(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
相対回転する2つの部材のうちの一方の部材に取り付けられるスリンガと、相対回転する2つの部材のうちの他方の部材に取り付けられるシール部材とを有しており、前記シール部材は、リップ先端が前記スリンガに摺動自在に密接される樹脂により形成されたシールリップを有している密封装置であって、
前記シール部材は、前記他方の部材に取り付けられる環状の取付環体と、この取付環体に嵌合される樹脂により形成された環状のシール体と、前記取付環体に前記シール体を固定するための環状の固定環体とを有しているとともに、これらを組み立てることにより一体化されており、前記シール体に、前記シールリップを複数有しているとともに、
前記スリンガは、円筒状の取付基体部と、この取付基体部の密封側の端部から前記他方の部材に向かって前記スリンガの軸線方向に対して直交する径方向に沿って延出された環状の平板部とを具備するスリンガ本体を有しており、
前記取付基体部の前記他方の部材側の面には、第1シール当接面が設けられており、
前記平板部の密封側とは反対の非密封側に位置する面には、第2シール当接面が設けられており、
前記シール体は、その軸線方向に対して直交する径方向内外のそれぞれに前記シールリップを有しており、
前記シール体の径方向内外のそれぞれに設けられた前記シールリップのうちの一方の部材側に配置された一方が前記第1シール当接面に密接され、他方が前記第2シール当接面に密接されており、
前記取付環体は、円筒状の取付基部と、この取付基部の密封側の端部から前記取付環体の前記一方の部材側の面に沿って非密封側に向かって折り返すように延出された円筒状の第1筒部と、この第1筒部の先端部から前記一方の部材に向かって前記取付環体の軸線方向に対して直交する径方向に沿って延出された環状の第1フランジ部と、この第1フランジ部の先端部から非密封側に向かって前記取付環体の軸線方向に沿って延出された円筒状の第2筒部と、この第2筒部の先端部から前記一方の部材に向かって径方向に沿って延出された環状の第2フランジ部とを有しており、
前記シール体は、前記第2フランジ部の密封側の面に当接される環状のシール基部と、このシール基部の前記一方の部材側の端部から密封側に向かって徐々に前記一方の部材に接近するように傾斜して延出され、そのリップ先端が前記第1シール当接面に摺動自在に密接する第1シールリップと、前記シール基部の前記他方の部材側の端部から密封側に向かって延出され、前記第2筒部に嵌合される円筒状の嵌合用筒部と、この嵌合用筒部の先端部から密封側に向かって徐々に前記他方の部材に接近するように傾斜して延出され、そのリップ先端が前記第2シール当接面に摺動自在に密接する第2シールリップとを有しており、
前記固定環体は、前記シール体の前記シール基部の密封側の面に当接される環状の当接部と、この当接部の前記他方の部材側の端部から密封側に向かって前記固定環体の軸線方向に沿って延出され、かつ前記第2筒部に前記シール体の嵌合用筒部を挟持して圧入される円筒状の固定用筒部とを有している
ことを特徴とする密封装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した従来の密封装置においては、PTFEにより形成されたシールリップが一般的なゴムなどのゴム状弾性体により形成されたシールリップと比較して弾性に劣るために、密封性が高くいないという問題点があった。
【0005】
本発明はこの点に鑑みてなされたものであり、密封性の高い密封装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明の密封装置は、相対回転する2つの部材のうちの一方の部材に取り付けられるスリンガと、相対回転する2つの部材のうちの他方の部材に取り付けられるシール部材とを有しており、前記シール部材は、リップ先端が前記スリンガに摺動自在に密接される樹脂により形成されたシールリップを有している密封装置であって、前記シール部材は、
前記他方の部材に取り付けられる環状の取付環体と、この取付環体に嵌合される樹脂により形成された環状のシール体と、前記取付環体に前記シール体を固定するための環状の固定環体とを有しているとともに、これらを組み立てることにより一体化されており、前記シール体に、前記シールリップを複数有している
とともに、前記スリンガは、円筒状の取付基体部と、この取付基体部の密封側の端部から前記他方の部材に向かって前記スリンガの軸線方向に対して直交する径方向に沿って延出された環状の平板部とを具備するスリンガ本体を有しており、前記取付基体部の前記他方の部材側の面には、第1シール当接面が設けられており、前記平板部の密封側とは反対の非密封側に位置する面には、第2シール当接面が設けられており、前記シール体は、その軸線方向に対して直交する径方向内外のそれぞれに前記シールリップを有しており、前記シール体の径方向内外のそれぞれに設けられた前記シールリップのうちの一方の部材側に配置された一方が前記第1シール当接面に密接され、他方が前記第2シール当接面に密接されており、前記取付環体は、円筒状の取付基部と、この取付基部の密封側の端部から前記取付環体の前記一方の部材側の面に沿って非密封側に向かって折り返すように延出された円筒状の第1筒部と、この第1筒部の先端部から前記一方の部材に向かって前記取付環体の軸線方向に対して直交する径方向に沿って延出された環状の第1フランジ部と、この第1フランジ部の先端部から非密封側に向かって前記取付環体の軸線方向に沿って延出された円筒状の第2筒部と、この第2筒部の先端部から前記一方の部材に向かって径方向に沿って延出された環状の第2フランジ部とを有しており、前記シール体は、前記第2フランジ部の密封側の面に当接される環状のシール基部と、このシール基部の前記一方の部材側の端部から密封側に向かって徐々に前記一方の部材に接近するように傾斜して延出され、そのリップ先端が前記第1シール当接面に摺動自在に密接する第1シールリップと、前記シール基部の前記他方の部材側の端部から密封側に向かって延出され、前記第2筒部に嵌合される円筒状の嵌合用筒部と、この嵌合用筒部の先端部から密封側に向かって徐々に前記他方の部材に接近するように傾斜して延出され、そのリップ先端が前記第2シール当接面に摺動自在に密接する第2シールリップとを有しており、前記固定環体は、前記シール体の前記シール基部の密封側の面に当接される環状の当接部と、この当接部の前記他方の部材側の端部から密封側に向かって前記固定環体の軸線方向に沿って延出され、かつ前記第2筒部に前記シール体の嵌合用筒部を挟持して圧入される円筒状の固定用筒部とを有していることを特徴とする。
【0007】
そして、このような構成を採用したことにより、スリンガに密接する樹脂により形成されたリップ先端を有する複数のシールリップを容易かつ確実に設けることができるから、流体の漏れを複数個所で確実に防止することができるので、密封性を高くすることができる。
更に、シール部材に、樹脂により形成された複数のシールリップを容易に設けることができる。また更に、スリンガには2つのシール当接面を容易に設けることができ、シール体には2つのシールリップを容易に設けることができるから、スリンガに設けられた2つのシール当接面のそれぞれにシールリップを密接させることができるので、流体の漏れの防止個所を容易かつ確実に2つ設けることができる。また更に、シール部材を構成する取付環体とシール体と固定環体とを容易かつ確実に一体化することができるし、シール体に2つのシールリップを容易に設けることができる。
【0011】
また、本発明の密封装置において、前記取付環体に、ゴム状弾性体により一体形成されたダストリップが設けられている構成とすることができる。そして、このような構成を採用したことにより、非密封側からの異物の侵入を防止することができる。
【0012】
さらに、本発明の密封装置において、前記シール体の数が複数とされ、これら複数のシール体がその軸線方向に沿って積層配置されている構成とすることができる。そして、このような構成を採用したことにより、スリンガに摺動自在に密接するリップ先端を具備するシールリップの数を容易に増加することができるので、密封性をより高くすることができる。
【0013】
さらにまた、本発明の密封装置において、前記樹脂がフッ素樹脂である構成とすることができる。そして、このような構成を採用したことにより、低トルク化を容易に図ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の密封装置によれば、スリンガに密接する樹脂により形成された複数のシールリップを有しているから、流体の漏れを複数個所で確実に防止することができるので、密封性を高くすることができるなどの優れた効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を図面に示す実施形態により説明する。
【0017】
図1は本発明に係る密封装置の第1実施形態の要部を示すものである。
【0018】
図1に示すように、本実施形態の密封装置1は、相対回転する2つの部材のうちの一方の部材としての回転部材である回転軸3に取り付けられるスリンガ5と、相対回転する2つの部材のうちの他方の部材としての固定部材であるハウジング7にスリンガ5と対向するように取り付けられるシール部材9とを有している。
【0019】
前記スリンガ5は、回転軸3の所望の位置に嵌入などにより取り付けられるものであり、冷間圧延鋼板などの金属により形成された環状のスリンガ本体11に、ゴム状弾性体で形成された軸用弾性シール12が焼き付けられて一体に形成されている。
【0020】
前記スリンガ本体11は、内周面が回転軸3の外周面と対向する
図1の左右方向に示すスリンガ本体11の軸線方向に沿って延びる円筒状に形成された取付基体部14と、この取付基体部14の一端である
図1の右側に示す密封側SSに位置する右端部から取付基体部14の軸線方向に対して直交するようにハウジング7に向かって径方向外側(
図1の上方)に延出された環状の平板部15とを有する断面ほぼ左右が反転したL字状をなす環状に形成されている。そして、取付基体部14の内径は、軸用弾性シール12を設けるために回転軸3の外径より若干大径に形成されている。さらに、取付基体部14の外周面には、後述する2つのシールリップ42のうちの一方としての第1シールリップ42Aのリップ先端42Aaが摺動自在に密接するシール当接面17としての第1シール当接面17aが設けられている。また、平板部15の密封側SSとは反対の非密封側としての大気側ASに位置する
図1の左端面には、後述する2つのシールリップ42のうちの他方としての第2シールリップ42Bのリップ先端42Baが摺動自在に密接するシール当接面17としての第2シール当接面17bが設けられている。
【0021】
前記軸用弾性シール12は、スリンガ本体11の取付基体部14の内周面、および平板部15の右端面を被覆するように形成されており、この取付基体部14の内周面を覆う部分は、回転軸3の外周面に対して適宜な締め代を備えた軸用装着部12aとされている。この軸用装着部12a、ひいてはスリンガ5の内径は、回転軸3の外径より小径に形成されている。
【0022】
なお、軸用弾性シール12は、設計コンセプトなどの必要に応じて設ければよい。例えば、スリンガ5として、軸用弾性シール12を設けずに、取付基体部14の内周面を回転軸3に直接取り付けるように形成してもよい。すなわち、回転軸3に対してスリンガ5の取付基体部14の内周面を直接嵌合させるように形成してもよい。
【0023】
前記シール部材9は、ハウジング7の所望の位置に嵌入などにより取り付けられるものであり、取付環体21と、この取付環体21に取り付けられたシール体23と、取付環体21にシール体23を固定するための固定環体25とを有している。すなわち、シール部材9は、取付環体21とシール体23と固定環体25との個別に形成された3つの部品を組み立てて一体化することにより形成されている。
【0024】
前記取付環体21は、冷間圧延鋼板(SPCC)などの金属により環状に形成されている。この取付環体21は、円筒状に形成された取付基部としての外側筒部31と、この外側筒部31の密封側SSに位置する右端部から回転軸側の面である内周面に沿って内側に折り返すように大気側ASに延出された円筒状の第1筒部32と、この第1筒部32の先端部としての左端部から
図1の左右方向に示す取付環体21の軸線方向に対して直交するように回転軸3に向かって径方向内側(
図1の下方)に延出された環状の第1フランジ部33と、この第1フランジ部33の先端部としての内端部から大気側ASに向かって取付環体21の軸線方向に沿って延出された円筒状の第2筒部34と、この第2筒部34の先端部としての左端部から取付環体21の軸線方向に対して直交するように回転軸3に向かって径方向内側に延出された環状の第2フランジ部35と、この第2フランジ部35の先端部としての内端部から大気側ASに向かって取付環体21の軸線方向に沿って延出された円筒状の第3筒部36とを有している。そして、ハウジング7に対して外側筒部31の外周面を直接嵌合させることで、ハウジング7に取付環体21、ひいてはシール部材9が取り付けられるようになっている。なお、第1筒部32および第3筒部36は、設計コンセプトなどの必要に応じて設ければよい。
【0025】
前記外側筒部31の外径は、ハウジング7の内径より若干大径に形成されている。さらに、外側筒部31の軸線方向の長さは、スリンガ5の軸線方向の長さと等しくされている。また、第1フランジ部33の厚さ方向中央部の位置は、外側筒部31の密封側SSから1/3程度の長さ位置に設けられており、第2フランジ部35の厚さ方向中央部の位置は、外側筒部31の密封側SSから2/3程度の長さ位置に設けられており、第3筒部36の左端部は、外側筒部31の左端部より少し内側に配置されている。
【0026】
なお、設計コンセプトなどの必要に応じて、外側筒部31の外径をハウジング7の内径より若干小径に形成し、外側筒部31の外周面に、軸用弾性シール12と同様の図示しない弾性シールを一体に設ける構成としてもよい。この弾性シールとしては、軸用弾性シール12と同様に、外側筒部31の外周を被覆するように形成されるもので、外側筒部31の外周を覆う部分は、ハウジング7の内周面に対して適宜な締め代を備えたハウジング用装着部とされるものである。よって、外側筒部31の外周に弾性シールを設けた場合には、ハウジング用装着部、ひいては取付環体21の外径は、ハウジング7の内径より大径に形成されることになる。
【0027】
前記シール体23は、樹脂により環状に形成されている。このシール体23は、シール基部41と、第1シールリップ42Aおよび第2シールリップ42Bからなる2つのシールリップ42と、嵌合用筒部43とを有している。
【0028】
前記シール基部41は、第2フランジ部35の密封側SSの面に当接されるものであり、その厚さ方向を左右方向にする環状に形成されている。
【0029】
前記第1シールリップ42Aは、そのリップ先端42Aaが第1シール当接面17aに対して径方向外側から適宜な締め代をもって摺動自在に密接することで、密封側SSから大気側ASへの流体の漏れを第1シールリップ42Aのリップ先端42Aaと第1シール当接面17aとの接触部分で防止するためのものであり、シール基部41の回転軸側に位置する端部である径方向内側の内端部から傾斜し、かつ第1シール当接面17aに向かって延びる、すなわち、シール基部41の径方向内側の内端部から密封側SSに向かって徐々に径方向内側に縮径するように延出されたほぼテーパをなす環状に形成されている。この第1シールリップ42Aの自由状態における形状を
図1の2点鎖線にて示す。
【0030】
前記嵌合用筒部43は、第2筒部34の内周面に嵌合されるものであり、シール基部41のハウジング側に位置する端部である径方向外側の外端部から密封側SSに向かってシール体23の軸線方向に沿って延出された円筒状に形成されている。この嵌合用筒部43の外径は、第2筒部34の内径と同一あるいは若干小径に形成されている。
【0031】
前記第2シールリップ42Bは、そのリップ先端42Baが第2シール当接面17bに対して軸線方向から適宜な締め代をもって摺動自在に密接することで、密封側SSから大気側ASへの流体の漏れを第2シールリップ42Bのリップ先端42Baと第2シール当接面17bとの接触部分で防止するためのものであり、嵌合用筒部43の先端である密封側SSに位置する右端部から密封側SSに向かって傾斜し、かつ第2シール当接面17bに向かって延びる、すなわち、嵌合用筒部43の右端部から密封側SSに向かって徐々に径方向外側に拡径するように延出されたほぼテーパをなす環状に形成されている。この第2シールリップ42Bの自由状態における形状を
図1の2点鎖線にて示す。
【0032】
前記シール体23に用いる樹脂としては、摩擦係数が小さく粘着性のないフッ素樹脂を用いることができる。また、フッ素樹脂としては、PTFEや、重合可能な微量のパーフルオロアルキルビニルエーテルの単量体と共重合させ、耐クリープ特性を向上した変性PTFEが一般的であり、PFA、FEP、ETFEなどの樹脂も必要に応じて使用することができる。また、フッ素樹脂としては、耐摩耗性を向上させるように、充填剤を配合してもよい。このような充填材としては、ガラス繊維、カーボン繊維、グラファイト、モリブデン、カーボンなどを単独あるいは数種類を組み合わせて用いることができる。本実施形態のシール体23の樹脂としては、フッ素樹脂、詳しくはPTFEが用いられている。
【0033】
前記固定環体25は、取付環体21にシール体23を固定するためのものであり、冷間圧延鋼板(SPCC)などの金属により環状に形成されている。この固定環体25は、シール体23のシール基部41の密封側SSの面である右端面に当接される環状の当接部51と、この当接部51の他方の部材側の端部である径方向外側の外端部から密封側SSに向かって固定環体25の軸線方向に沿って延出された円筒状の固定用筒部52とを有している。そして、固定用筒部52の外径は、シール体23の第2筒部34の内径より若干大径に形成されており、第2筒部34の内周面に圧入されている。そして、固定環体25の固定用筒部52を取付環体21に嵌合されたシール体23の嵌合用筒部43に圧入することで、シール体23の嵌合用筒部43の外周面が取付環体21の第2筒部34の内周面と隙間なく密着するとともに、シール体23の嵌合用筒部43の内周面が固定環体25の固定用筒部52の外周面と隙間なく密着するようになっている。すなわち、取付環体21の第2筒部34の内周面と、固定環体25の固定用筒部52の外周面との間でシール体23の第2筒部34を隙間なく挟持固定することができるように形成されている。また、取付環体21の第2フランジ部35の密封側SSの面と、固定環体25の当接部51の大気側ASの面との間でシール体23のシール基部41を隙間なく挟持固定することができるように形成されている。
【0034】
ここで、本実施形態のシール部材9の製造について説明する。
【0035】
本実施形態のシール部材9の製造は、取付環体21、シール体23および固定環体25のそれぞれを個別に形成する個別形成工程と、取付環体21にシール体23を嵌合して取り付けるシール組立工程と、取付環体21に取り付けたシール体23に固定環体25を圧入して固定することで一体化してシール部材9を得る一体化工程とをこの順に行うようになっている。
【0036】
前記個別形成工程は、取付環体21、シール体23および固定環体25のそれぞれを個別に形成するためのものであり、取付環体21および固定環体25は、それぞれ板金により形成され、シール体23は密封装置1の大きさにもよるが、厚さ0.3〜2.0mm程度、好ましくは厚さ0.7〜1.2mmのシートをプレス加工することで形成されている。
【0037】
前記シール組立工程は、
図2(a)に示すように、取付環体21に設けられた第2フランジ部35の密封側SSの面に、シール体23のシール基部41の大気側ASの面を正対させ、図示しない治具あるいは人手によりシール体23をその軸線方向に沿って
図2(a)の太矢印にて示すように取付環体21に向かって移動させることで、取付環体21の第2筒部34にシール体23の嵌合用筒部43を嵌合する。このときのシール体23の移動は、シール体23のシール基部41が取付環体21の第2フランジ部35に当接することで終了する。この取付環体21にシール体23を取り付けたセット状態を
図2(b)に示す。
【0038】
前記一体化工程は、
図2(c)に示すように、取付環体21にセットしたシール体23に設けられたシール基部41の密封側SSの面に固定環体25の当接部51の大気側ASの面を正対させ、固定環体25をその軸線方向に沿って
図2(c)の太矢印にて示すようにシール体23に向かって移動させることで、シール体23の嵌合用筒部43に固定環体25の固定用筒部52を圧入する。これにより、取付環体21、シール体23および固定環体25の3つの部品が組み立てられて一体化したシール部材9の製造が終了する。なお、固定環体25の移動は、固定環体25の当接部51がシール体23のシール基部41の密封側SSの面に当接することで終了する。なお、
図2においては、主要部にのみ符号を付してあり、その他の符号については省略してある。
【0039】
つぎに、前述した構成からなる本実施形態の作用について説明する。
【0040】
本実施形態の密封装置1によれば、第1シールリップ42Aおよび第2シールリップ42Bとの2つのシールリップ42を有しているから、流体の漏れを2個所で確実に防止することができるので、密封性を高くすることができる。
【0041】
また、本実施形態の密封装置1によれば、シール部材9が環状の取付環体21と、環状のシール体23と、シール体23を固定するための環状の固定環体25とを組み立てることにより一体化されており、シール体23に、第1シールリップ42Aおよび第2シールリップ42Bからなる2つのシールリップ42が設けられているから、シール部材9に、樹脂により形成された第1シールリップ42Aおよび第2シールリップ42Bからなる2つのシールリップ42を容易に設けることができる。
【0042】
さらに、本実施形態の密封装置1によれば、スリンガ5には第1シール当接面17aおよび第2シール当接面17bからなる2つのシール当接面17を容易に設けることができ、シール体23には第1シールリップ42Aおよび第2シールリップ42Bからなる2つのシールリップ42を容易に設けることができるから、スリンガ5に設けられた2つのシール当接面17のそれぞれにシールリップ42のリップ先端42a(符号42aは、第1シールリップ42Aのリップ先端42Aaおよび第2シールリップ42Bのリップ先端42Baを総称する、)を密接させることができるので、流体の漏れの防止個所を容易かつ確実に2つ設けることができる。
【0043】
さらにまた、本実施形態の密封装置1によれば、シール部材9を構成する取付環体21とシール体23と固定環体25とを容易かつ確実に一体化することができるし、シール体23に2つのシールリップ42を容易に設けることができる。
【0044】
さらにまた、本実施形態の密封装置1によれば、シール体23を形成する樹脂をフッ素樹脂とすることにより、摺動抵抗を小さくして、低トルク化を容易に図ることができる
【0045】
図3は本発明に係る密封装置の第2実施形態の要部を示す拡大断面図である。本実施形態の密封装置1Aは、前述した第1実施形態の密封装置1におけるシール部材9にダストリップ61を設けたものである。
【0046】
すなわち、
図3に示すように、本実施形態の密封装置1Aは、前述した第1実施形態の密封装置1における取付用環体の第3筒部36の回転軸側に位置する内周面に、ゴム状弾性体で形成された周知のダストリップ61が焼き付けられて一体に形成されている。
【0047】
その他の構成については、前述した第1実施形態の密封装置1と同様とされており、その詳しい説明は省略する。
【0048】
このような構成により、本実施形態の密封装置1Aは、前述した第1実施形態の密封装置1と同様の効果を奏することができるとともに、ダストリップ61により大気側ASからの異物の侵入を防止することができる。
【0049】
図4は本発明に係る密封装置1の第3実施形態の要部を示す拡大断面図である。本実施形態の密封装置1Bは、前述した第1実施形態の密封装置1におけるシール体23の数を複数、本実施形態においては2つとし、これらをその軸線方向に沿って積層配置したのである。
【0050】
すなわち、
図4に示すように、本実施形態の密封装置1Bは、2つのシール体23をその軸線方向に積層させ、それぞれの第1シールリップ42Aのリップ先端42Aaを第1シール当接面17aに当接させ、それぞれの第2シールリップ42Bのリップ先端42Baを第2シール当接面17bに当接させている。また、2つの第1シールリップ42Aは、シール体23の軸線方向に沿って配列されており、2つの第2シールリップ42Bは、シール体23の軸線方向に対して直交する径方向に沿って配列されている。なお、2つのシール体23のうちの密封側SSに位置するシール体23は、大気側ASに位置するシール体23よりサイズを小さく形成するとよい。また、必要に応じて、2つのシール体23のシール基部42の対向面間に、薄い厚さ調整用部材を介在させて第1シールリップ42Aと第2シールリップ42Bとの間隔を調整してもよい。さらに、シール体23の数を3つ以上とすることもできる。例えば、本実施形態の2つのシール体23と、図示しない第1シールリップ42A、シール基部41および嵌合用筒部43のみを有するシール体との2種類を組み合わせて積層したり、本実施形態の2つのシール体23と、図示しない第2シールリップ42B、シール基部41および嵌合用筒部43のみを有するシール体との2種類を組み合わせて積層したり、本実施形態の2つのシール体23と、図示しない第1シールリップ42A、シール基部41および嵌合用筒部43のみを有するシール体と、図示しない第2シールリップ42B、シール基部41および嵌合用筒部43のみを有するシール体との3種類を組み合わせて積層したりすることもできる。
【0051】
その他の構成については、前述した第1実施形態の密封装置1と同様とされており、その詳しい説明は省略する。
【0052】
このような構成により、本実施形態の密封装置1Bは、前述した第1実施形態の密封装置1と同様の効果を奏することができるとともに、スリンガ5のシール当接面17に摺動自在に密接するリップ先端42aを具備するシールリップ42の数を容易に増加することができるので、密封性をより高くすることができる。
【0053】
なお、本実施形態の密封装置1Bに、前述した第2実施形態の密封装置1Aにおけるダストリップ61を設ける構成とすることもできる。
【0054】
なお、本発明は、前述した各実施形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。