特許第6674237号(P6674237)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エア・ウォーター・ゾル株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6674237
(24)【登録日】2020年3月10日
(45)【発行日】2020年4月1日
(54)【発明の名称】クラッキング製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/891 20060101AFI20200323BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20200323BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20200323BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20200323BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20200323BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20200323BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20200323BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20200323BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20200323BHJP
【FI】
   A61K8/891
   A61K8/02
   A61K9/12
   A61K47/34
   A61K47/38
   A61K8/73
   A61K47/10
   A61K8/34
   A61Q19/00
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-235539(P2015-235539)
(22)【出願日】2015年12月2日
(65)【公開番号】特開2017-100996(P2017-100996A)
(43)【公開日】2017年6月8日
【審査請求日】2018年11月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219934
【氏名又は名称】エア・ウォーター・ゾル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135183
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 克之
(74)【代理人】
【識別番号】100116241
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 一郎
(72)【発明者】
【氏名】成田 健太
【審査官】 辰己 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−054784(JP,A)
【文献】 特開2013−112798(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K8/00− 8/99
A61Q1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出された製剤が発泡して破泡する際に破泡音を生じる、原液と噴射剤とからなるエアゾールであって、前記原液が消泡剤および水溶性高分子を含有しており、
前記消泡剤は、前記原液100質量%中に0.1質量%以上1.0質量%以下の低分子環状シロキサンを含有しており、
前記消泡剤は、エマルジョン型消泡剤であり、
前記原液は、エタノールを含有しておらず、ジオールを含有しており、
前記水溶性高分子の粘度が、1%水溶液の25℃条件において、1000〜10000mPa・sであるクラッキング製剤。
【請求項2】
前記低分子環状シロキサンがオクタメチルシクロテトラシロキサンである請求項1に記載のクラッキング製剤。
【請求項3】
前記水溶性高分子がヒドロキシエチルセルロースである請求項1に記載のクラッキング製剤。
【請求項4】
前記ヒドロキシエチルセルロースの含有量が、前記原液100質量%中に0.1以上0.3質量%以下である請求項3に記載のクラッキング製剤。
【請求項5】
前記ジオールが、プロピレングリコール、ブチレングルコールおよび1,2−ペンタンジオールを含んでいる請求項1に記載のクラッキング製剤。
【請求項6】
前記プロピレングリコールの含有量が、前記原液100質量%中に5質量%以上20質量%以下である請求項5に記載のクラッキング製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚上に吐出された製剤が発泡してパチパチという音を伴って泡が破裂することで、皮膚と製剤を押さえる手のひらに冷涼感などの独特の感触を与えるクラッキング製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品や化粧品等の種々の分野で用いられるエアゾール製剤は、指やスパチュラを用いないで、容器から直接的に対象部位に製剤を塗布することができる。エアゾール製剤には、皮膚や頭皮上に吐出された後に発泡してパチパチという音を伴って破泡するクラッキング製剤がある(特許文献1)。クラッキング製剤は、破泡音や皮膚や手のひらで感じる感触によって、使用者に冷涼感等の独特の使用感を与える。
【0003】
特許文献1に記載されている、クラッキング製剤のエアゾール組成物は、手のひらに吐出した際、破泡音を大きくし、かつ持続時間を長くするために、エアゾール組成物の原液に、特定の油性基剤および水溶性高分子を配合している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−173613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載のエアゾール組成物は、破泡感や破泡音の持続時間が十分ではない。
そこで、本発明は、破泡感や破泡音の持続時間が向上した、破泡状態を長時間維持して、破泡音を長く持続することができる破泡性の良好なクラッキング製剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために提供される本発明は次のとおりである。
[1]吐出された製剤が発泡して破泡する際に破泡音を生じる、原液と噴射剤とからなるエアゾールであって、前記原液が消泡剤および水溶性高分子を含有しており、前記消泡剤は、前記原液100質量%中に0.1質量%以上1.0質量%以下の低分子環状シロキサンを含有しており、前記消泡剤は、エマルジョン型消泡剤であり、前記原液は、エタノールを含有しておらず、ジオールを含有しており、前記水溶性高分子の粘度が、1%水溶液の25℃条件において、1000〜10000mPa・sであるクラッキング製剤。
[2]前記低分子環状シロキサンが、オクタメチルシクロテトラシロキサンである上記[1]に記載のクラッキング製剤。
【0007】
[3]前記水溶性高分子がヒドロキシエチルセルロースである上記[1]に記載のクラッキング製剤
[4]前記ヒドロキシエチルセルロースの含有量が、前記原液100質量%中に0.1以
上0.3質量%以下である上記[3]に記載のクラッキング製剤。
【0008】
[5]前記ジオールが、プロピレングリコール、ブチレングルコールおよび1,2−ペンタンジオールを含んでいる[1]に記載のクラッキング製剤。
[6]前記プロピレングリコールの含有量が、前記原液100質量%中に5質量%以上20質量%以下である上記[5]に記載のクラッキング製剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明のクラッキング製剤によれば、原液中に消泡剤を含有しているから、皮膚上で発泡した泡の破泡を適度に促進して、破泡感を向上させるとともに、皮膚に吐出されたクラッキング製剤中の噴射剤が少なくなっても、破泡状態を持続させて、破泡音を生じさせることができる。このため、塗布後において、破泡感の良好な破泡状態を従来よりも長く維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係るクラッキング製剤の実施形態について、以下に説明する。
本実施形態のクラッキング製剤は、噴射剤と原液とを詰めた容器のボタンを押すと、噴射剤と原液が容器内から吐出されるエアゾール製剤として実施される。吐出された製剤が皮膚や頭皮上で発泡して破泡する際に生じる感触および破泡音によって、冷涼感等の特有の使用感を生じさせる。
【0011】
(原液)
原液は噴射剤と共に容器から吐出されて、皮膚上に塗布される。皮膚上で、原液と噴射剤とからなるクラッキング製剤が発泡し、泡が破裂することによって破泡音を発する。原液が消泡剤を含有しているから、泡の破裂を適度に促進して、破泡音が発生する破泡状態を長く維持することができる。したがって、使用者は発泡および破泡による独特の使用感を長く感じることができる。
【0012】
(消泡剤)
消泡剤に含まれる消泡成分としては、低分子環状シロキサン、メチルポリシロキサン等が挙げられる。破泡性を良好にする観点から、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロペンタシロキサンなどの低分子環状シロキサンが好ましく、オクタメチルシクロテトラシロキサンが特に好ましい。低分子環状シロキサンやメチルポリシロキサンを消泡成分として用いることにより、破泡性の向上に顕著な効果を奏する。
【0013】
(消泡剤の種類)
消泡剤の種類としては、100%油分である油型(オイル型)消泡剤、微粉末シリカをフィラーとして配合したオイルコンパウンド型消泡剤、油分をあらかじめ溶剤で希釈した溶液型消泡剤、消泡成分を乳化剤で乳化したエマルジョン型消泡剤、冷水に対して自己乳化性を示す自己乳化型消泡剤などが挙げられる。これらの中では、破泡性を良好にする観点から、エマルジョン型消泡剤が好ましい。
【0014】
市販されている消泡剤は、例えば、油型消泡剤として、TSF450、Element14 PDMS JC、TSF4422、YSA6403、Y-14991(いずれも商品名、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ製、ジメチルシリコーン、アルキル変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーンまたはジメチルシリコーン)、SH200C-100CS、SH200C-10000CS(いずれも商品名、東レ・ダウコーニング株式会社製、メチルポリシロキサン)、KF-96-100CS、KF-96-10000CS(いずれも商品名、信越化学工業株式会社製、メチルポリシロキサン);オイルコンパウンド型消泡剤として、TSA750、TSA750S(いずれも製品名、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ製、ジメチルシリコーンとシリカのブレンド);溶液型消泡剤として、TSA720(製品名、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ製、ジメチルシリコーン);エマルジョン型消泡剤として、TSA7341、TSA732、TSA772、TSA730、TSA770、YMA6509、TSA737、TSA737F、TSA780、SAGTEX DSA、SAGTEX PHD、SAG638、SAG672(製品名、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ製、ジメチルシリコーンまたはポリエーテル変性シリコーン)、SM 5571 EMULSION(東レ・ダウコーニング株式会社製、オクタメチルシクロテトラシロキサン)等が挙げられる。
【0015】
(エマルジョン型消泡剤)
エマルジョン型消泡剤は、消泡剤成分を水に乳化分散させたものである。消泡剤成分が予め水に乳化分散されたエマルジョン型消泡剤を用いることによって、表面張力の小さい消泡成分が均一に分散して泡膜に入り込みやすくなるから、破泡を促進することができる。消泡成分は一般に、表面張力が非常に小さく、水等の連続相(発泡液)に対する溶解性が小さい。このため、泡の発生を抑制する抑泡性に優れているが、泡膜に入り込む性質が不足する場合が多い。そこで、消泡成分をエマルジョン化して配合して分散性を向上させたエマルジョン型消泡剤を用いることで、吐出されたクラッキング製剤の破泡を良好かつ長く維持することができる(以下、この性質を「破泡性が良好」ともいう。)。
【0016】
クラッキング製剤の破泡性を良好にする観点から、消泡剤の含有量は有効成分として配合されている消泡成分として、原液100質量%中に0.1質量%以上1.0質量%以下であることが好ましく、0.15質量%以上0.8質量%以下であることがより好ましく、0.2質量%以上0.6質量%以下であることがさらに好ましい。
【0017】
(噴射剤)
原液と共に充填される噴射剤としては、一般に用いられている、液化ガス、圧縮ガスおよびこれらの混合物等を用いることができる。液化ガスとしては、液化石油ガス、ジメチルエーテルなどが挙げられ、圧縮ガスとしては、炭酸ガス、窒素、亜酸化窒素などが挙げられる。また、HFC−152a、HFO−1234ze(E)などを用いることもできる。
【0018】
噴射剤は、単品で用いても、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。原液と噴射剤との含有量(質量)比(原液/噴射剤)は、0.1〜10であることが好ましく、0.2〜1.0であることがより好ましく、0.3〜0.6であることがさらに好ましい。
【0019】
(容器)
本実施形態のクラッキング製剤を充填する容器としては、一般に用いられている耐圧容器を用いることができる。耐圧容器を構成する金属としては、アルミニウム、アルミニウム合金、ブリキ、鋼等が挙げられる。
【0020】
(水溶性高分子)
本実施形態のクラッキング製剤は、原液中に水溶性高分子を含有している。原液が水溶性高分子を含有することにより、粘度が増大して泡が破泡するまでに泡が適度に成長することで、破泡音が大きくなり、破泡感(パチパチ感)が強くなる。
【0021】
水溶性高分子としては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。破泡音および破泡時の強さを大きくする観点から、ヒドロキシエチルセルロースが好ましい。また、ヒドロキシエチルセルロースが乾燥後に皮膚上で皮膜を形成することで、しっとりするがべとつかない良好な使用感を付与することができる。
【0022】
ヒドロキシエチルセルロースの粘度は、破泡音を大きく、破泡感を強くする観点から、1%水溶液の25℃条件において、1000〜10000mPa・sであることが好ましく、3000〜6000mPa・sであることがより好ましく、4500〜5500mPa・sであることがさらに好ましい。
【0023】
ヒドロキシエチルセルロースの含有量は、泡立ちおよび音の長さを良好にする観点から、原液100質量%中に、0.1以上0.3質量%以下であることが好ましく、0.15以上0.25質量%以下であることがより好ましく、0.18以上0.22質量%以下であることがさらに好ましい。
【0024】
(エタノール)
エタノールのような低級アルコールは、油性基材や油溶性の有効成分を溶解するために有効である。また、揮発性が高いことから、それ自体でクラッキング製剤に冷涼感を付与する効果を備えている。このため、従来のクラッキング製剤は、水および界面活性剤に加えて、エタノールを原液に含有しているものが多い。
【0025】
本実施形態のクラッキング製剤は、上述したように、原液が消泡剤を含有することで破泡性を向上させて、エタノールを配合しなくとも十分な冷涼感を生じる。このため、本実施形態のクラッキング製剤は、原液中に、エタノールを含有していない。
【0026】
使用者の肌質によっては、エタノールの刺激によって肌が赤くなったり、ひりひりしたり、使用の際に過度の刺激を感じることがある。このため、アルコールを配合していないこと(アルコールフリー)を謳った、敏感肌用の製剤が多く市販されている。上述したように、本実施形態のクラッキング製剤は、刺激の原因となるエタノールを含有していない。したがって、使用に際してエタノールによる刺激を感じることがないから、敏感肌の人でも安心して使用することができる。
【0027】
(ジオール)
原液はプロピレングリコール、ブチレングリコールおよび1,2−ペンタンジオール等からなる群から選ばれる少なくとも1種のジオールを含有している。これにより、吐出された際に噴射剤が急激に蒸発することによって、原液が凍ってしまうことを防ぐことができる。原液がプロピレングリコールを含有する場合、原液100質量%中の含有量が5質量%以上20質量%以下であることが好ましく、5質量%以上15質量%以下であることがさらに好ましい。
【0028】
(油性成分)
本実施形態のクラッキング製剤は、原液中に油性成分を含有していても良い。油性成分としては、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル等の脂肪酸アルコールエステルを用いることができる。
【0029】
(界面活性剤)
本実施形態のクラッキング製剤は、原液中に界面活性剤を含有していても良い。界面活性剤により、原液中の成分および容器中の噴射剤と原液とを均一に乳化、分散させることができる。界面活性剤としては、例えば、ベタイン等の両性界面活性剤や、ポリオキシエチレンアルキルエーテルやポリオキシプロピレンアルキルエーテル等の非イオン性界面剤が挙げられる。界面活性剤は、単独で用いても複数を併用してもよい。なお、エマルジョン型消泡剤には、消泡成分を乳化・分散させる界面活性剤が含まれているが、原液はエマルジョン型消泡剤に含まれる成分とは別に界面活性剤を含有していても良い。
【0030】
本実施形態のクラッキング製剤組成物の原液は、上述した成分以外に、医薬品や化粧品の分野において一般に用いられている成分を含有してもよい。このような成分としては、水;クエン酸およびクエン酸ナトリウム等のpH調整剤;フェノキシエタノール、安息香酸ナトリウムおよびパラベンなどの防腐剤;ビーズポリマー等の滑材;ピロリドンカルボン酸ナトリウム塩、グリセリンなどの保湿剤;ビタミン類;無機フィラー;香料などが挙げられる。これら成分の含有量は、本実施形態のクラッキング製剤の特性に悪い影響を与えない範囲とすればよい。
【0031】
以上説明した実施形態に関する記載は、本発明の理解を容易にするためのものであって、本発明を限定するためのものではない。したがって、実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【実施例】
【0032】
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[原液の調製]
表1は、実施例および比較例のクラッキング製剤に用いた各原液100質量%の各成分の含有量(質量%)を示したものである。表1に示した各成分および含有量により、原液1〜14を調製した。
【0033】
【表1】
【0034】
表1に示した各成分として、以下のものを用いた。
[消泡剤]
エマルジョン型消泡剤(商品名:SM 5571 EMULSION、東レ・ダウコーニング株式会社製、消泡成分(有効成分)としてオクタメチルシクロテトラシロキサン35質量%含有(揮発分含))
油型消泡剤A(商品名:SH200C-100CS、東レ・ダウコーニング株式会社製、メチルポリシロキサン)
油型消泡剤B(商品名:SH200C-10000CS、東レ・ダウコーニング株式会社製、メチルポリシロキサン)
油型消泡剤C(商品名:KF-96-100CS、信越化学工業株式会社製、メチルポリシロキサン)
油型消泡剤D(商品名:KF-96-10000CS、信越化学工業株式会社製、メチルポリシロキサン)
[水溶性高分子]
高粘度ヒドロキシエチルセルロース(商品名:HEC-SE900、ダイセル化学工業株式会社製、1%水溶液で4000-5500mPa・s)
低粘度ヒドロキシエチルセルロース(商品名:HEC-SE550、ダイセル化学工業株式会社製、2%水溶液で1000-2000mPa・s)
ポリエチレンオキサイド(商品名:PEO-18P、住友精化株式会社)
[油性成分]
デカメチルシクロペンタシロキサン(商品名:SH 245 Fluid、東レ・ダウコーニング株式会社製)
ミリスチン酸イソプロピル(商品名:IPM-R、高級アルコール工業株式会社製)
メチルポリシロキサン(商品名:SH200C 5CS、東レ・ダウコーニング株式会社製、メチルポリシロキサン)
[界面活性剤]
2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン(商品名:ソフタゾリン CL-R、川研ファインケミカル株式会社)
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(EMALEX HC-100、日本エマルジョン株式会社製)
[滑剤]
ビーズポリマー(商品名:ジュリマーMB-1、東亜合成株式会社、ポリアクリル酸アルキルメタクリル酸メチルを主成分とする真球状のビーズポリマー)
[ジオール]
プロピレングリコール
ブチレングリコール
1,2−ペンタンジオール(商品名:HYDROLITE-5、シムライズ株式会社製)
[防腐剤]
フェノキシエタノール(商品名:ハイソルブEPH、東邦化学工業株式会社製)
【0035】
[評価方法]
実施例および比較例のクラッキング製剤を、下記に示す方法および基準を用いて評価した。
[破泡音の継続時間]
室温(25℃)で保存したクラッキング製剤約0.2gを手のひらの上に吐出し、他方の手のひらを載せて上から軽く抑えて破泡状態が終了し、破泡音を生じなくなるまでの時間を測定した。
また、破泡音の継続時間を評価する際にあわせて、エタノールを含むクラッキング製剤の比較例1を基準として、破泡音の大きさ、破泡感、泡立ちおよびべたつきを数値化した。
3名の専門家の評価点の平均点を用いて、下記の各基準に基づいて、クラッキング製剤の破泡音の大きさ、破泡感、泡立ちおよびべたつきを評価した。なお、「破泡感」とは、クラッキング製剤の破泡に起因するパチパチした感触(パチパチ感)の強さの程度をいい、パチパチ感がはっきり明確に感じられることを破泡感が強いといい、破泡感が強いほど破泡感が良好である。
[破泡音の大きさ]
(1)数値化の基準(評価点)
5:比較例1よりもかなり大きい。
4:比較例1よりもやや大きい。
3:比較例1と同程度。
2:比較例1よりもやや小さい。
1:比較例1よりもかなり小さい。
(2)評価
◎:平均点3.5以上
〇:平均点2.5以上3.5未満
×:平均点2.5未満
【0036】
[破泡感(パチパチ感)]
(1)数値化の基準(評価点)
5:比較例1よりもかなり強い。
4:比較例1よりもやや強い。
3:比較例1と同程度。
2:比較例1よりもやや弱い。
1:比較例1よりもかなり弱い。
(2)評価
◎:平均点3.5以上
〇:平均点2.5以上3.5未満
×:平均点2.5未満
【0037】
[泡立ち]
5:比較例1よりもかなり泡立ちのきめが細かく泡立ちが良い。
4:比較例1よりもやや泡立ちのきめが細かく泡立ちが良い。
3:比較例1と同程度の泡立ち。
2:比較例1よりもやや泡立ちのきめが粗く泡立ちが悪い。
1:比較例1よりもかなり泡立ちのきめが粗く泡立ちが悪い。
(2)評価
◎:平均点3.5以上
〇:平均点2.5以上3.5未満
×:平均点2.5未満
【0038】
[べたつき]
5:比較例1よりも明らかにべたつかず使用感が良い。
4:比較例1よりもややべたつかず使用感が良い。
3:比較例1と同程度のべたつき。
2:比較例1よりもややべたつきがあり使用感が悪い。
1:比較例1よりもかなりべたつきがあり使用感が悪い。
(2)評価
◎:平均点3.5以上
〇:平均点2.5以上3.5未満
×:平均点2.5未満
【0039】
[乳化の容易性]
45℃条件下で一晩静置したクラッキング製剤を振とうて、乳化するまでに要した振とう回数を測定した。3名の専門家が評価した振とう回数の平均を用いて、下記の基準に基づいて、クラッキング製剤の乳化の容易性を評価した。
◎:10回以下
〇:11回〜20回
×:21回以上
【0040】
[実施例1〜7および比較例1〜7
噴射剤としてイソブタンを用い、原液1と噴射剤とを30:70の割合で充填して実施例1のクラッキング製剤を作製した。
原液1の代わりに原液2〜14を用いて、実施例2〜7および比較例1〜7のクラッキング製剤を作製した
施例1〜7および比較例1〜7のクラッキング製剤について、破泡音の継続時間、破泡音の大きさ、破泡感、泡立ちおよびべたつきを、上述した方法を用いて評価した。実施例1〜7、比較例1〜3については、乳化の容易性についても評価した。表2は各項目の評価結果を示している。
【0041】
【表2】
【0042】
消泡剤を含有する実施例1〜7および比較例3〜7は、消泡剤以外の成分が同じ比較例2と比較して、破泡音の継続性、破泡感、泡立ちなどが向上した。
【0043】
エマルジョン型消泡剤を含有する実施例1〜7および比較例3は、油型消泡剤を含有する比較例4〜7および消泡剤を含有しない比較例1〜2と比較して、破泡音の継続時間が長くなった。特に、ヒドロキシエチルセルロース1%水溶液(20質量%)と併用した実施例1〜4は、明らかに破泡音の継続時間が長くなった。ただし、エマルジョン型消泡剤の配合量が多くなると、破泡音が小さくなり、破泡感が低下し、べたつきが増え、乳化の容易性が低下する傾向が認められた。このため、エマルジョン型消泡剤を配合する場合、これらに悪い影響を及ぼさない範囲の配合量とすることが好ましい。
【0044】
実施例および比較例の結果から、エマルジョン型消泡剤を配合することにより、破泡音の継続時間が長くなることが分かった。破泡音の継続時間を長くしつつ、破泡音の大きさおよび破泡感をも良好にするためには、原液100質量%中にエマルジョン型消泡剤として0.5〜1.5質量%(消泡成分のオクタメチルシクロテトラシロキサンとして0.18〜0.53質量%)含有することが好ましいといえる。
【0045】
エマルジョン型消泡剤とヒドロキシエチルセルロースを併用することにより、破泡音の継続時間が長くなった。ヒドロキシエチルセルロースの配合量を変化させた、実施例2、5〜7および比較例3の結果から、破泡音の大きさ、破泡感、泡立ちを良好にし、また製剤一般に必要とされる、べたつかず良好な使用感とし、乳化を容易にするためには、原液100質量%中に、ヒドロキシエチルセルロース1%水溶液として10〜30質量%(ヒドロキシエチルセルロースとして0.1〜0.3質量%)含有することが好ましいといえる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明によれば、破泡感が強く、破泡状態を長時間維持することができる破泡性の良好なクラッキング製剤を提供できる。また、本発明のクラッキング製剤はエタノールを含有していないから、敏感肌の人でも安心して使用できる敏感肌用の化粧料としても有用である。