特許第6673967号(P6673967)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6673967白色不透明βスポジュメン/ルチルガラス−セラミック、これを含む物品、及びこれを作製するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6673967
(24)【登録日】2020年3月9日
(45)【発行日】2020年4月1日
(54)【発明の名称】白色不透明βスポジュメン/ルチルガラス−セラミック、これを含む物品、及びこれを作製するための方法
(51)【国際特許分類】
   C03C 10/12 20060101AFI20200323BHJP
   C03C 10/02 20060101ALI20200323BHJP
   C03C 10/08 20060101ALI20200323BHJP
   C03C 21/00 20060101ALI20200323BHJP
   C03B 32/02 20060101ALI20200323BHJP
【FI】
   C03C10/12
   C03C10/02
   C03C10/08
   C03C21/00 101
   C03B32/02
【請求項の数】12
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2018-73141(P2018-73141)
(22)【出願日】2018年4月5日
(62)【分割の表示】特願2015-505900(P2015-505900)の分割
【原出願日】2013年4月11日
(65)【公開番号】特開2018-150230(P2018-150230A)
(43)【公開日】2018年9月27日
【審査請求日】2018年5月2日
(31)【優先権主張番号】61/623,905
(32)【優先日】2012年4月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ ハルゼー ビール
(72)【発明者】
【氏名】マリ ジャッケリン モニーク コント
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ オーウェン デール
(72)【発明者】
【氏名】リンダ ルース ピンクニー
(72)【発明者】
【氏名】シャーリーン マリー スミス
(72)【発明者】
【氏名】ロナルド リーロイ スチュワート
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴン アルヴィン ティエトジェ
【審査官】 岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−527105(JP,A)
【文献】 特開2010−018512(JP,A)
【文献】 特表2009−531261(JP,A)
【文献】 特開2002−154840(JP,A)
【文献】 特開2004−099429(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 15/00−23/00
C03C 1/00−14/00
H05K 5/00− 5/06
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス−セラミックにおいて、
a.モル%で、
i.67〜74%のSiO
ii.11〜15%のAl
iii.5.5〜9%のLiO,
iv.0.5〜2%のZnO,
v.2〜4.5%のMgO,
vi.3〜4.5%のTiO
vii.0〜2.2%のB
viii.0〜1%のNaO,
ix.0〜1%のKO,
x.0〜1%のZrO
xi.0〜4%のP
xii.0〜0.1%のFe
xiii.0〜1.5%のMnO,及び
xiv.0.08〜0.16%のSnO
を含む組成、
b.0.7から1.5の間の比:
【数1】
c.0.04より大きい比:
【数2】
d.(i)前記ガラス−セラミックの結晶相の少なくとも70重量%を占め、(ii)1:1:4.5〜1:1:8の範囲の間の1つ以上のLiO:Al:SiO比を有する、1つ以上のβスポジュメン固溶体,
e.少なくとも1つの、
i.前記ガラスセラミックの結晶相の2.5〜8重量%を占める,
ii.≧20nmの長さを示す針状モルフォロジーを有する,及び
iii.ルチルを含む,
Ti含有結晶相,及び
f.400〜700nmの波長範囲にわたり≧85%の、0.8mmの厚さに対する不透明度、
を有することを特徴とするガラス−セラミック。
【請求項2】
(i)前記ガラスセラミックの結晶相の10重量%まで、及び、(ii)スピネル構造、を含む1つ以上の結晶相をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のガラス−セラミック。
【請求項3】
前記ガラス−セラミックがイオン交換されており、該イオン交換されたガラス−セラミックの物品が、その総厚の≧2%の圧縮層の層深さ(DOL)及び前記物品の表面の少なくとも一部に少なくとも300MPaの圧縮応力(σ)を有することを特徴とする請求項1または2に記載のガラス−セラミック。
【請求項4】
前記イオン交換されたガラスセラミックが、
a.0.8MPa・m1/2より大きい破壊靱性、または
b.40000psi(2.76×10Pa)より大きいMOR、または
c.15MHz〜3.0GHzの間の周波数にわたり25℃において決定された、10より小さい誘電定数、または
d.15MHz〜3.0GHzの間の周波数にわたり25℃において決定された、0.02より小さい誘電正接、または
e.総厚が2mmの前記物品の表面の少なくとも一部において、≧40μmの層深さ(DOL)、または
f.総厚が2mmの前記物品の表面の少なくとも一部において、少なくとも500MPaの圧縮応力(σ)、または
g.上記a〜fの内の2つ以上のいずれかの組合せ、
の内の1つ以上を示すことを特徴とする請求項3に記載のガラス−セラミック。
【請求項5】
前記少なくとも1つのTi含有結晶相が、アナターゼ、チタン酸マグネシウム、チタン酸アルミニウムの内のいずれかをさらに含むことを特徴とする請求項1または2に記載のガラス−セラミック。
【請求項6】
さらに、コーディエライトを含むことを特徴とする請求項1または2に記載のガラス−セラミック。
【請求項7】
アナターゼ、チタン酸マグネシウム及びチタン酸アルミニウムの内の1つ以上をさらに含むことを特徴とする請求項1または2に記載のガラス−セラミック。
【請求項8】
前記ガラス−セラミックが、分光光度計を用いる正反射を含む反射率スペクトル測定から決定される、10°の観測角及びCIE光源F02に対する、
a.−3と+3の間のCIE a
b.−6と+6の間のCIE b,及び
c.88と97の間のCIE L
を含むCIELAB色空間座標で表される色を有することを特徴とする請求項1または2に記載のガラス−セラミック。
【請求項9】
前記1つ以上のβスポジュメン固溶体が1:1:4.5〜1:1:7の間の1つ以上のLiO:Al:SiO比を有することを特徴とする請求項1または2に記載のガラス−セラミック。
【請求項10】
前記少なくとも1つのTi含有結晶相が、50nm以上の長さを示す針状モルフォロジーを有することを特徴とする請求項1または2に記載のガラス−セラミック。
【請求項11】
主結晶相としてβスポジュメンを有するガラス−セラミックを作製する方法において、前記方法が、
a.結晶性ガラスを1〜10℃/分のレートで700℃〜810℃の間の核形成温度(Tn)まで加熱する工程、
b.15分間〜120分間、前記結晶性ガラスを前記核形成温度(Tn)に維持して、核形成された結晶性ガラスをつくる工程、
c.前記核形成された結晶性ガラスを1〜10℃/分のレートで850℃〜1250℃の間の結晶化温度(Tc)まで加熱する工程、
d.15分間〜240分間、前記核形成された結晶性ガラスを前記結晶化温度(Tc)に維持して、主結晶相として1つ以上のβスポジュメン固溶体を有するガラス−セラミックを作製する工程、及び
e.ほぼ室温まで前記ガラス−セラミックを冷却する工程、
を含み、
i.前記結晶性ガラスが、モル%で、
(1.) 67〜74%のSiO
(2.) 11〜15%のAl
(3.) 5.5〜9%のLiO,
(4.) 0.5〜2%のZnO,
(5.) 2〜4.5%のMgO,
(6.) 3〜4.5%のTiO
(7.) 0〜2.2%のB
(8.) 0〜1%のNaO,
(9.) 0〜1%のKO,
(10.) 0〜1%のZrO
(11.) 0〜4%のP
(12.) 0〜0.1%のFe
(13.) 0〜1.5%のMnO,及び
(14.) 0.08〜0.16%のSnO
を含み、
(15.) 0.7から1.5の間の比:
【数3】
及び
(16.) 0.04より大きい比:
【数4】
を有し、
ii.前記結晶性ガラスが、
(17.)前記ガラス−セラミックの結晶相の少なくとも70重量%を占め、1:1:4.5〜1:1:8の範囲の間の1つ以上のLiO:Al:SiO比を有する、βスポジュメン固溶体、
(18.)前記ガラス−セラミックの結晶相の2.5〜8重量%を占め、20nm以上の長さを示す針状モルフォロジーを有し、ルチルを含む、Ti含有結晶相、
(19.)400〜700nmの波長範囲にわたり≧85%の、0.8mm厚に対する不透明度、及び
(20.)状況に応じて、
(a.)前記ガラス−セラミックの結晶相の1〜10重量%を占め、
(b.)スピネル構造を含む、
1つ以上の結晶相、
を含む、
ことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1または2に記載の前記ガラス−セラミックに結晶化してなることができる、結晶性ガラスであって、原材料の混合物からの溶融ガラス組成物であることを特徴とする結晶性ガラス。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は2012年4月13日に出願された米国仮特許出願第61/623905号の米国特許法第119条の下の優先権の恩典を主張する。本明細書は上記仮特許出願の明細書の内容に依存し、上記仮特許出願の明細書の内容はその全体が参照として本明細書に含められる、
【技術分野】
【0002】
本開示は、結晶性ガラス(結晶化してガラス−セラミックになる前駆体ガラス)、ガラス−セラミック、イオン交換可能(IX性)ガラス−セラミック、イオン交換された(IX)ガラス−セラミック、これを作製するための方法及びこれを含む物品に関する。特に、本開示は、結晶性ガラス(主結晶相としてβスポジュメン固溶体を含み少結晶相として、ルチルを含む、Ti含有結晶層を含む、結晶化して白色不透明ガラス−セラミックになるように配合された前駆体ガラス)、白色不透明βスポジュメンガラス−セラミック、IX性白色不透明βスポジュメンガラス−セラミック及び/またはIX白色不透明βスポジュメンガラス−セラミック、これを作製するための方法及びこれを含む物品に関する。
【背景技術】
【0003】
過去10年間、(「ポータブルコンピュータデバイス」としばしば称される)ノートブックコンピュータ、電子手帳(PDA)、ポータブルナビゲーションデバイス(PDN)、メディアプレイヤー、携帯電話、ポータブルインベントリーデバイス(PID)、等のような電子デバイスが輻輳するにつれて、同時に、小型、軽量及び機能的に一層強力になっている。そのような小型デバイスの発展及び可用性に寄与する一要因は、縮小し続ける電子コンポーネントサイズによる、計算密度及び動作速度を高めることができる能力である。しかし、一層小型、軽量で機能的にさらに強力なデバイスへのトレンドは、ポータブルコンピュータデバイスのいくつかのコンポーネントのデザインに関する継続的な課題を提示する。
【0004】
ポータブルコンピュータデバイスに付帯するコンポーネントが直面する特定のデザイン課題には様々な内部/電子コンポーネントを収めるために用いられる筐体またはハウジングがある。このデザイン課題は一般に2つの競合するデザイン目標−筐体またはハウジングをさらに軽量にし、薄くするという要望、及び筐体またはハウジングを一層強固にし、さらに堅硬にするという要望−から生じる。一般にいくつかの留め具を有する薄いプラスチック構造体の、より軽量な筐体またはハウジングは、一層可撓性になりがちであり、一般により多くの留め具を有し、より重量がある、より厚いプラスチック構造体である、一層強固でさらに堅硬な筐体またはハウジングとは逆に、座屈及び弓反りをおこし易くする。残念ながら、一層強固でさらに堅硬な筐体またはハウジングの大きくなった重量はユーザに不満を抱かせるであろうし、より軽量な構造体の弓反り及び座屈はポータブルコンピュータデバイスの内部/電子コンポーネントを損なわせ、ほぼ確実にユーザに不満を抱かせるであろう。
【0005】
既知の部類の材料の中に、様々な他の用途で用いられているガラス−セラミックがある。例えば、ガラス−セラミックは、ガステーブル、調理器具及び、ボウル、ディナー用大皿、等のような、食器として、台所で広く用いられている。透明ガラス−セラミックは、オーブン及び/または窯の窓、光学素子、ミラー基板、等の作製に用いられている。ガラス−セラミックは一般に結晶性ガラスを、ガラスマトリックス内の結晶相の核形成及び成長のため、指定された温度において指定された時間をかけて結晶化させることによってつくられる。SiO-Al-LiOガラス系に基づく2つのガラス−セラミックは、主結晶相としてβ石英固溶体(「β石英ss」または「β石英」)または主結晶相としてβスポジュメン固溶体(「βスポジュメンss」または「βスポジュメン」)を有するガラス−セラミックを含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、既存の筐体またはハウジングにともなう上記問題に鑑みて、おそらくは費用効果がより高い態様で、ポータブルコンピュータデバイス用の改善された筐体またはハウジングを提供する、結晶性ガラス(結晶化してガラス−セラミックになるように配合された前駆体ガラス)及び/またはβスポジュメンガラス−セラミック及び/またはIX性βスポジュメンガラス−セラミック及び/またはIXβスポジュメンガラス−セラミックのような材料が必要とされている。また、改善された白色度レベル及び/または不透明色を提供し、同時に、軽量で、強固であり、堅硬な筐体またはハウジングを創造するというデザイン課題に、審美的に満足な態様で、対処するような、材料も必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の実施形態のいくつかの態様及び/または実施形態(「態様及び/または実施形態」)は結晶化してβスポジュメンを主結晶相として有する白色不透明βスポジュメンガラス−セラミックになり得るように配合された結晶性ガラスに関する。そのような結晶性ガラスは、モルパーセント(モル%)で、62〜75%のSiO,10.5〜17%のAl,5〜13%のLiO,0〜4%のZnO,0〜8%のMgO,2〜5%のTiO,0〜4%のB,0〜5%のNaO,0〜4%のKO,0〜2%のZrO,0〜7%のP,0〜0.3%のFe,0〜2%のMnO,及び0.05〜0.2%のSnOを含み、また別の態様においては、モル%で、67〜74%のSiO,11〜15%のAl,5.5〜9%のLiO,0.5〜2%のZnO,2〜4.5%のMgO,3〜4.5%のTiO,0〜2.2%のB,0〜1%のNaO,0〜1%のKO,0〜1%のZrO,0〜4%のP,0〜0.1%のFe,0〜1.5%のMnO,及び0.08〜0.16%のSnOを含む。
【0008】
さらに、結晶性ガラスは、以下の組成基準:
(1)[Al+B]の総モル和に対する[LiO+NaO+KO+MgO+ZnO]の総モル和の比は、0.7から1.5の間、いくつかの別の実施形態においては0.75から1.05の間、また別の態様においては0.8から1の間とすることができるであろう、及び
(2)[SiO+B]の総モル和に対する[TiO+SnO]の総モル和の比は、0.04より大きく、いくつかの別の実施形態においては0.05より大きくすることができる、
を示す。
【0009】
いくつかの態様において、結晶性ガラスは結晶化して、以下の結晶相構成:
(1)1:1;4.5〜1:1:8,あるいは1:1;4.5〜1:1:7の範囲のLiO:Al:SiO比を示し、結晶相の少なくとも70重量%を占める、βスポジュメン固溶体、
(2)a.約2.5〜8重量%の、ガラス−セラミックの結晶相、
b.≧約50nm、いくつかの実施形態においては≧約40nm、いくつかの実施形態においては≧約20nmの長さを示す、針状モルフォロジー、及び
c.ルチル、
を有する、少なくとも1つのTi含有結晶相、及び、状況に応じて、
(3)スピネル構造を示し、1〜10重量%の結晶相を含む、1つ以上の結晶相、
を示す、白色不透明βスポジュメンガラス−セラミックになることができる。
【0010】
別の態様において、結晶性ガラスは結晶化して、不透明性を示し、400〜700nmの波長範囲にわたり≧85%の不透明度を0.8mm厚に対して有する、白色不透明βスポジュメンガラス−セラミックになることができる。
【0011】
本開示のいくつかの他の態様及び/または実施形態は、主結晶相としてβスポジュメンを有する白色不透明βスポジュメンガラス−セラミックに関する。そのような白色不透明βスポジュメンガラス−セラミックは、モル%で、62〜75%のSiO,10.5〜17%のAl,5〜13%のLiO,0〜4%のZnO,0〜8%のMgO,2〜5%のTiO,0〜4%のB,0〜5%のNaO,0〜4%のKO,0〜2%のZrO,0〜7%のP,0〜0.3%のFe,0〜2%のMnO,及び0.05〜0.2%のSnOを含み、また別の態様においては、モル%で、67〜74%のSiO,11〜15%のAl,5.5〜9%のLiO,0.5〜2%のZnO,2〜4.5%のMgO,3〜4.5%のTiO,0〜2.2%のB,0〜1%のNaO,0〜1%のKO,0〜1%のZrO,0〜4%のP,0〜0.1%のFe,0〜1.5%のMnO,及び0.08〜0.16%のSnOを含む。
【0012】
さらに、そのような白色不透明βスポジュメンガラス−セラミックは、以下の組成基準:
(1)[Al+B]の総モル和に対する[LiO+NaO+KO+MgO+ZnO]の総モル和の比は、0.7から1.5の間、いくつかの別の実施形態においては0.75から1.05の間、また別の態様においては0.8から1の間とすることができる、及び
(2)[SiO+B]の総モル和に対する[TiO+SnO]の総モル和の比は、0.04より大きく、いくつかの別の実施形態においては0.05より大きくすることができる、
を示す。
【0013】
いくつかの態様において、そのような白色不透明βスポジュメンガラス−セラミックは、以下の結晶相構成:
(1)1:1;4.5〜1:1:8,あるいは1:1;4.5〜1:1:7の範囲のLiO:Al:SiO比を示し、結晶相の少なくとも70重量%を占める、βスポジュメン固溶体、
(2)a.約2.5〜8重量%の、ガラス−セラミックの結晶相、
b.≧約50nm、いくつかの実施形態においては≧約40nm、いくつかの実施形態においては≧約20nmの長さを示す、針状モルフォロジー、及び
c.ルチル、
を有する、少なくとも1つのTi含有結晶相、及び、必要に応じて、
(3)スピネル構造を示し、1〜10重量%の結晶相を含む、1つ以上の結晶相、
を示す。別の態様において、そのような白色不透明βスポジュメンガラス−セラミックは、不透明性を示し、400〜700nmの波長範囲にわたり≧85%の不透明度を0.8mm厚に対して有する。また別の態様において、そのような白色不透明βスポジュメンガラス−セラミックの表面の領域はイオン交換(IX)処理にかけることができ、よってイオン交換された(IX)白色不透明βスポジュメンガラス−セラミックを得ることができる。
【0014】
本開示のまた別の態様及び/または実施形態は、結晶化して白色不透明βスポジュメンガラス−セラミックになることができるように配合された結晶性ガラスを形成するための方法、及び主結晶相としてβスポジュメンを有する白色不透明βスポジュメンガラス−セラミックを形成するための方法に関する。いくつかの態様において、方法は、モル%で、62〜75%のSiO,10.5〜17%のAl,5〜13%のLiO,0〜4%のZnO,0〜8%のMgO,2〜5%のTiO,0〜4%のB,0〜5%のNaO,0〜4%のKO,0〜2%のZrO,0〜7%のP,0〜0.3%のFe,0〜2%のMnO及び0.05〜0.2%のSnOを含み、また別の態様においては、モル%で、67〜74%のSiO,11〜15%のAl,5.5〜9%のLiO,0.5〜2%のZnO,2〜4.5%のMgO,3〜4.5%のTiO,0〜2.2%のB,0〜1%のNaO,0〜1%のKO,0〜1%のZrO,0〜4%のP,0〜0.1%のFe,0〜1.5%のMnO及び0.08〜0.16%のSnOを含む、結晶性ガラスが融解時につくられるように配合された原材料の混合物を融解する工程を含む。
【0015】
別の態様において、そのような原材料混合物は以下の組成基準:
(1)[Al+B]の総モル和に対する[LiO+NaO+KO+MgO+ZnO]の総モル和の比は、0.7から1.5の間、いくつかの別の実施形態においては0.75から1.05の間、また別の態様においては0.8から1の間とすることができるであろう、及び
(2)[SiO+B]の総モル和に対する[TiO+SnO]の総モル和の比は、0.04より大きく、いくつかの別の実施形態においては0.05より大きくすることができる、
を示す結晶性ガラスが融解時につくられるように配合される。
【0016】
また別の態様において、そのような原材料混合物は、約1600℃より低い温度において溶融ガラス組成物を清澄化及び均質化すると上記結晶性ガラスがつくられるように配合される。さらにまた別の態様は、溶融結晶性ガラスを1つ以上のガラス品に形成する工程を含む。
【0017】
別の態様において、いくつかの他の方法は、結晶性ガラスに転換することによって主結晶相としてβスポジュメンを有するガラス−セラミックを形成するための方法を含む。そのような他の方法は、
(i)結晶化して、主結晶相としてβスポジュメンを有する、ガラス−セラミックになることができるように配合された結晶性ガラスを含むガラス品及び/またはそのような結晶性ガラスを、700℃と810℃の間の範囲にある核形成温度(Tn)まで1〜10℃/分のレートで加熱する工程、
(ii)結晶性ガラスを含むガラス品及び/または結晶性ガラスを、1/4時間から2時間の間の範囲の時間、核形成温度に維持して、核形成結晶性ガラスを含むガラス品及び/または核生成結晶性ガラスをつくる工程、
(iii)核形成結晶性ガラスを含むガラス品及び/または核生成結晶性ガラスを、850℃と1250℃の間の範囲にある結晶化温度(Tc)まで1〜10℃/分のレートで加熱する工程、
(iv)核形成結晶性ガラスを含むガラス品及び/または核生成結晶性ガラスを、約1/4時間から4時間の間の範囲の時間、結晶化温度に維持して、主結晶相としてβスポジュメンを有するβスポジュメンガラス−セラミックを含む物品及び/またはそのようなβスポジュメンガラス−セラミックをつくる工程、及び
(v)ガラス−セラミックを含む物品及び/またはガラス−セラミックを室温まで冷却する工程、
を含む。
【0018】
いくつかの態様において、そのような白色不透明βスポジュメンガラス−セラミックは、以下の結晶相構成:
(1)1:1;4.5〜1:1:8,あるいは1:1;4.5〜1:1:7の範囲のLiO:Al:SiO比を示し、結晶相の少なくとも70重量%を占める、βスポジュメン固溶体、
(2)a.約2.5〜8重量%の、ガラス−セラミックの結晶相、
b.≧約50nm、いくつかの実施形態においては≧約40nm、いくつかの実施形態においては≧約20nmの長さを示す、針状モルフォロジー、及び
c.ルチル、
を有する、少なくとも1つのTi含有結晶相、及び、必要に応じて、
(3)スピネル構造を示し、1〜10重量%の結晶相を含む、1つ以上の結晶相、
を示す。別の態様において、そのような白色不透明βスポジュメンガラス−セラミックは、不透明性を示し、400〜700nmの波長範囲にわたり≧85%の不透明度を0.8mm厚に対して有する。
【0019】
白色不透明βスポジュメンガラス−セラミック。IX性白色不透明βスポジュメンガラス−セラミック及び/またはIX白色不透明βスポジュメンガラス−セラミックを含む物品及び/またはそのようなガラス−セラミックは、コンピュータ及び、「マウス」、キーボード、モニタ(例えば、冷陰極蛍光灯(CCFLバックライトLCD),発光ダイオード(LEDバックライトLCD)、等の内のいずれかとすることができる、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイパネル(PDP)、等)、ゲームコントローラ、タブレット、サムドライブ、外付けドライブ、ホワイトボード、等のような、コンピュータアクセサリ;電子手帳(PDA);ポータブルナビゲーションデバイス(PDN);ポータブルインベントリーデバイス(PID);エンターテイメントデバイス及び/または、センタ、チューナー、(例えば、レコード、カセットテープ、ディスク、固体、等の)メディアプレイヤー、ケーブル及び/または衛星受信器、キーボード、モニタ(例えば、冷陰極蛍光灯(CCFLバックライトLCD),発光ダイオード(LEDバックライトLCD)、等の内のいずれかとすることができる、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイパネル(PDP)、等)、ゲームコントローラ、等のようなデバイス及び/またはセンターアクセサリ;電子書籍リーダーまたはe−リーダー;携帯電話またはスマートフォンのような、無線通信のために構成することができる様々な電子デバイスまたはポータブルコンピュータデバイスに用いることができるであろう。別の例として、白色不透明βスポジュメンガラス−セラミック、IX性白色不透明βスポジュメンガラス−セラミック及び/またはIX白色不透明βスポジュメンガラス−セラミックは、自動車、家庭用電気/ガス器具に、さらには建築用途にも、用いることができるであろう。
【0020】
本開示の、数多くの他の、実施形態の態様、実施形態及び利点が、以下の説明及び添付図面から明らかになるであろう。説明及び/または添付図面において、個々にまたはいずれかの仕方で相互に組み合わされて適用され得る、本開示の態様及び/または実施形態の例が参照される。そのような態様及び/または実施形態は本開示の全範囲を代表してはいない。したがって、本開示の全範囲を読み取るには添付される特許請求の範囲が参照されるべきである。簡潔さ及び簡略さのため、本明細書に述べられるいかなる値の範囲も、その範囲内の全ての値を考えており、該当する指定された範囲内の実数値である端点を有するいかなるサブ範囲も挙げている特許請求項に対する支援と解されるべきである。仮説的説明の例として、約1から5の範囲が本開示に挙げられていれば、これは以下の、1〜5,1〜4,1〜3,1〜2,2〜5,2〜4,2〜3,3〜5,3〜4及び4〜5の範囲のいずれへの主張も支持すると見なされることになる。また、簡潔さ及び簡略さのため、‘is’, ‘are’, ‘includes (含む)’, ‘having (有する)’, ‘comprises (含む)’、等のような語は便宜語であり、限定語と解されるべきではなく、さらに語‘comprises (〜なる)’, ‘consist essentially of (基本的に〜なる)’, ‘consist of (〜なる)’、等を適宜に包含し得ることは当然である。
【0021】
本開示の上記及びその他の太陽、利点及び顕著な特徴は、以下の説明、添付図面及び添付される特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本開示の態様及び/または実施形態にしたがうβスポジュメンガラス−セラミックについての、波長(λ)の関数としての不透明度比を示す。
図2図2は、本開示の態様及び/または実施形態にしたがう、主結晶相としてのβスポジュメン、少結晶相としてのTi含有結晶層及び別の少結晶相としての、存在することもあれば存在しないこともある、スピネル結晶相を示す、βスポジュメンガラス−セラミックの走査型電子顕微鏡(SEM)後方散乱電子像(BEI)写真を示す。
図3図3は、本開示の態様及び/または実施形態にしたがう、主結晶相としてのβスポジュメン、結晶相としての、ルチルを含む、Ti含有結晶層及び別の少結晶相としての、存在することもあれば存在しないこともある、スピネル結晶相を示す、ガラス−セラミックのSEM写真(BEI)を示す。
図4図4は、本開示の態様及び/または実施形態にしたがう、主結晶相としてのβスポジュメン、少結晶相としてのTi含有結晶層及び別の少結晶相としての、存在することもあれば存在しないこともある、スピネル結晶相を示す、ガラス−セラミックのSEM写真(BEI)を示す。
図5図5は、本開示の別の態様及び/または実施形態にしたがう、3つの異なる処理条件(内2つは混合される)を有するイオン交換(IX)処理にかけられたβスポジュメンガラス−セラミックについての、電子線マイクロプローブ分析によって測定されたナトリウム(Na)及びカリウム(K)プロファイルを示す。
図6図6は、本開示のまた別の態様及び/または実施形態にしたがう、異なる2ステップIXにかけられたβスポジュメンガラス−セラミックについての、電子線マイクロプローブ分析によって測定されたナトリウム(Na)及びカリウム(K)プロファイルを示す。
図7図7は、本開示の態様及び/または実施形態にしたがう、無IXβスポジュメンガラス−セラミック(■)及びIXβスポジュメンガラス−セラミック(●)についての、強度(当業者には既知の、ASTM C1499に説明されている、機械的/摩耗リングオンリング法によって得られるピーク荷重)のワイブルプロットを示す。
図8図8は、本開示の態様及び/または実施形態にしたがう、βスポジュメンガラス−セラミックについての、結晶成長(すなわち結晶化温度{Tc})の関数としての破壊靱性を示す。
図9図9は、コーニング(Corning)Gorilla(登録商標)アルカリアルミノケイ酸ガラス(■,◆)及び本開示の態様及び/または実施形態にしたがう結晶性ガラスを用いてつくられたβスポジュメンガラス−セラミック(□,◇)についての、周波数の関数としての誘電正接(◇,◆)及び誘電定数(□,■)を示す。
図10図10は、IXβスポジュメンガラス−セラミックの断面及び付随する特性パラメータ:図5及び6の濃度プロファイルのようなナトリウム(Na)及び/またはカリウム(K)の濃度プロファイルから決定され得る、IXβスポジュメンガラス−セラミックの表面における圧縮応力(σ)、平均表面圧縮(CS平均)、平均中心張力(CT平均)、サンプル厚(t)及び層深さ(DOL,応力が表目圧縮力から中心張力に変わる結果、符号を変える(すなわちゼロになる)サンプル内の場所までのサンプル表面からの垂直距離である)の略図を示す。
図11図11は、本開示の態様及び/または実施形態にしたがう、βスポジュメンガラス−セラミックのNaNO IX浴内での210℃から430℃の温度における1時間から10時間の処理により形成された、IXβスポジュメンガラス−セラミックの層深さ(DOL)をIX温度(すなわち、x軸)及びIX時間の関数(すなわち、1時間が最下位にあり、10時間が最上位にある、曲線群)として示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本開示の態様及び/または実施形態の例の以下の説明においては、本開示の一部をなし、本開示が実施され得る特定の態様及び/または実施形態の例証として示される、添付図面が参照される。これらの態様及び/または実施形態は当業者による本開示の実施を可能にするに十分に詳細に説明されるが、それにもかかわらず、それによる本開示の範囲の限定は目的とされていないことは理解されるであろう。本開示の恩恵を得ている当業者には浮かぶであろう、本開示に説明される特徴の変更及びさらなる改変、及び本開示に説明される原理の別の用途は、本開示の範囲内にあると見なされるべきである。詳しくは、他の態様及び/または実施形態を用いることができ、本開示の精神または範囲を逸脱することなく、(例えば、無制限で、化学的、組成上{例えば、無制限で、化学薬品、材料、等のいずれか1つ以上}、電気的、電気化学的、電気−光的、機械的、光学的、物理的、物理化学的、等)の論理的変更、及びその他の変更がなされ得る。したがって、以下の説明は限定の意味でとられるべきではなく、本開示の態様及び/または実施形態の範囲は添付される特許請求の範囲によって定められる。「天(上)」、「地(底)」、「外向き」、「内向き」、等の語は、便宜語であり、限定語と解されるべきではないことも当然である。また、本開示に別途に指定されない限り、値の範囲は範囲の上限及び加減のいずれも含む。例えば、約1〜10モル%の間の範囲は1モル%及び10モル%の値を含む。
【0024】
上述したように、本開示の様々な態様及び/または実施形態は、本開示の、白色不透明βスポジュメンガラス−セラミック、IX性白色不透明βスポジュメンガラス−セラミック及び/またはIX白色不透明βスポジュメンガラス−セラミックの内の1つ以上で形成されているかまたはこれらの内の1つ以上を含む、物品及び/または機械または装置に関する。一例として、白色不透明βスポジュメンガラス−セラミック、IX性白色不透明βスポジュメンガラス−セラミック及び/またはIX白色不透明βスポジュメンガラス−セラミックは、コンピュータ及び、「マウス」、キーボード、モニタ(例えば、冷陰極蛍光灯(CCFLバックライトLCD),発光ダイオード(LEDバックライトLCD)、等の内のいずれかとすることができる、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイパネル(PDP)、等)、ゲームコントローラ、タブレット、サムドライブ、外付けドライブ、ホワイトボード、等のような、コンピュータアクセサリ;電子手帳(PDA);ポータブルナビゲーションデバイス(PDN);ポータブルインベントリーデバイス(PID);エンターテイメントデバイス及び/またはセンタ、チューナー、(例えば、レコード、カセットテープ、ディスク、固体、等の)メディアプレイヤー、ケーブル及び/または衛星受信器、キーボード、モニタ(例えば、冷陰極蛍光灯(CCFLバックライトLCD),発光ダイオード(LEDバックライトLCD)、等の内のいずれかとすることができる、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイパネル(PDP)、等)、ゲームコントローラ、等のようなデバイス及び/またはセンターアクセサリ;電子書籍リーダーまたはe−リーダー;携帯電話またはスマートフォン、等のような、無線通信のために構成することができる様々な電子デバイスまたはポータブルコンピュータデバイスに用いることができるであろう。別の例として、白色不透明βスポジュメンガラス−セラミック、IX性白色不透明βスポジュメンガラス−セラミック及び/またはIX白色不透明βスポジュメンガラス−セラミックは、自動車、家庭用電気/ガス器具に、さらには建築用途にも、用いることができるであろう。この目的のため、結晶化ガラスはさらに、複雑な形状への製作作業に適合するように、十分に低い軟化点及び/または十分に小さい熱膨張係数を有するように配合されることが望ましい。
【0025】
本開示の態様及び/または実施形態にしたがう、主結晶相としてβスポジュメンを有する白色不透明βスポジュメンガラス−セラミックは、モル%で、62〜75%のSiO,10.5〜17%のAl,5〜13%のLiO,0〜4%のZnO,0〜8%のMgO,2〜5%のTiO,0〜4%のB,0〜5%のNaO,0〜4%のKO,0〜2%のZrO,0〜7%のP,0〜0.3%のFe,0〜2%のMnO,及び0.05〜0.2%のSnOを含み、また別の態様においては、モル%で、67〜74%のSiO,11〜15%のAl,5.5〜9%のLiO,0.5〜2%のZnO,2〜4.5%のMgO,3〜4.5%のTiO,0〜2.2%のB,0〜1%のNaO,0〜1%のKO,0〜1%のZrO,0〜4%のP,0〜0.1%のFe,0〜1.5%のMnO,及び0.08〜0.16%のSnOを含む。
【0026】
いくつかの態様において、そのようなガラス−セラミックは、以下の組成基準:
(1)[Al+B]の総モル和に対する[LiO+NaO+KO+MgO+ZnO]の総モル和の比は、0.7から1.5の間、いくつかの別の実施形態においては0.75から1.05の間、また別の態様においては0.8から1の間とすることができる、及び
(2)[SiO+B]の総モル和に対する[TiO+SnO]の総モル和の比は、0.04より大きく、いくつかの別の実施形態においては0.05より大きくすることができる、
を示す。
【0027】
いくつかの別の態様において、そのようなガラス−セラミックは、以下の結晶相構成:
(1)1:1;4.5〜1:1:8,あるいは1:1;4.5〜1:1:7の範囲のLiO:Al:SiO比を示し、結晶相の少なくとも70重量%を占める、βスポジュメン固溶体、
(2)a.約2.5〜8重量%の、ガラス−セラミックの結晶相、
b.≧約50nm、いくつかの実施形態においては≧約40nm、いくつかの実施形態においては≧約20nmの長さを示す、針状モルフォロジー、及び
c.ルチル、
を有する、少なくとも1つのTi含有結晶相、及び、状況に応じて、
(3)スピネル構造を示し、1〜10重量%の結晶相を含む、1つ以上の結晶相、
を示す、白色不透明βスポジュメンガラス−セラミックになることができる。
【0028】
また別の態様において、結晶性ガラスは結晶化して、不透明性を示し、400〜700nmの波長範囲にわたり≧85%の不透明度を0.8mm厚に対して有する、
を示す。
【0029】
さらにまた別の態様において、約350nm〜800nmの間で得られた測定結果がCIE光源F02に対するLIELAB色空間座標で示される場合、そのようなガラス−セラミックは88と97の間の範囲にある明度(L)レベル、いくつかの実施形態においては90と95の間の範囲にあるLレベルを示す。別の態様において、同じくCIE光源F02に対するLIELAB色空間座標の結果を示せば、そのようなガラス−セラミック品は−3と+3の間の範囲にあるa値及び−6と+6の範囲にあるb値を示し、いくつかの別の態様においては、−2と+2の間の範囲にあるa値及び−5.5と+5.5の範囲にあるb値を示し、また別の態様においては、−1と+1の間の範囲にあるa値及び−4と+4の範囲にあるb値を示す。
【0030】
上述したように、比:
【0031】
【数1】
【0032】
は0.7から1.5の間とすることができ、いくつかの別の態様においては0.75から1.05の間、0.8から1の間とすることができる。出願人等は、この前もって指定された比の値を有するように結晶性ガラスを配合することにより、そのような結晶性ガラスを用いて作製されたガラス−セラミックが、主結晶相及び少結晶相の組成及び/または量及び/または構造を含む、所望の特性を有するように作製できることを見いだした。例えば、修飾酸化物対アルミナモル比は、ガラス−セラミックがβスポジュメン、ルチルを含むTi含有結晶相、スピネル固溶体及び残余ガラスの1つ以上を、それぞれが規定された所望の量で存在し、同時に、規定された所望の組成及び/または構造及び/または分布を有するように、含むように規定することができる。この目的のため、修飾酸化物対アルミナモル比は、結晶性ガラスの特性及び/または処理性に、続いて、その結晶性ガラスからつくられるガラス−セラミックの特性及び/または性質に影響する。例えば、修飾酸化物対アルミナモル比は、結晶性ガラス組成のガラス転移温度(Tg)に、また、主結晶相(例えばβスポジュメン)及び少結晶相(例えば、Ti含有結晶相、スピネル固溶体、β石英、等)の核形成温度(Tn)範囲及び/または結晶化温度(Tc)範囲にも、影響する。この態様において、結晶化ガラスは、この比の値が実用的な転換スケジュール(例えば核形成及び結晶化の温度及び/または時間)を可能にし、同時に、前もって指定された色座標が反復して確実に達成され得ることを特徴とするガラス−セラミックの形成を可能にするように、配合される。
【0033】
上述したように、「主結晶相としてβスポジュメン固溶体」(あるいは、「主結晶相としてβスポジュメンss」または「主結晶相としてβスポジュメン」と称される)を示すかまたは有する、本開示の態様及び/または実施形態にしたがうガラス−セラミックは、本開示の態様及び/または実施形態にしたがうガラス−セラミックの全結晶相の内の重量で約70%(重量%)より多くをβスポジュメン固溶体(あるいは、「βスポジュメンss」または「βスポジュメン」と称される)が占めることを意味する。本開示の態様及び/または実施形態にしたがうガラス−セラミックの可能な他の結晶相の非限定的例には、β石英固溶体(「β石英ss」または「β石英」)、βユークリプタイト固溶体(「βユークリプタイトss」または「βユークリプタイト」)、スピネル固溶体({例えば、ガーナイト、等のような}「スピネルss」または「スピネル」)、(例えば、ルチル、アナターゼ、{カルーアイト(karooite)(MgTi)、等のような}チタン酸マグネシウム、{タイライト(tielite)(AlTiO)、等のような}チタン酸アルミニウム、等のような)Ti含有結晶相、(例えば、{Mg,Fe}Al{SiAlO18}〜{Fe, Mg}Al{SiAlO18}のような)コージェライト、等がある。
【0034】
本開示の態様及び/または実施形態にしたがうβスポジュメンガラス−セラミックにおいてβスポジュメン固溶体が優勢であることは、そのようなガラス−セラミックが、IXガラスセラミックを作製するために1つ以上のIX処理にかけられる場合に有利であり得る。例えば、βスポジュメンの構造は、Liイオンが様々な陽イオン(例えば、Na,K,Rb,等のイオン)と交換されるときに、ガラスネットワークの破壊をおこさない柔軟性を示すことができる。
【0035】
本開示のいくつかの態様及び/または実施形態にしたがえば、βスポジュメンガラス−セラミックは不透明である及び/または白色であるとして特徴を表すことができる。そのような場合、出願人等は、所望の不透明度及び/または所望の白色度レベルを達成するため、そのようなβスポジュメンガラス−セラミックが、少結晶相としてルチルを含む1つ以上のTi含有結晶相を含むことを見いだした。そのような1つ以上のTi含有結晶相の例には、ルチル(TiO)及び、状況に応じて、アナターゼ(TiO)、カルーアイト(MgTi)、タイライト(AlTiO)等のいずれかがあり、またこれらの混合物を含めることができる。所望の不透明度及び白色度レベルを達成することが望ましい場合、出願人等は、所望の不透明度及び白色度レベルを達成するため、そのようなβスポジュメンガラス−セラミックが、ルチルを含み、いくつかの態様においては≧約20nmの長さ、いくつかの態様においては≧約40nmの長さ、いくつかの態様においては≧50nmの長さ、別の態様においては≧110nmの長さ、また別の態様においては≧1μmの長さ、いくつかの場合には2μmまでの長さを示す針状結晶であり得る1つ以上のTi含有結晶相を含むことを見いだした。
【0036】
スピネルはABの一般式及び立方晶基本構造を有する結晶酸化物である。原型スピネル構造はアルミン酸マグネシウム(MgAl)の結晶構造である。基本スピネル構造において、O原子は面心立方(f.c.c)格子のサイトを占め、A原子はf.c.c構造内で四面体サイト(Aサイト)のいくつかを占め、B原子はf.c.c構造内で八面体サイト(Bサイト)を占める。正スピネルにおいて、A原子とB原子は異なり、Aは+2価イオンであり、Bは+3価イオンである。無秩序スピネルにおいて、+2価イオンと+3価イオンはAサイトとBサイトにわたって無秩序に分布する。逆スピネルにおいては、Bサイトに等しい数の+2価イオンと+3価イオンが混在する結果、Aサイトを+2価イオンが占めることができ、またA原子とB原子は同じであり得る。いくつかの例において、+2価イオン、+3価イオン及び/または+4価イオンがAサイトを占めることができ、同じかまたは他の例において、+2価イオン、+3価イオン及び/または+4価イオンがBサイトを占めることができる。A原子のいくつかの例には、亜鉛、ニッケル、マンガン、マグネシウム、鉄、銅、コバルト、等がある。また、B原子のいくつかの例には、アルミニウム、アンチモン、クロム、鉄、マンガン、チタン、バナジウム、等がある、スピネルでは広い範囲の固溶体が普通であり、(A1−x)[B2−y]Oの一般式で表すことができる。例えば、ZnAlとMgAlの間に、(ZnMg1−x)Alの化学式で表すことができる、完全な固溶体が得られる。本開示のいくつかの態様及び/または実施形態にしたがえば、βスポジュメンガラス−セラミックは、態様においてガーナイトZnAlの組成に非常に近い組成を有する、スピネル構造を示す1つ以上の結晶相を含む。ZnOまたはZnOとAlの量が増加するにつれて、そのようなβスポジュメンガラス−セラミック内のガーナイト量が増加し得ることも見いだされた。ガーナイトの屈折率(n)は、βスポジュメンの屈折率(n=1.53〜1.57の間)より高いが、ルチルの屈折率(n=2.61〜2.89の間)よりはかなり低い、1.79〜1.82の間の範囲にあり得る。また、正方晶であるβスポジュメン及びルチルとは対照的に、立方晶のスピネルが複屈折を示すことはできない。したがって出願人等は、スピネルは一般に、またTi含有スピネルは特に、βスポジュメンガラス−セラミックの色に与える影響がルチルよりも小さいと考えている。
【0037】
βスポジュメンガラス−セラミックがルチルを含むTi含有結晶相を含む場合の、本開示の実施形態の態様において、Ti含有結晶相は結晶相の2.5重量%から6重量&の間の範囲にあり得る。出願人等は、ルチルを結晶相の少なくとも2.5重量%に維持することによって所望の最小不透明度レベルが保証され得るが、一方で、ルチルを結晶相の6重量%以下に維持することによって所望の不透明度レベルを維持することができ、同時に所望の白色度レベルが保証され得ることを見いだした。言い換えれば、βスポジュメンガラス−セラミックのTiO含有量は2〜5モル%の間の範囲とすることができ、少なくとも2モル%に維持することによって所望の最小不透明度レベルを保証することができ、一方で、5モル%以下に維持することによって所望の最小不透明度レベルを維持することができ、同時に所望の白色度レベルを保証することができる。
【0038】
比較のため、いくつかの材料について屈折率(n)を降順に挙げれば、ルチル(n=2.61〜2.89の間)、アナターゼ(n=2.48〜2.56の間)、ダイアモンド(n=2.41〜2.43の間)、ガーナイト(n=1.79〜1.82の間)、サファイア(n=1.75〜1.78の間)、コージェライト(n=1.52〜1.58の間)、βスポジュメン(n=1.53〜1.57の間)及び残余ガラス(n=1.45〜1.49の間)である。比較のため、同じ材料の内のいくつかについて複屈折(Δn)も降順に挙げれば、ルチル(Δn=0.25〜0.29の間)、アナターゼ(Δn=0.073)、サファイア(Δn=0.008)、コージェライト(Δn=0.005〜0.017の間)、ダイアモンド(Δn=0)及びガーナイト(Δn=0)である。上記データに基づけば、Ti含有結晶相のいくつか、特にルチルが、これらの材料の中で最も高い屈折率のいくつかを示していることがわかる。さらにまた、Ti含有結晶相のいくつか、特にルチルが、それぞれの正方晶構造の異方性の結果、比較的高い複屈折(Δn)を有することもわかる。主結晶相(例えば、βスポジュメン(n=1.53〜1.57の間))及び/またはいずれの残余ガラス(n=1.45〜1.49の間)及びいずれのガラス−セラミックの少結晶相の間で、屈折率と複屈折のいずれの差も大きくなるから、可視波長の散乱が大きくなり、したがって不透明度を高めることができる。それぞれの特性における差だけでも有益であり得るが、両特性における差はさらに一層有益である。Ti含有結晶相のいくつか、特にルチル、と基本相(βスポジュメン及びいずれの残余ガラス)の間に両特性における差があるから、本開示のβスポジュメンガラス−セラミックは、比較的高い、所望のレベルの散乱を示し、よって、同様に高くすることができる、必須で所望の不透明度を示す。
【0039】
Alは、主結晶相としてβスポジュメンを示す、本開示のβスポジュメンガラス−セラミックに寄与する。したがって、最少で10.5モル%のAlが望ましい。17モル%をこえるAlは、生じる液相ムライトが結晶性ガラスの融解及び形成を困難にするから、望ましくない。
【0040】
NaO及びKOを含めると、結晶化ガラスの融解温度を低めることができ、及び/または結晶化サイクルの短縮化が可能になる。
【0041】
本開示の結晶性ガラス及び/またはβスポジュメンガラス−セラミックは0〜4モル%のBを含有する。本開示の結晶性ガラスは一般に1600℃より低く、いくつかの態様及び/または実施形態においては約1580℃より低く、幾つかの他の態様及び/または実施形態においては約1550℃より低い、温度で融解することができ、比較的小さい市販のガラス槽での融解が可能になる。Bを含めると融解温度が低くなる。
【0042】
MgO及びZnOは結晶性ガラスに対してフラックスとしてはたらくことができる。したがって、1600℃より低いガラス融解温度を得るためには、2モル%の最小[MgO+ZnO]モル%和が望ましい。Mgのイオン及び、程度は低いが、Znのイオンは、βスポジュメンガラス−セラミックのβスポジュメンに寄与し得る。
【0043】
結晶性ガラス内のLiOを5〜13モル%に維持すると、βスポジュメン固溶体結晶相の形成が促進される。また、LiOは結晶性ガラスの融点を低めるためのフラックスとしてもはたらく。したがって、所望のβスポジュメン相を得るためには最少で5モル%のLiOが望ましい。13モル%をこえるLiOは、ケイ酸リチウム、等のような望ましくない相がガラス−セラミックの形成中に生じ得るであろうから望ましくないことであり得る。
【0044】
核形成及び/または結晶加熱処理中の、主結晶相としての少なくともβスポジュメンの、及び望ましい1つ以上の少結晶相のいずれもの、核形成及び/または成長を容易にするための適切なタイプ及び量の1つ以上の核形成剤が結晶化ガラスに含められる。とりわけ適切なタイプの1つ以上の核形成剤はTiO,ZrO,等であり、とりわけ適切な量は、TiOで6モル%まで、ZrOで2モル%まで、等である。少量のSnOが固溶体でルチル相に入るようであり、したがって核形成に寄与し得るであろう。態様及び/または実施形態において、出願人等は、規定された不透明度及び白色度レベルを達成するために1つ以上のTi含有相の形成が望ましい場合、核形成剤としてTiOを含めることが望ましいことを見いだした。他の態様及び/または実施形態において、核形成剤としてZrOを含めると核形成効率を高めることができる。したがって、1つ以上の核形成剤のタイプ及び量は慎重に規定される。(状況に応じてβ石英固溶体を示す)βスポジュメンガラス−セラミックに関するいくつかの態様及び/実施形態において、2.5モル%をこえる[TiO+SnO]の最少モル%和が結晶性ガラスの構成成分として望ましいことに注意されたい。言い換えれば、効率的態様で核形成がおこり、あらかじめ選ばれた、適切な結晶相構成への成長が達成されるように、このモル%和の量の[TiO+SnO]の有効量が結晶性ガラスの構成成分として配合される。6モル%をこえるTiOは、生じる高濃度液相ルチルが結晶化ガラスの成形中の困難さを高める可能性を有するから、望ましくないことに注意されたい。SnOを含めると、その核形成への可能な小さい寄与に加えて、結晶性ガラスの製造中に、結晶性ガラスの品質及び完全性に寄与するための清澄化剤としてある程度機能し得ることにも注意されたい。
【0045】
いくつかの態様においては0.04より大きく、幾つかの他の態様においては0.05より大きい、比:
【0046】
【数2】
【0047】
を維持することは、あらかじめ選ばれた適切な結晶相構成の達成に寄与することができ、続いて、規定された不透明度及び/または白色度レベルの達成に寄与することができる。
【0048】
態様及び/または実施形態にしたがうβスポジュメンガラス−セラミック及びその結晶性ガラスにおいても、出願人等は、1:1:4.5〜1:1:8の間のLiO:Al:nSiO比を示すβスポジュメン結晶相が望ましいことを見いだした。したがって、得られるβスポジュメンガラス−セラミック内の過剰なレベルの残余ガラスの形成を避けるためには、1:1:4.5の最小比が望ましい。1:1:8をこえる比は結晶性ガラスの融解性に関わる問題が生じ得るから望ましくない。
【0049】
本開示の態様及び/または実施形態にしたがうβスポジュメンガラス−セラミックが示し得るその他の特性には、
(1)15MHzから3.0GHzの周波数範囲において、0.03より小さい誘電正接で定められるような、無線周波数及びマイクロ波周波数透過性、
(2)1MPa・m1/2より高い破壊靱性、
(3)20000psi(1.38×10Pa)より大きい破壊係数(MOR)、
(4)少なくとも400kg/mmのヌープ硬度、
(5)4W/m℃より低い熱伝導度、及び
(6)0.1体積%より低い多孔度、
の内の1つ以上がある。
【0050】
(それぞれがある程度または完全にβスポジュメンガラス−セラミックからなる)一般には物品に、特に電子デバイスのハウジングまたは筐体に、関する態様及び/実施形態において、そのような物品及び/またはβスポジュメンガラス−セラミックはいくつかの態様においては0.02より小さく、別の態様においては0.01より小さく、また別の態様においては0.005より小さい、誘電正接で定められるような、無線周波数及びマイクロ波周波数透過性を示し、この誘電正接は約25℃において15MHzから3.0GHzまでの周波数範囲にわたって決定される。この無線周波数及びマイクロ波周波数透過性という特徴は、筐体内部にアンテナを有する無線携帯デバイスに特に有益であり得る。この無線周波数及びマイクロ波周波数透過性により、無線信号のハウジングまたは筐体の通過が可能になり、いくつかの場合にはそのような透過を強めることが可能になる。別の利点は、そのような物品及び/またはβスポジュメンガラス−セラミックが、約25℃において15MHzから3.0GHzまでの周波数範囲にわたって決定される、約10より小さく、あるいは約8より小さく、さらには約7より小さい、誘電定数を上記の誘電正接値と組み合わせて示す場合に、実現され得る。
【0051】
化学的に強化されたβスポジュメンガラス−セラミックに関する、本開示のまた別の態様及び/または実施形態において、そのようなIXβスポジュメンガラス−セラミックは、0.8MPa・m1/2より高く、あるいは0.85MPa・m1/2より高く、さらには1MPa・m1/2より高い、破壊靱性を示す。上述の破壊靱性に無関係に、または組み合わせて、そのようなIXβスポジュメンガラス−セラミックは、40000psi(2.76×10Pa)より大きく、あるいはさらに50000psi(3.45×10Pa)より大きい、MORを示す。
【0052】
本開示の別の態様及び/または実施形態は、結晶化してガラス−セラミックになるように配合された結晶性ガラスを形成するための方法及び主結晶相としてβスポジュメンを含むガラス−セラミックを形成するための方法に関する。態様において、いくつかの方法は、モル%で、62〜75%のSiO,10.5〜17%のAl,5〜13%のLiO,0〜4%のZnO,0〜8%のMgO,2〜5%のTiO,0〜4%のB,0〜5%のNaO,0〜4%のKO,0〜2%のZrO,0〜7%のP,0〜0.3%のFe,0〜2%のMnO及び0.05〜0.2%のSnOを含み、また別の態様においては、モル%で、67〜74%のSiO,11〜15%のAl,5.5〜9%のLiO,0.5〜2%のZnO,2〜4.5%のMgO,3〜4.5%のTiO,0〜2.2%のB,0〜1%のNaO,0〜1%のKO,0〜1%のZrO,0〜4%のP,0〜0.1%のFe,0〜1.5%のMnO及び0.08〜0.16%のSnOを含む、結晶性ガラスが融解時につくられるように配合された原材料の混合物を融解する工程を含む。
【0053】
別の態様において、そのような原材料混合物は以下の組成基準:
(1) [Al+B]の総モル和に対する[LiO+NaO+KO+MgO+ZnO]の総モル和の比は、0.7から1.5の間、いくつかの別の実施形態においては0.75から1.05の間、また別の態様においては0.8から1の間とすることができるであろう、及び
(2)[SiO+B]の総モル和に対する[TiO+SnO]の総モル和の比は、0.04より大きく、いくつかの別の実施形態においては0.05より大きくすることができる、
を示す結晶性ガラスが融解時につくられるように配合される。さらにまた別の態様において、そのような原材料混合物は、約1600℃より低い温度において溶融ガラス組成物を清澄化及び均質化すると上記結晶性ガラスがつくられるように配合される。さらにまた別の態様は、溶融結晶性ガラスをガラス品に形成する工程を含む。
【0054】
別の態様において、いくつかの他の方法は、結晶性ガラスに転換することによって主結晶相としてβスポジュメンを有するガラス−セラミックを形成するための方法を含む。そのような他の方法は、
(i)結晶化して、主結晶相としてβスポジュメンを有する、ガラス−セラミックになることができるように配合された結晶性ガラスを含むガラス品及び/またはそのような結晶性ガラスを、700℃と810℃の間の範囲にある核形成温度(Tn)まで1〜10℃/分のレートで加熱する工程、
(ii)核形成結晶性ガラスを含むガラス品及び/または核生成結晶性ガラスをつくるため、結晶性ガラスを含むガラス品及び/または結晶性ガラスを、1/4時間から2時間の間の範囲の時間、核形成温度に維持する工程、
(iii)核形成結晶性ガラスを含むガラス品及び/または核生成結晶性ガラスを、850℃と1250℃の間の範囲にある結晶化温度(Tc)まで1〜10℃/分のレートで加熱する工程、
(iv)主結晶相としてβスポジュメンを有するβスポジュメンガラス−セラミックを含む物品及び/またはそのようなβスポジュメンガラス−セラミックをつくるため、核形成結晶性ガラスを含むガラス品及び/または核生成結晶性ガラスを、約1/4時間から4時間の間の範囲の時間、結晶化温度に維持する工程、及び
(v)βスポジュメンガラス−セラミックを含む物品及び/またはβスポジュメンガラス−セラミックを室温まで冷却する工程、
を含む。
【0055】
結晶性ガラスに加えて、工程(iii)及び(iv)の温度−時間プロファイルは、所望の、主結晶相としてβスポジュメン固溶体及び1つ以上の少結晶相として、ルチルを含む、Ti含有結晶相;主結晶相及び/または(1つ以上の)少結晶相及び残余ガラスの所望の比率;主結晶相及び/または(1つ以上の)少結晶相及び残余ガラスの所望の結晶相構成;主結晶相及び/または(1つ以上の)少結晶相の所望の結晶粒径または結晶粒径分布;及び、したがって、本開示の態様及び/または実施形態にしたがって得られるガラス−セラミック及び/またはガラス−セラミック品の、最終の完全性、品質、色及び/または不透明度が得られるように、慎重に規定される。
【0056】
原材料の選択に関し、SiO源として低鉄含有量の砂の使用が推奨される。酸処理の前に、砂及び他のバッチ材料の鉄レベルを低めることが必要になり得る。バッチ材料の処理自体が鉄酸化物を取り込まないことを確認することが重要である。B源として無水ホウ酸を用いることができる。出発材料として、スポジュメン、微粒アルミナ及びメタリン酸アルミニウムを用いることができる。当業者であれば、ガラス−セラミックの予想される最終組成にしたがって、用いられるバッチ材料の量を計算することができる。上述したように、有益であることがわかっている清澄化剤は、約0.05〜0.15モル%のSnOである。
【0057】
混合バッチ材料は次いでガラス槽に投入され、通常のガラス融解プロセスにしたがって融解される。ガラス融解担当技術者であれば、ガラス融解槽の動作容量及び温度に適合させるため、上述した組成範囲内でバッチの組成を調節してガラスの融解容易性を微調整することができる。溶融ガラスは従来方法を用いて均質化及び清澄化することができる。1600℃をこえる融点を有するいくつかのガラスも結晶化させてβ石英及び/またはβスポジュメン固溶体ガラス−セラミックを形成することはできるが、そのような高温融解は通常、高価な特別設計の融解槽内で行われなければならない。さらに、そのような高融点ガラスの液相挙動は通常、より高温のプレス成形及び金型成形を必要とする。
【0058】
均質化及び清澄化され、温度が一様な溶融ガラスは次いで所望の形状に成形される。流し込成形、金型成形、プレス成形、圧延、フローティング、等のような、様々な成形法を用いることができる。一般に、ガラスは液相粘度より低い粘度において(したがって、液相温度より高い温度で)成形されるべきである。例としてプレス成形をとり上げる。ガラスは初めに、プランジャーを用いて、高温の金型に送られ、所望の形状、表面構造及び表面粗さを有するガラス品に成形される。小さい表面粗さ及び精密な表面輪郭を得るためには、ガラス塊を金型に押し込んで充填するために精密プランジャーが必要である。高IR透過が必要であるべきガラス品の表面上にプランジャーがIR吸収性酸化物または他の欠陥を導入しないであろうことも必要である。次いで成形品が金型から取り出され、必要であり、望ましい、以降の処理のために成形品から応力を十分に取り除くため、ガラスアニール炉に移される。その後、冷却されたガラス成形品は、品質管理目的のため、検査され、化学特性及び物理特性が分析される。製品仕様が守られているか否かを見るため、表面粗さ及び輪郭が検査され得る。
【0059】
本開示のガラス−セラミック品を作製するため、上のようにつくられたガラス品は結晶化炉に入れられて、結晶化プロセスにかけられる。炉の温度−時間プロファイルはプログラム制御され、ガラス成形品及び、ガラス板等のような、その他のガラス品が主結晶相としてβスポジュメンを有するガラス−セラミック品になることを保証するために最適化されることが望ましい。上述したように、ガラス組成及び結晶化プロセス中の熱履歴が、最終結晶相、最終結晶相構成及び最終製品における結晶の大きさを決定する。一般に、ガラス品は初めに、結晶核ができ始める核形成温度(Tn)範囲まで加熱される。続いて、βスポジュメン結晶化を達成するため、ガラス品はさらに高い最大結晶化温度Tcまで加熱される。結晶化が所望の程度まで進むような時間にわたり、ガラス品をTcに保つことが望ましいことが多い。本開示のガラス−セラミック品を得るための、核形成温度Tnは700〜810℃の間であり、最大結晶化温度Tcは850℃〜1250℃の間である。結晶化後、ガラス−セラミック品を結晶化炉から出して室温まで冷却することができる。当業者であれば、上記の範囲内の様々なガラス組成に合わせるため、結晶化サイクルのTn、Tc及び温度−時間プロファイルを調節することができる。本開示のガラス−セラミック品は不透明な白色を呈し得ることが有利である。
【0060】
本開示のガラス−セラミック品は最終の目的とする使用の前にさらに処理され得る。そのような後処理の1つに、ガラスセラミック品の少なくとも一方の表面の少なくとも一部がIXプロセスにかけられた、少なくとも一方の表面のIX部分が、ガラス−セラミック品の総厚の2%以上の層深さ(DOL)を有する圧縮層を有し、同時に、表面内に少なくとも300MPaの圧縮応力(σ)を示すような、IXガラス−セラミック品を形成するためのガラス−セラミック品のIX処理を含む。上記のDOL及び圧縮応力(σ)が達成される限り、当業者に知られるいかなるIXプロセスも適し得るであろう。
【0061】
さらに詳しい実施形態において、ハウジングまたは筐体は、2mmの総厚を有し、40μmのDOLを少なくとも500MPaの圧縮応力(σ)を示す圧縮層とともに有する。この場合も、これらの特徴を達成するいかなるIXプロセスも適し得る。
【0062】
一工程IXプロセスに加えて、複IX工程手順を用いて性能強化のために設定されたIXプロファイルをつくることができるであろうことに注意されたい。すなわち、異なるイオン濃度で調製された複数のIX浴を用いることにより、または異なるイオン半径を有する異なるイオン種を用いて調製された複数のUX浴を用いることにより、選ばれた深さに応力プロファイルがつくられる。
【0063】
本開示に用いられるように、「イオン交換される」は、加熱されたβスポジュメンガラス−セラミックを、ガラス−セラミックの表面及び/またはバルク内に存在するイオンとは異なるイオン半径を有する加熱された溶液で処理し、よって、イオン交換(IX)温度条件に応じて、イオン半径が小さいイオンをイオン半径が大きいイオンで、またはイオン半径が大きいイオンをイオン半径が小さいイオンで、置換することと理解される。例えば、カリウム(K)イオンは、やはりIX温度条件に応じて、ガラス−セラミック内のナトリウム(Na)イオンを置換し得るか、またはガラス−セラミック内のNaイオンで置換され得るであろう。あるいは、ルビジウム(Rb)またはセシウム(Cs)のような、原子半径が大きいその他のアルカリ金属のイオンがガラス−セラミック内の小さいアルカリ金属イオンを置換し得るであろう。同様に、硫酸塩、塩化物、等のような、ただしこれらには限定されない、その他のアルカリ金属塩をイオン交換(IX)プロセスに用いることができる。
【0064】
本方法において、小さいイオンに対して大きいイオンが置換される、及び/または大きいイオンに対して小さいイオンが置換される、いずれのタイプのIXもおこり得ると考えられる。いくつかの態様及び/または実施形態の1つにおいて、方法は、310〜430℃の温度でNaNO浴内に10時間まで入れておくことによるβスポジュメンガラス−セラミックのIX(特に、リチウム対ナトリウムイオン交換)を含む。別の態様及び/または実施形態において、カリウム/ナトリウム混合浴を同様の温度及び時間で用いて、例えば、80/20KNO/NaNO浴または60/40KNO/NaNO浴を同等の温度で用いて、IXを達成することができる。また別の態様及び/または実施工程において、2工程IXプロセスが考えられ、第1の工程はLi含有塩浴で達成され、例えば溶融塩浴は、主構成成分としてLiSOを含むが、溶融塩浴をつくるに十分な濃度のNaSO,KSOまたはCsSOで希釈された、高温硫酸塩浴とすることができる。このIX工程はβスポジュメンガラス−セラミック内の大きいナトリウムインをLi含有塩浴内に見られる小さいリチウムイオンで置換するためにはたらく。第2のIX工程はNaをβスポジュメンガラス−セラミック内に交換するためにはたらき、上記のように、310℃と430℃の間の温度でのNaNO浴によって達成され得る。
【0065】
結晶性ガラス、ガラス−セラミック、IX性ガラス−セラミック及び/またはIXガラス−セラミックの特性評価
本開示の態様及び/または実施形態にしたがう、βスポジュメンガラス−セラミック、IX性βスポジュメンガラス−セラミック及びIXβスポジュメンガラス−セラミックの色を表すCIELAB色空間座標(例えば、CIE L,CIE a,及びCIE b;またはCIE L,a,及びb;またはL,a,及びb)を、
http://www.xphotonics.com/tech/Color%20Measurement/Current%20American%20/20Practice%20in%20Measurement.pdf,
にある、エフ・ダブリュー・ビルマイヤー・ジュニア(F. W. Billmeyer, Jr.),「色測定における現在の米国の実践(Current American Practice in Color Measurement)」,Applied Optics,1969年4月,第8巻,第4号,pp.737〜750,に説明されている方法のような、当業者には既知の方法により、全反射―正反射を含む―測定から決定した。すなわち、全反射―正反射を含む―測定を、表面を光学研磨した測定用33mmφ×8mm厚サンプルディスクを用いて行った。そのような全反射―正反射を含む―測定を行い、結果を変換してL,a,及びb色空間座標を得るための機材及び資材には、
250〜3300nmの波長範囲(例えば、紫外(UV:300〜400nm)、可視(Vis:400〜700nm)及び赤外(IR:700〜2500nm)における全反射―正反射を含む―測定が可能になるように、適切に装備され、構成された、市販のVarian Cary 5GまたはPerkinElmer Lambda 950 UV-VIS-NIR分光計のような、積分球を備える紫外-可視-近赤外(UV-VIS-NIR)分光計(例えば、
http://www.perkinelmer.com.cn/CMSResources/Images/46-131732BRO_Lambda950850650Americas.pdf,
http://www.perkinelmer.com.cn/CMSResources/Images/44-74191APP_LAMBDA620IntegratingSpeheres.pdf,及び
http://www.labsphere.com/iploads/LambdaSpectroscopyBrochure.pdf,
のそれぞれにある、LAMBDA(商標)UV/Vis/NIR及びUV/Vis分光計−950,850または650;積分球の応用及び用法;及び高性能Lambda分光計アクセサリーパンフレットを見よ。これらの技術文献は本明細書に参照として含められる)、及び
測定値の変換の結果として、F02光源及び標準の10°観測に基づくCIELAB色空間座標(L,a,及びb)が得られる、UV-VIS-NIR分光計に組み合わされる解析ソフトウエア(米国フロリダ州西パームビーチ(West Palm Beach)のThermo Scirtifc社から市販されているGRAMS分光計ソフトウエアセットのUV/VIS/NIRアプリケーションパック)、例えば、
http://www.thermo.com/eThermo/CMA/PDFs/Product/productPDF_24179.pdf,
にあるGRAMS-UG1009パンフレットを見よ。この技術文献は本明細書に参照として含められる、
がある。
【0066】
本開示の態様及び/または実施形態にしたがう結晶性ガラス、ガラス−セラミック、IX性ガラス−セラミック及び/またはIXガラスセラミックの半透明度または不透明度の定量的測定は、イー・エル-メリージー(E. El-Meliegy)著,「医療用途のためのガラス及びガラスセラミック(Glasses and Glass Ceramics for Medical Applications)」,(米国ニューヨーク),スプリンガー(Springer),2012年,pp.156〜157(9.6.1 半透明度または不透明度の定量的測定(Quantitative Measurement of Translucency or Opacity))に説明されている方法のような、当業者には既知の方法によって実施できる。この技術文献は本明細書に参照として含められる。
【0067】
本開示の態様及び/または実施形態にしたがう結晶性ガラスの粘度は、米国ペンシルバニア州コンショホーケン(Conshohocken)のASTMインターナショナルによる、ASTM C965-96「軟化点より高温のガラスの粘度を測定するための標準手順(Standard Practice for Measuring Viscosity of Glass Above the Softening Point)」(及びこの派生−全てが本明細書に参照として含められる)、ASTM C1351M-96「中実直立円筒の粘性圧縮による10E4Pa・秒と10E8Pa・秒の間のガラスの粘性のための標準試験方法(Standard Test Method for Measurement of Viscosity of Glass Between 10E4 Pa・s and 10E8 Pa・s by Viscous Compression of Solid Right Cylinder)」(及びこの派生−全てが本明細書に参照として含められる)、及びASTM C1350M-96「軟化点からアニール範囲の間のガラスの粘度(ほぼ10E8Pa・秒からほぼ10E13Pa・秒)を測定するための標準手順(Standard Practice for Measuring Viscosity of Glass Between Softening Point and Annealing Range (Approximately 10E8 Pa・s to Approximately 10E13 Pa・s)」(及びこの派生−全てが本明細書に参照として含められる)に説明される方法のような、当業者には既知の方法によって測定することができる。
【0068】
本開示の態様及び/または実施形態にしたがう結晶性ガラスのアニール点及び歪点は、米国ペンシルバニア州コンショホーケンのASTMインターナショナルによる、ASTM C598「ビーム曲げによるガラスのアニール点及び歪点に対する標準試験方法(Standard Test Method for Annealing Point and Strain Point of Glass by Beam Bending)」(及びこの派生−全てが本明細書に参照として含められる)に説明される方法のような、当業者には既知の方法によって測定することができる。
【0069】
本開示の態様及び/または実施形態にしたがう結晶性ガラス、ガラス−セラミック、IX性ガラス−セラミック及び/またはIXガラスセラミックの誘電パラメータ(例えば、誘電正接、誘電定数、等)は、それぞれ、
http://whites.sdsmt.edu/classes/ee692gwmm/notes/Baker-Javis_IMM_2010,pdf,
http://www.eeel.nist.gov/advanced_materials_publications/Baker-Javis%20IM%2094.pdf,
http://www.eeel.nist.gov/advanced_materials_publications/Baker-Javis%20TN&201355-R.pdf,及び
http://whites.sdsmt.edu/classes/ee692gwmm/additional/NIST_Tech_Note_1520.pdf,
にある、ジェイ・ベイカー-ジャービス(J. Baker-Jarvis)、等,「高周波数誘電体測定(High-Frequency Dielectric Measurements)」,IEEE Trans. Instrum. Meas.,2010年4月,pp.24〜31;ジェイ・ベイカー-ジャービス、等,「開放端同軸プローブの解析(Analysis of an Open-Ended Coaxial Probe)」,IEEE Trans. Instrum. Meas.,1994年10月,第43巻,第5号,pp.711〜718;ジェイ・ベイカー-ジャービス、等,「誘電率及び透磁率を測定するための透過/反射及び短絡線路法(Transmission/Reflection and Short-Circuit Line Methods for Measuring Permittivity and Permeability)」,Natl, Inst. Stand. Trchnol. Tech. Note 1355-R,1993年12月,p.236;及びジェイ・ベイカー-ジャービス、等,「電子パッケージ材料に関する誘電体及び導電体損失の特性評価及び測定(Dielectric and Conductor-Loss Characterization and Measurements on Electronic Packaging Materials)」,Natl, Inst. Stand. Trchnol. Tech. Note 1520,2001年7月,p.236に概要が示されているプローブと同様の開放端同軸プローブを用いてなされる方法のような、当業者には既知の方法によって室温で特性評価した。これらの技術文献は本明細書に参照として含められる。当業者であれば、実験室においては、誘電パラメータが様々なサンプルサイズ及びサンプル形状を用いる異なる方法によって測定され得ることを認めるであろう(例えば、ジェイ・ベイカー-ジャービス、等,「高周波数誘電体測定」,IEEE Trans. Instrum. Meas.,2010年4月,pp.24〜31;
http://whites.sdsmt.sdu/classes/ee692gwmm/additional/GILENT_Basics_dielectric_properties.pdf,
にある、Agilent Application Note 「材料の誘電特性測定の基礎(Basics of Measuring the Dielectric Properties of Materials)」,Agilent Technologies, Inc.,パンフレット第5989-2589EN号,2005年4月28日;
http://ieeexplore.ieee.org/xpl/login.jsp?reload=true&tp=&arnumber=1447649&url=http%3A%2F%2F,
にある、エイチ・イー・ブッシー(H. E. Bussey),「材料のRF特性の測定:調査報告(Measurement of RF Propertied of Materials)」,Proc. IEEE,1967年,第55号,pp.1046〜1053;及び、
http://www.eeel.nist.gov/advanced_materials_publications/Baker-Javis%20TN1536.pdf,
にある、ジェイ・ベイカー-ジャービス、等,「損失のある材料:固体、液体、金属、建築材料及び負屈折率材料の誘電率及び透磁率の測定(Measuring Permittivity and Permeability of Lossy Materials: Solids, Liquids, Metals, Building Materials, and Negative-Index Materials)」,Natl, Inst. Stand. Trchnol. Tech. Note 1536,2004年,を見よ。これらの技術文献は本明細書に参照として含められる)。測定手法は注目する周波数に依存する。数MHzまでの周波数においては、容量法が一般に用いられる。キャパシタの平板の間に材料がおかれ、容量の測定から、誘電定数を計算することができる。波長が導体間距離よりかなり長ければ容量モデルは有効である。
【0070】
本開示の態様及び/または実施形態にしたがう結晶性ガラス、ガラス−セラミック、IX性ガラス−セラミック及び/またはIXガラスセラミックについて、オランダ国のフィリップス(Philips)社で製造されたモデルPW1830(Cu Kα線)回折計のような市販装置を用い、当業者には既知のX線回折(XRF)分析法によって、結晶相構成内の結晶相の同定、及び/または結晶相の結晶寸法の決定を行った。回折スペクトルは一般に5°から80°の2θについてとった。
【0071】
本開示の態様及び/または実施形態にしたがう結晶性ガラス、ガラス−セラミック、IX性ガラス−セラミック及び/またはIXガラスセラミックの表面の特性評価のために測定された基本プロファイルは、電子線マイクロプローブ(EMP)、X線蛍光分光法(XPS)、二次イオン質量分析法(SIMS)、等のような、当業者には既知の手法によって決定した。
【0072】
透明なIX材料の、表面層の圧縮応力(σ)、平均表面圧縮(CS平均)及び層深さ(DOL)は従来の光学手法及び、いずれも日本国東京の(株)ルケオ及び/または(有)折原製作所から入手できる、市販の表面応力計:モデルFSM-30,FSM-60,FSM-6000LE,FSM-7000H,等のような、機器を用いて簡便に測定することができる(例えば、
http://www.orihara-ss.co.jp/catalog/fsm/fsm-30-Ecat.pdf,
にある、FSM-30表面応力計カタログ、カタログ番号FS-0013E;
http://www.liceo.co.jp/english/pdf/FSM-60LE%20Ecat,pdf,
にある、FSM-60表面応力計カタログ、カタログ番号FS-0013E;
http://www.liceo.co.jp/english/pdf/FSM-6000LE%20Ecat,pdf,
にある、FSM-6000LE表面応力計カタログ、改訂版2009.04;
http://www.liceo.co.jp/catalog/catalog-pdf/FSM-7000H_cat.pdf,
にある、FSM-7000H表面応力計カタログ、カタログ番号FS-0024 2009.08;
http://www.orihara-ss.co.jp/data/literature01/A034.pdf,
にある、ティー・キシ(T. Kishi),「化学的に強化されたガラスの光導波路効果を利用する表面応力計(Surface Stress Meters Utilizing the Optical Waveguide Effect of Chemically Tempered Glasses)」,Optics & Lasers in Engineering,1983年,第4巻,pp.25〜38;及び、
http://www.orihara-ss.co.jp/data/literature01/A001.pdf,
にある、ケイ・コバヤシ(K. Kobayashi),等,「ガラスの化学的強化及び工業的応用(Chemical Strengthening of Glass and Industrial Application)」,昭和52年(1977年),第52巻,pp.109〜112,を見よ。これらの技術文献は本明細書に参照として含められる)。
【0073】
本開示のβスポジュメンガラス−セラミック、IX性βスポジュメンガラス−セラミック及び/またはIXβスポジュメンガラス−セラミックの不透明性のため、上に論じたような表面応力計を用いるCS平均測定のための手法は、将来は可能になるとしても、現在のところ利用できないことがある。したがって、CS平均は、IXβスポジュメンガラス−セラミックのサンプルに曲率が誘起されるように、サンプルを選択的にエッチングすることで得ることができる。エッチングされた試料に表れる曲率の大きさは圧縮応力(σ)に関係する。サンプルを断続的にエッチングし、誘起曲率を測定して対応する圧縮応力(σ)を測定することにより、そのサンプルについての応力プロファイルを明らかにすることができる。このようにしてDOLも得ることができる(例えば、
http://www.sciencedirect.com/,
で利用できる、ブイ・エム・スグラボ(V. M. Sglavo),等,「曲率測定による残留応力プロファイル決定手法(Procedure for Residual Stress Profile Determination by Curvature Measurements)」,Mechanics of Materials,2005年,第37巻,pp.887〜898を見よ。この技術文献は本明細書に参照として含められる)。同時に、断続エッチングのそれぞれの後にサンプルの化学組成を測定して濃度プロファイルを明らかにし、サンプルの化学組成と圧縮応力(σ)の間の関係を得ることができる。結晶材料内の応力緩和はガラスに比較して最小限であり得るから、簡単な比例常数で濃度プロファイルと応力プロファイルを結び付けることができる。指定されたIX処理にかけられた指定された出発組成及び形状寸法(例えば、厚さ、等)のIXβスポジュメンガラス−セラミックのサンプルについて反復エッチング/曲率法を用いてCS平均を決定してしまえば、対応するIXβスポジュメンガラス−セラミックのサンプル内の濃度プロファイル(すなわち、深さの関数としての組成)を測定して、CS平均及びDOLの推定値を得ることができる。この目的のため、本開示の態様及び/または実施形態にしたがうIXβスポジュメンガラス−セラミックの、サンプル表面層内の圧縮応力(σ)、サンプル表面における平均表面圧縮応力(CS平均)、釣合い張力の結果としてのサンプルの中心における平均中心張力(CT平均)及び層深さ(DOL)を、EMP,XPS,SIMS,等のような、当業者には既知の分析手法を用いて置換イオン及び/または置換されたイオンの濃度プロファイルから推定することができる。上に論じたようなIXプロセス中、ガラス−セラミック表面及び/またはバルク内に存在するイオン半径が小さいイオンはイオン半径が大きいイオンと交換され得る。図10に簡略に示されるように、これは、サンプル100の表面110に圧縮応力(σ)を生じさせ、試料100の全体にわたって力を釣り合わせるため、釣合い張力がサンプル100の中心領域130に誘起される。平均表面圧縮応力(CS平均)は以下の関係式:
CS平均=CT平均×(1−2DOL)/DOL
によって、平均中心張力(CT平均)に関係付けられる。
【0074】
ここで、tはβスポジュメンガラス−セラミックサンプル100の厚さであり、DOL(層深さ120)はサンプル100の表面110から、表面110に対して垂直な方向に沿って、サンプル100内の応力が符号を変える(すなわち、ゼロになる)場所までの距離である。
【0075】
サンプル100に対し、応力プロファイルの張力領域(すなわち、サンプル100の中心領域130)の全体にわたる応力の積分により、積分中心張力(ICT)が与えられる。ICTは、サンプル100の総厚(t)、圧縮応力層の層深さ(DOL)120,平均中心張力(CT平均)及び圧縮応力層の形状またはプロファイルに、式:
ICT=CT×(t−2DOL)
によって関係付けられる。
【0076】
ここで、中心領域130の厚さ(t−2DOL)は表面に対して垂直な方向である。サンプルの総積分応力はゼロでなければならないから、サンプル100内の力を釣り合わせるため、積分表面圧縮(ICT)は、−ICS+ICT=0になるように、ICTと同じ大きさであるが、反対の符号(−)を有する。ICSは、圧縮応力層の層深さ(DOL)120、平均表面圧縮応力(CS平均)及び圧縮応力層の形状またはプロファイルに、式:ICS=CS平均×DOLによって関係付けられる。ここで、圧縮応力領域の層深さ(DOL)は上で定められている(すなわち、サンプル100の表面110から表面110に対して垂直な方向に沿ってサンプル100内の応力が符号を変える(すなわち、ゼロになる)場所までの距離である)。適切な代入を行い、平均表面圧縮応力(CS平均)について解けば、上の関係式が得られる。拡散及び応力の標準的な表現を用いれば、様々なプロセス条件(例えば、温度、時間、置換イオン、置換されるイオン、等)の関数としてモデルを確立することができ、確立した。相互拡散率(すなわち、反対方向の置換イオン及び置換されるイオンの両者の運動に関係付けられる実効拡散率または相互拡散係数)が、既知のプロセス条件から測定された濃度プロファイルにフィッティングされる。これらの相互拡散率は、当業者には既知であるように、温度の逆数に指数的に依存する、アレニウス関係式にしたがう(相互拡散率の対数が1/Tに比例する)。拡散の計算に対する境界条件は、IX浴組成及びサンプルの出発組成に基づく。与えられた拡散率、サンプル形状(例えば平板)、サンプルまたは平板の厚さ、及びIX浴組成(例えば、塩浴組成)に対して、得られる一次元拡散方程式の解式は、例えば、ジェイ・クランク(J. Crank)著,(Mathematics of Diffusion)」,第2版,1975年に与えられる指針に沿って進められる。次いで応力は、例えば、エイ・ケイ・バルシュネイア(A. K. Varshneya)著,「無機ガラスの基礎(Fundamentals of Inorganic Glasses)」,第2版,2006年に説明されているように、IXプロセス工程完了後のサンプル内の置換イオンまたは置換されたイオンの濃度に比例する。力の平衡にしたがうため、得られる応力曲線の積分がゼロになるように、定数を差し引く必要があり得るであろう。高温になるほど応力緩和の効果が重要になるかもしれないが、ガラス−セラミックではそのようには見えない。EMP,XPS,SIMS,等のような、当業者には既知の分析手法を用いる濃度プロファイルの知見は、上述した反復エッチング/曲率法からのようなCS平均の推定値と合わせて、2つの測定の間の相関を与える。CS平均を決定するための反復エッチング/曲率法は人手がかかり、IXβスポジュメンガラス−セラミックに対して破壊的であることを認識すれば、IXβスポジュメンガラス−セラミックの濃度プロファイルの測定によってCS平均を推定するためにこの相関を用いることができる。これは予想濃度プロファイルを測定された濃度プロファイルと比較することによって、また、利用できる場合は、IXガラス−セラミック表面層内の圧縮応力(σ)及び層深さ(DOL)の測定によって決定されたCS平均との比較によって、吟味することができる。
【0077】
本開示の態様及び/または実施形態にしたがう結晶性ガラス、ガラス−セラミック、IX性ガラスセラミック及び/またはIXガラスセラミックの曲げ強さは、米国ペンシルバニア州コンショホーケンのASTMインターナショナルによる、ASTM C1499「先端セラミックの単調等二軸曲げ強さの決定(Determination of Monotonic Equibiaxial Flexural Strength Advansed Ceramics)」(及びこの派生−全てが本明細書に参照として含められる)に説明される方法のような、当業者には既知の方法によって特性評価することができる。
【0078】
本開示の態様及び/または実施形態にしたがう結晶性ガラス、ガラス−セラミック、IX性ガラスセラミック及び/またはIXガラスセラミックのヤング率、剪断弾性率及びポアソン比は、米国ペンシルバニア州コンショホーケンのASTMインターナショナルによる、ASTM C1295「インパルス振動励起による先端セラミックのための動的ヤング率、剪断弾性率及びポアソン比に対する標準試験法(Standard Test Method for Dynamic Young's Modulus, shear Modulus, and Poisson Ratio for Advanced Ceramics by Impulse Excitation of Vibration)」(及びこの派生−全てが本明細書に参照として含められる)に説明される方法のような、当業者には既知の方法によって特性評価することができる。
【0079】
本開示の態様及び/または実施形態にしたがう結晶性ガラス、ガラス−セラミック、IX性ガラスセラミック及び/またはIXガラスセラミックのヌープ硬度は、米国ペンシルバニア州コンショホーケンのASTMインターナショナルによる、ASTM C1326「先端セラミックのヌープ押込硬度に対する標準試験方法(Standard Test Method for Knoop Indentation Hardness of Advanced Ceramics)」(及びこの派生−全てが本明細書に参照として含められる)に説明される方法のような、当業者には既知の方法によって特性評価することができる。
【0080】
本開示の態様及び/または実施形態にしたがう結晶性ガラス、ガラス−セラミック、IX性ガラスセラミック及び/またはIXガラスセラミックのビッカース硬度は、米国ペンシルバニア州コンショホーケンのASTMインターナショナルによる、ASTM C1327「先端セラミックのビッカース押込硬度に対する標準試験方法(Standard Test Method for Vickers Indentation Hardness of Advanced Ceramics)」(及びこの派生−全てが本明細書に参照として含められる)に説明される方法のような、当業者には既知の方法によって特性評価することができる。
【0081】
本開示の態様及び/または実施形態にしたがう結晶性ガラス、ガラス−セラミック、IX性ガラスセラミック及び/またはIXガラスセラミックの熱膨張係数(CTE)は、米国ペンシルバニア州コンショホーケンのASTMインターナショナルによる、ASTM E228「プッシュロッド式膨張計を用いる固体材料の線熱膨張に対する標準試験方法(Standard Test Method for Linear Thermal Expansion of Solid Materials with a Push-Rod Dilatometer)」(及びこの派生−全てが本明細書に参照として含められる)に説明される方法のような、当業者には既知の方法によって特性評価することができる。
【0082】
本開示の態様及び/または実施形態にしたがう結晶性ガラス、ガラス−セラミック、IX性ガラスセラミック及び/またはIXガラスセラミックの破壊靱性(K1C)は、米国ペンシルバニア州コンショホーケンのASTMインターナショナルによる、ASTM C1421「環境温度における先端セラミックの破壊靱性の決定に対する標準試験方法(Standard Test Method for Determination of Fracture Toughness of Advanced Ceramics)」(及びこの派生−全てが本明細書に参照として含められる)に説明される方法及び/またはV字形ノッチ付ショートバー(CNSB)を用いる方法及び/または米国ペンシルバニア州コンショホーケンのASTMインターナショナルによる、ASTM E1304 C1421「金属材料の平面−歪(V字形ノッチ)破壊靱性に対する標準試験方法(Standard Test Method for Plane-Strain (Chevron Notch) Fracture Toughness of Metallic Materials)」(及びこの派生−全てが本明細書に参照として含められる)に実質的にしたがう方法のような、当業者には既知の方法によって特性評価することができる。
【実施例】
【0083】
以下の実施例は本開示の利点及び特徴を示すものであって、本開示をそれらの実施例に限定することは全く目的とされていない。
【0084】
個々の成分の総和がほぼ100であるかまたはこれに非常に近い限り、全ての実用目的に対し、報告される値はモル%を表すと見なされ得る。実際の結晶性ガラスバッチ構成成分は、酸化物または、他のバッチ成分と一緒に融解されると、適切な比率で所望の酸化物に転換されるであろう、その他の化合物の、いかなる材料も含み得る。
【0085】
【表1-1】
【0086】
【表1-2】
【0087】
実施例1〜8
表Iに挙げた実施例の結晶性ガラスは、融解及び清澄化時に1000gの結晶性ガラスが得られるように配合した原材料バッチを用いて、白金るつぼ内で作製した。配合原材料バッチを収めたるつぼのそれぞれを1575℃〜1650℃に予備加熱した炉に入れ、配合原材料バッチは融解し、清澄化されて、溶融結晶性ガラスになり、次いで溶融結晶性ガラスを流し込成形により結晶性ガラスの平塊にして、600℃で1時間、アニールした。このようにして、次いで、そのような、異なるかまたは同様の温度−時間サイクルにプログラムした静置炉に入れることで、多くの異なる、及び/または同様の、熱処理に実施例結晶性ガラスの個々の平塊をかける(核形成及び結晶化させる)ことができた。表Iに挙げた実施例結晶性ガラスの多くのパテをかけた温度−時間サイクルのいくつかに例には、
室温と500℃の間に設定された炉内への挿入、
780℃の核形成温度(Tn)までの5℃/分での加熱、
780℃に2時間の保持、
780℃から、B含有結晶性ガラス(実施例1,4,5及び7)については850℃〜1050℃の結晶化温度(Tc)まで、無B含有結晶性ガラス(実施例2,3,6及び8)については1000℃〜1250d0のTcまでの、5℃/分での加熱、及び
結晶化温度(Tc)に4時間の保持、及び
室温までの冷却、
を含めた。
【0088】
実施例1,4,5及び7の結晶性ガラスのいくつかの平塊に核形成(5℃/分で780℃まで加熱及び780℃に2時間保持)及び結晶化(780℃から5℃/分で975℃まで加熱及び975℃に2時間保持)の熱処理を加えて、ガラス−セラミックを得た。また、実施例2,3,6及び8の結晶性ガラスのいくつかの平塊にも核形成(5℃/分で780℃まで加熱及び780℃に2時間保持)及び結晶化(780℃から5℃/分で1050℃まで加熱及び1050℃に2時間保持)の熱処理を加えて、ガラス−セラミックを得た。
【0089】
上述した熱処理にしたがって熱処理した、表Iに挙げた結晶性ガラスの平塊は不透明であった。また、X線回折(XRD)で決定すると、得られたガラス−セラミックは、主結晶相としてβスポジュメンを含み、ルチルだけまたはβ石英固溶体及び/またはスピネルとルチルの様々な組合せを含む1つ以上の少結晶相を含む、結晶相構成を示した。
【0090】
実施例A
表Iの実施例1の結晶性ガラスの平塊に核形成(5℃/分で780℃まで加熱及び780℃に2時間保持)及び結晶化(780℃から5℃/分で975℃まで加熱及び975℃に2時間保持)の熱処理を加えて、ガラス−セラミックを得た。0.8mmの厚さを有する、測定用50mm×50mm正方ガラス−セラミックサンプルを作製して、表面を光学研磨した。サンプル背後に黒色背景及び白色背景を用いて研磨サンプルの分光反射率を測定することで、サンプルの不透明度を決定した。サンプルの不透明度は2つの背景において測定されたサンプル反射率の比であり、100%不透明では比の値が1になる。図1はこのサンプルによって示される不透明度を示し、図からわかるように、不透明度の値は、250〜750nmの波長範囲にわたって、90%より大きい。
【0091】
実施例B〜D
表Iの実施例1の結晶性ガラスの3つの平塊に異なる結晶化条件の下で熱処理を加えてガラス−セラミックを得た。平塊のそれぞれには上で実施例1について説明した態様と同じ態様で核形成(5℃/分で780℃まで加熱及び780℃に2時間保持)を行ったが、表IIに開示される異なる温度で4時間の結晶化(780℃から5℃/分でTc[℃]まで加熱及びTc[℃]に4時間保持)をそれぞれに行った。XRD分析で決定すると、得られたガラス−セラミックは主結晶相としてのβスポジュメン固溶体、及びルチルを含む少結晶相を含む、結晶相構成を示した。それぞれのサンプルについての結晶相及び残余ガラスの、重量%の、量は、ジェイ・C・テイラー(J. C. Taylor)著,「リートベルトが容易にした:方法の理解及び相定量化の成功への実用的手引き(Rietveld Made Easy: A Practical Guide to the Understanding of the Method and Successful Quantifications)」,(豪国キャンベラ(Canberra)),Sietronics Pty Ltd.,2004年、2003年及び2001年 (ISBN 0 9750798 0 8),及び、アール・エイ・ヤング(R. A. Young)著,「リートベルト法(The Rietveld Method)」,(英国オクスフォード(Oxford)),University Press,1993年 (ISBN 0 19855577 6)に説明されている方法のような、当業者には既知のリートベルト解析法を用いて決定し、表IIにまとめてある。これらの技術文献は本明細書に参照として含められる。
【0092】
【表2】
【0093】
図2〜4は、上記のように作成されたガラス−セラミックのそれぞれの結晶相構成を示す、倍率×10000でとられた、走査型電子顕微鏡(SEM)後方散乱電子像(BEI)写真である。顕微鏡写真のそれぞれを調べることで、中間グレイの比較的大きい結晶によって明示されるように主結晶相としてβスポジュメンを含み、明るい針状の比較的小さい結晶によって明示されるように少結晶相としてルチル結晶相を含む、結晶相構成が明らかになる。0.05μmより大きい寸法を明らかに示す、これらの針状ルチル結晶は、上述したように、実施例ガラス−セラミックに不透明度及び白色度レベルを与える。さらに、示される結晶相の中で顕微鏡写真の暗い領域は残余ガラスであり、βスポジュメン結晶層上のこぶのような構造はガーナイトスピネル結晶であることに注意すべきである。
【0094】
実施例E〜K
表Iの実施例1の結晶性ガラスの6つの平塊に異なる結晶化条件の下で熱処理を加えて、ガラス−セラミックを得た。平塊のそれぞれには上で実施例1について説明した態様と同じ態様で核形成(5℃/分で780℃まで加熱及び780℃に2時間保持)を行ったが、表IIIに開示される異なる温度で4時間の結晶化(780℃から5℃/分でTc[℃]まで加熱及びTc[℃]に4時間保持)をそれぞれに行った。得られたガラス−セラミックの厚さが0.8mmで直径が1インチ(25.4mm)の円板を作製し、表面を光学研磨した。XRD分析で決定すると、得られたガラス−セラミックは主結晶相としてのβスポジュメン固溶体並びにルチル及びガーナイトを含む少結晶相を含む結晶相構成を示した。それぞれのサンプルについての残余ガラスの量(重量%)を、また結晶相の量(重量%)及び寸法(μm)も、当業者には既知のリートベルト解析を用いて同様に決定し、表IIIにまとめてある。
【0095】
【表3】
【0096】
実施例E〜Kのそれぞれについて、分光光度計を用いた正反射を含む反射率測定値から、GRAMSソフトウエアを用いて解析して、色(L色座標)を決定した。表IVに、これらのβスポジュメンガラス−セラミックが示した、CIE光源F02に対して表されるCIELAB色空間座標L,a及びbを報告する。
【0097】
【表4】
【0098】
実施例L〜N
表Iの実施例1の結晶性ガラスの3つの平塊に結晶化条件を用いて熱処理を加えて、ガラス−セラミックを得た。平塊のそれぞれには上で実施例1について説明した態様と同じ態様で核形成(5℃/分で780℃まで加熱及び780℃に2時間保持)を行ったが、950℃で4時間の結晶化(780℃から5℃/分で950℃まで加熱及び950℃に4時間保持)を全てに対して行った。0.8mmの厚さを有する、測定用50mm×50mm正方ガラス−セラミックサンプル群を作製して、表面を光学研磨した。次いでこれらの群からのサンプルを以下の条件:
・80重量%KNO/20重量%NaNO,430℃の温度で2時間;
・60重量%KNO/40重量%NaNO,430℃の温度で4時間半;及び
・0重量%KNO/100重量%NaNO,430℃の温度で2時間;
の下にある3つの別々の(2つは混合、1つは純)溶融塩IX浴に入れた。これらの時間及び温度は、300MPaを上回る圧縮応力(σ)を表面に(あるいは、圧縮応力(σ)を示す表面層を表面に)生じさせるに十分なLiのNaとのイオン交換を可能にするに十分であった。図5は、IXガラスセラミックのそれぞれについてそれぞれのNaO及びKOを(重量%で)深さの関数として示す、電子線マイクロプローブ分析を示す。
【0099】
実施例O〜P
表Iの実施例1の結晶性ガラスの別の2つの平塊に結晶化条件を用いて熱処理を加えて、ガラス−セラミックを得た。平塊のそれぞれには上で実施例1について説明した態様と同じ態様で核形成(5℃/分で780℃まで加熱及び780℃に2時間保持)を行ったが、950℃で4時間の結晶化(780℃から5℃/分で950℃まで加熱及び950℃に4時間保持)を全てに対して行った。0.8mmの厚さを有する、測定用50mm×50mm正方ガラス−セラミックサンプル群を作製して、表面を光学研磨した。次いでこれらの群からのサンプルを、2つ(1つは対照/標準、1つは2ステップ処理を含む)の別々の溶融塩IX浴処理:
・100重量%NaNO,430℃の温度で2時間;
・80重量%LiSO/20重量%KSO,430℃の温度で8時間、続いて、100重量%NaNO,430℃の温度で2時間;
にかけた。同じくこれらの時間及び温度も、300MPaを上回る圧縮応力(σ)を表面に(あるいは、圧縮応力(σ)を示す表面層を表面に)生じさせるに十分なLiのNaとのイオン交換を可能にするに十分であった。2ステップIX処理により、(より高い圧縮応力(σ)をともなうにちがいない)表面におけるNaの増加及び、これも高められた強度を付与すると考えられる、埋め込まれたカリウムピークが得られた。図6は、IXガラスセラミックのそれぞれについてそれぞれのNaO及びKOを(重量%で)深さの関数として示す、電子線マイクロプローブ分析を示す。
【0100】
実施例Q〜R
上の表Iの実施例1の組成の2つの結晶性ガラス及び対応するガラスセラミックを、同じ融解、清澄化及び核形成温度を用い、ただし異なる結晶化条件で、作製した。サンプルのそれぞれは、実施例1について説明した態様と同じ態様(5℃/分で780℃まで加熱及び780℃に2時間保持)で核形成したが、それぞれは950℃,2時間で結晶化させた。0.8mmの厚さを有する、測定用50mm×50mm正方ガラス−セラミックサンプル群を作製し、表面を光学研磨した。群からの1つのサンプルを標準IX浴処理(100重量%NaNO,430℃の温度で2時間)にかけ、他は無処理(無IX)とした。IXサンプル及び無IXサンプルの等二軸曲げ強さを決定した(特に、ASTM C1499にしたがうRORをそれぞれ5psi(3.45×10Pa)SiCを用いて行った)。図7は、無IXガラス−セラミック(■)及びIXガラス−セラミック(●)についての曲げ強さ(当業者には既知であり、ASTM C1499に説明される、機械的/摩耗リングオンリング法によって特性評価したピーク荷重)のワイブルプロットを示す。図7の結果は、IXガラス−セラミック(●)が、無IXガラス−セラミック(■)のピーク荷重(10〜20kgf(9.8〜19.6×10Pa・mm))よりかなり高いピーク荷重(75〜100kgf(7.35〜9.80×10Pa・mm))を示すことを明らかにしている。図7の結果は、IXガラス−セラミック(●)がIXアルミノケイ酸ガラスと同等のピーク荷重値を示すことも明らかにしている。
【0101】
【表5】
【0102】
実施例S〜U
表Iの実施例1の結晶性ガラスの4つの別の平塊に結晶化条件を用いて熱処理を加えてガラス−セラミックを得た。平塊のそれぞれには上で実施例1について説明した態様と同じ態様で核形成(5℃/分で780℃まで加熱及び780℃に2時間保持)を行ったが、それぞれに、表Vに開示される温度で4時間の結晶化(780℃から5℃/分でTc[℃]まで加熱及びTc[℃]に4時間保持)を行った。ASTM E1304試験手順に実質的にしたがい、長さ(W)=0.564インチ(14.33mm)、1/2高さ(H)=0.324インチ(8.23mm)、厚さ(B)=0374インチ(9.50mm)、V字形先端までの距離より短い長さ(W−a)=0.398インチ(10.11mm)及びスロット角(ψ)=59°の諸元を有する、V字形ノッチ付ショートバー(CNSB)試料として作製したガラス−セラミックのそれぞれのサンプルを試験した。それぞれの試料の破壊靱性(K1C[MPa・m1/2])を決定して、表Vにまとめてある。図8は破壊靱性(K1C[MPa・m1/2])を結晶化温度(Tc[℃])の関数として示す。
【0103】
実施例V〜W
上の表Iの実施例1の組成の2つの結晶性ガラス及び対応するガラスセラミックを、同じ融解、清澄化及び核形成温度を用い、ただし異なる結晶化条件で、作製した。サンプルのそれぞれは、実施例1について説明した態様と同じ態様(5℃/分で780℃まで加熱及び780℃に2時間保持)で核形成したが、それぞれは950℃,2時間で結晶化させた。コーニング2317 Gorillaアルカリ−アミノケイ酸ガラス及びガラスセラミックの、測定用3mmφ×12mm長円筒サンプルを作成して、表面を光学研磨した。これらの円筒サンプルをRF透明性(誘電正接及び誘電定数)試験にかけた。図9は、コーニング2317 Gorillaアルカリ−アミノケイ酸ガラス(■,◆)及びガラスセラミック(□,◇)について、これらのサンプルの誘電正接(◇,◆)及び誘電定数(□,■)を500MHzから3000MHzの間の周波数の関数として示す。
【0104】
実施例X〜Y
表Iの実施例1の結晶性ガラスの別の2つの別の平塊に結晶化条件を用いて熱処理を加えて、ガラス−セラミックを得た。平塊のそれぞれには上で実施例1について説明した態様と同じ態様で核形成(5℃/分で780℃まで加熱及び780℃に2時間保持)を行ったが、950℃で4時間の結晶化(780℃から5℃/分で950℃まで加熱及び950℃に4時間保持)を全てに対して行った。0.8mmの厚さを有する、測定用50mm×50mm正方ガラス−セラミックサンプル群を作製して、表面を光学研磨した。これらの群からのいくつかの試料を標準溶融塩IX浴処理(100重量%NaNO,430℃の温度で2時間)にかけ、他は無処理(無IXガラス−セラミック)とした。これらの群からの他のサンプルを、また表Iの実施例1の結晶性ガラスのいくつかのサンプルも、ビッカース硬度及びヌープ硬度、弾性率(E)、剪断弾性率(G)、ポアソン比(ν)、CTE、歪点、及びアニール点を含む、表VI及び表VIIに報告される様々な機械的及び物理的な特性測定にかけた。
【0105】
【表6】
【0106】
【表7】
【0107】
本開示に説明されるガラス−セラミックの別の実施例を表VIIIに与える。表VIIIに挙げた実施例結晶性ガラスは、融解及び清澄化時に1000gの結晶性ガラスが得られるように配合した原材料バッチを用いて、白金るつぼ内で作製した。配合原材料バッチを収めたるつぼのそれぞれを1575℃〜1650℃に予備加熱した炉に入れ、配合原材料バッチは融解し、清澄化されて、溶融結晶性ガラスになり、次いで溶融結晶性ガラスを流し込成形により結晶性ガラスの平塊にして、600℃で1時間、アニールした。このようにして、次いで、多くの異なる及び/または同様の、熱処理に、そのような、異なるかまたは同様の温度−時間サイクルにプログラムした静置炉に入れることで、実施例結晶性ガラスの個々の平塊をかける(核形成及び結晶化させる)ことができた。
【0108】
【表8】
【0109】
表VIIIの実施例1〜4を室温と500℃の間の温度に設定された炉内に挿入し、5℃/分のレートで780℃の核形成温度(Tn)まで加熱し、780℃に2時間保持した。次いでサンプルを5℃/分のレートで780℃から975℃の結晶化温度(Tc)まで加熱し、結晶化温度(Tc)に4時間保持してから、室温(約25℃)まで冷却した。
【0110】
表VIIIの実施例5及び6をそれぞれ、5℃/分のレートで500℃から780℃に加熱し、次いで780℃に97分間保持した。780℃での保持時間後、サンプルを5℃/分のレートで780℃から1000℃に加熱し、次いで1000℃に110分間保持してから、室温(約25℃)まで冷却した。
【0111】
サンプル1〜6について測定したCIELAB色空間座標も表VIIIに挙げてある。実施例1〜4は色へのAlの効果を示し、Alの量の増加にともなってbが減少している。実施例5及び6はそれぞれ、ZrO及びPの添加の効果を示す。
【0112】
表VIIIの実施例1及び4の結晶相構成の結晶相及び結晶寸法をX線回折(XRD)によって測定し、表IXに挙げてある。これらのガラス−セラミックは主結晶相としてβスポジュメン固溶体を含み、少結晶相がルチルを含む、結晶相構成を示した。
【0113】
【表9】
【0114】
本明細書に説明した材料、方法及び物品には様々な改変及び変形がなされ得る。本明細書の考察及び本明細書に開示した材料、方法及び物品の実施から、本明細書に説明した材料、方法及び物品の他の態様が明らかであろう。本明細書及び実施例は例示と見なされるべきである。
【符号の説明】
【0115】
100 サンプル
110 サンプル表面
120 層深さ(DOL)
130 サンプル中心領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11