(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6674081
(24)【登録日】2020年3月10日
(45)【発行日】2020年4月1日
(54)【発明の名称】防錆用コーティング処理液
(51)【国際特許分類】
C09D 123/00 20060101AFI20200323BHJP
C09D 179/08 20060101ALI20200323BHJP
C09D 5/08 20060101ALI20200323BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20200323BHJP
【FI】
C09D123/00
C09D179/08 A
C09D5/08
C09D7/63
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-139428(P2016-139428)
(22)【出願日】2016年7月14日
(65)【公開番号】特開2018-9108(P2018-9108A)
(43)【公開日】2018年1月18日
【審査請求日】2018年6月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000115072
【氏名又は名称】ユケン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100112900
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 路子
(74)【代理人】
【識別番号】100136995
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 千織
(74)【代理人】
【識別番号】100163164
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 敏之
(72)【発明者】
【氏名】菊池 義治
(72)【発明者】
【氏名】石崎 伸治
(72)【発明者】
【氏名】巴山 友里
【審査官】
松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2009/037834(WO,A1)
【文献】
特開2010−235829(JP,A)
【文献】
特開2011−074251(JP,A)
【文献】
特開平10−182820(JP,A)
【文献】
特開2011−042725(JP,A)
【文献】
特開平03−263473(JP,A)
【文献】
特開2004−123885(JP,A)
【文献】
特開2012−041382(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第102414020(CN,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0301712(US,A1)
【文献】
国際公開第2012/161692(WO,A1)
【文献】
国際公開第2010/131756(WO,A1)
【文献】
特開2015−168729(JP,A)
【文献】
特開2013−067699(JP,A)
【文献】
国際公開第2007/069783(WO,A1)
【文献】
特開2000−144020(JP,A)
【文献】
特開2001−164195(JP,A)
【文献】
特開平08−267004(JP,A)
【文献】
特開2004−124254(JP,A)
【文献】
特開2003−155452(JP,A)
【文献】
特開2007−098599(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス転移温度(Tg)が50〜500℃であり、誘電率(ε)が5.0F/m以下である合成樹脂と、有機ケイ素化合物と、を含有し、
前記合成樹脂が、ポリオレフィン系樹脂であることを特徴とする防錆用コーティング処理液。
【請求項2】
ガラス転移温度(Tg)が50〜500℃であり、誘電率(ε)が5.0F/m以下である合成樹脂と、有機ケイ素化合物としてのアルコキシシランと、を含有し、
前記合成樹脂が、ポリイミド系樹脂であることを特徴とする防錆用コーティング処理液。
【請求項3】
前記有機ケイ素化合物は、アルコキシシラン又はシランカップリング剤であり、分子量が250以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の防錆用コーティング処理液。
【請求項4】
前記有機ケイ素化合物の含有量が、0.01〜10.0質量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の防錆用コーティング処理液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防錆用コーティング処理液に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウムなどの軽金属は、プライマー組成物が密着し難く、アルミニウムなどの軽金属に対しては、化成処理(クロム酸皮膜処理やアルマイト処理(陽極酸化処理)など)を施した後に防錆プライマー塗料が塗装される。下記特許文献1には、アルミニウムに塗装される防錆プライマー塗料が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−129201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
塗装工程は常に簡略化が求められるものであり、アルミニウムなどの軽金属に対するプライマー組成物の塗装に対しては、化成処理の省略が求められる。しかしながら、アルミニウムに塗装される従来の上記防錆プライマーは、防錆顔料として非クロム系防錆顔料を含み、合成樹脂がウレタン変性エポキシ樹脂とメラミン樹脂とで構成されるものである。このため、従来の防錆プライマーは、防食性(防錆性)は有しているものの、アルミニウムなどの軽金属への密着性の向上までは考慮されたものではなく、アルミニウムなどの軽金属への塗装には、従来通り、化成処理が必要なものであった。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、化成処理を必要とすることなく、アルミニウムなどの軽金属に対して、密着性と防食性(防錆性)を有する防錆用コーティング処理液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の防錆用コーティング処理液は、ガラス転移温度(Tg)が50〜500℃であり、誘電率(ε)が5.0F/m以下である合成樹脂と、有機ケイ素化合物と、を含有することを特徴とする。
【0007】
本願発明者らは、誘電率(ε)5.0F/m以下である合成樹脂が有機ケイ素化合物との相溶性に優れ、塗料としての貯蔵安定性にも優れることを発見した。本発明の防錆用コーティング処理液によれば、合成樹脂の誘電率(ε)が5.0F/m以下であるため、有機ケイ素化合物との相溶性に優れ、塗料としての貯蔵安定性にも優れるものとなる。有機ケイ素化合物は、アルミニウムなどの軽金属に対して密着性に優れるものであるため、本発明の防錆用コーティング処理液は、化成処理を必要とすることなく、アルミニウムなどの軽金属に対して、密着することができる。また、本発明の防錆用コーティング処理液によれば、合成樹脂のガラス転移温度(Tg)が50〜500℃であるため、通常の使用条件(常温)では、塗装後の被塗装物が、ガラス転移温度を超える状態(ゴム状態)でなく、ガラス状態であるため、気密性を有し(電荷の移動がなく)、防錆性に優れたものとなる。
【0008】
ここで、上記防錆用コーティング処理液において、前記有機ケイ素化合物は、アルコキシシラン又はシランカップリング剤であり、分子量が250以下であるものとすることができる。これによれば、有機ケイ素化合物がアルコキシシラン又はシランカップリング剤であることによって、本発明の防錆用コーティング処理液は、アルミニウムなどの軽金属に対して、密着性により優れたものとすることができる。また、有機ケイ素化合物の分子量が250以下であることによって、合成樹脂との相溶性により優れるため、塗料としての貯蔵安定性に、より優れるものとすることができる。
【0009】
また、上記防錆用コーティング処理液において、前記有機ケイ素化合物の含有量が、0.01〜10.0質量%であるものとすることができる。これによれば、防錆用コーティング処理液は、アルミニウムなどの軽金属への密着性と、塗料としての貯蔵安定性に優れたものとすることができる。
【0010】
また、上記防錆用コーティング処理液において、前記合成樹脂が、ポリオレフィン系樹脂又はポリイミド系樹脂であるものとすることができる。これによれば、防錆用コーティング処理液は、塗料としての貯蔵安定性により優れたものとすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の防錆用コーティング処理液によれば、合成樹脂が有機ケイ素化合物との相溶性に優れ、化成処理を必要とすることなく、アルミニウムなどの軽金属に対して、密着性に優れたものとすることができる。また、合成樹脂のガラス転移温度(Tg)が50〜500℃であるため、通常の使用条件(常温)では、塗装後の被塗装物がガラス転移温度を超える状態(ゴム状態)でなく、ガラス状態であるため、気密性を有し(電荷の移動がなく)、防錆性に優れたものとすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について説明する。本発明の防錆用コーティング処理液は、ガラス転移温度(Tg)が50〜500℃であり、誘電率(ε)が5.0F/m以下である合成樹脂と、有機ケイ素化合物と、を含有するものである。
【0013】
合成樹脂とは、防錆用コーティング処理液の結合材(バインダー)となるものであり、本実施形態では、ガラス転移温度(Tg)が50〜500℃であり、誘電率(ε)が5.0F/m以下である合成樹脂を使用している。
【0014】
ガラス転移温度(Tg)とは、合成樹脂の温度を上げたときに、結晶部分と非結晶部分とを有する合成樹脂の非結晶部分が動き出す温度である。なお、結晶部分が動き出す温度は融点(Tm)となる。実施形態の防錆用コーティング処理液の塗装後の被塗装物の使用温度がガラス転移温度(Tg)より低いことによって、合成樹脂が、結晶部分と非結晶部分共に柔軟性のない状態、即ちガラス状態であるため、防錆用コーティング処理液から形成された塗膜は、気密性を有し(電荷の移動がなく)、防錆性に優れたものとなる。従って、ガラス転移温度(Tg)は、塗膜の使用温度(気温)より高い50℃以上とする。なお、ガラス転移温度(Tg)が500℃を超えると、合成樹脂の成膜が困難となるおそれがあるため、ガラス転移温度(Tg)は500℃以下とする。ガラス転移温度(Tg)は、より好ましくは55〜200℃であり、さらに好ましくは60〜150℃である。
【0015】
誘電率(ε)とは、媒質(合成樹脂)の誘電分極のしやすさを表すものである。誘電率(ε)が大きい合成樹脂は、誘電分極しやすく、分子内で+極と−極とが生じやすいものとなる。誘電分極した合成樹脂は、後述する有機ケイ素化合物の相溶性が電荷反発によって悪くなると考えられる。本願発明者らは、誘電率(ε)5.0F/m以下である合成樹脂が有機ケイ素化合物との相溶性に優れ、塗料としての貯蔵安定性にも優れることを発見したものである。誘電率(ε)は、より好ましくは、4.0F/m以下であり、さらに好ましくは、3.5F/m以下である。
【0016】
ガラス転移温度(Tg)が50〜500℃であり、誘電率(ε)が5.0F/m以下である合成樹脂として、ポリオレフィン(Tg:50〜100℃,ε:2.4F/m)、ポリオレフィン−アクリル共重合体(Tg:50〜100℃,ε:2.5F/m)、ポリアミド(Tg:50〜100℃,ε:2.5F/m)、ポリスチレン(Tg:100℃,ε:2.6F/m)、ポリフェニレンエーテル(Tg:200〜250℃,ε:2.6F/m)、アクリル−スチレン共重合体(Tg:80〜100℃,ε:2.6F/m)、アクリル樹脂(Tg:50〜100℃,ε:2.8F/m)、ポリカーボネート(Tg:120〜170℃,ε:3.0F/m)、メタクリル樹脂(Tg:50〜100℃,ε:3.1F/m)、アクリルアミド樹脂(Tg:50〜100℃,ε:3.2F/m)、PET(ポリエチレンテレフタレート)(Tg:80℃,ε:3.2F/m)、ポリイミド(Tg:200〜300℃,ε:3.2F/m)、ABS樹脂(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレン共重合体)(Tg:80〜125℃,ε:3.3F/m)、塩化ビニル樹脂(Tg:80℃,ε:3.3F/m)などを使用することができる。これらの中でも、誘電率(ε)が低く、有機ケイ素化合物との相溶性に優れ、塗料としての貯蔵安定性により優れる、ポリオレフィン系樹脂(ポリオレフィン及びポリオレフィン−アクリル共重合体)又はポリイミド系樹脂をより好んで使用することができる。
【0017】
合成樹脂は、塗料(合成樹脂)の溶媒として、有機溶媒又は水を使用することができる。塗料の溶媒が有機溶媒である塗料は、一般に溶剤系塗料と言われ、有機溶媒中に合成樹脂が分散した状態の塗料である。塗料の溶媒が水である塗料は、一般に水系塗料と言われ、合成樹脂エマルションや樹脂水性分散体からなる塗料である。また、合成樹脂は、モノマーを重合して得ることができ、合成樹脂の重合は一般的な方法を用いてすることができる。なお、合成樹脂は、予め重合された市販品を使用することもできる。
【0018】
有機ケイ素化合物とは、アルキル基やアルコキシ基などの有機基と、無機質の金属であるケイ素とが結合した化合物である。化合物内に有機質との相溶性に優れる有機基と無機質との結合性に優れるケイ素を有していることにより、有機ケイ素化合物は、有機質と無機質との橋渡しをして、有機質と無機質との密着性を向上させることができる化合物である。しかし、有機ケイ素化合物は、化合物内に有機質と無機質とを有しているため、合成樹脂に含有させたときに、有機ケイ素化合物の無機質(ケイ素)が合成樹脂と電気的に反発して、長期的または短期的に合成樹脂が凝集を起こしたりすることがある。
【0019】
有機ケイ素化合物として、以下のものを使用することができる。アルキルシランとして、テトラメチルシラン、テトラエチルシラン、アルコキシシランとして、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、1,2−ジクロロテトラメチルシラン、1,2−ジクロロテトラエチルシラン、シランカップリング剤として、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリアルコキシシランなどを使用することができる。有機ケイ素化合物は、上記の1種類又は2種類以上の組合せでも使用することができる。また、これら有機ケイ素化合物は、市販品を使用することができる。
【0020】
有機ケイ素化合物として、分子量250以下のアルコキシシラン又はシランカップリング剤が合成樹脂との相溶性に優れるため、好んで使用することができる。特に、分子量100〜200のアルコキシシランが、塗料としての貯蔵安定性に優れるため、より好んで使用することができる。分子量250以下のアルコキシシラン又はシランカップリング剤として、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン(分子量206)、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(分子量222)、3-アミノプロピルトリメトキシシラン(分子量179)、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(分子量221)、p-スチリルトリメトキシシラン(分子量224)、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(分子量236)、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(分子量248)、テトラメトキシシラン(分子量152)、テトラエトキシシラン(分子量208)、メチルトリメトキシシラン(分子量136)、メチルトリエトキシシラン(分子量178)、ジメチルジメトキシシラン(分子量120)、ジメチルジエトキシシラン(分子量148)がある。
【0021】
防錆用コーティング処理液に対する有機ケイ素化合物の含有量は、0.01〜10.0質量%であることが好ましい。塗料として、アルミニウムなどの軽金属に対して密着性に優れ、貯蔵安定性にも優れるためである。0.01質量%未満だと密着性が劣るおそれがある。一方、10.0質量%を超えると、貯蔵安定性が劣るおそれがある。より好ましくは、0.1〜5.0質量%であり、さらに好ましくは、0.3〜1.0質量%である。
【0022】
防錆用コーティング処理液は、必要に応じて、希釈剤、粘性調整剤、消泡剤、防錆剤、増量剤(体質顔料)、造膜助剤、可塑剤、防藻・防黴剤、防腐剤などを含有させることができる。
【0023】
希釈剤とは、防錆用コーティング処理液の樹脂分濃度を下げるために含有させるものであり、溶剤系塗料ではシンナー、水系塗料では水やアルコールが使用される。
【0024】
粘性調整剤とは、防錆用コーティング処理液の沈降防止、塗装作業性向上、塗装後のタレ防止などの目的のために含有させるものであり、ケイ酸カルシウム、ベントナイト、シリカなどの無機系粘性調整剤、メチルセルロース、ポリアクリル酸などの有機系粘性調整剤が使用される。
【0025】
防錆剤とは、防錆用コーティング処理液が塗装される金属の錆の発生をさらに抑制するものである。防錆剤にはクロム系、鉛系、リン酸系などの防錆剤があるが、人体への安全性の観点からリン酸系の防錆剤が好ましい。
【0026】
本発明の防錆用コーティング処理液は、鉄や銅などの一般に流通している金属に使用することができ、密着性と防食性(防錆性)に優れるものである。特に、従来の防錆プライマーが密着し難い、アルミニウム、マグネシウムなどの軽金属及びこれらの合金並びにCFRPについて高い密着性を得ることができるものである。
【実施例】
【0027】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。実施例1は、ポリオレフィン系樹脂水性分散塗料であり、
参考例2は、アクリルエマルジョン塗料であり、実施例3は、ポリイミド系溶剤塗料である。なお、実施例における添加量(含有量)は、防錆用コーティング処理液としての合計が100質量%となるように記載した。
【0028】
実施例の防錆用コーティング処理液(塗料)について、塗料の性能として貯蔵安定性、塗料から形成された塗膜の性能として防錆性及び密着性を測定した。測定は、以下の規格に準拠し、合格基準は以下のようにした。なお、試験体の基材となる金属板には、アルミダイキャストADC−12を使用した。試験体の基材には、浸漬法によって塗装した。
【0029】
<貯蔵安定性>
規格:塗料一般試験方法−第2部:塗料の性状・安定性−第7節:貯蔵安定性(JIS K 5600−2−7:1999)
合格基準:6か月常温で異常がないこと。
【0030】
<防錆性>
規格:塩水噴霧試験方法(JIS Z 2371:2000)
合格基準:312時間後に錆の発生が評価面積の5%未満であること。
【0031】
<密着性>
規格:塗料一般試験方法−第5部:塗膜の機械的性質−第6節:付着性(クロスカット法)(JIS K 5600−2−7:1999)
合格基準:分類0(カットの縁が完全に滑らかで、どの格子の目にもはがれがない。)であること。
【0032】
(実施例1)
実施例1の防錆用コーティング処理液は、ポリオレフィン樹脂水性分散塗料である。ポリオレフィン樹脂水性分散体は、市販品のポリオレフィン系樹脂水性分散体(ユニチカ株式会社製アローベース)を使用した。このポリオレフィン樹脂水性分散体64.0質量%に、工業用アルコール30.0質量%、脱イオン水5.2質量%、メチルトリメトキシシラン0.5質量%と、ジメチルジエトキシシラン0.3質量%と、を少量ずつ添加して4時間撹拌して、防錆用コーティング処理液とした。ガラス転移温度(Tg)は60℃で、誘電率(ε)は2.4F/mであった。塗料の性能として貯蔵安定性、塗料から形成された塗膜の性能として防錆性及び密着性は、どれも合格であった。
【0033】
(
参考例2)
参考例2の防錆用コーティング処理液は、アクリルエマルション塗料である。アクリルエマルションは、プレ乳化エマルション添加法で製造した。詳細な製造方法は、脱イオン水21.6質量%を87℃に保った反応器に入れ乳化重合の場とし、プレ乳化エマルション73.1質量%と、重合開始剤として過硫酸ナトリウム水溶液(5%)5.3質量%と、を撹拌しながら87℃を保ちつつ2時間かけて滴下し、90℃1時間後重合することによって製造した。プレ乳化エマルションは、脱イオン水18.3質量%(製造する防錆用コーティング処理液を100質量%とする。)に、モノマーとして、メタクリル酸メチル51.1質量%、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル1.0質量%、アクリル酸0.4質量%、反応性界面活性剤として、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル1.0質量%、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウム0.5質量%、シランカップリング剤として、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(分子量248)0.8質量%、を激しく撹拌して乳化させることによって得た。このように製造したアクリルエマルションを防錆用コーティング処理液とした。ガラス転移温度(Tg)は100℃で、誘電率(ε)は2.8F/mであった。塗料の性能として貯蔵安定性、塗料から形成された塗膜の性能として防錆性及び密着性は、どれも合格であった。
【0034】
(実施例3)
実施例3の防錆用コーティング処理液は、ポリイミド系溶剤塗料である。ポリイミド系樹脂は、4,4−ジアミノジフェニルエーテル4.1質量%と、N,N−ジメチルアセトアミド90.6質量%と、を混合し、ピロリメット酸二無水物4.5質量%を少量ずつ添加、溶解させ、18時間室温で撹拌することによって製造した。これにメチルトリメトキシシラン(分子量136)0.5質量%と、ジメチルジエトキシシラン(分子量148)0.3質量%と、を少量ずつ添加して4時間撹拌して、防錆用コーティング処理液とした。ガラス転移温度(Tg)は420℃で、誘電率(ε)は3.2F/mであった。塗料の性能として貯蔵安定性、塗料から形成された塗膜の性能として防錆性及び密着性は、どれも合格であった。