(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6674032
(24)【登録日】2020年3月9日
(45)【発行日】2020年4月1日
(54)【発明の名称】抗菌容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/00 20060101AFI20200323BHJP
B29B 7/04 20060101ALI20200323BHJP
A01N 25/10 20060101ALI20200323BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20200323BHJP
【FI】
B29C45/00
B29B7/04
A01N25/10
A23L5/00 G
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-538729(P2018-538729)
(86)(22)【出願日】2016年9月2日
(65)【公表番号】特表2019-505414(P2019-505414A)
(43)【公表日】2019年2月28日
(86)【国際出願番号】KR2016009831
(87)【国際公開番号】WO2017126764
(87)【国際公開日】20170727
【審査請求日】2018年7月19日
(31)【優先権主張番号】10-2016-0007763
(32)【優先日】2016年1月21日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518257194
【氏名又は名称】株式会社ブニエルワールド
【氏名又は名称原語表記】PENIEL WORLD CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】アン ゼサム
(72)【発明者】
【氏名】ベ グムスク
【審査官】
酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−238001(JP,A)
【文献】
特開平09−151317(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00,
A01N 25/10,
A23L 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化アリル及びチオシアン酸カリウムを攪拌して反応させる段階と、
反応させた化合物と植物性油脂とを混合して混合物を生成する段階と、
PP(ポリプロピレン)ペレット及び前記混合物を100℃〜130℃の温度下で2時間攪拌する段階と、
前記PPペレット及び前記混合物を共に混合した後、溶融して溶融物を生成する段階と、
前記溶融物を射出成形する段階と
を含む、抗菌容器の製造方法。
【請求項2】
前記塩化アリル及び前記チオシアン酸カリウムを、150RPM〜200RPMで10時間〜36時間反応させることを特徴とする、請求項1に記載の抗菌容器の製造方法。
【請求項3】
前記化合物と前記植物性油脂との混合比は、重量を基準として1:10ないし1:20であることを特徴とする、請求項1に記載の抗菌容器の製造方法。
【請求項4】
前記混合物の量は、前記PPペレットの重量に対して0.5重量%〜2.5重量%であることを特徴とする、請求項1に記載の抗菌容器の製造方法。
【請求項5】
前記射出成形を、200℃〜230℃の条件で行うことを特徴とする、請求項1に記載の抗菌容器の製造方法。
【請求項6】
前記植物性油脂は、大豆油、トウモロコシ油、菜種油、及びブドウ種子油のうち少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項1に記載の抗菌容器の製造方法。
【請求項7】
前記化合物と前記植物性油脂とを、超音波処理によって混合することを特徴とする、請求項1に記載の抗菌容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌性能を有する抗菌容器の製造方法に関する。より詳細には、アリル化合物、チオシアン化合物、及び植物性油脂を用いた抗菌容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品を保存するための抗菌性能を有する保存容器が開発・発売されている。このような容器は、通常、銀ナノ粒子のような抗菌性を示す無機粒子を容器素材に共に混合した後、射出成形によって製造するのが一般的である。無機粒子は取り扱いが容易であり、かつ単価が安いことから、製造コストを低くできるという長所がある。しかし、このような無機粒子は、接触時に抗菌性を示す性質を利用したものであって、保存容器内部の食品が細菌などによって損傷するのを防止するというよりは、保存容器を取り扱う場合に付着する細菌などが保存容器自体において増殖するのを防止する程度の効果を有するに過ぎない。
【0003】
一方、有機成分を用いた抗菌性能を有する食品保存容器が開発・商用化されている。このような容器は、抗菌性を呈する有機物質をポリエチレン又はポリプロピレン樹脂に混合した後、射出成形などの方法によって製造する。有機物質は、銀ナノ粒子などの無機粒子に比べて、相対的に処理温度のような製造上の変化要因を考慮する必要がある。また、抗菌性能に優れた物質に該当していても、有機抗菌物質を得る際、合成に高いコストがかかるため、経済性が低下するという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、抗菌容器の製造方法を提供することにある。具体的には、その目的は、植物性油脂を用いてアリル化合物とチオシアン化合物との反応化合物の熱安定性を向上させることによって、高い抗菌性を保有する抗菌容器を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る抗菌容器の製造方法は、塩化アリル及びチオシアン酸カリウムを攪拌して反応させる段階と、反応させた化合物と植物性油脂とを混合する段階と、PP(ポリプロピレン)ペレット及び前記混合物を共に混合した後、溶融する段階と、前記溶融物を射出成形する段階と、を含む。
【0006】
一方、前記塩化アリル及び前記チオシアン酸カリウムを、150RPM〜200RPMで10時間〜36時間反応させることができる。
【0007】
一方、前記化合物と前記植物性油脂との混合比を、1:10ないし1:20とすることができる。
【0008】
一方、前記混合物の量を、前記PPペレットの重量に対して0.5重量%〜2.5重量%とすることができる。
【0009】
一方、前記製造方法は、前記PPペレット及び前記混合物を100℃〜130℃の温度下で2時間攪拌する段階をさらに含むことができる。
【0010】
一方、前記射出成形を、200℃〜230℃の条件で行うことができる。
【0011】
一方、前記植物性油脂は、大豆油、トウモロコシ油、菜種油、及びブドウ種子油のうち少なくとも1つを含むことができる。
【0012】
一方、前記化合物と前記植物性油脂とを、超音波処理によって混合することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様に係る抗菌容器の製造方法によれば、植物性油脂を用いてアリル化合物とチオシアン化合物との反応が容器の成形のための高温の環境で行われるようにすることによって、高濃度の抗菌物質が生成される効果を有する抗菌容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る抗菌容器の製造方法を示す順序図である。
【
図3】試験開始から5日間経過後のミニトマトの状態を示す図である。
【
図4】試験開始から5日間及び7日間経過後のイチゴの状態を示す図である。
【
図5】試験開始から26日間経過後の食パンの状態を示す図である。
【
図6】試験開始から7日間経過後の牛乳の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の目的及び効果、そしてそれらを達成するための技術的構成は、添付の図面と共に詳細に後述されている実施例を参照すれば明確になる。本発明を説明するにおいて公知の機能又は構成に関する具体的な説明が本発明の要旨を不要に曖昧にする恐れがあると判断される場合には、その詳細な説明を省略する。そして、後述する用語は本発明での機能を考慮して定義された用語であって、これは使用者、運用者の意図又は慣例などによって変わり得る。
【0016】
しかし、本発明は以下で開示される実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で実現することができる。ただし、本実施例は本発明の開示を完全なものとし、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に理解させるために提供されるものである。なお、本発明は特許請求の範囲の範疇によって定義されるに過ぎない。従って、その定義は、本明細書全般に亘る内容に基づいて行われるべきである。
【0017】
明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」又は「備える」とするとき、これは特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するものではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0018】
以下、本発明の実施例に係る内容を詳細に説明する。
【0019】
本発明の実施例によれば、植物性油脂を用いてアリル化合物とチオシアン化合物との反応化合物の熱安定性を向上させることによって、高い抗菌性を保有する抗菌容器を製造する方法が提供される。
【0020】
図1は、本発明に係る抗菌容器の製造方法を示す順序図である。
図1を参照すれば、本発明の一実施例に係る抗菌容器の製造方法は、塩化アリル、チオシアン酸カリウム(KSCN)を攪拌して反応させる段階を含む(S110)。前記塩化アリル及び前記チオシアン酸カリウムを、150RPM〜200RPMで10時間〜36時間反応させることができる。塩化アリル及びチオシアン酸カリウムを反応させる場合、ワサビの香りが強い物質が生成される。反応物は、イソチオシアン酸アリル(allyl isothiocyanate)として知られている液体を含み、黄色の透明な液体の性状を呈する。ただし、その反応によるイソチオシアン酸アリルの収率が高くないので、反応物には塩化アリル及びチオシアン酸カリウムが共に存在する。このように反応に関わらない塩化アリル及びチオシアン酸カリウムは、以下の追加で記述される工程によって反応が行われ、イソチオシアン酸アリル化合物になり得る。このとき、塩化アリルと共に又は塩化アリルに代えて、ヨウ化アリル、臭化アリルを用いることができ、チオシアン酸カリウムと共に又はチオシアン酸カリウムに代えて、チオシアン酸ナトリウム(NaSCN)を選択して使用することができる。
【0021】
次に、反応させた化合物(反応化合物)と植物性油脂とを混合する(S120)。植物性油脂は、前記反応化合物と混合されて混合物を形成し、混合物の沸点を上昇させる役割を果たすことが好ましい。前記植物性油脂は、反応化合物を希釈させる役割と、イソチオシアン酸アリルによる抗菌のための香りが抗菌容器全体において放たれることができるようにサポートする媒介体としての役割とを果たす。植物性油脂が含まれていない場合、前記反応化合物が抗菌容器の特定部分にのみ偏って存在し得るので、植物性油脂は、抗菌性化合物がポリプロピレン(PP、polypropylene)樹脂に均一に塗布されるようにするための役割を果たすことができる。このとき、植物性油脂としては、大豆油、トウモロコシ油、キャノーラ油(菜種油)、ブドウ種子油などを用いることができる。前記植物性油脂は、沸点及び煙点が高いため、前記反応化合物が高温により蒸発、分解される量を減少させることができる。植物性油脂と前記反応化合物との混合は、攪拌方式を用いて行うことができる。より好ましくは、前記混合は超音波処理によって行う。超音波処理による混合によって、構成物の均一度を向上させることが好ましい。植物性油脂と反応化合物との混合比は、重量を基準として1:10ないし1:20であることが好ましい。前記混合比が1:10未満である場合、反応化合物の均一な分散が困難となる。反面、混合比が1:20を超過する場合、植物性油脂の含有量が多すぎて抗菌効果が殆ど無くなってしまうという問題がある。
【0022】
次に、前記PPペレット及び植物性油脂と反応化合物との混合物を100℃〜130℃の温度下で2時間攪拌する段階をさらに含むことができる(S130)。前記混合物を100℃〜130℃の温度下で2時間攪拌する場合、常温での塩化アリル及びチオシアン酸カリウムの反応よりもイソチオシアン酸アリルの収得率が高くなり得る。PPペレットの溶融温度まで上昇する前に本過程を経ることによって、塩化アリル及びチオシアン酸カリウムの反応が略90%以上行われるようになるので、イソチオシアン酸カリウムの合成前段階の原料物質を抗菌容器の製造過程に直接投じ、イソチオシアン酸カリウムを別途生産して投入する場合よりは、遥かに経済的にイソチオシアン酸カリウムが含有された抗菌容器を製造することができる。また、本過程を経ることによって、急激な温度変化による反応物などの変性を防止することができる。即ち、本発明の実施例に係る抗菌容器の製造方法は、前記段階(S120、S130)を含むことによって安価な原料物質で高濃度のイソチオシアン酸アリルを生成することができ、イソチオシアン酸アリルの合成が抗菌容器の製造方法に含まれることによって、押出成形に伴う熱エネルギーを活用することができ、従来の原料物質を別途製造して抗菌容器の製造過程で投入する方法よりは、資源の節約及び活用の側面から有利である。
【0023】
次に、PPペレット及び前記混合物を共に混合した後、溶融する(S140)。前記混合物には、塩化アリル及びチオシアン酸カリウムの化合物が含まれて存在するが、前記混合物が、前記PPペレットの重量に対して0.5重量%〜2.5重量%含まれるようにすることが好ましい。前記混合物が0.5重量%未満しか含まれない場合、抗菌性を殆ど有しなくなる恐れがある。反面、前記混合物が2.5重量%を超過して含まれる場合、化合物によるワサビの香りが抗菌容器内部の食物などの香味に影響を及ぼす恐れがあり、また抗菌容器の機械的物性が急激に低下するという問題が発生し得る。
【0024】
次に、前記溶融物を射出成形して抗菌容器を製造する(S150)。前記射出成形は、200℃〜230℃の条件で行うことができる。200℃未満の温度では、PP樹脂が充分に溶融され得ず、230℃を超過する温度では、植物性油脂の煙点を超過するようになるので、植物性油脂のみならず、イソチオシアン酸アリルを含む抗菌物質の蒸発ないし消滅によって、抗菌性が急激に低くなり得る。また、植物性油脂などの発煙により容器の成形性及び品質が悪化し得る。
【実施例】
【0025】
以下、実施例を通じて本発明をさらに詳細に記述する。これらの実施例は本発明を例示するためのものであって、本発明の範囲がこれらの実施例によって限定されないと解釈されることは、当業界において通常の知識を有する者に自明である。
【0026】
まず、塩化アリル及びチオシアン酸カリウムをフラスコに入れ、180RPMで攪拌して、反応が起きるように24時間放置した。反応が起きた化合物を、大豆油(煙点:略240℃)の重量を基準として1:10の割合で超音波処理によって混合し、混合物を得た。前記混合物を、PPペレットの重量を基準として約1.2重量%添加し、前記混合物をPPペレットと共に略105℃の温度下でさらに2時間攪拌した。追加の攪拌を行い、塩化アリル及びチオシアン酸カリウムの反応物であるチオシアン酸アリル化合物が含まれている混合物が、前記PPペレットの重量を基準として約1.0重量%ないし1.1重量%が含まれるようにした。
【0027】
前記製造方法による試料に対する抗菌力試験の結果は、下記表1に示す通りである。
抗菌力(JIS Z 2801:2010、フィルム密着法)
細菌数(/cm
2)
抗菌活性値(log)
【0028】
【表1】
【0029】
一方、
図2ないし
図6は、本発明の一実施例によって製造された抗菌容器と一般の密閉容器とについて、常温で観察した抗菌効果を示すものである。
図2ないし
図6に示すように、本発明の一実施例によって製造された抗菌容器の場合、食品の腐敗又は変質が殆ど起こらないという結果を観察することができた。本発明の一実施例によって製造された抗菌容器は、前記
図2ないし
図6を用いて詳察した通り、イソチオシアン酸アリルの成分が抗菌容器内にて気体状態で拡散することによって抗菌性を示すものであって、衛生的な食品の保存が可能であることが分かる。
【0030】
本明細書及び図面には本発明の好適な実施例について開示した。たとえ特定用語が使用されていても、これは単に本発明の技術内容を容易に説明し、発明の理解を促進するために一般的な意味で用いられたものであり、本発明の範囲を限定しようとするものではない。ここで開示された実施例以外にも本発明の技術的思想に基づく他の変形例が実施可能であるということは、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者に自明である。