(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
既存建物を耐震補強する方法の1つとして、既存建物の柱と梁に囲まれた構面に、現場打ちコンクリートやブロック積み等で耐震壁を構築し、柱梁架構の水平耐力及び剛性を高くする方法がある。ブロック積みで耐震壁を構築する方法は、現場でのコンクリート打設作業を必要としないため、施工中に既存建物を使用できる長所がある。
しかし、ブロック積みは、柱梁架構の構面内において、ブロックの挿通孔に縦筋を挿通させながら落とし込む作業となるため、積み上げ高さが高くなると施工性が低下する。更に、正面視が矩形に形成されたブロックは、上面と下面が横方向へ直線状に形成されているため、上面と下面の摩擦力だけでは上下のブロックがずれてしまい、地震時等の横荷重を受けることができない。
ブロック積みで耐震壁を構築する技術には、例えば特許文献1がある。
【0003】
特許文献1に記載のブロックは、正面視が矩形のコンクリート製のブロックを厚さ方向に二分割した半割り形状であり、矩形の平板部と、平板部の一方の表面から突出部を突出させた構成である。また、特許文献1の耐震壁は、平板部から突出部を突出させたブロックの突出部側を、縦筋を挟んで、横方向から重ね合わせて積層し、突出部側に形成された隙間にグラウト材を充填させる構成である。このため、ブロックの挿通孔に縦筋を挿通させながら落とし込むという工程が不要となり、ブロックの積み上げ高さが高くなると施工性が低下する、という問題は改善される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の耐震壁は、正面視が矩形のブロックを厚さ方向に分割した構成であるため、地震時等の横荷重を受けた時、上下のブロックがずれて横荷重を負担できない、という問題は改善されていない。
【0006】
本発明は、上記事実に鑑み、積み上げ高さが高くなった状態でも縦筋を配筋できると共に、横荷重を負担できるブロック、耐震壁、及び耐震壁構築方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様に係るブロックは、合わせた状態で上下に貫通する貫通孔を形成する凹部を有し、積み上げ面となる上面及び下面が両端部から中央部に向かって傾斜する傾斜平面を備え、前記傾斜平面が上下に重ねられて積層されることを特徴としている。
【0008】
一態様に係るブロックによれば、ブロックは、積み上げ面となる上面及び下面が、両端部から中央部に向かって傾斜する傾斜平面を備えており、ブロックで積み上げられた壁体を正面視したとき、傾斜平面同士が上下に重ねられて波形に連続する。この波形は、ブロックの上面及び下面に形成されるため、ブロックの高さの間隔で、上下方向に複数形成される。これにより、上下のブロックのずれが抑制され、地震時等の横荷重を、上面及び下面に形成された傾斜平面へ、支圧としてブロックに負担させることができる。
また、ブロックは、厚さ方向へ合わせた状態で上下に貫通する貫通孔を形成する凹部を有しているため、壁体の表側と裏側から、凹部を合わせて縦鉄筋を囲み、形成された貫通孔にグラウトを充填することでブロック壁を構築することができる。この結果、積み上げ高さが高くなっても縦筋が配筋でき、施工性の低下を抑制することができる。
【0009】
請求項1に記載の発明に係る耐震壁は、上下方向に鉄筋が設けられた柱梁架構の構面に構築される第1耐震壁と前記第1耐震壁の上に構築される第2耐震壁を備えた耐震壁であって、前記第1耐震壁は、積み上げ面となる
上面及び下面が両端部から中央部に向かって傾斜
した傾斜平面
と、前記傾斜平面の下端部及び上端部に形成された面取りと、を備えた第1ブロックが、前記傾斜平面を上下に重ねて積層されて構成され、前記第2耐震壁は、端部と中央部に凹部を備えた2つのブロックを前記第1耐震壁の面外方向に対向させ接着して形成され
、積み上げ面となる
上面及び下面が両端部から中央部に向かって傾斜
した傾斜平面
と、前記傾斜平面の下端部及び上端部に形成された面取りと、を備えた第2ブロックが、前記傾斜平面を上下に重ねて積層されて構築され、前記第2ブロックは、前記中央部の凹部が組み合わされて形成される上下に貫通し前記第1耐震壁の面外方向に開口していない第1貫通孔と、前記第2ブロックを前記第1耐震壁の面内方向に沿って対向させて前記端部の凹部が組み合わされて形成される上下に貫通し前記第1貫通孔と非連通とされた第2貫通孔と、を備え、第1貫通孔及び前記第2貫通孔へ前記鉄筋が挿通されている。
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、第1ブロックで構築された第1耐震壁の上に、第2ブロックで構築された第2耐震壁が構築される。
ここに、第1ブロックは、内部に上下方向へ貫通する貫通孔を有し、積み上げ面となる上面及び下面が両端部から中央部に向かって傾斜する傾斜平面を備えており、貫通孔を孔軸方向へ分離するように分割されていない。このため、縦鉄筋を貫通孔に挿入させて落とし込み、傾斜平面同士を上下に重ねて積層できる。
これにより、ブロックを合わせて貫通孔を形成する必要がなく、耐震壁の高さ方向の中間位置までは、従来通り容易に構築することができる。
【0011】
一方、第2ブロックは、合わせた状態で上下に貫通する貫通孔を形成する凹部を有し、積み上げ面となる上面及び下面が両端部から中央部に向かって傾斜する傾斜平面を備えており、表側のブロックと裏側のブロックに分割されている。このため、耐震壁の高さ方向の中間位置以上であっても、壁体の正面側及び裏面側から横方向へ移動させ、凹部で縦鉄筋を囲みながら積層することができる。
この結果、積み上げ高さが高くなっても縦筋が配筋でき、また施工性の低下を抑制することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明に係る耐震壁構築方法は、 上下方向に鉄筋が設けられた柱梁架構の構面に第1耐震壁を構築し前記第1耐震壁の上に第2耐震壁を構築する耐震壁構築方法であって、積み上げ面となる
上面及び下面が両端部から中央部に向かって傾斜
した傾斜平面
と、前記傾斜平面の下端部及び上端部に形成された面取りと、を備えた第1ブロックを、前記傾斜平面を上下に重ねて積層し、前記柱梁架構の構面に、高さ方向の中段まで第1耐震壁を構築する工程と、端部と中央部に凹部を備えた2つのブロックを前記第1耐震壁の面外方向に対向させ接着して形成され積み上げ面となる
上面及び下面が両端部から中央部に向かって傾斜
した傾斜平面
と、前記傾斜平面の下端部及び上端部に形成された面取りと、を備えた第2ブロックを、前記傾斜平面を上下に重ねて積層して前記第1耐震壁の上に第2耐震壁を構築する工程と、を備え、前記第2ブロックは、前記中央部の凹部を組み合わせて形成する上下に貫通し前記第1耐震壁の面外方向に開口していない第1貫通孔と、前記第2ブロックを前記第1耐震壁の面内方向に沿って対向させて前記端部の凹部を組み合わせて形成する上下に貫通し前記第1貫通孔と非連通とされた第2貫通孔と、を備え、第1貫通孔及び前記第2貫通孔へ前記鉄筋を挿通する。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、第1耐震壁を構築する工程において、柱梁架構の構面に、第1ブロックが傾斜平面同士を上下に重ねて積層される。
ここに、第1ブロックは、内部に上下方向へ貫通する貫通孔を有し、積み上げ面となる上面及び下面が、両端部から中央部に向かって傾斜する傾斜平面を備え、貫通孔を孔軸方向へ分離するように分割されていない。第1耐震壁は、耐震壁全体の高さの中段(半分程度)まで、落とし込み方式で構築される。
【0014】
続いて、第2耐震壁を構築する工程において、第1耐震壁の上に、第2ブロックが傾斜平面同士を上下に重ねて積層される。
ここに、第2ブロックは、合わせた状態で上下に貫通する貫通孔を形成する凹部を有し、積み上げ面となる上面及び下面が、両端部から中央部に向かって傾斜する傾斜平面を備え、表側のブロックと裏側のブロックに分割されている。第2耐震壁は、耐震壁の中段以上から最上段まで、横方向から縦筋を挟んで積層されて構築される。
これにより、第1耐震壁と第2耐震壁の積み上げ面となる上面及び下面が、両端部から中央部に向かって傾斜する傾斜平面を備えた第1ブロックと第2ブロックにより構築されるので、上面及び下面を介して、支圧として第1ブロックと第2ブロックに横荷重を負担させることができる。
また、厚さ方向に分割された第2ブロックにより、第2耐震壁が、横方向から積層されて構築されるので、積み上げ高さが高くなった状態でも縦筋が配筋でき、また施工性の低下を抑制できる。
一態様に係る耐震壁は、壁体と、前記壁体の一方の側面に半割ブロックを積層させて構築されるブロック壁と、を備えた耐震壁であって、前記半割ブロックは、積み上げ面となる上面及び下面が両端部から中央部に向かって傾斜した傾斜平面と、前記壁体と対向する面の端部及び中央部に形成された凹部と、を備え、前記ブロック壁は、前記中央部の凹部と前記壁体とで形成される第1貫通孔と、前記半割ブロックを前記壁体の面内方向に沿って対向させて前記端部の凹部と前記壁体とで形成される上下に貫通する第2貫通孔と、を備え、第1貫通孔及び前記第2貫通孔へ鉄筋が挿通されて形成された、耐震壁。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、上記構成としてあるので、積み上げ高さが高くなった状態でも施工性の低下を抑制できると共に、上面と下面を介して横荷重を負担できるブロック、耐震壁、及び耐震壁構築方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係るブロック10について、
図1(A)〜(C)を用いて説明する。ここに、
図1(A)はブロック10の斜視図を、(B)と(C)は、(A)を接合面28で接合する前のブロック12A、12Bの斜視図をそれぞれ示している。
【0018】
図1(A)に示すブロック10は、
図1(B)に示すブロック12Aの接合面28Aと、
図1(C)に示す12Bの接合面28BをY軸方向(横方向)へ移動させて当接させ、重ね合わせて接着剤で接合させた構成である。
ブロック10の中央部には、上下に貫通する挿通孔(貫通孔)14が形成されている。挿通孔14は、図示しない縦鉄筋が挿通される貫通孔であり、ブロック12Aの凹部16Aと、ブロック12Bの凹部16Bで形成される。
【0019】
ブロック10の積み上げ面となる上面18は、ブロック12Aの上面18Aとブロック12Bの上面18Bで形成され、下面20は、ブロック12Aの下面20Aとブロック12Bの下面20Bで形成される。上面18と下面20は、両端部10R、10Lから中央部に向かって傾斜する傾斜平面とされている。このため、ブロック10は、傾斜平面同士を上下に重ねて積層される。
【0020】
本構成によれば、ブロック10は、積み上げ面となる上面18及び下面20が、両端部10R、10Lから中央部に向かって、傾斜する傾斜平面を備えており、後述する第2実施形態で説明するように、ブロック10で構築された壁体を正面視したとき、傾斜平面同士が上下に重ねられて波形に連続する。この波形は、ブロック10の上面18及び下面20に形成されるため、ブロック10の高さの間隔で、上下方向に複数形成される。
これにより、地震時等の横荷重を、上面18及び下面20に形成された傾斜平面を介して、支圧としてブロック10に直接負担させることができる。
【0021】
また、ブロック10の中央部には、上下に貫通する挿通孔14が形成されている。挿通孔14は、ブロック12Aの凹部16Aと、ブロック12Bの凹部16Bを合わせた状態で形成されている。これにより、ブロック12Aとブロック12Bを横方向へ移動させて、壁体の正面側と裏面側から、挿通孔14で縦鉄筋を囲み、形成された挿通孔14の隙間にグラウトを充填することで、壁体を構築することができる。このとき、挿通孔14は十分な強度をもって接着剤で接着されているので、挿通孔14に充填されたグラウトが、外へ漏れることはない。
この結果、積み上げ高さが高くなっても縦鉄筋を容易に挿通でき、施工性の低下を抑制することができる。
【0022】
なお、本実施形態では、ブロック10の接合面28は、ブロック10の厚さDの中央部に形成される場合について説明した。しかし、これに限定さされることはなく、ブロック12A、12Bのいずれか一方が、他方より厚い形状で形成されていてもよい。
また、接合面28A、28Bが、ブロック12A、12Bの正面24A、24Bと平行な構成の場合で説明した。しかし、これに限定されることはなく、接合面28A、28Bが、ブロック12A、12Bの正面26A、26Bと傾斜していてもよい。これにより、接合面の表面積を増やすことができる。
【0023】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態に係る耐震壁30について、
図2〜
図6を用いて説明する。
図2は、耐震壁30の正面図、
図3(A)、(B)はブロック36、56の斜視図、
図4(A)〜
図5(B)は、耐震壁30の構築手順を示す斜視図である。
図6は耐震壁30の圧縮力の伝達を模式的に示す正面図である。
【0024】
図2に示すように、耐震壁30は、補強される建物の既存の柱32と、隣りの柱32との間に渡された既存の下側の梁34D、及び上側の梁34Uで囲まれた、柱梁架構22の構面に構築されている。耐震壁30は、下部に構築される下部耐震壁(第1耐震壁)38と、下部耐震壁38の上部に構築される上部耐震壁(第2耐震壁)40と、で構成されている。なお、下部耐震壁38には、便宜上、網掛けを施している。
【0025】
下部耐震壁38は、
図3(A)に示すブロック36、及び
図3(B)に示すブロック56を積み上げて構築されている。ブロック36は、プレキャストコンクリート製とされ、内部に上下方向へ貫通する縦筋挿通孔(貫通孔)42を有し、積み上げ面となる上面44及び下面46が、両側面36R、36Lから中央部に向かって傾斜する傾斜平面を備えている。ブロック36は、落とし込み方式で、傾斜平面同士を上下に重ねて積層される。
【0026】
図3(A)に示すように、ブロック36は、下部耐震壁38を正面視したとき、ブロック36の積み上げ面となる上面44及び下面46が、両端部から中央部に向かって傾斜する傾斜平面を備えている。
積み重ね(積み上げ)に際しては、上面44と下面46の傾斜平面同士が上下に重ねられる。これにより、下部耐震壁38を正面視したとき、傾斜平面同士が上下に重ねられて波形に連続している。この波形は、ブロック36、56の高さの間隔をあけて、上下方向に複数形成されている。
【0027】
ブロック36の上面44及び下面46は、両側面36R、36Lから中央部に向かって、中央部が狭くなる方向へ直線状に傾斜している。即ち、正面視において、上面44は中央部に向かって下方へ傾斜し、下面46は中央部に向かって上方へ傾斜し、羽根を広げた蝶々の形状となっている。このため、ブロック36は、互いに幅方向の半分ずつ、横方向へずらせて積み重ねられる。
なお、図示は省略するが、ブロック36の上面44及び下面46が、両側面36R、36Lから中央部に向かって、中央部が厚くなる方向へ直線状に傾斜する形状でもよい。
【0028】
一方、ブロック36の正面48及び裏面50は、互いに平行に形成され、下部耐震壁38を構築したとき、下部耐震壁38の正面及び裏面の一部を構成する。また、ブロック36の両側面36R、36Lも平行に形成され、下部耐震壁38を構築したとき、後述する隣り合うブロック36の側面と当接される。
【0029】
ブロック36の中央部には、縦筋挿通孔(貫通孔)42が形成されている。縦筋挿通孔42は、上面44及び下面46と交差する方向に形成され、孔軸方向へ分割するように分割されていない。これにより、分割された場合に必要とされる、ブロック同士を接合する手間を必要としない。縦鉄筋52が配筋された位置では、縦鉄筋52が挿通される。
下部耐震壁38の正面視において、縦目地となるブロック36の両側面36R、36Lには、上面44及び下面46と交差する方向に、半円筒状の凹部54R、54Lが形成されている。凹部54R、54Lには、縦鉄筋52が挿通される。
ここに、縦鉄筋52は、柱梁架構22の高さの半分程度の長さを有し、梁34Dの上面に上方へ向けて取付けられており、上端部は開放されている。
【0030】
なお、
図3(B)に示すブロック56は、ブロック36を、幅方向の中心で鉛直方向へ二分割した構成である。即ち、上面58と下面60は、ブロック36の上面44と下面46と同じ傾斜を有し、幅方向の半分の大きさであり、正面62及び裏面64は、互いに平行に形成され、ブロック36の正面48及び裏面50の半分の大きさである。また、側面56R、56Lには、ブロック36と同じ径の凹部66R、66Lが形成されている。
ブロック56は、ブロック36を、横方向に半ブロック分ずらせて積層した場合に発生する、両端部の半ブロック分の隙間に積層される。
【0031】
なお、
図2には、下部耐震壁38の最下段と下側の梁34Dの上面との間の隙間に、グラウト68を充填させる構成を記載した。しかし、これに限定されることはなく、例えば、ブロック36を水平方向に切断したブロック、即ち、底面が平らで、上面には、中央部が両端部より低い傾斜面を備えたブロックを配置してもよい(図示省略)。
これにより、下部耐震壁38の最下段をより安定させることができる。
【0032】
上部耐震壁40は、ブロック10、56を、下部耐震壁38の上に積み上げて構築される。ブロック10は、第1実施形態で説明したブロックであり、ブロック12A、12Bを横方向に移動させ、縦鉄筋53を凹部に挟んで接合面28A、28Bを当接させ、合わせた状態で接着させる。ここに縦鉄筋53は、梁34Uの下面に下方へ向けて取付けられており、下端部は縦鉄筋52と接合されている。なお、縦鉄筋53を長さ方向に分割し、縦鉄筋52の上端部と梁34Uの下面の間を、分割された縦鉄筋53で順次接合しながら連結してもよい。
【0033】
これにより、縦鉄筋53が挿通された縦筋挿通孔14が形成される。即ち、ブロック10は、耐震壁30の表側と裏側から、ブロック12A、12Bを横方向に移動させて、傾斜平面同士を上下に重ねて積層される。ブロック56は、ブロック10を、横方向に半ブロック分ずらせて積層した場合に発生する、両端部の半ブロック分の隙間に積層される。
【0034】
図4(A)、(B)に示すように、ブロック10は、先ず、厚さ方向に分割されたブロック12Aを上部耐震壁40の一方の側から、凹部16Aで縦鉄筋53の一方を囲み、下部耐震壁38の上に、横方向から積み重ねる。これにより、落し込み方式によらずに、積み増すことができる。
【0035】
次に、
図5(A)(B)に示すように、厚さ方向に分割されているブロック12Bを上部耐震壁40の他方の側(例えば上部耐震壁40の裏側)から、ブロック12Aと対向させて、下部耐震壁38の上に横方向から積み増す。これにより、上部耐震壁40が、高さ方向の中間位置以上の高さであっても、耐震壁(壁体)30の表面側及び裏面側から、凹部16A、16Bで縦鉄筋53を囲みながら積層することができる。
この結果、積み上げ高さが高くなっても、縦鉄筋53が配筋でき、また施工性の低下を抑制することができる。
【0036】
以上説明したように、耐震壁30は、ブロック36で構築された下部耐震壁38の上に、ブロック10、56で構築された上部耐震壁40が構築される。
下部耐震壁38は、ブロック36、56で積層される、ここに、ブロック36は、縦筋挿通孔42の孔軸方向へ分離するように、厚さ方向に分割されていない。このため、ブロックを合わせて縦筋挿通孔42を形成する必要がなく、縦鉄筋52を縦筋挿通孔42に挿入させて、落とし込み方式で、傾斜平面同士を上下に重ねて積層できる。
これにより、耐震壁30の高さ方向の中間位置程度までは、従来通り容易に構築することができる。
【0037】
また、上部耐震壁40は、厚さ方向に分割されているブロック12Bを上部耐震壁40の他方の側から、ブロック12Aと対向させて、下部耐震壁38の上に横方向から積み増す。これにより、落し込み方式によらずに、積み増すことができる。即ち、縦鉄筋53が配筋でき、また耐震壁30の上部を、施工性の低下を抑制して構築することができる。
【0038】
次に、耐震壁30の構築方法について説明する。
先ず、
図2に示すように、柱梁架構22の構面内に、下部耐震壁38が構築される。
具体的には、縦鉄筋52が、梁34Dの上面から突出して取付けられる。縦鉄筋52の長さは、例えば、耐震壁30の高さの半分程度の長さ(耐震壁30の高さによって定まる作業性を考慮した適切な長さ)とされる。
【0039】
続いて、縦鉄筋52の所定の高さまで(目安としては1段目〜5段目程度まで)ブロック36が積み重ねられる。このとき、ブロック36は、縦筋挿通孔42及び凹部54R、54Lに縦鉄筋52を挿通させ、落とし込み方式で積み重ねられる。ブロック36の横方向端部には、ブロック56が積層される。
【0040】
次に、下部耐震壁38の上に上部耐震壁40が構築される。
具体的には、縦鉄筋53が梁34Uの下面から突出して取付けられる。縦鉄筋53の下端部は縦鉄筋52の上端部と接合され、上下方向に連続した縦鉄筋とされる。縦鉄筋52と縦鉄筋53が接合された状態では、落し込み方式を採用できないので、ブロック36は積層できない。
【0041】
このため、
図4(A)〜
図5(B)に示すように、ブロック10が積層される。ブロック10は、表側と裏側のブロックに分割された状態のブロック12A、12Bを、梁18に達する手前の高さまで、縦鉄筋53を挟んで、耐震壁30の表側と裏側から、横方向に積み上げることができる。積層されたブロック12A、12Bが再び分離しないよう、接着剤で接着される。ブロック10の横方向の端部に、半ブロック分の隙間が生じる場合には、ブロック56が積層される。
【0042】
最後に、柱32と下部耐震壁38、上部耐震壁40との隙間、及びブロック36、56、10の縦筋挿通孔42、ブロック間の凹部44R、44L等の隙間等に、グラウト68が充填される(
図2参照)。ブロック10は接着剤で接着されているので、グラウト68が縦筋挿通孔42から漏れることはない。なお、グラウト68は、各ブロック36、10を積み上げる度に充填しても良い。グラウト68の硬化を待って耐震壁30が完成する。
【0043】
次に、耐震壁30を構成するブロック10、36、56間の圧縮力の伝達について説明する。
図6に示すように、耐震壁30を構成するブロック10、36、56の上面18、44、58、及び下面20、46、60には、両端部から中央部に向かって、若しくは一方の端部から他方の端部へ向かって、傾斜する傾斜平面が設けられている。この傾斜平面は、耐震壁30を正面視したとき、傾斜平面同士が上下に重ねられて波形に、横方向へ連続している。この波形は、ブロック36、14の高さの間隔をあけて、上下方向に複数形成されている。
【0044】
これにより、一方の柱32を介して耐震壁30へ、矢印P1で示す水平力(横荷重)が作用したとき、ブロック10、36、56には、矢印P2、P3、P4…Pmで示す水平力が、傾斜面に沿って支圧として押下げ方向へ順次作用する。伝達された水平力は、他方の柱32で受け止められ、梁34U、34Dに伝達される。水平力が反対方向の場合には、他方の柱32から一方の柱32へ伝達される。
【0045】
これにより、耐震壁30の水平方向への移動が抑制される。つまり、ブロック10、36、56の上面と下面に形成された傾斜平面同士が、上下に重ねられて波形とされているので、矢印P1で示す水平力を、上面と下面を介してブロック10、36、56に負担させることができる。
この結果、柱梁架構22の水平耐力及び剛性を高くすることができる。
【0046】
なお、本実施形態では、既存の柱32、既存の梁34D、34Uで形成される柱梁架構22の構面に、耐震壁30を構築する構成について説明した。しかし、これに限定されることはなく、新築の柱、新築の梁で形成される柱梁架構22の構面に構築してもよい。
【0047】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態に係る耐震壁70について、
図7を用いて説明する。
図7は、耐震壁70の構築段階を示す斜視図である。
図7に示すように、耐震壁70は、既存の壁76を有し、壁76の一方の側面に、第1実施形態で説明した半割のブロック12A、12Bを積層した構成である。ブロック12A、12Bは、厚さ方向に分割された形状であり、分割された形状のまま、上面18A、20Bと下面20A、20Bの傾斜面同士を、横方向に半ブロック分ずらせて積層されている。
【0048】
このとき、ブロック12A、12Bは、切断面28A、28Bを壁70と当接させ、凹部16A、16Bの位置に縦鉄筋53を通し、隙間部にグラウトを充填させることで、水平力に抵抗できるようにしている。
なお、ブロック12A、12Bを、横方向に半ブロック分ずらせて積層した場合に発生する、両端部の半ブロック分の隙間には、第2実施形態で説明したブロック56を、厚さ方向へ分割したブロック(図示省略)を積層すれば良い。
【0049】
また、最下段には、第2実施形態で説明した、ブロック12A、12Bを横方向に切断したブロックの上部(図示省略)を積層しても良い。なお、縦鉄筋53は必ずしも必要ではない。これにより、壁厚の増大を押えた、耐震補強を行うことができる。
なお、壁76は、新設の壁であっても良い。また、壁76は、鉄筋コンクリート壁、レンガ壁、ブロック壁、各種ボードを用いた乾式壁等であってもよい。また、壁76と耐震壁70は、一体化させても、一体化させなくてもよい。
更に、既存の壁76が無い場所であっても、隙間部にグラウト68を充填するための型枠が設置できれば、ブロック12A、12Bを上下方向に積層して、隙間部にグラウト68を充填することで耐震壁70を構築することができる。