特許第6673947号(P6673947)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6673947-押出型遠心分離機およびその運転方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6673947
(24)【登録日】2020年3月9日
(45)【発行日】2020年4月1日
(54)【発明の名称】押出型遠心分離機およびその運転方法
(51)【国際特許分類】
   B04B 3/02 20060101AFI20200323BHJP
   B04B 15/12 20060101ALI20200323BHJP
【FI】
   B04B3/02
   B04B15/12
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-5649(P2018-5649)
(22)【出願日】2018年1月17日
(65)【公開番号】特開2019-122923(P2019-122923A)
(43)【公開日】2019年7月25日
【審査請求日】2018年9月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000165273
【氏名又は名称】月島機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160093
【弁理士】
【氏名又は名称】小室 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】栗田 新平
(72)【発明者】
【氏名】名取 伸一郎
【審査官】 関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−351411(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102011055513(DE,A1)
【文献】 スイス国特許発明第00312160(CH,A5)
【文献】 国際公開第2007/119374(WO,A1)
【文献】 特開2004−230255(JP,A)
【文献】 特開2014−091093(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B04B
B01D 33/16
C02F 11/12
F26B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴部に円筒状濾過スクリーンが設けられて軸線回りに回転させられる円筒状のバスケットと、
このバスケット内に上記軸線に沿って挿入されて該バスケット内に処理物を供給する処理物供給管と、
上記バスケット内に収容されて該バスケットと一体に回転可能かつ該バスケットに対して上記軸線方向に相対的に進退可能に設けられ、上記処理物供給管の開口部に間隔を開けて対向する押出板と、
上記処理物供給管の開口部に対向する上記押出板の側面に設けられ、上記処理物供給管側に向かうに従い上記軸線に対する径方向外周側に向かう傾斜濾過スクリーンを有するプレシックナとを備えるとともに、
このプレシックナの上記傾斜濾過スクリーンに向けて洗浄液を供給して、該傾斜濾過スクリーン上を遠心力によって外周側に押し出されつつ予備濃縮される上記処理物に上記洗浄液を供給する洗浄液供給手段を備えたことを特徴とする押出型遠心分離機。
【請求項2】
上記洗浄液供給手段は、上記バスケット内に挿入される洗浄液供給管と、この洗浄液供給管の先端に上記傾斜濾過スクリーンに向けて取り付けられたスプレーノズルとを備えていることを特徴とする請求項1に記載の押出型遠心分離機。
【請求項3】
上記傾斜濾過スクリーンにおける目開き量が、上記円筒状濾過スクリーンにおける目開き量よりも大きいことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の押出型遠心分離機。
【請求項4】
請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の押出型遠心分離機を用いて、上記プレシックナの上記傾斜濾過スクリーンに向けて上記洗浄液供給手段により洗浄液を供給しつつ、上記処理物を遠心分離することを特徴とする押出型遠心分離機の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸線回りに回転させられるバスケット内に供給された処理物を、このバスケットの胴部に設けられた濾過スクリーンによって濾過するとともに、処理物から濾過されたケーキを、上記バスケット内に収容されて一体に回転可能かつバスケットに対して上記軸線方向に相対的に移動可能な押出板によりバスケットの開口端から排出する押出型遠心分離機およびその運転方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
このような押出型遠心分離機として、例えば特許文献1には、軸線回りに回転させられる外バスケットと、この外バスケット内に同軸に配置されて一体に回転させられるとともに外バスケットに対して軸線方向に進退させられる内バスケットとこれら内外バスケットに設けられた円筒状濾過スクリーンとを備えた2段バスケット型の遠心分離機において、外バスケットに支持されて処理物の供給管の開口部に対向するように内バスケット内に配設された押出板と、この押出板との間に間隔をあけて上記供給管の開口部を取り囲むように配設された円環板状のディストリビュータと、内バスケットの外バスケットに対する前進方向を向く押出板の側面にディストリビュータの外周を取り囲むように配設され、上記前進方向側に向かうに従い外周側に向けて傾斜する傾斜濾過スクリーンが設けられたプレシックナとを有するものが記載されている。
【0003】
このような遠心分離機において、供給管の開口部から押出板とディストリビュータとの間に供給された処理物は、遠心力によってプレシックナの傾斜濾過スクリーン上を外周側に移動しつつ、液分や粒径の小さい処理物中の結晶等の粒子がある程度濾過されて予備濃縮される。次いで、処理物は遠心力により内バスケットの円筒状濾過スクリーンの内周面に堆積しつつ濾過されてケーキを形成しながら、外バスケットの開口端側に向けた内バスケットの前進によって内バスケットの軸線方向にも堆積し、次いで外バスケットに対する内バスケットの後退によって押出板により押し出されて外バスケットの内周面に排出される。また、こうして外バスケットの内周面に排出された処理物のケーキは、外バスケットの円筒状濾過スクリーンによってさらに濾過され、内バスケットの前進によって押し出されてその開口端から排出される。
【0004】
このように、プレシックナを備えた押出型遠心分離機では、プレシックナの傾斜濾過スクリーンによって処理物が予備濃縮されるため、内バスケットや外バスケットの円筒状濾過スクリーンにおける濾過効率の向上を図ることができる。また、例えば硫酸アンモニウムの晶析工程などで得られる処理物から結晶粒子を分離する場合のように、所定の粒径以上の大きな結晶粒子を選択的に分離して製品とすることが要求とされるときでも、上述のようにプレシックナの傾斜濾過スクリーンによって粒径の小さな粒子は液分とともに処理物から分離して分級することができるので、遠心分離機の後段に分級装置などを別途設ける必要がなくなり、設備コストやランニングコストを抑えて効率的に粒径の大きな粒子を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−091093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、このようなプレシックナを備えた押出型遠心分離機では、内外バスケットの円筒状濾過スクリーンに堆積した処理物の移動は、内バスケットの機械的な進退によるものであるのに対し、プレシックナの傾斜濾過スクリーンにおいて濾過された後の処理物の粒子の移動は、バスケットの回転により生じる遠心力のみに依存している。このため、供給される処理物の固形分濃度が高い場合や高くなった場合には、処理物の流動性が乏しくなって傾斜濾過スクリーンにおいて固形分の滞留や堆積が発生したり、傾斜濾過スクリーンが閉塞したりする懸念がある。
【0007】
また、このように供給される処理物の固形分濃度が高い場合や高くなった場合に処理物の流動性が乏しくなると、処理物中の固形分の動きが拘束され易くもなる。そして、これにより、本来は液分とともに処理物から分離して除去すべき粒径の小さな粒子が、傾斜濾過スクリーン上の固形分のケーキに補足されて内バスケットに移動してしまい、要求される分級性能を得ることができなくなるおそれがある。
【0008】
本発明は、このような背景の下になされたもので、処理物の固形分濃度が高い場合や高くなった場合でも、プレシックナの傾斜濾過スクリーン上における処理物の流動性を確保して滞留や堆積、傾斜濾過スクリーンの閉塞を防ぐことができるとともに、粒径の小さな粒子も効率的に液分とともに分離して除去し、必要な分級性能を得ることが可能な押出型遠心分離機およびその運転方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明の押出型遠心分離機は、胴部に円筒状濾過スクリーンが設けられて軸線回りに回転させられる円筒状のバスケットと、このバスケット内に上記軸線に沿って挿入されて該バスケット内に処理物を供給する処理物供給管と、上記バスケット内に収容されて該バスケットと一体に回転可能かつ該バスケットに対して上記軸線方向に相対的に進退可能に設けられ、上記処理物供給管の開口部に間隔を開けて対向する押出板と、上記処理物供給管の開口部に対向する上記押出板の側面に設けられ、上記処理物供給管側に向かうに従い上記軸線に対する径方向外周側に向かう傾斜濾過スクリーンを有するプレシックナとを備えるとともに、このプレシックナの上記傾斜濾過スクリーンに向けて洗浄液を供給して、該傾斜濾過スクリーン上を遠心力によって外周側に押し出されつつ予備濃縮される上記処理物に上記洗浄液を供給する洗浄液供給手段を備えたことを特徴とする。また、本発明の運転方法は、このような押出型遠心分離機を用いて、上記プレシックナの上記傾斜濾過スクリーンに向けて上記洗浄液供給手段により洗浄液を供給しつつ、上記処理物を遠心分離することを特徴とする。
【0010】
このように構成された押出型遠心分離機およびその運転方法では、プレシックナの傾斜濾過スクリーンに向けて洗浄液を供給して、該傾斜濾過スクリーン上を遠心力によって外周側に押し出されつつ予備濃縮される上記処理物に上記洗浄液を供給する洗浄液供給手段が備えられていて、プレシックナの上記傾斜濾過スクリーンに向けて上記洗浄液供給手段により洗浄液を供給しつつ、上記処理物を遠心分離するので、処理物の固形分濃度が高い場合や高くなった場合でも傾斜濾過スクリーン上における処理物の流動性を確保することができる。このため、バスケットの回転による遠心力によって確実に処理物を予備濃縮しつつバスケットの円筒状濾過スクリーンに排出することができ、処理物の滞留や堆積、傾斜濾過スクリーンの閉塞を防ぐことができるとともに、処理物中の固形分の動きが拘束されるのも防いで、粒径の小さな粒子の液分側への移動を洗浄液によって促進し、主として粒径の大きな粒子をバスケットに排出することができるので、必要な分級性能を得ることが可能となる。
【0011】
ここで、上記洗浄液供給手段としては、例えば上記バスケット内に挿入される洗浄液供給管と、この洗浄液供給管の先端に上記傾斜濾過スクリーンに向けて取り付けられたスプレーノズルとを備えたものを用いることができる。プレシックナの傾斜濾過スクリーンはバスケットとともに回転しているので、これら洗浄液供給管とスプレーノズルが固定されていても、傾斜濾過スクリーンの処理物に全周に亙って満遍なく洗浄液を供給することが可能となる。
【0012】
また、上記傾斜濾過スクリーンにおける目開き量は、上記円筒状濾過スクリーンにおける目開き量よりも大きいことが望ましい。これにより、傾斜濾過スクリーンからの粒径の小さな粒子と処理物の液分および洗浄液の排出をさらに促進させて、一層の分級性能の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明によれば、処理物の固形分濃度が高い場合や高くなった場合でも傾斜濾過スクリーン上における処理物の流動性を確保することができ、処理物の滞留や堆積、傾斜濾過スクリーンの閉塞を防ぐことができるとともに、粒径の小さな粒子の液分側への移動を洗浄液によって促進して、必要な分級性能を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態を示すバスケットの軸線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の押出型遠心分離機の一実施形態を示すものであって、本発明を、特許文献1に記載されたような外バスケット1と内バスケット2とを備えた2段バスケット型の遠心分離装置に適用したものである。すなわち、本実施形態における遠心分離機は、軸線Oを中心とする円筒状の胴部の内周面の一端側(図1において右側)に円筒状の外濾過スクリーン1aが取り付けられた水平な外バスケット1と、この外バスケット1内に同軸に収容される、やはり円筒状の胴部の内周面の一端側に円筒状の内濾過スクリーン2aが取り付けられた内バスケット2とを備えており、このうち内バスケット2が本発明におけるバスケットとされるとともに、内濾過スクリーン2aが本発明における円筒状濾過スクリーンとされる。この外濾過スクリーン1aや内濾過スクリーン2aとしては、例えば円筒形のワイヤスクリーンやプレートスクリーンが用いられる。
【0016】
これら円筒状の外バスケット1と内バスケット2は、その一端に円形の開口端1b、2bを有するとともに、他端(図1における左端。)が円板状の保持板1c、2cに取り付けられて保持された有底の円筒状であり、内バスケット2は、その軸線O方向の長さが外バスケット1より短かくされていて、外バスケット1とともにケーシング3内に収容されて上記軸線O回りに一体に回転させられる。なお、内バスケット2の開口端2bの外径は外バスケット1の外濾過スクリーン1aの内周面よりも僅かに小さな大きさとされる。また、外バスケット1と内バスケット2の胴部には多数の貫通穴1d、2dが形成されており、外濾過スクリーン1aと内濾過スクリーン2aの間隙部分はこれらの貫通穴1d、2dにそれぞれ連通している。
【0017】
ケーシング3内の軸線O方向における外バスケット1の両端の位置には、外バスケット1の外周面に向けて内周側に延びる外バスケット1の外径よりも僅かに大きな内径を有する仕切り壁3aがそれぞれ設けられている。ケーシング3内において、これらの仕切り壁3aの間の部分は処理物から分離された液分の排出室3bとされるとともに、一端側の仕切り壁3aよりもさらに一端側のケーシング3内は、外バスケット1の外濾過スクリーン1aによって処理物から液分が分離された固形分(ケーキ)の排出室3cとされる。
【0018】
外バスケット1の保持板1cは、軸受け4によって回転自在に支持されて軸線Oに沿ってケーシング3内に挿通された中空の円筒状の主軸5の一端に取り付けられており、図示されないモータ等の回転駆動手段の回転力が伝達されて主軸5が回転することにより、外バスケット1は軸線O回りに高速回転する。また、この主軸5の内部には押出軸6が主軸5と一体に回転可能、かつ図示されない油圧シリンダや電動シリンダ等の進退駆動手段によって軸線O方向に一定のストロークで進退可能に挿入されており、この押出軸6の一端部が外バスケット1の保持板1cを貫通して内バスケット2の保持板2cに取り付けられることにより、内バスケット2も外バスケット1に対して一体に回転可能かつ外バスケット1内の他端側で軸線O方向に進退可能とされる。
【0019】
さらに、外バスケット1の保持板1cには、複数本の支持軸1eが、軸線Oから外周側に離れた位置に周方向に間隔をあけて、軸線Oに平行に上記一端側に延びるように取り付けられており、これらの支持軸1eは保持板2cを貫通して内バスケット2内に突出していて、これらの支持軸1eの一端に円板状の押出板7が取り付けられている。従って、この押出板7は、外バスケット1および内バスケット2と同軸に軸線O回りに一体回転可能、かつ内バスケット2に対しては軸線O方向に一定のストロークで進退可能とされる。
【0020】
また、この押出板7のさらに一端側には、押出板7よりも小さな半径で中央に開口部を有する円環板状の分散板(ディストリビュータ)8が押出板7と間隔をあけて一体に支持されている。さらにまた、ケーシング3には処理物供給管9が取り付けられて挿通されており、この処理物供給管9は外バスケット1および内バスケット2の開口端1b、2b内を通って分散板8の開口部に挿通され、その供給口が押出板7と分散板8との間に開口している。従って、押出板7は、この処理物供給管9の開口部に間隔を開けて対向することになる。
【0021】
さらに、この処理物供給管9の開口部に対向する押出板7の側面には、軸線Oに対する半径方向において処理物供給管9の開口部よりも外周側に、処理物供給管9の開口部を取り囲むようにプレシックナ10が設けられている。このプレシックナ10は、押出板7の上記側面から処理物供給管9側に向かうに従い軸線Oに対する径方向外周側に向かうワイヤースクリーン等からなる円錐台状の傾斜濾過スクリーン10aを有しており、本実施形態では、この傾斜濾過スクリーン10aにおける目開き量すなわち該傾斜濾過スクリーン10aの間隙部分の大きさは、本発明の円筒状濾過スクリーンである内濾過スクリーン2aにおける目開き量よりも大きくされている。
【0022】
さらにまた、この傾斜濾過スクリーン10aの内周部は、上記軸線O方向の他端側の部分において、一端側に向けて少なくとも分散板8の他端側の端縁までの範囲がカバー10bによって覆われることにより、この分散板8の他端側の端縁よりも他端側の部分がプレシックナ10の内周には露出していない。また、プレシックナ10の外周部には、外周縁が内濾過スクリーン2aの内径よりも僅かに小さな外径を有する円環板状のスクレーパ10cが取り付けられている。
【0023】
そして、このように構成された押出型遠心分離機においては、さらに、このプレシックナ10の上記傾斜濾過スクリーン10aに向けて洗浄液を供給する洗浄液供給手段11が備えられている。本実施形態では、この洗浄液供給手段11は、内バスケット2の一端側から該内バスケット2内に挿入される洗浄液供給管11aと、この洗浄液供給管11aの先端に傾斜濾過スクリーン10aに向けて取り付けられたスプレーノズル11bとを備えたものとされている。
【0024】
より詳しくは、洗浄液供給管11aは、処理物供給管9の下方において軸線Oと平行に内バスケット2内に挿入されている。また、スプレーノズル11bは、この洗浄液供給管11aの他端部である内バスケット2内の先端において、他端側に向かうに従い下方に向かうように洗浄液供給管11aに対して斜め下向きに曲折し、供給された洗浄液を軸線Oに沿った断面において図1に示すように傾斜濾過スクリーン10aに垂直な中心線を中心とした円錐放射状に噴出可能とされている。
【0025】
このように構成された押出型遠心分離機において、処理物供給管9から供給される固液分が混濁した処理物(スラリー)は、外バスケット1および内バスケット2とともに高速回転する押出板7に当たり、遠心力によって本実施形態では分散板8との間から外周側に分散され、内バスケット2の内濾過スクリーン2aの内周面に付着する。そこで、こうして処理物を供給しつつ、内バスケット2が押出板7に対して後退した状態から内バスケット2を前進させると、前進する内バスケット2の内濾過スクリーン2aの内周面に処理物が軸線O方向に連続的に堆積しながら遠心力によって濾過され、処理物のケーキが形成される。
【0026】
次に、このように前進した内バスケット2が前進のストロークエンドに達して後退に転じると、内濾過スクリーン2aの内周面に堆積した処理物のケーキは、後退する内バスケット2に対して相対的に前進することになる押出板7に取り付けられたプレシックナ10のスクレーパ10cによって内バスケット2の一端側に順次押し出され、この一端側に堆積したものから開口端2bより外バスケット1の外濾過スクリーン1aの内周面に排出されて、やはり軸線O方向に連続的に堆積しながら遠心力によってさらに濾過されてゆく。すなわち、本実施形態では、押出板7はプレシックナ10を介して処理物を外バスケット1に押し出す。
【0027】
次いで、こうして外濾過スクリーン1aの内周面に堆積して濾過されたケーキは、後退のストロークエンドに達した内バスケット2の次の前進により、この内バスケット2の開口端2bによって一端側に順次押し出され、やはり一端側に堆積したものから外バスケット1の開口端1bよりケーシング3のケーキの排出室3cに排出される。また、外濾過スクリーン1aと内濾過スクリーン2aによって処理物から分離させられた液分は、外バスケット1と内バスケット2の胴部に形成された貫通穴1d、2dを通ってケーシング3の液分の排出室3bに排出される。
【0028】
ここで、プレシックナ10を備えた上記構成の押出型遠心分離機においては、処理物供給管9から供給されて遠心力により外周側に分散された処理物が内濾過スクリーン2aの内周面に付着する前に、まずプレシックナ10の傾斜濾過スクリーン10aに付着し、この傾斜濾過スクリーン10aによって液分や粒径の小さい固形分の粒子がある程度除去され、処理物が予備濃縮される。このように傾斜濾過スクリーン10aに付着した処理物は、遠心力によって外周側に押し出され、上述のように内濾過スクリーン2aの内周面に堆積する。
【0029】
そして、上記構成の押出型遠心分離機では、このプレシックナ10の傾斜濾過スクリーン10aに向けて洗浄液を供給する洗浄液供給手段11が備えられており、本発明の運転方法の一実施形態では、傾斜濾過スクリーン10a上を遠心力によって外周側に押し出されつつ予備濃縮される処理物に洗浄液が供給される。このため、処理物の固形分濃度が高い場合や高くなった場合でも、こうして洗浄液供給手段11によって供給される洗浄液により、傾斜濾過スクリーン10a上における処理物の流動性を確保することができる。
【0030】
従って、このように処理物の固形分濃度が高い場合や高くなった場合でも、傾斜濾過スクリーン10a上に堆積した処理物を内バスケット2の回転による遠心力によって予備濃縮しつつ、確実に内バスケット2の内濾過スクリーン2aに排出することができ、処理物の滞留や堆積、傾斜濾過スクリーン10aの閉塞を防ぐことができる。また、こうして処理物の流動性が確保されることにより、処理物中の固形分の動きが拘束されるのも防ぐことができるので、粒径の小さな粒子が固形分に補足されるのを防いで液分側への移動を洗浄液によって促進することができ、主として粒径の大きな粒子をバスケットに排出して、このような粒径の大きな粒子を多く得るために必要な分級性能を確保することも可能となる。
【0031】
また、本実施形態では、この洗浄液供給手段11として、内バスケット2内に挿入される洗浄液供給管11aと、この洗浄液供給管11aの先端に傾斜濾過スクリーン10aに向けて取り付けられたスプレーノズル11bとを備えたものが用いられている。ここで、プレシックナ10の傾斜濾過スクリーン10aは内バスケット2および押出板7とともに回転しているので、これら洗浄液供給手段11の洗浄液供給管11aとスプレーノズル11bが固定されていても、傾斜濾過スクリーン10a上の処理物に全周に亙って満遍なく洗浄液を供給することができる。
【0032】
さらに、本実施形態では、傾斜濾過スクリーン10aにおける目開き量が、内バスケット2の円筒状濾過スクリーンである内濾過スクリーン2aにおける目開き量よりも大きくされている。すなわち、例えば傾斜濾過スクリーン10aと内濾過スクリーン2aとがともにワイヤースクリーンである場合には、傾斜濾過スクリーン10aの隣接するワイヤー同士の間隔が内濾過スクリーン2aの隣接するワイヤー同士の間隔よりも大きくされている。従って、これにより、傾斜濾過スクリーン10aからの粒径の小さな粒子と処理物の液分および洗浄液の排出をさらに促進させることができ、傾斜濾過スクリーン10aによる分級性能を一層向上させることが可能となる。
【0033】
なお、上記洗浄液供給手段11によって供給される洗浄液は、処理物によっては水でもよく、また傾斜濾過スクリーン10aによって処理物から分離させられた処理物中の液分および洗浄液を、同じく処理物から分離させられた粒径の小さな粒子から濾過した液を循環させて供給してもよい。また、本実施形態では、外バスケット1と内バスケット2とを備えた2段バスケット型の遠心分離装置に本発明を適用した場合について説明したが、内バスケット2のみの1段バスケット型の遠心分離装置や、3段以上の遠心分離機に本発明を適用することも可能である。
【0034】
さらに、プレシックナ10の傾斜濾過スクリーン10aに向けて洗浄液を供給する上記洗浄液供給手段11の他に、内濾過スクリーン2aや外濾過スクリーン1aに向けて洗浄液を供給する洗浄液供給手段が備えられていてもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 外バスケット
1a 外濾過スクリーン
1b 外バスケット1の開口端
2 内バスケット(バスケット)
2a 内濾過スクリーン(円筒状濾過スクリーン)
2b 内バスケット2の開口端
3 ケーシング
5 主軸
6 押出軸
7 押出板
8 分散板
9 処理物供給管
10 プレシックナ
10a 傾斜濾過スクリーン
11 洗浄液供給手段
11a 洗浄液供給管
11b スプレーノズル
O 内バスケット2(バスケット)の軸線
図1