【実施例】
【0044】
「発明を実施するための形態」に記載されている実施形態は、以下の実施例によって更に明らかになるであろう。以下の実施例は、本開示の範囲またはその特許請求の範囲をいかなる特定の実施形態にも限定することは意図されないことを理解されたい。
【0045】
実施例1、3及び5に記載されているように、本開示の実施形態による遷移金属アダマンタン化合物を、遷移金属水酸化物を1−アダマンタンカルボン酸で熱水処理をすることによって調製した。以下の調製例では、金属水酸化物及びアダマンタンカルボン酸を反応容器に移す前に1時間撹拌した。得られた混合物を異なる温度で24時間水熱処理した。得られた生成物を真空濾過し、多量の水で洗浄し、次いで65℃で24時間乾燥させた。
【0046】
実施例2、4及び6に記載されているように、アダマンタン化合物を空気雰囲気下において450℃で4時間熱分解させることにより、遷移金属アダマンタン塩化合物から遷移金属酸化物を調製した。粉末X線回折(PXRD)、赤外線(IR)分光法、走査型電子顕微鏡法(SEM)、熱重量分析(TGA)、及び透過型電子顕微鏡法(TEM)によって、生成物を特徴付けた。
実施例1
コバルトアダマンタンの合成と特徴付け
CO(OH)
2と1−アダマンタンカルボン酸(ACA)を110℃の熱水条件下で24時間処理することによって、アダマンタンカルボン酸コバルト塩(Co−AC)を合成した。反応の前に、反応物をマグネチックスターラーを用いて1時間撹拌することによって混和した。相形成及び得られた相の形態に及ぼす過飽和の影響を評価するために、Co
2+対ACAの異なるモル比で2つのCo−AC化合物を合成した。Co
2+対ACAのモル比0.5を用いて、第1の化合物Co(0.5)−ACを合成した。Co
2+対ACAのモル比1.0を用いて、第2の化合物Co(1.0)−ACを合成した。化合物を、様々な分析技術を用いて特徴付けた。
【0047】
Co(0.5)−ACのPXRDパターンは、
図1のスペクトル(a)として提供される。2θ角度で4.27°、6.08°、6.65°、7.50°、9.31°及び10.91°の低角度反射を観察した。これらの低角度反射は、それぞれ20.67Å、14.52Å、13.28Å、11.77Å、11.50Å及び8.1Åのd−間隔を示す。Co(0.5)−ACは、2θ角度で65°まで様々な強度でいくつかの反射を示した。
【0048】
Co(0.5)−ACのIRスペクトルは、
図2のスペクトル(a)として提供され、種々な異なる伸縮及び屈曲振動を示す。2904cm
−1及び2846cm
−1における振動は、アダマンタンイオンのC−Hの伸縮モードから発生する。アダマンタンのCOO
−基の対称振動及び反対称振動が、1508cm
−1及び1422cm
−1で見られる。1000cm
−1未満の複数の伸縮及び屈曲モードは、金属−酸素結合から発生する。ヒドロキシルイオン領域3200cm
−1〜3700cm
−1は、ほとんど特徴がなく、化合物中のヒドロキシルイオンが存在しないことを示す。1603cm
−1付近の振動は、Co−AC中の水分子の屈曲モードから発生し得る。
【0049】
Co(0.5)−ACの熱安定性をTGAを用いて25℃〜800℃のN
2雰囲気下で調査した。Co(0.5)−ACは、
図3のプロット(a)に示されるように、2段階の質量減少を示す。この物質は、質量が減少することなく100℃まで安定であることが判明した。材料は、100℃〜180℃の範囲で約22重量%の質量が減少した。これは、アダマンタン部分の成分であると考えられるいくつかの他の残基と共にゆるく結合した水分子を含み得る。この物質は180℃〜400℃で安定であり、質量減少の量は無視できる程度であり、次いで第2段階(400℃〜550℃)で約65重量%の質量が減少した。550℃〜800℃までは小さくて定常的な質量減少が見られ、材料は800℃で完全に分解した。Co−ACは、25℃〜800℃まで約85重量%の質量が減少し、コバルトのナノポーラス酸化物の形成を示している。Co(0.5)−ACのTGAは、Co(0.5)−ACが高温安定相ではないが、コバルトのナノポーラス酸化物の前駆体であり得ることを示している。約85重量%の著しい質量減少は、Co−ACが大量の分解可能なアダマンタン部分で構成されていることを示している。
【0050】
図4A及び4Bに示されるように、Co(0.5)−ACの形態をSEMによって特徴付けた。Co−ACは、各繊維が隣接する繊維と相互接続されて、球体繊維の形成をもたらす、興味深い繊維の性質を示す。アダマンタン骨格が球体を形成する傾向の理由であり得ると考えられている。
【0051】
Co
2+は、様々な無機/有機アニオンを用いてα−水酸化物及びヒドロキシ塩を形成する傾向がある。これらの化合物はいずれも、中間層の化学的性質を示す水酸化物層で構成されている。中間層にインターカレーションされたアニオンは、これらの化合物の様々な特性を媒介する。同様に、Co(0.5)−ACは、アダマンタンカルボン酸イオンをアニオンとして用いることにより、これら2つの構造のうちの1つを取るであろう。IRスペクトルからのデータは、α−水酸化物/ヒドロキシ塩構造中のCo−ACの結晶化を排除して、OH
−イオンが存在しないことを明確に示している。PXRD、IR、TGA及びSEMからの全てのデータを考慮すると、Co−ACは、2つのアダマンタンカルボン酸分子の2つのカルボキシレートイオンと結合するCo
2+の構造を有し得る、それらは、共に層状構造を有するコバルト塩を形成する。
【0052】
Co−ACの形成に対する過飽和の効果は、1−アダマンタンカルボン酸の量を減少させて、Co
2+対ACAとのモル比を1:1で開始して、Co(0.5)−ACについて以前に記載したのと同じ合成経路を用いて、Co(1.0)−ACの試料を調製することによって評価される。
【0053】
Co(1.0)−ACのPXRDパターンは、
図1のプロット(c)として提供される。Co(1.0)−ACは、Co(0.5)−ACの試料と同様に、2θ角度で3.96°、6.4°、8.35°、及び12.77°の低角度反射を示すことが判明した。これらの低角度反射は、それぞれ22.3Å、13.8Å、10.58Å、及び6.9Åのd−間隔を示す。Co(1.0)−ACの反射強度は,Co(0.5)−ACの場合よりもはるかに強かった(
図1のプロット(a)参照)。Co(1.0)−ADの場合、より良好な結晶成長を示す。Co(1.0)−ACのPXRDは、コバルトが反応混合物中で過剰であったため、未反応のCo(OH)
2を示すと予期された。Co(OH)
2に起因する反射がないことは、反応媒体中にCo(OH)
2が溶解しているか、またはPXRDのバックグラウンドの下で不明瞭であったことを示唆している。
【0054】
Co(1.0)−ACの形態をSEMによって特徴付け、
図4C及び4Dに図示する。Co(1.0)−ACは、Co(0.5)−ACのものと同様の形態を示した。SEMはまた、未反応のCo(OH)
2と考えられる六角面体結晶を示す。
実施例2
アダマンタンカルボン酸コバルト塩の熱分解による酸化コバルト
焼成時のCo(0.5)−ACは、アダマンタンの炭素残基にCo
3O
4/CoOを担持させることが予期される。実施例1に従って調整されたCo(0.5)−ACを空気雰囲気下において450℃で4時間分解した。
【0055】
得られた酸化物材料のPXRDは、
図1のプロット(b)として提供される。PXRDは、2θ角度で19.23°、31.63°、37.13°、38.9°、45.1°、55.91°及び59.63°の反射を示した。これらの反射は、それぞれ4.61Å、2.82Å、2.41Å、2.31Å、2.0Å、1.64Å及び1.54Åのd−間隔を示す。調製された試料の反射は、CoOよりもCo
3O
4の文献報告とより一致すると判定された。酸化物試料のPXRDにおいて約14°を中心とする広い瘤波は、酸化コバルトのどの相にも帰属させることができなかった。この広い瘤波の起源は、層状物質を生成する試料中に存在する残留炭素から発生すると考えられている。
【0056】
Co(0.5)−ACの酸化物残渣を、SEMを用いて更に特徴付けた。
図5A及び5Bに示されるように、得られた酸化物は、SEMによってマイクロポーラスのスポンジ状の形態を有することが判明した。酸化物微結晶子は、ナノワイヤとして成長することが判明し、これは、次々に非常に大きな細孔を有する高度に多孔質の網目構造を形成する。
【0057】
EDX技術を用いて、Coアダマンタンカルボン酸塩分解から得られた酸化物中の炭素の存在を確認した。支持体炭素と試料中の炭素との干渉を避けるために、SEM中に支持体としてシリコンウェーハを使用した。予期通り、EDX分析は、酸化コバルトからのCo
2+、Co
3+及び酸素に起因するピークを示した。更に、EDXは、元素状炭素に起因するピークを示し、したがって、試料中に著しい量の炭素が存在することを示している。酸化コバルト中の炭素の分布を評価するために、SEM/EDX技術を用いて元素マッピングを実行した。元素マッピング内では、炭素は酸化物残留物全体にわたって均一に広がっていることが判明した。
【0058】
酸化コバルト微結晶子のサイズ及び形状を、TEMによって特徴付けた(
図6A〜6D)。明視野TEM画像(
図6A及び6B)に示すように、酸化コバルトは、10nm〜20nmの範囲の結晶子サイズを有することが観察された。選択領域回折パターンは、Co
3O
4のd−間隔に一致する複数の回折リングを示す(
図6C)。酸化コバルトの格子縞はHRTEMによって観察された(
図6D)。
実施例3
アダマンタンカルボン酸ニッケル塩の合成と特徴付け
Ni(OH)
2と1−アダマンタンカルボン酸を、Ni
2+対ACAのモル比が0.5:1中で、150℃の熱水条件下で24時間処理することによって、アダマンタンカルボン酸ニッケル(Ni−AC)を合成した。反応の前に、反応物をマグネチックスターラーを用いて1時間撹拌することによって混和した。得られた材料Ni(0.5)−ACを、PXRD、IR、TGA及びSEMによって特徴付けた。
【0059】
図7のプロット(a)におけるNi(0.5)−ACのPXRDスペクトルは、2θ角度で5.33°、6.11°、6.32°及び7.87°の一連の低角度反射を示した。これらの低角度反射は、それぞれ16.56Å、14.45Å、13.97Å、及び13.06Åのd−間隔を示した。低角度反射は、8.30Å、7.97Å、7.34Å、及び6.48Åの第2の約数を示した。PXRDはまた、より高い2θ値で低角度反射のより高い約数も示した。約数の外観は、層状構造で結晶化したNi−ACと一致する。
【0060】
Ni(0.5)−ACのIRスペクトルは、
図2のプロット(b)に提供され、種々な伸縮及び屈曲振動を示す。2904cm
−1及び2847cm
−1における振動は、アダマンタンカルボン酸イオンのC−Hの伸縮モードから発生する。アダマンタンカルボキシレートのCOO
−基の対称振動及び反対称振動が、1566cm
−1及び1489cm
−1で見られる。1000cm
−1未満の複数の伸縮及び屈曲モードは、金属−酸素結合から発生する。3449cm
−1に鋭いピークを有する広い瘤波は、化合物中に水素結合したヒドロキシイオンが存在することを示す。約1600cm
−1における振動は、水分子の屈曲モードから発生し、Ni(0.5)−ACがいくらかの水分を有することを示すと考えられる。
【0061】
TGAを用いてNi(0.5)−ACの熱安定性を調査した。TGAデータは、
図3のプロット(b)として提供される。60℃付近の質量減少(約8重量%)は、主に物理吸着水に起因する。おそらく試料中に存在する少量の非晶質不純物の結果として、材料は60℃〜320℃まで約7重量%の漸進的ではあるが定常的な質量減少を示す。TGAは、Ni(0.5)−ACのヒドロキシル、カルボキシレート、H及びCが占める、320℃〜420℃の範囲で約70重量%の大きな質量減少を示す。合計で、Ni(0.5)−ACは、25℃〜800℃で約90重量%を失い、わずか10重量%の残留物しか残さない。
【0062】
Ni(0.5)−ACは、異なる倍率で同じ材料の
図8A〜8DのSEM画像から明らかなように、層が棒を成長させる傾向を有する層状形態を示す。
実施例4
アダマンタンカルボン酸ニッケル塩の熱分解による酸化ニッケル
Co−ADが熱分解によりコバルトの酸化物を生成するのと同様に、Ni−ACは、熱分解により炭素担体上にニッケルの酸化物を生成すると予期された。実施例3に従って調整されたNi(0.5)−ACを空気雰囲気下において25℃〜450℃で4時間分解した。
図7のプロット(b)に示すように、得られた酸化物残渣のPXRDスペクトルは、2θ角で、37.21°、43.23°及び62.9°の反射を示し、それぞれ2.41Å、2.09Å及び1.47Åに対応する。文献値との比較に基づいて、酸化ニッケル残渣はNiO相に帰属された。Co
3O
4(
図1のプロット(b))のPXRDで観察された広い瘤波は、NiOには見当たらない。理論に拘束されるつもりはないが、広い瘤波がないことは、(a)NiOがそれに炭素を全く有しないこと、または(b)瘤波がNiOの高強度反射バックグラウンドの下で不明瞭になっている可能性があること、を暗示すると考えられている。
【0063】
スポンジ状の多孔質Co
3O
4の形成において観察された、組み込まれたアダマンタンの鋳型効果もNiOに予期された。Ni(0.5)−AD(
図9A及び9B)から得られるNiOのSEM顕微鏡写真は、ナノウィスカー形態を表現している。球状NiOの個々の微結晶子は、ミクロン長を有するナノウィスカーとして配置される。そのような配置は、酸化ニッケルの非常に多孔質である性質をもたらすと考えられる。理論に縛られるつもりはないが、おそらくアダマンタンの配置のために棒状の形状を形成するNi−ACの傾向は、Ni−ACの熱分解時のNiOの高度に多孔性であるナノウィスカーの観察された形成を引き起こし得ると考えられている。
【0064】
NiOの定性元素分析をEDXを用いて実行した。統合されたEDXスペクトルは、約1:1のモル比でNiOのNi及びOの存在を示した。EDXスペクトルは、元素状炭素に起因するピークも含んでいた。炭素源は、Ni−AC材料からのアダマンタン部分であると考えられている。
【0065】
Ni−ACから得られた酸化ニッケルを、TEMによって更に特徴付けた(
図10A〜10D)。
図10A及び10Bの明視野画像は、ミクロン長を有するウィスカーとしてNiOが成長する傾向を示す。
図10CのNi(0.5)−AD由来の酸化ニッケルの選択領域電子回折パターンは、NiOの文献で報告されたものと一致する。
図10Dの酸化ニッケルの高解像度TEM(HRTEM)画像は、岩塩構造のNiO面の格子縞を示す。更に、HRTEMは、いかなるNiO平面にも起因しない約1nmのd−間隔を有するより大きな格子縞を示す。より高いd−間隔を有するこれらの格子縞は、酸化物残渣中に残存するアダマンタンカルボキシレートの炭素に帰属され得る。
実施例5
アダマンタンカルボン酸銅塩の合成と特徴付け
Cu(OH)
2と1−アダマンタンカルボン酸を110℃の熱水条件下で処理することによって、コアダマンタンカルボン酸銅を合成した。反応の前に、反応物をマグネチックスターラーで1時間撹拌して、混和を達成した。相形成及び得られた相の形態に及ぼす過飽和の影響を評価するために、Cu
2+対ACAの異なるモル比で2つのCu−AC化合物を合成した。Cu
2+対ACAのモル比0.5を用いて、第1の化合物Cu(0.5)−ACを合成した。Cu
2+対ACAのモル比1.0を用いて、第2の化合物Cu(1.0)−ACを合成した。化合物を、PXRD、IR及びSEMによって特徴付けた。
【0066】
図11のプロット(a)におけるCu(0.5)−ACのPXRDパターンは、いくつかの低角度反射を示し、その各々は複数のピークに分割される。第1の反射は、13.32Å及び13.04Åのd−間隔に対応するピークを示し、第2の反射は、11.25Å、11.11Å、及び10.87Åのd−間隔に対応するピークを示し、第3の反射は、9.46Åと9.26Åのd−間隔に対応するピークを示し、第4の反射は、7.84Å及び7.68Åのd−間隔に対応するピークを示す。高次反射は、6.70Å及び6.58Åのd−間隔に対応する第1のピーク群に、5.65Å、5.52Å、及び5.44Åのd−間隔に対応する第2のピーク群に、4.74Å及び4.63Åのd−間隔に対応する第3のピーク群に存在する。PXRDにおけるこれらの種類の反射は、(a)事実上層状であるか、または(b)相互の層形成を有する、すなわちある相と他の相との相互成長である、化合物に起因し得る。これらの反射に加えて、Cu(0.5)−ACは、より高い2θ値でいくつかの低強度反射を示す。
【0067】
図2のプロット(c)のCu(0.5)−ACのIRスペクトルは、種々の伸縮及び屈曲振動を示す。2901cm
−1及び2844cm
−1における振動は、アダマンタンイオンのC−H結合の伸縮モードから発生する。アダマンタンのCOO
−基の対称振動及び反対称振動が、1573cm
−1及び1448cm
−1に存在する。1000cm
−1未満の複数の伸縮及び屈曲モードは、金属−酸素結合から発生する。3418cm
−1の広い形状は、化合物中に水素結合したヒドロキシイオンが存在することを示す。約1659cm
−1における振動は、水分子の屈曲モードから発生すると考えられ、Cu−ACがいくらかの水分を有することを示すと考えられる。
【0068】
図3のTGAプロット(c)において、Cu(0.5)−ACは、25℃〜800℃の空気下での3段階の質量減少を示す。この性質は、層状複水酸化物材料の性質に類似している。TGA調査では、Cu(0.5)−ACは25℃〜800℃の範囲にわたって約85重量%の質量が減少し、約15重量%の酸化物残渣を残した。
【0069】
Cu(0.5)−ACの形態をSEMで評価した。
図12A及び12Bの顕微鏡写真において、Cu(0.5)−ACは結晶子が矩形形状として成長した形態を示す。結晶子の形状は、Cu(0.5)−ACが単斜晶系で結晶化している可能性があることを示していると考えられる。
【0070】
図11のプロット(b)におけるCu(1.0)−ACのPXRDパターンは、
図11のプロット(a)におけるCu(0.5)−ACのPXRDパターンと類似している。しかし、Cu(0.5)−ACで観察された基底反射の分裂は、Cu(1.0)−ACでは観察されなかった。基底反射の分裂がないことは、Cu(1.0)−AC中に相互の層形成が存在しないことを意味すると考えられる。Cu(1.0)−ACの場合、基底反射の強度はより大きく観察され、より規則的な結晶成長を示唆した。
【0071】
図12C及び12DのSEM顕微鏡写真から明らかなように、Cu(1.0)−ACは、Cu(0.5)−ACで観察された矩形の結晶とは異なる繊維状の形態を有することが観察された。Cu(0.5)−ACと比較してCu(1.0)−AC中のアダマンタンカルボキシレートの濃度が低いほど、より高い結晶成長レベル及びCu(1.0)−AC材料の形態の変化を促進する明確な効果があると考えられている。
実施例6
アダマンタンカルボン酸銅塩の熱分解による酸化銅
実施例5に従って調整されたCu(0.5)−ACを空気雰囲気下において450℃で4時間分解した。得られた酸化物材料を、PXRD、SEM、EDX、及びTEMによって特徴付けた。
【0072】
図11のプロット(c)における得られた酸化銅のPXRDパターンは、2θ角で、29.29°、31.95°、35.14°、36.11°、38.26°、41.96°、43.10°、48.35°、53.02°、57.81°及び61.10°の反射を示し、それぞれ3.04Å、2.79Å、2.55Å、2.48Å、2.35Å、2.15Å、2.09Å、1.88Å、1.72Å、1.59Å及び1.51Åのd−間隔に対応する。得られた酸化銅の相同定により、酸化銅の大部分がCuOであることを示した。しかし、2.48Å、2.15Å、及び10.9ÅのピークはCu
2Oに起因する。したがって、得られた酸化物は、CuO及びCu
2Oの両方の混合物を有すると考えられている。酸化銅の混合物は、前駆体Cu(0.5)−ACの制御されない分解によって引き起こされ得る。
【0073】
図13A−13DのSEM顕微鏡写真は、Cu(0.5)−ACから得られた酸化銅の形態を示す。Cu−AC化合物の熱分解は、アダマンタンカルボキシレート残基の炭素に担持された銅のメソポーラスナノ酸化物を提供することが予期された。
図13A及び13BのSEM顕微鏡写真から明らかなように、CuOは、10μm超の長さを有する大きなシート上に分布したナノメートル範囲の微細な微結晶子を含んでいた。インターカレーションされたアダマンタンカルボキシレートは、分解して大きな炭素シートとして成長し、その上に酸化銅微結晶子が形成された。酸化銅微結晶は、
図13C及び13DのSEM接写顕微鏡写真において特に明白である。
【0074】
CuO中のシート及びより微細な微結晶子の性質及び組成を、EDXにより更に特徴付けた。EDXスキャンは、分解された試料中の大きなシート及びより微細な微結晶子の領域で実行した。EDXにより、熱分解されたCu(0.5)−ACのシート状部分は、Cu及びO原子よりもはるかに大きい炭素原子のパーセントを有することが観察された。熱分解されたCu(0.5)−ACのより微細な微結晶子のEDXスペクトルは、炭素の量よりも実質的に多い量のCu及びOを示した。シート状部分及び微結晶子の両方のEDXスペクトルは、著しい量の炭素の存在を示した。試料中の炭素の分布を、元素マッピングによって更に特徴付けた。元素マッピングでは、残留炭素は試料全体にわたって均質に分布していることが判明した。
【0075】
酸化銅がアダマンタンの炭素残渣上のシートとして成長する傾向は、TEM画像(
図14A及び14B)によって更に確認された。選択領域電子回折パターン(
図14C)は、PXRD及びSEMからの観察と一致していた。
図14Dの酸化銅のHRTEM画像は、文献に報告されているものと一致するd−間隔を有する格子縞を示した。
【0076】
複合ゼオライト触媒、その作製方法、それを用いたキシレン作製方法、及びそれを使用したキシレンを作製する系の様々な態様が記載されており、かかる態様は、様々な他の態様と関連して利用され得ると、理解するべきではない。
【0077】
第1の態様では、本開示は、遷移金属アダマンチン(adamantine)カルボン酸塩の調製方法を提供する。本方法は、遷移金属水酸化物と少なくとも1つのカルボン酸部分を有するダイヤモンドイド化合物を混合して、反応混合物(ここで、Mは、遷移金属である)を形成する工程を含む。本方法は、反応混合物を、ある反応温度で、ある反応時間水熱処理して、遷移金属アダマンタンカルボン酸塩を形成する工程を更に含む。
【0078】
第2の態様では、本開示は、ダイヤモンドイド化合物が1−アダマンタンカルボン酸であり、遷移金属水酸化物が式M(OH)
2(式中、Mは、Co、Cu及びNiから選択される)を有する、第1の態様の方法を提供する。
【0079】
第3の態様では、本開示は、遷移金属水酸化物及び1−アダマンタンカルボン酸を、反応混合物中のM
2+対1−アダマンタンカルボン酸の比が0.5:1〜1.0:1となる量で混合する、第2の開示の方法を提供する。
【0080】
第4の態様では、本開示は、遷移金属水酸化物がCo(OH)
2であり、反応温度が110℃である、第1から第3の態様のいずれかの方法を提供する。
【0081】
第5の態様では、本開示は、遷移金属水酸化物がNi(OH)
2であり、反応温度が150℃である、第1から第3の態様のいずれかの方法を提供する。
【0082】
第6の態様では、本開示は、遷移金属水酸化物がCu(OH)
2であり、反応温度が110℃である、第1から第3の態様のいずれかの方法を提供する。
【0083】
第7の態様では、本開示は、反応温度が100℃〜180℃である、第1から第6の態様のいずれかの方法を提供する。
【0084】
第8の態様では、本開示は、反応時間が少なくとも12時間である、第1から第7の態様のいずれかの方法を提供する。
【0085】
第9の態様では、本開示は、ナノ複合材料の調製方法を提供する。本方法は、第1〜第8の態様のいずれか1つの方法に従って調製した遷移金属アダマンタンカルボン酸塩を熱分解して、ナノ複合材料を形成する工程を含む。
【0086】
第10の態様では、遷移金属アダマンタンカルボン酸塩を熱分解する工程が、空気中で遷移金属アダマンタンカルボン酸塩を、ある分解温度で、ある分解時間の間加熱する工程を含む、第9の態様の方法を提供する。
【0087】
第11の態様では、本開示は、分解温度が少なくとも450℃である、第10の態様の方法を提供する。
【0088】
第12の態様では、本開示は、分解時間が少なくとも4時間である、第10または第11の態様の方法を提供する。
【0089】
第13の態様では、本開示は、ナノ複合材料が、炭素担持体上に分散された遷移金属酸化物粒子を含む、第10〜第12の態様のいずれかの方法を提供する。
【0090】
第14の態様では、本開示は、炭素担持体がナノワイヤである、第13の態様の方法を提供する。
【0091】
第15の態様では、本開示は、ナノ複合材料が、ナノ複合材料の総重量を基準として、70重量%〜80重量%の金属酸化物及び20重量%〜30重量%の炭素を含む、第9〜第14の態様のいずれかの方法を提供する。
【0092】
第16の態様では、本開示は、遷移金属アダマンタンカルボン酸塩Co−ACを含む、第9から第15の態様のいずれかの方法を提供する。
【0093】
第17の態様では、本開示は、ナノ複合材料が、マイクロポーラスマトリックス及び酸化コバルトの微結晶子を含む、第16の態様の方法を提供する。
【0094】
第18の態様では、本開示は、酸化コバルトがCoO、Co
3O
4、またはCoOとCo
3O
4との混合物を含む、第17の態様の方法を提供する。
【0095】
第19の態様では、本開示は、遷移金属アダマンタンカルボン酸塩がNi−ACを含む、第9〜第15の態様のいずれかの方法を提供する。
【0096】
第20の態様では、本開示は、ナノ複合材料が多孔質ナノウィスカーとして構成されているNiOの微結晶子を含む、第19の態様の方法を提供する。
【0097】
第21の態様では、本開示は、遷移金属アダマンタンカルボン酸塩Cu−ACを含む、第9から第15の態様のいずれかの方法を提供する。
【0098】
第22の態様では、本開示は、ナノ複合材料が炭素シート及び炭素シート上に担持された酸化銅のナノ粒子を含む、第21の態様の方法を提供する。
【0099】
第23の態様では、本開示は、酸化銅がCuO、Cu
2O、またはCuOとCu
2Oの混合物を含む、第22の態様の方法を提供する。
【0100】
第24の態様では、本開示は、触媒系を提供する。この触媒系は、(a)第1〜第8の態様のいずれかに従って調製した遷移金属アダマンタンカルボン酸塩、(b)第9〜第23の態様のいずれかに従って調製したナノ複合材料、または(c)(a)及び(b)の混合物、を含む。
【0101】
第25の態様では、本開示は、少なくとも1つの第1の反応物質と少なくとも1つの第2の反応物質との化学反応の触媒作用方法を提供する。本方法は、少なくとも1つの第1の反応物質と少なくとも1つの第2の反応物質とを、第24の態様による触媒系の存在下で反応させる工程を含む。
【0102】
第26の態様では、本開示は、化学反応がアルコール酸化である、第25の態様の方法を提供する。
【0103】
第27の態様では、本開示は、化学反応が少なくとも1つの炭素−窒素結合を形成するクロスカップリング反応を含む、第25の態様の方法を提供する。
【0104】
第28の態様では、本開示は、反応物質の分解の触媒作用方法を提供する。本方法は、反応物質を、第24の態様による触媒系の存在下で分解させる工程を含む。
【0105】
第29の態様では、本開示は、ポリマー複合材を提供する。ポリマー複合材は、少なくとも1つのポリマーまたはコポリマーと、少なくとも1つのポリマーまたはコポリマーの間に散在させた少なくとも1つの充填材料とを含み、複合材を形成する。少なくとも1つの充填材料は、(a)第1〜第8の態様のいずれかに従って調製した遷移金属アダマンタンカルボン酸塩、(b)第9〜第23の態様のいずれかに従って調製したナノ複合材料、または(c)(a)及び(b)の混合物から選択される。
【0106】
第30の態様では、本開示は、流体流から化学化合物を除去するための系を提供する。この系は、(a)第1〜第8の態様のいずれかに従って調製した遷移金属アダマンタンカルボン酸塩、(b)第9〜第23の態様のいずれかに従って調製したナノ複合材料、または(c)(a)及び(b)の混合物から選択される吸着剤を含む。この系はまた、容器も含み、その中でまたはその上で流体流中の化学化合物が吸着剤と接触する。
【0107】
第31の態様では、本開示は、掘削流体を提供する。この掘削流体は、(a)第1〜第8の態様のいずれかに従って調製した遷移金属アダマンタンカルボン酸塩、(b)第9〜第23の態様のいずれかに従って調製したナノ複合材料、または(c)(a)及び(b)の混合物から選択される少なくとも1つのレオロジー調整剤を含む。
【0108】
特許請求される主題の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の実施形態に対して、様々な変更及び変形を行うことができることは当業者には明らかであろう。したがって、本明細書は、かかる変更及び変形が添付の特許請求の範囲及びそれらの等価物の範囲内に入るならば、本明細書に記載の様々な実施形態の変更及び変形を網羅するものである。
【0109】
本開示を通して、範囲が提供される。範囲に包含される各離散値も含まれることが想定される。更に、明白に開示された範囲に包含される各離散値によって形成され得る範囲は、等しく想定される。
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
実施形態1
遷移金属アダマンタンカルボン酸塩の調製方法であって、前記方法が、
遷移金属水酸化物と少なくとも1つのカルボン酸部分を有するダイヤモンドイド化合物を混合して、反応混合物を形成する工程であって、Mは、遷移金属である、形成する工程と、
前記反応混合物を、ある反応温度で、ある反応時間水熱処理して、前記遷移金属アダマンタンカルボン酸塩を形成する工程と、
を含む、方法。
実施形態2
前記ダイヤモンドイド化合物が1−アダマンタンカルボン酸であり、前記遷移金属水酸化物が式M(OH)2(式中、Mは、Co、Cu及びNiから選択される)を有する、実施形態1に記載の方法。
実施形態3
前記遷移金属水酸化物及び前記1−アダマンタンカルボン酸が、0.5:1〜1.0:1の前記反応混合物中のM2+対1−アダマンタンカルボン酸の比を提供する量で混合される、実施形態2に記載の方法。
実施形態4
前記遷移金属水酸化物がCo(OH)2であり、前記反応温度が110℃である、実施形態1に記載の方法。
実施形態5
前記遷移金属水酸化物がNi(OH)2であり、前記反応温度が150℃である、実施形態1に記載の方法。
実施形態6
前記遷移金属水酸化物がCu(OH)2であり、前記反応温度が110℃である、実施形態1に記載の方法。
実施形態7
前記反応温度が100℃〜180℃である、実施形態1に記載の方法。
実施形態8
ナノ複合材料の調製方法であって、前記方法が、
遷移金属アダマンタンカルボン酸塩を熱分解して、前記ナノ複合材料を形成する工程を含み、
前記遷移金属アダマンタンカルボン酸塩が、
遷移金属水酸化物と少なくとも1つのカルボン酸部分を有するダイヤモンドイド化合物を混合して、反応混合物を形成することであって、Mは、遷移金属である、形成することと、
前記反応混合物を、ある反応温度で、ある反応時間水熱処理して、前記遷移金属アダマンタンカルボン酸塩を形成することと、
によって調製される、方法。
実施形態9
前記遷移金属アダマンタンカルボン酸塩を熱分解する工程が、前記遷移金属アダマンタンカルボン酸塩を、空気中で、ある分解温度で、ある分解時間加熱する工程を含む、実施形態8に記載の方法。
実施形態10
前記分解温度が少なくとも450℃である、実施形態9に記載の方法。
実施形態11
前記ナノ複合材料が、炭素担持体上に分散された遷移金属酸化物粒子を含む、実施形態9に記載の方法。
実施形態12
前記ナノ複合材料が、前記ナノ複合材料の総重量を基準として、70重量%〜80重量%の金属酸化物及び20重量%〜30重量%の炭素を含む、実施形態8に記載の方法。
実施形態13
前記遷移金属アダマンタンカルボン酸塩がCo−ACを含む、実施形態8に記載の方法。
実施形態14
前記ナノ複合材料が、マイクロポーラスマトリックス及び酸化コバルトの微結晶子を含む、実施形態13に記載の方法。
実施形態15
前記遷移金属アダマンタンカルボン酸塩がNi−ACを含む、実施形態8に記載の方法。
実施形態16
前記ナノ複合材料が、多孔質ナノウィスカーとして構成されたNiOの微結晶子を含む、実施形態15に記載の方法。
実施形態17
前記遷移金属アダマンタンカルボン酸塩がCu−ACを含む、実施形態8に記載の方法。
実施形態18
前記ナノ複合材料が、炭素シート及び炭素シート上に担持された酸化銅のナノ粒子を含む、実施形態17に記載の方法。
実施形態19
前記酸化銅が、CuO、Cu2O、またはCuOとCu2Oの混合物を含む、実施形態18に記載の方法。
実施形態20
触媒系であって、
(a)遷移金属アダマンタンカルボン酸塩であって、
遷移金属水酸化物と少なくとも1つのカルボン酸部分を有するダイヤモンドイド化合物を混合して、反応混合物を形成することであって、Mは、遷移金属である、形成することと、
前記反応混合物を、ある反応温度で、ある反応時間水熱処理して、前記遷移金属アダマンタンカルボン酸塩を形成することと、によって調製された、遷移金属アダマンタンカルボン酸塩、
(b)ナノ複合材料であって、
(a)の前記遷移金属アダマンチン(adamantine)カルボン酸塩を熱分解して、前記ナノ複合材料を形成することによって調製された、ナノ複合材料、または
(c)(a)と(b)の混合物、を含む、触媒系。