【文献】
Cytotechnology,2012年,Vol. 64,p. 249-265
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アフコシル化種が、G0グリカン、G1aグリカン、G1bグリカン、G2グリカン、Man 3グリカン、Man 4グリカン、Man 5グリカン、Man 6グリカン、Man 7グリカン、Man 8グリカン、又はMan 9グリカンを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
特許、公開された出願、受託番号、技術論文及び学術論文を含む様々な刊行物が、本明細書を通して引用される。これら引用された刊行物の各々は、その全体が全ての目的のために本明細書に参照により組み込まれる。
【0004】
生物製剤価格競争及び改革法(Biologics Price Competition and Innovation Act)(BPCIA)の一環として、生物製剤製品(生体内で産生されたか又は生体由来の)は、とりわけその製品が既に承認された生物製剤と「高度に類似」しているというデータが存在する場合に、「バイオシミラー」であると示され得る。バイオシミラー製品は、少なくとも、米国食品医薬品局が承認した生物学的製品の生物学的機能及び治療効能を保持していなければならない。
【0005】
モノクローナル抗体(mAbs)は治療用タンパク質として使用することができる。精製したモノクローナル抗体はほとんどの場合、微細なものから重要なものまで選択されたアミノ酸部位の化学修飾に基づいて複雑な異種混合物で存在する。これら修飾の影響を理解することはバイオテクノロジー分野において非常に重要である。モノクローナル抗体は、好ましい静電相互作用を得るバランスを最適化し、かつそれらの構造、安定性、結合親和性、化学的性質及び、従ってそれらの生物学的活性を決定する電荷不均一性を有する。
【0006】
最大限の貯蔵寿命と共に薬物及び製品の一貫性は、薬剤開発者及び製造業者にとって最も重要である。薬物及び製品の短い貯蔵寿命は、通常、製造業者による製造上の課題及び生産の高コストにつながる。細胞培養又は発酵プロセス中に、抗体及びタンパク質は、翻訳後修飾として知られる現象を経る可能性がある。これら修飾は、治療用タンパク質に見られるいくつかの形態の不均一性に寄与する。さらに、プロセス中に与えられる応力によって引き起こされる製造中に生じる不均一性の形態、例えば酵素処理又は自発的分解及び修飾によって生じ得るサイズ及び電荷がある。mAbsは、酸化、脱アミド化、糖化、異性化および断片化を含むいくつかの異なる機構を介した化学修飾を受け、様々な電荷変異体の形成及び不均一性をもたらす。
【0007】
化学的及び酵素的修飾、例えば脱アミド化及びシアリル化は、mAbsに対して正味の負電荷の増加をもたらし、かつpI値の減少を引き起こし、それによって酸性変異体の形成をもたらす。C末端リシン切断は、正味の正電荷の損失をもたらし、酸性変異体形成につながる。酸性変異体を生成するための別の機構は、様々なタイプの共有結合付加物の形成、例えば、グルコースに豊んだ培養培地での製造中又は還元糖が製剤中に存在する場合に貯蔵中にグルコース又はラクトースがリシン又はアルギニン残基の第一アミンと反応し得る糖化である。塩基性変異体の形成は、1つ又は複数のC末端リシンの存在又はプロリンアミド化、スクシンイミド形成、アミノ酸酸化又はシアル酸の除去から生じ得、これは付加的な正電荷を導入するか又は負電荷の除去をもたらし;両方のタイプの修飾はpI値の増加を引き起こす。
【0008】
生産及び製剤中に活性である分解経路には実質的な知識及び経験があるが、現在の課題は、上述の不均一性がどのようにして有効性、効力、免疫原性及びクリアランスに影響し得るかを理解することである。皮下(SC)投与されたmAbsのPKに対する電荷の影響はほとんど知られていない。間質を介しての血管又はリンパ管への通過は、SC投与後の効率的な薬物吸収に対する障壁を提示し得る。mAbsの間質拡散は、それらの電荷によって、及び皮膚の真皮の下に存在する間質領域の負に帯電した成分とのそれらの静電相互作用によって影響を受ける可能性がある。
【0009】
近年、バイオシミラーの開発における成長及び関心は、生物学的製剤、例えばmAbsの生産にいくつかの独自の課題を提示している。革新的な分子の開発は、自由度(latitude)が開発プロセスの自然経過の間にmAbの製品品質特性(product quality attributes)(PQA)及び、最終的に重要品質特性(critical quality attributes)(CQA)を定義することを可能にする。このパラダイムは、次に、候補のパイプラインが最小限の最適化で生産することができるmAbsを取り扱うことができる潜在的に堅牢な生産プラットフォームの実施を可能にする。
【0010】
バイオシミラー分子の開発は、対照的に、(参照製品によって)事前定義されたセットの製品品質特性範囲の制約を課す。プロセス開発に対する影響は、複数のPQAについて定義された範囲内に収める必要性によって、プラットフォームプロセスが提供する可能性のある自由度が有意に低下し得ることである。これは、上述した電荷変異体などの、生物学的に関連しているか、又は潜在的に関連している可能性があると知られている特性に特に当てはまる。より多くの均一な集団を達成するようにそのような不均一性を精製又は減少させることは、プロセス開発者に重大な課題をもたらす。電荷変異体の不均一な集団を構成する種の違いは、しばしば、非常に微細であり、かつその特徴が目的の一次mAb集団に類似している。結果として、これらの望ましくない変異体は、十分なmAb回復を維持しながら効率的に分離することが困難である。より均一な集団のバイオシミラーmAbsに向けてこれら望ましくない変異体を最小限にする必要性がある。
【発明の概要】
【0011】
発明の概要
本開示は、バイオリアクター内で組み換え発現されたモノクローナル抗体のアフコシル化種のレベルを増強又は減少させるための方法を特徴とする。さらに、本開示はまた、バイオリアクター内で組み換え発現されたモノクローナル抗体の高分子量種、酸性種、及び断片のレベルを減少させるための方法を特徴とする。
【0012】
本明細書に提供されるのは、バイオリアクター内で組み換え発現されたモノクローナル抗体のアフコシル化種を減少させるための方法であって、バイオリアクター内でモノクローナル抗体を発現する組み換え細胞を培養し、そして、培養の1日目、2日目、3日目、4日目、又は5日目に開始し、かつ培養の終了まで毎日継続して、前記細胞によって発現されたモノクローナル抗体のアフコシル化種が減少するように、培養物に約0.5 g/L〜約5 g/Lのフコースを注入することによる、方法である。
【0013】
また、バイオリアクター内で組み換え発現されたモノクローナル抗体のアフコシル化種を減少させるための方法であって、バイオリアクター内でモノクローナル抗体を発現する組み換え細胞を培養し、培養の1日目、2日目、3日目、又は4日目に開始し、かつ培養の終了まで隔日で継続して、前記細胞によって発現されたモノクローナル抗体のアフコシル化種が減少するように、培養物に約0.5 g/L〜約5 g/Lのフコースを注入することによる、方法も提供される。
【0014】
本開示の方法によれば、モノクローナル抗体は、腫瘍壊死因子(TNF)アルファに特異的に結合し得る。
【0015】
同様に、本開示の方法によれば、組み換え細胞は、哺乳動物細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞、HEK293細胞、Sp2/0細胞、又はモノクローナル抗体発現のためにバイオリアクター内で増殖され得る任意の他の好適な細胞)を含み得る。
【0016】
本明細書に開示された方法のいずれかにおいて、培養物には、約1 g/L〜約5 g/Lのフコース、約1 g/L〜約4 g/Lのフコース、約1 g/L〜約3 g/Lのフコース、約1 g/L〜約2 g/Lのフコース、及び/又は約2 g/L〜約4 g/Lのフコースが注入され得る。
【0017】
いくつかの実施形態では、フコースは、ボーラス(bolus)で注入される。
【0018】
本開示の方法のいくつかの実施形態では、培養は連続供給培養(continuous-feed culture)であって、培養の2日目、3日目、4日目、又は5日目に開始し、かつ培養の終了まで毎日継続して、24時間の期間にわたって連続して、培養物に供給培地がさらに注入される。本開示の方法の他の実施形態では、培養は延長供給培養(extended-feed culture)であって、培養の2日目、3日目、4日目、又は5日目に開始し、かつ培養の終了まで毎日継続して、約18時間〜約20時間の期間にわたって連続して、培養物に供給培地がさらに注入される。
【0019】
例示的なアフコシル化種は、G0グリカン、G1aグリカン、G1bグリカン、G2グリカン、Man 3グリカン、Man 4グリカン、Man 5グリカン、Man 6グリカン、Man 7グリカン、Man 8グリカン、及び/又はMan 9グリカン、又はこれらの任意の組み合わせを含む。非限定的な一実施形態では、アフコシル化種は、G0グリカンである。
【0020】
本開示の方法によれば、モノクローナル抗体のアフコシル化種は、細胞によって発現されたモノクローナル抗体の総量の約10%以下に減少し; 細胞によって発現されたモノクローナル抗体の総量の約2%〜約10%に減少し; 細胞によって発現されたモノクローナル抗体の総量の約6%以下に減少し;及び又は、細胞によって発現されたモノクローナル抗体の総量の約3%〜約7%に減少する。
【0021】
本開示の方法では、モノクローナル抗体を発現する組み換え細胞は、少なくとも12日間バイオリアクター内で培養され得る。
【0022】
また、アフコシル化種を増強するための方法であって、バイオリアクター内でモノクローナル抗体を発現する組み換え細胞を培養し、次いで、培養の1日目、2日目、3日目、4日目、又は5日目に開始し、かつ培養の終了まで毎日継続して、モノクローナル抗体のアフコシル化種のレベルを増強するのに十分に、24時間の期間にわたって連続して、培養物に供給培地を注入することによる、方法も提供される。同様に、アフコシル化種を増強するための方法であって、バイオリアクター内でモノクローナル抗体を発現する組み換え細胞を培養し、次いで、培養の1日目、2日目、3日目、4日目、又は5日目に開始し、かつ培養の終了まで毎日継続して、モノクローナル抗体のアフコシル化種のレベルを増強するのに十分に、約18時間〜約20時間の期間連続して、培養物に供給培地を注入することによる、方法が提供される。
【0023】
そのような細胞培養物の連続又は延長供給は、G0グリカン、G1aグリカン、G1bグリカン、G2グリカン、Man 3グリカン、Man 4グリカン、Man 5グリカン、Man 6グリカン、Man 7グリカン、Man 8グリカン、又はMan 9グリカン(これらの任意の組み合わせを含む)の1つ又は複数を含むモノクローナル抗体種の1つ又は複数を増強し得る。一実施形態では、細胞培養物の連続又は延長供給は、G0グリカンを含む1つ又は複数のモノクローナル抗体種を増強し得る。
【0024】
細胞培養物の連続又は延長供給は、モノクローナル抗体のアフコシル化種を前記細胞によって発現されたモノクローナル抗体の総量の1%〜約10%に増強することができ、細胞によって発現されたモノクローナル抗体の総量の約1%〜約5%、細胞によって発現されたモノクローナル抗体の総量の約5%〜約10%、細胞によって発現されたモノクローナル抗体の総量の約7%〜約10%、細胞によって発現されたモノクローナル抗体の総量の約8%〜約10%、又は、細胞によって発現されたモノクローナル抗体の総量の約8.5%〜約9.5%に増強することを含む。細胞培養物の継続又は延長供給は、G0モノクローナル抗体のアフコシル化種を細胞によって発現されたモノクローナル抗体の総量の約6%〜約9%に増強することができ、細胞によって発現されたモノクローナル抗体の総量の約6%〜約8%、細胞によって発現されたモノクローナル抗体の総量の約6%〜約7%、又は細胞によって発現されたモノクローナル抗体の総量の約7%〜約8%に増強することを含む。
【0025】
また、モノクローナル抗体の高分子量種、酸性種、及び断片のレベルを減少させるための方法であって、バイオリアクター内でモノクローナル抗体を発現する組み換え細胞を培養し、次いで培養の1日目、2日目、3日目、4日目、又は5日目に開始し、かつ培養の終了まで毎日継続して、モノクローナル抗体の高分子量種、酸性荷電種、及び断片の1つ又は複数を減少させるのに十分に、24時間の期間にわたって連続して、培養物に供給培地を注入することによる、方法が提供される。同様に、モノクローナル抗体の高分子量種、酸性種、及び断片のレベルを減少させるための方法であって、バイオリアクター内でモノクローナル抗体を発現する組み換え細胞を培養し、次いで培養の1日目、2日目、3日目、4日目、又は5日目に開始し、かつ培養の終了まで毎日継続して、モノクローナル抗体の高分子量種、酸性荷電種、及び断片の1つ又は複数を減少させるのに十分に、約18時間〜約20時間の期間連続して、培養物に供給培地を注入することによる、方法も提供される。そのような細胞培養物の連続又は延長供給は、ボーラス供給(bolus-fed)培養によって発現された抗体の高分子量種、酸性種、及び断片のレベルと比較して、モノクローナル抗体の高分子量種、酸性種、及び断片を減少させ得る。
【0026】
連続又は延長供給スキームに従って細胞培養物を供給することによって、モノクローナル抗体の高分子量種は、細胞によって発現されたモノクローナル抗体の総量の約5%以下に減少する。連続又は延長供給スキームに従って細胞培養物を供給することによって、モノクローナル抗体の酸性荷電種は、細胞によって発現されたモノクローナル抗体の総量の約5%以下に減少する。連続又は延長供給スキームに従って細胞培養物を供給することによって、モノクローナル抗体の断片は、細胞によって発現されたモノクローナル抗体の総量の約5%以下に減少する。
【0027】
本明細書に記載されたこれら方法のいずれかは、モノクローナル抗体断片の1つ又は複数を減少させるために使用することができ、当該モノクローナル抗体断片は、定常領域、可変領域、重鎖、軽鎖、重鎖可変領域、軽鎖可変領域、重鎖CDR1、重鎖CDR2、重鎖CDR3、軽鎖CDR1、軽鎖CDR2、及び/又は軽鎖CDR3を含む。いくつかの実施形態では、当該方法はこれら断片の全てを減少させる。しかしながら、これら断片の各々はサイズが著しく変動するので、モノクローナル抗体断片は別個に除外され得る。
【0028】
さらに、いくつかのモノクローナル抗体断片は「機能的に活性」である(抗原に結合する可能性がある)が、他のものは機能的に活性でないので、本明細書に記載の方法は、機能的に活性でないモノクローナル抗体断片を減少させるために使用され得る。同様に、いくつかのモノクローナル抗体の断片(すなわち、scFvs及びVHHである重鎖及び軽鎖の対)が治療的に使用され得る。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、組成物中の非治療的に活性なモノクローナル抗体断片の存在を減少させることによって、変異体抗体組成物を単離するために使用され得る。
【0029】
前述の方法のいずれか、あるいは本明細書に記載又は例示された任意の方法において、モノクローナル抗体は、腫瘍壊死因子(TNF)アルファに特異的に結合する抗体であり得る。
【0030】
同様に、前述の方法のいずれか、あるいは本明細書に記載又は例示された任意の方法において、培養は、抗体を発現する哺乳動物細胞の培養である。細胞は、CHO細胞、HEK293細胞、NS0細胞、Sp2/0細胞、又はモノクローナル抗体発現のためにバイオリアクター内で増殖され得る任意の他の好適な細胞であり得る。
【0031】
本明細書に記載の態様及び実施形態のいずれかは、発明の概要、図面、及び/又は発明の詳細な説明に開示された任意の他の態様又は実施形態と組み合わされてもよく、以下の特定の比限定的な本発明の実施例/実施形態を含む。
【0032】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本願が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書において、文脈上他に明確に指示されない限り、単数形には複数形も含まれる。
【0033】
本明細書に記載されたものと類似又は等価の方法及び材料が本願の実施及び試験に使用され得るが、好適な方法及び材料は以下に記載される。本明細書で言及された全ての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、参照により組み込まれる。
【0034】
本明細書で引用された参考文献は、特許請求された出願の先行技術であると認められるものではない。矛盾する場合には、定義を含む本明細書が優先されることになる。さらに、材料、方法、及び例は、単なる例示であり、限定を意図するものではない。
【0035】
本願の他の特徴及び利点は、実施例とともに以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0037】
発明の詳細な説明
本発明の態様に関連する様々な用語が、本明細書及び特許請求の範囲を通じて使用される。そのような用語は、他に示されない限り当該技術分野における通常の意味を有するものとする。他の具体的に定義された用語は、本明細書に与えられた定義と一致するように解釈されるべきである。
【0038】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、他に明記されていない限り、複数の指示対象を含む。
【0039】
本明細書で使用される場合、用語「含む(comprising)」、「有する」及び「含む(including)」は、より限定的な用語「から本質的になる」及び「からなる」を包含する。
【0040】
対象及び患者という用語は、互換的に使用され、任意の動物を含む。対象は哺乳動物を含み、哺乳動物はコンパニオン及び農場哺乳動物、並びに、マウス、ウサギ、及びラットを含む齧歯類、及び他の齧歯類を含む。いくつかの実施形態では、非ヒト霊長類が好ましい対象であり、ヒトが非常に好ましい対象である。
【0041】
本明細書で使用される場合、用語「モノクローナル抗体の高分子量種(high molecular weight species)」は、例えば抗体二量体、三量体、及び多量体形成を含む、抗体凝集体を指す。
【0042】
本明細書で使用される場合、用語「モノクローナル抗体の酸性荷電種(acidic charge species)」は、主要な種(修飾なし)及び塩基性荷電変異体と比較して酸性荷電変異体を引き起こす、抗体の翻訳後修飾を指す。
【0043】
本明細書で使用される場合、モノクローナル抗体の「断片」としては、これらに限定されるものではないが、定常領域、可変領域、重鎖、軽鎖、重鎖可変領域、軽鎖可変領域、重鎖CDR1、重鎖CDR2、重鎖CDR3、軽鎖CDR1、軽鎖CDR2、及び/又は軽鎖CDR3が挙げられる。「機能的に活性な」断片は、抗原に結合することができる任意のモノクローナル抗体断片を含み得る。
【0044】
本明細書で使用される場合、用語「アフコシル化された(afucosylated)モノクローナル抗体」は、抗体のFc領域中のオリゴ糖がフコース糖単位を有さないように操作されたモノクローナル抗体を指す。抗体がアフコシル化されている場合、その効果は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)を増大させることである。
【0045】
典型的なバイオリアクター(例えば発酵)細胞培養は基礎培地で開始され、培養開始後から培養終了まで定期的に栄養素が注入される。この注入は、一般に供給培地の注入であり、タンパク質発現段階中に細胞培養を維持する。ほとんどの場合、供給培地注入はボーラス注入を介して行われ、濃縮された供給培地が設定された時点で、通常1日に1回、細胞培養物に迅速に添加される。
【0046】
モノクローナル抗体を発現するためにバイオリアクター培養が使用される場合、モノクローナル抗体調製は望ましくない不純物を含み、斯かる不純物は、抗体の電荷変異体種、抗体の断片、抗体の凝集体、及び他の変異体種を含む。所望のモノクローナル抗体と構造的に関連するこれらの不純物は、一般的に、クロマトグラフィーのようなその後の精製プロセス中に除去することが難しく、それは、精製プロセスが、所望の抗体産物と望ましくない種、断片等とを完全に区別するには不十分な感度を有するためである。
【0047】
所望の抗体の変異体種、断片、凝集体、及び他の望ましくない変形の包含は、抗体調製物の最終的な効力への影響を有する。抗体のアフコシル化された変異体の場合、例えば、そのような抗体のアフコシル化種は、免疫エフェクター機能、例えば抗体依存性細胞媒介性傷害(ADCC)に影響を有し、これは、部分的には、抗体Fc上のグリコシル化パターンにより、特に、グリカン分子のフコースレベルによってもたらされる。従って、他の特性の中でも効力及びADCCを調節するために、抗体種及び変異体を制御することが可能であることが望ましい。バイオシミラー抗体産生の場合、規制の精査に合格し、かつバイオシミラー製品としての状態を維持するために、抗体調製物が参照製品と十分に一致するように、そのような種及び変異体を制御することがさらに望ましい。
【0048】
本発明によれば、バイオリアクター細胞培養条件、特に、供給スケジュール及びタイプは、特定の変異体種のレベルに直接的な影響を及ぼすことが観察されている。ボーラス供給から、より延長された供給又はさらに連続供給への変更が、バイオリアクター内で発現されたモノクローナル抗体調製物中の酸性荷電変異体及び抗体断片のレベルを有意に減少させることが観察された。加えて、供給技法におけるそのような変更が、細胞培養物の健康状態を増強することも観察された。しかしながら、この変更の1つの結果は、抗体のアフコシル化種のレベルが有意に増強されるということであった。
【0049】
アフコシル化種の増強されたレベルはいくつかの場合には望ましいが、アフコシル化種の増強されたレベルは他の場合には望ましくない。従って、変更された供給スキームの利益を維持するが、増強されたレベルが望ましくない抗体調製物中のアフコシル化種のレベルを減少させるために、有益な供給スキームに損害をもたらすことなく、又は抗体調製物に新たな損害なく、アフコシル化種を減少させる方法を決定するための実験を行った。そのような実験に従って、バイオリアクター細胞培養物に特定の注入スケジュールに従ってフコースを注入することにより、発現されるモノクローナル抗体の他の種又は変異体のレベルを増強することなく、かつ細胞培養物の全体的な健康状態に負の影響を与えることなく、アフコシル化種の減少を達成することができることが観察された。
【0050】
従って、本発明は、バイオリアクター内で組み換え発現されたモノクローナル抗体の電荷変異体、断片、及び凝集体のレベルを低減するための方法を特徴とする。さらに、本発明は、バイオリアクター内で組み換え発現されたモノクローナル抗体のアフコシル化種のレベルを調節するための方法を特徴とする。当該方法は、別々に又は一緒に使用することができる。
【0051】
バイオリアクター内で組み換え発現されたモノクローナル抗体のアフコシル化種を減少させるための方法は、一般に、バイオリアクター内でモノクローナル抗体を発現する組み換え細胞を培養し、次いで、前記細胞によって発現されたモノクローナル抗体のアフコシル化種が減少するように、培養物に約0.5 g/L〜約5 g/Lのフコースを注入すること、を含む。フコースの注入は、タイミング的には、供給培地による細胞培養物の注入によって開始され、同時に行われる。特定の実施形態では、フコースの注入は、供給培地注入の開始よりも前の日に行われないことが好ましい。フコース及び/又は供給培地注入は、当該技術分野における任意の好適な技法に従って、例えば、バイオリアクター細胞培養と連絡しているポートを介してもよい。フコースが供給培地中に補充される場合、供給物は、所望の速度で蠕動ポンプ及びチューブを介して注入される。フコースが別々に(ボーラス)添加される場合、約2〜5分かけて注入される。
【0052】
任意の好適な供給培地が細胞培養物中に注入され得る。供給培地は、一般的に市販されており、そのような商業的に製造された供給培地は、本明細書に記載又は例示された方法での使用に適している。供給培地は、本明細書に記載又は例示された任意の培地を含み得る。
【0053】
供給培地の注入は、複数日のバイオリアクター細胞培養の約1日目、約2日目、約3日目、約4日目、約5日目、約6日目、又は約7日目に開始し、その後、細胞培養の終了まで継続し得る。細胞培養は、少なくとも約7日、少なくとも約10日、少なくとも約11日、少なくとも約12日、少なくとも約13日、少なくとも約14日、少なくとも約15日、少なくとも約16日、少なくとも約17日、少なくとも約18日、少なくとも約19日、少なくとも約20日、少なくとも約21日、少なくとも約22日、少なくとも約23日、少なくとも約24日、又は24日超であり得る。細胞培養は、約10日〜約21日間、約10日〜約14日間、約10日〜約12日間、又は約11日〜約13日間続き得る。
【0054】
供給培地の注入及びフコースの注入は、培養の約3日目、約4日目、又は約5日目に開始し、その後、培養の終了まで毎日継続する。供給培地及びフコースの注入は、培養の約1日目又は約2日目に開始し、その後、培養の終了まで毎日継続する。供給培地の注入は、延長供給スケジュール、連続供給スケジュール、又は延長供給スケジュールと連続供給スケジュールとの組み合わせに従う。
【0055】
連続供給スケジュールは、24時間の期間にわたって連続して、細胞培養物に供給培地を注入することを含む。ボーラスとして通常注入されるであろう同じ量/濃度の供給培地が、培養物に注入されるが、その量は分配されて、実質的に均等に24時間かけて注入される。ボーラス当たりで注入されたであろう量/濃度と比較して、より多くの量/濃度の供給培地が24時間にわたって注入される。ボーラス当たりで注入されたであろう量/濃度と比較して、より少ない量/濃度の供給培地が24時間にわたって注入される。したがって、連続供給スケジュールの下では、供給培地注入の開始から、細胞培養の終了まで、又は細胞培養物中への供給培地注入を終了することが望ましいとされるまで、供給培地は細胞培養物中に常に注入される。
【0056】
延長供給スケジュールは、ボーラス注入よりも長い期間だが、全24時間はかけずに、細胞培養物に供給培地を注入することを含む。ボーラス注入は、約5分〜約1時間の期間にわたる注入を含む。一般に、ボーラス注入は、約5分〜約15分の期間にわたって進行する。
【0057】
延長供給スケジュールは、細胞培養物中への供給培地の送達を約6時間〜約23時間の期間にわたって延長する。延長供給スケジュールは、約8時間〜約18時間、約12時間〜約22時間、約12時間〜約20時間、約12時間〜約18時間、約16時間〜約22時間、約16時間〜約20時間、約16時間〜約18時間、又は約17時間〜約19時間の期間にわたって、細胞培養物中への供給培地の送達を延長する。いくつかの実施形態では、約18時間の延長供給期間が好ましい。延長供給期間の終了から24時間のポイントまでの時間のバランスの間は、供給培地は細胞培養物中に注入されない。したがって、延長供給スケジュールの下では、供給培地注入の開始から、細胞培養の終了まで、又は細胞培養物中に供給培地注入を終了することが望ましいとされるまで、供給培地は細胞培養物中に延長供給期間にわたって毎日注入される(次いで約24時間のマークまでの休止)。
【0058】
フコース注入は供給培地注入スケジュールに従い得る。したがって、例えば、供給培地注入が培養の4日目に開始する場合、フコース注入も培養の4日目に開始する。いくつかの実施形態では、フコース注入は供給培地注入に先行しないことが好ましい。フコース注入は供給培地注入と同時であってもよい。例えば、延長供給スケジュールが使用される場合、フコースは、供給培地の注入の間のいくつかのポイントで注入され、供給培地注入が無い期間中には注入されない。
【0059】
フコース注入は、ボーラス注入であってもよく、延長供給注入又は連続注入でなくてもよい。したがって、フコースは、約5分〜約1時間、又は約5分〜約15分の期間に濃縮形態で細胞培養物中に注入される。フコース注入が連続供給スケジュールと共に又は延長供給スケジュールと共に使用される方法では、フコース注入は毎日又は少なくとも隔日で、かつ1日のほぼ同じ時間であり、24時間の期間当たり少なくとも1回のフコース注入があることを保証する。フコース注入は、一旦開始されると、毎日又は少なくとも隔日で、供給培地注入の開始から細胞培養の終了まで、又は細胞培養物中への供給培地注入を終了することが望ましいとされるまで、又はフコース注入を終了することが望ましいとされるまで、行われる。
【0060】
いくつかの好ましい実施形態では、細胞培養物中に注入されるフコースの量は、毎日同じ量であるが、より多くの量、又はより少ない量のフコースが異なる日に培養物に注入されてもよい。注入されるフコースの量は、バイオリアクター発現調製物中のモノクローナル抗体のアフコシル化種のレベルを、所望のレベルに減少させるのに有効な量である。例えば、バイオシミラーの文脈において、所望のレベルは、参照抗体調製物中に存在するアフコシル化種のレベルに近似するレベルであり得る。
【0061】
実施形態では、細胞培養物の1リットル当たり約0.05 g(g/L)〜細胞培養物の1リットル当たり約10 g(g/L)のフコースが、1日当たり、例えばボーラスとして注入される。いくつかの実施形態では、約0.05 g/L〜約5 g/Lのフコース、約0.1 g/L〜約10 g/L、約0.1 g/L〜約3 g/Lのフコース、約0.1 g/L〜約2 g/L、約0.5 g/L〜約10 g/Lのフコース、約1 g/L〜約10 g/L、約1 g/L〜約5 g/L、約1 g/L〜約4 g/L、約1 g/L〜約3 g/L、約1 g/L〜約2 g/L、約2 g/L〜約5 g/L、約2 g/L〜約4 g/L、約2 g/L〜約3 g/L、約3 g/L〜約5 g/L、約3 g/L〜約4 g/L、又は約4 g/L〜約5 g/L細胞培養物のフコースが、1日当たり、例えばボーラスとして注入される。
【0062】
細胞培養は、バイオリアクター細胞培養、例えば発酵細胞培養であり得る。特定の好ましい実施形態では、細胞は組み換え体であり、かつモノクローナル抗体を発現する。特定の実施形態では、細胞は真核細胞であってもよく、哺乳動物細胞が最も好ましい。本明細書に記載又は例示された方法に従ってモノクローナル抗体を発現するのに適している哺乳動物細胞の比限定的な例としては、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト胎児腎臓293(HEK293)細胞、Sp2/0細胞、及びNS0細胞が挙げられる。
【0063】
当該方法は、バイオリアクター内でそのような細胞によって発現された任意のモノクローナル抗体との使用に適している。いくつかの好ましい実施形態では、モノクローナル抗体は、腫瘍壊死因子(TNF)アルファに特異的に結合する。TNFアルファに特異的に結合する任意のモノクローナル抗体を使用することができ、斯かるモノクローナル抗体は米国特許第6,090,382号明細書に記載された抗体を含むが、これに限定されない。
【0064】
いくつかの好ましい実施形態では、抗体は全長モノクローナル抗体であり、可変領域及び定常領域の両方を含む。抗体は、重鎖定常領域及び/又は軽鎖定常領域を有し得る。抗体は、抗原結合特異性を保持し、かつ全長抗体分子の親和性の大半又は全ても保持している、全長抗体の誘導体又は断片又は部分を含み得る。抗体は、抗体活性又は安定性に影響を与え得る翻訳後修飾(PTM)又は部分を含み得る。抗体は、メチル化、アセチル化、グリコシル化、硫酸化、リン酸化、カルボキシル化、及び/又はアミド化されてもよく、かつ当該技術分野でよく知られている他の部分を含んでもよい。
【0065】
連続供給及び延長供給スキームは、モノクローナル抗体のアフコシル化種の濃度を増強するために用いることができる。その増強は、バイオリアクター細胞培養物中へのフコースの注入によって調節され得る。それにもかかわらず、バイオリアクター細胞培養物へのフコースの注入は、アフコシル化された抗体種の産生を阻害するために使用され、一般に、連続供給又は延長供給スキームが用いられるかに関わらず、例えば、本明細書に記載及び例示されたように抗体調製物中の他の望ましくない抗体変異体及び種を減少させるために適している。フコースの注入はまた、ボーラス供給スキーム(供給培地による細胞培養物への注入のための)とともに使用することができる。したがって、本開示によってアフコシル化種のレベルは調節され得る。
【0066】
アフコシル化種は、G0グリカン、G1aグリカン、G1bグリカン、G2グリカン、Man 3グリカン、Man 4グリカン、Man 5グリカン、Man 6グリカン、Man 7グリカン、Man 8グリカン、又はMan 9グリカン(
図8)の1つ又は複数のいずれかを含むモノクローナル抗体を含み得る。当該方法は、G0グリカンを含むモノクローナル抗体種のレベルを調節するために使用することができる。アフコシル化種は、G0グリカン、G1グリカン、G2グリカン、Man 5グリカン及びMan 6グリカンを含むモノクローナル抗体を含み得る。いくつかの実施形態では、アフコシル化種は、G0グリカン及びMan 5グリカンを含む。抗TNFモノクローナル抗体について、G0グリカンはバイオリアクター内で発現されるモノクローナル抗体の約3%〜約7%を含むことができ、G1グリカンは約0.8%〜約2%を含むことができ、Man 5グリカンは約0.8%〜約1.8%を含むことができる。
【0067】
フコース注入は、モノクローナル抗体のアフコシル化種のレベルを、調製物中のモノクローナル抗体の総量(所望の抗体分子、並びにその種及び変異体を含むモノクローナル抗体の総量)の約20%以下に減少させることができる。フコース注入は、アフコシル化種のレベルを、調製物中のモノクローナル抗体の総量の約10%以下に減少させることができる。モノクローナル抗体の総量は、所望の主要なモノクローナル抗体、並びに、酸性種、塩基性種、アフコシル化種、凝集体、高分子量種、断片、及び他の抗体種を含む全ての変異体種を含む。フコース注入は、アフコシル化種のレベルを、調製物中のモノクローナル抗体の総量の約9%以下、約8%以下、約7%以下、約6%以下、約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下、又は約1%以下に減少させることができる。フコース注入は、アフコシル化種のレベルを、調製物中のモノクローナル抗体の総量の約1%〜約20%、約1%〜約15%、約1%〜約12%、約1%〜約10%、約1%〜約8%、約1%〜約6%、約2%〜約16%、約2%〜約13%、約2%〜約10%、約2%〜約8%、約2%〜約6%、約3%〜約8%、約3%〜約6%、約3%〜約5%、約4%〜約18%、約4%〜約12%、約4%〜約8%、約4%〜約6%、約5%〜約15%、約5%〜約10%、約6%〜約18%、約6%〜約12%、約8%〜約15%、約8%〜約12%、又は約10%〜約20%に減少させることができる。
【0068】
細胞培養の間の供給培地のボーラス注入は、(総抗体調製物の)約6〜7%のレベルの抗体のアフコシル化種を産生することが観察された。総抗体調製物の約5%、又は総アフコシル化種の約70〜85%が、G0グリカン種を含んだ。延長供給又は連続供給(供給培地の注入)スキームが、抗体の高分子量種、酸性種、及び断片のレベルを減少させながら、アフコシル化種のレベルを総抗体調製物の約8.5〜9.5%に増強することがさらに観察された。これらの供給スキームの下では、総抗体調製物の約6〜7%、又は総アフコシル化種の約60〜75%が、G0グリカン種を含んだ。
【0069】
フコース注入は、延長供給又は連続供給スキームと組み合わせた場合、アフコシル化種の全体レベル及び抗体のG0グリカン種のレベルの両方を減少させた。この減少は、ボーラス供給レベルを達成するように調整されてもよく、又は所望であれば、ボーラス供給レベルよりも低くされてもよい。フコース注入は、延長供給又は連続供給で減少したレベルの抗体の高分子量、酸性、又は断片種又は変異体を増強しなかった。
【0070】
フコース注入は、総アフコシル化種のレベルを、フコース注入が無かったか、又はフコースが供給培地の注入と一致して実質的に毎日注入されなかった細胞培養で産生されたアフコシル化抗体種のレベルの約1%〜約99%又はそれ以上に減少させ得る。いくつかの実施形態では、フコース注入は、総アフコシル化種のレベルを、フコース注入が無かったか、又はフコースが供給培地の注入と一致して実質的に毎日注入されなかった細胞培養で産生されたアフコシル化抗体種のレベルの、約5%〜約80%、約5%〜約70%、約5%〜約60%、約5%〜約50%、約5%〜約40%、約5%〜約30%、約5%〜約20%、約10%〜約70%、約10%〜約60%、約10%〜約50%、約10%〜約40%、約10%〜約30%、約10%〜約20%、約20%〜約60%、約20%〜約50%、約20%〜約40%、約20%〜約30%、約30%〜約60%、約30%〜約50%、約30%〜約40%、約40%〜約70%、約40%〜約60%、約50%〜約80%、約50%〜約70%、又は約50%〜約60%に減少させ得る。フコース注入は、ボーラス供給、延長供給、又は連続供給細胞培養で産生されたアフコシル化種のレベルを減少させ得る。
【0071】
フコース注入は、G0グリカン種のレベルを、フコース注入が無かったか、又はフコースが供給培地の注入と一致して実質的に毎日注入されなかった細胞培養で産生されたG0グリカン抗体種のレベルの約1%〜約99%又はそれ以上に減少させ得る。フコース注入は、G0グリカン種のレベルを、フコース注入が無かったか、又はフコースが供給培地の注入と一致して実質的に毎日注入されなかった細胞培養で産生されたG0グリカン抗体種のレベルの、約5%〜約80%、約5%〜約70%、約5%〜約60%、約5%〜約50%、約5%〜約40%、約5%〜約30%、約5%〜約20%、約10%〜約70%、約10%〜約60%、約10%〜約50%、約10%〜約40%、約10%〜約30%、約10%〜約20%、約20%〜約60%、約20%〜約50%、約20%〜約40%、約20%〜約30%、約30%〜約60%、約30%〜約50%、約30%〜約40%、約40%〜約70%、約40%〜約60%、約50%〜約80%、約50%〜約70%、又は約50%〜約60%に減少させ得る。フコース注入は、ボーラス供給、延長供給、又は連続供給細胞培養で産生されたG0グリカン種のレベルを減少させ得る。
【0072】
バイオリアクター内で組み換え発現されたモノクローナル抗体のアフコシル化種を増強するための方法は、一般に、バイオリアクター内でモノクローナル抗体を発現する組み換え細胞を培養し、次いで、延長供給又は連続供給スキーム、例えば、フコース注入に関して上述したものを含む本明細書に記載及び例示された延長供給及び連続供給スキームに従って、培養物に供給培地を注入することを含む。フコースの注入の無い連続供給及び延長供給は、モノクローナル抗体のアフコシル化種、特にG0グリカン種のレベルを増強する。さらに、そのような連続供給及び延長供給は、アフコシル化種のレベルは増強されるが、ボーラス供給スキームと比較して、他の抗体種、例えば抗体の高分子量種、酸性荷電種、及び断片のレベルを減少させる。これに関して少なくとも酸性荷電種の減少の結果として、主要な抗体のレベルが増強されると考えられる。換言すれば、総抗体調製物中に産生される酸性種が少なくなり、酸性種のパーセンテージの減少は、調製物中の主要な抗体のパーセンテージの増加で補われる。
【0073】
任意の好適な供給培地が細胞培養物中に注入され得る。供給培地は一般に市販されており、そのような商業的に製造された供給培地は本明細書に記載又は例示された方法での使用に適している。
【0074】
供給培地は、本明細書に記載又は例示された任意の培地を含み得る。供給培地の注入は、複数日のバイオリアクター細胞培養の約1日目、約2日目、約3日目、約4日目、約5日目、約6日目、又は約7日目に開始し、その後、細胞培養の終了まで継続し得る。細胞培養は、少なくとも約7日、少なくとも約10日、少なくとも約11日、少なくとも約12日、少なくとも約13日、少なくとも約14日、少なくとも約15日、少なくとも約16日、少なくとも約17日、少なくとも約18日、少なくとも約19日、少なくとも約20日、少なくとも約21日、少なくとも約22日、少なくとも約23日、少なくとも約24日、又は24日超であり得る。細胞培養は、約10日〜約21日間、約10日〜約14日間、約10日〜約12日間、又は約11日〜約13日間続き得る。
【0075】
連続供給スケジュールは、24時間の期間にわたって連続して、細胞培養物に供給培地を注入することを含む。いくつかの実施形態では、ボーラスとして通常注入されるであろう同じ量/濃度の供給培地が、培養物に注入されるが、その量は分配されて、実質的に均等に24時間かけて注入される。ボーラス当たりで注入されたであろう量/濃度と比較して、より多くの量/濃度の供給培地が24時間にわたって注入される。ボーラス当たりで注入されたであろう量/濃度と比較して、より少ない量/濃度の供給培地が24時間にわたって注入される。したがって、連続供給スケジュールの下では、供給培地注入の開始から、細胞培養の終了まで、又は細胞培養物中への供給培地注入を終了することが望ましいとされるまで、供給培地は細胞培養物中に常に注入される。
【0076】
延長供給スケジュールは、ボーラス注入よりも長い期間だが、全24時間はかけずに、細胞培養物に供給培地を注入することを含む。ボーラス注入は、約5分〜約1時間の期間にわたる注入を含む。一般に、ボーラス注入は、約5分〜約15分の期間にわたって進行する。
【0077】
延長供給スケジュールは、細胞培養物中への供給培地の送達を約6時間〜約23時間の期間にわたって延長する。延長供給スケジュールは、約8時間〜約18時間、約12時間〜約22時間、約12時間〜約20時間、約12時間〜約18時間、約16時間〜約22時間、約16時間〜約20時間、約16時間〜約18時間、又は約17時間〜約19時間の期間にわたって、細胞培養物中への供給培地の送達を延長する。いくつかの実施形態では、約18時間の延長供給期間が好ましい。延長供給期間の終了から24時間のポイントまでの時間のバランスの間は、供給培地は細胞培養物中に注入されない。したがって、延長供給スケジュールの下では、供給培地注入の開始から、細胞培養の終了まで、又は細胞培養物中に供給培地注入を終了することが望ましいとされるまで、供給培地は細胞培養物中に延長供給期間にわたって毎日注入される(次いで約24時間のマークまでの休止)。
【0078】
細胞培養の延長供給又は連続供給は、総アフコシル化種のレベルを、供給培地のボーラス供給を介して供給される細胞培養で産生されたアフコシル化抗体種のレベルの約1%〜約99%又はそれ以上に増強し得る。細胞培養の延長供給又は連続供給は、総アフコシル化種のレベルを、供給培地のボーラス供給を介して供給される細胞培養で産生されたアフコシル化抗体種のレベルの、約5%〜約60%、約5%〜約50%、約5%〜約40%、約5%〜約30%、約5%〜約20%、約5%〜約15%、約5%〜約10%、約10%〜約50%、約10%〜約40%、約10%〜約30%、約10%〜約20%、約10%〜約15%、約20%〜約80%、約20%〜約70%、約20%〜約60%、約20%〜約50%、約20%〜約40%、約20%〜約30%、約30%〜約80%、約30%〜約70%、約30%〜約60%、約30%〜約50%、約30%〜約40%、約40%〜約90%、約40%〜約80%、約40%〜約70%、約40%〜約60%、約50%〜約90%、約50%〜約80%、約50%〜約70%、約50%〜約60%、約60%〜約90%、約60%〜約80%、約60%〜約70%、約70%〜約90%、又は約75%〜約85%に増強し得る。
【0079】
細胞培養の延長供給又は連続供給は、G0グリカン抗体種のレベルを、供給培地のボーラス供給を介して供給される細胞培養で産生されたG0グリカン抗体種のレベルの約1%〜約99%又はそれ以上に増強し得る。細胞培養の延長供給又は連続供給は、G0グリカン抗体種のレベルを、供給培地のボーラス供給を介して供給される細胞培養で産生されたG0グリカン抗体種のレベルの、約5%〜約60%、約5%〜約50%、約5%〜約40%、約5%〜約30%、約5%〜約20%、約5%〜約15%、約5%〜約10%、約10%〜約50%、約10%〜約40%、約10%〜約30%、約10%〜約20%、約10%〜約15%、約20%〜約80%、約20%〜約70%、約20%〜約60%、約20%〜約50%、約20%〜約40%、約20%〜約30%、約30%〜約80%、約30%〜約70%、約30%〜約60%、約30%〜約50%、約30%〜約40%、約40%〜約90%、約40%〜約80%、約40%〜約70%、約40%〜約60%、約50%〜約90%、約50%〜約80%、約50%〜約70%、約50%〜約60%、約60%〜約90%、約60%〜約80%、約60%〜約70%、約70%〜約90%、又は約75%〜約85%に増強し得る。
【0080】
細胞培養の延長供給又は連続供給は、総アフコシル化種のレベルを、細胞培養で産生されたモノクローナル抗体の全レベルの約0.5%〜約20%に増強し得る。細胞培養の延長供給又は連続供給は、総アフコシル化種のレベルを、細胞培養で産生されたモノクローナル抗体の全レベルの、約1%〜約15%、約1%〜約5%、約1%〜約7%、約1%〜約5%、約1%〜約3%、約2%〜約7%、約2%〜約10%、約2%〜約5%、約2%〜約4%、約3%〜約10%、約3%〜約9%、約3%〜約6%、約3%〜約5%、約4%〜約12%、約4%〜約10%、約4%〜約8%、約4%〜約7%、約4%〜約6%、約5%〜約17%、約5%〜約15%、約5%〜約13%、約5%〜約12%、約5%〜約11%、約5%〜約10%、約5%〜約9%、約5%〜約8%、約5%〜約7%、約5%〜約6%、約6%〜約20%、約6%〜約15%、約6%〜約13%、約6%〜約12%、約6%〜約11%、約6%〜約10%、約6%〜約9%、約7%〜約18%、約7%〜約15%、約7%〜約13%、約7%〜約12%、約7%〜約11%、約7%〜約10%、約7.5%〜約9.5%、約8%〜約15%、約8%〜約13%、約8%〜約12%、約8%〜約11%、約8%〜約10%、約8%〜約9%、約8.5%〜約9.5%、約9%〜約15%、約9%〜約13%、約9%〜約12%、約9%〜約11%、約9%〜約10%、約10%〜約15%、約10%〜約13%、又は約10%〜約12%に増強し得る。延長供給又は連続供給細胞培養は、ボーラス供給細胞培養によって発現されたアフコシル化種のレベルと比較して、アフコシル化種のレベルを増強し得る。
【0081】
細胞培養の延長供給又は連続供給は、G0グリカン種のレベルを、細胞培養で産生されたモノクローナル抗体の全レベルの約5%〜約15%に増強し得る。細胞培養の延長供給又は連続供給は、G0グリカン種のレベルを、細胞培養で産生されたモノクローナル抗体の全レベルの、約5%〜約14%、約5%〜約13%、約5%〜約12%、約5%〜約11%、約5%〜約10%、約5%〜約9%、約5%〜約8%、約5%〜約7%、約5%〜約6%、約6%〜約15%、約6%〜約14%、約6%〜約13%、約6%〜約12%、約6%〜約11%、約6%〜約10%、約6%〜約9%、約6%〜約8%、約6%〜約7%、約7%〜約15%、約7%〜約13%、約7%〜約12%、約7%〜約11%、約7%〜約10%、約7%〜約9%、又は約7%〜約8%に増強し得る。延長供給又は連続供給細胞培養は、ボーラス供給細胞培養で発現されたG0グリカン種のレベルと比較して、G0グリカン種のレベルを増強し得る。
【0082】
以下の実施例は、本発明をより詳細に説明するために提供される。それらは本発明を説明することを意図し、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0083】
実施例1
基礎供給戦略
これらの実験は、治療用モノクローナル抗体のバイオリアクター産生中に生じた不均一性を制御する複雑な課題に取り組む精製プロセスを開発するために行われた。基礎/供給培地のための上流プロセス開発は、ベンチトップバイオリアクターのスケールダウンモデルを用いた培地スクリーニング実験から始まった。スクリーニングでは、いくつかの基礎培地タイプといくつかの供給培地タイプとを組み合わせて評価して、適切な組み合わせを決定した。製品の品質及び生産性は、培地選択に用いられた基準の1つである。 基礎/供給培地の選択に続いて、プロセスパラメータの変更及び栄養補助剤の添加によって、製品の品質及び生産性をモニターし、調節した。
【0084】
サイズ排除クロマトグラフィー(SE-UPLC)を用いて、抗体のサイズ変異体分布をモニターした。この方法は、Waters Acquity UPLC BEH200 SECカラム(1.7μm、4.6x150mm)を用いて、リン酸ナトリウムランニング緩衝液によるアイソクラティック(isocratic)であった。280nmの吸光度を用いてピークをモニターした。単量体ピークの前に溶出する種は凝集体(高MW種)であり、単量体ピーク後に溶出する種は分解物(低MW種)であった。
【0085】
陽イオン交換HPLC(CEX-HPLC)を使用して、5.6〜8.0のpH範囲での弱陽イオン交換クロマトグラフィーによってC末端変異体を含む荷電種をモニターした。メインピークの後に溶出する明確なピークは塩基性種と考えられ、かつ、メインピークの前に溶出するピークは酸性種と考えられた。塩基性ピークは、C末端リシン及びアミド化プロリン変異体を含む。糖化及び脱アミド化などの修飾が酸性ピークに存在し得る。
【0086】
基礎プロセスのために、化学的に定義され(CD)かつ動物成分を欠く基礎培地を選択した。培地を、約4〜5日間細胞増殖を維持し、かつ細胞生存率≧95%を維持するのに十分な栄養素を含むように選択した。栄養素を、廃棄物及び代謝物が許容される濃度に収まるような方法でバランスをとって選択した。5つの基礎培地を基礎プロセスでの使用のためにスクリーニングした(表1)。
【0087】
【表1】
【0088】
基礎プロセスのために、化学的に定義され(CD)かつ動物成分を欠く供給培地を選択した。培地を、4〜5日間細胞増殖を維持し、かつ細胞生存率≧95%を維持するように選択した。栄養素は、廃棄物及び代謝物が許容される濃度に収まるような方法でバランスをとった。基礎プロセスでの使用のためにスクリーニングされた供給培地を表2に示す。
【0089】
【表2】
【0090】
基礎培地と供給培地との関係を評価するために設計研究を行った(表3及び4)。本研究の目的は、優れた増殖、生存率、及び適切な抗体発現を提供する基礎培地及び供給培地を組み込む基礎プロセスを開発することであった。基準が満たされると、基礎培地及び供給培地を選択して、基礎プロセスとした。
【0091】
【表3】
【表4-1】
【表4-2】
【0092】
設計研究、並びに振とうフラスコ及びバイオリアクタースケールでの実験から、ベースラインプロセスを決定した。HyCellを基礎培地として選択し、かつCD Efficient Feed Cを供給培地として選択した。供給培地を培養開始4日目に補充し、次いで、培養物に隔日でその後合計4回の添加をさらに供給した(「プロセスA」)。このベースラインプロセスの典型的なプロセスの傾向を、
図1A(生細胞密度)、1B(%生存率)、1C(力価)、1D(酸性種)、1E(インタクトな抗体)、及び1F(G0アフコシル化種)に示す。
【0093】
実施例2
供給戦略
モノクローナル抗体調製物のいくつかの特性が、特定の重要品質特性(CQA)を改善するように調節され得ることが決定された。この調節は、栄養素供給を細胞培養物中に導入する方法を変更することによって達成された。上記実施例1では、基礎プロセスは特定の細胞密度を前提としてボーラス供給を利用し、バイオリアクター培養の4日目に開始して隔日で供給を培養物に添加した。ボーラス供給は、隔日で合計約15分の期間にわたって細胞培養物への栄養素添加を含んだ。しかしながら、その後、供給戦略が、高MW種、抗体断片、及び電荷変異体のレベルを含むタンパク質調製の特定の態様のレベルに影響を与えることが決定された。
【0094】
細胞培養プロセス中に、供給戦略が特定の重要品質特性(例えば、電荷不均一性、断片化、凝集等)を調節し得ることが観察された。試験されたバイオリアクター供給プロセスは、ボーラス供給:5〜30分の供給、4日目に開始して、隔日(プロセスA)、延長供給:10〜18時間の供給、4日目に開始して、毎日(プロセスB)、又は連続供給:1日当たり24時間の供給、4日目に開始して、毎日(プロセスC)、と分類された。延長された期間によるか又は連続的な手段による供給物の添加は、発現された抗体タンパク質のいくつかの品質特性を改善し得ることが観察され(
図2A〜2F)、さらに、そのような供給バリエーションはバイオシミラー抗体バッチに有益であることが観察され、それは、下流処理の必要性を減らしながら、得られたタンパク質調製物が参照製品とより厳密に一致したためである。
【0095】
注目すべきことに、バイオリアクター中に供給された栄養素の全体量は、プロセスA、プロセスB、又はプロセスCのいずれが採用されたかによって変化しなかった。むしろ、時間及び量の分布が供給プロセス間に応じて変更された。供給物の総量はどの戦略が利用されるかに関わらず一定である。プロセスB及びプロセスCによる供給は、いくつかの有益な結果をもたらす:増大した力価、減少した酸性荷電変異体の蓄積、より高いインタクトなmAb(より低い断片)、より長い培養寿命、及び減少した凝集(
図2A〜2F)。
【0096】
実施例3
アフコシル化種の制御
プロセスB又はプロセスCによるバイオリアクター供給について観察された(プロセスAと比較して)有益な結果にも関わらず、プロセス変化の1つの結果はアフコシル化種のレベル、特にG0種の増加であった。
【0097】
抗体のグリコシル化(例えば、IgGアイソタイプ)は、分子のエフェクター機能(例えば、抗体依存性細胞傷害(ADCC))に影響を与える。フコースを有さないか又は低フコースの治療用抗体は、活性化FcγRIIIAに対する結合の増加を示し、それらの高度にフコシル化された対応物と比較して強いADCC応答をもたらす。バイオシミラー開発に関して、アフコシル化された変異体のレベルは、バイオシミラー抗体が参照抗体と比較してどのように挙動することになるかについての示唆を有する。例えば、発現されたバイオシミラーが、より低い含量を有する参照製品と比較して増加したアフコシル化含量を有する場合、これは、参照製品と比較してイン・ビボでより強いADCC応答をもたらすバイオシミラーを生じ得ると考えられる。そのような違いは、抗体がバイオシミラーとしての状態を失う原因となる可能性がある。より広義には、任意の治療用抗体調製物(バイオシミラーであるか否かに関わらず)におけるアフコシル化含量を増強することは、イン・ビボで望ましくないADCC応答を誘導し得る。したがって、バイオリアクター内で産生されるアフコシル化変異体抗体の含量の制御は、特定の治療的状況において望ましい。
【0098】
従って、抗体変異体の特定の望ましくない種を減少させるか又は排除するために供給戦略を変更することは、同時に、抗体変異体のさらに他の望ましくない種を生じる可能性がある;本質的には、1つの問題を解決すると別の問題が生じる。したがって、本実施例による実験は、望ましくない種の制御とアフコシル化変異体の制御との両方の長所を得るために行われた。アフコシル化変異体の増強は一部の状況では望ましい場合があることに留意されたい。
【0099】
プロセスCは、抗体調製物の望ましい特性を増強するだけでなく、G0アフコシル化抗体変異体のレベルも増強することが見出された。アフコシル化種を減少させるために、供給プロセスをさらに変化させるいくつかの実験を行った。そのような一連の実験の1つでは、バイオリアクターへのフコースの添加を評価した。
【0100】
プロセスCによれば、アフコシル化種、特にG0の低下は、L-フコースを細胞培養培地に約1 g/L〜約3 g/Lの濃度で補充することによって達成され得ることが観察された。投与経路も関連性があることが観察された。
【0101】
フコースが毎日又は隔日で添加された場合に、最良の結果が観察された。また、細胞培養の初期段階におけるフコースの供給(1回又は2回のボーラス添加)は、アフコシル化種、特にG0種の増加を阻害しないことも観察された(
図3)。
【0102】
1つの実験では、フコース添加は4日目及び6日目にのみ行われた(2回のフコース添加)。フコース添加は最初のG0低下効果を有したが、次にG0レベルが有意に増加し、G0レベルは補充フコースが培養物に添加されなかった培養について観察されたレベルと本質的に一致した。さらなる実験は、アフコシル化種を減少させるために、フコースは細胞培養全体を通じて含まれなければならないことを明らかにした。フコースのボーラス添加は、毎日又は隔日のいずれかで、G0種レベルを所望の量に低下させることが見出された。
【0103】
(G0種を超えて)総アフコシル化種を見ると、同じ傾向が観察された(
図4)。培養物への初期のフコース添加のみ、及び細胞培養物にフコースを注入しないことは、細胞培養物へのフコースのより連続的な添加とは対照的に、全体的により多い量のアフコシル化種をもたらした。(
図4)に見られるように、全体のアフコシル化フコースレベルはプロセス全体を通じて同じままであった。フコースは培養期間全体を通じて添加される必要がある。それは、最初の数日に添加されたのみの場合、
図3に示されるように、生じるアフコシル化種の低下は収まり、アフコシル化種のレベルは経時的に増加するためである。フコースは、連続供給添加を用いずに4回のボーラス添加で添加される場合が最も好ましい。
【0104】
実施例4
要約
これらのデータは、バイオリアクター内で発現される組み換え抗体の品質制御特性を調節することができる上流プロセスを示す。当該プロセスは、変更されたバイオリアクター供給プロセスとフコースの連続添加とを組み合わせる。延長/連続供給戦略のプロセス及びフコースの補充により、この組み合わせは、生成物関連不純物(例えば、酸性種、G0種)を低下させる。
【0105】
本発明は、上記で説明及び例示された実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲の範囲内での変形及び修正が可能である。
【0106】
等価物
本発明の1つ又は複数の実施形態の詳細が、添付の上記説明に記載されている。本明細書に記載されたものと類似又は等価の任意の方法及び材料を、本発明の実施又は試験に使用することができるが、好ましい方法及び材料をここで記載する。
【0107】
前述の説明は、例示の目的のためのみに提示されたものであり、本発明を開示された正確な形態に限定することを意図するものではなく、添付の特許請求の範囲によって限定される。