特許第6673989号(P6673989)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6673989
(24)【登録日】2020年3月9日
(45)【発行日】2020年4月1日
(54)【発明の名称】炭素繊維リム用作製プロセス
(51)【国際特許分類】
   B29C 39/10 20060101AFI20200323BHJP
   B29C 39/24 20060101ALI20200323BHJP
   B29C 39/44 20060101ALI20200323BHJP
   B29C 70/16 20060101ALI20200323BHJP
   B29C 70/42 20060101ALI20200323BHJP
   B29C 33/76 20060101ALI20200323BHJP
   B29K 105/08 20060101ALN20200323BHJP
【FI】
   B29C39/10
   B29C39/24
   B29C39/44
   B29C70/16
   B29C70/42
   B29C33/76
   B29K105:08
【請求項の数】10
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-152915(P2018-152915)
(22)【出願日】2018年8月15日
(65)【公開番号】特開2020-26108(P2020-26108A)
(43)【公開日】2020年2月20日
【審査請求日】2018年8月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】518292058
【氏名又は名称】マーシャル インダストリアル コープ.
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(72)【発明者】
【氏名】蔡明仁
【審査官】 ▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3197117(JP,U)
【文献】 国際公開第2013/187418(WO,A1)
【文献】 特表2017−537822(JP,A)
【文献】 特表2010−528896(JP,A)
【文献】 特開平07−001467(JP,A)
【文献】 特表平08−509182(JP,A)
【文献】 特開2002−307903(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0013119(US,A1)
【文献】 米国特許第05246275(US,A)
【文献】 国際公開第2015/018593(WO,A1)
【文献】 特開昭63−203323(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 39/00 − 39/44
B29C 70/00 − 70/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアリングを用意し、前記コアリングは、分けることが可能であり環状を呈するコア材を備えるステップと、
前記コアリングに少なくとも一束の第1ドライ炭素糸を前記コアリングの径方向に対して斜め連続的に巻き付くことにより、前記コアリングの全体を覆って、第1リム初期仕掛品を形成するステップと、
金型に前記第1リム初期仕掛品を入れて、エアを抜いて、樹脂を注入して加熱することによって硬化することにより、第2リム初期仕掛品を形成するステップと、
前記金型から前記第2リム初期仕掛品を取り出して、前記コア材を分けて除去するステップと、を含み、
前記コア材は、固体かつ非流動性の連続的環状部材であり、前記コア材は、一体的に作られ、前記少なくとも一束の第1ドライ炭素糸と前記樹脂とに除去可能に接触することを特徴とする、
炭素繊維リム用作製プロセス。
【請求項2】
前記コアリングを用意するプロセスは、型リングを用意するステップと、少なくとも一つの炭素繊維材により前記型リングを覆って、上仕掛品を形成するステップと、前記上仕掛品の内側に前記コア材を環設するステップと、を含むことを特徴とする、請求項1に記載の炭素繊維リム用作製プロセス。
【請求項3】
更に、前記コア材の内側に補強部材を環設するステップを含むことを特徴とする、請求項2に記載の炭素繊維リム用作製プロセス。
【請求項4】
前記炭素繊維材は、少なくとも一束の第2ドライ炭素糸を備え、前記第2ドライ炭素糸は、複数本の炭素繊維糸を束にして構成され、少なくとも一束の前記第2ドライ炭素糸は、前記型リングを複数層にカバーするように、前記型リングの径方向に対して斜め連続的に巻き付け、各層の前記第2ドライ炭素糸の巻き付き角度は互いに異なることを特徴とする、請求項2に記載の炭素繊維リム用作製プロセス。
【請求項5】
前記コア材は、ポリマー材料、樹脂、セラミック、塩、金属、又は蝋を採用することを特徴とする、請求項1に記載の炭素繊維リム用作製プロセス。
【請求項6】
液体により、前記コア材を構成する、ポリマー材料、樹脂、セラミック、又は塩を分けて除去することを特徴とする、請求項5に記載の炭素繊維リム用作製プロセス。
【請求項7】
前記樹脂またはセラミックは、粉体を加圧して成形されることを特徴とする、請求項5に記載の炭素繊維リム用作製プロセス。
【請求項8】
前記金属または蝋は、加熱して溶融することにより除去されることを特徴とする、請求項5に記載の炭素繊維リム用作製プロセス。
【請求項9】
採用される前記金属または蝋の融点は、前記樹脂が固化された後の融点より低く、前記樹脂のガラス転移温度(glass transition temperature,Tg)より高いことを特徴とする、請求項8に記載の炭素繊維リム用作製プロセス。
【請求項10】
前記第1ドライ炭素糸は、複数本の炭素繊維糸を束にして構成され、少なくとも一束の前記第1ドライ炭素糸は、前記コアリングを複数層にカバーし、各層の前記第1ドライ炭素糸の巻き付き角度は互いに異なることを特徴とする、請求項1に記載の炭素繊維リム用作製プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素繊維リム用作製プロセスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の炭素繊維リムを作製するプロセスは、樹脂に炭素繊維布を予め浸入して、環状を呈するコア型(例えばエアバッグ)に、樹脂を含有する炭素繊維布を複数層に貼り付けて、最後に、金型に入れて熱圧して固化して成形する。
【0003】
しかしながら、このような作製プロセスは、予め浸入するための樹脂を用意することが必要であり、炭素繊維布を貼り付ける作業は、人工で行うことが必要であり、機械により貼り付けることができないため、工数がかなり掛かる。また、各炭素繊維布の炭素繊維の方向が、一致せず、連続せず、ラップする箇所により応力の伝達が連続しないため、構造の整合性が悪く、全体の強度が大幅に降下し、各炭素繊維布のラップする箇所では、大きく多くの隙間が存在するため、加熱して加圧して成形した後、大きく多くのバブルが残留し、不良率が高い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の主な目的は、簡単であり、効率が良く、不良率が低く、作製されたリムの構造の強度が良い炭素繊維リム用作製プロセスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の炭素繊維リム用作製プロセスは、コアリングを用意し、コアリングは、分けることが可能であり環状を呈するコア材を備えるステップと、コアリングに少なくとも一束の第1ドライ炭素糸を斜めで連続的に巻き付くことにより、コアリングの全体を覆って、第1リム初期仕掛品を形成するステップと、金型に第1リム初期仕掛品を入れて、エアを抜いて、樹脂を注入して加熱することによって硬化することにより、第2リム初期仕掛品を形成するステップと、金型から第2リム初期仕掛品を取り出して、コア材を分けて除去するステップと、を含むことを特徴とする。
【0006】
本発明の炭素繊維リム用作製プロセスは、コアリングを用意するプロセスは、型リングを用意するステップと、少なくとも一つの炭素繊維材により型リングを覆って、上仕掛品を形成するステップと、上仕掛品の内側にコア材を環設するステップと、を含むことを特徴とする。
【0007】
本発明の炭素繊維リム用作製プロセスは、更に、コア材の内側に補強部材を環設するステップを含むことを特徴とする。
【0008】
本発明の炭素繊維リム用作製プロセスは、炭素繊維材は、少なくとも一束の第2ドライ炭素糸を備え、第2ドライ炭素糸は、複数本の炭素繊維糸を束にして構成され、少なくとも一束の第2ドライ炭素糸は、型リングを複数層にカバーするように、型リングに斜めで連続的に巻き付け、各層の第2ドライ炭素糸の巻き付き角度は互いに異なることを特徴とする。
【0009】
本発明の炭素繊維リム用作製プロセスは、コア材は、ポリマー材料、樹脂、セラミック、塩、金属、又は蝋を採用することを特徴とする。
【0010】
本発明の炭素繊維リム用作製プロセスは、液体により、コア材を構成する、ポリマー材料、樹脂、セラミック、又は塩を分けて除去することを特徴とする。
【0011】
本発明の炭素繊維リム用作製プロセスは、樹脂またはセラミックは、粉体を加圧して成形されることを特徴とする。
【0012】
本発明の炭素繊維リム用作製プロセスは、金属または蝋は、加熱して溶融することにより除去されることを特徴とする。
【0013】
本発明の炭素繊維リム用作製プロセスは、採用される金属または蝋の融点は、樹脂が固化された後の融点より低く、樹脂のガラス転移温度(glass transition temperature,Tg)より高いことを特徴とする。
【0014】
本発明の炭素繊維リム用作製プロセスは、第1ドライ炭素糸は、複数本の炭素繊維糸を束にして構成され、少なくとも一束の第1ドライ炭素糸は、コアリングを複数層にカバーし、各層の第1ドライ炭素糸の巻き付き角度は互いに異なることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の炭素繊維リム用作製プロセスには次のような効果がある。
(1)本発明に係るドライ炭素糸が連続的に巻き付けられるため、ドライ炭素糸同士の間の隙間がより少なく小さく均一であり、構造がより完璧である。
【0016】
(2)エア抜き、樹脂注入及び加熱硬化プロセスにより、バブルの発生を減少することが可能であり、製品の不良率を大幅に減少することが可能であり、構造の靭性を増加することが可能である。
【0017】
(3)エアバッグにより成形を補助することが必要ないため、作製プロセスを簡単化することが可能であり、作製の効率を増加することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態に係る炭素繊維リム用作製プロセスの上仕掛品の作製を示す図である。
図2】本発明の実施の形態に係る炭素繊維リム用作製プロセスの上仕掛品の作製を示す図である。
図3】本発明の実施の形態に係るコアリングの作製を示す図である。
図4】本発明の実施の形態に係るコアリングの作製を示す図である。
図5】本発明の実施の形態に係る第1リム初期仕掛品の作製を示す図である。
図6】本発明の実施の形態に係る第1リム初期仕掛品の作製を示す図である。
図7】本発明の実施の形態に係る第2リム初期仕掛品に環状溝が形成されていることを示す図である。
図8】本発明の実施の形態に係る炭素繊維リムを示す之斜視図である。
図9】本発明の実施の形態に係る炭素繊維リムの作製プロセスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
図1から図9を参照する。本発明の実施の形態に係る炭素繊維リム用作製プロセスは、下記のステップを含む。
【0021】
コアリング10を用意する。
コアリング10は、分けることが可能であり、環状を呈するコア材11を備える。「分ける」とは、物理的な分割でもいいし、化学的な分割でもよい。本実施の形態に係るコアリング10を用意するプロセスは、型リング12を用意するステップと、少なくとも一つの炭素繊維材により型リング12をカバーし、例えば少なくとも一束の第2ドライ炭素糸20を型リング12に斜めで連続的に巻き付けることにより、上仕掛品30を形成するステップと、上仕掛品3の内側にコア材11を環設するステップと、コア材11の内側に補強部材40を環設するステップと、を含む。
コア材11は、ポリマー材料(発泡可能)、樹脂、セラミック、塩、金属、蝋、又はその他の除去可能な材料を採用する。型リング12と補強部材40とは、例えば耐熱で硬質な材料(例えば炭素繊維複合材)で作製される。これにより、前記炭素繊維リムの構造の強度を増加することが可能である。しかし、補強部材40を設けなくてもよい。
前記炭素繊維材は、少なくとも一束の第2ドライ炭素糸20を備える。第2ドライ炭素糸20は、複数本の炭素繊維糸を束にして構成される。少なくとも一束の第2ドライ炭素糸20は、型リング12を複数層に覆い、各層の第2ドライ炭素糸20の巻付き角度が互いに異なる。これにより、炭素繊維リム1の引張強さを増加することが可能であり、耐用性を増加することが可能であり、損壊しにくくなる。しかし、少なくとも一レイヤの炭素繊維プリプレグを前記型リングに貼り付けることにより、前記上仕掛品を形成してもよい。
【0022】
少なくとも一束の第1ドライ炭素糸50を、コアリング10に斜めで連続的に巻き付けることにより、第1リム初期仕掛品60を形成する。
第1ドライ炭素糸50は、複数本の炭素繊維糸を束にして構成される。少なくとも一束の第1ドライ炭素糸50は、コアリング10に複数層に巻き付けられている。各層の第1ドライ炭素糸50の巻付き角度は互いに異なる。これにより、炭素繊維リム1の引張強さを増加することが可能であり、耐用性を増加することが可能であり、損壊しにくくなる。
【0023】
金型に前記第1リム初期仕掛品60を入れて、エアを抜いて、樹脂を注入して加熱することによって硬化することにより、第2リム初期仕掛品70を形成する。
エアを抜くことにより、少なくとも一束の第1及び第2ドライ炭素糸50, 20の間の隙間に、前記樹脂を全面的に滲入することが可能であり、炭素繊維リム1の整合性及び靭性を増加することが可能である。上記のステップにおいて、内圧により第1リム初期仕掛品60を前記金型の内面へ押し付けることが必要せず、コア材11は、熱膨張による力だけを受けるため、変形しにくく、不良率を降下することが可能である。
【0024】
前記金型から第2リム初期仕掛品70を取り出して、コア材11を分けて除去する。
これは、液体により、前記ポリマー材料、樹脂、セラミック、又は塩を分けて除去する。前記樹脂またはセラミックは、粉体を加圧して成形してもよい。前記液体は、水またはその他の溶剤を採用し、コア材11を分け、分解し、又は溶けることが可能である。前記金属または蝋は、加熱して溶融して除去することが可能である。コア材11が前記金属または蝋を採用する場合には、上記の加熱硬化プロセスの温度がコア材11の融点より低い。
上記の加熱硬化プロセスの時間によって、前記樹脂が固化された後、異なる融点を有してもよい。一般的には、時間が長いほど、融点が高い。例えば、前記樹脂のガラス転移温度である180℃で、前記樹脂を30〜45分間に加熱して硬化すると、固化された前記樹脂の融点は230℃になる。前記金属または蝋の融点は、固化された(curing)前記樹脂の融点より低く、前記樹脂のガラス転移温度(glass transition temperature,Tg)より高い。例えば前記コア材11の融点は200℃であり、前記樹脂のガラス転移温度は180℃であり、固化された前記樹脂の融点は230℃である。これにより、200℃より高くて230℃より低い温度で、コア材11を溶融して除去することが可能である。
【0025】
最後に、第2リム初期仕掛品70の一部を取り除いて、タイヤを取り付けるための環状溝71を形成する。
環状溝71を形成するステップは、コア材11を取り除いて行ってもよい。特に、少なくとも一束の第1ドライ炭素糸を前記コア材に斜めで連続的に巻き付け、前記上仕掛品を設けず、前記第2リム初期仕掛品に環状凹みを直接に成形してもよい。前記環状凹みには、例えばホース状を呈するタイヤを取り付けることが可能である。
【0026】
本発明に係るドライ炭素糸が連続的に巻き付けられるため、ドライ炭素糸同士の間の隙間がより少なく小さく均一であり、構造がより完璧である。
エア抜き、樹脂注入及び加熱硬化プロセスにより、バブルの発生を減少することが可能であり、製品の不良率を大幅に減少することが可能であり、構造の靭性を増加することが可能である。
エアバッグにより成形を補助することが必要ないため、作製プロセスを簡単化することが可能であり、作製の効率を増加することが可能である。
【0027】
上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0028】
1 炭素繊維リム
10 コアリング
11 コア材
12 型リング
20 第2ドライ炭素糸
30 上仕掛品
40 補強部材
50 第1ドライ炭素糸
60 第1リム初期仕掛品
70 第2リム初期仕掛品
71 環状溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9