(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
本開示のポリエステル樹脂製造用の安定剤は、式(I)を有するリン酸エステル化合物を含有するリン酸エステル組成物を含み、
式(I)
【0027】
を示し、
この内、R
1及びR
2は、C
2−C
4の直鎖アルキレン基、C
3−C
4の分岐アルキレン基、及びそれらの組み合わせからなる群より独立して選ばれたものである。
【0028】
C
2−C
4の直鎖アルキレン基の例としては、エチレン、プロピレン及びn−ブチレンを含む。C
3−C
4の分岐アルキレン基の例としては、イソプロピレン、sec−ブチレン、イソブチレン、tert−ブチレンを含む。特定の実施形態において、R
1及びR
2は、エチレンである。
【0029】
特定の実施形態において、該リン酸エステル組成物は、式(I)におけるX
2が水素であるリン酸エステル化合物、即ち、式(II)を有するリン酸エステル化合物を含有し、
【0031】
式中、X
1は式(I)に定義されたものと同じである。
【0032】
特定の実施形態において、該リン酸エステル組成物は、式(I)におけるX
2が水素であるリン酸エステル化合物と、式(I)におけるX
2が
【0034】
であるリン酸エステル化合物と、の組み合わせ、即ち、式(II)を有するリン酸エステル化合物と、式(III)を有するリン酸エステル化合物と、の組み合わせを更に含有し、
【0036】
式中、X
1は式(I)に定義されたものと同じである。
【0037】
該組み合わせにおいて、式(II)を有するリン酸エステル化合物と、式(III)を有するリン酸エステル化合物との当量比は、特に制限されていない。特定の実施形態において、製造されたポリエステル樹脂の分解をより効果的に抑制するために、式(II)を有するリン酸エステル化合物と、式(III)を有するリン酸エステル化合物との当量比は、1:1〜9:1の範囲内にある。特定の実施形態において、式(II)を有するリン酸エステル化合物と、式(III)を有するリン酸エステル化合物との当量比は、3:1〜9:1の範囲内にある。式(II)を有するリン酸エステル化合物は、式(III)を有するリン酸エステル化合物より、製造されたポリエステル樹脂の分解を効果的に抑制する。また、本開示の安定剤は、ポリエステル樹脂製造用の成分であるジカルボン酸エステルの末端基と反応して、製造されたポリエステル樹脂の分解をより効果的に抑制できる。
【0038】
本開示によれば、該安定剤の製造方法は、
(a)リン酸化剤を溶媒に分散して、リン酸化剤分散液を得るステップと、
(b)式(A)を有する化合物を前記リン酸化剤分散液に徐々に添加して、前記式(A)を有する化合物をリン酸化反応させるステップと、を含み、
式(A)
【0040】
式中、R
1及びR
2は、式(I)で定義されたものと同じである。特定の実施形態において、R
1及びR
2はエチレンである。
【0041】
式(A)を有する化合物の非限定的な例としては、テレフタル酸ビス(2−ヒドロキシエチル)であり、それは市販の試薬級化学品であってもよく、或は、テレフタル酸ポリエチレンとエチレングリコールとのアルコール分解反応またはテレフタル酸とエチレンオキシドとの反応により得たものであってもよい。本開示で使用したビス−ヒドロキシアルキルテレフタレートは純物質、即ち、
【0043】
である化合物であり、これはテレフタル酸とエチレングリコールとのエステル化反応により得たテレフタル酸ビス(2−ヒドロキシエチル)とそのオリゴマーとの混合物より好ましい。テレフタル酸ビス(2−ヒドロキシエチル)のオリゴマーは式(B)で表される。
【0045】
式中、nは2〜16の範囲内にある整数である。
【0046】
特定の実施形態において、該リン酸化剤は、リン酸、ポリリン酸、五酸化リン、及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれたものである。リン酸をリン酸化剤として使用した場合、上記製造された安定剤に残留するリン酸がポリエステル樹脂を製造するための重縮合反応を妨げる可能性があることを考慮して、特定の実施形態において該リン酸化剤は、五酸化リンである。
【0047】
リン酸化剤と式(A)を有する化合物とのモル比は、特に制限されていない。該モル比は、製造される安定剤における式(II)を有するリン酸エステル化合物と式(III)を有するリン酸エステル化合物との望ましい当量比に従って調整できる。製造される安定剤内の式(II)を有するリン酸エステル化合物と式(III)を有するリン酸エステル化合物との当量比が1以上であれば、製造されるポリエステル樹脂の分解をより効果的に抑制することができることを考慮して、特定の実施形態において、リン酸化剤と式(A)を有する化合物とのモル比は、1:1〜1:2の範囲内にある。特定の実施形態において、リン酸化剤と式(A)を有する化合物とのモル比は、1:1.1〜1:1.5の範囲内にある。
【0048】
リン酸化反応の反応条件は、特に制限されていない。例えば、リン酸化反応は、40℃〜100℃の範囲内の温度で、1〜5時間行うことができる。
【0049】
本開示によるポリエステル樹脂の製造方法は、触媒と本開示の安定剤との存在下で、ジカルボン酸エステル成分を重縮合反応させるステップを含む。
【0050】
ジカルボン酸エステル成分は、少なくとも一つのジカルボン酸エステル系物質を含有し、該ジカルボン酸エステル系物質は、ジカルボン酸化合物とジオール化合物とのエステル化反応により得た生成物であってもよく、または、ジカルボン酸ジアルキルエステル化合物とジオール化合物とのエステル交換反応により得た生成物であってもよい。
【0051】
ジカルボン酸化合物の例としては、脂肪族ジカルボン酸化合物及び芳香族ジカルボン酸化合物を含むが、それらに限定されていない。脂肪族ジカルボン酸化合物の例としては、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、1,12−ドデカン二酸及びイタコン酸を含むが、それらに限定されていなく、それらを単独または2種以上の混合物で使用することができる。芳香族ジカルボン酸化合物の例としては、C
8−C
12芳香族ジカルボン酸化合物を含むが、それらに限定されていなく、それらを単独または2種以上の混合物で使用することができる。C
8−C
12芳香族ジカルボン酸化合物の例としては、テレフタル酸(TPA)、イソフタル酸(IPA)、フタル酸及び2,6−ナフタレンジカルボン酸を含むが、それらに限定されていない。特定の実施形態において、ジカルボン酸化合物は、芳香族ジカルボン酸化合物からなる群より選ばれたものである。
【0052】
ジカルボン酸ジアルキルエステル化合物の例としては、脂肪族ジカルボン酸のジアルキルエステル化合物及び芳香族ジカルボン酸のジアルキルエステル化合物を含むが、それらに限定されていない。脂肪族ジカルボン酸のジアルキルエステル化合物の例としては、ジアルキルシクロヘキサンジカルボキシレート、コハク酸ジアルキル、グルタル酸ジアルキル、アジピン酸ジアルキル、セバシン酸ジアルキル、ドデカン二酸ジアルキル(dialkyl dodecanedioate))及びメチレンコハク酸ジアルキル(dialkyl methylene succinate )を含むが、それらに限定されていなく、それらを単独または2種以上の混合物で使用することができる。芳香族ジカルボン酸のジアルキルエステル化合物の例としては、C
10−C
14芳香族ジカルボン酸のジアルキルエステル化合物を含むが、それらに限定されていなく、それらを単独または2種以上の混合物で使用することができる。C
10−C
14芳香族ジカルボン酸のジアルキルエステル化合物の例としては、テレフタル酸ジアルキル、イソフタル酸ジアルキル、フタル酸ジアルキル、ジアルキル2,6−ナフタレート(dialkyl 2,6−naphthalate)及びジアルキルビフェニルジカルボキシレート(dialkyl )biphenyldicarboxylate)を含むが、それらに限定されていない。特定の実施形態において、ジカルボン酸ジアルキル化合物は、芳香族ジカルボン酸のジアルキルエステル化合物からなる群より選ばれたものである。
【0053】
ジオール化合物の例としては、脂肪族ジオール化合物及び芳香族ジオール化合物を含むが、それらに限定されていない。脂肪族ジオール化合物の例としては、C
2−C
4の脂肪族ジオール化合物含むが、それらに限定されていなく、それらを単独または2種以上の混合物で使用することができる。C
2−C
4の脂肪族ジオール化合物の例としては、エチレングリコール(EG)、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール及び2,3−ブチレングリコールを含むが、それらに限定されていない。芳香族ジオール化合物の例としては、ヒドロキノン、レゾルシノール、ナフタレングリコール(naphthalene glycol)を含むが、それらに限定されていない。特定の実施形態において、ジオール化合物は、脂肪族ジオール化合物からなる群より選ばれたものである。
【0054】
特定の実施形態において、ポリエステル樹脂を製造するための重縮合反応において、製造されるポリエステル樹脂の分解をより効果的に抑制し、且つ、製造されるポリエステル樹脂の製造速度及び収率に悪影響を及ぼさないために、該安定剤は、製造されたポリエステル樹脂が含有する実質的なリン含有量が5ppm〜150ppmの範囲内にあるような量を使用した。
【0055】
特定の実施形態において、重縮合反応ための触媒は、金属含有触媒である。金属含有触媒の例としては、アンチモン含有化合物、ゲルマニウム含有化合物、スズ含有化合物、チタン含有化合物、ガリウム含有化合物及びアルミニウム含有化合物を含むが、それらに限定されていなく、それらを単独または2種以上の混合物で使用することができる。特定の実施形態において、金属含有触媒の具体例は、三酸化アンチモン(Sb
2O
3)、酢酸アンチモン(III)、グリコール酸アンチモン、オルトチタン酸テトライソプロピル、オルトチタン酸テトラブチル、酸化ゲルマニウム、ジブチルすずオキシド、n−ブチルヒドロキシすずオキシド(n−butyl hydroxytin oxide)及びそれらの組み合わせである。触媒の量は、特に限定されなく、実際的な要求に従って調整されることができる。
【0056】
ポリエステル樹脂を製造するための重縮合において、重縮合反応は、製造されたポリエステル樹脂の分解を抑制するように、本開示の安定剤とジカルボン酸エステル成分の末端基との反応と共に起こる。
【0057】
重縮合反応を起こすことができる限り、ポリエステル樹脂を製造するための重縮合反応の反応条件は、特に限定されない。特定の実施形態において、重縮合反応の反応温度は、260℃〜280℃の範囲内にある。
【0058】
以下、本開示の実施例について説明する。これらの実施例は、例示的かつ説明的なものであり、本開示を限定するものと解釈されるべきではないことを理解されたい。
製造例1:安定剤の製造
反応槽内に、1,2−ジクロロエタン(100ml)を添加し、続いて、五酸化リン(P
2O
5、15.05g、0.105mol)を反応槽内の1,2−ジクロロエタンに添加且つ分散し、氷浴に入れて五酸化リンの分散液を得た。総量29.9g(0.118 mol)のテレフタル酸ビス(2−ヒドロキシエチル)(Tokyo Chemical Industry Co., Product No. B3429)を、徐々に反応槽内に添加し、続いて、反応槽の温度を徐々に80℃まであげて、テレフタル酸ビス(2−ヒドロキシエチル)と五酸化リンとを3時間リン酸化反応させた。反応槽内に下記の式で求めた量の脱イオン水を添加し、70℃でリン酸化反応を1時間続けた後、反応を停止して粗生成物を得た。該粗生成物を減圧下で蒸留することにより、1,2−ジクロロエタンを除去して、式(I−1)のリン酸モノエステル化合物と式(II−1)のリン酸ジエステル化合物とを含有するリン酸エステル組み合わせを得た。
【0061】
脱イオン水の量=(テレフタル酸ビス(2−ヒドロキシエチル)の質量+五酸化リンの質量)×2%
水酸化カリウムの水溶液(0.1M)を用いて該リン酸エステル組み合わせを滴定して、式(I−1)のリン酸モノエステル化合物と式(II−1)のリン酸ジエステル化合物との当量比を測定した。その当量比は3.3:1であった。
【0062】
該リン酸エステル組み合わせはまた、エレクトロスプレーイオン化質量分析計(ESI−MS、Bruker、Impact HD、EVOQ)及びリン31核磁気共鳴分析計(
31P NMR、Bruker、共鳴振動数:400MHz、溶媒:DMSO、H
3PO
4を0ppmの内部標準として使用)を用いて分析された。
図1に示されているESI−MSのスペクトル図により、該リン酸エステル組み合わせは、式(I−1)のリン酸モノエステル化合物(m/z=332.9(C
12H
15O
9P))及び式(II−1)のリン酸ジエステル化合物(m/z=568.8(C
44H
43O
22P))を含有することが確認された。また、
図2に示されている
31P NMRのスペクトル図の0〜−2ppmの化学シフト(δ)のピークにより、該リン酸エステル組み合わせは、式(I−1)のリン酸モノエステル化合物及び式(II−1)のリン酸ジエステル化合物を含有し、且つ、ピロリン酸塩やポリリン酸塩のような副生成物を含有しないことが確認された。
【0063】
実施例1:ポリエステル樹脂の製造
反応器(1L)に、テレフタル酸(345.8g、2.083mol)及びエチレングリコール(161.49g、2.605mol)を加えて、圧力が2kg/cm
2の窒素雰囲気且つ温度260℃下で、変換率が少なくとも80%に達するまでエステル化反応させた。安定剤の分散液(製造例1で製造した安定剤(0.034g)をエチレングリコールに分散することにより予め製造されたもの)及び三酸化アンチモン(Sb
2O
3、300ppm)を反応器内に添加して混合物を得た。該混合物を温度270℃〜275℃下で、135分重縮合反応させて、理論的なリン含有量が11.14ppmであるポリエステル樹脂を得た。
【0064】
実施例2:ポリエステル樹脂の製造
本実施例では、用いた安定剤の量が0.067gである以外は、実施例1の手順を繰り返した。その結果、理論的なリン含有量が22.14ppmであるポリエステル樹脂を得た。
【0065】
実施例3:ポリエステル樹脂の製造
本実施例では、用いた安定剤の量が0.087gであり、且つ、重縮合反応を140分間行う以外は、実施例1の手順を繰り返した。その結果、理論的なリン含有量が28.50ppmであるポリエステル樹脂を得た。
【0066】
実施例4:ポリエステル樹脂の製造
本実施例では、用いた安定剤の量が0.20gであり、且つ、重縮合反応を145分間行う以外は、実施例1の手順を繰り返した。その結果、理論的なリン含有量が65.80ppmであるポリエステル樹脂を得た。
【0067】
実施例5:ポリエステル樹脂の製造
本実施例では、用いた安定剤の量が0.40gであり、且つ、重縮合反応を150分間行う以外は、実施例1の手順を繰り返した。その結果、理論的なリン含有量が131.60ppmであるポリエステル樹脂を得た。
【0068】
比較例1:ポリエステル樹脂の製造
製造例1の安定剤の替わりにリン酸(50ppm)を使用し、且つ、重縮合反応を155分間行う以外は、実施例1の手順を繰り返した。その結果、理論的なリン含有量が15.8ppmであるポリエステル樹脂を得た。
【0069】
比較例2:ポリエステル樹脂の製造
製造例1の安定剤の替わりにリン酸(110ppm)を使用し、且つ、重縮合反応を167分間行う以外は、実施例1の手順を繰り返した。その結果、理論的なリン含有量が34.8ppmであるポリエステル樹脂を得た。
【0070】
比較例3:ポリエステル樹脂の製造
製造例1の安定剤を使用せず、且つ、重縮合反応を120分間行う以外は、実施例1の手順を繰り返した。その結果、ポリエステル樹脂を得た。
【0071】
実施例6:ポリエステル樹脂の製造
反応器(5L)に、テレフタル酸(2161.5g、13.021mol)及びエチレングリコール(1009.1g、16.276mol)を加えて、圧力が2kg/cm
2の窒素雰囲気且つ温度260℃下で、変換率が少なくとも80%に達するまでエステル化反応させた。安定剤の分散液(製造例1で製造した安定剤(0.300g)をエチレングリコールに分散することにより予め製造されたもの)及び三酸化アンチモン(Sb
2O
3、300ppm)を反応器内に添加して混合物を得た。該混合物を温度270℃〜275℃下で、240分重縮合反応させて、理論的なリン含有量が15.8ppmであるポリエステル樹脂を得た。
【0072】
実施例7:ポリエステル樹脂の製造
本実施例では、用いた安定剤の量が0.570gであり、且つ、重縮合反応を250分間行う以外は、実施例6の手順を繰り返した。その結果、理論的なリン含有量が30.0ppmであるポリエステル樹脂を得た。
【0073】
実施例8:ポリエステル樹脂の製造
本実施例では、用いた安定剤の量が0.854gであり、且つ、重縮合反応を248分間行う以外は、実施例6の手順を繰り返した。その結果、理論的なリン含有量が45.0ppmであるポリエステル樹脂を得た。
【0074】
比較例4:ポリエステル樹脂の製造
製造例1の安定剤の替わりにリン酸(50ppm)を使用し、且つ、重縮合反応を220分間行う以外は、実施例6の手順を繰り返した。その結果、理論的なリン含有量が15.8ppmであるポリエステル樹脂を得た。
【0075】
比較例5:ポリエステル樹脂の製造
製造例1の安定剤の替わりにリン酸トリエチル(TEP、92.84ppm)を使用し、且つ、重縮合反応を250分間行う以外は、実施例6の手順を繰り返した。その結果、理論的なリン含有量が15.8ppmであるポリエステル樹脂を得た。
【0076】
特性評価
1.固有粘度 (IV):
実施例1〜8及び比較例1〜5により得た各ポリエステル樹脂を融解した後、水浴に入れて固化し、そして、ペレタイザーを用いてペレット化して、ポリエステルペレットを得た。該ポリエステルペレットを、重量比が3:2にあるフェノール及びテトラクロロエタンの混合物に添加して、濃度0.4wt/vol%の試液を作成した。温度30±0.02℃でウベローデ粘度計を使用して、該試液の固有粘度を測定した。固有粘度が高いほど、重縮合反応がより完全であったことになる。その結果は表1及び表2に示されている。
【0077】
2.色調(L、Lb)
実施例1〜8及び比較例1〜5により得たポリエステル樹脂を融解した後、水浴に入れて固化し、そして、ペレタイザーを用いてペレット化して、ポリエステルペレットを得た。該ポリエステルペレットの色調(L、L
b)は、色度計(NE4000、Nippon Denshoku Company)を用いて測定された。L値が大きいほど、ポリエステル樹脂の白色度が高い。L
b値が正数である場合、L
b値が大きいほど、ポリエステル樹脂がより黄色になる。L
b値が負数である場合、L
b値が小さいほど、ポリエステル樹脂がより青くなる。L
b値は0に近いことが望ましい。ポリエステル樹脂産業において、L値が60〜75、L
b値が3〜10の範囲にあることが許容される。その結果は表1及び表2に示されている。
【0078】
3.酸価:
実施例1〜8及び比較例1〜5により得たポリエステル樹脂を融解した後、水浴に入れて固化し、そして、ペレタイザーを用いてペレット化して、ポリエステルペレットを得る。該ポリエステルペレットの酸価([COOH]、meg/Kg)は、酸価分析計を用いて測定された。酸価が高いほど、重縮合反応がより不完全であったこと、あるいは、ポリエステル樹脂のエステル結合がより破壊されたことになる。その結果は表1及び表2に示されている。
【0079】
4.固相重合速度:
実施例6〜8及び比較例4、5により得たポリエステル樹脂を、予備結晶化し且つ温度140℃で焼成することによりポリエステルペレットを得た。該ポリエステルペレットを温度230℃で6時間固相重合反応させる。反応時間2時間、4時間、6時間でそれぞれ得た生成物の固有粘度を測定した。その結果は表3に示されている。
【0080】
5.熱安定性:
実施例6〜8及び比較例3〜5により得たポリエステル樹脂を、予備結晶化し且つ温度140℃で焼成することによりポリエステルペレットを得た。オーブンで該ポリエステルペレットを温度225℃で1時間加熱する。そして、ポリエステル樹脂の固有粘度、酸価、色調及びBB%値(エステル結合における破壊された結合)を測定する。BB%値は、以下の式により決定した。BB%値が小さいほど、ポリエステル樹脂において破壊されたエステル結合の数が少ないことになり、且つ、ポリエステル樹脂の熱安定性が高いことになる。その詳細は、「Journal of Applied Polymer Science, 1991, 42, 1041」で見ることができる。
BB%値=0.245×(η
1−1.47−η
2−1.47)
式中、
η
1は、加熱した後のポリエステル樹脂の固有粘度であり、且つ、
η
2は、加熱する前のポリエステル樹脂の固有粘度である。
【0081】
6.理論的なリン含有量及び実質的なリン含有量
実施例1〜8及び比較例1〜5により得たポリエステル樹脂の理論的なリン含有量は、以下の式により決定した。実施例1〜8及び比較例1〜5により得たポリエステル樹脂の実質的なリン含有量は、誘導結合プラズマ発光分析計(ICP−OES、Perkin−2100)を用いて測定された。
理論的なリン含有量(ppm)=[(A × B × 10
−2)/W]×10
6
式中、
A:安定剤の量、g、
B:安定剤の中のリンの比、wt%、及び、
W:ポリエステル樹脂の総質量、g。
【0086】
理論的なリン含有量から、表1に示されている実施例1〜5の酸価及び反応時間、及び、ポリエステル樹脂製造用の重縮合反応の速度は、製造例1で製造された安定剤の量に実質的に影響されないことが分かり、ポリエステル樹脂の収率は製造例1で製造された安定剤の量に有意な影響を受けないことを示している。また、表1に示されている色調から、実施例1〜5により得たポリエステル樹脂の色調値は、ポリエステル樹脂産業の要求を満たし、よって、本開示の安定剤は、重縮合反応中のポリエステル樹脂の分解を避けることができて、製造されたポリエステル樹脂の分子量及び色調がポリエステル樹脂産業の要求を満たすことを可能にすること、及び、ポリエステル樹脂の製造速度および収率に望ましくない影響を及ぼさないことが示される。
【0087】
一方、表1に示されている比較例1、2の理論的なリン含有量、酸価及び反応時間から、触媒の存在下で引き起こされる重縮合反応中のポリエステル樹脂の分解が、リン酸を安定剤として使用することにより避けられたが、使用したリン酸の量が増えるほどポリエステル樹脂の製造速度が阻害されたことが分かり、ポリエステル樹脂の製造速度及び収率は、使用したリン酸の量により望ましくない影響を受ける可能性があることを示している。
【0088】
表2、3に示されているように、製造例1で製造された安定剤を使用した実施例6〜8において、6時間の固相重合反応により得たポリエステル樹脂は、固有粘度が少なくとも0.7であった。しかしながら、リン酸及びリン酸トリエチル(即ち、リン酸トリエステル)を使用した比較例4、5において、6時間の固相重合反応により得たポリエステル樹脂は、固有粘度が0.7未満であった。これにより、リン酸モノエステル及びリン酸ジエステルの組み合わせを含有する本開示の安定剤は、リン酸及びリン酸トリエステル両者と比べると、より効果的に固相重合反応の反応速度を増進できることが証明された。
【0089】
表4に示されているように、製造例1で製造された安定剤を使用した実施例6〜8において、熱処理した後のポリエステル樹脂の固有粘度変化(即ち、ΔIV)、酸価変化(即ち、Δ[COOH])、色調変化(即ち、ΔLb)及びBB%値は相対的に小さく、実施例6〜8により得たポリエステル樹脂は、相対的に優れた熱安定性を有することを示している。しかしながら、比較例3〜5において、熱処理した後のポリエステル樹脂の固有粘度変化(即ち、ΔIV)、酸価変化(即ち、Δ[COOH])、色調変化(即ち、ΔLb)及びBB%値は相対的に大きく、比較例3〜5により得たポリエステル樹脂は、相対的に劣った熱安定性を有することを示している。これにより、リン酸モノエステル及びリン酸ジエステルの組み合わせを含有する本開示の安定剤は、リン酸及びリン酸トリエステル両者と比べると、製造されるポリエステル樹脂の熱安定性をより効果的に増進できることを証明した。
【0090】
ポリエステル樹脂を加工する従来の手順では、ポリエステル樹脂は通常まずポリエステルペレットに加工され、その後、ボトル、プレートなどの成形品に更に加工される。追加処理における熱処理により、ポリエステル樹脂のBB%値が上昇する。表4に示されている熱処理(即ち、225℃で1時間加熱する)は、従来の手順においてポリエステル樹脂の該追加処理をシミュレーションするものである。表4に示されているように、製造例1に製造された安定剤を使用した実施例6〜8において、該追加処理におけるポリエステル樹脂のBB%値の上昇を有効的に抑制することができる。
【0091】
前述の結果からみると、ポリエステル樹脂の製造に本開示の安定剤を使用する場合、重縮合反応におけるポリエステル樹脂の分解を避けられる。該製造されたポリエステル樹脂は、ポリエステル産業の要求を満たす分子量及び色調を有する。同時に、本開示の安定剤は、ポリエステル樹脂の製造速度及び収率に望ましくない影響を及ぼさなく、且つ、固相重合反応におけるポリエステル樹脂の反応速度及びポリエステル樹脂を更に成形品に成形する加工におけるポリエステル樹脂の熱安定性を増進することができる。
【0092】
上記においては、説明のため、本発明の全体的な理解を促すべく多くの具体的な詳細が示された。しかしながら、当業者であれば、一またはそれ以上の他の実施形態が具体的な詳細を示さなくとも実施され得ることが明らかである。また、本明細書における「一つの実施形態」「一実施形態」を示す説明において、序数などの表示を伴う説明は全て、特定の態様、構造、特徴を有する本発明の具体的な実施に含まれ得るものであることと理解されたい。更に、本説明において、時には複数の変化例が一つの実施形態、図面、またはこれらの説明に組み込まれているが、これは本説明を合理化させるためのもので、また、本発明の多面性が理解されることを目的としたものである。
【0093】
以上、本発明の好ましい実施形態及び変化例を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、最も広い解釈の精神および範囲内に含まれる様々な構成として、全ての修飾および均等な構成を包含するものとする。