くてよく、かつそれぞれの個人的要求に応じた製品を求め続けている。残念なことに、消費者は、提供される香りに馴化されてしまうが、PRM及び香料配合物は、空気ケア製品から揮発され続ける。結果として、同じ程度の効果が得られるように、そのようなPRM及び/又は香料配合物の量を更に増やす必要があるか、あるいは、そのような馴化が解消されるように、消費者はかなりの期間にわたって異なる製品及び/又は香料に切り替えなければならない。
【0003】
馴化に対処するために、香料製造業者は、抗馴化効果を提供すると考えられるPRMを含んだ香料配合物を調合してきた。驚くべきことに、出願人らは、特定の硫黄を含有するPRMは、フレッシュニング組成物中に使用された場合に、優れた抗馴化効果を有することを発見した。したがって、出願人らは、そのようなPRMを含むフレッシュニング組成物、香料配合物、及び/又はそのような香料送達系、並びにそれほど馴化の影響を受けないそのようなフレッシュニング組成物の製造及び使用プロセスを同定された。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本出願は、香料配合物と香り馴化に抗する硫黄含有PRMとを含むフレッシュニング組成物、そのようなフレッシュニング組成物を含む空気ケア製品、並びにそのようなフレッシュニング組成物及び空気ケア製品の製造及び使用プロセスに関する。
【0005】
香料配合物を含むフレッシュニング組成物であって、香料配合物は、その香料配合物の約0.0000001重量%〜約10重量%の硫黄アコードを含み、硫黄アコードは、
(a)硫黄アコードの約1重量%〜約99重量%の1−ブチルスルファニルブタンと、
(b)硫黄アコードの約1重量%〜約99重量%の、2−(4−メチル−1,3−チアゾール−5−イル)エタノール;2−メチルチオ−3−メチルスルファニルピラジン(pryazine);5−メルカプト−5−メチル−3−ヘキサノン;4,7,7−トリメチル−6−チアビシクロ[3.2.1]オクタン;2−イソブチルチアゾール;2−イソプロピル−4−メチルチアゾール;5−メチル−2−(2−スルファニルプロパン−2−イル)シクロヘキサン−1−オン;リモネンチオール;4−メチル−4−メルカプトペンタン−2−オン1ppm TEC;2−アセチルチアゾール;オキサン;4−メトキシ−2−メチル−2−ブタンチオール;4,7,7−トリメチル−6−チアビシクロ[3.2.1]オクタン、及びこれらの混合物からなる群から選択される硫黄含有香料原材料と、を含み、上記組成物は、フレッシュニング組成物に対する消費者の芳香馴化に抗するものである、フレッシュニング組成物が提供される。
【0006】
また、香料配合物を含むフレッシュニング組成物であって、香料配合物中は、その香料配合物の約0.0000001重量%〜約10重量%の硫黄アコードを含み、硫黄アコードは、上記組成物の約0.003重量%〜約0.01重量%の1−ブチルスルファニルブタン、5−メルカプト−5−メチル−3−ヘキサノン、及び4,7,7−トリメチル−6−チアビシクロ[3.2.1]オクタンを含む、フレッシュニング組成物も提供される。
【0007】
更には、本明細書に開示される組成物を提供することを含む、芳香馴化の低減方法も提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
用語の定義
本明細書で使用するとき、「空気ケア製品」とは、通電式(すなわち電動式)エアフレッシュニング送達系(ファンベースのディフューザ、電気プラグ式液体エアフレッシュナー、電気機械作動式ディフューザを含む)のほか、受動的(すなわち電動式でない)ディフューザ(室内に設置できるメンブレンベースのエアフレッシュナー、自動車用通気エアフレッシュナーを含む)等の、空気を処理するか又は空気に芳香を付与する(fragrance)製品を意味する。
【0009】
本明細書で使用するとき、請求項において使用される「a」及び「an」等の冠詞は、特許請求される又は記載されるものが1つ以上であることを意味すると理解される。
【0010】
本明細書で使用するとき、「フレッシュニング組成物」とは、空気を処理し(例えば、悪臭を排除する、若しくは低減する/最小限に抑える)、空気に芳香を付与し、かつ/又は空気を新鮮にすることを意図した、1種以上の香料原材料を含む組成物を意味する。本フレッシュニング組成物は、空気ケア製品有り又は無しで使用することができる。本発明のフレッシュニング組成物は、PRMを含み、かつ水、可溶化剤、界面活性剤、希釈剤、悪臭低減用の活性物質、及び香料物質を付加的に含み得る。
【0011】
本明細書で使用するとき、「馴化」とは、芳香剤又は芳香物質の知覚に対する感受性が減弱した個人又は集団のことを指す。本明細書の試験方法の節に記載されている方法によれば、芳香剤又は芳香物質は、馴化度(臭気検出閾値における変化率)が150%超、300%超、500%超、1000%超のときに、馴化と見なされる。
【0012】
本明細書で使用するとき、「含む(include)」、「含む(includes)」及び「含んでいる(including)」は、非限定的であることを意味する。
【0013】
本明細書で使用するとき、「硫黄アコード」とは、硫黄含有香料原材料の混合物を意味する。硫黄原子を有さない全ての香料原材料は、香料配合物及び/又はフレッシュニング組成物全体の一部と見なすことができるが、そのような香料原材料は、硫黄アコードの一部とはならない。
【0014】
開示され、特許請求される香料原材料(「PRM」)、並びに/又は本明細書で特許請求される及び/若しくは本明細書に記載される香料配合物中に使用されるPRMは、そのようなPRMの任意の立体異性体を包含する。
【0015】
別途注記のない限り、構成成分又は組成物の濃度は全て、当該構成成分又は組成物の活性部分に関するものであり、このような構成成分又は組成物の市販の供給源に存在し得る不純物、例えば、残留溶剤又は副生成物は除外される。
【0016】
フレッシュニング組成物
フレッシュニング組成物が提供される形態は、多岐にわたり得る。例えば、フレッシュニング組成物は、液体形態であってもよいし、スプレー式のファブリックリフレッシュナー及び/又はエアフレッシュナー、FEBREZE(登録商標)NOTICEables(商標)エアフレッシュナー、FEBREZE Car Vent(商標)エアフレッシュナー、又はFEBREZE Set & Refresh(商標)エアフレッシュナーに用いられる液体組成物のような拡散エアフレッシュナーであってもよい。また、フレッシュニング組成物は固体形態又はゲル形態とすることもできる。消費者の多くは、組成物又は製品を使用するたびに感じることのできる所望の香りを一貫して提供することができるフレッシュニング組成物を好む。これらの香料(すなわち、芳香剤)物質は、香料配合物、香料アコード、PRM、及び香料送達系を含み得る。しかし、消費者による香料物質の馴化は、フレッシュニング組成物中のPRMの量が一貫して維持される場合でも、所望の香りの知覚の低下につながり得る。
【0017】
フレッシュニング組成物は、硫黄アコード含有の香料配合物を組み込むことによって、香り馴化に抗することができる。硫黄アコードは、フレッシュニング組成物が消費者の香り馴化に抗するのを助け得る。
【0018】
硫黄アコード含有香料配合物
本組成物の香料配合物は、硫黄含有PRMの混合物を有する硫黄アコードを含む。硫黄又はスルフィド部分を有する化合物の非限定例としては、1−ブチルスルファニルブタン(すなわち、スルフィドジブチル);エチル3−メチルスルファニルプロパノエート;2−(メチルスルファニルメチル)フラン;メチルスルファニルメタン;メチルスルファニルエタン;3−メチルスルファニルプロプ−1−エン;S−メチルエタンチオエート;エチルスルファニルエタン;1−メチルスルファニルプロパン;S−エチルエタンチオエート;1−メチルスルファニルブタン;2−プロパン−2−イルスルファニルプロパン;ビス(メチルスルファニル)メタン;1−エチルスルファニルプロパン;チオラン;1−プロピルスルファニルプロパン;1−エチルスルファニルブタン;S−エチルプロパンチオエート;S−メチルブタンチオエート;S−メチル−3−メチルブタンチオエート;3−メチルスルファニルプロパナール;3−プロプ−2−エニルスルファニルプロプ−1−エン;メチル2−メチルスルファニルアセテート;S−プロプ−2−エニルプロパンチオエート;1−メチルスルファニルブタン−2−オン;4−メチルスルファニルブタン−2−オン;3−メチルスルファニルプロパン−1−アン(3-methylsulfanylpropan-1-am);2,4,6−トリメチル−1,3,5−トリチアン;3−メチルスルファニルブタナール;2−メチル−1,3−チアゾリジン;2−メチル−4,5−ジヒドロ−1,3−チアゾール;エチル2−メチルスルファニルアセテート;メチル3−メチルスルファニルプロパノエート;S−プロパン−2−イル−3−メチルブタンチオエート;4−メチル−4−メチルスルファニルペンタン−2−オン;2−メチル−1,3−ジチオラン;メチル2−メチルスルファニルブタノエート;S−メチルフラン−2−カルボチオエート;S−プロパン−2−イル−3−メチルブタ−2−エンチオエート;チオラン−3−オン;3,5−ジエチル−1,2,4−トリチオラン;メチルスルファニルメチルベンゼン;3−メチルスルファニルプロパン−1−オール;2−(プロパン−2−イルスルファニルメチル)フラン;2−メチル−5−メチルスルファニルフラン;S−(フラン−2−イルメチル)メタンチオエート;1,2,4−トリチオラン;2−メチルチオラン−3−オン;4−メチルスルファニルブタン−1−オール;S−ブタン−2−イル−3−メチルブタンチオエート;S−ブタン−2−イル−3−メチルブタ−2−エンチオエート;S−(フラン−2−イルメチル)エタンチオエート;2−プロピル−1,3−チアゾリジン;3−メチル−1,1−ビス(メチルスルファニル)ブタン;3−エチルスルファニルプロパン−1−オール;S−メチルベンゼンカルボチオエート;3,5−ジメチル−1,2,4−トリチオラン;S−ブタン−2−イル2−メチルブタンチオエート;メチルスルファニルベンゼン;1−ペンチルスルファニルペンタン;(2R,4S)−2−メチル−4−プロピル−1,3−オキサチアン;2−メチル−4−プロピル−1,3−オキサチアン;エチル2−メチル−2−メチルスルファニルプロパノエート;S−(フラン−2−イルメチル)プロパンチオエート;4,7,7−トリメチル−6−チアビシクロ[3.2.1]オクタン;3−メチル−1,2,4−トリチアン;メチルスルファニルメチルヘキサノエート;1−(4,5−ジヒドロ−1,3−チアゾール−2−イル)エタノン;3−メチルスルファニルプロパン酸;5−メチルスルファニル−2−(メチルスルファニルメチル)ペント−2−エナル;4,5−ジメチル−2−(2−メチルプロピル)−2,5−ジヒドロ−1,3−チアゾール;3−メチルスルファニルヘキサン−1−オール;2−メチル−4,5−ジヒドロフラン−3−チオールアセテート;4−(3−オキソブチルスルファニル)ブタン−2−オン;3−メチルスルファニルブタン酸;2−メチルスルファニルピラジン;2−メチル−3−メチルスルファニルピラジン;2−(フラン−2−イルメチルスルファニルメチル)フラン;2−(メチルスルファニルメチル)ピラジン;3,5−ジ(プロパン−2−イル)−1,2,4−トリチオラン;2−メチルスルファニルフェノール;2−メチル−3−メチルスルファニルピラジン;エチル3−(フラン−2−イルメチルスルファニル)プロパノエート;2,2,4,4,6,6−ヘキサメチル−1,3,5−トリチアン;2−メチル−5,7−ジヒドロチエノ[3,4−d]ピリミジン;2−アミノ−4−メチルスルファニルブタン酸;(2S)−2−アミノ−4−メチルスルファニルブタン酸;2’,3a−ジメチルスピロ[6,6a−ジヒドロ−5H−[1,3]ジチオロ[4,5−b]フラン−2,3’−オキソラン];2,5−ジメチル−1,4−ジチアン−2,5−ジオール;メチル2−チオフロエート、及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0019】
硫黄又はスルフィド部分を有する硫黄含有PRMについてのより具体的な例としては、表1に掲示されているPRMを挙げることができる。
【0020】
【表1】
【0021】
スルフィド部分を有する化合物のより具体的な例としては、エチル3−メチルスルファニルプロパノエート及び2−(メチルスルファニルメチル)フランを挙げることができる。
【0022】
硫黄アコードは、1−ブチルスルファニルブタン、5−メルカプト−5−メチル−3−ヘキサノン、及び4,7,7−トリメチル−6−チアビシクロ[3.2.1]オクタンを含む、硫黄含有PRMの混合物を含むことができる。
【0023】
また、香料配合物としては、酸素、硫黄、及び窒素が含有する化合物、例えば、2−(4−メチル−1,3−チアゾール−5−イル)エタノール;1−(1,3−チアゾール−2−イル)エタノン;6−メチル−7−オキサ−1−チア−4−アザスピロ[4.4]ノナン;2−[(フラン−2−イルメチル)スルファニル]−5−メチルピラジン;2,4−ジメチル−5−アセチルチアゾール;2−エトキシ−1,3−チアゾール;5−メトキシ−2−メチル−1,3−チアゾール;1−(4,5−ジヒドロ−1,3−チアゾール−2−イル)エタノン;1−(1,3−チアゾール−2−イル)プロパン−1−オン;1−(2,4−ジメチル−1,3−チアゾール−5−イル)エタノン;2−アミノ−4−メチルスルファニルブタン酸;(2S)−2−アミノ−4−メチルスルファニルブタン酸;8−ヒドロキシ−5−キノリンスルホン酸;2−アミノエタンスルホン酸;2−フェニル−3H−ベンゾイミダール−5−スルホン酸を挙げることもできる。酸素、硫黄、及び窒素を含む化合物のより具体的な例としては、2−(4−メチル−1,3−チアゾール−5−イル)エタノール、1−(1,3−チアゾール−2−イル)エタノン、及び6−メチル−7−オキサ−1−チア−4−アザスピロ[4.4]ノナンを挙げることができる。
【0024】
一態様において、本明細書に開示されている上記PRMはいずれも、それぞれの臭気検出閾値未満の濃度で香料配合物中に存在し得る。例えば、香料配合物、及び香料配合物を含むフレッシュニング組成物中は、1種以上(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10種など)の抗馴化硫黄含有PRMを、そのような抗馴化硫黄含有PRMの各々の臭気検出閾値未満の濃度で含むことができる。
【0025】
本発明の香料配合物に組み込むのに好適な抗馴化硫黄アコードの非限定例は、表2に開示されている。
【0026】
【表2】
【0027】
好適な硫黄含有PRMは、以下の供給業者から得ることができる:Fisher Scientific,2000 Park Lane Dr.,Pittsburgh,PA 15275,United States;Symrise GmbH,Muhlenfeldstrasse 1,Holzminden,37603,Germany;International Flavors & Fragrances Inc.,521 W 57th Street,New York,NY 10019,United States;Givaudan Suisse SA,1214 VernieR,Switzerland;Firmenich Inc.,250 Plainsboro Rd.,Plainsboro Township,NJ 08536,United States;及びTakasago International Corporation(U.S.A.),4 Volvo Drive,Rockleigh,NJ 07647,United States。
【0028】
本発明の硫黄アコードは、上記フレッシュニング組成物の約0.0000001重量%〜約10重量%、又は約0.0000001重量%〜約5重量%、又は約0.000005重量%〜約2.5重量%、又は約0.00001重量%〜約1重量%、又は約0.000025重量%〜約0.5重量%、又は約0.001重量%〜約0.5重量%、又は約0.003重量%〜約0.1重量%の量で香料配合物に配合してもよい。フレッシュニング組成物は、その総重量を基準にして、硫黄アコードを含む香料配合物を、約0.0001%〜約100%含み得る。表3に、硫黄アコード、又は硫黄含有PRMの混合物を含む例示的な香料配合物を示す。表3の香料配合物はフレッシュニング組成物に100重量%にて配合することができ、あるいは本組成物の残部にはフレッシュニング組成物用及び/又は香料送達系用の公知の補助成分が含まれ得る。
【0029】
【表3-1】
【0030】
【表3-2】
【0031】
任意成分
本発明の組成物は、芳香調節物質を含有してもよい。芳香調節物質は、芳香プロファイルの強度を経時的に増強させ、そうすることで、揮発性芳香物質が、その初期印象から最後まで有意に一貫した状態に維持されるようにするのが好ましい。芳香調節物質は、参照により援用されている米国仮特許出願第61/915,514号に開示されている。このように、一態様において、上記香料組成物は、メチルグルコシドポリオール、エチルグルコシドポリオール、及びプロピルグルコシドポリオールからなる群から選択されるアルコキシル化メチルグルコシドから形成される少なくとも1つの非臭気芳香調節物質、好ましくはPPG−20メチルグルコースエーテルを、組成物の総重量に対して約0.1重量%〜約20重量%、好ましくは約0.5重量%〜約18重量%、又はより好ましくは約2.5重量%〜約15重量%の量で含む。
【0032】
一態様において、フレッシュニング組成物は、25℃での蒸気圧が<0.133Pascal(<0.001Torr)の当該技術分野において公知の少なくとも1種の低揮発性PRMを、香料配合物の総重量に対して約0.1重量%〜約30重量%の量で含み、かつ25℃での蒸気圧が≧0.133Pascal(≧0.001Torr)の当該技術分野において公知の少なくとも1種の低揮発性PRMを、香料配合物の総重量に対して約70重量%〜約99.9重量%の量で含む。
【0033】
別の態様では、フレッシュニング組成物は、官能性香料構成成分(「FPC」)を含み得る。FPCは、エアフレッシュニング組成物中に繁用されている従来の有機溶媒又は揮発性有機化合物(「VOC」)に類似する蒸発特性を有する香料原材料の一種である。本明細書で使用するとき「VOC」は、20℃で測定される蒸気圧が0.2mm Hg超であり、香料の蒸発を助ける揮発性有機化合物を意味する。FPCは、香料原材料の蒸発を補助する。幾つかの実施形態では、FPCは、二次的な芳香効果を提供することもできる。かかる実施形態では、組成物の快楽効果を提供するために、FPCではない少なくとも1つの香料原材料が存在する。FPCは、組成物の香料特性に負の影響を与えることなく比較的高濃度で用いることができる。例示的なFPCは、米国特許第8,338,346号及び同第8,637,446号に開示されている。
【0034】
フレッシュニング組成物は、エタノールを、フレッシュニング組成物の総重量に対して、約5重量%〜約20重量%、又は約5重量%〜約10重量%の量で含んでいてもよい。
【0035】
また、香料配合物を香料送達系に含めることによって、望ましい香りをフレッシュニング組成物に組み込むことができる。特定の香料送達系、特定の香料送達系の製造方法、及びそのような香料送達系の使用は、米国特許出願公開第2007/0275866(A1)号に開示されている。先に開示される香料配合物及びPRMは、そのような香料送達系において使用できる。そのような香料送達系としては、ポリマー支援型送達、分子支援型送達、ファイバ支援型送達、アミン支援型送達、シクロデキストリン送達、デンプン封入アコード、無機担体送達、及びプロ香料が挙げられる。
【0036】
好適な付加的物質としては、限定されないが、悪臭低減活性物質(例えば、シクロデキストリン、ポリアミンポリマー(例えば、Lupasol(商標)ポリマー))、抗菌剤、界面活性剤、ビルダー、キレート剤、分散剤、酵素及び酵素安定化剤、触媒物質、高分子分散剤、担体、並びに/又は当該技術分野において公知の顔料が挙げられる。
【0037】
本発明の目的上、以下に例示される補助剤の非限定的な一覧は、本発明の組成物での使用に好適であり、例えば、性能を補助若しくは向上させるために、又は組成物の審美性の改変するために、望ましくは本発明の特定の態様に組み込むことができる。かかる補助剤は、出願人らの香料配合物を介して供給される構成成分に追加されると理解される。このような追加の構成成分の正確な性質及びそれを組み込む濃度は、組成物の物理形態及び使用される作業の性質に依存する。
【0038】
空気ケア製品
本明細書に開示されるフレッシュニング組成物は、馴化に抗するものであり、このような組成物は、空気ケアデバイスにおいて一般的であるように、敢えて組成物の切り替え又は交替を行わずに使用することができるので消費者が馴らされることはない。本発明は、揮発性物質を雰囲気中又は空気ケア製品に送達するための装置が含む。本装置は、揮発性物質を雰囲気中に送達するための様々な用途での使用に合わせて構成できることが想到される。
【0039】
例えば、装置は、通電されている装置と共に使用するために構成されてもよい。例示の通電されているデバイスは、電気加熱デバイスであってもよい。より具体的には、デバイスは、米国特許第7,223,361号に記載されているような壁コンセント式電動エアフレッシュナー、バッテリ給電式加熱デバイス、又は他の加熱デバイス(例えば、触媒燃料系等の化学反応によって給電されるデバイス、太陽光発電デバイス等)としてもよい。そのようなデバイスでは、揮発性物質送達エンジンは、揮発性香料物質を拡散するために、加熱面の隣に配置してもよい。揮発性香料物質の配合は、低蒸気圧の製剤全体を含むように調整され得る。例示的な香料配合物、及び蒸気圧範囲の好適な配合物の対応を、表4に示す。
【0040】
【表4】
【0041】
装置はまた、精製された空気及び揮発性物質の両方を雰囲気中に送達するために、空気浄化システムと共に使用するために構成されてもよい。非限定的な例としては、小さな空間(例えば、寝室、バスルーム、自動車等)、及び家全体の集中空調/暖房システム(例えばHVAC)における使用のために、イオン化及び/又は濾過技術を使用する空気浄化システムが挙げられる。
【0042】
装置はまた、エアゾール又は非エアゾールエアスプレーと共に使用するために構成されてもよい。この実施形態では、送達エンジンは、ユーザーの要望時に、又は自動的に雰囲気中に揮発性物質を送達するプログラムによって、揮発性物質を送達することができる。
【0043】
装置はまた、揮発性物質を雰囲気中に送達するために、ファンと共に使用するために構成されてもよい。
【0044】
一態様において、揮発性物質を送達するための装置は、米国特許第8,709,337号及び同第8,931,711号に開示されているように、揮発性物質を入れるための液体リザーバと、この液体リザーバを閉じ込めるための通気性膜と、を有する送達エンジンを備える。
【0045】
使用方法及び使用
本明細書に開示される特定の空気ケア製品を使用して、香料及び/又は空気ケア製品に抗馴化特性を付与することができることによって、そのような香料及び/又は消費者の新鮮さ(freshness)が経時的に改善されるようになる。
【0046】
一態様では、本明細書に開示される1種以上の硫黄含有PRMを使用して、フレッシュニング組成物及び/又は空気ケア製品に抗馴化特性を付与することによって、そのような香料及び/又は消費者の新鮮さが経時的に改善されるようになる。そのようなPRMは、本明細書に開示される硫黄含有PRMからなる群から選択される。
【0047】
一態様において、空気ケア製品の製造方法は、本明細書に開示される感覚刺激的に有効な量の硫黄アコードを、製品に接触させるか又は本製品に混合することを含む。
【0048】
試験方法
硫黄含有のPRMを含有するフレッシュニング組成物に対する馴化度は、4週間にわたって毎日香りに曝露させて、人間による官能試験によって決定され、初期ベースライン時点を基点とした第2週及び第4週の両時点で、計算によって求める。
【0049】
曝露官能試験ごとに、16人以上の官能試験員が採用される。官能試験員は、意図された製品の最終用途に応じて示唆される様式、頻度、及び濃度にて、ただし、4週間連続で毎日1日あたり少なくとも1回の曝露を含めて、試験用の香りに曝露される。製品又は製品中に含まれる香料送達系から送達される試験対象香料を官能試験員が検出できるように、香料曝露を十分に行う必要がある。曝露官能検査団の採用基準は、官能試験員が、当該製品の典型的な消費者であること、試験対象となる香りを使用することに同意していること、非喫煙者であること、並びに鼻づまり及びアレルギーがないことを要件としている。第2週及び第4週における臭気検出閾値(「ODT」)値の、初期ベースラインODT値に対する変化率として、馴化度を計算して報告する。馴化度は、相対的な尺度であるため、異なる試験室間で生じる可能性のあるODTの絶対値のばらつきに適応する。
【0050】
原材料及びその原材料を含む最終製品を、一緒に組み合わせて用いることによって、馴化度を決定することができる。例えば、官能試験員に対する日次曝露において最終製品の使用を伴う場合もあれば、一方、ODT試験測定において各々の無希釈香料又はPRMの使用を伴う場合もある。日次曝露又はODT試験のいずれかで使用するために選択される条件は、全官能試験員にわたって均一に適用され、4週間の全試験期間を通じて変更しないものとする。試験用香料物質が、複合製品又は送達系に組み込まれていない単純形態(すなわち、PRM、無希釈香料、若しくは高級芳香剤)で入手可能な場合、これらの単純形態を用い、嗅覚計を用いてODT試験を実施する必要がある。なぜなら、それが好ましい方法であるからである。これらの単純形態の試験用香料物質が、試験用に入手できない場合は、試験用香料物質を含む最終製品又は複合製剤を使用して、ODT試験を実施することができる。最終製品又は複合製剤に対してODT試験を実施するときに、嗅覚計以外の提示デバイスが必要とされる場合がある。そうしたデバイスとしては、例えば、スニッフカップ、ヘッドスペースチャンバ及びキャップ付きボトルなど、後述の試験方法ASTM E679−04用に考慮されたデバイスを挙げることができる。
【0051】
4週間の日次曝露期間における3つの各時点、つまり、初期ベースライン、2週間、及び4週間の時点で、各官能試験員のODT値を決定する。ODT値は常に、2011年に再承認された試験方法ASTM E679−04「上昇濃度系列の強制選択極限法による臭味の閾値決定のための標準的技法」(Standard Practice for Determination of Odor and Taste Thresholds by a Forced-Choice Ascending Concentration Series of Limits)に従って算出する必要がある。ただし、そのような試験方法の第4.4項、第8.2項、及び第8.3項のプロトコールについては、下記内容で置き換えるものとする。
【0052】
第4.4項:閾値の個人最高評価値は、各官能試験員が別々に提示した正/誤回答パターンから導き出される。所与の時点での群平均ODT値は、その時点における全ての官能試験員からの全てのデータセットを、ログロジスティック回帰モデルに適合させることによって導き出される。
【0053】
第8.2項:濃度範囲が正確に選択された場合、必ずしも官能試験員全員の判定が、提供される濃縮工程の範囲内に正確にある必要はない。故に、第8.1項においてみられるような官能試験員の判定の表現は、2つ以上の連続したプラス(+)で終端している必要はない。
【0054】
第8.3項:正解が偶然によってのみ発生する有限確率が存在することから、官能試験員にとって試験を3回繰り返すことは重要である。官能試験員は、最高濃度での試験に失敗した場合、試験物質に対して無嗅覚であると見なされて、その官能試験員の回答はデータセットから削除される。
【0055】
加えて、試験方法の第1.3項、第1.4項、第1.6項、第1.7項、及び第4.1項、並びに第9.3項に準じてここに指定された記載に従って以下の選択を行う。
【0056】
第1.3項:閾値は、ごく少量の添加物質が存在するという検出(感知)にすぎず、必ずしも認識できないものとして特徴付けられる。
【0057】
第1.4項:好ましい方法を実施するとき、つまり、嗅覚計を用いて提示される単純な香料形態を使用するときには、提示媒体を、空気、純粋な窒素、又はその2つの混合物としてもよい。最終製品又は複合製品を試験するとき、代替提示媒体として空気などを使用してもよい。
【0058】
第1.6項:好ましい方法を実施するとき、つまり、嗅覚計を用いて提示される単純な香料形態を使用するときには、40L/分の速度が、物理的な提示方法となる。最終製品又は複合製品を試験するとき、代替提示デバイス(限定されないが、スニッフカップ、ヘッドスペースチャンバ、又はキャップ付きボトルを含む)を使用することができる。
【0059】
第1.7項:日次曝露官能検査団に参加している16人以上の官能試験員から構成される官能検査団に対して、提示を行う。
【0060】
第4.1項:工程ごとに35℃の温度で試験される刺激物に適した個別の希釈係数が予め定められた、8段階評価工程を用いる。PRM又は無希釈香料刺激物は、一般的に、ポンプシリンジを介して、無希釈形態で嗅覚計系に導入される。刺激物をエタノールで希釈する必要のあることもある。
【0061】
馴化度の算出には、3つの時点の群平均ODT値を使用する。初期ベースライン時点での群平均ODTに対する、一時点での群平均ODTの変化率として、2つの特定の時点について馴化度を報告する。4週間の日次曝露期間のうち2週目及び4週目の時点での馴化度は、次式を使用して決定される。
【0062】
時間Xにおける馴化度(ODTの変化率)=
((群平均ODT(時間X)−群平均ODT(ヘ゛ースライン))/群平均ODT(ヘ゛ースライン))×100
式中、時間Xは、反復的な日次曝露のうち、2週目又は4週目のいずれかである。
【0063】
香料の抗馴化指数は、以下のとおりであると考えられる。
2週間試験の場合:
・上記香料に曝露されてから2週間後の馴化度が約150%〜25%のとき、0、
・上記香料に曝露されてから2週間後の馴化度が25%未満であるが10%超であるのとき、1、
・上記香料に曝露されてから2週間後の馴化度が10%〜0%のとき、2、又は
・上記香料に曝露されてから2週間後の馴化度が0%未満〜約−25%のとき、3。
・上記香料に曝露されてから2週間後の馴化度が−25%未満〜約−500%のとき、4。
4週間試験の場合:
・上記香料に曝露されてから4週間後の馴化度が約150%〜25%のとき、0、
・上記香料に曝露されてから4週間後の馴化度が25%未満であるが、10%超であるのとき、1、
・上記香料に曝露されてから4週間後の馴化度が10%〜0%のとき、2、又は
・上記香料に曝露されてから4週間後の馴化度が0%未満〜約−25%のとき、3。
・上記香料に曝露されてから4週間後の馴化度が−25%未満〜約−500%のとき、4。
【実施例】
【0064】
使用群ごとにおよそ135名の被験者が、本研究に採用された。本研究に割り当てられた被験者について、本製品中の試験対象香料に関して上記に定義されたODT方法に従って、これらのベースライン閾値強度を評価した。被験者を4つの試験区間(区間あたり被験者30〜35人)に割り当てた。表5に示すように、硫黄アコード含有の組成物が2つの区間に存在し、硫黄アコード不含の組成物が2つの区間に存在した。
【0065】
好適な容器中で全てのPRMを混合し、およそ30分間撹拌して、フレッシュニング組成物を調製する。均一な溶液を得るには、30分間隔で十分なはずである。
【0066】
【表5】
【0067】
【表6】
【0068】
【表7】
【0069】
組成物1〜4に準ずるフレッシュニング組成物を割り当てられた4つの研究群は、4週間の研究期間にわたって現用の空気ケア製品を通常使用するようにして、それぞれの組成物(1、2、3又は4)を有するFebreze NOTICEables空気ケア製品を使用し、本研究の期間全体を通じて他の空気ケア製品は一切使用しないことを指示された。これら研究群のODTは、4週間の使用後に測定した。平均ODTは、使用群ごとに算出した。結果は、表8に示してある。加えて、全ての被験者は、製品を使用してから2週間後及び4週間後に、標準の使用後アンケートに記入し、フィードバックを得てから、重要な製品属性を評価した。
【0070】
【表8】
*値が大きいほど馴化度が高い
【0071】
表8に結果を示すように、1−ブチルスルファニルブタンを硫黄アコード(すなわち、組成物2)に封入することにより、1−ブチルスルファニルブタンを含まない対照と比較して、抗馴化効果を奏した(すなわち、4週間後の時点で、組成物2の総合評価スコアが(60及び54に対して73と)上昇した)。
【0072】
本発明の特定の実施形態を例示及び説明してきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく他の様々な変更及び修正を行うことができる点は当業者には明白であろう。したがって、本発明の範囲内に含まれるそのような全ての変更及び修正は、添付の特許請求の範囲にて網羅することを意図したものである。
【0073】
全ての百分率及び比率は、特に指示がない限り、重量で計算される。全ての百分率及び比率は、特に指示がない限り、全組成物に基づいて計算される。
【0074】
本明細書の全体を通して記載される全ての最大数値限定は、それよりも小さい全ての数値限定を、そのようなより小さい数値限定があたかも本明細書に明確に記載されているかのように包含するものと理解すべきである。本明細書全体を通して記載される全ての最小数値限定は、それよりも高い全ての数値限定を、そのようなより高い数値限定があたかも本明細書に明確に記載されているかのように包含する。本明細書全体を通して与えられる全ての数値範囲は、そのようなより広い数値範囲内に入るより狭い全ての数値範囲を、そのような狭い数値範囲が全て本明細書に明確に記載されているかのように包含する。
【0075】
本明細書に開示する寸法及び値は、記載された正確な数値に厳密に限定されるものと理解されるべきではない。むしろ、特に断らない限り、そのような寸法のそれぞれは、記載された値及びその値の周辺の機能的に同等の範囲の両方を意味するものとする。例えば「40mm」として開示される寸法は、「約40mm」を意味するものとする。
【0076】
「発明を実施するための形態」の中で引用された全ての文献は、関連部分において本明細書に参照により援用されている。いかなる文書の引用も、それが本発明に対する先行技術であることを認めるものとして解釈されるべきではない。本文献における用語のいずれかの意味又は定義が、参照により組み込まれた文献における同一の用語のいずれかの意味又は定義と相反する限りにおいては、本文献においてその用語に与えられた意味又は定義が優先するものとする。