(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記衝突体が前記被計測面に衝突した後、前記衝突体を前記被計測面より上方に保持し、前記衝突体が前記被計測面に再度衝突するのを防止する再衝突防止機構が更に設けられている、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の剛性特性計測装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1では、ヘッドとシャフトが一体となったクラブ形状での試験を前提としており、シャフト部を保持して試験を実施する必要がある。このため、ヘッドの製造工程において品質管理のために計測を行う場合などは、シャフトを取り付ける工程が必要になり、煩雑であるという課題がある。
また、シャフトは円柱形状であるため、周方向に回転し易く、試験中に衝突体との衝突角度を一定に保つように設定するのが難しい。また、シャフトの材質やクランプ位置、クランプ強さなどから来るシャフトの固有振動の影響を受け、剛性特性が変化する可能性がある。
さらに、特許文献1のように振り子を使った衝突方法では、ヘッド形状(FP値の違いなど)の特性上、最下点で安定して打撃することは難しく、このずれにより打点位置や衝突角が変動する可能性があり、調整も難しい。
また、上記特許文献2もヘッドとシャフトが一体となったクラブ形状での試験を前提としており、特許文献1と同様の課題がある。
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、その目的は、被衝突体の剛性特性を簡易かつ正確に計測することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するため、請求項1の発明にかかる剛性特性計測装置は、被衝突体の剛性特性を計測する剛性特性計測装置であって、被計測面を上方に向けて前記被衝突体を保持する保持機構と、衝突体を前記被衝突体に向けて鉛直方向に落下させる落下機構と、前記衝突体に取り付けられた加速度センサと、前記加速度センサの検出値に基づいて前記被衝突体の剛性特性を算出する特性算出部と、
を備え、前記被衝突体はゴルフクラブヘッドであり、前記保持機構は、異なる型番の前記ゴルフクラブヘッドの計測を行う際に当該型番のゴルフクラブヘッドの形状に応じて形成された前記保持機構と交換可能な機構を有する、ことを特徴とする。
請求項2の発明にかかる剛性特性計測装置は、
前記保持機構は、前記ゴルフクラブヘッドのサイド部側と同型に形成された嵌合孔が形成されており、前記被計測面であるフェース面を上方に向けてシャフトと分離された状態の前記ゴルフクラブヘッドを嵌め込み可能である、ことを特徴とする。
請求項
3の発明にかかる剛性特性計測装置は、前記衝突体は柱状であり、前記被衝突体に衝突する側の底面が球面形状に形成されており、前記落下機構は、前記柱状の長手方向に沿って前記衝突体を落下させる、ことを特徴とする。
請求項
4の発明にかかる剛性特性計測装置は、前記落下機構は、前記衝突体を前記鉛直方向に移動可能に保持し、前記落下機構に保持された状態における前記衝突体の最上点位置および最下点位置を規制するストッパ機構が更に設けられている、ことを特徴とする。
請求項
5の発明にかかる剛性特性計測装置は、前記衝突体が前記被計測面に衝突した後、前記衝突体を前記被計測面より上方に保持し、前記衝突体が前記被計測面に再度衝突するのを防止する再衝突防止機構が更に設けられている、ことを特徴とする。
請求項
6の発明にかかる剛性特性計測装置は、前記衝突体の落下開始位置と前記被衝突体の被衝突面との距離を調整する落下距離調整機構が更に設けられている、ことを特徴とする。
請求項
7の発明にかかる剛性特性計測装置は、前記保持機構または前記落下機構の少なくともいずれかは、水平方向に移動可能であり、前記被衝突体の前記被計測面上における前記衝突体の落下位置を調整可能である、ことを特徴とする。
請求項
8の発明にかかる剛性特性計測装置は、前記保持機構は、前記被衝突体の振動を減衰する制振素材を含んで形成されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、衝突体を被衝突体に向けて鉛直方向に落下させるので、衝突体の衝突位置や衝突角度を一定に保つことが容易となり、剛性特性の計測精度を向上させる上で有利となる。
本発明によれば、衝突体が柱状であるため、長手方向に沿った移動の経路が規制しやすく、衝突体の衝突位置や衝突角度を一定に保つことがより容易となり、剛性特性の計測精度をより向上させる上で有利となる。また、衝突体の底面(衝突面)が球面形状に形成されているので、ペンデュラム試験に準拠した計測を行うことができる。
本発明によれば、衝突体の最上点位置および最下点位置を規制するストッパ機構が設けられているので、衝突体の落下距離を一定に保つことができ、被衝突面への衝突速度を一定にする上で有利となる。
本発明によれば、衝突体が被計測面に再衝突するのを防止する再衝突防止機構が設けられているので、短時間での繰り返し衝突による計測への影響を軽減する上で有利となる。また、衝突体が被計測面より上方に保たれるため、計測対象の被衝突体を交換する際の作業効率を向上させることができ、また被計測面にキズ等がつくのを防止することができる。
本発明によれば、衝突体の落下開始位置と被衝突体の被衝突面との距離(衝突体の落下距離)を調整する落下距離調整機構が設けられているので、衝突体の衝突速度を任意の速度に調整することができ、特に速度依存性がある剛性特性を計測する場合の利便性を向上することができる。
本発明によれば、被衝突体の被計測面上における衝突体の落下位置を調整可能なので、被計測面上の任意の位置における剛性特性を計測することができる。
本発明によれば、保持機構が制振素材を含んで形成されているので、加速度センサの検出値に過度なノイズが乗るのを防止して、安定した計測を行う上で有利となる。
本発明によれば、ゴルフクラブヘッドの評価指標として重要なCT値を容易かつ高精度に計測することができる。また、シャフトが取り付けられていないゴルフクラブヘッドのみを被衝突体とするが可能なので、ゴルフクラブヘッドの試作工程や製造工程におけるCT値の計測を容易に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照して、本発明にかかる剛性特性計測装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。
剛性特性計測装置は、被衝突体の剛性特性を計測するための装置である。本実施の形態では、被衝突体はゴルフクラブヘッド30であり、剛性特性としてゴルフクラブヘッド30のCT値を計測するものとする。
【0011】
まず、被衝突体であるゴルフクラブヘッド30について説明する。
図2に示すように、ゴルフクラブヘッド30は、フェース面32、クラウン部33、ソール部34と、サイド部35とを備えて中空構造を呈している。
フェース面32はゴルフボールを打撃するフェース面を形成する。
クラウン部33はフェース面32に接続される。
ソール部34はフェース面32およびクラウン部33に接続される。
サイド部35はクラウン部33およびソール部34に接続されフェース面32に対向する。
ゴルフクラブヘッド30は、例えば金属製であり、チタン合金やアルミニウム合金などの高強度の低比重金属が好ましく用いられる。
また、クラウン部33には、フェース面32側でかつヒール36寄りの位置にシャフト39に接続するホーゼル38が設けられている。
また、フェース面32を正面から見てゴルフクラブヘッド30のヒール36と反対側がトウ37である。
なお、本実施の形態は、
図2に示すような中空構造を有するウッド系ゴルフクラブヘッドを用いて説明するが、これに限らず、例えば中実構造を有するアイアン系ゴルフクラブヘッドに対しても本発明は適用可能である。
【0012】
図1は、実施の形態にかかる剛性特性計測装置10の構成を示す説明図である。
剛性特性計測装置10は、ヘッド固定用治具12、XYステージ14、台座16、支柱18、アーム20、リニアブッシュ22、衝突ロッド24、加速度センサ26およびコンピュータ50(
図6参照)を備える。
ヘッド固定用治具12は、被計測面を上面に向けて被衝突体を保持する保持機構として機能する。本実施の形態では、ヘッド固定用治具12は直方体状を呈し、上方に配置された衝突ロッド24と面する上面1202、XYステージ14と接する下面(図示なし)、紙面左右方向(X方向)に面する側面1204、紙面奥行方向(Y方向)に面する側面1206を有する。
上面1202には、ゴルフクラブヘッド30が嵌合する嵌合孔1208が形成されている。嵌合孔1208は、ゴルフクラブヘッド30のサイド部35側と同型に形成されており、
図3に示すように、フェース面32(被計測面)を上方に向けてゴルフクラブヘッド30を嵌め込み可能となっている。嵌合孔1208に嵌め込まれた状態のゴルフクラブヘッド30は、フェース面32を上面に向けてヘッド固定用治具12により保持される。このとき、フェース面32は略水平となるように(フェース中心の法線が鉛直方向となるように)嵌合孔1208の形状が形成されている。なお、異なる型番(形状)のゴルフクラブヘッド30を計測する際は、当該ゴルフクラブヘッド30の形状に合わせて形成されたヘッド固定用治具12と交換する。
ヘッド固定用治具12は、例えばシリコン等の制振素材で形成されている。これは、後述する衝突ロッド24がフェース面32に衝突した際に生じるゴルフクラブヘッド30の振動を減衰させ、加速度センサ26の計測ノイズを軽減するためである。すなわち、保持機構であるヘッド固定用治具12は、被衝突体であるゴルフクラブヘッド30の振動を減衰する制振素材を含んで形成されている。
【0013】
XYステージ14は、移動台1402、X軸方向調整部1404、Y軸方向調整部1406、基台1408を備える。
移動台1402には、ヘッド固定用治具12が載置される。
X軸方向調整部1404は、X軸方向操作機構とX軸方向移動機構とを備え、X軸方向操作機構を構成するつまみ1404Aの回転操作でX軸方向移動機構を介して移動台1402はX軸方向に移動する。
Y軸方向調整部1406は、Y軸方向操作機構とY軸方向移動機構とを備え、Y軸方向操作機構を構成するつまみ1406Aの回転操作で移動台1402はY軸方向移動機構を介してY軸方向に移動する。
それらY軸方向調整部1406、X軸方向調整部1404、移動台1402は、基台1408の上面に配置される。また、基台1408の下面には、後述する台座16のレール1604と嵌合するレール受け(図示なし)が形成されている。
なお、XYステージ14の機構は、上記に限らず従来公知の様々な機構を採用可能である。
【0014】
本実施の形態では、XYステージ14によりヘッド固定用治具12(保持機構)を水平方向(XY方向)に移動可能とし、ゴルフクラブヘッド30(被衝突体)のフェース面32(被計測面)上における衝突ロッド24(衝突体)の落下位置を調整可能としている。
なお、後述するリニアブッシュ22(落下機構)を水平方向(XY方向)に移動可能とすることにより、ゴルフクラブヘッド30(被衝突体)のフェース面32(被計測面)上における衝突ロッド24(衝突体)の落下位置を調整可能としてもよい。
【0015】
台座16は、底板部1602およびレール1604を備える。
底板部1602は、作業台など安定した水平面に配置される。
レール1604は、底板部1602上にY軸方向に沿って配置され、その上にXYステージ14の基台1408が配置される。XYステージ14の基台1408は、レール1604上を紙面奥行方向(Y軸方向)に移動可能である。
レール1604の紙面奥側(支柱18側)の終端部には、図示しない磁石(位置固定機構)が取り付けられている。本実施の形態では、XYステージ14の基台1408がステンレス等の金属で形成されており、基台1408がレール1604の紙面奥側の終端部(計測位置)まで移動すると、基台1408が磁石に吸着されることによりXYステージ14の位置が固定される。
【0016】
支柱18は、底板部1602の端部から上方に向かって垂直方向(Z軸方向)に立設されている。
アーム20は、アーム本体2002および位置固定機構2006を備える。なお、アーム本体2002と位置固定機構2006とは連結されている。
アーム本体2002は、支柱18から装置前面(XYステージ14等が配置されている側)に向かって水平方向(Y軸方向)に延在している。
位置固定機構2006は、支柱18に設けられた溝1802に嵌合する突起2006Aとボルト2006Bを有している。
突起2006Aは溝1802に上下に移動可能に結合され、アーム本体2002および位置固定機構2006を支柱18に沿って上下方向(Z軸方向)に移動させる。
ボルト2006Bは、回転操作されることで支柱18の側面に圧接され、これによりアーム本体2002および位置固定機構2006は、支柱18に対して移動不能に固定され、ボルト2006Bの支柱18の側面への圧接を解除することで、アーム本体2002および位置固定機構2006は、支柱18に沿って上下方向に移動可能となる。
位置固定機構2006によりアーム本体2002が上下方向に移動可能であることによって、アーム本体2002に接続されたリニアブッシュ22も上下方向に移動可能となり、後述する衝突ロッド24(衝突体)の落下開始位置とゴルフクラブヘッド30(被衝突体)のフェース面32(被衝突面)との上下方向(鉛直方向)に沿った距離を調整可能である。すなわち、位置固定機構2006は、落下距離調整機構として機能する。
このように衝突ロッド24の落下開始位置とフェース面32との上下方向に沿った距離を調整可能とするのは、この距離によって衝突ロッド24のフェース面32への衝突速度が変化するためである。本実施の形態で計測するCT値には速度依存性があることが知られている。このため、衝突ロッド24のフェース面32への衝突速度を予め決定し、その衝突速度で計測を行う必要がある。落下距離調整機構を設けることにより、衝突ロッド24のフェース面32への衝突速度を任意に調整することが可能となる。
【0017】
リニアブッシュ22は、アーム20のアーム本体2002の先端に取り付けられ、後述する衝突ロッド24(衝突体)をゴルフクラブヘッド30(被衝突体)に向けて鉛直方向(柱状の衝突ロッド24の長手方向)に落下させる落下機構として機能する。
リニアブッシュ22は、本体部2202および挿通孔2204を備える。挿通孔2204は、本体部2202の上面2206から下面2208(
図5参照)を貫通している。本体部2202内の挿通孔2204の内周面にはベアリング機構を構成する鋼球が配置されており、挿通孔2204に挿入された衝突ロッド24を鉛直方向下方に案内する。
リニアブッシュ22を用いることにより、衝突ロッド24の落下方向が規制され、ゴルフクラブヘッド30に対する落下位置を高精度に調整することができる。
なお、リニアブッシュ22として、単純な筒状の摺動体を利用したタイプを用いてもよい。
【0018】
衝突ロッド24(衝突体)は、
図4にも示すように、ロッド本体2404、上方ストッパ2406、下方ストッパ2408、操作レバー2410を備える。
ロッド本体2404は、円柱状の棒状部材であり、ステンレス等の金属によって形成されている。なお、ロッド本体2404は、円柱以外の柱形状(例えば角柱状など)であってもよい。ロッド本体2404の一方の底面2412(使用状態においてゴルフクラブヘッド30(被衝突体)に衝突する側の底面)は、球面形状に形成されている。ロッド本体2404の直径は、リニアブッシュ22の挿通孔2204から落下可能な寸法で形成されている。
【0019】
上方ストッパ2406は、ロッド本体2404の上端部(底面2412と反対側の端部)に取り付けられている。上方ストッパ2406は、リニアブッシュ22の挿通孔2204の内径よりも大きな外径を有しているため、上方ストッパ2406はリニアブッシュ22の挿通孔2204内には移動できない。よって、衝突ロッド24の落下時には上方ストッパ2406がリニアブッシュ22の上面2206に当接した位置より下方には衝突ロッド24は移動できない。すなわち、上方ストッパ2406は、リニアブッシュ22の挿通孔2204内に位置する衝突ロッド24の最下点位置を規制する。
なお、実際の使用時には、
図1および
図5に示すように上方ストッパ2406とリニアブッシュ22の上面2206との間にばね28を挟むため、上方ストッパ2406と上面2206とが直接接することはない。ばね28は、例えば圧縮コイルばねであり、その内径側に衝突ロッド24のロッド本体2404が挿通される。
詳細は後述するが、ばね28は、衝突ロッド24(衝突体)がフェース面32(被計測面)に衝突した後、衝突ロッド24をフェース面32より上方に保持し、衝突ロッド24がフェース面32に再度衝突するのを防止する再衝突防止機構として機能する。
【0020】
下方ストッパ2408は、ロッド本体2404の底面2412寄りに取り付けられている。
下方ストッパ2408は、可撓性部材で形成され、例えばゴムによって形成されている。
下方ストッパ2408もリニアブッシュ22の挿通孔2204の内径よりも大きな外径を有しているため、下方ストッパ2408はリニアブッシュ22の挿通孔2204内には移動できない。よって、衝突ロッド24を上方に移動させた際には、下方ストッパ2408がリニアブッシュ22の下面2208に接した位置より上方には衝突ロッド24は移動できない。すなわち、下方ストッパ2408は、挿通孔2204内に位置する衝突ロッド24の最上点位置を規制する。
なお、下方ストッパ2408はロッド本体2404から着脱可能である。衝突ロッド24をリニアブッシュ22から取り外す際は、下方ストッパ2408をロッド本体2404から外した上でロッド本体2404を上方に向かって移動させ、挿通孔2204から引き抜く。そして、衝突ロッド24をリニアブッシュ22に取り付ける際は、下方ストッパ2408を外した状態のロッド本体2404を挿通孔2204内に挿入し、ばね28で規制される位置まで下方に移動させる。その後、ロッド本体2404に下方ストッパ2408を取り付ける。
【0021】
すなわち、上述したようにリニアブッシュ22(落下機構)は衝突ロッド24(衝突体)を鉛直方向に移動可能に保持するが、上方ストッパ2406および下方ストッパ2408は、リニアブッシュ22に挿通(保持)された状態における衝突ロッド24の最上点位置および最下点位置を規制するストッパ機構として機能する。
【0022】
操作レバー2410は、上方ストッパ2406に取り付けられた棒状の部材であり、計測者により衝突ロッド24の位置を上方に移動させる際に用いられる(
図5参照)。より詳細には、計測者は操作レバー2410をつまんで衝突ロッド24を上方に引き上げた後、操作レバー2410を離すことによって衝突ロッド24を下方に自由落下させる。
【0023】
衝突ロッド24のサイズとしては、例えばロッド本体2404の直径は12mm以上20mm以下、長さ(上方ストッパ2406と加速度センサ26との境界から底面2412までの長さ)は60mm以上120mm以下、質量(ロッド本体2404、上方ストッパ2406、下方ストッパ2408、操作レバー2410を含む)は100g以上200g以下、底面2412の曲率半径は30mm以下とするのが好ましく、20mm以上30mm以下とするのがより好ましい。
これは、上述した範囲にペンデュラム試験の手順(非特許文献1参照)に規定される衝突体のサイズが含まれるためである。
【0024】
加速度センサ26は、衝突ロッド24(衝突体)の底面2412と反対側の面に取り付けられており、衝突ロッド24とフェース面32(被衝突体)とが衝突した際に生じる衝突ロッド24の加速度を計測する。
加速度センサ26は、配線2602によりデジタルオシロスコープを介してコンピュータ50に接続され、その検出値をコンピュータ50に出力する。デジタルオシロスコープでは、加速度センサから出力されたアナログ信号をデジタル値に変換する。なお、加速度センサ26とコンピュータ50とを無線通信により接続してもよい。
【0025】
図6は、コンピュータ50の構成を示すブロック図である。
コンピュータ50は、CPU52と、不図示のインターフェース回路およびバスラインを介して接続されたROM54、RAM56、ハードディスク装置58、ディスク装置60、キーボード62、マウス64、ディスプレイ66、プリンタ68、入出力インターフェース70などを有している。
ROM54は制御プログラムなどを格納し、RAM56はワーキングエリアを提供するものである。
【0026】
ハードディスク装置58は、加速度センサ26の検出値に基づいてゴルフクラブヘッド30(被衝突体)の剛性特性(本実施の形態ではCT値)を算出する剛性特性算出プログラムを格納している。
【0027】
ディスク装置60はCDやDVDなどの記録媒体に対してデータの記録および/または再生を行うものである。
キーボード62およびマウス64は、操作者による操作入力を受け付けるものである。
ディスプレイ66はデータを表示出力するものであり、プリンタ68はデータを印刷出力するものであり、ディスプレイ66およびプリンタ68によってデータを出力する。
入出力インターフェース70は、加速度センサ26など外部機器との間でデータの授受を行うものである。
【0028】
つぎに、
図7のフローチャートを参照して、剛性特性計測装置10による計測手順について説明する。
図7のフローチャートでは、量産した同一型番のゴルフクラブヘッド30を複数個用意し、それぞれのゴルフクラブヘッド30の剛性特性(例えばCT値)を計測するものとする。
計測に先立って、剛性特性の計測位置(フェース面32上における衝突ロッド24の衝突位置)や衝突ロッド24の衝突速度などの計測パラメータを決定しておく(ステップS70)。
【0029】
つぎに、ゴルフクラブヘッド30をヘッド固定用治具12にセットする(ステップS72)。
より詳細には、まず計測者はレール1604上のXYステージ14を手前方向に移動させる。これは、ゴルフクラブヘッド30をセットする際にリニアブッシュ22等と干渉しない位置にヘッド固定用治具12を移動させるためである。つぎに、ゴルフクラブヘッド30のフェース面32を上方に向けて、サイド部35側を嵌合孔1208に嵌め込む。そして、レール1604上のXYステージ14を奥方向(支柱18側)に移動させる。レール1604端部までXYステージ14が移動すると、磁石によりがXYステージ14の位置が固定される。
【0030】
つぎに、フェース面32上の計測位置が衝突ロッド24の落下位置と一致するように、XYステージを操作して位置合わせを行う(ステップS74)。
また、支柱18に対するアーム20の位置を調整することにより、衝突ロッド24のフェース面32への衝突速度を調整する(ステップS76)。すなわち、衝突ロッド24はフェース面32に向けて自由落下するが、この時の衝突速度は、衝突ロッド24の落下開始位置によって異なる。よって、例えば実際に衝突ロッド24をフェース面32に衝突させて加速度を計測し、この加速度を積分することにより衝突速度を算出して、ステップS70で決定した衝突速度よりも速い場合にはアーム20の位置をより高く、遅い場合にはアーム20の位置をより低く調整する。
後述するように(
図5参照)、衝突ロッド24はばね28を圧縮しながらフェース面32へと衝突する。アーム20の位置を高くして、衝突ロッド24の落下開始点とフェース面32との距離を長くすると、衝突時にばね28が大きく圧縮された状態となり、アーム20の位置変更前と比較して衝突ロッド24の衝突速度が遅くなる。なお、アーム20の位置を高くし過ぎると、衝突ロッド24とフェース面32が接触しなくなる。
また、アーム20の位置をより低くして、衝突ロッド24の落下開始点とフェース面32との距離を短くすると、ばね28の圧縮量が少ない状態(減速前)に衝突ロッド24とフェース面32が衝突することになり、アーム20の位置変更前と比較して衝突ロッド24の衝突速度が速くなる。なお、アーム20の位置を低くし過ぎると、無荷重時にも衝突ロッド24とフェース面32が接触してしまう。
【0031】
つづいて、衝突ロッド24をフェース面32上に落下させ、衝突時の加速度を加速度センサ26で計測する(ステップS78)。
図5は、計測時における衝突ロッド24の挙動を模式的に示す図である。
計測時にはまず、
図5Aに示すように、計測者が操作レバー2410をつまんで衝突ロッド24を上方に引き上げる。一定量引き上げると、下方ストッパ2408がリニアブッシュ22の下面2208に当接し、それ以上上方に移動できなくなる。
なお、計測時には衝突ロッド24のロッド本体2404にばね28が挿通される。ばね28はリニアブッシュ22の上面2206上に位置する。
図5Aの状態では、ばね28に力がかかっていないため、ばね28の長さは自然長H0となっている。
つぎに、計測者は、加速度センサ26をオン(計測開始)するとともに、操作レバー2410を離して衝突ロッド24を鉛直方向に落下させる。
図5Bに示すように、衝突ロッド24は自由落下し、重力加速度によって落下速度が加速する。
その後、上方ストッパ2406がばね28の上端位置まで落下すると、衝突ロッド24の荷重(質量×加速度)がばね28にかかる。この荷重により、ばね28は縮んで自然長H0より短い長さH1となる(
図5C参照)。一方、衝突ロッド24にはばね28からの反力がかかり、落下速度は減速する。この減速の過程で、衝突ロッド24がフェース面32に所定の衝突速度で衝突する。
フェース面32と衝突した衝突ロッド24は、反力を受けて上方へと移動する。衝突ロッド24が上方に移動すると、ばね28にかかる荷重がなくなり、ばね28は自然長H0に戻る。衝突ロッド24は、一定距離上方に移動した後、重力により再度下方(フェース面32方向)へと落下する。しかしながら、最初の落下時と比較して落下開始位置が低いため、ばね28にかかる荷重は小さくなり、ばね28を縮ませる程度の荷重には至らない(または
図5Cよりも縮み量が小さくなる)。
よって、
図5Dに示すように、衝突ロッド24の底面2412はフェース面32よりも上方に保持される。すなわち、ばね28は、衝突ロッド24(衝突体)がフェース面32(被計測面)に衝突した後、衝突ロッド24をフェース面32より上方に保持し、衝突ロッド24がフェース面32に再度衝突するのを防止する再衝突防止機構として機能する。
このような再衝突防止機構を設けているのは、再衝突によって加速度センサ26の検出値のノイズが増大するのを防止するためである。
【0032】
図7の説明に戻り、コンピュータ50はステップS78で検出された加速度を用いて、ゴルフクラブヘッド30の剛性特性(CT値)を算出する(ステップS80)。
加速度センサ26で検出される加速度は、所定のサンプリング間隔で検出される時系列の加速度データである。コンピュータ50は加速度データをフィルタ処理してノイズを除去した上で積分し、速度Vの時系列データに変換する。
【0033】
図8は、衝突ロッド24の速度Vの時系列データを示すグラフである。
コンピュータ50は、以下のようにゴルフクラブヘッド30の剛性特性を示すCT値を算出する。
速度Vの時系列データにおける最高速度をVmaxとする。
速度VがV1(V1=Vmaxのα%)に達する時間を開始時間tsとする。
速度VがV2(V2=Vmaxのβ%)に達する時間を終了時間teとする。
αを0〜99%とし、βを1〜100%とし、α<βとする。
CT値はte−tsによって求められる。
なお、一般的にはα%=5%、β%=95%とされる。
【0034】
また、上述したように、CT値には速度依存性がある。よって、複数の衝突速度でCT値の計測を行い、衝突速度とCT値との関係から当該ゴルフクラブヘッド30の代表CT値を算出する場合もある。
図9は、同一のゴルフクラブヘッド30について、衝突速度を変更して複数回計測したCT値の一例を示すグラフである。
図9において、横軸は衝突速度[m/s]、縦軸はCT値[μs]である。
図9のグラフに示すように、CT値は衝突速度が遅いほど大きく、衝突速度が速いほど小さくなっている。
【0035】
図10は、
図9の横軸を−0.329乗した値(V
−0.329)に変換したグラフである。
このような変換を行うと、CT値は直線上に並ぶ。この直線とY軸との交点(y切片)を当該ゴルフクラブヘッド30の代表CT値とする。
図10の例では、各衝突速度におけるCT値はT=248.6+13.73V
−0.329の直線上に並んでおり、代表CT値は248.6となる。
なお、
図9および10には衝突速度を変更して10回計測を行った結果を図示しているが、一般的には3回程度の計測(3つの速度水準)でゴルフクラブヘッド30の代表CT値を算出する。
【0036】
図7の説明に戻り、複数個用意したゴルフクラブヘッド30の計測を全て終了するまでは(ステップS82:No)、ヘッド固定用治具12にセットするゴルフクラブヘッド30を交換し(ステップS84)、ステップS78に戻り以降の処理をくり返す。
なお、同一型番のゴルフクラブヘッド30であれば、ゴルフクラブヘッド30の交換後も衝突位置の位置合わせ(ステップS74)や衝突速度の調整(ステップS76)は基本的には不要と考えられるが、個々のゴルフクラブヘッド30の製造誤差やヘッド固定用治具12へのセット状態の誤差等の要因により、必要がある場合には、ステップS74やステップS76を行った上で計測を行う。
そして、複数個用意したゴルフクラブヘッド30の計測を全て終了すると(ステップS82:Yes)、本フローチャートによる処理を終了する。
【0037】
以上説明したように、実施の形態にかかる剛性特性計測装置10は、衝突体である衝突ロッド24を、被衝突体であるゴルフクラブヘッド30に向けて鉛直方向に落下させるので、衝突ロッド24の衝突位置や衝突角度を一定に保つことが容易となり、剛性特性の計測精度を向上させる上で有利となる。
また、剛性特性計測装置10は、衝突ロッド24が柱状であるため、長手方向に沿った移動の経路が規制しやすく、衝突ロッド24の衝突位置や衝突角度を一定に保つことがより容易となり、剛性特性の計測精度をより向上させる上で有利となる。また、衝突ロッド24の底面2412(衝突面)が球面形状に形成されているので、ペンデュラム試験に準拠した計測を行うことができる。
また、剛性特性計測装置10は、衝突ロッド24の最上点位置および最下点位置を規制する上方ストッパ2406および下方ストッパ2408(ストッパ機構)が設けられているので、衝突ロッド24の落下距離を一定に保つことができ、フェース面32への衝突速度を一定にする上で有利となる。
また、剛性特性計測装置10は、衝突ロッド24がフェース面32に再衝突するのを防止するばね28(再衝突防止機構)が設けられているので、短時間での繰り返し衝突による計測への影響を軽減する上で有利となる。また、衝突ロッド24がフェース面32より上方に保たれるため、計測対象となるゴルフクラブヘッド30を交換する際の作業効率を向上させることができ、またフェース面32にキズ等がつくのを防止することができる。
また、剛性特性計測装置10は、衝突ロッド24の落下開始位置とフェース面32との距離(衝突体の落下距離)を調整する落下距離調整機構(アーム20の位置固定機構2006)が設けられているので、衝突ロッド24の衝突速度を任意の速度に調整することができ、特に速度依存性がある剛性特性を計測する場合の利便性を向上することができる。
また、剛性特性計測装置10は、フェース面32上における衝突ロッド24の落下位置を調整可能なので、フェース面32上の任意の位置における剛性特性を計測することができる。
また、剛性特性計測装置10は、ヘッド固定用治具12が制振素材を含んで形成されているので、加速度センサ26の検出値に過度なノイズが乗るのを防止して、安定した計測を行う上で有利となる。
また、剛性特性計測装置10は、ゴルフクラブヘッド30の評価指標として重要なCT値を容易かつ高精度に計測することができる。また、シャフトが取り付けられていないゴルフクラブヘッド30のみを被衝突体とすることが可能なので、ゴルフクラブヘッド30の試作工程や製造工程におけるCT値の計測を容易に行うことができる。
【0038】
なお、本実施の形態では、ゴルフクラブヘッド30の剛性特性としてCT値を算出するものとしたが、例えば反発係数(衝突前後における相対速度の比)など、加速度センサ26の検出値を用いて算出可能な他の剛性特性を算出するようにしてもよい。